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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/40 20230101AFI20240619BHJP
   H04N 23/54 20230101ALI20240619BHJP
   H04N 23/65 20230101ALI20240619BHJP
   H04N 25/44 20230101ALI20240619BHJP
   H04N 25/46 20230101ALI20240619BHJP
   H04N 25/76 20230101ALI20240619BHJP
   H04N 25/78 20230101ALI20240619BHJP
【FI】
H04N25/40
H04N23/54
H04N23/65 100
H04N25/44
H04N25/46
H04N25/76
H04N25/78
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019210624
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021082994
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 陽平
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-092022(JP,A)
【文献】特開2018-022935(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013806(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/158478(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/009944(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/40
H04N 25/44
H04N 25/76
H04N 25/46
H04N 25/78
H04N 23/54
H04N 23/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素回路が行列に配置されて構成され、複数の画素回路からなるブロックごとの画素信号の加算値および各画素回路の画素信号値をそれぞれ出力可能な撮像素子を備える撮像装置であって、
前記撮像素子における同一位置の前記ブロックから出力された時間的に前後する画素信号の加算値の差分に基づいて被写体変化を検知する検知手段を備え、
前記検知手段が被写体変化を検知した場合に、前記撮像素子から前記被写体変化が検知されたブロックについて該ブロックに含まれる各画素回路の画素信号値を出力し、前記被写体変化が検知されなかったブロックについて該ブロックに含まれる各画素回路の画素信号値を出力せず、
前記画素信号の加算値は、前記ブロックに含まれる前記複数の画素回路からの画素信号うち、複数の色のうちの所定の色の画素信号の加算平均により取得されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記検知手段が、前記撮像素子における全ての前記ブロックのうち所定の割合を超えるブロックについて前記被写体変化を検知した場合、前記撮像素子は、前記全ての前記ブロックのそれぞれに含まれる各画素回路の画素信号値を出力することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子は、前記全ての前記ブロックのそれぞれに含まれる各画素回路の画素信号値を出力することにより所定枚数の画像の撮影後に、前記ブロックごとの画素信号の加算値の出力を再開することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記被写体変化の検知に応じて前記各画素回路の画素信号値の出力が開始されると、前記被写体変化の検知を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記被写体変化の検知を停止した後、前記各画素回路の画素信号値を出力することにより第1の所定枚数以上の画像の撮影後に、前記被写体変化の検知を再開することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記検知手段が前記被写体変化の検知を停止した後、前記撮像素子は、前記第1の所定枚数以上の画像の撮影後に、全ての前記ブロックのそれぞれについて前記画素信号の加算値を出力し、
前記検知手段は、前記同一位置の前記ブロックから出力された時間的に前後する画素信号の加算値の差分に基づいて前記被写体変化を更に検知し、
前記検知手段が被写体変化を更に検知した場合に、前記撮像素子は、前記被写体変化が更に検知されたブロックについて、前記ブロックに含まれる各画素回路の画素信号値を出力し、前記被写体変化が検知されなかったブロックについて、該ブロックに含まれる画素回路の画素信号値を出力せず、
前記検知手段が被写体変化を更に検知しない場合に、前記撮像素子は、前記第1の所定枚数よりも大きい第2の所定枚数の画像を撮影するまで前記各画素回路の画素信号値を出力することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像素子は、前記被写体変化が検知されなかったブロックに含まれる画素回路の画素信号値としてダミーデータを出力することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像素子は、前記検知手段を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮像素子は複数の基板が積層された構造を有し、
前記画素回路と前記検知手段とは異なる基板に形成されていることを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項10】
画素回路が行列に配置されて構成され、複数の画素回路からなるブロックごとの画素信号の加算値および各画素回路の画素信号値をそれぞれ出力可能な撮像素子を備える撮像装置の制御方法であって、
検知手段が、前記撮像素子における同一位置の前記ブロックから出力された時間的に前後する画素信号の加算値の差分に基づいて被写体変化を検知する検知工程と、
前記検知工程において被写体変化が検知された場合に、前記撮像素子から前記被写体変化が検知されたブロックについて該ブロックに含まれる各画素回路の画素信号値を出力する出力工程と
を含み、
前記出力工程では、前記被写体変化が検知されなかったブロックについて該ブロックに含まれる各画素回路の画素信号値は出力せず、
前記画素信号の加算値は、前記ブロックに含まれる前記複数の画素回路からの画素信号うち、複数の色のうちの所定の色の画素信号の加算平均により取得されることを特徴とする撮像装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
観測、監視等を目的として撮像装置が広く利用されている。撮像装置による撮像動作に関しては、所定間隔による撮像だけでなく、前後フレーム間での輝度値の差分を用いて被写体(或いは、被写体の変化)を検知し、被写体変化によるイベント発生の判断を得てから撮影および記憶動作を開始する撮像装置が知られている。
【0003】
特許文献1は、被写体検知を、通常の撮影時とは異なる撮影駆動モードにて行わせており、撮像素子の面内で画素信号が加算された複数の分割ブロック単位の出力に基づいて被写体を検知する。これにより、画像および輝度情報として情報処理量を減少させて消費電力を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-22935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術では、被写体検知後の撮影および記録動作において消費電力は通常の撮影モードと同様のため、被写体が頻繁に検知される場合は消費電力低減効果が小さくなってしまう。
【0006】
そこで、被写体を検知する撮像装置において、被写体変化が頻繁に検知される場合においても消費電力の低減を可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための発明は、画素回路が行列に配置されて構成され、複数の画素回路からなるブロックごとの画素信号の加算値および各画素回路の画素信号値をそれぞれ出力可能な撮像素子を備える撮像装置であって、
前記撮像素子における同一位置の前記ブロックから出力された時間的に前後する画素信号の加算値の差分に基づいて被写体変化を検知する検知手段を備え、
前記検知手段が被写体変化を検知した場合に、前記撮像素子から前記被写体変化が検知されたブロックについて該ブロックに含まれる各画素回路の画素信号値を出力し、前記被写体変化が検知されなかったブロックについて該ブロックに含まれる各画素回路の画素信号値を出力せず、
前記画素信号の加算値は、前記ブロックに含まれる前記複数の画素回路からの画素信号うち、複数の色のうちの所定の色の画素信号の加算平均により取得されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被写体を検知する撮像装置において、被写体変化が頻繁に検知される場合においても消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に対応する撮像装置100の構成例を示すブロック図。
図2】実施形態に対応する撮像素子200の構成例を示すブロック図
図3】実施形態に対応する画素アレイ部220の構成例を示す図。
図4】実施形態における画素回路230の構成例を示す図。
図5】実施形態におけるイベント検知部214の構成例を示す図。
図6】実施形態に対応する撮像画像及び被写体検知の一例を説明する図。
図7】実施形態に対応する撮像装置100の動作の一例を示すフローチャート。
図8】実施形態に対応する撮像素子200の構造を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
[実施形態1]
以下、添付の図面を参照して、第1の実施形態について説明する。図1は、典型的な実施形態の一例に対応する撮像装置100の構成例を示すブロック図である。図1において、撮像レンズ101は、被写体からの光を撮像素子200へ集光する。撮像素子200は、CMOSの撮像センサであって、撮像レンズ101を通して入射した光を光電変換して画像信号として出力可能に構成される。また、撮像素子200は、内部に画素出力値の変化量および変化領域の検知結果に応じて、撮像素子200自身の駆動制御を選択・変更する制御機能を有している。上記機能を有することにより、撮像素子自身による被写体の変化の検知から好適な撮影モードへの選択・変更を可能としている。また、撮像素子200は任意の撮像領域にクロップして撮影する機能を有する。
【0012】
画像処理部102は、撮像素子200から出力される画像信号に対して、フィルタ処理等の各種補正や圧縮等のデジタル画像処理等を行う。また、4KモードやFullHDモード等による画素信号についても、ここで各モードに応じたリサイズ等の画像処理が行われる。制御部103は、撮像素子200の駆動タイミングの制御を行うとともに、画像処理部102、表示部106等の撮像装置全体の統括的な駆動・制御を行う。また、制御部103では、ユーザの命令を受けて、静止画モード、FullHDモード、4Kモード等の複数の撮影モードから選択された撮影モードに応じて駆動制御を行う。
【0013】
また、撮像装置100においては、撮像素子200が被写体変化の検知に応じて撮影モードの選択・変更を行う検知モードを備えており、撮像素子200の検知モードへの動作許可の制御も行う。
【0014】
メモリ104、記憶部105は、画像処理部102から出力された画像信号を記憶保持する不揮発性メモリやメモリカード等の記憶媒体である。表示部106は、撮影画像や各種設定画面等の表示を行うディスプレイである。操作部107は、ボタン、タッチパネル、スイッチ等で構成されユーザからの操作入力を受け付けて、制御部103に対してユーザの命令を反映する。
【0015】
図2は、典型的な実施形態に対応する撮像素子200の構成例を示すブロック図である。撮像素子200は、複数の画素が行列状に配置された画素アレイ部220を備えており、画素単位による出力、及び、画素アレイ部220の面内を所定数の複数の画素回路の組からなる画素ブロックに分割し画素ブロック毎に画素信号を加算して出力する機能を有している。画素アレイ部220からの画素信号出力は、AD変換回路212にて画素列毎または後述する画素ブロック単位としたブロック列毎にてアナログ-デジタル変換された後、水平走査回路213の駆動により順次イベント検知部214へ転送される。
【0016】
イベント検知部214では、モード制御部216の制御信号を受け、画素ブロック単位による出力に対して、所定イベントの判断基準とする画素出力値の変化量を検知するとともに、検知結果の情報を撮像素子200の駆動モード制御を行うモード制御部216へ送信する。また、イベント検知部214は、画素アレイ部220の出力が画素単位である場合には、出力された画素データをそのまま信号処理部215へ転送する。さらにイベント検知部214は、画素ブロック単位で出力データを積算し、積分データとして露光制御部217に供給する。
【0017】
信号処理部215は、イベント検知部214から出力される画素データの前後に、画素データの変化量や撮像素子200の駆動モード等の情報データを付加して撮像素子200の外部に出力する。モード制御部216は、撮像素子内のイベント検知部214または撮像素子外の制御部103からの信号を受けて、AD変換回路212、水平走査回路213、垂直走査回路211の各々に駆動タイミング制御信号を供給し、撮像素子200の撮像モード毎に応じた駆動制御を行う。また、モード制御部216は、イベント検知部214からの信号に応じてクロップ駆動させるか否かを判断し、クロップ駆動させる場合はイベント検知部214からの信号に基づいて駆動させる撮像領域を制御してクロップ駆動を実行する。また、モード制御部216は、制御部103から撮像素子200が検知モードとして動作が許可されている場合、撮像素子200を検知モードとして画素ブロック毎に画素信号を加算する駆動を開始させる。
【0018】
垂直走査回路211は、各行ごとに接続される信号線を介して、画素単位または画素ブロック単位による行選択・駆動を行う。露光制御部217は、イベント検知部214からの積分データに基づき、撮像素子の露光制御として露光時間の算出を行い、モード制御部216へ撮像素子の露光制御信号を供給する。
【0019】
図3は、典型的な実施形態に対応する画素アレイ部220の構成例を示す図である。画素アレイ部220には、画素回路230が行列状に複数配置されている。またイベント検知の加算単位として複数の画素回路の組からなる画素ブロックが点線の矩形形状240で示されている。なお、説明を簡略化するため、本実施形態においては、2行2列の画素回路の組を画素ブロック240とした場合を説明するが、画素ブロックを構成する画素回路の組の行列数は、これに限られるものではない。また、図3では、画素ブロック240を2×2に行列配置した場合を説明するが、画素アレイ部220を構成する画素ブロックの行列数及び配置はこれに限定されるものではない。
【0020】
画素ブロック240は、そのブロック単位に対する行方向に2つのリセット制御信号RST(例えばRST1、RST2)、2つの行選択制御信号SEL(例えばSEL1、SEL2)、2つの転送制御信号(例えばTX1、TX2)、加算信号ADD(例えばADD1)、加算後信号の選択制御信号ADD_SEL(例えばADD_SEL1)をそれぞれ供給するための水平信号線が配線される。
【0021】
また、各画素回路230にはリセット制御信号RST、行選択制御信号SEL、転送制御信号TXをそれぞれ供給するための水平信号線が配線されている。さらに画素ブロックごとに加算信号ADD、加算後信号の選択制御信号ADD_SELをそれぞれ供給するための水平信号線が配線されている。列方向には垂直信号線410を供給するための水平信号線が配線されている。画素からの出力は垂直信号線410を介して、接続先のAD変換回路212に入力される。
【0022】
上記の各水平信号線の選択駆動が行われることで、撮像素子から行単位にて順次、各垂直信号線410を介して出力が行われる。画素アレイ部220からの出力は、撮像装置100が検知モードで動作していない場合、各画素回路230の画素信号が順次出力されるのに対し、検知モードの場合、後述する画素ブロック240内のFDごとの加算スイッチを動作させることで、加算結果が特定の画素から出力される。
【0023】
図4は、典型的な実施形態に対応する画素回路230の等価回路の一例を示す図である。図4では、説明のため、1つの画素ブロック240に対応する画素回路230が4つ配置された例を示す。左上の画素回路230-1を中心に説明をすると、フォトダイオード406-1にて発生および蓄積された電荷を、転送制御信号TX1を制御して転送スイッチ405を介してフローティングディフュージョン(以後FD)407-1に転送する。ソースフォロアアンプ408-1は垂直出力線に接続された定電流源411-1と共に構成され、FD407-1に蓄積された電荷に基づく電圧信号を増幅して、画素信号として出力する。ソースフォロアアンプの出力を行選択制御信号SEL1が行選択スイッチ409を制御して垂直出力線410-1へ接続する。
【0024】
FD407-1に蓄積されている不要電荷をリセットする場合、リセット制御信号RST1によりリセットスイッチ404-1を制御する。さらにフォトダイオード406-1のリセットは、リセットスイッチ404-1と共に、転送制御信号TX1により転送スイッチ405-1を制御して実行する。転送制御信号TX1、リセット制御信号RST1、及び、行選択制御信号SEL1をそれぞれ供給する水平信号線は垂直走査回路211につながっており、各行にそれぞれの制御信号が供給される。
【0025】
撮像装置100が検知モードで動作していない場合、各画素回路230の出力信号を加算せず、各画素回路から画素信号として読み出す。本実施形態では、検知モードでない場合の読み出し方法として、全画素ブロックの各画素回路から画素信号を読み出す撮影モードと、クロップ駆動により一部の画素ブロックに含まれる各画素回路から画素信号を読み出す撮影モードとがある。ここで、「クロップ駆動」をしない撮影モードを「全画面撮影モード」と呼び、クロップ駆動をする撮影モードを「クロップ撮影モード」と呼ぶ。クロップ撮影モードでは、直前の検知モードで被写体変化が検知された画素ブロックの画素回路のみをクロップして撮影する。撮影モード遷移の条件やフローについては別途後述する。
【0026】
クロップ撮影モードでは、モード制御部216により選択された特定の画素回路のみを垂直走査回路211と水平走査回路213によって走査し、各画素回路230から転送した画素信号を読み出す。例えば、検知モードによって図3における画素ブロック240-1で被写体変化が検知され、クロップ撮影モードに遷移した場合、クロップ撮影モードでは画素ブロック240-1以外の画素におけるリセット制御、行選択制御、転送制御、AD変換を実施しない。このため転送制御信号TX3、TX4とリセット制御信号RST3、RST4と行選択制御信号SEL3、SEL4を供給するための電力は消費されない。また、垂直出力線410-3、410-4に接続されたAD変換回路も動作しないため、AD変換動作のための電力は消費されない。また、垂直出力線410-1、410-2に接続されたAD変換回路も画素ブロック240-3の画素についてはAD変換動作をしないため、その分の電力は消費されない。
【0027】
クロップ撮影モードにおいては、クロップ駆動によって読み出しをしない画素が多いほど、画素アレイ部220においてリセット制御、行選択制御、転送制御のために消費する電流やAD変換回路212のAD変換動作が減少するため、撮影時の消費電力が減少する。
【0028】
本実施形態では、クロップ駆動によって読み出しをしない画素回路230の出力として、AD変換回路212はダミーデータを出力する。このため、全画面撮影モードとクロップ撮影モードとで撮像素子200から出力される画像サイズは同様となる。このダミーデータの値は、例えば画素におけるゼロ出力と同じ値に設定しても良い。
【0029】
検知モードにおいては、FD407に転送した信号を、加算信号ADDでスイッチ413、スイッチ414、スイッチ415をオンしてFD(407-1、407-2、407-3、407-4)で加算平均する。その後、加算後信号の選択制御信号ADD_SELを制御して、加算平均した信号(画素信号の加算値)を230-3画素から読み出す。行選択スイッチ409-3には、行選択制御信号SEL2と、加算後信号の選択制御信号ADD_SELとがOR回路412を介して入力されているので、いずれかの選択制御信号が入力されるとソースフォロアアンプの出力が垂直出力線410-1へ接続される。このようにして、2×2の画素信号を加算平均した加算値を検知モードの出力とする。ここで、画素信号の加算単位は2×2に限るものではない。また、加算値の生成方法はFDでの加算に限らない。例えば、複数の行の画素回路を垂直出力線につないで画素信号を加算平均し、水平の加算はAD変換回路の前の加算回路を使用して実施する形でもよい。
【0030】
図5は、典型的な実施形態に対応するイベント検知部214の構成例を示す図である。イベント検知部214にはAD変換回路212の出力信号が入力される。出力切替部260は、モード制御部216からの制御信号を受けて、撮像素子200の駆動制御として選択された撮影モードに応じて入力された信号の出力先を切り替える。撮像素子200の駆動制御として選択された撮影モードが被写体変化を検知する検知モードの場合、出力切替部260は、画素信号の出力先を積算演算処理部261に切り替える。また、撮影モードが検知モードでない場合、出力切替部260は、画素信号の出力先を信号処理部215に切り替える。
【0031】
積分演算処理部261は、出力切替部260から出力された画素信号値の積算を行い、積算データを露光制御部217へ供給する。また、画素ブロック単位でデータを保持するメモリ262へ出力する。メモリ262は、画素ブロック単位で加算平均した信号(画素信号の加算値)と、対応する画素ブロックの撮像素子200の面内における位置情報とを関連付けて記憶・保持する。
【0032】
差分検知部263は、直近に読み出された画素ブロック単位の画素信号の加算値と、メモリ262に保持されている同一位置の画素ブロックの過去の画素信号の加算値とから差分値を取得する。ここで、差分値の取得に用いる画素信号の加算値は、同一位置の画素ブロックの時間的に前後する、あるいは、隣接する画素信号の加算値とする。取得された差分値は比較部264に供給される。比較部264は、取得された差分値を所定の閾値と比較し、イベント検知が有ったか否かを判定する。比較部264にて得られた結果はモード制御部216を介して制御部103に送信される。制御部103は結果に基づいて撮像素子200の面内における分割領域において、被写体変化が検知される等のイベントが発生した領域を判別する。
【0033】
図6は、実施形態に対応する撮像画像及び被写体変化の検知の一例を説明する図である。図6(A)は、画面内を画素ブロックにより4×4に分割した例を示している。図中の破線は画素ブロック単位による領域範囲を示すものであり、以降、説明の便宜上、画面上における画素ブロックの位置について、画面左上から00、その右隣を01、以降画面右下33まで、行を左側の数字、列を右側の数字として表して説明を行う。
【0034】
図6(B)は、撮影画面上の被写体の一例示した図であり、被写体として家屋が右下2×2ブロックに位置することを示している。図6(C)は、図6(B)に示した被写体に対して、画素アレイ部220の画素ブロック240毎による出力を模式的に表した図である。同図において家屋部分に位置する領域からの出力は、画素ブロック22、23、32、33から得られ、その出力は、家屋およびその背景から画素信号が加算平均された出力となる。なお、本例においては、家屋に対する背景が明るい場合を示しており、画素ブロック22、23では、家屋と背景の占める割合から画素ブロック32、33に対して低い出力値となる。
【0035】
図6(D)は、図6(B)同様に被写体の一例を示した図であり、図6(B)の撮影状況において被写体の変化として人物が左下の1ブロックに加わるものとなる。図6(E)は、図6(D)での被写体に対する画素ブロック毎の出力を表した模式図を示している。ここで、撮影領域の状態が図6(B)に示す状態から図6(D)に示す状態に変化した場合を考える。イベント検知部214の差分検知部263は、メモリ262に過去データとして保持されている図6(C)に示す画素ブロック単位の出力と、直近で読み出された図6(E)に示す画素ブロック単位の出力から同位置の画素ブロック毎の差分値を取得する。
【0036】
取得された差分値は、比較部264にて所定の閾値と比較され、結果、画素ブロック30の差分値が所定の閾値以上である場合に被写体変化が検知される。この差分値には、撮像素子の面内における位置情報(例えば、行列2次元の分割位置を示す情報。図6(E)の場合には画素ブロック30を示す情報)が紐付けられているので、撮像面内のどの位置で被写体変化が検知されたかを判別することができる。
【0037】
次に、図7を参照して典型的な実施形態に対応する撮像装置100の動作を説明する。図7は、典型的な実施形態に対応する撮像装置100の動作の一例を示すフローチャートであり、検知モードにおける動作フローを示すものである。以下フローチャートに従い動作説明を行う。
【0038】
撮像装置100は、起動後、S701において制御部103が撮像素子200に対し検知モード動作の許可制御を行い、検知モードに移行する。次にS702では、制御部103は撮像素子200を制御して画素ブロック毎に画素信号が加算平均された信号(画素信号の加算値)を出力させ、メモリ262に一時に保存する。
【0039】
次にS703では、制御部103は、S702にて得られた画素ブロック毎の画素信号の加算値が動作開始後の2枚目以降のものであるかどうかを判定する。もし、2枚目以降である場合、処理はS704に進み、2枚目未満の場合、処理はS702に戻る。2枚目未満の場合、被写体変化検知のための過去データとの差分が得られないためである。S704では、差分検知部263が、S702で取得した画素信号の加算値につき、画素ブロック毎に差分値を取得する。すなわち、メモリ262に保持されているS702で取得した画素信号の加算値と同一の画素ブロックにおける時間的に前後の関係にある画素信号の加算値との差分値を取得する。
【0040】
次にS705では、比較部264は、S704にて取得された差分値に基づき、イベント検知の有無を判定する。比較部264は、各差分値を所定の閾値と比較し、閾値以上であるか否かを判定する。そして、閾値以上の差分値が存在する場合には、その画素ブロック数をカウントする。カウントなし(=0)であれば、変化検知のイベントなしとして、処理はS702に戻り、上述したS704までの被写体変化の検知の動作を繰り返す。一方、カウントが計数されていれば(>0)、イベント検知が有ったとして、処理はS706へ進む。
【0041】
次にS706では、制御部103は、S705でカウントした被写体変化のある画素ブロック数が所定数n以上であるか否かを判定する。ここでは、被写体変化が検知された画素ブロック数を判定しているが、これは、被写体変化が検知された画素ブロックの割合を判定することと等価である。換言すれば、S706では、被写体変化が検知された画素ブロックの割合が所定の割合を超えるかどうかを判定している。もし、カウントされた画素ブロック数がn未満であれば撮像面内の限定された範囲のみで被写体変化ありとして、処理はS711へ進む。また、n以上の場合、撮像面内の広い範囲で被写体変化ありとして、処理はS707へ進む。このようにして被写体検知に応じて検知モードを一旦停止して、全画面撮影モードまたはクロップ撮影モードに移行する。
【0042】
S707では、制御部103より撮像素子200に対し全画面撮影モード動作の許可制御を行い、全画面撮影モードに移行する。次にS708では、制御部103は、全画面撮影モードに移行した後、全画面撮影モードで出力した画像枚数をカウントするカウント値CNTを0にリセットする。続くS709では、制御部103は、撮像素子200を制御して全画面撮影モードにて撮影を行い、画像データを出力してカウント値CNTをインクリメントする。続くS710では、制御部103は、カウント値CNTが予め決められた画像枚数(所定枚数)である値N以上であるか否かを判断する。カウンタ値CNTがN未満である場合、処理はS709へ戻り全画面撮影モードを継続する。一方、カウンタ値CNTがN以上である場合、全画面撮影モードから再度検知モードに戻って被写体変化を検知するために処理はS701へ戻る。このS708からS710のループによって、全画面撮影モードにおいて所定枚数以上の画像の撮影後、或いは、一定時間継続した後に検知モードが再開されることになる。
【0043】
一方、S711では、制御部103より撮像素子200に対しクロップ撮影モード動作の許可制御を行い、クロップ撮影モードに移行する。次にS712では、S705で検知した画素ブロックの撮像面内の座標情報をイベント検知部214からモード制御部216へ送信し、モード制御部216はイベント検知された画素ブロックの撮像領域をクロップ領域に指定する。次にS713、S714では、制御部103は、クロップ撮影モードで出力した画像枚数をカウントするカウント値CNT、CNT2をそれぞれ0にリセットする。カウント値CNTはイベント検知後に撮影した画像枚数を表す変数であり、カウント値CNT2はクロップ撮影モード内における、被写体変化検知用撮影の実行タイミングを判定するための変数である。本実施形態では、一例としてクロップ撮影モードにおいてM枚以上の画像データが出力されると、クロップ撮影モードを継続しつつ、被写体変化の検知を行う場合を説明する。
【0044】
S715では、制御部103は撮像素子200を制御してクロップ撮影モードにて撮影を行い、画像データを出力してカウント値CNT、CNT2をそれぞれインクリメントする。S716では、制御部103は、カウント値CNT2が予め決められた値M以上であるか否かを判定する。カウンタ値CNT2がM未満である場合、処理はS715へ戻りS715以降を繰り返し、クロップ撮影モードを継続する。一方、カウンタ値CNT2がM以上である場合には、クロップ撮影モード内で定期的に被写体変化を検知するために処理はS717へ進む。
【0045】
S717では、制御部103は撮像素子200を制御して検知用駆動による撮影を実施する。S702と同様に撮像素子200内の画素ブロック毎に画素信号の加算値の出力を行わせ、メモリ262に一時的に保存する。このとき、クロップせず全撮像領域での撮影を実施して、画素信号の加算値を出力する。次にS718では、差分検知部263が、S717で取得した画素信号の加算値につき、画素ブロック毎にメモリ262に保持されている過去の画素信号の加算値との差分値を取得する。次にS719では、比較部264がS718にて得られた差分値に基づき、イベント検知の有無を判定する。ここでの判定の詳細はS705で記載したのと同様である。判定の結果、変化検知のイベントなしの場合、処理はS720へ進む。また、イベント検知ありの場合、処理はS721へ進む。
【0046】
S720では、制御部103がカウント値CNTが予め決められた値N以上であるか否かを判断する。カウンタ値CNTがN未満である場合、処理はS714へ戻りクロップ撮影モードを継続する。カウンタ値CNTがN以上である場合、クロップ撮影モードから検知モードに移行するために処理はS701へ戻る。このS713からS720のループによって、クロップ撮影モードを一定時間だけ継続した後に検知モードを再開する動作がなされる。
【0047】
一方、S721では、比較部264は、S719でカウントした被写体変化のある画素ブロック数が所定数n以上であるか否かを判定する。もし、カウントされた画素ブロック数がn未満であれば撮像面内の限定された範囲のみで被写体変化ありとして、処理はS712へ進む。また、n以上の場合、撮像面内の広い範囲で被写体変化ありとして、処理はS707へ進む。
【0048】
このように、被写体変化をイベントとして検知する撮像装置において、イベントが検知された撮像領域のみをクロップして撮影することで、イベントが頻繁に検知される場合においても、消費電力の低減を可能とした撮像装置を提供することができる。また、検知モードにおいて、被写体変化のイベント検知までを画素ブロック毎による画素加算出力される駆動モードにて行うことで、検知モード時の消費電力を低減することができる。また、検知モードにおいて被写体変化を検知し、イベントが検知された領域が撮像面の一部の場合は、被写体変化のある撮像面領域のみをクロップ撮影モードで撮影することで撮影時の消費電力や記憶される画像のデータサイズを低減することができる。
【0049】
また、クロップ撮影モードにおいても、一定間隔で被写体検知用の検知モードでの撮影を実施し、被写体変化のある撮像面領域を再取得してクロップ領域を更新することで、被写体変化にクロップ領域を追従させることができる。このため、イベントが頻繁に検知されて撮影モードに頻繁に遷移する場合であっても、撮影時の消費電力や記憶される画像のデータサイズを低減しつつ、撮影したい被写体の動きを記録することができる。
【0050】
次に、図8を参照して、撮像素子200の構造について説明する。上記の実施形態において、撮像素子200は、図8Aに示されるように斜線で示される半導体基板801と、白色で示される半導体基板802とを有するように構成することができる。半導体基板801および半導体基板802は、図8Bに示されるように重畳された状態で封止され、モジュール化(一体化)される。これにより、図8Cに示されるように、半導体基板801および半導体基板802は、多層構造(積層構造)を形成する。半導体基板801に形成される回路と半導体基板802に形成される回路は、ビア(VIA)等により互いに接続される。図8では2層の場合を示したが、積層数をより多くしてもよい。
【0051】
このように、撮像素子200は、半導体基板801と半導体基板802が多層構造を形成するように一体化されたモジュール(LSI(Large Scale Integration)チップとも称する)として形成されてもよい。モジュール内部において半導体基板801と半導体基板802がこのように多層構造を形成することにより、撮像素子200は、半導体基板のサイズを増大させずに、より大規模な回路の実装を実現することができる。すなわち、撮像素子200は、コストの増大を抑制しながら、より大規模な回路を実装することができる。
【0052】
半導体基板801には、画素アレイ部220およびAD変換回路212、垂直走査回路211、水平走査回路213などが形成される。また、半導体基板802には、イベント検知部214、信号処理部215、モード制御部216、露光制御部217を形成することができる。
【0053】
また、上述の実施形態において、検知モードを、所定ブロック内の複数の画素信号を加算して読み出すことにより出力画素数を低減する撮影モードとして説明したが、画素数の低減方法はこれに限定されるものではない。例えば、読み出す画素を周期的に間引くことで出力画素数を低減してもよい。その際、画素ブロック内の画素を所定間隔により間引いた後、画素信号を加算して、被写体変化の検知を行ってもよい。
【0054】
また、撮像素子にカラーフィルタ等が配され、色別の画素出力となる場合においては、同色の画素が配される行または列によって同色の画素信号を加算するようにしてもよい。その際、複数の色のうち、一部の色の画素のみの画素信号を加算するようにしてもよい。例えば、RGBの場合にはGの画素のみの画素信号を加算してもよい。
【0055】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0056】
100:撮像装置、200:撮像素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8