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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】包装用紙
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
B65D65/40 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019171153
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021046232
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】目黒 章久
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-126994(JP,A)
【文献】特開2010-229574(JP,A)
【文献】特開2001-254293(JP,A)
【文献】特開2010-089821(JP,A)
【文献】特開平08-267672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/00-65/46
D21H 11/00-27/42
B32B 1/00-43/00
B65D 67/00-79/02
B65D 30/00-33/38
B65D 5/00- 5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも1層以上のヒートシール層を有する包装用紙であって、前記ヒートシール層がアイオノマーのみからなり、前記ヒートシール層の乾燥塗工量が全層で2~10g/mであり、前記包装用紙の坪量が80g/m~500g/mであり、包装用紙のステキヒトサイズ度が5秒以上であり、基材中においてサイズ剤を含有することを特徴とする前記包装用紙。
【請求項2】
前記包装用紙のZ軸強度(JAPAN TAPPI No.18-1)150kN/m以上であることを特徴とする、請求項1に記載の包装用紙。
【請求項3】
前記包装用紙の縦方向の引張破断伸び率が(JIS P-8113)1%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の包装用紙。
【請求項4】
前記包装用紙の縦方向の引張り強さが(JIS P-8113)5kN/m以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の包装用紙。
【請求項5】
基材中において含まれるサイズ剤が酸性ロジンサイズ剤であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の包装用紙。
【請求項6】
基材中において、パルプ100質量部に対して0.01~1.0部の酸性ロジンサイズ剤を含有することを特徴とする、請求項5に記載の包装用紙。
【請求項7】
包装用紙のステキヒトサイズ度が5秒~250秒であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つに記載の包装用紙。
【請求項8】
ヒートシール層において、アイオノマー:無機顔料の固形分質量比が9:1より無機顔料の量が少ないことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一つに記載の包装用紙。
【請求項9】
ヒートシール層が無機顔料を含まないことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一つに記載の包装用紙。
【請求項10】
紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも1層以上のヒートシール層を有する包装用紙の製造方法であって、前記ヒートシール層がアイオノマーのみからなり、前記ヒートシール層の乾燥塗工量が全層で2~10g/mであり、前記包装用紙の坪量が80g/m~500g/mであり、包装用紙のステキヒトサイズ度が5秒以上であり、
サイズ剤を含有するパルプを主成分とする紙料から紙基材を製造することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項11】
サイズ剤が酸性ロジンサイズ剤であり、基材中において、パルプ100質量部に対して0.01~1.0部の酸性ロジンサイズ剤を含有することを特徴とする、請求項10に記載の包装用紙の製造方法。
【請求項12】
包装用紙のステキヒトサイズ度が5秒~250秒であることを特徴とする、請求項10または11に記載の包装用紙の製造方法。
【請求項13】
ヒートシール層において、アイオノマー:無機顔料の固形分質量比が9:1より無機顔料の量が少ないか、または、ヒートシール層が無機顔料を含まないことを特徴とする、請求項10~12のいずれか一つに記載の包装用紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの使用量を低減した、加工適性に優れた包装用紙に関する。特に折り曲げ加工、糊貼り加工に対する適正を有し、箱・カートンなどの厚物容器として優れるヒートシール性を有する包装用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックゴミ問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量は4億トン/年を超えると言われ、その中でも包装容器セクターでのプラスチック生産量が多く、プラスチックゴミの原因になっている。プラスチックは半永久的に分解せず、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化し、生態系に深刻な悪影響を与えている。包装容器に使用されるプラスチックとしては、飲料のボトル等に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)、レジ袋、容器のラミネートに使用されるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が最も多く使用されている。特に海洋の汚染は著しく、そのプラスチックゴミは回収不可能と言われている。今後、プラスチックの使用を低減することが地球環境にとって必要である。
【0003】
一方で、プラスチックゴミ対策として微生物によって完全に分解され得る生分解性プラスチックの応用が世界中で提案されている。生分解プラスチックは自然界で一定期間の内に分解されるが、分解されるまではやはりゴミであり、それらの使用量及び廃棄量が低減されない限りにおいては、即効性のある対策とは言えない(特許文献1、2参照)。
【0004】
即効性のある対策手段として、プラスチックを紙に代替することが提案されているが、紙を袋や容器に加工する際には、ヒートシール剤として、ポリエチレンやポリプロピレンが多量にラミネートされて使用される。これらプラスチックのラミネート量は、商品コンセプトによって様々だが、概ね20~50g/mであり、300g/mと多量になる場合もある。従って、プラスチックを紙に代替した包装容器においても、依然としてプラスチックの使用量は十分に低減されないという問題があり、早急に、直接的にプラスチックの使用を低減する手段が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-148444号公報
【文献】特開2013-141763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、プラスチックの使用量を低減することができる加工適性に優れた包装用紙を提供することにある。特に折り曲げ加工、糊貼り加工に対する適正を有し、箱・カートンなどの厚物容器として適切に使用できるヒートシール性に優れた包装用紙に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、従来のプラスチックラミネート紙(以降、ポリラミ紙と略称する場合がある)のポリエチレンやポリプロピレンの使用量を低減するために、アイオノマーを使用する。すなわち、本発明による包装用紙は、紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも一層以上のヒートシール層を有する包装用紙であって、前記ヒートシール層がアイオノマーを含み、前記ヒートシール層の塗工量が2~10g/mであることを特徴とする。従来のポリラミ紙のヒートシール層に使用されているポリエチレンやポリプロピレンのラミネート量が20g/mを超えることと比較すると、ヒートシール層用のプラスチックの使用量を従来の約10~50%にまで削減することができる。ここでアイオノマーとは、金属イオンによる凝集力を利用し高分子を凝集体とした合成樹脂であり、アクリル酸またはメタクリル酸をエチレンなどと組み合わせた合成樹脂である。例えば、アクリル系高分子とエチレンを、ナトリウムや亜鉛などの金属カチオンを加え分子間結合させて製造される。
【0008】
また、本発明においては、前記包装用紙のステキヒトサイズ度が5秒以上であることが必要である。ステキヒトサイズ度が5秒未満であると糊貼り加工時に糊が紙に吸収されて接着性に劣る。また、ヒートシール時に熱で溶けたアイオノマーが紙基材に吸収されてしまい、接着強度に劣る。また、特に折り曲げ加工時ヒートシール層がポリエチレン層より薄い為に包装用紙が割れてしまう。
【0009】
また、本発明の包装用紙の坪量が80g/m~500g/mであることにより、特に箱・カートン等(ポテトカートン等)への加工時の折り曲げ工程における破れ・割れが無くなり、また、箱・カートン等に適した外観を有する包装用紙を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、プラスチック使用量が低減された包装用紙を製造することが可能である。本発明の包装用紙を用いた容器製品であれば、仮に自然界にゴミとして不適切に放出された場合であっても、自然環境に与えるプラスチックゴミとしての悪影響を小さくすることが可能であり、プラスチックゴミ問題の解決の一助となる。なお、本発明における包装用紙は、例えば、袋、アイスクリーム等の食糧カップ、コーヒー等の飲料用コップ、ホットスナック等の食糧容器及びトレイ、箱、ケース、器、封筒等の包装容器全般に加工可能である。特に本発明における包装用紙は、厚物容器(トレイ・箱・ケース・器・カートン)として加工することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0012】
本実施形態において、アイオノマーとは、金属イオンによる凝集力を利用し高分子を凝集体とした合成樹脂の総称であり、アクリル酸またはメタクリル酸をエチレンなどと組み合わせた樹脂である。すなわち、エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、エチレン・アクリル系共重合物の金属塩、エチレン・ウレタン系共重合物の金属塩、エチレン・フッ素系高分子共重合物の金属塩、などは全てアイオノマーと呼ばれる。塩を形成する金属としては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、具体的には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛の各イオンなどである。本発明においては、前記アイオノマーがエチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩である自己乳化型エマルジョンであることが好ましい。ヒートシール層の塗工量が比較的少なくとも、十分なヒートシール強度を有するヒートシール層を設けることができる。
【0013】
本実施形態においては、紙基材の少なくとも一方の面に、アイオノマーエマルジョンを含有するヒートシール層用塗工液を塗工し、乾燥することでヒートシール層を設けることができる。アイオノマーエマルジョンを用いることにより、塗工量を比較的低くコントロールすることが可能であり、更に水系のアイオノマーエマルジョンを用いることによりVOC排出が無くなり自然環境に対する負荷を小さくすることができる。ヒートシール層の塗工量は、紙基材の片面あたり、固形分換算で2~10g/mであり、好ましくは3~8g/mである。2g/m未満の場合は十分なヒートシール強度を満足できない。逆に10g/mを超える場合は、ヒートシール強度の面からは過剰品質であり、かつプラスチック削減効果に乏しくなる。なお、本発明の包装用紙において、ヒートシール層は、紙基材の表面の一部分のみに設けられているのではなく、全面に設けられていることが通常である。すなわち、ヒートシール層は、例えば網状、島状、線状など、ヒートシールによる接着に必要な部分にのみ設けられているのではなく、紙基材の表面の全面を覆うように設けられていると良い。
【0014】
ヒートシール層用塗工液には、アイオノマーエマルジョンの他に、各種助剤を添加してもよい。例えば、粘度調整剤、消泡剤、界面活性剤やアルコールなどのレベリング剤、着色顔料、着色染料などである。しかしながら、これらの助剤の添加は、ヒートシール強度の低下を招きやすいことから、添加する場合には少量であることが好ましい。本実施形態においては、ヒートシール層用塗工液がアイオノマーエマルジョンのみからなることが好ましい。
【0015】
ヒートシール層用塗工液を塗工する方式としては、特に限定するものではなく、一般に使用されている塗工装置が使用できる。例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ショートドウェルコーター、スプレーコーター、ゲートロールコーター、リップコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。
【0016】
また、本発明においては、前記包装用紙のステキヒトサイズ度が5秒以上であることが必要である。ステキヒトサイズ度が5秒未満であると糊貼り加工時に糊が紙に吸収されて接着性に劣る。また、ヒートシール時に熱で溶けたアイオノマーが紙基材に吸収されてしまい、接着強度に劣る。また、特に折り曲げ加工時ヒートシール層がポリエチレン層より薄い為に包装用紙が割れてしまう。ステキヒトサイズ度を適切に調整するためには、本発明においては、サイズ剤を添加すること、特に基材中にサイズ剤を内添させることが好ましい。サイズ剤としては、ステキヒトサイズ度が5秒未満とできれば、いずれのサイズ剤であってもよい。例えば、ロジンサイズ剤、特に酸性ロジンサイズ剤を使用することが好ましく、基材中において、パルプ100質量部に対して0.01~1.0部、好ましくは0.04~0.6部の酸性ロジンサイズ剤を使用することが好ましい。
【0017】
また、本発明の包装用紙の坪量が80g/m~500g/mである。それにより、特に箱・カートン等(ポテトカートン等)への加工時の折り曲げ工程における破れ・割れが無くなり、また、箱・カートン等に適した外観を有する包装用紙を得ることができる。
【0018】
本実施形態においては、前記ヒートシール層が2層以上で形成されていてもよい。2層以上とすることにより、包装用紙の透気度を高くすることができ、さらに、撥水性と撥油性を付与することができ、プラスチックフィルムラミネート紙と同様かそれ近い特性を得ることができるからである。ヒートシール層が2層以上の場合、紙基材に最も近い最下層のヒートシール層の塗工量が、他のヒートシール層の合計塗工量よりも多い方が好ましい。包装用紙の透気度をさらに改善することができ、撥水性と撥油性が更に向上するからである。
【0019】
本実施形態においては、包装用紙の前記包装用紙のZ軸強度(JAPAN TAPPI No.18-1、紙の厚さ方向の強度)150kN/m2以上であることが好ましい。折り加工時の破れ・割れが無くなる。好ましくは、200kN/m2以上である。
【0020】
本実施形態においては、包装用紙の前記包装用紙の縦方向の引張破断伸び率が(JIS P-8113)1%以上であることが好ましい。厚物容器(トレイ・箱・ケース・器・カートン)への折り加工時の破れ・割れを減少させることができる。好ましくは、縦方向の引張破断伸び率は、1.5%以上である。
【0021】
本実施形態においては、前記包装用紙の縦方向の引張り強さが(JIS P-8113)5kN/m以上であることが好ましい。厚物容器(トレイ・箱・ケース・器・カートン)への折り加工時の破れ・割れを減少させることができる。好ましくは、縦方向の引張り強さは、8kN/m以上である。なお、本発明でいう縦方向とは縦目方向(MD)の事であり、横方向とは横目方向(CD)の事である。
【0022】
本実施形態においては、包装用紙の透気度が10000秒を超えることが好ましい。より好ましくは12000秒以上であり、更に好ましくは15000秒以上である。包装用紙の透気度を10000秒以上とすることにより、空気を遮断する意味でのバリア性が更に高くなり、撥水性と撥油性が更に向上する。包装用紙の透気度を10000秒以上とする方法については、特に限定するものではないが、例えば、紙基材に透気度の高いものを使用することで達成できる。さらに、ヒートシール塗工液を塗工する面の平滑度を高くすることによっても、包装用紙の透気度を高くすることができる。その後形成されるヒートシール層においてピンホールやヒビ割れなどをより減少させることができるからである。例えば、顔料塗工層を設け、その後キャレンダー処理等を行うことにより、ヒートシール塗工液を塗工する面の平滑度を高くすることができる。他には、ヒートシール層を2層以上塗工することも透気度を高める効果がある。ヒートシール層の2層塗工は、1層目の塗工層(下層)に存在する微細なピンホールやヒビを、1層目の上に設けられた2層目の塗工層(上層)が覆うことで透気度が高まると考えられる。また、ヒートシール層の塗工量を増加させることも透気度の向上に効果がある。ヒートシール層の造膜の面では、ヒートシール層用塗工液の塗工後の乾燥温度を、アイオノマーの融点以上の温度とすることで透気度が向上しやすい。
【0023】
本実施形態においては、紙基材のヒートシール塗工液を塗工する面の平滑度が10秒以上であることが好ましい。より好ましくは20秒以上である。紙基材の平滑度が高い方が塗工して設けたヒートシール層の膜厚が均一となりやすく(微細な凹凸が生じ難く)、結果としてヒートシール強度のバラツキが生じ難くすることができ、平面上に均一なヒートシール強度を付与することができる。紙基材の平滑度を高める方法は、特に限定するものではなく、例えば、スーパーキャレンダー、グロスキャレンダー、シューニップキャレンダー、ソフトキャレンダーなどの公知のキャレンダー装置によるキャレンダー処理が挙げられる。また、片艶クラフト紙などのヤンキードライヤーの鏡面を転写した紙も平滑度の高い紙基材として好適である。なお、ヒートシール層には肉眼では見えないピンホールやヒビ割れが存在する場合があるが、その程度であるならばヒートシール性に悪影響を与えない。また、本発明の効果を損なわない限り、ヒートシール層塗工液中にピンホール防止を目的としたレベリング剤を添加することもできる。
【0024】
本実施形態において用いる紙基材としては特に限定するものではなく、パルプを主成分とする公知の紙基材を用いることができる。紙基材の主成分となるパルプとしては、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ及びケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプを用いることができる。これらは、単独で使用するか、又は任意の割合で混合して使用することが可能である。また、本発明の目的とする効果を損なわない範囲において、合成繊維を更に配合することができる。環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプが好ましい。また、適切なパルプの叩解度としては、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、200~700mlCSF、例えば、450~620mlCSFである。通常、全パルプ中、広葉樹パルプを90~100質量部と、針葉樹パルプを0~10質量部とを使用することが好ましい。さらには、広葉樹パルプに加えて、折り加工の強度増進の為に針葉樹パルプを配合することが好ましい。例えば、全パルプ中、針葉樹パルプを50~100質量部と、広葉樹パルプを0~50質量部とを使用することが好ましい。また、パルプとして針葉樹パルプのみを使用してもよい。
【0025】
紙基材としては填料を含有するものも使用できる。填料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、焼成クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウムを例示できる。紙基材中の填料含有量は、パルプの乾燥質量100質量部に対して、例えば、1~30質量部である。例えば、パルプの乾燥質量100質量部に対して、軽質炭酸カルシウムを1~10質量部含むとよい。
【0026】
また、紙基材には、パルプと填料に加えて、各種公知の製紙用添加剤が含まれていてもよい。製紙用添加剤としては、例えば、サイズ剤、湿潤紙力増強剤などの内添紙力増強剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤などがある。また、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの水溶性高分子が塗布されていてもよい。
【0027】
紙基材の抄紙方法は、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種抄紙機で製造できる。また、本発明においては、紙基材としては単層抄きでも多層抄きでも、複数層の貼合品であってもよい。
【0028】
紙基材には、ヒートシール層以外の塗工層が1層以上設けられていてもよく、例えば、顔料と接着剤を含有する顔料塗工層が設けられたものであってもよい。顔料塗工層中の顔料としては、一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知の顔料を用いることができ、例えば、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム等)、カオリン(クレーを含む)、焼成クレー、タルク、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪藻土、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料、又はアクリル、スチレン、塩化ビニル、ナイロンそのものや、これらを共重合して得られる有機顔料(いわゆるプラスチックピグメント)が挙げられる。例えば、顔料としては、20~40質量部のカオリンと60~80質量部の重質炭酸カルシウムの組み合わせを使用することができる。また、接着剤も一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知の接着剤を用いることができ、例えば、ブタジエン系共重合ラテックス、架橋剤変性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉などの澱粉類、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、等の合成樹脂類等を例示できる。顔料塗工層中の顔料と接着剤の配合割合は特に限定されるものではないが、顔料100質量部に対し接着剤5~50質量部とすることが好ましい。例えば、接着剤としては、顔料100質量部に対して、1~5質量部のリン酸エステル化澱粉と5~15質量部のスチレンブタジエンラテックスの組み合わせを使用することができる。顔料塗工層には、本発明の目的とする効果を損ねない範囲で各種助剤を含んでもよく、例えば、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、耐水化剤、分散剤、流動変性剤、紫外線吸収剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、pH調節剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤が含まれていてもよい。また、このような顔料塗工層の塗工量としては、例えば、紙基材の片面あたり、固形分換算で、2~40g/mである。本発明の包装用紙の実施形態の一つとして、ヒートシール層はこのような顔料塗工層の上に設けられてもよく、また、別の実施形態としては一方の面のみに顔料塗工層が設けられた紙基材の顔料塗工層が設けられていない面にヒートシール層が設けられていてもよい。
【実施例
【0029】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0030】
(実施例1)
(紙基材の作製)
カナディアンスタンダードフリーネス500mlcsfの広葉樹晒クラフトパルプ100部、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP-221BM、奥多摩工業社製)5部、カチオン化澱粉(商品名:ネオタック20T、日本食品加工社製)0.3部、変性ロジンサイズ剤(酸性サイズ剤)(商品名:ハーサイズNES-500、ハリマ化成社製)0.2部に水を加えて紙料を調製し、長網多筒式抄紙機を用いて坪量193g/mの原紙を作製した。この原紙にサイズプレスによって、酸化澱粉(商品名:M-200、三晶社製)を両面あたりの乾燥塗布量が2g/mとなるように塗布し、乾燥して坪量195g/mの紙基材を得た。
【0031】
(包装用紙の作製)
上記で得られた紙基材の片面に、水系アイオノマーエマルジョン(商品名:ケミパールS-300、三井化学社製、組成:エチレン・メタクリル酸共重合物の金属塩、自己乳化型エマルジョン、マイクロトラック法平均粒子径0.5μm)を乾燥塗工量が5g/mになるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、乾燥してヒートシール層を設け、坪量200g/mの包装用紙を作製した。ステキヒトサイズ度が50秒であった。
【0032】
(実施例2)
パルプを針葉樹樹未晒クラフトパルプ100部にした以外は実施例1と同様に包装用紙を作製した。ステキヒトサイズ度は60秒であった。
【0033】
(実施例3)
ロジンサイズ剤の添加量を0.05部にした以外は実施例1と同様に包装用紙を作製した。ステキヒトサイズ度は10秒であった。
【0034】
(実施例4)
前記変性ロジンサイズ剤を0.5部にした以外は実施例1と同様に包装用紙を作製した。ステキヒトサイズ度は250秒であった。
【0035】
(実施例5)
カチオン化澱粉を0.1部にした以外は実施例1と同様に包装用紙を作製した。ステキヒトサイズ度は51秒であった。
【0036】
(実施例6)
パルプを針葉樹クラフトパルプ40部、広葉樹クラフトパルプ60部にした以外は実施例1と同様に包装用紙を作製した。ステキヒトサイズ度は54秒であった。
【0037】
(実施例7)
前記カチオン化澱粉を0.6部に変更した以外は実施例1と同様に包装用紙を作製した。ステキヒトサイズ度は54秒であった。
【0038】
(比較例1)
実施例1で作製した紙基材の片面に、エクストリュージョンコーター(溶融押出し機)にて低密度ポリエチレン(東ソー社製、ペトロセンDLZ19A)を塗工量が30g/mになるようにラミネートしてヒートシール層を設け、包装用紙を作製した。ステキヒトサイズドは測定不可であった(水を通さない)。
【0039】
(比較例2)
実施例1において、変性ロジンサイズ剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に包装用紙を作製した。ステキヒトサイズ度は0秒であった。
【0040】
各実施例及び比較例で得られた包装用紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0041】
ステキヒトサイズ度
JIS P 8122に準拠して測定した。
【0042】
(2)Z軸強度(JAPAN TAPPI No.18-1)
JAPAN TAPPI No.18-1に準拠して測定した。
【0043】
(3)縦方向の引張破断伸び率
JIS P-8113に準拠して測定した。
【0044】
(4)縦方向の引張り強さ
JIS P-8113に準拠して測定した。
【0045】
(5)ヒートシール強度
得られた包装用紙を、幅8mm、長さ15cmのサイズに2枚カットし、包装用紙の表面と裏面とを重ね合わせ、ヒートシール装置(パルメック社製、型番:PTS-100)で、一定条件(接着幅:4mm、温度:180℃、圧力0.4MPa、押し当て時間0.5秒、ピッチ:4mm)にてヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルを、剥離強度試験機(島津製作所製、型番:オートグラフAGS-X)にて、一定条件(剥離速度:100mm/分、剥離長さ:10cm)で剥離強度を測定してヒートシール強度(gf/4mm)とした。数値が高い方が優れる。
【0046】
(6)糊貼り加工適性
ポテトカートン製造機でカートンを製造した。糊貼り部の接着性を目視で調べ、以下の様に評価した。
◎:完全に接着している
○:僅かに接着していない部分があるが実用レベル。
△:接着していない部分があり、実用不可。
×:全く接着しておらず、実用不可。
【0047】
(7)折り加工適性
ポテトカートン製造機でカートンを製造した。折り加工部の割れ・破れを目視で調べ、以下の様に評価した。
◎:折れ部に割れがなく、実用的である。
〇:折れ部に割れが僅かにあるが実用的である。
△:折れ部に割れがあり、実用不可。
×:折れ部に割れが著しくあり、実用不可。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、実施例1~8は、ヒートシール適性及び糊貼り加工適性が比較例1のポリラミ紙と同等でレベルであり好ましい。また、比較例2は包装用紙のステキヒトサイズ度が5秒未満の為にシートシール適性及び糊貼り加工適性に劣った。