(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240619BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240619BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/36 C
H01M4/62 Z
H01M4/36 D
H01M4/36 E
(21)【出願番号】P 2020006173
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2019009157
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋志
(72)【発明者】
【氏名】都藤 靖泰
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186955(JP,A)
【文献】特開2013-134938(JP,A)
【文献】特表2015-525950(JP,A)
【文献】特許第5082221(JP,B2)
【文献】特開2011-210666(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169022(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159073(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/115322(WO,A1)
【文献】特開2013-229163(JP,A)
【文献】特開2007-287630(JP,A)
【文献】特開2017-010883(JP,A)
【文献】特開2017-054703(JP,A)
【文献】特開2018-049825(JP,A)
【文献】特開2018-181803(JP,A)
【文献】特開2019-009124(JP,A)
【文献】国際公開第2012/165422(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/194164(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子と粒子表面が前記被覆層で被覆されていない未被覆電極活物質粒子とを含む電極活物質層及び集電体とを有するリチウムイオン電池用電極であり、前記電極活物質層に含まれる被覆電極活物質粒子の体積平均粒子径と未被覆電極活物質粒子の体積平均粒子径との比が90/10~50/50であ
り、前記高分子化合物がビニル樹脂であり、前記ビニル樹脂がビニルモノマー(b)を必須構成単量体とする重合体(B)を含んでなり、前記ビニルモノマー(b)がカルボキシル基を有するビニルモノマー(b1)及び下記一般式(1)で表されるビニルモノマー(b2)を含むリチウムイオン電池用電極。
CH
2
=C(R
1
)COOR
2
(1)
[式(1)中、R
1
は水素原子又はメチル基であり、R
2
は炭素数4~36の分岐アルキル基である。]
【請求項2】
前記電極活物質層に含まれる被覆電極活物質粒子と未被覆電極活物質粒子の重量割合が30/70~99/1である請求項1に記載のリチウムイオン電池用電極。
【請求項3】
前記電極活物質層が導電助剤を含み、前記電極活物質層に含まれる導電助剤の重量割合が前記電極活物質層の重量を基準として0.1~12重量%である請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用電極。
【請求項4】
前記被覆電極活物質粒子において、
電極活物質粒子が正極活物質粒子であり、被覆後の被覆電極活物質粒子の粉体体積抵抗率(R1)と、被覆前の電極活物質粒子の粉体体積抵抗率(R2)との比であるR1/R2が
0.01~5.0である請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用電極。
【請求項5】
前記被覆電極活物質粒子において、電極活物質粒子が負極活物質粒子であり、被覆後の被覆電極活物質粒子の粉体体積抵抗率(R1)と、被覆前の電極活物質粒子の粉体体積抵抗率(R2)との比であるR1/R2が0.5~1.0である請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン電池に注目が集まっている。
【0003】
電池のエネルギー密度を高める別の手段として、1つの電極当たりの活物質層を厚くする(厚膜化する)方法が挙げられる。特許文献1及び2には、電極活物質層を厚膜化した場合において、電極活物質を樹脂および導電助剤を含む被覆剤で被覆し、かつ、電極活物質層の空隙率および密度を所定の範囲内に制御することで電池のエネルギー密度を高めつつ、高レートでの出力特性を向上させる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-55836号公報
【文献】特開2018-55841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、被覆活物質は未被覆の活物質と比較して電気抵抗値が高い傾向があり、電極に含まれる活物質がすべて被覆活物質であると電池性能が十分とはいえなかった。
本発明は上記実情に鑑みて為されたものであり、活物質の表面の少なくとも一部に樹脂組成物からなる被覆層を有する被覆電極活物質と活物質の表面に樹脂組成物からなる被覆層を有さない未被覆の正極活物質とを組み合わせて電極を作成することでレート特性が優れた電極、電池を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、これらの課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、下記発明である。
粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子と粒子表面が前記被覆層で被覆されていない未被覆電極活物質粒子とを含む電極活物質層及び集電体とを有するリチウムイオン電池用電極。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レート特性が優れた電極、電池を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子と粒子表面が前記被覆層で被覆されていない未被覆電極活物質粒子とを含む電極活物質層及び集電体とを有するリチウムイオン電池用電極である。
【0009】
被覆電極活物質粒子について説明する。
被覆電極活物質粒子は、電極活物質粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆されている。
正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2及びLiMn2O4等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO4、LiNi1-xCoxO2、LiMn1-yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMaM’bM’’cO2(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4及びLiNiPO4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV2O5)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0010】
正極活物質粒子の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~20μmであることがより好ましく、2~10μmであることがさらに好ましい。
【0011】
負極活物質粒子としては、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
上記負極活物質粒子のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質粒子の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
【0012】
これらの中でも、電池容量等の観点から、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物が好ましく、炭素系材料としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及びアモルファス炭素がさらに好ましく、珪素系材料としては、酸化珪素及び珪素-炭素複合体がさらに好ましい。
【0013】
負極活物質粒子の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01~100μmであることが好ましく、0.1~35μmであることがより好ましく、2~30μmであることがさらに好ましい。
【0014】
前記電極活物質粒子は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆されている。高分子化合物としては国際公開第2015/005117号及び特開2017-054703号公報に記載のリチウムイオン電池活物質被覆用樹脂等を用いることができる。具体的には、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、ポリサッカロイド(アルギン酸ナトリウム等)及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中では電解液への濡れ性及び吸液の観点からビニル樹脂が好ましい。
【0015】
上記ビニル樹脂は、ビニルモノマー(b)を必須構成単量体とする重合体(B)を含んでなることが望ましい。
ビニルモノマー(b)を必須構成単量体とする重合体(B)は柔軟性を有するため、正極活物質粒子を重合体(B)で被覆することにより電極の体積変化を緩和し、電極の膨脹を抑制することができる。
特に、ビニルモノマー(b)としてカルボキシル基を有するビニルモノマー(b1)及び下記一般式(1)で表されるビニルモノマー(b2)を含むことが望ましい。
CH2=C(R1)COOR2 (1)
[式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数4~36の分岐アルキル基である。]
【0016】
カルボキシル基を有するビニルモノマー(b1)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸等の炭素数3~15のモノカルボン酸;(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の炭素数4~24のジカルボン酸;アコニット酸等の炭素数6~24の3価~4価又はそれ以上の価数のポリカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
【0017】
上記一般式(1)で表されるビニルモノマー(b2)において、R1は水素原子又はメチル基を表す。R1はメチル基であることが好ましい。
R2は炭素数4~36の分岐アルキル基であり、R2の具体例としては、1-アルキルアルキル基(1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、1-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、1-メチルオクチル基、1-エチルヘプチル基、1-メチルノニル基、1-エチルオクチル基、1-メチルデシル基、1-エチルノニル基、1-ブチルエイコシル基、1-ヘキシルオクタデシル基、1-オクチルヘキサデシル基、1-デシルテトラデシル基、1-ウンデシルトリデシル基等)、2-アルキルアルキル基(2-メチルプロピル基(iso-ブチル基)、2-メチルブチル基、2-エチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルペンチル基、2-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルオクチル基、2-エチルヘプチル基、2-メチルノニル基、2-エチルオクチル基、2-メチルデシル基、2-エチルノニル基、2-ヘキシルオクタデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ウンデシルトリデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-トリデシルペンタデシル基、2-デシルオクタデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基、2-テトラデシルエイコシル基、2-ヘキサデシルエイコシル基等)、3~34-アルキルアルキル基(3-アルキルアルキル基、4-アルキルアルキル基、5-アルキルアルキル基、32-アルキルアルキル基、33-アルキルアルキル基および34-アルキルアルキル基等)、並びに、プロピレンオリゴマー(7~11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1~1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7~8量体)およびα-オレフィン(炭素数5~20)オリゴマー(4~8量体)等に対応するオキソアルコールのアルキル残基のような1またはそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
これらのうち、電解液の吸液の観点から好ましいのは2-アルキルアルキル基であり、更に好ましいのは2-エチルヘキシル基及び2-デシルテトラデシル基である。
【0018】
高分子化合物の数平均分子量の好ましい下限は3,000、さらに好ましくは5,000、とくに好ましくは8,000、最も好ましくは10,000であり、好ましい上限は1,000,000、さらに好ましくは500,000、とくに好ましくは300,000、最も好ましくは150,000である。
【0019】
高分子化合物の数平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
【0020】
高分子化合物の溶解度パラメータ(SP値)は9.0~20.0(cal/cm3)1/2であることが望ましい。高分子化合物のSP値は9.5~18.0(cal/cm3)1/2であることがより望ましく、9.5~14.0(cal/cm3)1/2であることがさらに望ましい。高分子化合物のSP値が9.0~20.0(cal/cm3)1/2であると、電解液の吸液の点で好ましい。
【0021】
また、高分子化合物のガラス転移点[以下Tgと略記、測定法:DSC(走査型示差熱分析)法]は、電池の成型性の観点から,好ましくは-20~220℃、さらに好ましくは0~200℃、とくに好ましくは30~180℃である。
【0022】
被覆電極活物質粒子を基準とした高分子化合物の重量割合は、0.5~20重量%であることが好ましく、成形性と抵抗値との観点から、1~7重量%であることがより好ましい。
【0023】
前記被覆層は、必要に応じて、導電助剤を含んでも良い。
導電助剤としては、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電助剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0024】
導電助剤の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μmであることが好ましく、0.015~5μmであることがより好ましく、0.02~1μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0025】
導電助剤の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている形態であってもよい。
【0026】
導電助剤は、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。
導電助剤が導電性繊維である場合、その平均繊維長さは0.5~500μmであることが好ましい。
【0027】
被覆電極活物質粒子を製造する方法について説明する。
被覆電極活物質粒子は、例えば、前記高分子化合物及び電極活物質粒子並びに必要により用いる導電助剤を混合することによって製造してもよく、前記高分子化合物と導電助剤とを混合して被覆材を準備したのち、該被覆材と電極活物質粒子とを混合することにより製造してもよい。
なお、電極活物質粒子と前記高分子化合物と導電助剤とを混合する場合、混合順序には特に制限はないが、電極活物質粒子と前記高分子化合物とを混合した後、さらに導電助剤を加えて混合することが好ましい。
上記方法により、前記高分子化合物と必要により用いる導電助剤を含む被覆層によって電極活物質の表面の少なくとも一部が被覆される。
【0028】
例えば、被覆電極活物質粒子は、電極活物質粒子を万能混合機に入れて30~500rpmで撹拌した状態で、高分子化合物及び必要により導電助剤を含む樹脂組成物溶液を1~90分かけて滴下混合し、さらに必要に応じて導電助剤を混合し、撹拌したまま50~200℃に昇温し、0.007~0.04MPaまで減圧した後に10~150分保持することにより得ることができる。
【0029】
前記被覆電極活物質粒子において、被覆後の被覆電極活物質粒子の粉体体積抵抗率(R1)と、被覆前の電極活物質粒子の粉体体積抵抗率(R2)との比であるR1/R2は、エネルギー密度の観点から、0.005~5.0であることが好ましい。正極活物質粒子の場合、R1/R2は0.01~5.0であることがより好ましく、負極活物質粒子の場合、R1/R2は0.5~1.0であることがより好ましい。
なお、紛体体積抵抗率は、粉体抵抗測定システムMCP-PD-51(三菱アナリティカル社製)を用いて、粉体専用プローブ(4探針、リング電極)を具備した容器にサンプル(正極の場合は2g、負極の場合は1g)を投入後、20kNの圧力をかけた時の粉体抵抗と厚みを測定し、粉体体積抵抗率を算出した。
【0030】
活物質粒子表面が高分子化合物を含む被覆層で被覆されていない未被覆電極活物質粒子について説明する。
未被覆電極活物質粒子としては、前述の正極活物質粒子及び負極活物質粒子を前記の被覆をすることなく使用することができる。2種以上を併用してもよいし、前記被覆電極活物質粒子と同じ活物質種でも異なっていてもよい。
【0031】
本発明のリチウムイオン電池用電極は、粒子表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆層で被覆された被覆電極活物質粒子と粒子表面が前記被覆層で被覆されていない未被覆電極活物質粒子とを含む電極活物質層を有する。
電極活物質層における被覆電極活物質粒子と未被覆電極活物質粒子との重量割合は、電気抵抗と耐久性のバランスの観点から、被覆電極活物質粒子/未被覆電極活物質粒子=30/70~99/1であることが好ましく、40/60~97/3であることがより好ましく、70/30~95/5であることが特に好ましい。
【0032】
前記電極活物質層に含まれる被覆電極活物質粒子の体積平均粒子径と未被覆電極活物質粒子の体積平均粒子径との比は、電気抵抗と耐久性のバランスの観点から、90/10~50/50であることが好ましい。
電極活物質粒子の体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラックを用いた。
【0033】
前記電極活物質層は、必要に応じて、導電助剤を含んでも良い。導電助剤としては、前述のものが挙げられる。前記電極活物質層に含まれる導電助剤の重量割合は、前記の被覆活物質の被覆層に含まれる導電助剤も併せて、前記電極活物質層の重量を基準として0.1~12重量%であることが好ましく、0.5~10重量%であることがより好ましく、1.0~8.0重量%であることが特に好ましい。前記電極活物質層に含まれる導電助剤の重量割合がこの範囲であると、得られる電池の電気特性が良好となる。なお、導電助剤の重量割合算出時の前記電極活物質層の重量には、電解液の重量は含めないものとする。
【0034】
前記電極活物質層に含まれる電極用バインダ(単に結着剤及びバインダとも呼ばれる)の含有量は、電極活物質層の重量を基準として1重量%以下であることが好ましく、実質的には含まないことがより好ましい。
前記電極用バインダとしては、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びスチレン-ブタジエン共重合体等が挙げられる。これらの電極用バインダは電極活物質同士及び電極活物質と集電体とを結着固定するために用いられる公知のリチウムイオン電池用結着剤として知られており、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去して固体として析出させることで電極活物質同士及び電極活物質と集電体とを結着する。
【0035】
本発明のリチウムイオン電池用電極は、前記電極活物質層と集電体とを有する。
前記集電体を構成する材料は特に限定されないが、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報等に記載されている)等を好適に用いることができる。
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される1種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0036】
樹脂集電体を構成する導電材料は、上述した導電助材と同様のものを好適に用いることができる。
【0037】
樹脂集電体を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0038】
本発明のリチウムイオン電池用電極において、電極活物質層は、電極活物質層が有する空隙が電解液で満たされていてもよく、満たされていなくてもよい。
空隙が電解液で満たされた電極活物質層は、後述するリチウムイオン電池用電極を製造する方法において電解液を分散媒に用いたスラリーを集電体に塗布する方法及び電解液を含まないスラリーを用いて作製した電極活物質層に電解液を含浸する方法等で得ることができる。
電極活物質層の空隙が電解液で満たされている場合、それをセパレータ及び対極となる電極とともに電池外装体に収容し、必要に応じて電解液を追加することでリチウムイオン電池とすることが出来る。
空隙が電解液で満たされていない場合、本発明のリチウムイオン電池用電極を、セパレータを介して対極と積層して積層体を得た後、又は、該積層体を電池外装体に収容した後に、電解液を注液して空隙を電解液で満たし、正極集電体及び負極集電体の間に配置することによって、リチウムイオン電池として機能する。
【0039】
電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する非水電解液を使用することができる。
【0040】
電解質としては、公知の非水電解液に用いられているもの等が使用でき、好ましいものとしては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6及びLiClO4等の無機酸のリチウム塩系電解質、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2及びLiN(C2F5SO2)2等のフッ素原子を有するスルホニルイミド系電解質、LiC(CF3SO2)3等のフッ素原子を有するスルホニルメチド系電解質等が挙げられる。これらの内、高濃度時のイオン伝導性及び熱分解温度の観点から好ましいのはフッ素原子を有するスルホニルイミド系電解質であり、LiN(FSO2)2がより好ましい。LiN(FSO2)2は、他の電解質と併用してもよいが、単独で使用することがより好ましい。
【0041】
非水電解液の電解質濃度は、特に限定されないが、非水電解液の取り扱い性及び電池容量等の観点から1~5mol/Lであることが好ましく、1.5~4mol/Lであることがより好ましく、2~3mol/Lであることがさらに好ましい。
【0042】
非水溶媒としては、公知の非水電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0043】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環のラクトン化合物(δ-バレロラクトン等)等を挙げることができる。
【0044】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びブチレンカーボネート等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0045】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0046】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。
アミド化合物としては、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載する)等が挙げられる。
スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等の鎖状スルホン及びスルホラン等の環状スルホン等が挙げられる。
非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
非水溶媒の内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、ニトリル化合物を含まないことが好ましい。更に好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、特に好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。最も好ましいのはエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合液である。
【0048】
本発明のリチウムイオン電池用電極を製造する方法について説明する。
本発明のリチウムイオン電池用電極が有する電極活物質層は、例えば、被覆電極活物質粒子と未被覆電極活物質粒子と導電助剤とを含む電極活物質層作製用組成物を、所望の形状に直接成形する方法や、基板上に付与して成形する方法等によって製造することができる。
電極活物質層作製用組成物は、被覆電極活物質粒子、未被覆電極活物質粒子、導電助剤並びに分散媒を混合したスラリーであってもよく、スラリーよりも流動性の低い状態(例えばファニキュラー状態やペンデュラー状態とも呼ばれるおからのような半固体状)であってもよい。
【0049】
電極活物質層作製用組成物を基板上に付与する方法の場合、例えば、該電極活物質層作製用組成物は、被覆電極活物質粒子と未被覆電極活物質粒子と導電助剤との他に分散媒を含んだ分散液(スラリーともいう)を用いる方法が挙げられる。
分散液を用いる場合、例えば、被覆電極活物質粒子と未被覆電極活物質粒子と導電助剤との合計濃度が30~60重量%となるように、水又は溶媒(好ましくは非水電解液又は非水電解液に用いる非水溶媒等)と被覆電極活物質粒子と未被覆電極活物質粒子と導電助剤とを混合した分散液を、電極集電体にバーコーター等の塗工装置で塗布した後、必要に応じて乾燥して水又は溶媒を除去する方法が挙げられる。上記乾燥の後、電極活物質層を必要によりプレス機でプレスしてもよい。
【0050】
なお、上記分散液を用いて電極活物質層を得る場合、電極集電体上に電極活物質層を直接形成する方法だけでなく、例えば、他の基材(例えば、紙、アラミドセパレータ等)の表面に上記分散液を塗布して基材上に電極活物質層を形成した後、該基材を取り除く方法を用いることもできる。
また、上記分散液を塗布した後に必要により行う乾燥は、順風式乾燥機等の公知の乾燥機を用いて行うことができ、その乾燥温度は分散液に含まれる分散媒(水又は溶媒)の種類に応じて調整することができる。
【0051】
乾燥させたスラリーをプレスする場合、その圧力は特に限定されないが、圧力が高すぎると正極活物質層に充分な量の空隙を形成することができず、圧力が低すぎると、プレスによる効果がみられないことから、1~200MPaでプレスすることが好ましい。
【0052】
なお、電極活物質層作製用組成物を所望の形状に直接成形する方法としては、例えば、被覆電極活物質と未被覆電極活物質と導電助剤に、非水電解液を添加した混合物(液状であってもよく、おからのような半固体状であってもよい)を所望の形状となるように押出成形する方法や、所定の領域に充填して圧縮する方法等が挙げられる。
【0053】
本発明のリチウムイオン電池用電極は、電極集電体上に前記の電極活物質層を形成する方法及び集電体以外の基材上で得られた電極活物質層を基材から剥離して集電体と積層する方法等で得ることができる。
【0054】
本発明のリチウムイオン電池用電極を備える電池は、例えば、以下に示す方法で得られる。
本発明のリチウムイオン電池用電極と対極となる電極とを組み合わせて、セパレータと共にセル容器に収容し、非水電解液を注入し、セル容器を密封する方法等により製造することができる。
また、正極集電体の一方の面だけに正極活物質層を形成した本発明のリチウムイオン電池用正極の、正極集電体の他方の面に負極活物質からなる負極活物質層を形成して双極型電極を作製し、双極型電極をセパレータと積層してセル容器に収容し、非水電解液を注入し、セル容器を密閉することでも得られる。
【0055】
セパレータとしては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の微多孔フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用のセパレータが挙げられる。
非水電解液としては、本発明のリチウムイオン電池用正極において説明したものを好適に用いることができる。
【0056】
上記のリチウムイオン電池用電極の対極となる電極には、公知のリチウムイオン電池に用いられる電極を用いることができる。
【実施例】
【0057】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0058】
<被覆用樹脂溶液の作製>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、酢酸エチル83部とメタノール17部とを仕込み68℃に昇温した。
次いで、メタクリル酸242.8部、メチルメタクリレート97.1部、2-エチルヘキシルメタクリレート242.8部、酢酸エチル52.1部およびメタノール10.7部を配合したモノマー配合液と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.263部を酢酸エチル34.2部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.583部を酢酸エチル26部に溶解した開始剤溶液を、滴下ロートを用いて2時間かけて連続的に追加した。さらに、沸点で重合を4時間継続した。溶媒を除去し、樹脂582部を得た後、イソプロパノールを1,360部加えて、樹脂濃度30重量%のビニル樹脂からなる被覆用樹脂溶液を得た。
【0059】
<被覆正極活物質(A0-1)の作製>
LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末[(株)BASF戸田バッテリーマテリアルズ製HED NCA-7051](体積平均粒子径:7μm)93.9部を万能混合機に入れ、室温(25℃)、150rpmで撹拌した状態で、前記被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30質量%)を樹脂固形分として0.3部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)](平均粒子径(一次粒子径):0.036μm)5.8部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、100mmHgまで減圧し30分保持し、被覆正極活物質(A0-1)を得た。なお、被覆正極活物質(A0-1)の体積平均粒子径は8μmであった。
【0060】
<被覆正極活物質(A0-2)の作製>
LiMn2O4粉末(体積平均粒子径:13μm)95.3部を万能混合機に入れ、室温(25℃)、150rpmで撹拌した状態で、前記被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30質量%)を樹脂固形分として4.0部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)](平均粒子径(一次粒子径):0.036μm)0.7部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、100mmHgまで減圧し30分保持し、被覆正極活物質(A0-2)を得た。なお、被覆正極活物質(A0-2)の体積平均粒子径は13μmであった。
【0061】
<被覆正極活物質(A0-3)~(A0-5)の作製>
前記(A0-1)作製において、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末をLiFePO4粉末に変更した他は同様にして被覆正極活物質(A0-3)を、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末をLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末(体積平均粒子径:13μm)に変更した他は同様にして被覆正極活物質(A0-4)を、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末をLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2粉末に変更した他は同様にして被覆正極活物質(A0-5)を、それぞれ作製した。
【0062】
<被覆正極活物質(A0-6)の作製>
LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末98.0部を万能混合機に入れ、室温(25℃)、150rpmで撹拌した状態で、前記被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30質量%)を樹脂固形分として1.0部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)](平均粒子径(一次粒子径):0.036μm)1.0部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、100mmHgまで減圧し30分保持し、被覆正極活物質(A0-6)を得た。なお、被覆正極活物質(A0-6)の体積平均粒子径は13μmであった。
【0063】
<被覆正極活物質(A0-7)の作製>
LiMn2O4粉末88.0部を万能混合機に入れ、室温(25℃)、150rpmで撹拌した状態で、前記被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30質量%)を樹脂固形分として2.0部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)](平均粒子径(一次粒子径):0.036μm)10.0部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、100mmHgまで減圧し30分保持し、被覆正極活物質(A0-7)を得た。なお、被覆正極活物質(A0-6)の体積平均粒子径は3μmであった。
【0064】
<珪素系負極活物質の作製>
酸化珪素粒子[信越化学工業(株)製、一次粒子の体積平均粒子径:5μm]を横型加熱炉中に入れ、横型加熱炉内にメタンガスを通気しながら1100℃/1000Pa、平均滞留時間約2時間の化学蒸着操作を行い、炭素含有量が2重量%で、表面が炭素で被覆された珪素系負極活物質粒子(体積平均粒子径6μm)を得た。
【0065】
<チタン酸リチウムの作製>
4.5mol/lの水酸化リチウム水溶液340mlに、結晶性酸化チタン粒子100gを添加し、分散させ、スラリーを得た。次に、チタン化合物(オルトチタン酸)を、TiO2換算で50g分、を撹拝しながら液温を80℃に保った上記スラリーに分散させた。このスラリーに、純水650mlを添加して、結晶性酸化チタン、チタン化合物及びリチウム化合物を含むスラリーを得た。
スプレードライヤー(大川原化工機製)の入口温度を190℃、出口温度を90℃に調整し、上記スラリーを噴霧乾燥した。噴霧乾燥により得られた造粒体を、720℃、大気中で3時間加熱し、チタン酸リチウム粉末を得た。
【0066】
<被覆負極活物質(C0-1)の作製>
難黒鉛化性炭素[(株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製 カーボトロン(登録商標)PS(F)]96部を万能混合機に入れ、室温、150rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30重量%)を樹脂固形分として0.3部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]6.2部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、0.01MPaまで減圧し30分保持し、被覆負極活物質(C0-1)を得た。なお、被覆負極活物質(C0-1)の平均粒子径は9μmであった。
【0067】
<被覆負極活物質(C0-2)~(C0-3)の作製>
前記(C0-1)作製において、難黒鉛化性炭素を体積平均粒子径の異なる難黒鉛化性炭素(体積平均粒子径:22μm)に変更した他は同様にして被覆負極活物質(C0-2)を、難黒鉛化性炭素を黒鉛[JFEケミカル(株)製 SNG-P1A1](体積平均粒子径:20μm)に変更した他は同様にして被覆負極活物質(C0-3)を、難黒鉛化性炭素を前記珪素系負極活物質粒子に変更した他は同様にして被覆負極活物質(C0-4)を、難黒鉛化性炭素をチタン酸リチウム粉末に変更した他は同様にして被覆正極活物質(A0-5)を、それぞれ作製した。
【0068】
<電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)に、LiPF6を1mol/Lの割合で溶解させて、電解液を得た。
【0069】
<正極活物質層用スラリー(A-1)の調製>
上記で得た被覆正極活物質(A0-1)99部、導電助剤としての炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)2部を、120℃、100mmHgの減圧下で16時間乾燥させ、含有水分の除去を行った。
次に、ドライルーム中で、上記の乾燥済みの材料に、上記で得た電解液47部を添加した。この混合物を混合脱泡機(ARE250、株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで120秒間混合することで、正極活物質層用スラリー(A-1)を得た。
【0070】
<正極活物質層用スラリー(A-2)の調製>
上記で得た被覆正極活物質(A0-1)98.01部、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末(体積平均粒子径8μm)0.99部、導電助剤としての炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)2部を、120℃、100mmHgの減圧下で16時間乾燥させ、含有水分の除去を行った。
次に、ドライルーム中で、上記の乾燥済みの材料に、上記で得た電解液47部を添加した。この混合物を混合脱泡機(ARE250、株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで120秒間混合することで、正極活物質層用スラリー(A-2)を得た。
【0071】
<正極活物質層用スラリー(A-3)の調製>
前記正極活物質層用スラリー(A-2)の調製において、被覆正極活物質(A0-1)98.01部及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末0.99部を、被覆正極活物質(A0-1)89.1部、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末(体積平均粒子径7μm)9.9部に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-3)を得た。
【0072】
<正極活物質層用スラリー(A-4)の調製>
前記正極活物質層用スラリー(A-2)の調製において、被覆正極活物質(A0-1)98.01部及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末0.99部を、被覆正極活物質(A0-1)29.7部、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末(体積平均粒子径7μm)69.3部に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-4)を得た。
【0073】
<正極活物質層用スラリー(A-5)の調製>
前記正極活物質層用スラリー(A-2)の調製において、被覆正極活物質(A0-1)98.01部及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末0.99部を、被覆正極活物質(A0-2)84.15部及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末(体積平均粒子径7μm)14.85部に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-5)を得た。
【0074】
<正極活物質層用スラリー(A-6)の調製>
前記正極活物質層用スラリー(A-2)の調製において、被覆正極活物質(A0-1)98.01部及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末0.99部を、被覆正極活物質(A0-3)29.7部及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末(体積平均粒子径7μm)69.3部に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-6)を得た。
【0075】
<正極活物質層用スラリー(A-7)の調製>
前記正極活物質層用スラリー(A-2)の調製において、被覆正極活物質(A0-1)98.01部及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末0.99部を、被覆正極活物質(A0-1)84.15部、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末(体積平均粒子径13μm)14.85部に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-7)を得た。
【0076】
<正極活物質層用スラリー(A-8)の調製>
前記正極活物質層用スラリー(A-2)の調製において、被覆正極活物質(A0-1)98.01部及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末0.99部を、被覆正極活物質(A0-6)84.15部及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末(体積平均粒子径7μm)14.85部に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-8)を得た。
【0077】
<正極活物質層用スラリー(A-9)の調製>
前記正極活物質層用スラリー(A-2)の調製において、被覆正極活物質(A0-1)98.01部及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末0.99部を、被覆正極活物質(A0-7)79.2部及びLiMn2O4粉末(体積平均粒子径8μm)19.8部に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-9)を得た。
【0078】
<正極活物質層用スラリー(A-10)の調製>
前記正極活物質層用スラリー(A-2)の調製において、被覆正極活物質(A0-1)98.01部及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末0.99部を、被覆正極活物質(A0-5)79.2部及びLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2粉末(体積平均粒子径8μm)19.8部に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-10)を得た。
【0079】
<正極活物質層用スラリー(A-11)~(A-14)の調製>
前記正極活物質層用スラリー(A-1)の調製において被覆正極活物質(A0-1)を、被覆正極活物質(A0-7)に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-11)を、被覆正極活物質(A0-5)に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-12)を、LiMn2O4粉末(体積平均粒子径13μm)に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-13)を、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2粉末(体積平均粒子径13μm)に変更した他は同様にして正極活物質層用スラリー(A-14)を、それぞれ得た。
【0080】
【0081】
<負極活物質層用スラリー(C-1)の調製>
上記で得た被覆負極活物質(C0-1)96部、導電助剤としての炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)4部を、120℃、100mmHgの減圧下で16時間乾燥させ、含有水分の除去を行った。
次に、ドライルーム中で、上記の乾燥済みの材料に、上記で得た電解液90部を添加した。この混合物を混合脱泡機(ARE250、株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで120秒間混合することで、負極活物質層用スラリー(C-1)を得た。
【0082】
<負極活物質層用スラリー(C-2)の調製>
上記で得た被覆負極活物質95.04部、難黒鉛化性炭素((株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製 カーボトロン(登録商標)PS(F))0.96部、導電助剤としての炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)4部を、120℃、100mmHgの減圧下で16時間乾燥させ、含有水分の除去を行った。
次に、ドライルーム中で、上記の乾燥済みの材料に、上記で得た電解液90部を添加した。この混合物を混合脱泡機(ARE250、株式会社シンキー製)を用いて2000rpmで120秒間混合することで、負極活物質層用スラリー(C-2)を得た。
【0083】
<負極活物質層用スラリー(C-3)の調製>
被覆負極活物質(C0-1)95.04部、難黒鉛化性炭素0.96部を、被覆負極活物質(C0-1)86.4部、難黒鉛化性炭素((株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製 カーボトロン(登録商標)PS(F))9.6部に変更した他は負極活物質層用スラリー(C-2)の調製方法と同様にして、負極活物質層用スラリー(C-3)を得た。
【0084】
<負極活物質層用スラリー(C-4)の調製>
被覆負極活物質(C0-1)95.04部、難黒鉛化性炭素0.96部を、被覆負極活物質(C0-1)28.8部、難黒鉛化性炭素((株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製 カーボトロン(登録商標)PS(F)67.2部に変更した他は負極活物質層用スラリー(C-2)の調製方法と同様にして、負極活物質層用スラリー(C-4)を得た。
【0085】
<負極活物質層用スラリー(C-5)の調製>
被覆負極活物質(C0-1)95.04部、難黒鉛化性炭素0.96部を、被覆負極活物質(C0-2)28.8部、難黒鉛化性炭素(体積平均粒子径:4μm)67.2部に変更した他は負極活物質層用スラリー(C-2)の調製方法と同様にして、負極活物質層用スラリー(C-5)を得た。
【0086】
<負極活物質層用スラリー(C-6)の調製>
被覆負極活物質(C0-1)95.04部、難黒鉛化性炭素0.96部を、被覆負極活物質(C0-3)28.8部、黒鉛[JFEケミカル(株)製 SNH-A1F1](体積平均粒子径:5μm)67.2部に変更した他は負極活物質層用スラリー(C-2)の調製方法と同様にして、負極活物質層用スラリー(C-6)を得た。
【0087】
<負極活物質層用スラリー(C-7)の調製>
被覆負極活物質(C0-1)95.04部、難黒鉛化性炭素0.96部を、被覆負極活物質(C0-4)9.6部、難黒鉛化性炭素(体積平均粒子径:4μm)86.4部に変更した他は負極活物質層用スラリー(C-2)の調製方法と同様にして、負極活物質層用スラリー(C-7)を得た。
【0088】
<負極活物質層用スラリー(C-8)の調製>
被覆負極活物質(C0-1)95.04部、難黒鉛化性炭素0.96部を、被覆負極活物質(C0-5)95.04部、前記珪素系負極活物質粒子(体積平均粒子径:7μm)0.96部に変更した他は負極活物質層用スラリー(C-2)の調製方法と同様にして、負極活物質層用スラリー(C-8)を得た。
【0089】
<負極活物質層用スラリー(C-9)~(C-10)の調製>
負極活物質層用スラリー(C-1)の調製において被覆負極活物質(C0-1)を、被覆負極活物質(C0-3)に変更した他は同様にして負極活物質層用スラリー(C-9)を、被覆負極活物質(C0-5)に変更した他は同様にして負極活物質層用スラリー(C-10)を、それぞれ得た。
【0090】
【0091】
<実施例1>
正極集電体としてのカーボンコートアルミニウム箔(昭和電工株式会社製、厚さ20μm)を準備し、スラリー塗布部のサイズがΦ15mmとなるようにPETシートを用いてマスクした。この正極集電体上に、アプリケーターを用い、正極活物質層用スラリー(A-2)を塗布した。ここで、塗布されたスラリーの重量が172mgとなるよう,アプリケータのギャップを調整した。塗布後のスラリーの表面にアラミドシート(日本バイリーン株式会社製、厚さ45μm)を配置し、ハイプレッシャージャッキ J-1(アズワン株式会社製)を用いてプレス圧35MPaでプレスすることで、正極を得た。得られた正極は、厚さ263μmであった。
【0092】
<実施例2~3及び7~12>
用いる正極活物質層用スラリー及びスラリー塗工重量を表1に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にして正極を得た。得られた正極の厚さは表3に記載した。
【0093】
<比較例1及び3~6>
用いる正極活物質層用スラリー及びスラリー塗工重量を表1に記載の通り変更した以外は実施例1と同様にして正極を得た。得られた正極の厚さは表3に記載した。
【0094】
<実施例4>
負極集電体としての銅箔(株式会社サンクメタル製、厚さ20μm)を準備し、スラリー塗布部のサイズがΦ17mmとなるようにPETシートを用いてマスクした。この負極集電体上に、アプリケーターを用い、負極活物質層用スラリー(C-2)を塗布した。ここで、塗布されたスラリーが125mgとなるよう、アプリケータのギャップを調整した。塗布後のスラリーの表面にアラミドシート(日本バイリーン株式会社製、厚さ45μm)を配置し、ハイプレッシャージャッキJ-1(アズワン株式会社製)を用いてプレス圧20MPaでプレスすることで、負極を得た。得られた負極は、厚さ315μmであった。
【0095】
<実施例5、6及び10~14>
用いる負極活物質層用スラリー及びスラリー塗工重量を表2に記載の通り変更した以外は実施例4と同様にして負極を得た。得られた負極の厚さは表4に記載した。
【0096】
<比較例2及び7~8>
用いる負極活物質層用スラリー及びスラリー塗工重量を表2の通り変更した以外は実施例4と同様にして負極を得た。得られた負極の厚さは表4に記載した。
【0097】
<非水電解質二次電池の作製>
表3及び4に記載の通り正極と負極を組み合わせて、以下の通り電池を作製した。
正極の正極活物質層と、負極の負極活物質層とを対向させ、その間にセパレータ(セルガード社製、#3501、厚さ25μm)を配置し、発電要素を形成した。そして、正極集電体および負極集電体にそれぞれタブを接続し、アルミラミネートフィルム製の外装体で発電要素を挟んだ。そして外装体の3辺を熱圧着封止して発電要素を収納した。この発電要素に電解液を追加で注入し、真空下において、タブが導出するように外装体を封止することで、非水電解質二次電池を得た。
【0098】
<出力特性の評価>
得られた電池について、放電容量を以下の方法で測定した。
下記の充電条件で、SOC(State of Charge)100%の状態まで充電を行った。その後、各放電レート0.05Cで、電池電圧が2.5V以下になるまで定電流放電を行い、その間に放電した容量を算出して、0.05C放電容量として記録した。次に、下記の充電条件でSOC(State of Charge)100%の状態まで再び充電し、放電レート1.0Cで電池電圧が2.5V以下になるまで定電流放電を行い、その間に放電した容量を算出し、1.0C放電容量として記録した。1.0C放電容量/0.05C放電容量を放電容量割合として表1及び2に記載した。放電容量割合は高いほどレート特性が優れていることを示している。
(充電条件)
3.9Vまで:定電流充電(0.1C)
4.0Vまで:定電流充電(0.05C)
4.2Vまで:定電流充電(0.025C)
4.2V:定電圧充電(0.01C電流値以下となるまで)
【0099】
【0100】
【0101】
本発明の電極を有する電池は、高レート(1C)で出力した際の放電容量の割合が大きく、出力特性に優れることが示された。
各比較例と同一の活物質種を使用した実施例のサイクル特性を比較すると、本発明の電極を有する電池は必ず出力特性が良化していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のリチウムイオン電池用電極は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用に用いられる双極型二次電池用及びリチウムイオン二次電池用等の電極として有用である。