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  • 特許-伸縮性繊維シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】伸縮性繊維シート
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/74 20060101AFI20240619BHJP
   D04H 1/54 20120101ALI20240619BHJP
   D04H 1/66 20120101ALI20240619BHJP
【FI】
D04H1/74
D04H1/54
D04H1/66
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019225437
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021094072
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花岡 博克
(72)【発明者】
【氏名】竹内 政実
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-251954(JP,A)
【文献】特開2003-038213(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00 - 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向へ配向した捲縮繊維を含有する繊維層を備えた、メディカル用品に使用する伸縮性繊維シートであって、
繊維層の構成繊維は捲縮繊維のみであり、
前記繊維層は、前記一方向と垂直を成す方向に前記繊維層を横断して連続的に存在する繊維固定部分を複数備えており、
前記繊維固定部分は、バインダにより前記構成繊維が接着一体化している部分、あるいは、前記構成繊維が熱融着により接着一体化している部分であって、
隣り合う前記繊維固定部分間の最短距離の長さが、前記捲縮繊維のみかけ繊維長以下である、
メディカル用品に使用する伸縮性繊維シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性繊維シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、身体への追従性を向上させる目的で伸縮性を有するシート(伸縮性繊維シート)が活用されている。例えば、おむつのウエスト周りや足の付根周り、サポーターや包帯、貼付薬用基材やプラスター基材、フェイシャルマスクといったメディカル用品や衛生用品などに、伸縮性繊維シートが使用されている。
このような伸縮性繊維シートとして、例えば、特開平07-252762号公報(特許文献1)には、一方向へ配向した捲縮繊維を含有する繊維層を備えていると共に、前記一方向と垂直を成す方向に前記繊維層を横断して連続的に存在する繊維固定部分を複数備えている伸縮性繊維シートが開示されている。
このような構成を有する伸縮性繊維シートは、捲縮繊維が配向している方向へ伸張し易いという性質を有すると共に、当該方向と垂直を成す方向に横断して連続的に存在する繊維固定部分を複数備えているため、当該方向と垂直を成す方向へ伸長し難いという性質を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-252762号公報(特許請求の範囲、0025、0051-0052、0061-0062、0065、0083、図27など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本願出願人が検討を続けた結果、特許文献1が開示する伸縮性繊維シートは、前記一方向(伸張し易い方向)へ伸張させた際に破断を発生し易いことがあり、引張強さに劣るものであった。そして、引張強さに劣る伸縮性繊維シートは、上述したような用途へ使用し難いものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は「一方向へ配向した捲縮繊維を含有する繊維層を備えた、メディカル用品に使用する伸縮性繊維シートであって、
繊維層の構成繊維は捲縮繊維のみであり、
前記繊維層は、前記一方向と垂直を成す方向に前記繊維層を横断して連続的に存在する繊維固定部分を複数備えており、
前記繊維固定部分は、バインダにより前記構成繊維が接着一体化している部分、あるいは、前記構成繊維が熱融着により接着一体化している部分であって、
隣り合う前記繊維固定部分間の最短距離の長さが、前記捲縮繊維のみかけ繊維長以下である、
メディカル用品に使用する伸縮性繊維シート。」である。
【発明の効果】
【0006】
本願出願人が検討を続けた結果「一方向へ配向した捲縮繊維を含有する繊維層を備えた、伸縮性繊維シートであって、前記繊維層は、前記一方向と垂直を成す方向に前記繊維層を横断して連続的に存在する繊維固定部分を複数備えて」いる伸縮性繊維シートにおいて、「隣り合う前記繊維固定部分間の最短距離の長さが、前記捲縮繊維のみかけ繊維長以下である」という構成を満足する伸縮性繊維シートは、前記一方向(伸張し易い方向)の引張強さに優れていることを見出した。ここでいう「捲縮繊維のみかけ繊維長」とは、後述する(捲縮繊維のみかけ繊維長の測定方法)により測定される値を指す。なお、捲縮繊維のみかけ繊維長は、捲縮繊維の繊維長よりも短い長さである。
【0007】
つまり、従来技術にかかる伸縮性繊維シートでは、繊維固定部分間の最短距離の長さが捲縮繊維のみかけ繊維長よりも長いことがあり、その場合には、捲縮繊維の両端は隣り合う前記繊維固定部分により固定されていない、また、捲縮繊維の当該両端同士の間は隣り合う前記繊維固定部分により固定されていない。
そのため、このような態様の伸縮性繊維シートでは、前記一方向(伸張し易い方向)の破断強度が、捲縮繊維同士の絡み合いのみによって維持されている。その結果、伸張時に破断し易いという性質を有するものであった。
【0008】
一方、本発明にかかる伸縮性繊維シートでは、繊維固定部分間の最短距離の長さが捲縮繊維のみかけ繊維長以下であることによって、捲縮繊維の両端が隣り合う前記繊維固定部分により固定される、あるいは、隣り合う前記繊維固定部分により捲縮繊維の当該両端同士の間が固定される。そのため、本発明にかかる態様の伸縮性繊維シートでは、前記一方向(伸張し易い方向)の破断強度が、捲縮繊維同士の絡み合いに加え、捲縮繊維の両端部分あるいは当該両端部分の間が隣り合う繊維固定部分により固定されているため捲縮繊維自体の強度によっても維持される。その結果、伸張時に破断し難いという性質を有するものである。
以上から、本発明の構成を備える伸縮性繊維シートは、前記一方向(伸張し易い方向)の引張強さに優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にかかる伸縮性繊維シートを主面側からみた、模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、常圧のもと25℃温度条件下で測定を行った。また、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、少数第一位までが求める値である場合、測定によって少数第二位まで値を求め、得られた少数第二位の値を四捨五入することで少数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。
そして、本発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0011】
本発明の伸縮性繊維シートについて、主として図1を用いて説明する。なお、図1に例示する伸縮性繊維シートは、繊維固定部分を二つ備えた繊維層のみで構成されてなるものである。
【0012】
本発明の伸縮性繊維シート(10)は、一方向へ配向した捲縮繊維を含有する繊維層(1)を備えている。なお、図1では当該一方向を矢印線Aで図示しており、紙面上の左右方向と平行をなす方向である。なお、伸縮性繊維シート(10)の一方向(A)は、縮性繊維シート(10)の生産方向(多くの場合、伸縮性繊維シート(10)の長辺方向)と平行をなす方向であることができる。そして、繊維層(1)は、前記一方向(A)と垂直を成す方向に繊維層(1)を横断して連続的に存在する繊維固定部分(2)を複数備えている。また、図1では当該一方向(A)と垂直を成す方向を矢印線Bで図示しており、紙面上の上下方向と平行をなす方向である。なお、伸縮性繊維シート(10)の一方向(A)と垂直を成す方向(B)は、縮性繊維シート(10)の生産方向と垂直をなす方向(多くの場合、伸縮性繊維シート(10)の長辺方向と垂直をなす方向)と平行をなす方向であることができる。
【0013】
また、繊維層(1)における隣り合う繊維固定部分(2)間の最短距離の長さ(C)が、捲縮繊維のみかけ繊維長以下である。
本発明の伸縮性繊維シート(10)は、一方向(A)へ配向した捲縮繊維を含有する繊維層(1)を備えている。当該繊維層(1)は主として、伸縮性繊維シート(10)の形状を保つ役割ならびに伸縮性繊維シート(10)に伸縮性を与える役割を担う。
【0014】
繊維層(1)は構成繊維として捲縮繊維を含んでいる。ここでいう捲縮繊維とは、例えば、クリンプを有する繊維や潜在捲縮繊維の捲縮が発現してなる繊維(例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型などの複合繊維など)であり、繊維層(1)は捲縮繊維を含んでいることによって伸縮性に富むものである。繊維層(1)の構成繊維の質量に占める捲縮繊維の質量割合は適宜調整するものであるが、より伸縮性に富む伸縮性繊維シート(10)を提供できるよう、30質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上であるのが好ましく、50質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのが好ましく、80質量%以上であるのが好ましく、90質量%以上であるのが好ましく、繊維層(1)の構成繊維が捲縮繊維のみであるのがより好ましい。
【0015】
繊維層(1)の構成繊維をなすポリマーは適宜選択でき、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポ捲縮繊維を構成する繊維を構成するポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知のポリマーを採用できる。
【0016】
なお、これらのポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、またポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、またポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでもよい。
更には、複数のポリマーを備えていても良く、複数のポリマーを混ぜ合わせた混合ポリマーを備えていてもよい。
【0017】
これら例示したポリマーのうち、詳細は後述で説明するが、捲縮繊維を含む繊維層(1)の構成繊維同士が熱融着してなる繊維固定部分(2)を容易に形成できるように、捲縮繊維はポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂で構成されているのが好ましい。加えて、薬剤を吸着し難いという特徴を有していることからポリプロピレン系樹脂あるいはポリエステル系樹脂のみ(より好ましくはポリエステル系樹脂のみ)で構成された繊維を構成繊維としてなる繊維層(1)を備えた伸縮性繊維シート(10)であるのがより好ましい。
【0018】
捲縮繊維など繊維層(1)の構成繊維の繊維長は適宜選択でき、特定長にカットされた短繊維や長繊維、連続繊維(直接紡糸法を用いて調製された特定長にカットされていない繊維など)であることができるが、伸縮性に優れた伸縮性繊維シート(10)を提供できるよう、特定長にカットされた繊維であるのが好ましい。繊維長は20~150mmであることができ、25~100mmであることができ、30~90mmであることができ、40~80mmであることができる。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c 直接法(C法)に則って測定された繊維長をいう。
【0019】
捲縮繊維など繊維層(1)の構成繊維の繊度も適宜選択でき、伸縮性に優れた伸縮性繊維シート(10)を提供できるよう、例えば0.01~100dtexであることができ、0.1~50dtexであることができ、0.5~30dtexであることができ、1~10dtexであることができる。
【0020】
本発明でいう「捲縮繊維のみかけ繊維長」とは、以下の測定方法により測定される長さであり、捲縮繊維の繊維長よりも短い。
(捲縮繊維のみかけ繊維長の測定方法)
1.捲縮繊維の全体が写る、伸縮性繊維シート(10)あるいは伸縮性繊維シート(10)を構成する繊維層(1)の顕微鏡写真を撮影する。なお、複数の顕微鏡写真を組み合わせることで、捲縮繊維の全体が写る顕微鏡写真を作成しても良い。
2.後述する(捲縮繊維の配向の確認方法)の測定によって判明した、一方向(A)と±20°の角度をもって存在している捲縮繊維を、顕微鏡写真から1本選出し、当該顕微鏡写真上に、当該捲縮繊維と2以上の交点を有する直線を複数引く。
3.複数引かれた各直線における同一の直線上に存在する交点間のうち、最も長い交点間の距離を測定する。
4.上述した1~3の測定を同様にして合計30本の捲縮繊維に対し行い、測定された当該距離の平均値を「捲縮繊維のみかけ繊維長」とする。
【0021】
捲縮繊維のみかけ繊維長は適宜選択できるものであるが、当該長さが長いほど伸縮性に優れる伸縮性繊維シート(10)を提供し易い。そのため、捲縮繊維のみかけ繊維長は、5mm以上であるのが好ましく、10mm以上であるのが好ましく、20mm以上であるのが好ましく、30mm以上であるのが好ましい。一方、上限値も適宜選択できるものであるが、100mm以下であるのが現実的である。
【0022】
繊維層(1)は上述した捲縮繊維以外にも、単繊維や接着繊維(全溶融型の接着繊維や、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの一部溶融型の接着繊維)など、他の繊維を含有していても良い。これらの捲縮繊維以外の繊維は、上述した捲縮繊維と同様の樹脂で構成でき、繊維長や繊度も捲縮繊維と同様の構成とすることができる。
【0023】
繊維層(1)の構成繊維は、略円形や楕円形状の断面形状を有している以外にも、異形断面を有していてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を例示できる。
【0024】
繊維層(1)は、繊維ウェブや不織布あるいは織物や編物などの布帛由来の層であることができる。繊維層(1)を構成する繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0025】
前記布帛が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を、織るあるいは編むことで調製できる。
【0026】
前記布帛が不織布である場合、不織布を製造可能な繊維ウェブの調製方法として、例えば、乾式法、湿式法などを用いることができる。そして、繊維ウエブを構成する繊維同士を絡合および/または一体化して不織布にする方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維同士をバインダで一体化する方法、あるいは、繊維ウエブが熱可塑性樹脂を含んでいる場合には、繊維ウエブを加熱処理することで前記熱可塑性樹脂を溶融して、繊維同士を一体化する方法を挙げることができる。繊維同士を一体化するバインダとして、上述したポリマーなどから選択し採用できる。繊維ウエブを加熱処理する方法として、例えば、カレンダーロールにより加熱加圧する方法、熱風乾燥機により加熱する方法、無圧下で赤外線を照射する方法などを用いることができる。
また、直接紡糸法を用いて、紡糸溶液や溶融した樹脂を細径化して直接紡糸すると共に繊維を捕集して繊維ウェブまたは不織布を調製してもよい。
【0027】
繊維層(1)は繊維同士を接着一体化する、および/または、繊維に後述する機能性成分を担持するため、バインダを備えていてもよい。しかし、薬剤と意図しない反応が発生するのを防止できることや、肌への刺激を低減できること、伸縮性に優れる伸縮性繊維シート(10)を提供できることから、構成繊維以外にバインダが存在していないのが好ましく、その観点から繊維層(1)は、繊維同士がニードルや水流によって絡合して一体化した不織布であるのが好ましい。
【0028】
なお、繊維層(1)は機能性成分を含んでいてもよい。機能性成分の種類は求められる機能によって適宜選択できるため、限定されるものではないが、例えば、抗菌剤や殺菌剤、抗ウイルス剤、抗カビ剤、触媒(例えば、酸化チタンや二酸化マンガンあるいは白金担持アルミナなど)、調湿剤(例えば、シリカゲルやシリカマイクロカプセルなど)、活性炭やカーボンブラックなどの脱臭剤、顔料、芳香剤、陽イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂、美容成分などを挙げることができる。
そして、機能性成分は繊維層(1)の構成繊維の表面及び/又は内部に粒子状、あるいは、各繊維層(1)の表面の一部または全部を被覆するように皮膜状で存在していることができる。繊維層(1)に機能性成分を担持する方法は適宜選択できるが、例えば、機能性成分の分散液、あるいはバインダを含んだ機能性成分の分散液を、繊維層(1)の一方の主面あるいは両主面へ、噴霧あるいは既知のコーティング方法(例えば、グラビアロールを用いたキスコーティング法、ダイコーティング法など)を用いて担持した後、溶媒を除去する方法や、繊維層(1)を上述の分散液に浸漬し引き上げた後、溶媒を除去する方法などを採用できる。
【0029】
繊維層(1)の目付や厚さなどの諸構成や諸物性は適宜調整できるものであるが、目付は5~1000g/mであることができ、10~500g/mであることができ、20~200g/mであることができ、30~100g/mであることができる。そして、厚さは0.05~5mmであることができ、0.1~3mmであることができ、0.5~2mmであることができる。なお、本発明でいう「目付」とは主面における面積1mあたりの質量をいい、主面とは面積が最も広い面をいう。また、本発明でいう「厚さ」は、高精度デジタル測長機(株式会社ミツトヨ社製ライトマチック(登録商標))により計測した値であり、具体的には測定対象物の主面に対して5cmの荷重領域に100gfの荷重をかけた際の前記領域における厚さの値をいう。
【0030】
本発明にかかる伸縮性繊維シート(10)が備える繊維層(1)では、一方向(A)へ配向している捲縮繊維が存在している。繊維層(1)が本構成を満足するものであるか否かは、繊維層(1)を以下の測定へ供することで判断できる。
(捲縮繊維の配向の確認方法)
1.捲縮繊維の全体が写る、伸縮性繊維シート(10)あるいは伸縮性繊維シート(10)を構成する繊維層(1)の顕微鏡写真を撮影する。なお、複数の顕微鏡写真を組み合わせることで、捲縮繊維の全体が写る顕微鏡写真を作成しても良い。
2.顕微鏡写真から捲縮繊維を1本選出し、当該顕微鏡写真上に、捲縮繊維における繊維長方向に存在する両端部を通る直線を引く。なお、捲縮繊維が繊維固定部分(2)を構成している場合には、当該捲縮繊維と繊維固定部分(2)の交点を捲縮繊維の端部とする。
3.上述した1~2の方法を30本以上の捲縮繊維に対し行い、同様にして各々直線を作成する。そして、作成したこれらの直線のうち1/3以上の直線が、ある一方向と±20°の角度をもって存在している場合、測定へ供した繊維層(1)は、一方向(A、上述したある一方向)へ配向した捲縮繊維を含有する繊維層(1)であると判断する。
【0031】
繊維層(1)を構成する捲縮繊維の本数に占める、一方向(A)へ配向している捲縮繊維の割合は適宜調整できるものであるが、当該割合が多いほど強度に優れる伸縮性繊維シート(10)を提供し易い。そのため、繊維層(1)を構成する捲縮繊維のうち1/3より多くの捲縮繊維が一方向(A)へ配向している繊維層(1)であるのがより好ましく、繊維層(1)を構成する捲縮繊維のうち半数より多く(5割より多く)の捲縮繊維が一方向(A)へ配向している繊維層(1)であるのが好ましく、6割以上であるのが好ましく、7割以上であるのが好ましく、8割以上であるのが好ましく、9割以上であるのが好ましい。
【0032】
本発明にかかる繊維層(1)はその主面上において、繊維層(1)における一方向(A)と垂直を成す方向(B)に繊維層(1)を横断して連続的に存在する繊維固定部分(2)を複数備えている。
【0033】
繊維固定部分(2)は、繊維層(1)の構成繊維同士が一体化している部分であり、例えば、バインダにより繊維層(1)の構成繊維が接着一体化された部分、あるいは、繊維層(1)の構成繊維が熱融着されて接着一体化された部分などであることができる。
【0034】
ここでいう、繊維固定部分(2)が一方向(A)と垂直を成す方向(B)に繊維層(1)を横断して連続的に存在しているとは、繊維層(1)における一方向(A)と垂直を成す方向(B)の両端部間にわたり、繊維固定部分(2)が切れ目なく存在している態様を意味する。なお、クロスレイウェブであるなどして、捲縮繊維が一方向(A)に配向している方向を2以上有している繊維層(1)である場合、繊維固定部分(2)は各方向のいずれかと垂直を成す方向(B)に繊維層(1)を横断して連続的に存在する態様であっても良い。
【0035】
具体例として、繊維層(1)における前記両端部間にわたりヒートシールや線状のバインダを施すことによって、繊維層(1)の主面上に捲縮繊維を含む構成繊維同士が溶融一体化や接着一体化した、切れ目のない直線状の繊維固定部分(2)が複数形成されている態様を例示できる。
【0036】
また、繊維層(1)の構成繊維同士がより一体化しているよう、繊維固定部分(2)においては、繊維層(1)の主面のみならず繊維層(1)の厚さ方向にも構成繊維同士が一体化している部分が存在しているのが好ましく、繊維層(1)の一方の主面からもう一方の主面に向かう繊維層(1)の厚さ方向全体に構成繊維同士が一体化している部分が存在しているのが好ましい。
【0037】
繊維固定部分(1)は連続的に存在するものであれば、直線以外にも曲線であってもよい。また繊維固定部分(1)の太さは適宜調整できるが、伸縮性に優れる伸縮性繊維シート(10)を提供できるよう細いのが好ましく、3mm以下であるのが好ましく、2mm以下であるのが好ましく、1mm以下であるのが好ましい。一方、あまりにも細い場合には、伸縮性繊維シート(10)の破断強度が意図せず低下する恐れがあるため、0.05mm以上であるのが現実的である。
【0038】
そして、本発明にかかる繊維層(1)は、繊維固定部分(2)を複数備えている。その数は2以上であれば良く適宜調整でき、繊維固定部分(2)同士の間隔は均一でも不均一であっても良く、また、繊維固定部分(2)同士は平行を成しても成さなくても良い。しかし、効率よく伸縮性に優れる伸縮性繊維シート(10)を提供できるよう、繊維固定部分(2)同士の間隔は均一および/または互いに平行をなすのが好ましい。また、効率よく伸縮性に優れる伸縮性繊維シート(10)を提供できるよう、各繊維固定部分(2)は上述した繊維層(1)の一方向(A)と90°±30°の角度を成し存在しているのが好ましく、垂直を成し存在しているのがより好ましい。
【0039】
また、本発明の繊維層(1)では、隣り合う繊維固定部分(2)間の最短距離の長さ(C)が、捲縮繊維のみかけ繊維長以下である。本構成を備えることによって、繊維層(1)を構成する捲縮繊維の両端部分が隣り合う繊維固定部分(2)により固定される、あるいは、隣り合う前記繊維固定部分(2)により捲縮繊維の当該両端同士の間が固定される。そのため、本発明にかかる態様の伸縮性繊維シート(10)では、一方向(A、伸張し易い方向)の破断強度が、捲縮繊維同士の絡み合いに加え、捲縮繊維の両端部分あるいは当該両端部分の間が隣り合う繊維固定部分(2)により固定されているため、捲縮繊維自体の強度によっても維持される。その結果、伸張時に破断し難いという性質を有するものである。
【0040】
以上から、本発明の構成を備える伸縮性繊維シート(10)は、一方向(A、伸張し易い方向)の引張強さに優れている。
【0041】
また、本発明にかかる繊維層(1)を備えた伸縮性繊維シート(10)は、一方向(A、伸張し易い方向)へ伸張した際、隣り合う前記繊維固定部分(2)により固定されている捲縮繊維における、当該繊維固定部分(2)間に存在する捲縮繊維の繊維長(繊維固定部分(2)間に存在する捲縮繊維の捲縮を伸ばした場合の繊維の長さ)までは、少ない応力で伸張可能であり、その後、伸び止まるような物性を有する。この性質により、それ以上伸張させると伸縮性繊維シート(10)に破断が生じる可能性があると感覚的に分かり易い。そのため、破断するまで伸張に伴う変化を感じ難いエラストマーからなるシートを伸張させた際に発生し得る、破断するまで伸張させてしまうという問題の発生を防止できる。
【0042】
隣り合う繊維固定部分(2)間の最短距離の長さは、適宜調整できるが、捲縮繊維のみかけ繊維長の半分未満であることが好ましく、40%未満であるのが好ましく、30%未満であるのが好ましく、20%未満であるのが好ましい。隣り合う繊維固定部分(2)間の最短距離の長さが、捲縮繊維のみかけ繊維長の半分未満であることによって、繊維固定部分(2)によって固定される捲縮繊維の割合を多くすることができため、より一方向(A、伸張し易い方向)の引張強さに優れる伸縮性繊維シート(10)を提供できる。
一方、繊維固定部分(2)間の最短距離の長さが短すぎると、伸縮性繊維シート(10)の伸張性が意図せず低下する恐れがあるため、繊維固定部分(2)間の最短距離の長さは0.1mm以上であるのが現実的である。
【0043】
本発明にかかる伸縮性繊維シート(10)は繊維層(1)のみで構成されていても良いが、布帛あるいはフィルム(無孔フィルムや多孔フィルム)や発泡体(無孔発泡体や多孔発泡体)などの他の部材を繊維層(1)に積層してなる構造であってもよい。繊維層(1)と他の部材との積層方法は適宜選択できるが、ただ積層しただけの態様であっても、パウダーバインダ、スプレーバインダ、ホットメルトウェブなどのバインダにより接着して積層一体化した態様であっても、接着繊維など構成成分の溶融により接着して積層一体化した態様であってもよい。
【0044】
なお、他の部材の素材、目付や厚さなどの諸構成は、伸縮性繊維シート(10)に求められる態様に合わせ適宜調整あるいは選択できる。
一方向へ伸張させた際に破断を発生し難いよう、伸縮性繊維シート(10)の引張強さは0.4N/20mmより大きいのが好ましく、0.5N/20mm以上であるのが好ましく、0.6N/20mm以上であるのが好ましく、1N/20mm以上であるのが好ましく、3N/20mm以上であるのが好ましく、5N/20mm以上であるのが好ましい。
【0045】
なお、引張強さは以下の測定方法で求めることができる。
(引張り強さ(単位:N/20mm)の測定方法)
測定対象から短辺20mm、長辺80mmの試料片を採取する。このとき、測定対象を構成する捲縮繊維などの構成繊維が一方向へ配向している場合、当該一方向と長辺方向が平行を成すように試料片を採取する。
そして、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン、チャック間の距離(つかみ間隔):50mm、引張速度:100mm/分)を用い、試料片を長辺方向へ引張り、試料片が破断するまでの最大荷重を測定する。なお、試料片が繊維固定部分を2以上有している場合、チャック間に隣り合う繊維固定部分が共に存在するようにして、試料片をチャックに固定する。
この最大荷重の測定を3枚の試料片について行い、これら最大荷重を算術平均し「引張り強さ」とする。
なお、「引張り強さ」が高いほど、伸張時に破断を発生し難く伸縮性に優れることを意味する。
【0046】
伸縮性に優れる伸縮性繊維シート(10)であるよう、伸縮性繊維シート(10)の伸び率は10%以上であるのが好ましく、50%以上であるのが好ましく、100%以上であるのが好ましい。一方、伸び率が高過ぎると、伸縮性繊維シート(10)の使用感が劣る恐れがあることから、500%以下であるのが現実的である。なお、伸び率は以下の測定方法で求めることができる。
(伸び率(Sr、単位:%)の測定方法)
前述の引張り強さの測定を行った時の、最大荷重時の試料片の伸び(Smax、単位:mm)[=(最大荷重時の長さ、単位:mm)-(つかみ間隔=50mm)]のつかみ間隔(50mm)に対する百分率をいう。つまり、次の式から得られる値である。この測定を3回行い、前記百分率の算術平均値を「伸び率」とする。
Sr=(Smax/50)×100
なお、「伸び率」が高いほど、伸長性に優れることを意味する。
【0047】
おむつのギャザー部に使われた際の優れたはき心地、サージカルテープ用基材に使われた際の適度な締め付け感、貼付薬用基材に使われた際の優れた貼付感などに富む伸縮性繊維シート(10)であるよう、伸縮性繊維シート(10)の100%伸長時強さは0.5N/20mm以上であるのが好ましく、0.7N/20mm以上であるのが好ましく、1.0N/20mm以上であるのが好ましい。一方、伸長時強さが高過ぎると、伸縮性繊維シート(10)のもつ上記特徴が劣る恐れがあることから、50N/20mm以下であるのが現実的である。
【0048】
なお、伸長時強さは以下の測定方法で求めることができる。
(伸長時強さ(単位:N/20mm)の測定方法)
測定対象から短辺20mm、長辺80mmの試料片を採取する。このとき、測定対象を構成する捲縮繊維などの構成繊維が一方向へ配向している場合、当該一方向と長辺方向が平行を成すように試料片を採取する。
そして、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)を用い、試料片を両チャック間(チャック間の距離(つかみ間隔):50mm)に固定する。なお、試料片が繊維固定部分を2以上有している場合、チャック間に隣り合う繊維固定部分が共に存在するようにして、試料片をチャックに固定する。その後、引張速度100mm/分の条件で両チャックを離してゆき、試料片を2.5mm(=5%)伸長するまでに測定された最大荷重、5mm(=10%)伸長するまでに測定された最大荷重、10mm(=20%)伸長するまでに測定された最大荷重、25mm(=50%)伸長するまでに測定された最大荷重、50mm(=100%)伸長するまでに測定された最大荷重を各々測定する。
この最大荷重の測定を3枚の試料片について行い、これら最大荷重を算術平均し、「5%伸長時強さ」、「10%伸長時強さ」、「20%伸長時強さ」、「50%伸長時強さ」、「100%伸長時強さ」とする。
【0049】
伸縮性に優れる伸縮性繊維シート(10)であるよう、伸縮性繊維シート(10)の50%伸長時の回復率は60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのが好ましく、75%以上であるのが好ましい。
【0050】
なお、50%伸長時の回復率は以下の測定方法で求めることができる。
(50%伸長時の回復率(単位:%)の測定方法)
測定対象から短辺20mm、長辺80mmの試料片を採取する。このとき、測定対象を構成する捲縮繊維などの構成繊維が一方向へ配向している場合、当該一方向と長辺方向が平行を成すように試料片を採取する。
そして、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)を用い、試料片を両チャック間(チャック間の距離(つかみ間隔):50mm)に固定する。なお、試料片が繊維固定部分を2以上有している場合、チャック間に隣り合う繊維固定部分が共に存在するようにして、試料片をチャックに固定する。
このつかみ間隔50mmの位置を始点とし、始点から25mmの位置、即ち50%伸長位置(L50=25mm)まで速度100mm/分で引張った後、同速度で始点まで戻す。この引張時に試料片の引張応力が0.05Nになったときのつかみ間隔の長さから初期つかみ間隔の長さ(50mm)を引いた長さ(Lf)、及び、戻す時に試料片の引張応力が0.05Nになったときのつかみ間隔の長さから初期つかみ間隔の長さ(50mm)を引いた長さ(Lb)を測定する。
この測定を3枚の試料片について行い、前記長さをそれぞれ算術平均することで、つかみ間隔の長さ(Lf)の平均値(Lf1)及びつかみ間隔の長さ(Lb)の平均値(Lb1)を求め、次の式から算出される数値を50%伸長時の回復率とする。
50%伸長時の回復率(%)=〔[(L50-Lf1)―(Lb1-Lf1)]/(L50-Lf1)〕×100
また、同一の試料片を、上述の測定へ連続して3回供した。3回目の測定において測定された、つかみ間隔の長さ(Lb)の平均値(Lb3)を用いて、次の式から算出される数値を「3回繰り返した際の50%伸長時の回復率(%)」とする。
3回繰り返した際の50%伸長時の回復率(%)=〔[(L50-Lf1)―(Lb3-Lf1)]/(L50-Lf1)〕×100
このようにして得られる「3回繰り返した際の50%伸長時の回復率(%)」は、長時間使用時にも優れた伸縮性を維持できる伸縮性繊維シート(10)であるよう、55%以上であるのが好ましく、65%以上であるのが好ましく、70%以上であるのが好ましい。
【0051】
本発明の伸縮性繊維シート(10)の製造方法について、一例を挙げ説明する。本発明の伸縮性繊維シート(10)の調製方法は適宜選択できるが、例えば、以下の工程を経て調製できる。
【0052】
(1)潜在捲縮繊維を含んだ繊維ウェブを用意する工程。
(2)繊維ウェブに含まれている一部の潜在捲縮繊維が配向している方向と垂直を成すようにして、繊維ウェブの主面における前記垂直方向に存在する両端部にわたり、切れ目のない直線状にヒートシールを施すことで、繊維ウェブの構成繊維(前記潜在捲縮繊維を含む)同士が溶融一体化した部分を複数形成する工程。
(3)ヒートシールを施した繊維ウェブを加熱処理へ供し、潜在捲縮繊維の捲縮を発現させる工程。
【0053】
次いで、各工程について、具体的に説明する。
まず(1)の工程において、潜在捲縮繊維を含んだ繊維ウェブの調製方法は適宜選択できる。具体例として、乾式法や湿式法あるいは直接紡糸法で得たクロスレイウェブやパラレルレイウェブまたはクリスクロスレイウェブあるいはランダムウェブであることができる。特に、一方向へ配向した捲縮繊維を含有する繊維層(1)を形成できるよう、パラレルウェブやクリスクロスレイウェブを採用するのが好ましい。また、伸縮性に優れた伸縮性繊維シート(10)を調製できるよう、繊維ウェブの構成繊維は潜在捲縮繊維のみであるのが好ましい。
【0054】
次いで(2)の工程において、繊維ウェブに含まれている潜在捲縮繊維が配向している方向は、上述した(捲縮繊維の配向の確認方法)と同様にして判断できる。つまり繊維層(1)に含まれる「捲縮繊維」の代わりに繊維ウェブに含まれる「潜在捲縮繊維」が配向している方向を確認することで判断できる。
ヒートシールにより形成される各構成繊維(潜在捲縮繊維を含む)同士が溶融一体化した部分の態様は適宜調整できるが、伸縮性に優れた伸縮性繊維シート(10)を調製できるよう、前記溶融一体化した部分は互いに平行を成すと共に均等な間隔をなす複数の直線であるのが好ましい。
【0055】
なお、繊維ウェブに形成される隣り合う溶融一体化した部分同士の間隔は、潜在捲縮繊維のみかけ繊維長以下とする。ここでいう潜在捲縮繊維のみかけ繊維長とは、上述した(捲縮繊維のみかけ繊維長の測定方法)および(捲縮繊維の配向の確認方法)で説明した測定方法において、「伸縮性繊維シート」あるいは「繊維層」の言葉の代わりに「繊維ウェブ」を測定対象とし読み替え、そして、「捲縮繊維」の言葉の代わりに「潜在捲縮繊維」を測定対象とし読み替えた測定方法によって、測定された値を指す。なお、潜在捲縮繊維のみかけ繊維長は、潜在捲縮繊維の繊維長以下の長さである。
このような態様であることによって、隣り合う溶融一体化した部分で潜在捲縮繊維の両端部分や、潜在捲縮繊維の両端部分の間を固定できる。
【0056】
また、繊維ウェブに形成される隣り合う溶融一体化した部分同士の間隔は、潜在捲縮繊維のみかけ繊維長の半分未満であるのがより好ましい。このような態様であることによって、隣り合う溶融一体化した部分でより多くの潜在捲縮繊維の両端同士の間を固定でき、繊維固定部分(2)によって固定される捲縮繊維の割合を多くすることができる。繊維ウェブに形成される隣り合う溶融一体化した部分同士の間隔は適宜調整できるが、潜在捲縮繊維のみかけ繊維長の半分未満であることが好ましく、40%未満であるのが好ましく、30%未満であるのが好ましく、20%未満であるのが好ましい。隣り合う溶融一体化した部分同士の間隔が、潜在捲縮繊維のみかけ繊維長の半分未満である繊維ウェブを、後述する加熱処理により潜在捲縮繊維の捲縮を発現させる次の工程へ供することによって、繊維固定部分(2)によって固定される捲縮繊維の割合が多いことで、より一方向(A、伸張し易い方向)の引張強さに優れる伸縮性繊維シート(10)を製造できる。
【0057】
このようにして調製された繊維ウェブを、加熱処理により潜在捲縮繊維の捲縮を発現させる次の工程へ供することによって、隣り合う繊維固定部分(2)間の最短距離の長さが捲縮繊維のみかけ繊維長以下である繊維層(1)を備えた伸縮性繊維シート(10)を製造できる。
【0058】
そして、最後に(3)の工程によって、ヒートシールを施した繊維ウェブ中に含まれている潜在捲縮繊維の捲縮を発現させる。この時、一方向(A)に対する収縮率を制御することで、伸縮性繊維シート(10)における伸び止まり感が得られる伸度を、任意に設定できる。
【0059】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている有機樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
また、繊維ウェブを加熱する温度は、潜在捲縮繊維を使用する場合、潜在捲縮繊維の捲縮が発現する温度であると共に、繊維ウェブの構成成分(構成繊維、バインダ、機能性成分など)に意図しない変性が発生しない温度に調整するのが好ましい。なお、本工程においてバインダを溶融させる、および/または、接着繊維による繊維接着機能を発揮させることで、繊維ウェブの構成繊維同士を接着一体化してもよい。
【0060】
以上の工程を経て、本発明にかかる伸縮性繊維シート(10)を製造できる。
【0061】
本発明の伸縮性繊維シート(10)は、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの部材を備えていてもよい。更に、本発明の伸縮性繊維シート(10)をリライアントプレス処理などの、表面を平滑とするために加圧処理する工程へ供してもよい。また、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜いた後に加熱成形する工程や、機能性成分を担持する工程、薬剤との親和性を向上するための親水化処理工程など、各種二次加工工程へ供してもよい。
【実施例
【0062】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0063】
(繊維ウェブの用意)
サイドバイサイド型に構成されたポリエステル系樹脂の潜在捲縮繊維(繊維の断面形状:円形、繊度:1.3dtex、繊維長:44mm、160℃の加熱条件下では溶融せず、120℃以上で捲縮発現が始まる)のみをカード機へ供し、パラレルウエブ(目付:40g/m、潜在捲縮繊維が主として生産方向(一方向)へ配向している繊維ウェブ)を調製した。
【0064】
(比較例1)
繊維ウエブを熱風ドライヤー(加熱温度:160℃)へ供して、繊維ウェブに含まれている潜在捲縮繊維の捲縮を発現させ、伸縮性繊維シートを調製した。
【0065】
(比較例2)
繊維ウエブの主面上における、繊維ウエブの潜在捲縮繊維が配向する方向と垂直をなすようにして、繊維ウェブにおける当該垂直方向の両端部にわたり切れ目のない直線となるようにヒートシールを複数個所に施すことで、潜在捲縮繊維が溶融一体化した部分を複数形成した。なお、当該各部分は、等間隔を有し互いに平行をなす直線形状であり、隣り合う溶融一体化した部分同士の間隔(ヒートシール間隔)は、いずれも、潜在捲縮繊維のみかけ繊維長よりも長い60mmであった。
最後に、ヒートシールを施した繊維ウェブを熱風ドライヤー(加熱温度:160℃)へ供して、繊維ウェブに含まれている潜在捲縮繊維の捲縮を発現させ、伸縮性繊維シートを調製した。
なお、このようにして調製した伸縮性繊維シートは、隣り合う繊維固定部分(ヒートシールを施した部分由来)間の最短距離の長さが29.6mmであり、潜在捲縮繊維が捲縮してなる捲縮繊維のみかけ繊維長よりも長いものであって、本発明の構成を満足するものではなかった。
【0066】
(実施例1)
ヒートシール間隔を、潜在捲縮繊維のみかけ繊維長以下の長さとなる30mmに変更したこと以外は、比較例2と同様にして伸縮性繊維シートを調製した。
なお、このようにして調製した伸縮性繊維シートは、隣り合う繊維固定部分(ヒートシールを施した部分由来)間の最短距離の長さが15.3mmであり、潜在捲縮繊維が捲縮してなる捲縮繊維のみかけ繊維長以下の長さであって、本発明の構成を満足するものであった。
【0067】
(実施例2)
ヒートシール間隔を、潜在捲縮繊維のみかけ繊維長以下の長さとなる20mmに変更したこと以外は、比較例2と同様にして伸縮性繊維シートを調製した。
なお、このようにして調製した伸縮性繊維シートは、隣り合う繊維固定部分(ヒートシールを施した部分由来)間の最短距離の長さが9.8mmであり、潜在捲縮繊維が捲縮してなる捲縮繊維のみかけ繊維長以下の長さであって、本発明の構成を満足するものであった。
【0068】
(実施例3)
ヒートシール間隔を、潜在捲縮繊維のみかけ繊維長以下の長さとなる15mmに変更したこと以外は、比較例2と同様にして伸縮性繊維シートを調製した。
なお、このようにして調製した伸縮性繊維シートは、隣り合う繊維固定部分(ヒートシールを施した部分由来)間の最短距離の長さが7.7mmであり、潜在捲縮繊維が捲縮してなる捲縮繊維のみかけ繊維長以下の長さであって、本発明の構成を満足するものであった。
【0069】
(実施例4)
ヒートシール間隔を、潜在捲縮繊維のみかけ繊維長以下の長さとなる10mmに変更したこと以外は、比較例2と同様にして伸縮性繊維シートを調製した。
なお、このようにして調製した伸縮性繊維シートは、隣り合う繊維固定部分(ヒートシールを施した部分由来)間の最短距離の長さが4.9mmであり、潜在捲縮繊維が捲縮してなる捲縮繊維のみかけ繊維長以下の長さであって、本発明の構成を満足するものであった。
【0070】
上述のようにして調製した、比較例および実施例の諸物性を表1にまとめた。
【0071】
【表1】
【0072】
比較例と実施例を比較した結果から、以下のことが判明した。
繊維固定部分を有していない比較例1の伸縮性繊維シートは、実施例1~4よりも引張強さに劣るものであった。そのため、捲縮繊維が配向している方向(伸張し易い方向)へ伸張させた際に破断を発生し易い伸縮性繊維シートであった。
また比較例2の伸縮性繊維シートは、捲縮繊維が配向している方向(伸張し易い方向)と垂直を成す方向に横断して連続的に存在する繊維固定部分を複数備えているものの、その引張強さは比較例1と同じ値であり、実施例1~4よりも引張強さに劣るものであった。そのため、捲縮繊維が配向している方向(伸張し易い方向)へ伸張させた際に破断を発生し易い伸縮性繊維シートであった。この理由として、隣り合う繊維固定部分間の最短距離の長さが、潜在捲縮繊維が捲縮してなる捲縮繊維のみかけ繊維長よりも長いためだと考えられた。
【0073】
一方、本発明にかかる構成を満足する実施例1~4の伸縮性繊維シートは、比較例1~2よりも引張強さに優れており、捲縮繊維が配向している方向(伸張し易い方向)へ伸張させた際に破断を発生し難い伸縮性繊維シートであった。この理由として、隣り合う繊維固定部分間の最短距離の長さが、潜在捲縮繊維が捲縮してなる捲縮繊維のみかけ繊維長以下の長さであるためだと考えられた。
【0074】
特に、隣り合う繊維固定部分間の最短距離の長さが短くなるほど引張強さに優れ、捲縮繊維が配向している方向(伸張し易い方向)へ伸張させた際により破断を発生し難い伸縮性繊維シートであった。
【0075】
また、本発明にかかる構成を満足する実施例1~4の伸縮性繊維シートは、比較例1~2よりも、伸び率にも富む伸長性に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の伸縮性繊維シートは、おむつのウエスト周りや足の付根周り、サポーターや包帯、貼付薬用基材やプラスター基材、フェイシャルマスクといったメディカル用品や衛生用品などとして好適に使用できる。
【符号の説明】
【0077】
10:伸縮性繊維シート
1:繊維層
2:繊維固定部分
A:繊維層における捲縮繊維が配向する方向
B:繊維層における捲縮繊維が配向する方向と、垂直を成す方向
C:隣り合う繊維固定部分間の最短距離の長さ
図1