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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】複雑なエリアの自動除染
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20240619BHJP
   B64D 11/00 20060101ALI20240619BHJP
   B64F 5/30 20170101ALI20240619BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20240619BHJP
   A61L 101/34 20060101ALN20240619BHJP
   A61L 101/36 20060101ALN20240619BHJP
【FI】
A61L2/18 102
A61L2/18
B64D11/00
B64F5/30
A61L101:22
A61L101:34
A61L101:36
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018011300
(22)【出願日】2018-01-26
(65)【公開番号】P2018149272
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-01-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】15/417,994
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2018402
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パク, ショーン ヒョンス
(72)【発明者】
【氏名】ペルツ, レオラ
(72)【発明者】
【氏名】ウォールバーグ, アンドリュー ゲアハルト
【合議体】
【審判長】菊地 則義
【審判官】安積 高靖
【審判官】関根 裕
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106139196(CN,A)
【文献】中国実用新案第204563029(CN,U)
【文献】特表2013-516359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0091354(US,A1)
【文献】特開2011-188950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L2/00-2/28
A61L101/00-101/56
B64D11/00
B64F5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア(100)を除染するための方法であって、前記方法は、
エアロゾル散布ノズル(322)とエアロゾル配向ファン(324)を備える移動式除染装置(300)を前記エリア(100)内に配置すること、
エリア特性(102)に基づいて、前記移動式除染装置(300)のエアロゾル散布パラメータ(305)を決定すること、
前記エアロゾル散布ノズル(322)を使用して、前記エアロゾル散布パラメータ(305)に従って、除染剤飛沫(317)を含むエアロゾルの形態で散布される除染剤(315)を前記エリア(100)内に自動的に散布すること、
エアロゾル配向ファン(324)を使用して、前記エアロゾル散布パラメータ(305)に従って、前記除染剤飛沫(317)を前記エリア(100)内の表面に向けること
を含み、
前記エアロゾル散布パラメータ(305)が、ノズルあるいはファンの配向、散布速度又はファン速度のうちの少なくとも1つを含み、
前記エリア特性(102)が、前記エリア(100)における湿度、温度、汚染物質の種類又は表面の向きのいずれか一以上を含み、
そのエリア特性(102)は前記移動式除染装置(300)のセンサ(328)を使用して取得され、そのエリア特性(102)は除染される前記エリア(100)に関する未知の情報を含み、
そのエリア特性(102)は前記センサ(328)によって、前記移動式除染装置(300)の装置コントローラ(302)まで送信され、
その装置コントローラ(302)はその後、前記センサ(328)によって送信された前記エリア特性に基づいて、前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定する
方法。
【請求項2】
除染される前記エリア(100)の一又は複数の特性の少なくとも一部は、前記移動式除染装置(300)のデータベース(304)に保存されており、前記エリア(100)の一又は複数の特性の一部は前記データベース(304)から前記装置コントローラ(302)に送信され、前記装置コントローラ(303)は、前記センサ(328)から受信した前記エリア特性(102)、並びに前記データベース(304)に保存されている前記エリア(100)の一又は複数の特性の一部に基づいて、前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装置コントローラ(302)は、前記エリア特性(102)などの情報を通信モジュール(306)と交換し、次に前記情報は遠隔装置(210)及び/又は他の移動式除染装置(300)と交換される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記装置コントローラ(302)、前記通信モジュール(306)及び/又は前記データベース(304)はコンピュータシステムに組み込まれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定することは、密度、表面張力又は組成のいずれか一以上を含む除染剤特性に基づいて更に実行される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定することは更に、前記エリア特性(102)を設定範囲内まで、例えば、所定の許容しうる除染範囲内まで変化させることを含み、これによって前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定することは、前記エリア特性が変更されるまでは完了せず、前記設定範囲内にある、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記エリア特性(102)を変更することは、前記移動式除染装置(300)の外部で、遠隔装置(210)を操作することを含む、請求項3からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記エリア特性(102)を変更することは更に、前記移動式除染装置(300)から前記遠隔装置(210)まで制御命令を送信することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記エリア(100)は航空機の客室である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
エリア(100)を除染するための移動式除染装置(300)であって、
前記エリア(100)の周辺で前記移動式除染装置(300)を移動するように動作可能な移動モジュール(312)を備えるベース部分(310)と、
前記ベース部分(310)に動作可能に連結されたヘッド部分(320)と、
前記エリア(100)内で除染剤(315)を除染剤飛沫(317)を含むエアロゾルの形態で散布するように動作可能なエアロゾル散布ノズル(322)と、
前記除染剤飛沫(317)を前記エリア(100)の表面(110)に向けるように動作可能なエアロゾル配向ファン(324)と、
除染される前記エリア(100)のエリア特性(102)であり、除染される前記エリア(100)に関する未知の情報を含むエリア特性(102)を検知するためのセンサ(328)であって、通信を行うセンサ(328)と、
前記エリア特性に基づいてエアロゾル散布パラメータ(305)を決定し、前記エアロゾル散布ノズル(322)、前記エアロゾル配向ファン(324)、及び前記移動モジュール(312)の作業を制御するように動作可能な装置コントローラ(302)と
を備え
前記エアロゾル散布パラメータ(305)が、ノズルあるいはファンの配向、散布速度又はファン速度のいずれか一以上を含み、
前記エリア特性(102)が、前記エリア(100)における湿度、温度、汚染物質の種類又は表面の向きのいずれか一以上を含む、
移動式除染装置(300)。
【請求項11】
前記エリア特性(102)の少なくとも一部を含むデータベース(304)を更に備える、請求項10に記載の移動式除染装置。
【請求項12】
前記移動モジュール(312)は、前記エリア(100)から取得された前記エリア特性(102)に基づいて、前記装置コントローラ(302)によって制御可能である、請求項10又は11に記載の移動式除染装置。
【請求項13】
遠隔装置(210)及び/又は他の移動式除染装置(300)など、他の装置と情報を交換するための通信モジュール(306)を更に備える、請求項10から12のいずれか一項に記載の移動式除染装置。
【請求項14】
前記装置コントローラ(302)、前記通信モジュール(306)及び/又は前記データベース(304)はコンピュータシステムに組み込まれる、請求項13に記載の移動式除染装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は複雑なエリアの除染に関し、より具体的には、航空機の客室にようにアクセスが困難な表面を有するエリアを自動的に除染する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
汚染物質は様々なエリアに持ち込まれ、或いは現われて、そのエリアをその後の使用に適さないものにすることがある。例えば、空の旅やその他の形態の旅、並びに新しい目的地の人気が高まるにつれて、感染症の伝播が劇的に高まってきている。汚染の種類やレベルによっては、空気ろ過、さらには露出面を殺菌剤で拭き取ることによってコントロールしうる。しかしながら、このような方法は費用も時間もかかり、人(例えば、清掃員)を汚染物質及び/又は除去剤に曝し、思いもよらぬ結果をもたらすことがありうる。例えば、近年の航空機の多くは、アクセスが困難な多数の表面を有する大きな客室を備えているため、短い駐機時間内の完全な除染を行うことは困難になっている。多くの隠れた表面や小さな空洞は手つかずのままになり、かなりの量の汚染物質が残りうる。更に、生物学的病原菌の多くは室温では相当な回復力があるため、過酸化水素及び/又は酸など、高濃度の強い化学薬品を必要とするが、これらは一部の表面には望ましくない。
【0003】
除染剤を散布する方法及びシステムは、US2011/0171065A1に開示されている。
【発明の概要】
【0004】
航空機の客室など、様々なエリアを除染するための移動式除染装置、及びそのような装置を使用する方法が提示される。
【0005】
移動式除染装置は、少なくとも1つのエアロゾル散布ノズルと少なくとも1つのエアロゾル配向ファンを備える。ノズルは殺菌剤をエアロゾルの形態で散布し、一方、ファンはエアロゾルを除染対象の表面に向ける。ノズル及びファンの配向、散布速度、ファン速度などのエアロゾル散布パラメータは、エリアの特性に基づいて決定される。特に、種々の表面の向き、温度、湿度などの特性が考慮されうる。一部の特性は、移動式除染装置をエリア内に配置した後に、例えば、その装置のセンサを使用して取得される。エリアのレイアウトなど、その他の特性は、移動式除染装置を配置する前にあらかじめ読込まれてもよい。散布パラメータは、エリア内の表面の完全な除染を保証するように決定される。
【0006】
エリアの除染方法は、エリア内での移動式除染装置を配置すること、エアロゾル散布パラメータを決定すること、除染剤飛沫の形態で除染剤を散布すること、及び除染剤飛沫をエリア内の表面に向けることを含む。移動式除染装置は、エアロゾル散布ノズル及びエアロゾル配向ファンを備える。エアロゾル散布ノズルは、除染剤の散布に使用されうる。特に、除染剤は除染剤飛沫を含むエアロゾルの形態で散布することができる。更に、除染剤は、エリア特性に基づいて決定されるエアロゾル散布パラメータに従って散布することができる。エアロゾル配向ファンは、除染剤飛沫を表面に向けるように使用することができる。
【0007】
エアロゾル散布パラメータの決定は更に、除染剤の特性に基づいて決定されうるが、これは除染剤特性と称されることがある。これらの除染剤特性は、エアロゾル散布パラメータを決定するため、エリア特性と共に使用されうる。除染剤特性は、密度、表面張力、組成などを含みうる。
【0008】
エアロゾル散布パラメータの決定は、エリア特性の取得を含む。このようなエリア特性の幾つかの実施例には、当該エリアの湿度、当該エリアの温度、汚染物質の種類、表面の向きなどが含まれる。エリア特性は、移動式除染装置のセンサを使用して得られる。このエリア特性の位置を取得することにより、エリアに関する一部の情報が不明であっても、移動式除染装置の使用が可能になる。例えば、エリアの温度は最初は不明のこともあれば、除染工程の間に変化することもありうる。温度は、移動式除染装置によって、或いは温度センサを介して現場でモニタされてもよい。
【0009】
エリア特性は移動式除染装置のデータベースに保存することもできる。例えば、データベースは、エリアのレイアウト、表面の状態、及び/又は予測された環境条件(例えば、湿度、温度)と共にあらかじめ読み込まれてもよい。データベースに保存されたエリア特性は、移動式除染装置によって現場で取得された付加的なエリア特性と組み合わせられうる。幾つかのエリア特性及び/又は調剤パラメータは、例えば、当該エリアに提供されたセンサ、外部コントローラなどの外部装置から移動式除染装置へ送信されうる。同様に、移動式除染装置は幾つかの特性及び/又は調剤パラメータを外部装置へ送信してもよい。
【0010】
エアロゾル散布パラメータを決定する作業全般は、散布パラメータの最終決定の前に、少なくとも幾つかのエリア特性を変更することを含みうる。例えば、最初の段階では、一部のエリア特性は効果的な除染を行うための準最適値であってもよく、例えば、温度は低すぎることもあれば高すぎることもある。このようなエリア特性は、設定範囲内、例えば、除染を許容しうる範囲内に変更されうる。エアロゾル散布パラメータを決定する作業は、エリア特性が変更され、設定範囲内に収まるまで完了されないことがある。別の態様では、最初のエアロゾル散布パラメータは決定されうるが、その処理は除染剤の散布と共に継続されてもよく、その間、エリア特性は変化する。エリア特性に対する変更が完了すると、新しいエアロゾル散布パラメータが決定されうる。
【0011】
エリア特性の変更は、移動式除染装置の外部にある遠隔装置の操作を含みうる。移動式除染装置は、エリア特性の変更を実行するため、遠隔装置に命令を送ってもよい。遠隔装置は、加熱換気空調(HVAC)装置、加湿器、オゾン発生装置などを含む。遠隔装置は、エリア特性を変更するために動作可能になりうる移動式除染装置のコンポーネントとは区別されなければならない。例えば、遠隔装置は、移動式除染装置のエアロゾル配向ファンに連結されたヒーターとは異なるヒーターになりうる。
【0012】
エアロゾル散布パラメータの決定は、移動式除染装置の装置コントローラを使用して実行される。エアロゾル散布パラメータの決定は、遠隔的に(例えば、遠隔装置によって)実行されてもよく、その後移動式除染装置に送信される。例えば、遠隔装置はそれ自体のコントローラを有してもよい。エアロゾル散布パラメータの初期設定は移動式除染装置に送信されてもよく、幾つかの実施例では更に、例えば、現場で得られたエリア特性に基づいて、移動式除染装置で修正されうる。
【0013】
本発明の具体的な利点は、エリア特性がセンサに登録されており、センサは次にこれらのエリア特性を装置コントローラに送信し、その後エアロゾル散布パラメータを決定し、除染剤の散布を制御するため、除染中に移動式装置を手動で操作する必要なくエリア除染が実行可能なことである。
【0014】
しかしながら、除染剤のエリア散布のため車輪付きカートを開示するUS2011/0171065A1は、アクセスが困難なエリアの手動散布には、残存エリアに対処する除染剤を散布する自動蒸気スプレーとの組み合わせが依然として求められていることを開示している。US2011/0171065A1は、除染対象エリアの特性を自動的に検知し、その結果、これらの特性が次にそれを解析するコントローラに提供され、その解析に基づいてエアロゾル散布パラメータを決定することができるシステムを開示していない。
【0015】
本発明により、エアロゾル散布パラメータの決定に続いて、除染剤の自動散布はコントローラによって、或いはオプションによりコントローラに指示を与えるプロセッサなど、コントローラに接続された外部装置によって、制御することができる。このように、航空機の座席ポケットなど、アクセスが困難なエリアを除染するため、除染対象エリアに人が入る必要はない。
【0016】
本方法は更に、移動式除染装置をエリア内で移動させることを含む。例えば、移動式除染装置はエリアの他の部分に移動されてもよく、これによって、より大きなエリアの除染が可能になる。更に、移動式除染装置は、エリア内の表面に対してエアロゾル散布ノズル及びエアロゾル配向ファンの向きを変えるため、エリアの範囲内で動かされてもよい。例えば、移動式除染装置は、散布により適した角度を提供するため、及び/又は除染剤をより一様に散布するため、回転してもよい。
【0017】
エリア内での移動式除染装置の移動は、除染剤の散布中に実行されうる。換言するならば、移動作業は除染剤の散布作業と重なってもよい。この機能により、散布作業の連続性を保証し、除染の一様性を高め、処理全体の速度を向上させる。
【0018】
更には、エリア内での移動式除染装置の移動は、エリア特性に基づいて自動的に実行されてもよい。例えば、移動式除染装置は、(例えば、オペレータからの)内部的な支援なしで移動式除染装置を動かすことができる移動モジュールを含みうる。この機能により、エリア内の潜在的な汚染物質及び/又は除染剤に人が曝されるのを回避することができる。
【0019】
本方法は更に、エアロゾル散布パラメータを変更することを含みうる。これは、以下のパラメータ、すなわち、エリアに対するエアロゾル散布ノズルの向き、エリアに対するエアロゾル配向ファンの向き、ファンの速度、散布速度など、のうちの一又は複数を変更することを含みうる。このような変更は、エリアのある部分から別の部分へのエリア特性の変化に対応するために実行されうる。幾つかの実施例では、エアロゾル散布ノズルの向きは、除染剤の散布中、例えば、ある表面から別の表面への移動中に変更されうる。
【0020】
エアロゾル散布パラメータの変更は、エアロゾル散布ノズルの向きの変更とエアロゾル配向ファンの向きの変更の両方を含みうる。移動式除染装置は、エアロゾル散布ノズルの向きとエアロゾル配向ファンの向きとの間のある種の関係を維持してもよい。例えば、エアロゾル散布ノズルの向きとエアロゾル配向ファンの向きの両方を変更することは、移動式除染装置のベース部分に対する移動式除染装置のヘッド部分の向きを変えることを含む。ヘッド部分は、エアロゾル散布ノズルとエアロゾル配向ファンとを備えている(また、支持している)。換言するならば、ヘッド部分がベース部分に対して(当該エリアに対しても)その向きを変えるときには、エリアに対するノズルとファンの向きも変化する。ベース部分に対してヘッド部分の向きを変えることは、ベース部分に対してヘッド部分を引き上げること、及び/又はベース部分に対してヘッド部分を回転することを含みうる。ベース部分は、例えば、エリア内で移動式除染装置を移動することによって、エリアに対する向きも変えうることに留意されたい。このベース部分の向きの変更は、移動式除染装置全体、並びに任意のノズルやファンを含むコンポーネントすべての向きを換える。
【0021】
除染剤飛沫を表面に向けることは、除染剤飛沫の周囲に乱気流を形成することを含みうる。乱気流はエアロゾル配向ファンによって形成されうる。乱気流は、少なくとも部分的には遠隔装置によって形成されうる。
【0022】
エリア内で除染剤を散布することと、除染剤飛沫を表面に向けることとは、時間的に重なりうる。特に、エアロゾル配向ファンは、除染剤の散布中に(例えば、常に)操作可能であってもよい。エアロゾル配向ファンによって生成される流れは、除染剤飛沫を方向付けし、ファンが使用されない場合(例えば、静止空気中で除染剤飛沫の散布)よりも遠くへ除染剤飛沫を運ぶのに役立つ。
【0023】
エアロゾル散布パラメータを決定することは、エリア内の表面の向きに基づいて、エアロゾル散布ノズルの向き、及び/又はエアロゾル配向ファンの向きを決定することを含みうる。このノズルとファンと表面の向きの関係性は、すべての表面が適切な量の除染剤を確実に得るために使用されうる。
【0024】
本方法は更に、エリア内の表面の向きを得ることを含みうる。この作業は、移動式除染装置のカメラを使用して実行されうる。代替的に、又は追加的に、この情報は移動式除染装置のデータベースから読み出されてもよい。換言するならば、データベースは少なくとも幾つかのエリア特性を含んでもよく、これらはエリア内に移動式除染装置を配置する前にデータベースに追加されてもよい。
【0025】
エアロゾル散布パラメータは、エアロゾル配向ファンによって配向される空気の温度傾斜プロファイルを含みうる。温度傾斜プロファイルは直線的であってもよい。
【0026】
本方法は更に、エリア内で除染剤を散布している間に、移動式除染装置に除染剤を供給することを含む。例えば、移動式除染装置は、除染剤貯蔵容器を有する遠隔装置に連結されてもよい。内蔵型の貯蔵容器を取り除き、除染剤を外部から供給することで、移動式除染装置の重量は減らすことができる。一方、テザー(tether)がなく、内蔵型の除染剤貯蔵モジュールを有する移動式除染装置は、テザーによって移動式除染装置の移動範囲、向き、及び他の移動特性が制限されることがないため、エリア内での可動性が高まりうる。
【0027】
移動式除染装置による除染エリアは、航空機の客室であってもよい。航空機の客室は、長時間(例えば、長時間の飛行)にわたって使用される人口密度の高い閉鎖エリアである。更に、航空機の客室には材質の異なる多種多様な表面があるため、除染処理が特に困難になる。
【0028】
また、エリアの除染のため、移動式除染装置は、好ましくは記述される方法によって提供される。移動式除染装置は、ベース部分、ヘッド部分、エアロゾル散布ノズル、及びエアロゾル配向ファンを備える。ベース部分は、当該エリアの周囲及び少なくともその内部で移動式除染装置を移動させるように操作可能な移動モジュールを備える。ヘッド部分は、ベース部分に移動可能なように連結されうる。エアロゾル散布ノズルは、除染剤をエリア内において除染剤飛沫を含むエアロゾルの形態で散布するように、動作可能になりうる。エアロゾル配向ファンは、除染剤の除染剤飛沫をエリア内の表面に向けるように動作可能になりうる。
【0029】
移動式除染装置は更に、装置コントローラを含む。装置コントローラは、センサから受信したエリア特性に基づいて、エアロゾル散布パラメータを決定する。更に、装置コントローラは、エアロゾル散布ノズル、エアロゾル配向ファン、及び移動モジュールの作業を制御する。
【0030】
移動式除染装置は更に、エリア特性の少なくとも一部を含むデータベースを備える。換言するならば、エリア特性の少なくとも一部は移動式除染装置に局所的に保存されうる。このような特性の一例がエリアレイアウトである。付加的な特性は、移動式除染装置に送信されてもよく、及び/又は、エリア内に配置された後に移動式除染装置によって取得されてもよい。例えば、移動式除染装置は更に、生物学センサ、化学センサ、温度センサ、湿度センサ、及びカメラからなる群から選択されたセンサを含みうる。センサは、エリア特性を取得して、そのエリア特性をあとで使用するために、例えば、調剤パラメータを決定するために、装置コントローラに送信するように動作可能であってよい。
【0031】
移動モジュールは、エリアから取得したエリア特性に基づいて、装置コントローラによって制御可能であってよい。例えば、装置コントローラは、エリア内で移動式除染装置の位置を変更し、これらの変化を実装する移動モジュールを制御するように選択しうる。
【0032】
エアロゾル散布ノズルとエアロゾル配向ファンは、少なくともベース部分に対して移動可能であってよい。例えば、エアロゾル散布ノズルとエアロゾル配向ファンは、ベース部分に対して引き上げ可能、及び/又は回転可能になりうる、ヘッド部分に配置されうる。更に、エアロゾル散布ノズルとエアロゾル配向ファンは、ヘッド部分に対してその向きを変更しうる。
【0033】
エアロゾル散布ノズルとエアロゾル配向ファンは、移動式除染装置の中心軸に対して枢動可能(又は、傾斜可能)になりうる。エアロゾル散布ノズルとエアロゾル配向ファンは、移動式除染装置の中心軸の周りに回転可能になりうる。
【0034】
移動式除染装置は更に、電力線、送気管、通信線、及び除染剤供給管からなる群から選択されるテザーを接続するためのコネクタを備えることができる。移動式除染装置は、除染剤貯蔵モジュールを含みうる。移動式除染装置は更に、エリアのシステムと通信するための通信モジュールを備える。
【0035】
発明者らは、航空機の客室など、ターゲットエリア又は空間の除染の効率は、ターゲット空間/エリアの幾何形状及び表面特性に密接に関係していると判断した。
【0036】
本発明の除染システムは、状況の情報に基づいて、除染システムの散布パラメータを調節する。
【0037】
このような状況の情報をリアルタイムで収集する手段には、例えば、装置のセンサと協働する以下のものが含まれる。
-情報と幾何形状を記録する3Dカメラ。この情報は、除染システムによって散布されるエアロゾル化された除染剤の軌跡をシミュレートするため、CFDソフトウェアと連動して使用される。
-除染対象のエリア内に配置される試験片。試験片は、その表面上に堆積する除染剤の量を測定するためのマイクロ流体工学センサ、及び除染システムにこの情報をリレーすることができる無線回路を有し、小型ドローンによって配置可能である。
-小型ドローンは、空気中の除染剤の量、及びエアロゾル化された除染剤を運ぶ気流の量をサンプリングするため、その表面上にマイクロ流体工学センサを備えている。
-小型フォトニクスを使用する(可視光波長及びUV波長での)高解像度視覚システムは、表面上に液膜又は丸い液滴があるかどうかを検出するため、表面上の液散布のパターンを表示することができる。このような膜/液滴は、堆積した除染剤の不均一(過小又は過剰)な分布を含む、表面の疎水性/親水性を示す。
【0038】
除染剤システムの性能を最適化する付加的な手段には以下が含まれうる。
-除染されるターゲット空間/エリアの構造的情報、及び使用条件(例えば、新しい清潔な表面、或いは汚れている表面など)。
-ミニチュアドローンは、手が届きにくいエリアの(手で触れるのと同等の)局所的な最適化のため、小型の散布装置を備えてもよい。
【0039】
付加的な態様は、システムによって散布されるエアロゾル化された飛沫のサイズに関連している。
【0040】
極めて小さい飛沫(霧状のエアロゾル)は、空中で長い持続(浮遊)時間を有する。
【0041】
これらは、除染システムによって生成される気流によって、容易に散布されうる。
【0042】
大きな飛沫も気流によって運ばれうるが、重力の影響によって、これらは表面上に早く堆積し、また、霧状の飛沫の堆積を促進する。
【0043】
飛沫のサイズ、及びこれを運ぶ気流の強さと指向性を変えることは、表面上への除染剤の堆積の最適化に役立ちうる。
【0044】
上述の特徴及び機能は、以下の説明及び図面を参照して理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1A】(航空機の客室として示されている)エリア内に配置される移動式除染装置の概略図である。
図1B】(航空機の客室として示されている)エリア内に配置される移動式除染装置の概略図である。
図1C】(航空機の客室として示されている)エリア内に配置される移動式除染装置の概略図である。
図1D】(航空機の客室として示されている)エリア内に配置される移動式除染装置の概略図である。
図2A】システムの一部として移動式除染装置の概略ブロック図である。
図2B】エリアの遠隔装置に動作可能に連結された移動式除染装置の概略図である。
図3A】移動式除染装置の概略図である。
図3B】移動式除染装置の概略図である。
図3C】移動式除染装置の様々なコンポーネント間の情報の流れの概略図である。
図4】エリアの除染の方法に対応する処理フロー図である。
図5A】表面上の除染剤液滴の画像を捉える移動式除染装置のカメラの概略図である。
図5B】除染処理中の温度プロファイルと濃度プロファイルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
下記の説明では、提示されている概念の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細事項を明示する。提示されている概念は、これらの具体的な詳細事項の一部又は全部を含まずとも実践可能である。他の事例においては、記載される概念を不必要に分かりにくくしないように、周知の処理工程については詳細に記載していない。一部の概念は具体例を踏まえて説明されるが、これらの例は限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0047】
序論
複雑なエリアの除染は困難になることがあり、スピードが要求され、及び/又は汚染物質と除染剤に曝されるため、作業員が実行できない場合も多い。様々なエリア、例えば航空機の客室など、特に複雑なエリアの除染には、自動化された移動式除染装置及びこのような装置を使用する方法が提供される。移動式除染装置は、除染剤をエアロゾルの形態で散布し、除染剤飛沫の雲を形成するノズル(又は、インジェクタ)を含みうる。雲は「噴煙形状」を呈し、ノズルの固定的な特性、並びに除染剤の圧力及び流量など、幾つかの散布パラメータの機能にもなりうる。「噴煙形状」は、移動式除染システムの周囲のエリア内での飛沫のその後の移動と堆積を決定する。しかしながら、表面への飛沫の到達と堆積は、これらの表面を形成する対象物、並びに近傍に配置された他の対象物の具体的な幾何形状に依存する。例えば、近くの対象物は、散布された除染剤を配向する気流を妨げうる。しかも、一部の表面へのアクセスは他の対象物によって制限されうる。最終的に、エリア内の追加的な対象物は、ある種の除染剤の使用、ある種の環境条件(例えば、温度、湿度など)での動作に関する制約をもたらすことがある。このように、ノズルの固定的な「噴煙形状」からの堆積は、ターゲットの幾何形状によって影響されうる。追加的な制御を行わないと、固定的な「噴煙形状」によって、様々な表面が除染剤飛沫で一様に覆われないことがありうる。一部の表面は(これらの表面を損傷しうる)過剰な量の除染剤を受け取るが、一方、他の表面は不充分な量しか受け取れないか、或いはまったく受け取れない(汚染されたままになる)ことがありうる。
【0048】
移動式除染装置は、様々な表面の向きなどの具体的なエリア特性に基づいて、エアロゾル散布パラメータを決定することによって、この問題に対処する。同一エリア内の種々の表面の相対的な向きは、当該エリアの除染中に、これらの表面の交差効果(cross-effect)の原因になりうると考えられている。例えば、エリア内で発生する気流は、幾つかの表面によって遮断されること、及び/又は向きが変えられることがありうる。移動式除染装置は、自律的に調整可能であり、再構成可能である。移動式除染装置はまた、散布角、散布量、飛沫サイズ、飛沫を運ぶ気流、温度などを制御するように動作可能である。移動式除染装置は動作エリア内で移動可能である。
【0049】
図1Aは、航空機の客室として示されたエリア100内に配置された移動式除染装置300の概略図である。航空機の客室は、人口密度が高く、汚染されうる閉鎖エリアである。しかも、航空機の客室は、除染処理を特に困難にする様々な材料から作られた、多数の異なる表面を有する。その上、航空機の客室の除染は、例えば、フライトの合間に、好ましくない化学物質が残留しないように、迅速且つ効率的な方法で実行されなければならない。
【0050】
移動式除染装置300は、例えば、図1Aに示したように、同一エリア100内に別の移動式除染装置300と共に配置されうることに留意されたい。各移動式除染装置300は、エリア100の一部の除染を担当しうる。図1Aを参照すると、左側の移動式除染装置300は、左側列及び中央列の左部分のすべての座席の除染を担当しうる。例えば、図1Bの拡大図に概略的に示したように、右側の移動式除染装置300は、右側列及び中央列の右部分のすべての座席の除染を担当しうる。この実施例では、各移動式除染装置300は、各通路に沿って移動可能となりうる。代替的に、各移動式除染装置300は、エリア100全体の除染に使用されうるが、異なるエアロゾル散布パラメータを使用しうる。例えば、異なる種類の除染剤が各移動式除染装置300で使用されうる。各移動式除染装置300の作業は、他の装置に同期されてもよい。
【0051】
移動式除染装置300は、エアロゾルの形態にある除染剤315を除染剤飛沫317として散布するように動作可能である。幾つかの実施例では、図1B及び図1Cに概略的に示したように、移動式除染装置300は除染剤315を同時に異なる方向に散布するように動作可能である。例えば、移動式除染装置300は、移動式除染装置300の右側の座席と左側の2つの座席に、除染剤315を散布するように動作されてもよい。図1B及び図1Cに示した実施例では、移動式除染装置300は、除染される各種の座席から異なる距離に配置される(例えば、左端の座席は移動式除染装置300から最も離れている)ことに留意されたい。更には、この実施例の移動式除染装置300は、右側の1座席と左側の2座席だけに除染剤315を散布している。散布角、散布量、飛沫サイズ、飛沫を運ぶ気流、温度、その他のパラメータの制御により、すべての座席を一様な方法で除染することができる。
【0052】
図1Cを参照すると、移動式除染装置300はまた、エリア100の異なる部分を垂直方向に(Z軸に沿って)除染してもよい。例えば、移動式除染装置300は、座席の下、座席の周囲、及び座席の上方を除染するように示されている。幾つかの実施例では、移動式除染装置300は、例えば、図1Dに示したように、エリア100のより高い部分にアクセスして除染を行うため、ノズルを含むヘッド部分は上方に上げてもよい。
【0053】
以下の説明は航空機について言及しているが、本書に記載の主題は、他の種類のビークル、対象物、又はエリアに適用可能であること理解されたい。例えば、本書に記載の主題は、自動車、建物、及び/又は少なくとも汚染される可能性のあるエリアの除染に、直ちに適用されうる。したがって、以下の説明全体にわたる「航空機」への言及は、本書に記載に主題を教示する潜在的な応用の1つを示しているにすぎない。
【0054】
本書で使用されているように、「除染」という言葉は、表面及び/又は物品の上の病原菌を除去、不活化及び/又は破壊し、その結果、病原菌が感染粒子を伝播できなくなること、及び表面及び/又は物品が安全に取扱い、使用及び/又は処理できるようになることを意味する。「病原菌」という言葉は、限定するものではないが、細菌、ウィルス、バクテリア、原生動物、菌類、及び/又は微生物を含む、疾患、病気及び/又は感染を引き起こす因子を意味する。
【0055】
本明細書において、「1つの/ある」(「a」又は「an」)という語から始まる単数形の要素又はステップは、複数の要素又はステップを除外することが明示的に記載されていない限り、複数の要素又はステップを除外しないと理解されたい。更に、「一実施形態」又は「例示的な実施例」への言及は、記載されている特性を内包する追加的な実施形態の存在を除外すると解釈されることを、意図するものではない。
【0056】
移動式除染装置の実施例
移動式除染装置300、及び移動式除染装置300がその一部となりうるシステム200は、移動式除染装置300の使用方法を説明する前に、最初に提示される。図2Aは、移動式除染装置300の概略ブロック図である。図2Aに示したように、移動式除染装置300はシステム200の一部であってよく、このシステムは一又は複数の遠隔装置210など、他のコンポーネントを含みうる。遠隔装置210は、エリア100内に存在してもよい。遠隔装置210の一例は、例えば、図2Bに概略的に示した加熱換気空調(HVAC)装置212である。他の実施例は、加湿器、オゾン発生装置、電源、除染剤サプライ、中央制御装置などを含む。遠隔装置210は、移動式除染装置300の様々なコンポーネントとは区別されなければならない。幾つかの実施例では、システム200は航空機の環境システムである。これらの実施例では、エリア100は航空機の内部である。
【0057】
遠隔装置210は、テザー219を使用して移動式除染装置300に接続されてもよい。例えば、図2Bに概略的に示したように、テザー219によって移動式除染装置300はエリア100内を移動することが可能となる。この種の接続は、情報及び制御命令の交換、電力供給、除染剤315の受け渡しなどに使用されうる。幾つかの実施例では、遠隔装置210は、移動式除染装置300に無線的に接続されてもよい。例えば、この種の接続は情報と制御命令の交換に使用されうる。幾つかの実施例では、移動式除染装置300が遠隔装置210に永続的に接続されることはないが、(例えば、充電、除染剤315の搬送のため)移動式除染装置300がベースに戻るときには、一時的な接続が確立されてもよい。幾つかの実施例では、移動式除染装置300は、システム200の一部ではなく、独立型の装置として動作する。これらの実施例では、移動式除染装置300は独自の電源、除染剤貯蔵容器、装置コントローラ、及び/又は独立した作業を可能にするその他のコンポーネントを有しうる。
【0058】
図3A及び図3Bは、幾つかの実施例に従った移動式除染装置300の概略図である。移動式除染装置300は、ベース部分310及びヘッド部分320を含みうる。ヘッド部分320はベース部分310に動作可能に連結されうる。例えば、ヘッド部分320はベース部分310に対して上方に持ち上げられてもよく、及び/又はベース部分310に対して回転してもよく、例えば、移動式除染装置300の中心軸309の周りに回転しうる。更に、ヘッド部分320は、ベース部分310に対して、また、中心軸309に対して傾斜可能であってよい。ベース部分310に対するヘッド部分320の運動は、移動式除染装置300のヘッド位置決めシステム311によってもたらされうる。ベース部分310に対するヘッド部分320の可動性は、以下で更に説明されるように、除染剤315を特定の方法で(例えば、より一様に)散布するように利用されうる。具体的には、ヘッド部分320は、除染剤315を散布し、除染剤315を表面110に向けるように動作可能な移動式除染装置300の様々なコンポーネントをサポートしうる。そのため、ベース部分310に対する(及び、エリア100に対する)ヘッド部分の動きと向きは、以下で更に説明されるように、除染剤の散布に利用されうる。
【0059】
移動式除染装置300、又はより具体的にベース部分310は、エリア100周辺で移動式除染装置300を動かすように動作可能な移動モジュール312を含みうる。幾つかの可動性の態様は、図1Aを参照して上記のように説明されている。例えば、移動式除染装置300は、航空機の客室の通路に沿って移動する。
【0060】
移動式除染装置300又は少なくともベース部分310は円筒形状を有する。この形状により、移動式除染装置300はエリア100内を移動し、空間内の対象物に挟まることなくエリア100内の対象物に接することができる。
【0061】
移動式除染装置300は、少なくとも1つのエアロゾル散布ノズル322及び少なくとも1つのエアロゾル配向ファン324を備える。本明細書はエアロゾル配向ファン324に言及しているが、当業者であれば、除染剤飛沫317の方向付けを行うため、タービン、圧搾空気ジェットなどの他の種類の装置が動作可能であることを認識するであろう。例えば、図3A及び図3Bは、移動式除染装置300のヘッド部分320の上に配置された4つのエアロゾル散布ノズル322と4つのエアロゾル配向ファン324を示している。追加のエアロゾル散布ノズル322が(例えば、航空機の客室座席の下に除染剤を散布するため)ベース部分310に示されている。各エアロゾル散布ノズル322は、エリア100内で除染剤315を散布するように動作可能である。特に除染剤315は、例えば、図1B及び図1Cに概略的に示したように、除染剤飛沫317を含むエアロゾルの形態で散布される。エアロゾル配向ファン324は、除染剤315の除染剤飛沫317をエリア100の表面110に向ける450ように動作可能である。
【0062】
エアロゾル散布ノズル322及び/又はエアロゾル配向ファン324は、少なくともベース部分310に対して可動であってよい。エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324は、ベース部分310に対してそれぞれ独立に可動であってよい。代替的に、エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324は、組になって一緒に動かされてもよい。例えば、エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324は、図3A及び図3Bに示したように、ヘッド部分320の上に配置されてもよい。ベース部分310に対する(及び、エリア100に対する)ヘッド部分320の運動はまた、ベース部分310に対する(及び、エリア100に対する)エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324の運動を引き起こす。この実施例では、ヘッド部分320は、例えば、ある表面110に到達するように、エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324をエリア100内で向ける装置として使用される。例えば、エリア内でのエアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324の配向を変え、新しい表面110にアクセスするため、ベース部分310に対するヘッド部分320の配向は変更されうることに留意されたい。
【0063】
エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324の独立した動きは、処理に柔軟性をもたらす。例えば、エアロゾル散布ノズル322によって生成される除染剤飛沫317の噴煙に対して、エアロゾル配向ファン324によって生成される気流の角度の変化は、この噴煙を異なる表面110に向ける。一方、移動式除染装置300に複数組のエアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324が備わっている場合には、エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324を(組にして)一緒に動かすことによって、その向きを一定に保つことができ、制御を単純化することができる。幾つかの実施例では、これらの組はすべて一緒に動かされる。
【0064】
エアロゾル散布ノズル322及び/又はエアロゾル配向ファン324は、ヘッド部分320に対してその向きを変える。エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324は、その向きを独立に、或いは組にして一緒に変更しうる。例えば、エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324の一方又は両方は、ヘッド部分320に対して、また、中心軸309に対して(独立に、或いは一緒に)傾斜するように動作可能でありうる。ヘッド部分320は傾斜機能をサポートするためドーム形状を有してもよく、これによって(例えば、それぞれの側に90°或いは180°となる)大きな傾斜角が可能になる。更には、ヘッド部分320のドーム形状は、ヘッド部分320の周囲の気流を助け、除染剤31が(散布後に)ヘッド部分320の上又は周囲に集まるのを防止する。
【0065】
エアロゾル配向ファン324はヒーター326を備えてもよい。ヒーター326はエリア100の温度を上げるために、或いは、より具体的にはファン324によって配向された空気の温度を上げるために使用される。例えば、ある種の除染剤の効率は温度に依存する。更には、温度を上げることによって、除染処理を促進し、除染剤の供給を減らし、表面110に残る除染剤の蒸発を促し、また、その他の目的を促進することができる。
【0066】
エアロゾル散布ノズル322は、散布時に除染剤315に静電気を与えるように動作可能な静電帯電装置325を備えてもよい。具体的には、除染剤飛沫317は静電気が帯電し、これにより除染剤飛沫317は表面110により速く付着するようになる。その結果、除染に必要な時間は短縮され、除染処理は迅速化され、散布される除染剤の量は減らされる可能性がありうる。
【0067】
移動式除染装置300は、例えば、遠隔装置210に移動式除染装置300を接続するように動作可能なコネクタ319を含むことができる。図2A及び図2Bを参照して上述されているように、このような接続にはテザー219が使用される。作業中、テザー219はコネクタ319に接続され、電力、圧縮空気、及び/又は除染剤315の供給に使用される。幾つかの実施例では、テザー219はデータを転送するため、及び/又は他の同様な作業を行うために使用されうる。
【0068】
移動式除染装置300は、移動式除染装置300上に除染剤315を保存するように動作可能な除染剤貯蔵モジュール314を備えることができる。この特徴によりテザーは必要なくなり、移動式除染装置300はエリア100内でより操作しやすくなる。
【0069】
移動式除染装置300は、移動式除染装置300に搭載された除染剤216を加圧するためのコンプレッサを備えうる。具体的には、コンプレッサは、ノズル322を介して除染剤315を散布するのに十分な圧力を供給するように動作可能である。
【0070】
移動式除染装置300は、限定するものではないが、生物学センサ328a、化学センサ328b、温度センサ328c、湿度センサ328d、カメラ328eなどのうちの一又は複数を含みうるセンサ328を備えうる。センサ328はエリア特性102を取得するように動作しうる。生物学センサ328aは、バイオ認識コンポーネント及びバイオトランスデューサコンポーネントを含みうる。バイオレセプタなどの認識コンポーネントは、注目している検体と相互作用する生体分子を使用しうる。この相互作用は、試料中のターゲット検体の存在量に比例する測定可能な信号を出力する、バイオトランスデューサによって測定されうる。化学センサ328bは、触媒ビーズセンサ、化学的電界効果トランジスタ、電気化学ガスセンサ、赤外線点センサ、及びイオン選択電極を含みうる。温度センサ328cの実施例は、赤外線温度計、抵抗温度計、サーミスタ、及び熱電対を含む。湿度計又はヒューミスタ(humistor)は、湿度センサ328dとして使用されうる。
【0071】
移動式除染装置300は、例えば、図2A及び図3Aに概略的に示したように、装置コントローラ302を備える。代替的に、移動式除染装置300は、すべての命令を遠隔装置から受信し、それ自体の装置コントローラ302を有さなくてもよい。装置コントローラ302がある場合、装置コントローラ302は、エリア特性102に基づいてエアロゾル散布パラメータ305を決定するように動作しうる。更には、装置コントローラ302は、エアロゾル散布ノズル322、エアロゾル配向ファン324、及び移動モジュール312など、移動式除染装置300の他の様々なコンポーネントの作業を制御するように動作可能である。移動式除染装置300はまた、装置コントローラ302又は独立型の装置の一部となりうる、通信モジュール306及び/又はデータベース304を含みうる。
【0072】
装置コントローラ302は、一又は複数のコンピュータを実装するために使用されうる。また、プロセッサ装置、通信フレームワーク、メモリ、固定記憶装置、通信モジュール、入出力(I/O)装置、及びディスプレイを含みうる。通信フレームワークはバスシステムの形態を取りうる。プロセッサ装置は、メモリに読み込まれうるソフトウェアに対する命令を実行する役割を果たす。プロセッサ装置は、特定の実装に応じて、幾つかのプロセッサ、マルチプロセッサコア、又は他の何らかの種類のプロセッサであってもよい。メモリ及び固定記憶装置は記憶デバイスの例で、例えば、限定するものではないが、データ、機能的な形態のプログラムコードなどの情報、及び/又は他の適切な情報を一時的に及び/又は永続的に保存するように動作可能な、ハードウェア装置になりうる。これらの実施例で、メモリは、例えばランダムアクセスメモリ、又は任意の他の適切な揮発性或いは不揮発性の記憶デバイスであってもよい。固定記憶装置は、ハードドライブ、フラッシュメモリ、書換え型光ディスク、書換え可能磁気テープ、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。幾つかの実施例では、(エリア特性102を含みうる)データベース304は固定記憶装置に保存される。装置コントローラ302の入出力装置は、他の装置との間でのデータの入出力に使用されうる。例えば、入出力装置は、キーボード、マウス、及び/又は他の任意の好適な入力装置を通じて、ユーザ入力のための接続を提供しうる。
【0073】
移動式除染装置300への命令、又は、より具体的に、装置コントローラ302、オペレーティングシステム、アプリケーション及び/又はプログラムなどは、通信フレームワークを介してプロセッサ装置と通信を行う記憶デバイスに配置されうる。種々の実施形態の処理は、メモリなどに配置されうるコンピュータ実装命令を使用して、プロセッサ装置によって実施されうる。これらの命令は、プロセッサ装置内のプロセッサによって読み取られ実行されうる、プログラムコード、コンピュータ使用可能プログラムコード、又はコンピュータ可読プログラムコードと呼ばれる。種々の実施形態のプログラムコードは、メモリ又は固定記憶装置などの種々の物理的な記憶媒体、又はコンピュータ可読記憶媒体上に具現化されうる。プログラムコードは、選択的に着脱可能なコンピュータ可読媒体上に機能的な形態で配置され、かつ、プロセッサ装置による実行のために、装置コントローラに読込まれるか、又は送信されうる。これらの例示的な実施例では、コンピュータ可読記憶媒体は、プログラムコードを伝搬させるか又は送信する媒体というよりはむしろ、プログラムコードを記憶するために使用される物理的な又は有形の記憶デバイスである。
【0074】
代替的には、プログラムコードは、コンピュータ可読信号媒体を使用して、装置コントローラ302に送信されうる。コンピュータ可動信号媒体は、例えば、プログラムコードを含む伝播データ信号でありうる。例えば、コンピュータ可読信号媒体は、電磁信号、光信号、及び/又は他の任意の適切な種類の信号でありうる。これらの信号は、無線通信リンク、光ファイバケーブル、同軸ケーブル、有線などの通信リンク、及び/又は他の任意の適切な種類の通信リンクによって伝送されうる。
【0075】
図3Cは、幾つかの実施例に従って、移動式除染装置300の様々なコンポーネントの中での情報の流れの概略図である。センサ328などの入力コンポーネントは、エリア特性102を含む情報を装置コントローラ302に提供する。例えば、生物学センサ328a及び化学センサ328bは、エリア100内の汚染物質の検出に使用されてもよく、検出した汚染物質に関する情報(エリア特性102)を装置コントローラ302に提供する。温度センサ328c及び湿度センサ328dはそれぞれ、エリア100内の温度と湿度を測定するために使用されうる。カメラ328eは、エリア内での、及び/又移動式除染装置300に対する様々な表面100の向きを決定するため、エリア100の画像を撮影してもよい。
【0076】
装置コントローラ302は、通信モジュール306及び/又はデータベース304から情報を受信する。データベース304は、図2Aにエリア情報として示したエリア100の一又は複数の特性の少なくとも一部を保存するために使用可能である。換言するならば、エリア特性102の少なくとも一部は、移動式除染装置300に局所的に保存される。このような特性の一例がエリアレイアウトである。付加的な特性は、移動式除染装置300に送信されうる、及び/又は移動式除染装置300によって取得されうる。通信モジュール306は、遠隔装置210及び/又は他の移動式除染装置300などの他の装置と情報(エリア特性102及び/又は散布パラメータ305)を交換するために使用される。
【0077】
装置コントローラ302は、通信モジュール306及び/又はデータベース304と共に、1つのコンピュータシステムに統合されうる。コンピュータシステムの様々な実施例及び特徴は、図3Cを参照して以下に提示される。
【0078】
装置コントローラ302が散布パラメータ305を決定すると、以下で更に説明されるように、これらのパラメータは、エアロゾル散布ノズル322及びエアロゾル配向ファン324など、移動式除染装置300の様々なコポーネントを制御するために使用される。
【0079】
本開示は下記の条項も含むが、これらの条項は、特許請求の範囲と混同すべきではない。
【0080】
条項1. エリアを除染するための方法であって、前記方法は、
エアロゾル散布ノズル(322)とエアロゾル配向ファン(324)を備える移動式除染装置(300)を前記エリア(100)内に配置すること、
エリア特性(102)に基づいて、前記移動式除染装置(300)のエアロゾル散布パラメータを決定すること、
前記エアロゾル散布ノズル(322)を使用して、前記エアロゾル散布パラメータ(305)に従って、除染剤飛沫(317)を含むエアロゾルの形態で散布される除染剤(315)を前記エリア(100)内に散布すること、及び、
エアロゾル配向ファン(324)を使用して、前記エアロゾル散布パラメータ(305)に従って、前記除染剤飛沫(317)を前記エリア(100)内の表面に向けること
を含む方法。
【0081】
条項2. 前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定することは、除染剤特性に基づいて更に実行される、条項1に記載の方法。
【0082】
条項3. 前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定することは、湿度、温度、汚染の種類、及び前記エリア内の前記表面(110)の向きのうちの少なくとも1つを含むエリア特性(102)を取得することを含む、条項1又は2に記載の方法。
【0083】
条項4. 前記エリア特性(102)は、前記移動式除染装置(300)のセンサ(328)を使用して取得される、条項3に記載の方法。
【0084】
条項5. 前記エリア特性(102)は、前記移動式除染装置(300)のデータベース(304)に保存される、条項3又は4に記載の方法。
【0085】
条項6. 前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定することは更に、前記エリア特性(102)を設定範囲内に変更することを含む、条項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0086】
条項7. 前記エリア特性(102)を変更することは、遠隔装置(210)を前記移動式除染装置(300)の外部で操作することを含む、条項6に記載の方法。
【0087】
条項8. 前記エリア特性(102)を変更することは更に、前記移動式除染装置(300)から前記遠隔装置(210)へ制御命令を送信することを含む、条項7に記載の方法。
【0088】
条項9. 前記遠隔装置(210)は、前記エリア(100)の加熱換気空調(HVAC)装置である、条項8又は9に記載の方法。
【0089】
条項10. 前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定することは、前記移動式除染装置(300)の装置コントローラ(302)を使用して実行される、条項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
条項11. 前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定することは、前記移動式除染装置(300)から遠隔的に実行されて、前記移動式除染装置(300)に送信される、条項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
条項12. 前記エリア(100)内で前記移動式除染装置(300)を移動することを更に含む、条項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【0092】
条項13. 前記エリア(100)内で前記移動式除染装置(300)を移動することは、前記除染剤(216)の散布中に実行される、条項12に記載の方法。
【0093】
条項14. 前記エリア内で前記移動式除染装置(300)を移動することは、前記エリア特性(102)に基づいて自動的に実行される、条項12又は13に記載の方法。
【0094】
条項15. 前記エアロゾル散布パラメータ(305)を変更することを更に含む、条項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【0095】
条項16. 前記エアロゾル散布パラメータ(305)を変更することは、
・前記エリアに対する前記エアロゾル散布ノズル(322)の向き
・前記エリアに対する前記エアロゾル配向ファン(324)の向き
・ヒーターの出力、ファン速度、又は散布速度
のうちの一又は複数を変更することを含む、条項15に記載の方法。
【0096】
条項17. 前記エアロゾル散布パラメータ(305)を変更することは、前記エアロゾル散布ノズル(322)の向きを変更すること、及び前記エアロゾル配向ファン(324)の向きを変更することを共に含む、条項16に記載の方法。
【0097】
条項18. 前記エアロゾル散布ノズル(322)の向き、及び前記エアロゾル配向ファン(324)の向きを共に変更することは、前記エリア(100)内の前記移動式除染装置(300)を移動することを含む、条項17に記載の方法。
【0098】
条項19. 前記エアロゾル散布ノズル(322)の向き、及び前記エアロゾル配向ファン(324)の向きを共に変更することは、前記移動式除染装置(300)のベース部分(310)に対する前記移動式除染装置(300)のヘッド部分の向きを変更することを含み、前記ヘッド部分(320)はエアロゾル散布ノズル(322)と前記エアロゾル配向ファン(324)を備える、条項17又は18に記載の方法。
【0099】
条項20. 前記ベース部分(310)に対して前記ヘッド部分(320)の向きを変えることは、前記ベース部分(310)に対して前記ヘッド部分(320)を引き上げること、又は前記ベース部分(310)に対して前記ヘッド部分(320)を回転することを含む、条項19に記載の方法。
【0100】
条項21. 前記除染剤飛沫(317)を前記エリア(100)内の前記表面に向けることは、前記エアロゾル配向ファン(324)を使用して、前記除染剤飛沫(317)の周囲に乱気流を形成することを含む、条項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【0101】
条項22. 前記エリア(100)内に前記除染剤(315)を散布することと、前記除染剤飛沫(317)を前記エリア(100)の表面に向けることとは時間的に重なる、条項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【0102】
条項23. 前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定することは、前記エリア(100)内の前記表面(110)の向きに基づいて、前記エアロゾル散布ノズル(322)又は前記エアロゾル配向ファン(324)のうちの少なくとも1つの向きを決定することを含む、条項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【0103】
条項24. 前記エアロゾル散布パラメータ(305)を決定することは、前記エリア(100)内の前記表面(110)の向きに基づいて、前記エアロゾル散布ノズル(322)と前記エアロゾル配向ファン(324)の両方の向きを決定することを含む、条項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
条項25. 前記移動式除染装置(300)のカメラ(328e)を使用して、又は前記移動式除染装置(300)のデータベース(304)から、前記エリア(100)内の前記表面(110)の前記向きを取得することを更に含む、条項23又は24に記載の方法。
【0105】
条項26. 前記エアロゾル散布パラメータ(305)は、エアロゾル配向ファン(324)によって配向された空気の温度傾斜プロファイルを含む、条項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【0106】
条項27. 前記温度傾斜プロファイルは直線的である、条項26に記載の方法。
【0107】
条項28. 前記エリア(100)内に前記除染剤(315)を散布している間に、前記移動式除染装置(300)の前記除染剤(315)を供給することを更に含む、条項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【0108】
条項29. 前記エリア(100)は航空機の客室である、条項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
条項30. エリア(100)を除染するための移動式除染装置(300)であって、
前記エリア(100)の周辺で前記移動式除染装置(300)を移動するように動作可能な移動モジュール(312)を備えるベース部分(310)と、
前記ベース部分(310)に動作可能に連結されたヘッド部分(320)と、
前記エリア(100)内で除染剤(315)を除染剤飛沫(317)を含むエアロゾルの形態で散布するように動作可能なエアロゾル散布ノズル(322)と、
前記除染剤飛沫(317)を前記エリア(100)の表面(110)に向けるように動作可能なエアロゾル配向ファン(324)と
を備える移動式除染装置(300)。
【0110】
条項31. エリア特性に基づいてエアロゾル散布パラメータ(305)を決定し、前記エアロゾル散布ノズル(322)、前記エアロゾル配向ファン(324)、及び前記移動モジュール(312)の作業を制御するように動作可能な装置コントローラ(302)を更に備える、条項30に記載の移動式除染装置。
【0111】
条項32. 前記エリア特性(102)の少なくとも一部を含むデータベース(304)を更に含む、条項31に記載の移動式除染装置。
【0112】
条項33. 生物学センサ(328a)、化学センサ(328b)、温度センサ(328c)、湿度センサ(328d)、及びカメラ(328e)のうちの一又は複数からなる群から選択されるセンサ(328)を更に含み、前記センサ(328)は前記エリア特性を取得し、前記エリア特性(102)を前記装置コントローラ(302)へ送信するように動作可能である、条項32又は33に記載の移動式除染装置。
【0113】
条項34. 前記移動モジュール(312)は、前記エリア(100)から取得された前記エリア特性(102)に基づいて、前記装置コントローラ(302)によって制御可能である、条項31から33のいずれか一項に記載の移動式除染装置。
【0114】
条項35. 前記エアロゾル散布ノズル(322)及び前記エアロゾル配向ファン(324)は、少なくとも前記ベース部分(310)に対して可動である、条項30から34のいずれか一項に記載の移動式除染装置。
【0115】
条項36. 前記エアロゾル散布ノズル(322)及び前記エアロゾル配向ファン(324)は、前記移動式除染装置(300)の中心軸に対して枢動可能な、条項35に記載の移動式除染装置。
【0116】
条項37. 前記エアロゾル散布ノズル(322)及び前記エアロゾル配向ファン(324)は、前記移動式除染装置(300)の中心軸の周りに回転可能な、条項35に記載の移動式除染装置。
【0117】
条項38. 前記エアロゾル散布ノズル(322)及び前記エアロゾル配向ファン(324)は、前記ヘッド部分(320)の上に位置決めされる、条項25から37のいずれか一項に記載の移動式除染装置。
【0118】
条項39. 前記エアロゾル散布ノズル(322)及び前記エアロゾル配向ファン(324)は、少なくとも前記ヘッド部分(320)に対して可動である、条項38に記載の移動式除染装置。
【0119】
条項40. 前記ヘッド部分(320)は前記ベース部分(310)に対して引き上げ可能である、条項30から39のいずれか一項に記載の移動式除染装置。
【0120】
条項41. 前記ヘッド部分(320)は前記ベース部分(310)に対して回転するように動作可能である、条項30から39のいずれか一項に記載の移動式除染装置。
【0121】
条項42. 電力線、送気管、通信線、及び除染剤供給管のうちの一又は複数からなる群から選択されるテザー(219)を接続するためのコネクタ(319)を更に備える、条項30から41のいずれか一項に記載の移動式除染装置。
【0122】
条項43. 除染剤貯蔵モジュール(314)を更に備える、条項30から42のいずれか一項に記載の移動式除染装置。
【0123】
条項44. 前記エリア(100)のシステムと通信するための通信モジュール(306)を更に備える、条項30から43のいずれか一項に記載の移動式除染装置。
【0124】
条項45. 条項1から29のいずれか一項による方法で使用するための、条項30から44のいずれか一項に記載の移動式除染装置。
【0125】
条項46. 条項1から29のいずれか一項に記載の移動式除染装置を備える航空機。
【0126】
除染方法
図4は、本開示による、エリア100の除染のための方法400に対応する処理フロー図である。方法400は、図4のブロック410で概略的に示したように、エリア100に移動式除染装置300を配置することを含みうる。移動式除染装置300は、少なくとも除染が完了するまで、オペレータをエリア100の潜在的な汚染物質に曝すことなく、エリア100に自律的に配置するための移動モジュール312を使用しうる。移動式除染装置300は、配置する前に航空機のパレットコンテナ(PC)に保存されうる。代替的に、移動式除染装置300は除染のため航空機に持ち込まれてもよい。
【0127】
方法400は好ましくは、図4のブロック420で概略的に示したように、移動式除染装置300のためのエアロゾル散布パラメータ305を決定することを含む。エアロゾル散布パラメータ305は、エリア特性102に基づいて決定されうる。効果的な除染を実現するため、様々な異なるエリア特性102が考慮される。エリア特性102の幾つかの例には、湿度、温度、汚染物質の種類、エリア100内の表面110の向きなどが含まれる。異なる特性を有するエリアは、異なるエアロゾル散布パラメータを用いて除染される。更には、エリア特性102はエリア100の部分によって異なることがある。エリアの遠く離れた表面にアクセスするため(例えば、飛沫317がこのような表面に達する前に沈降するのを防ぐため)、より小さな除染剤飛沫317、及び/又はより速い気流が使用されうる。エアロゾル散布パラメータ305の決定時には、エリア特性102は総合的に考慮されうる。例えば、除染剤315の選択には、湿度、温度、及び汚染物質の種類の組み合わせが使用される。
【0128】
作業420でのエアロゾル散布パラメータ305の決定はまた、除染剤315、又は、より具体的に、選択された除染剤315の一又は複数の特性に基づいて実行されうる。除染剤特性の幾つかの例には、密度、表面張力、組成などが含まれる。これらの特性は典型的に、エリア100での除染剤315の散布に影響を与える。例えば、除染剤315の種類を別のものに切り換えると、エアロゾル散布パラメータ305は効果的に変化する。この実施例では、エアロゾル散布パラメータ305は作業420において決定される。
【0129】
作業420でのエアロゾル散布パラメータ305の決定は、移動式除染装置300の装置コントローラ302を用いて実行される。更に、作業420の幾つか又はすべての態様は、移動式除染装置300から遠隔的に実行され、移動式除染装置300に送信されうる(例えば、エアロゾル散布パラメータ305をすべて揃える)。例えば、エアロゾル散布パラメータ305の最初の一組は移動式除染装置300に送信され、更に、現場で得られたエリア100の特性102に基づいて、移動式除染装置300で修正されうる。
【0130】
作業420でのエアロゾル散布パラメータ305の決定は、図4のブロック422で概略的に示したように、エリア特性102を取得することを含む。エリア特性102は、移動式除染装置300のセンサ328を使用して取得されてもよく、或いは移動式除染装置300に送信されてもよい。センサ328を使用してエリア特性102を取得することにより、エリア100に関する一部の情報が未知であっても、エリア100に移動式除染装置300を配置し、効果的な除染を実行することが可能になる。例えば、エリア100の温度は最初は未知であっても、除染中に変化しうる。しかも、温度は除染の効果に大きな影響を及ぼす。温度は、移動式除染装置300によって、又はより具体的には、移動式除染装置300のセンサによって現場でモニタされる。作業422の別の実施例は、移動式除染装置300のカメラを使用して、又は移動式除染装置300のデータベースから、エリア100の表面110の向きを取得することである。
【0131】
エリア100の一又は複数の汚染物質の提示は、作業422中に実行されうる。汚染物質の幾つかの例には、ウィルス、バクテリア、プリオン及び菌類などのターゲットとなる病原菌及び生物学的因子が含まれる。センサは、インフルエンザ、エボラウィルス、結核、出血熱、及び/又は他の何らかの病原菌の特定の株を識別するように構成されうる。作業422は、汚染物質の有無に加えて、これらの汚染物質の濃度及びその他の特性の検出を含みうる。作業422は移動式除染装置300上で実行されてもよく、或いは何らかの情報が遠隔装置210に送信されてもよい。
【0132】
作業422はオプションである。移動式除染装置300の作業に必要となるエリア100のすべての特性102は、移動式除染装置300(例えば、移動式除染装置300のデータベース304)に保存されてもよく、及び/又は(例えば、遠隔装置210から)移動式除染装置300に送信されてもよい。例えば、移動式除染装置300のデータベース304は、エリアのレイアウト、表面の状態、湿度や温度などの予測される環境条件と共に、事前に読み込まれていてもよい。一部の特性102は、移動式除染装置300がエリア100に配置された後に(例えば、センサ328を使用して)取得されうるが、一方、付加的な特性102は移動式除染装置300に保存されてもよく、及び/又は移動式除染装置300に送信されてもよい。更には、移動式除染装置300がエリア100に配置された後に(例えば、センサ328を使用して)、すべての特性102が取得されてもよい。換言するならば、移動式除染装置300は、配置の時点ではエリア100に関する情報を何も有していないことがあり、このような情報は配置後も移動式除染装置300には送信されない。
【0133】
作業420は、表面110の向きに基づいて、エアロゾル散布ノズル322の向き、及び/又はエアロゾル配向ファン324の向きを決定することを含みうる。この向きの関係性は、すべての表面110が効果的な除染のための適切な量の除染剤315を確実に得られるように使用されうる。更に、この向きの関係性は、(例えば、移動式除染装置300に近接した)表面が、これらの表面に好ましくない影響を及ぼしうる過剰な量の除染剤315を得ることがないように保証する。
【0134】
作業420でのエアロゾル散布パラメータ305の決定は、図4のブロック424で概略的に示されているように、エリア100の一又は複数の特性102を変更することを含みうる。例えば、最初に取得した特性102が効果的な除染に適さないこともありうる。具体的な実施例として、エリア100の温度が除染剤315に対して低すぎるため、効果的に反応して汚染物質を中和することができないことがある。このような最初に取得した特性102は、作業424中に変更されることがありうる。上記の温度の例に戻ると、エリア100の温度は、作業410で移動式除染装置300を配置した後、また、作業440で除染剤を散布する前に高められてもよい。例えば、エアロゾル散布パラメータ305は、エアロゾル配向ファン324によって配向された空気の温度傾斜プロファイルを含みうる。温度傾斜プロファイルは直線的であってもよい。
【0135】
図4に示した作業は重なってもよい。例えば、作業424での特性の変更は、作業422でのこれらの特性の取得中に実行されてもよい。特に、エリア特性102は連続的にモニタされうる。特性102が一又は複数の許容しうる範囲内で変動する場合には、作業424はエリア特性102を許容しうる範囲内に戻すために実行されうる。特に、作業424はエリア特性102がモニタされている間に実行されてもよく、結果的に作業422と作業424は重なりうる。この実施例では、作業422は制御を作業424に戻すように行われうる。同一の実施例で、又は別の実施例で、作業440で除染剤315を散布中に、エリア特性102は変更が必要となることがありうる。例えば、除染剤の散布は(例えば、除染剤315の蒸発によって)環境の温度を低下させうる。効果的な除染を維持するためには、温度を上昇させる必要があり、エリア100を加熱する必要がある。(作業424中にエリア特性102を変化させる)この加熱は、(温度が依然として許容しうる範囲内にあると仮定して)除染剤315の散布を停止することなく実行されうる。
【0136】
一般的に、作業420中のエアロゾル散布パラメータの決定は(或いは、より具体的に、作業422中にこれらの特性を取得することは)、作業440で除染剤を散布している間に、繰り返し又は連続的に実行されうる。例えば、エアロゾル散布ノズル322及びエアロゾル配向ファン324の向きは、場合によっては、除染剤315の散布中に再評価及び変更が必要になることがある。別の実施例では、例えば、図5Aに概略的に示されているように、除染剤飛沫317はカメラ328eを使用して観測されうる。表面110上でのこの除染剤飛沫317の観測は、表面が飛沫317で(例えば、十分に、或いは十分ではないが)覆われていることを示している。更に、この観測は実際の除染プロセスを示すものとして使用されうる。例えば、除染は表面110の疎水性を変化させるため、除染剤飛沫317は除染状態に応じて、表面110上で異なる形状を有する。
【0137】
作業424での一又は複数の特性102の変更に戻ると、このような変更は移動式除染装置300の一又は複数のコンポーネントを使用して実行されうる。例えば、エアロゾル配向ファン324には、エリア100の温度を上げるため、作業424で使用されうるヒーター326を備えていてもよい。同じ実施例、或いは別の実施例では、図4のブロック426で概略的に示されているように、作業424は遠隔装置210を操作することを含む。遠隔装置210は移動式除染装置300の外部にある。具体的には、作業426は、移動式除染装置300から遠隔装置210へ制御命令を送ることを含みうる。遠隔装置210はこれらの制御命令に応答し、それ自体の作業を実行してエリア100の一又は複数の特性102を変更する。
【0138】
作業420中に決定されるエアロゾル散布パラメータ305は、エアロゾルの状態で散布するための除染剤315の特定、エリア100内の空気の温度、エリア100内の空気の湿度、エアロゾル散布ノズル322からの除染剤315の散布とエアロゾル配向ファン324ならの空気の吹き出しの相対的なタイミング、散布の持続時間など、のうちの少なくとも1つを含む。例えば、エアロゾル散布パラメータ305は、エリア100内の空気の相対湿度を約40%から80%の間、例えば約60%に規定しうる。上述のように、エアロゾル散布パラメータ305は、検出された汚染物質の種類によって異なりうる。更に、最初に決定したエアロゾル散布パラメータ305はその後変更されうる。
【0139】
作業420中に(エアロゾル散布パラメータ305の一部として)選択される除染剤315は、一又は複数の酸、及び/又は一又は複数の過酸化物を含みうる。例えば、除染剤315は過酸化水素を含みうる。除染剤315中の過酸化水素の濃度は、1wt%未満、場合によっては0.01wt%未満になりうる。過酸化水素は、華氏約100度から華氏約180度の間など、高い温度と組み合わせた場合には、このような低濃度でもなお効果を発揮しうる。幾つかの実施例では、除染剤315は酢酸を含む。酢酸の濃度は、1wt%未満、場合によっては0.2wt%未満となりうる。
【0140】
ユタ州オレムのSBIOMED LLCから市販されているSTERIPLEX(商標)HC溶液など、様々な処方済み除染剤315が使用されうる。STERIPLEX(商標)HC溶液は、0.03wt%の銀、19wt%のグリセロール、0.0004wt%のソルビトール、10wt%のエタノール、0.03wt%の過酸化水素、0.25wt%のペルオキシ酢酸、0.19wt%の酢酸、及び70wt%の水を含む。STERIPLEX(商標)HC溶液又は他の同様の溶液は、50wt%未満、30wt%未満、場合によっては20wt%未満の水で希釈されうる。幾つかの実施例では、除染剤315が供給され、移動式除染装置300で処方されてもよい。
【0141】
エリア100内の空気の温度は華氏約100度から華氏約180度であってよく、より具体的には華氏約120度から華氏約140度の間となりうる。検出された汚染物質に対する除染剤315の効率を高めるため、この温度は具体的に選択されうる。特定の温度を選択するための、或いはより一般的に、特定の温度プロフィールを選択するためのその他の検討事項は、航空機コンパートメントを通って流れる加熱空気の持続時間を最小限に抑えることと、決定された除染剤315の濃度を最小限に抑えることである。
【0142】
温度プロファイル502は、例えば、図5Bに示したように、除染プロセスの間に変更されうる。図5Bはまた、除染剤の濃度プロファイル504を示している。この状況では、エアロゾル散布パラメータ305は、変更のタイミング及び/又は温度傾斜プロファイルを含みうる。温度傾斜プロファイルは直線的である。例えば、菌胞子を成長させるには、最初に低めの温度が使用されうるが、菌胞子を殺菌するには、その後除染剤315と共に高めの温度が使用されうる。
【0143】
図4にブロック430で概略的に示したように、方法400は、移動式除染装置300のエアロゾル散布パラメータ305を変更することを含みうる。例えば、移動式除染装置300の現在の構成が、作業420中に決定された散布パラメータと異なる場合には、移動式除染装置300は、決定されたパラメータに従って再構成されうる。換言するならば、移動式除染装置300のエアロゾル散布パラメータ305の現在の変更が変更される。幾つかの実施例では、作業420が繰り返され、新しい散布パラメータ305が決定されるか、移動式除染装置300によって現在使用されているものとは異なるものになりうる。これらの実施例では、作業430も実行される。幾つかの実施例では、作業430は作業440と重なり、例えば、エアロゾル散布パラメータ305の変更は、除染剤315の散布中に実行される。
【0144】
作業430は、(エリア100に対する)エアロゾル散布ノズル322の向きを変えること、(エリア100に対する)エアロゾル配向ファン324の向きを変えること、ヒーター326の出力を変更すること、エアロゾル配向ファン324の速度を変更すること、除染剤315の散布速度を変更すること、異なる飛沫サイズを実現するため散布条件を変更すること、除染剤315の組成を変更すること、などを含みうる。例えば、移動式除染装置300がエリア100の1つの部分の除染を完了すると、別の部分の除染に進むため、エアロゾル散布ノズル322の向き、及び、幾つかの実施例では、エアロゾル配向ファン324の向きが(エリア100に対して)変更されうる。ファン324はノズルから除染される表面へ散布されるエアロゾルの配向を担っているため、移動式除染装置300はエアロゾル散布ノズル322の向きとエアロゾル配向ファン324の向きとの間の特定の関係を維持しうる。エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324のこの関係性(例えば、相対的な向き)は固定されうる。エアロゾル配向ファン324は具体的に、エアロゾル散布ノズル322によって生成された除染剤飛沫317の噴煙に向けられる。エアロゾル散布ノズル322に対する噴煙の位置が変化しない(例えば、除染剤315、除染剤315及び空気の流量が変化しない)場合には、エアロゾル散布ノズル322及びエアロゾル配向ファン324の向きは維持される。
【0145】
エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324の関係は変化することがありうる。例えば、エアロゾル散布ノズル322に対する除染剤飛沫317の噴煙の位置は変化することがあり、エアロゾル配向ファン324は噴煙の新しい位置に再配向することが必要になることがありうる。更に、エアロゾル配向ファン324は、噴煙を別の場所、例えば、新しい表面に向けるように変更されてもよい。
【0146】
エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324の向きを変更することは、移動式除染装置300のベース部分310に対してヘッド部分320の向きを変更することを含みうる。具体的には、ヘッド部分320はエアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324を含んでも(また、支持しても)よい。換言するならば、ヘッド部分320がベース部分310に対して(及び、エリア100に対して)その向きを変えるときには、これによって、エアロゾル散布ノズル322とエアロゾル配向ファン324もエリア100に対してその向きを変える。例えば、ヘッド部分320はベース部分310に対して引き上げられてもよく、及び/又は回転されてもよい。図1C及び図1Dに示したように、航空機の頭上コンパートメント(例えば、手荷物入れ)にアクセスするため、ヘッド部分320は引き上げられることがある。更に、除染剤飛沫317が迅速に沈降する場合には、及び/又は遠くの表面を除染する場合には(例えば、除染剤飛沫317が近傍の表面に沈降する前に遠方の表面に達することができるように)、ヘッド部分320は引き上げられてもよい。
【0147】
以下で更に説明されるように、エリア100内で移動式除染装置300を移動することによって、ベース部分310はエリア100に対してその向きを変えてもよい。これにより、エアロゾル散布ノズル322及びエアロゾル配向ファン324はエリア100に対してその向きを変えることができる。このように、幾つかの例では、作業460は作業430の一部とみなされる。しかしながら、エリア100内での移動式除染装置300の移動は、エアロゾル散布パラメータ305に関連していないこともあり、例えば、移動式除染装置300をエリア100に配置する、或いはエリア100から取り除くためのこともありうる。
【0148】
図4のブロック440で概略的に示したように、方法400は、エリア100内での除染剤315の散布に移行する。この作業は、エアロゾル散布パラメータ305に従って実行されうる。除染剤315は、移動式除染装置300のエアロゾル散布ノズル322を使用して、除染剤飛沫317として散布される。
【0149】
図4のブロック450で概略的に示したように、方法400は、除染剤飛沫317をエリア100内の表面110に向ける作業に移行する。エアロゾル配向ファン324は、除染剤飛沫317を運ぶ気流の生成によるこの作業に使用されてもよい。気流は乱流であってもよい。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、乱流は、例えば層流よりも効果的にエアロゾルの沈降を抑制すると考えられている。エアロゾル配向ファン324は、乱流を生成するように動作可能であってもよい。更には、エアロゾル配向ファン324は、気流が散布直後に、例えば、エアロゾル散布ノズル322から0.5メートル以内、或いは更に0.25メートル以内で除染剤飛沫317を捉えるように動作可能であってもよい。
【0150】
作業450はまた、外部の気流に関係するか、少なくとも外部の気流を考慮することがある。外部の気流はエリア100内に存在しうる気流で、遠隔装置によって生成されうるが、移動式除染装置300によって生成されることはない。換言するならば、エアロゾル配向ファン324は外部の気流には寄与しない。但し、移動式除染装置300は、除染剤飛沫317を表面110に向けるため、エアロゾル配向ファン324によって生成される何らかの気流に加えて、このような外部の気流を利用してもよい。外部の気流は、エリア100内に存在する場合、エリア特性102の一部として扱われてもよい。
【0151】
作業450でエリア100内の除染剤飛沫317の向きを変えると、一部のエリア特性102の変化を引き起こすことがある。例えば、除染剤飛沫317の向きを変えると、エリア100内の湿度、温度、気流、及び他の特性が変化しうる。このように、作業424は、作業450の一部とみなされうる。エリア100内の除染剤飛沫317の向きを変えると一部のエリア特性102が変化しうることに気付くと、作業422中にエリア特性102の取得は繰り返し行われてもよく、或いはエリア特性102のこのような変化を連続的に取得されてもよく、必要であれば、エリア特性102は好ましい範囲内に戻るように変更してもよく、或いは変化に応じて新しいエアロゾル散布パラメータを決定してもよい。
【0152】
作業440でのエリア100内の除染剤315の散布は、作業450で除染剤飛沫317を表面110に向けることと重なってもよい。具体的には、除染剤315がエアロゾル散布ノズル322によって散布されているときには、エアロゾル配向ファン324は常に動作していてよい。少なくとも除染剤315の散布の一部は、エアロゾル配向ファン324が動作していないときに行われてもよい。例えば、移動式除染装置300に近い表面の除染は、作業450なしで行われてもよい。しかしながら、エリア100の少なくとも一部の表面は、移動式除染装置300から離れているため、或いは、エアロゾル散布ノズル322の散布方向に対する位置によって、作業450の恩恵に浴する。
【0153】
図4のブロック460で概略的に示されているように、方法400は更に、エリア100内で移動式除染装置300を移動することを含む。この移動機能により、移動式除染装置300はより大きなエリアを除染すること、及び/又は、エアロゾル散布ノズル322及びエアロゾル配向ファン324をエリア100の表面110に向けることができる。エリア100での移動式除染装置300の移動は作業460中に行われ、一方、除染剤の散布は作業440中に行われる。
【0154】
作業460におけるエリア100内での移動式除染装置300の移動は、エリア特性102に基づいて自動的に実行されうる。例えば、移動式除染装置300は、例えば、オペレータからなど、外部の支援なしで移動式除染装置300が移動できるようにする移動モジュール312を含む。この特徴により、エリア100内の潜在的な汚染物質及び/又は除染剤に人が曝されるのを回避することができる。
【0155】
図4のブロック435に示したように、方法400は更に、圧搾空気、除染剤、電力、及び/又は移動式除染装置300への制御命令を提供することを含みうる。例えば、除染剤315は移動式除染装置300に供給されうる。より具体的には、除染剤315は、作業440でエリア100内に除染剤315を散布している間に供給されてもよい。この除染剤のオンデマンド供給は、ローカルな保存の必要性をなくすことによって、移動式除染装置300の重量を効果的に軽減する。除染剤315は、エリア100内に延在するテザー219を使用して、移動式除染装置300に供給されてもよい。テザー219により、移動式除染装置300はエリア100内を移動することができる。幾つかの実施例では、テザー219は、除染剤315の供給に加えて、或いはその代りに、圧搾空気、電力、及び/又は制御命令を提供するために使用されうる。制御命令は移動式除染装置300に無線で(テザー219なしで)適用されてもよい。
【0156】
除染剤315が移動式除染装置300にオンデマンドで供給されない場合には、除染剤315は移動式除染装置300上の除染剤貯蔵モジュール314に保存されてもよい。エリア100に対して必要とされる除染剤貯蔵モジュール314のサイズ及び除染剤315の量に応じて、移動式除染装置300は、除染剤貯蔵モジュール314に除染剤315が追加される充填ステーションに戻るように動作可能である。
【0157】
結論
前述の概念は、理解の明確化を目的としてやや詳細に説明されているが、上記の開示内容を読むと、付随する特許請求の範囲内で、ある一定の変更及び修正が実践されうることは明白であろう。処理、システム、及び装置の実装には多数の代替的な方法があることに、留意されたい。したがって、本書の実施例は例示的なものであり、限定的なものではないとみなされるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B