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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】アミロイドβ蓄積抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240619BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 31/708 20060101ALI20240619BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K31/522
A61K31/7068
A61K31/7072
A61K31/708
A61P25/28
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019230770
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021098665
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】312017444
【氏名又は名称】ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】平田 拓
(72)【発明者】
【氏名】生谷 隆麿
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-030673(JP,A)
【文献】特表2019-512488(JP,A)
【文献】特表2010-507666(JP,A)
【文献】特開平06-206823(JP,A)
【文献】特開2013-053076(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102429906(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0040031(US,A1)
【文献】特表2019-529472(JP,A)
【文献】特開2009-242431(JP,A)
【文献】TAROZZI, A. et al.,Guanosine protects human neuroblastoma cells from oxidative stress and toxicity induced by Amyloid-β peptide oligomers,Journal of Biological Regulators & Homeostatic Agents,2010年,Vol.24, No.3,pp. 297-306
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/7076
A61K 31/708
A61K 31/7068
A61K 31/7072
A61K 31/522
A61P 25/28
A23L 33/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物並びにこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アミロイドβ蓄積抑制剤(但し、(i)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、またはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、ならびに(iii)ビタミンCおよび/もしくはセレンを含むものを除き、かつイノシン、シチジン、5’-グアノシン-n’-一リン酸、ウリジン及びチミジンから成る核酸構成成分及び/又はそれらの薬理的に許容される塩をを含むものを除く。)
【化1】

【化2】

[一般式(1)中、R11、R12及びR14は、それぞれ独立に、下記式(7)で表される基、ヒドロキシ基及び水素原子からなる群より選択される基を表し、R13は、下記式(3)及び(5)~(6)で表される基からなる群から選択される基を表す。但し、R 13 が、式(3)で表される基である場合、R 14 は、式(7)で表される基である。一般式(2)中、R21は、水素原子又はアルキル基を表す。]
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する、請求項1に記載のアミロイドβ蓄積抑制剤。
【請求項3】
前記R11、R12及びR14がヒドロキシ基であり、かつ前記R13が前記式(5)~(6)で表される基からなる群から選択される基である、請求項2に記載のアミロイドβ蓄積抑制剤。
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する、請求項1に記載のアミロイドβ蓄積抑制剤。
【請求項5】
前記R21が水素原子である、請求項に記載のアミロイドβ蓄積抑制剤。
【請求項6】
脳機能改善剤、脳機能低下防止剤、認知機能改善剤、記憶力改善剤、運動パフォーマンス改善剤、アルツハイマー病予防剤及びアルツハイマー病進行抑制剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~のいずれか一項に記載のアミロイドβ蓄積抑制剤。
【請求項7】
下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物並びにこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アミロイドβ蓄積抑制用食品組成物(但し、(i)ウリジンおよびシチジンの1つ以上、またはそれらの塩、ホスフェート、アシル誘導体もしくはエステル、(ii)ドコサヘキサエン酸(22:6、DHA)、エイコサペンタエン酸(20:5、EPA)およびドコサペンタエン酸(22:5、DPA)の少なくとも1つ、もしくはそれらのエステル、ならびに(iii)ビタミンCおよび/もしくはセレンを含むものを除き、かつイノシン、シチジン、5’-グアノシン-n’-一リン酸、ウリジン及びチミジンから成る核酸構成成分及び/又はそれらの薬理的に許容される塩をを含むものを除く。)
【化7】

【化8】

[一般式(1)中、R11、R12及びR14は、それぞれ独立に、下記式(7)で表される基、ヒドロキシ基及び水素原子からなる群より選択される基を表し、R13は、下記式(3)及び(5)~(6)で表される基からなる群から選択される基を表す。但し、R 13 が、式(3)で表される基である場合、R 14 は、式(7)で表される基である。一般式(2)中、R21は、水素原子又はアルキル基を表す。]
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイドβ蓄積抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイドβは、脳内で産生されるタンパク質の一つである。アミロイドβは、アルツハイマー病等の脳疾患において蓄積することが知られている。そのため、アミロイドβの蓄積を抑制するための組成物が種々検討されている。例えば、特許文献1には、ドコサヘキサエン酸とカプサンチン、又はドコサヘキサエン酸とカプサンチンとルテインとゼアキサンチンを含有する、内服組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/005443号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特定の化合物がアミロイドβ蓄積抑制作用を示すことを見出した。本発明は、この新規な知見に基づくものであり、新規なアミロイドβ蓄積抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物並びにこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アミロイドβ蓄積抑制剤に関する。
【化1】

【化2】

[一般式(1)中、R11、R12及びR14は、それぞれ独立に、リン原子を含む基、ヒドロキシ基及び水素原子からなる群より選択される基を表し、R13は、下記式(3)~(6)で表される基からなる群から選択される基を表す。一般式(2)中、R21は、水素原子又はアルキル基を表す。]
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】
【0006】
上記アミロイドβ蓄積抑制は、特定の化合物を有効成分として含有するため、アミロイドβ蓄積抑制作用を示す。
【0007】
一態様において、アミロイドβ蓄積抑制剤は、上記一般式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有していてよい。
【0008】
一態様において、アミロイドβ蓄積抑制剤は、上記R11、R12及びR14がヒドロキシ基であり、かつ上記R13が上記式(3)~(6)で表される基からなる群から選択される基であってよい。
【0009】
一態様において、アミロイドβ蓄積抑制剤は、上記R11及びR14がヒドロキシ基であり、上記R12が水素原子であり、かつ上記R13が前記式(3)で表される基であってよい。
【0010】
一態様において、アミロイドβ蓄積抑制剤は、上記R11及びR12がヒドロキシ基であり、上記R14が下記式(7)で表される基であり、かつ上記R13が上記式(3)で表される基であってよい。
【化7】
【0011】
一態様において、アミロイドβ蓄積抑制剤は、上記一般式(2)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有していてよい。
【0012】
一態様において、アミロイドβ蓄積抑制剤は、上記R21が水素原子であってよい。
【0013】
一態様において、アミロイドβ蓄積抑制剤は、脳機能改善剤、脳機能低下防止剤、認知機能改善剤、記憶力改善剤、運動パフォーマンス改善剤、アルツハイマー病予防剤及びアルツハイマー病進行抑制剤からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0014】
本発明はまた、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物並びにこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、アミロイドβ蓄積抑制用食品組成物に関する。
【化8】

【化9】

[一般式(1)中、R11、R12及びR14は、それぞれ独立に、リン原子を含む基、ヒドロキシ基及び水素原子からなる群より選択される基を表し、R13は、下記式(3)~(6)で表される基からなる群から選択される基を表す。一般式(2)中、R21は、水素原子又はアルキル基を表す。]
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、新規なアミロイドβ蓄積抑制剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
(有効成分)
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物並びにこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【0018】
【化14】

【化15】
【0019】
一般式(1)中、R11、R12及びR14は、それぞれ独立に、リン原子を含む基、ヒドロキシ基及び水素原子からなる群より選択される基を表し、R13は、下記式(3)~(6)で表される基からなる群から選択される基を表す。一般式(2)中、R21は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0020】
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】
【0021】
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、一般式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有していてよい。
【0022】
11は、リン原子を含む基、ヒドロキシ基及び水素原子からなる群より選択される基であればよく、好ましくはヒドロキシ基である。
【0023】
12は、リン原子を含む基、ヒドロキシ基及び水素原子からなる群より選択される基であればよく、好ましくはヒドロキシ基又は水素原子である。
【0024】
13は、上記式(3)~(6)で表される基からなる群から選択される基であればよい。Rは、好ましくは上記式(3)又は(4)で表される基である。
【0025】
14は、リン原子を含む基、ヒドロキシ基及び水素原子からなる群より選択される基であればよく、好ましくはリン原子を含む基又はヒドロキシ基である。
【0026】
リン原子を含む基において、リン原子は、例えば1~3個であってよく、好ましくは1個である。リン原子を含む基は、好ましくは下記式(7)で表される基である。
【化20】
【0027】
一般式(1)で表される化合物は、アミロイドβ蓄積抑制作用の観点から、好ましくはR11、R12及びR14がヒドロキシ基であり、かつR13が式(3)~(6)で表される基からなる群から選択される基であるか、R11及びR14がヒドロキシ基であり、R12が水素原子であり、かつR13が式(3)で表される基であるか、又は、R11及びR12がヒドロキシ基であり、R14が式(7)で表される基であり、かつR13が式(3)で表される基であってよい。
【0028】
11、R12及びR14がヒドロキシ基であり、かつR13が式(3)~(6)で表される基である場合、一般式(1)で表される化合物は、それぞれ、グアノシン、キサントシン、シチジン及びウリジンと称されるものである。R11及びR14がヒドロキシ基であり、R12が水素原子であり、かつR13が式(3)で表される基である場合、一般式(1)で表される化合物は、2’-デオキシグアノシンと称されるものである。R11及びR12がヒドロキシ基であり、R14が式(7)で表される基であり、かつR13が式(3)で表される基である場合、一般式(1)で表される化合物は、グアニル酸(グアノシン一リン酸又はGMP)と称されるものである。
【0029】
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、一般式(2)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有していてよい。
【0030】
21は、水素原子又はアルキル基であればよい。R21で示されるアルキル基の炭素数は、例えば1~3個であってよい。R21で示されるアルキル基は、メチル基、エチル基又はプロピル基であってよく、直鎖状でも分岐状でもよい。R21は、好ましくは水素原子である。この場合、一般式(2)で表される化合物は、グアニンと称されるものである。
【0031】
一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物は、塩としてアミロイドβ蓄積抑制剤に含まれていてもよい。塩としては、食品、医薬部外品又は医薬品として許容可能なものであれば特に制限されない。このような塩は、一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物と無毒な塩を形成する塩基とにより形成されるものである。具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物の塩は、水和物であってもよい。
【0032】
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、有効成分として、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物並びにこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0033】
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、アミロイドβ蓄積抑制作用を有する。アミロイドβは、アミロイド前駆体タンパク質(Amyloidβ Protein Precursor、APP)がγセクレターゼという酵素で切断されることにより産生される。脳内でのアミロイドβの蓄積は、脳機能の悪化と関連する。そのため、γセクレターゼの活性を阻害することで、アミロイドβの蓄積が抑制されることにより、脳機能を改善し、また、脳機能の低下を予防することができる。この場合、本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、脳機能改善剤又は脳機能低下防止剤ということもできる。
【0034】
また、認知機能の低下、記憶力の低下、運動パフォーマンスの低下、アルツハイマー病の発症及びアルツハイマー病の進行においても、脳内においてアミロイドβが蓄積することがある。そのため、アミロイドβの蓄積を抑制することで、これらの症状を改善することができる。この場合、本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、認知機能改善剤、記憶力改善剤、運動パフォーマンス改善剤、アルツハイマー病予防剤又はアルツハイマー病進行抑制剤ということもできる。
【0035】
一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物は、天然物(動物、植物、微生物等)に由来するものであっても、人為的に合成したものであってもよい。また、市販のものがあれば、それを使用してもよい。
【0036】
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、経口投与(経口摂取)されてもよく、非経口投与(非経口摂取)されてもよいが、経口投与(経口摂取)されることが好ましい。アミロイドβ蓄積抑制剤は、1日1回投与(摂取)されてもよく、1日複数回に分けて投与(摂取)されてもよい。
【0037】
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤が経口投与(経口摂取)される場合、経口投与量(経口摂取量)は、有効成分として、成人1日あたり、体重1kgあたり例えば0.1mg~1gであってよく、好ましくは0.5~100mgであり、より好ましくは、1~40mgである。経口投与量(経口摂取量)は、個体の状態、年齢等に応じて適宜決定することができる。
【0038】
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、ヒトに投与(摂取)されても、非ヒト哺乳動物に投与されてもよい。
【0039】
(その他成分)
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、上記有効成分のみからなるものであってもよく、またアミロイドβ蓄積抑制剤の具体的態様に応じて、上記有効成分の他、食品、医薬部外品又は医薬品に許容されるその他成分を含有するものであってもよい。
【0040】
(アミロイドβ蓄積抑制剤の形状)
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、固体、液体(溶液及び懸濁液を含む。)、ペースト等のいずれの形状であってもよい。また、本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、例えば、錠剤(口腔内崩壊錠、チュアブル錠、フィルムコーティング錠等)、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤(シロップ剤、ゼリー剤等)、軟膏剤、硬膏剤等のいずれの剤形であってもよい。
【0041】
(アミロイドβ蓄積抑制剤の具体的態様)
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、例えば、食品組成物(飲料及び食品)、医薬部外品又は医薬品として調製することができる。飲料としては、例えば、水、清涼飲料水、果汁飲料、炭酸飲料、乳飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク、栄養ドリンク等が挙げられる。食品としては、パン類、麺類、米類、豆腐、乳製品、醤油、味噌、菓子類等が挙げられる。また、食品組成物には、例えば、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント及び特定保健用食品等が含まれる。
【0042】
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、日常的に手軽に摂取できることから、食品組成物(アミロイドβ蓄積抑制用食品組成物)であることが好ましい。本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制用食品組成物の形態としては、上述したものが挙げられ、日常的に手軽に摂取できるという観点から、飲料(アミロイドβ蓄積抑制用飲料)であることが好ましい。
【0043】
本実施形態のアミロイドβ蓄積抑制剤からなる、又はアミロイドβ蓄積抑制剤を含む上記製品は、脳機能改善用、脳機能低下防止用、認知機能改善用、記憶力改善用、運動パフォーマンス改善用、アルツハイマー病予防用又はアルツハイマー病進行抑制用であってよい。上記製品には、加齢によって低下する脳の血流や活動性を改善する旨、認知機能の一部である記憶の精度や判断の正確さを向上させる旨、認知機能の一部である記憶力を維持する旨、老化に伴うアミロイドβの蓄積を抑える旨、歩行能力の維持に役立つ等の表示が付されていてもよい。
【0044】
(アミロイドβ蓄積抑制剤の製法)
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、その具体的態様に応じて、例えば上述の有効成分を配合することで得ることができ、好ましくは上述の有効成分の有効量を含有するように調製することで得ることができる。このとき、有効成分である一般式(1)で表される化合物若しくは一般式(2)で表される化合物又はこれらの塩として、一般式(1)で表される化合物若しくは一般式(2)で表される化合物又はこれらの塩そのものを使用してもよいし、一般式(1)で表される化合物若しくは一般式(2)で表される化合物又はこれらの塩を含有する組成物(例えば、鰹節、魚肉等)を使用してもよく、澱粉を用いて発酵法によって製造したものを使用してもよい。
【0045】
(作用効果)
本実施形態に係るアミロイドβ蓄積抑制剤は、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物並びにこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有するものであることから、当該アミロイドβ蓄積抑制剤を投与(摂取)することにより、アミロイドβの蓄積を抑制することができる。また、アミロイドβの蓄積を抑制する結果、脳機能を改善し、脳機能の低下を防止し、認知機能を改善し、記憶力を改善し、運動パフォーマンスを改善し、アルツハイマー病を予防し、又はアルツハイマー病の進行を抑制することができる。
【実施例
【0046】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0047】
<試験例1:アミロイドβ蓄積抑制作用の評価>
表1に示す化合物のアミロイドβ蓄積抑制作用を、レポータージーンアッセイにより評価した。具体的な方法は、以下のとおりである。
【0048】
【表1】
【0049】
(ベクターの作製及び遺伝子導入)
アミロイドβの前駆体であるAPPのC末端側100残基分に、GAL4のDNA結合領域と単純ヘルペスウイルスの転写活性化領域とを融合したGAL4-VP16(G4V16)を付加した蛋白質(APP-G4V16)を発現させるベクターを構築した。ルシフェラーゼ発現ベクターは、ホタルルシフェラーゼ発現ベクターpGL4.35(Promega社製)、及び、内部標準としてウミシイタケルシフェラーゼ発現ベクターpGL4.74(Promega社製)を使用した。
【0050】
100mmディッシュにHEK293細胞を150万個/ディッシュで播種し、DMEM培地(SIGMA-ALDRICH社製)中で1日培養した。その後、OPTI-MEM培地(Thermo FISHER社製)に培地交換後、OPTI-MEM500μLに、APP-G4V16発現ベクター1μg、プロモーター領域にGAL4認識配列(UAS)を9個挿入したルシフェラーゼのレポーター(pGL4.35)1μg、及び内部標準ベクターpGL4.74(Promega社製)0.5μgを混合し、Lipofectamine3000(Thermo FISHER社製)を用いてHEK293細胞に添加して遺伝子導入し、3時間培養した。遺伝子導入後、細胞を回収し、DMEM培地で96wellプレートに1000個/wellで播種した。直ちに、表1に示された化合物(濃度:20μM)を添加し、24時間後に細胞を回収した。なお、コントロール(CNT)として、試薬溶媒を添加した時の測定値を用いた。
【0051】
(レポータージーンアッセイ)
細胞内のルシフェラーゼ活性を、Dual-Luciferase ReporterAssay System(Promega社製)を用いて測定した。ルシフェラーゼの発光は、ルミノメーター(Promega社製)を用いて定量した。結果を表1に示す。表1における相対ルシフェラーゼ活性量は、コントロールのルシフェラーゼ活性に対する値を示す。
【0052】
表1に示すとおり、グアノシン、シチジン、ウリジン、キサントシン・2HO、グアニン、2’-デオキシグアノシン一水和物及びグアノシン-5’-一リン酸二ナトリウムは、アミロイドβの蓄積を抑制することが示された。