(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】積層体、および、当該積層体を備えた貼付剤
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20240619BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240619BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20240619BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B32B7/06
A61K9/70 401
B32B27/12
B32B27/18 F
(21)【出願番号】P 2019112031
(22)【出願日】2019-06-17
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅村 拓登
(72)【発明者】
【氏名】小路 喜朗
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-029932(JP,A)
【文献】特開平02-250824(JP,A)
【文献】特開平05-246459(JP,A)
【文献】特開2007-001584(JP,A)
【文献】特開平06-340524(JP,A)
【文献】特開昭62-153214(JP,A)
【文献】実開昭63-028175(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
A61K 9/00- 9/72、47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムと繊維シートの積層体であって、前記フィルムの周縁部分における少なくとも一部と、前記繊維シートの周縁部分における少なくとも一部が一体化している、積層体と、前記積層体における、前記フィルムと前記繊維シートの間に備えられた粘着剤が混合された機能性成分とのみで構成されており、前記フィルムを分離して使用する、貼付剤
であって、
前記一体化している部分は、前記フィルムの周縁部分における少なくとも一部と、前記繊維シートの周縁部分における少なくとも一部とが、溶融することでのみ一体化している部分であって、
前記一体化している部分における前記フィルムと前記繊維シートの剥離強度は1.8N/3cm以上14.2N/3cm以下である、
貼付剤。
【請求項2】
前記フィルムの周縁部分全体が前記繊維シートと一体化している、および/または、前記繊維シートの周縁部分全体が前記フィルムと一体化している、請求項1に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、性能に優れた産業資材を提供し得る積層体、および、当該積層体を備えた貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フィルムと繊維シートの積層体(以降、積層体と省略し称することがある)は様々な産業資材用途に使用されている。具体例として、出願人はこれまでに積層体を、接着芯地(特開昭62-212487、:特許文献1)、自動車用成形天井材(特開昭63-028640:特許文献2)、貼付剤用支持体(特開2005-162638:特許文献3)などに使用することを検討してきた。
なお、貼付剤とは、機能性成分を含む湿布薬やプラスター剤、冷却シート、保湿や美白を目的とするシート状パックなどを含む。
【0003】
近年では積層体を、例えば特開2005-111159(特許文献4)などに開示されているような、含水貼付剤の構成部材に使用することが検討されている。
特許文献4には、繊維シートなどの分離層と、フィルムなどのライナーの積層体を備え、分離層とライナーの間に粘着層を備えてなる含水貼付剤が開示されている。そして、このような含水貼付剤は、含水貼付剤からライナーを分離し露出させた粘着層の主面を、貼付対象となる皮膚に貼付して使用される。
なお、特許文献4には含水貼付剤の具体例(
図1、Cが粘着層、Dがライナーを表す)として、粘着層の周囲全体が外気に曝されている態様(
図1の(a)、あるいは、
図1の(b))が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-212487号公報
【文献】特開昭63-028640号公報
【文献】特開2005-162638号公報
【文献】特開2005-111159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願出願人は上述した従来技術を参考として、より性能に優れた産業資材を提供し得る、フィルムと繊維シートの積層体を提供するため検討を続けた。
一例として、特許文献4に開示されているような積層体(貼付剤の構成部材としても使用可能であり、ライナーの役割を担う層を備えてなる積層体)について、検討した。
本検討の結果、ただフィルムと繊維シートを積層しただけの従来技術にかかる積層体を用いて、特許文献4に開示されている構成を備える貼付剤を調製した場合、機能性成分を備える層(例えば、特許文献4でいう粘着層)の周囲全体が外気に曝されているため、
・周囲全体から当該層中の水分や機能性薬剤が放出された場合には、当該層の性能が大きく低下する恐れがあるという問題、また、
・当該層の周囲全体にホコリなどが付着し易く、当該層が汚染される恐れがあるという問題、
が発生するものであり、性能に優れる貼付剤を提供するのに限界を有するものであった。
このように、従来技術にかかる積層体は、性能に優れた産業資材を提供するのに限界を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる第一の発明は「フィルムと繊維シートの積層体であって、前記フィルムの周縁部分における少なくとも一部と、前記繊維シートの周縁部分における少なくとも一部が一体化している、積層体と、前記積層体における、前記フィルムと前記繊維シートの間に備えられた粘着剤が混合された機能性成分とのみで構成されており、前記フィルムを分離して使用する、貼付剤であって、
前記一体化している部分は、前記フィルムの周縁部分における少なくとも一部と、前記繊維シートの周縁部分における少なくとも一部とが、溶融することでのみ一体化している部分であって、
前記一体化している部分における前記フィルムと前記繊維シートの剥離強度は1.8N/3cm以上14.2N/3cm以下である、
貼付剤。」である。
【0007】
また、本発明にかかる第二の発明は「前記フィルムの周縁部分全体が前記繊維シートと一体化している、および/または、前記繊維シートの周縁部分全体が前記フィルムと一体化している、請求項1に記載の貼付剤。」である。
【発明の効果】
【0010】
本願出願人は検討を続けた結果、「フィルムと繊維シートの積層体であって、前記フィルムの周縁部分における少なくとも一部と、前記繊維シートの周縁部分における少なくとも一部が一体化」していることによって、上述した問題を解決した。
つまり、積層体の周縁部分における少なくとも一部において、フィルムと繊維シートが一体化しているため、例えば、本構成を満足する積層体におけるフィルムと繊維シートの間に機能性成分の層を設け貼付剤を調製した場合であっても、調製された貼付剤における当該一体化している部分(端部の一部)では、機能性成分の層の周囲部分が外気に曝されていない。その結果、当該層の性能が大きく低下する恐れや、当該層が汚染される恐れを低減できる。
そのため、本発明にかかる第一の発明は、性能に優れた産業資材を提供可能な積層体である。
【0011】
また、本発明にかかる第二の発明では、前記フィルムの周縁部分全体が前記繊維シートと一体化している、および/または、前記繊維シートの周縁部分全体が前記フィルムと一体化している。
そのため、本発明にかかる第二の発明は、上述した機能がより効果的に発揮されることで、より性能に優れた産業資材を提供可能な積層体である。
【0012】
更に、本願出願人は、当該一体化している部分におけるフィルムと繊維シートの剥離強度が29.0N/3cm以上であると、フィルムと繊維シートを手で分離するのが困難となることを見出した。
一方、本願発明の構成を満足する積層体は、当該一体化している部分におけるフィルムと繊維シートの剥離強度が29.0N/3cm未満であることで、フィルムと繊維シートを手で容易に分離できる。
そのため、本発明にかかる第三の発明は、より性能に優れた産業資材を提供可能な積層体である。
【0013】
そして、本発明にかかる第四の発明は、積層体を構成するフィルムと繊維シートの間に機能性成分を備えてなる貼付剤である。
そのため、本発明にかかる第四の発明は、機能性成分を備える層の性能が大きく低下する恐れや、当該層が汚染される恐れを低減できるという機能を備えた貼付剤である。そして、フィルムと繊維シートを手で容易に分離できるという機能を備えた貼付剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】特許文献4に開示されている含水貼付剤の具体例について、その厚さ方向における断面構造を表した、模式断面図。
【
図2】本発明の構成を備えた積層体における周縁部分を含む一部分の、その厚さ方向における断面構造を表した、模式断面図。
【
図3】本発明の構成を備えた積層体をフィルム側からみた、模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。
【0016】
本発明の積層体(100)について、主として、積層体(100)の断面構造を表した
図2および積層体(100)をフィルム(11)側からみた態様を表した
図3を用いて説明する。なお、
図2では図面における理解をし易くするため、フィルム(11)と繊維シート(12)の間に空隙が存在する状態を図示しており、当該空隙をブロックパターン様のハッチングで図示している。
なお、
図2および
図3では図示しないが、積層体(100)におけるフィルム(11)と繊維シート(12)の間(ブロックパターン様のハッチングで図示している空隙など)に機能性成分を設けることで、貼付剤を調製できる。
【0017】
積層体(100)は
図2に図示するように、フィルム(11)と繊維シート(12)を備えており、互いの主面を向き合わせ構成されている。そして、フィルムの周縁部分(13)の少なくとも一部と、繊維シートの周縁部分(14)の少なくとも一部同士が一体化している。なお、周縁部分とは、フィルム(11)ならびに繊維シート(12)の各々を主面から見た際の、外周を含む周縁(外周周縁)を指す。具体的には、当該外周から主面中央へ向かう6mmまでの範囲を指す。また、
図2および
図3では、フィルムの周縁部分(13)における少なくとも一部と、前記繊維シートの周縁部分(14)における少なくとも一部が一体化している部分(以降、一体化している部分と称することがある)を、番号15で表している。このことから、一体化している部分(15)は少なくとも、外周から主面中央へ向かう6mmまでの範囲に存在している。
【0018】
なお、フィルム(11)ならびに繊維シート(12)の各々の外周周縁に、一体化している部分(15)の存在していない箇所を有する積層体(100)であってもよい。このような態様の積層体(100)であると、当該箇所を指でつまみフィルム(11)と繊維シート(12)を分離し易くなり好ましい。
【0019】
図3では積層体(100)をフィルム側からみた模式平面図を表している。なお、
図3に図示するように、積層体(100)におけるフィルム(11)および繊維シート(12)の外周形状が同一である場合には、
図3のように積層体(100)をフィルム(11)側から見ても、フィルム(11)に遮られ繊維シート(12)を直接見ることはできない。
【0020】
図3では一体化している部分(15)を斜線で表している。
図3(a)には、積層体(100)における対向する二辺全体に一体化している部分(15)が連続的に存在する積層体(100)の例を、
図3(b)には、積層体(100)における外周全体に一体化している部分(15)が連続的に存在する積層体(100)の例を、
図3(c)には、積層体(100)における外周全体に一体化している部分(15)が断続的に存在する積層体(100)の例を図示している。
【0021】
本発明にかかる積層体(100)は、周縁部分における少なくとも一部において、フィルム(11)と繊維シート(12)が一体化している。そのため、例えば、本構成を満足する積層体(100)における、フィルム(11)と繊維シート(12)の間(
図2において、ブロックパターン様のハッチングが施されている部分)に機能性成分の層を設け貼付剤を調製した場合、調製された貼付剤の当該一体化している部分(15)では、機能性成分の層の周囲部分が外気に曝されない。
【0022】
特に、フィルムの周縁部分(13)全体が繊維シート(12、繊維シートの周縁部分における少なくとも一部)と一体化している場合、および/または、繊維シートの周縁部分(14)全体がフィルム(11、フィルムの周縁部分における少なくとも一部)と一体化している場合、貼付剤の周囲部分において機能性成分の層は外気に曝されない。
【0023】
また、本願出願人は、剥離強度が29.0N/3cm以上の積層体(100)から、フィルム(11)を分離すると、分離した後の繊維シート(12)にフィルム(11)が残留していることを見出した。そして、フィルム(11)が残留している繊維シート(12)を例えば貼付剤に使用した場合、残留しているフィルム(11)の存在によって貼付感が劣り貼付感に優れる貼付剤を提供できなくなる恐れがあった。
一方、一体化している部分(15)におけるフィルム(11)と繊維シート(12)の剥離強度が29.0N/3cm未満の積層体(100)であることによって、分離した後の繊維シート(12)にフィルム(11)が残留するのを防止できる積層体(100)を提供できることを見出した。
そのため、本発明の積層体(100)によって、性能に優れた産業資材を提供できる。
【0024】
本発明でいうフィルム(11)とは、金属および/またはポリマーのシート状構造体を指す。
フィルムを構成可能なポリマーの種類は適宜選択できるが、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知のポリマーを採用できる。
なお、これらのポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、またポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、またポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでもよい。
更には、複数のポリマーを備えていても良く、複数のポリマーを混ぜ合わせた混合ポリマーを備えていてもよい。
【0025】
これら例示したポリマーのうち、超音波溶着やヒートシールあるいは溶断することにより繊維シート(12)と溶融一体化し易いことから熱可塑性のポリマーで構成されたフィルム(11)であるのが好ましい。特に、機能性成分などの薬剤を吸着し難い点などの特徴を有していることからポリプロピレン系樹脂あるいはポリエステル系樹脂のみで構成されたフィルム(11)であるのが好ましい。
【0026】
なお、複数種類のシート状構造体を積層してなる積層フィルムであってもよい。
また、フィルム(11)は機能性成分を含んでいてもよい。機能性成分の種類は求められる機能によって適宜選択できるため、限定されるものではないが、例えば、抗菌剤や殺菌剤、抗ウイルス剤、抗カビ剤、触媒(例えば、酸化チタンや二酸化マンガンあるいは白金担持アルミナなど)、調湿剤(例えば、シリカゲルやシリカマイクロカプセルなど)、活性炭やカーボンブラックなどの脱臭剤、顔料、芳香剤、陽イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂などを挙げることができる。
【0027】
フィルム(11)の目付や厚さなどの諸構成や諸物性は適宜調整できるものであるが、目付は5~100g/m2であることができ、10~90g/m2であることができ、15~80g/m2であることができる。そして、厚さは0.05~1.5mmであることができ、0.1~1mmであることができ、0.2~0.8mmであることができる。
なお、本発明でいう「目付」とは主面における面積1m2あたりの質量をいい、主面とは面積が最も広い面をいう。また、本発明でいう「厚さ」は、高精度デジタル測長機(株式会社ミツトヨ社製ライトマチック(登録商標))により計測した値であり、具体的には測定対象物の主面に対して5cm2の荷重領域に100gfの荷重をかけた際の前記領域における厚さの値をいう。
【0028】
また、フィルム(11)の強度は適宜調整できるが、フィルム(11)と繊維シート(12)を手で分離する際に、フィルム(11)に破断や構造の大きな変化が発生し難い強度を有しているのが好ましい。
【0029】
フィルム(11)の大きさは、積層体(100)の用途によって適宜選択するものであるが、積層体(100)を一方の主面側から見た際に、繊維シート(12)と同じであることができる。あるいは、フィルム(11)の大きさは、繊維シート(12)よりも大きいまたは小さくてもよい。
【0030】
フィルム(11)は開孔を有していても開孔を有していなくともよいが、貼付剤用途においては、機能性成分の層に含まれる水分や機能性成分がフィルム(11)を通過し難く、機能性成分を備える層の性能が低下するのを防止し易いことから、開孔を有していないフィルム(11)を備えた積層体(100)であるのが好ましい。更に、フィルム(11)の表面は、平滑であっても模様など凹凸を有していてもよい。当該凹凸を有することで、手でフィルム(11)を掴み易くなり、フィルム(11)と繊維シート(12)を手で容易に分離しし易くでき好ましい。
【0031】
繊維シート(12)は繊維を含んだシート状の構造体を指し、布帛(例えば、繊維ウェブや不織布、ニットやメッシュなどの織物や編物など)であることができる。特に柔軟で、より性能に優れた産業資材を提供可能な積層体(100)を実現し易いことから、繊維シート(12)は繊維ウェブや不織布であるのが好ましい。
【0032】
繊維シート(12)が接着繊維(例えば、低融点を有する熱可塑性樹脂を表面に備えた繊維など)を含んでいると、フィルム(1)との溶融一体化が好適になされ、より性能に優れた産業資材を提供可能な積層体(100)を実現し易い。そのため、繊維シート(12)は接着繊維を含有しているのが好ましい。
繊維シート(12)の構成繊維に占める接着繊維の割合は適宜選択するが、接着繊維の割合が多過ぎると、剥離強度が29.0N/3cm未満の積層体(100)を実現するのが困難となる傾向がある。一方、接着繊維の割合が少な過ぎると、剥離強度が弱い積層体(100)となることで、産業用資材の製造工程時やハンドリング時など積層体(100)へ力が作用した時に、意図せず繊維シート(11)とフィルム(12)が分離し易い積層体(100)となる恐れがある。そのため、繊維シート(12)の構成繊維に占める接着繊維の質量百分率は、1~50質量%であるのが好ましく、3~35質量%であるのが好ましく、5~20質量%であるのが好ましい。
【0033】
更に、伸縮性に優れることで、より性能に優れた産業資材を提供可能な積層体(100)を実現し易いことから、繊維シート(12)は捲縮繊維を含有しているのが好ましい。ここでいう捲縮繊維とは、例えば、クリンプを有する繊維や潜在捲縮性繊維の捲縮が発現してなる繊維(例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型などの複合繊維など)である。なお。繊維シート(12)の構成繊維に占める捲縮繊維の質量百分率は適宜調整するものであるが、30~95質量%であることができ、40~80質量%であることができ、40~70質量%であることができる。
【0034】
繊維シート(12)の構成繊維をなすポリマーは適宜選択でき、例えば、フィルム(11)を構成可能であると挙げたポリマーと同様のポリマーを採用できる。
なお、これらのポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、またポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、またポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでもよい。
更には、複数のポリマーを備えていても良く、複数のポリマーを混ぜ合わせた混合ポリマーを備えていてもよい。
【0035】
これら例示したポリマーのうち、超音波溶着やヒートシールあるいは溶断するなどすることでフィルム(11)との溶融一体化が好適になされ、性能に優れた産業資材を提供可能な積層体(100)を実現し易いことから、ポリプロピレン系樹脂で構成された繊維あるいはポリエステル系樹脂で構成された繊維を備えた(特に、ポリプロピレン系樹脂で構成された繊維を備えた)繊維シート(12)であるのが好ましく、構成繊維が当該繊維のみである繊維シート(12)であるのがより好ましい。
【0036】
繊維シート(12)の構成繊維に占めるポリプロピレン系樹脂で構成された繊維の質量百分率は、フィルム(11)との溶融一体化が好適になされ、求める剥離強度を有する、より性能に優れた産業資材を提供可能な積層体(100)を実現できるよう適宜調整するが、当該百分率は5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのが好ましい。一方、当該百分率が高過ぎると、剥離強度が29.0N/3cm未満の積層体(100)を実現するのが困難となる傾向があることから、当該百分率は90質量%以下であるのが好ましく、80質量%以下であるのが好ましく、70質量%以下であるのが好ましく、60質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのが好ましく、40質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下であるのが好ましい。
【0037】
繊維シート(12)を構成する繊維の繊度や繊維長は適宜選択できるものであるが、繊度は0.6dtex~6.6dtexであることができ、繊度が0.9dtex~4.4dtexであることができ、繊度が1.3dtex~3.3dtexであることができる。
繊維シート(12)を構成する繊維は短繊維(特定長にカットされた繊維など)や長繊維(直接紡糸法を用いて調製された特定長にカットされていない繊維を含む)であることができる。特に捲縮繊維を含んだ繊維シート(12)の伸張性が好適に発揮され易いように、短繊維を構成繊維として備えた繊維シート(12)であるのが好ましく、構成繊維が短繊維のみである繊維シート(12)であるのがより好ましい。
ここでいう短繊維とは繊維長が100mm以下の繊維を指す。また、ここでいう長繊維とは繊維長が100mmよりも長い繊維を指し、繊維長が100mmよりも長く繊維長を特定するのが困難な繊維(連続繊維)も長繊維とみなす。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c 直接法(C法)に則って測定された繊維長をいう。
【0038】
繊維シート(12)を構成する繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
繊維シート(12)が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を、織るあるいは編むことで調製できる。
【0039】
繊維シート(12)が不織布である場合、不織布を製造可能な繊維ウェブの調製方法として、例えば、乾式法、湿式法などを用いることができる。そして、繊維ウエブを構成する繊維同士を絡合および/または一体化して不織布にする方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維同士をバインダで一体化する方法、あるいは、繊維ウエブが熱可塑性樹脂を含んでいる場合には、繊維ウエブを加熱処理することで前記熱可塑性樹脂を溶融して、繊維同士を一体化する方法を挙げることができる。繊維同士を一体化するバインダとして、上述したポリマーなどから選択し採用できる。繊維ウエブを加熱処理する方法として、例えば、カレンダーロールにより加熱加圧する方法、熱風乾燥機により加熱する方法、無圧下で赤外線を照射する方法などを用いることができる。
また、直接紡糸法を用いて、紡糸溶液や溶融した樹脂を細径化して直接紡糸すると共に繊維を捕集して繊維ウェブまたは不織布を調製してもよい。
【0040】
特に、貼付剤の機能性成分と意図しない反応が発生するのを防止できることから、構成繊維以外にバインダが存在していないのが好ましく、その観点から繊維シート(12)は、繊維同士がニードルや水流によって絡合して一体化した不織布、および/または、繊維同士が接着繊維により接着一体化した不織布であるのが好ましい。
【0041】
繊維シート(12)は一種類の布帛で構成されたものであってもよいが、複数あるいは複数種類の布帛で構成されたものであってもよい。具体例として、複数種類の繊維ウェブを積層して調製した不織布や複数種類の不織布を積層して調製した積層不織布を繊維シート(12)としてもよい。
【0042】
なお、フィルム(1)との溶融一体化が好適になされ、求める剥離強度を有する、より性能に優れた産業資材を提供可能な積層体(100)を実現し易いことから、繊維シート(12)におけるフィルム(11)と接する側の主面は、熱可塑性樹脂を含有した繊維(接着繊維など)を含んでいるのが好ましい。また、貼付剤用基材として使用した際に、身体への追従性に優れることから、フィルム(11)と接する側と反対側の主面は捲縮繊維を含んでいるのが好ましい。
【0043】
また、繊維シート(12)は機能性成分を含んでいてもよい。機能性成分の種類は求められる機能によって適宜選択できるため、限定されるものではないが、フィルムに含めることができると例示した機能性成分を挙げることができる。
そして、機能性成分は繊維シート(12)を構成する繊維の表面や繊維内部および/または空隙中に粒子状で存在している、あるいは、繊維シート(12)を構成する繊維の一部または全部を被覆するように皮膜状で存在していることができる。
繊維シート(12)に機能性成分を担持する方法は適宜選択できるが、例えば、機能性成分の溶液や分散液、あるいはバインダを含んだ機能性成分の溶液や分散液を、繊維シート(12)の一方の主面あるいは両主面へ、噴霧あるいは既知のコーティング方法(例えば、グラビアロールを用いたキスコーティング法、ダイコーティング法など)を用いて担持した後、溶媒や分散媒を除去する方法や、繊維シート(12)を上述の溶液や分散液に浸漬し引き上げた後、溶媒や分散媒を除去する方法などを採用できる。
【0044】
繊維シート(12)の、目付や厚さなどの諸構成や諸物性は適宜調整できるものであるが、目付は10~200g/m2であることができ、20~180g/m2であることができ、30~160g/m2であることができる。そして、厚さは0.05~3.0mmであることができ、0.1~2.0mmであることができ、0.2~1.5mmであることができる。
また、繊維シート(12)の強度は適宜調整できるが、フィルム(11)と繊維シート(12)を手で分離する際に、繊維シート(12)に破断や構造の大きな変化が発生し難い強度を有しているのが好ましい。
【0045】
フィルムの周縁部分(13)と繊維シートの周縁部分(14)が一体化している態様は、本発明の構成を満足する限り適宜選択できる。例えば、バインダによってフィルム(11)と繊維シート(12)が接着一体化している態様、両面粘着テープを間に介することでフィルム(11)と繊維シート(12)が接着一体化している態様、ポイントシールなど超音波シールや溶断などによってフィルム(11)の構成成分および/または繊維シート(12)の構成成分が溶融して溶融一体化している態様などであることができる。
また、一体化している部分(15)は連続的に形成されていても、断続的に形成されていてもよい。具体例として、フィルム(11)と繊維シート(12)の積層部分が溶断された場合には、当該溶断により形成される一体化している部分(15)は連続的に存在する態様であり、ポイントシールによってフィルム(11)の構成成分および/または繊維シート(12)の構成成分が溶融一体化している場合には、一体化している部分(15)は断続的に存在する態様となる。
なお、一体化している部分(15)の面積は、本発明の構成を満足する限り適宜選択できる。
【0046】
例えば、
図3(a)に図示した態様以外にも、積層体(100)における一辺全体のみに一体化している部分(15)が連続的に存在する態様や、積層体(100)における三辺全体に一体化している部分(15)が連続的に存在する態様であってもよい。
【0047】
特に、フィルムの周縁部分(13)全体が繊維シート(12)と一体化している態様であると、および/または、繊維シートの周縁部分(14)全体がフィルム(11)と一体化している態様であると、換言すれば、
図3(b)や
図3(c)のようにフィルム(11)の中央部分を囲むように一体化している部分(15)が存在している態様であると、より性能に優れた産業資材を提供可能な積層体(100)を提供でき好ましい。特に、
図3(b)のようにフィルム(11)の中央部分を囲むように一体化している部分(15)が連続的に存在していると、より性能に優れた産業資材を提供可能な積層体(100)を提供でき好ましい。
【0048】
本発明の積層体(100)は、一体化している部分(15)におけるフィルム(11)と繊維シート(12)の剥離強度が、29.0N/3cm未満であるのが好ましい。なお、剥離強度は測定対象となる積層体(100)を(剥離強度の測定方法)へ供し得た値を意味する。
【0049】
(剥離強度の測定方法)
1.積層体(100)から、採取しようとする試験片における一方の短辺周縁に、一方の長辺からもう一方の長辺にわたり連続的に一体化している部分(15)を備える試料片(短辺:3cm、長辺:3cmよりも長い)を採取した。
2.採取した試料片を定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン、チャック間隔:40mm、引張速度:50mm/分)へ供することで、フィルム(11)と繊維シート(12)が分離するまでの最大荷重を測定した。
なお、測定に際し、定速伸長型引張試験機が備える両チャック(重力方向側にある下チャックと、下チャックに対し重力方向と反対側に存在する上チャック)により、以下の態様で試料片を挟み込んだ。
・一体化している部分(15)を支点にして繊維シートとフィルムを離すようにして試料片を広げた。そして、広げた試験片における一方の主面上の、一体化している部分(15)以外にクラフトテープを張り付けた。本クラフトテープは、剥離強度の測定中に、試験片を構成するフィルムと繊維シートの短辺方向の幅が意図せず収縮するのを、防止する役割を担う。
・一体化している部分(15)がチャックに挟まれることが無いように、下チャックに繊維シート(クラフトテープが張られている部分)を挟み固定し、上チャックにフィルム(クラフトテープが張られている部分)を挟み固定した。
・下チャックの上チャック側端部と、一体化している部分(15)が最短距離をなし隣り合うようにした。
・両チャックによる試料片の伸長方向と、試験片における一体化している部分(15)が垂直を成すようにした。
3.試験片を、一体化している部分(15)と垂直を成す方向へ引張り、フィルム(11)と繊維シート(12)が分離するまでに測定された最大荷重(単位:N/3cm)の値を、剥離強度(単位:N/3cm)とした。
【0050】
本発明の積層体(100)では、一体化している部分(15)におけるフィルム(11)と繊維シート(12)の剥離強度は、性能に優れた産業資材を提供可能な積層体(100)を実現できるよう適宜調整できる。剥離強度は、0N/3cm以上よりも大きい値であって、1N/3cm以上であることができ、2N/3cm以上であることができ、3N/3cm以上であることができ、4N/3cm以上であることができ、5N/3cm以上であることができる。また、剥離強度は、25N/3cm以下であることができ、20N/3cm以下であることができ、15N/3cm以下であることができる。
積層体(100)の、目付や厚さなどの諸構成や諸物性は適宜調整できるものであるが、目付は10~200g/m2であることができ、20~180g/m2であることができ、30~160g/m2であることができる。そして、厚さは0.05~3.0mmであることができ、0.1~2.0mmであることができ、0.2~1.5mmであることができる。
【0051】
本発明の積層体(100)は、そのまま様々な産業資材用途に使用できるが、更に多孔体や発泡体あるいは別のフィルムや別の繊維シートなどの部材を備えていてもよい。更に、本発明の積層体(100)を、リライアントプレス処理などの表面を平滑とするために加圧処理する工程、加熱成形する工程、親水化処理する工程、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜く工程など、各種二次加工する工程へ供してもよい。
【0052】
本発明の積層体(100)における、フィルム(11)と繊維シート(12)の間(
図2における、ブロックパターン様のハッチングで図示している空隙など)に機能性成分を設けることで、貼付剤を調製できる。貼付剤の種類により機能性成分を選択するが、機能性成分として、皮膚を経て体内へ吸収され作用する薬剤や、メントールなど皮膚を冷却したり冷感を与える冷却剤、ビタミン類など皮膚へ美容効果を与える化粧料などを採用できる。なお、機能性成分は固体であっても液体であっても、ゲル状であってもよい。
また、フィルム(11)と繊維シート(12)の間に機能性成分のみを設けてなる貼付剤でもよいが、機能性成分と粘着剤の混合物をフィルム(11)と繊維シート(12)の間に設けてなる貼付剤や、機能性成分を含んだ多孔体や発泡体あるいは別のフィルムや別の繊維シートなどの部材を、フィルム(11)と繊維シート(12)の間に設けてなる貼付剤であってもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0054】
(フィルムの用意)
無延伸ポリプロピレンフィルム(目付:25g/m2、厚さ:0.1mm)を用意した。そして長方形の切片(短辺:8cm、長辺:10cm)を切り出した。
【0055】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂の潜在捲縮繊維(サイドバイサイド型、繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:44mm)をカード機へ供した後、水流絡合装置へ供することで繊維同士を絡合させ、水分を除去して、水流絡合不織布(目付:85g/m2、厚さ:0.85mm)を調製した。そして長方形の切片(短辺:8cm、長辺:10cm)を切り出した。
フィルムの切片と、水流絡合不織布の切片を重ね合わせた状態としたまま、その中央に超音波ハンディ溶着機を用いて、5cm/6秒の速度で直線で5cmの連続的な溶断を手動によりなし、次いで、溶断された部分を短辺とした長方形形状(短辺:3cm、長辺:5cm)となるよう切り取ることで、フィルムの周縁部分の一部と、水流絡合不織布の周縁部分における一部が、連続的に溶融一体化してなる積層体を調製した。なお、溶断には超音波ハンディ溶着機を用いて、5cm/6秒の速度で直線5cmの連続的な溶断を、手動によりなした。
【0056】
(実施例2~4)
ポリエステル系樹脂の潜在捲縮繊維(サイドバイサイド型、繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)65質量%、ポリエステル系樹脂の単繊維(繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)15質量%、ポリプロピレン系樹脂の単繊維(繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:50mm)20質量%をカード機へ供した後、ニードルパンチ機へ供することで繊維同士を絡合させ、ニードルパンチ不織布1(目付:105g/m2、厚さ:1.1mm)を調製した。
水流絡合不織布の代わりにニードルパンチ不織布1を用いたこと、また、溶断時に積層体へかける圧力を多少変更したこと以外は、実施例1と同様にして、合計3枚の積層体を調製した。
【0057】
(実施例5~7)
ポリエステル系樹脂の潜在捲縮繊維(サイドバイサイド型、繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)55質量%、ポリエステル系樹脂の単繊維(繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)35質量%、ポリプロピレン系樹脂の単繊維(繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)10質量%をカード機へ供した後、ニードルパンチ機へ供することで繊維同士を絡合させ、ニードルパンチ不織布2(目付:105g/m2、厚さ:1.1mm)を調製した。
水流絡合不織布の代わりにニードルパンチ不織布2を用いたこと、また、溶断時に積層体へかける圧力を多少変更したこと以外は、実施例1と同様にして、合計3枚の積層体を調製した。
【0058】
(実施例8)
ポリエステル系樹脂の潜在捲縮繊維(サイドバイサイド型、繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)55質量%、ポリエステル系樹脂の単繊維(繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)40質量%、ポリプロピレン系樹脂の単繊維(繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)5質量%をカード機へ供した後、ニードルパンチ機へ供することで繊維同士を絡合させ、ニードルパンチ不織布3(目付:105g/m2、厚さ:1.1mm)を調製した。
水流絡合不織布の代わりにニードルパンチ不織布3を用いたこと、また、溶断時に積層体へかける圧力を多少変更したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を調製した。
【0059】
(実施例9~11)
ポリエステル系樹脂の潜在捲縮繊維(サイドバイサイド型、繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)65質量%、ポリエステル系樹脂の単繊維(繊維の断面形状:円形、繊度:2.2dtex、繊維長:51mm)35質量%をカード機へ供した後、ニードルパンチ機へ供することで繊維同士を絡合させ、ニードルパンチ不織布4(目付:105g/m2、厚さ:1.1mm)を調製した。
水流絡合不織布の代わりにニードルパンチ不織布4を用いたこと、また、溶断時に積層体へかける圧力を多少変更したこと以外は、実施例1と同様にして、合計3枚の積層体を調製した。
【0060】
以上のようにして調製した実施例の積層体は、フィルムの周縁部分における少なくとも一部と、不織布の周縁部分における少なくとも一部が一体化しているものであった。そのため、実施例の積層体は、性能に優れた産業資材を提供可能な積層体であった。
特に、実施例の積層体において、フィルムの周縁部分全体が不織布と一体化させた、および/または、不織布の周縁部分全体がフィルムと一体化させた場合には、より性能に優れる産業資材を提供可能な積層体を調製できると考えられた。
【0061】
このようにして調製した、実施例の積層体の物性を評価し、表1にまとめた。なお、(分離性能)と(分離後の繊維シート状態)および(工程通過性)は、積層体を以下の方法へ供することで評価した。
【0062】
(分離性能の評価方法)
左手の親指と人差し指で積層体のフィルム部分をつまみ、右手の親指と人差し指で積層体の繊維シート部分をつまんだ。その状態のまま、フィルムと繊維シートが分離するまで、左手と右手を互いに積層体の一体化している部分と垂直を成す方向へ離した。そして、フィルムと繊維シートを分離するために必要となる力を評価した。
◎:容易にフィルムと繊維シートを分離できた。
〇:上述した「◎」のときよりも力をかける必要はあったが、比較的容易にフィルムと繊維シートを分離できた。
△:フィルムと繊維シートを分離するためには、相当の力をかけなければならなかった。つまり、「◎」や「〇」の評価を受けた積層体と比べ、フィルムと繊維シートを分離することは困難であった。
【0063】
(分離後の繊維シート状態の評価方法)
上述した(分離性能の評価方法)へ供し分離させた後の、繊維シートにおけるフィルムと溶融一体化していた部分の状態を、目視で確認した。
〇:繊維シートにおけるフィルムと溶融一体化していた部分に、フィルムは付着していなかった。
△:繊維シートにおけるフィルムと溶融一体化していた部分に、フィルムが付着していた。
【0064】
(工程通過性の評価方法)
利き腕の人差し指で積層体のフィルム側主面に触れ、利き腕の親指で積層体の繊維シート側主面に触れると共に、利き腕の親指と人差し指で一体化している部分を軽く挟んだ。その状態のまま、人差し指を積層体の主面と平行をなす方向へ動かすことで、積層体の一体化している部分へ力を作用させた。
なお、積層体の一体化している部分へ作用させた力は(分離性能の評価方法)の「◎」評価で積層体へ作用させた力に比べ弱いものであった。
〇:フィルムと繊維シートは分離しなかった。
△:フィルムと繊維シートは分離した。
なお、本評価の結果が「〇」であった積層体は、産業用資材の製造工程時やハンドリング時など積層体へ力が作用した時に、意図せず繊維シートとフィルムが分離するのを防止できる積層体であることを意味し、本評価の結果が「△」であった積層体は、産業用資材の製造工程時やハンドリング時など積層体へ力が作用した時に、意図せず繊維シートとフィルムが分離し易い積層体であることを意味する。
【0065】
【0066】
実施例1の積層体と実施例2~11の積層体を比較した結果から、剥離強度が29.0N/3cm未満(好ましくは19.5N/3cm以下)の積層体は、フィルムと繊維シートを手で容易に分離できる積層体であることが判明した。また、実施例2の積層体と実施例3~11の積層体を比較した結果から、剥離強度が19.5N/3cm未満(好ましくは14.2N/3cm以下)の積層体は、よりフィルムと繊維シートをより手で容易に分離できる積層体であることが判明した。
そして、実施例1の積層体と実施例2~11の積層体を比較した結果から、剥離強度が29.0N/3cm未満(好ましくは19.5N/3cm以下)の積層体は、分離後の繊維シートにフィルムが付着するのを防止できる積層体であることが判明した。
そのため、剥離強度が29.0N/3cm未満の積層体によって、より性能に優れた産業資材を提供可能な積層体を実現できた。
【0067】
更に、実施例1~8の積層体と、実施例9~11の積層体を比較した結果から、剥離強度が4.2N/3cmより大きい(好ましくは5.6N/3cm以上の)積層体は、産業用資材の製造工程時やハンドリング時など積層体へ力が作用した時に、意図せず繊維シートとフィルムが分離するのを防止できる積層体であることが判明した。
【0068】
また、実施例の積層体における、フィルムと繊維シートの間に機能性成分を備えてなる貼付剤は、機能性成分を備える層の性能が大きく低下する恐れや、当該層が汚染される恐れを低減できるという機能を有する貼付剤であると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の積層体は様々な産業用途、例えば、水処理膜などの液体分離膜や気体分離膜、イオン交換膜や透析膜、電気化学素子用セパレータ、プリプレグ、気体フィルタや液体フィルタ、液体吸収材、緩衝材や吸音材、マスク、貼付剤、包装材や梱包材、壁紙や車両用内装用基材、芯地などの被服材料などに使用できる。
【符号の説明】
【0070】
100:積層体
11:フィルム
12:繊維シート
13:フィルムの周縁部分
14:繊維シートの周縁部分
15:一体化している部分