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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】原稿読取装置及び搬送制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20240619BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240619BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20240619BHJP
   B65H 3/52 20060101ALI20240619BHJP
   G03B 27/62 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
H04N1/12 A
H04N1/00 567M
B65H3/06 350A
B65H3/52 330B
G03B27/62
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020019133
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021125829
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 薫
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-014391(JP,A)
【文献】特開2001-139169(JP,A)
【文献】特開2014-110482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
H04N 1/00
B65H 3/06
B65H 3/52
G03B 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を光学的に読取る読取部と、
原稿トレイに載置された原稿をピックアップするピックアップローラと、
フィードローラ及び分離部材を有し、前記ピックアップローラによりピックアップされた前記原稿を、前記フィードローラ及び前記分離部材により形成される分離ニップにおいて原稿束から1枚ずつ分離して搬送する分離搬送部と、
前記分離搬送部により搬送された前記原稿の画像を前記読取部に読取らせるために、前記原稿を前記読取部へ搬送する搬送ローラと、
前記ピックアップローラ及び前記フィードローラを回転させるための駆動力を発生させる搬送モータと、
前記搬送モータから前記ピックアップローラ及び前記フィードローラへの前記駆動力の伝達と当該伝達の遮断との間の切替えを行うクラッチと、
搬送方向において前記フィードローラと前記搬送ローラとの間を搬送される前記原稿を検知する分離センサと、
前記クラッチ及び前記搬送モータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
搬送中の原稿の先端が前記搬送ローラに到達すると、前記駆動力の前記伝達を遮断するように、及び、当該原稿の後端が前記分離センサにより検知されると、後続する原稿の搬送を開始するために前記駆動力の前記伝達を行うように、前記クラッチを制御し、
第1サイズの原稿を第1読取解像度で前記読取部に読取らせる場合には、前記ピックアップローラの回転速度が第1回転速度となるように前記搬送モータを制御し、
前記第1サイズの原稿を前記第1読取解像度より低い第2読取解像度で前記読取部に読取らせる場合には、前記ピックアップローラの回転速度が前記第1回転速度より高速な第2回転速度となるように前記搬送モータを制御し、
前記第1サイズより小さい第2サイズの原稿であって、前記搬送方向において前記ピックアップローラから前記搬送ローラまでの距離より短い原稿長を有する当該第2サイズの原稿を前記読取部に読取らせる場合には、読取解像度の指定に関わらず、前記ピックアップローラの回転速度が前記第2回転速度より低速な第3回転速度となるように前記搬送モータを制御する、
ことを特徴とする原稿読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2サイズの原稿を、読取解像度の指定に関わらず、前記第1読取解像度で前記読取部に読取らせる、
ことを特徴とする請求項に記載の原稿読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2サイズの原稿を前記第2読取解像度で読取ることが指示された場合には、前記第2サイズの原稿を前記第1読取解像度で読取ることにより取得される画像の解像度を、前記第2読取解像度に変換する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の原稿読取装置。
【請求項4】
前記第3回転速度は、前記第1回転速度に等しい、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿読取装置。
【請求項5】
前記第3回転速度は、前記第2サイズの原稿を読取る場合に、前記駆動力の前記伝達の解除から前記ピックアップローラの停止までの停止遅延の間に後続する原稿の先端が前記分離センサへ到達しない速度である、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿読取装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記原稿トレイ上の原稿の有無を検知する複数のセンサを用いることにより、当該原稿が前記第1サイズの原稿であるか又は前記第2サイズの原稿であるかを判定する、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿読取装置。
【請求項7】
前記第1サイズの原稿を読取る場合には、前記制御部は、前記読取部により読取られるべき画像の読取解像度及びカラーモードに従って前記回転速度が異なるように前記搬送モータを制御し、前記第2サイズの原稿を読取る場合には、前記制御部は、読取解像度及びカラーモードに関わらず前記回転速度を同じ回転速度となるように前記搬送モータを制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿読取装置。
【請求項8】
前記第2サイズの原稿は、名刺原稿である、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の原稿読取装置。
【請求項9】
原稿の画像を光学的に読取る読取部と、
原稿トレイに載置された原稿をピックアップするピックアップローラと、
フィードローラ及び分離部材を有し、前記ピックアップローラによりピックアップされた前記原稿を、前記フィードローラ及び前記分離部材により形成される分離ニップにおいて原稿束から1枚ずつ分離して搬送する分離搬送部と、
前記分離搬送部により搬送された前記原稿の画像を前記読取部に読取らせるために、前記原稿を前記読取部へ搬送する搬送ローラと、
前記ピックアップローラ及び前記フィードローラを回転させるための駆動力を発生させる搬送モータと、
前記搬送モータから前記ピックアップローラ及び前記フィードローラへの前記駆動力の伝達と当該伝達の遮断との間の切替えを行うクラッチと、
搬送方向において前記フィードローラと前記搬送ローラとの間を搬送される前記原稿を検知する分離センサと、
前記クラッチ及び前記搬送モータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
搬送中の原稿の先端が前記搬送ローラに到達すると、前記駆動力の前記伝達を遮断するように、及び、当該原稿の後端が前記分離センサにより検知されると、後続する原稿の搬送を開始するために前記駆動力の前記伝達を行うように、前記クラッチを制御し、
第1サイズの原稿を前記読取部に読取らせる場合には、前記読取部により読取られるべき画像の読取解像度及びカラーモードに従って、前記搬送モータを制御し、
前記第1サイズより小さい第2サイズの原稿であって、前記搬送方向において前記ピックアップローラから前記搬送ローラまでの距離より短い原稿長を有する当該第2サイズの原稿を前記読取部に読取らせる場合には、読取解像度及びカラーモードに関わらず、前記ピックアップローラの回転速度が同じ回転速度となるように前記搬送モータを制御する、
ことを特徴とする原稿読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原稿読取装置及び搬送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿の画像を読み取る原稿読取装置の多くは、原稿を自動的に搬送するADF(Auto-Document Feeder)を有する。ADFによって搬送された原稿の画像は、搬送路の下流に位置するイメージセンサで1枚ずつ光学的に読み取られる。原稿を搬送しながら当該原稿の画像を読み取る処理を、流し読みともいう。
【0003】
原稿読取装置が読み取りの対象とする原稿の種類は、近年多様化している。特許文献1は、厚く変形し難いカード類、及び薄く変形し易いシート類の双方を対象として、原稿を正確に1枚ずつピックアップして搬送路へ送出する目的で、それぞれの種類のための2つの分離手段を原稿読取装置に設ける手法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-234287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ADFで、例えば、名刺のような搬送方向の長さが短い小サイズ原稿を搬送する際には、搬送方向の長さが比較的長い大サイズ原稿を搬送する場合と比較して、原稿の後端がより早くピックアップローラから離れる。この結果、ピックアップローラは、次の原稿に当接して次の原稿を給送する。このような現象を、「つれ送り」と称する。つれ送りが生じると、先行する原稿の後端側の領域と次の原稿の先端側の領域とが重なった状態で先行する原稿及び次の原稿が搬送されてしまう。
【0006】
過度なつれ送りを防止するために、原稿の搬送速度を低く抑えるアプローチが考えられる。しかし、原稿の搬送速度は、通常は生産性とトレードオフの関係にある。とりわけ、小型化又は低コスト化のためにADFの複数のローラを単一のモータで駆動する1モータ方式を採用した装置のケースでは、搬送速度は読取品質にも影響する。例えば、ユーザが生産性を重視して低い読取品質を許容しつつ高速な搬送速度を希望した場合に、原稿のサイズ次第で、必ずしも高速な搬送速度を使用することが最適な動作結果をもたらすとは限らない。
【0007】
そこで、本開示は、小サイズ原稿のつれ送りに起因する原稿読取りの不都合を解消し又は軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある観点によれば、原稿の画像を光学的に読取る読取部と、原稿トレイに載置された原稿をピックアップするピックアップローラと、フィードローラ及び分離部材を有し、前記ピックアップローラによりピックアップされた前記原稿を、前記フィードローラ及び前記分離部材により形成される分離ニップにおいて原稿束から1枚ずつ分離して搬送する分離搬送部と、前記分離搬送部により搬送された前記原稿の画像を前記読取部に読取らせるために、前記原稿を前記読取部へ搬送する搬送ローラと、前記ピックアップローラ及び前記フィードローラを回転させるための駆動力を発生させる搬送モータと、前記搬送モータから前記ピックアップローラ及び前記フィードローラへの前記駆動力の伝達と当該伝達の遮断との間の切替えを行うクラッチと、搬送方向において前記フィードローラと前記搬送ローラとの間を搬送される前記原稿を検知する分離センサと、前記クラッチ及び前記搬送モータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、搬送中の原稿の先端が前記搬送ローラに到達すると、前記駆動力の前記伝達を遮断するように、及び、当該原稿の後端が前記分離センサにより検知されると、後続する原稿の搬送を開始するために前記駆動力の前記伝達を行うように、前記クラッチを制御し、第1サイズの原稿を第1読取解像度で前記読取部に読取らせる場合には、前記ピックアップローラの回転速度が第1回転速度となるように前記搬送モータを制御し、前記第1サイズの原稿を前記第1読取解像度より低い第2読取解像度で前記読取部に読取らせる場合には、前記ピックアップローラの回転速度が前記第1回転速度より高速な第2回転速度となるように前記搬送モータを制御し、前記第1サイズより小さい第2サイズの原稿であって、前記搬送方向において前記ピックアップローラから前記搬送ローラまでの距離より短い原稿長を有する当該第2サイズの原稿を前記読取部に読取らせる場合には、読取解像度の指定に関わらず、前記ピックアップローラの回転速度が前記第2回転速度より低速な第3回転速度となるように前記搬送モータを制御する、ことを特徴とする原稿読取装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、小サイズ原稿のつれ送りに起因する原稿読取りの不都合を解消し又は軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る原稿読取装置の外観の一例を示す斜視図。
図2】一実施形態に係る原稿読取装置における原稿の読取りの仕組みについて説明するための断面図。
図3】一実施形態に係る原稿読取装置の制御機能の構成の一例を示すブロック図。
図4】一実施形態に係る原稿読取装置のローラ群、モータ及びクラッチの間の接続関係を示す駆動構成図。
図5】サイズの大きい原稿のつれ送りの一例について説明するための説明図。
図6】サイズの小さい原稿のつれ送りの一例について説明するための説明図。
図7】読取品質、制御モード及び搬送速度の間の対応関係を示すテーブルについて説明するための説明図。
図8】原稿サイズを検知するための手法の一例について説明するための説明図。
図9A】一実施形態において原稿読取装置により実行される概略的な処理の流れの一例を示すフローチャート。
図9B】一実施形態において実行され得る搬送制御処理の詳細な流れの一例を示すフローチャート。
図10】一実施形態における原稿の給紙タイミングを示すタイミングチャート及び原稿間の位置関係の一例を示す説明図。
図11】比較例における原稿の給紙タイミングを示すタイミングチャート及び原稿間の位置関係の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<<1.装置の構成>>
本節では、本開示に係る技術がスキャナに適用される例を主に説明する。但し、本開示に係る技術は、スキャナに限定されない原稿読取装置へ広く適用可能である。特に説明の無い限り、以下に説明する装置、デバイス、モジュール及びチップといった構成要素の各々は、単一のエンティティで構成されてもよく、又は物理的に異なる複数のエンティティから構成されてもよい。
【0013】
図1は、一実施形態に係る原稿読取装置1の外観の一例を示す斜視図である。原稿読取装置1は、読取ユニット100と、ADF200とを含む。読取ユニット100は、例えば、原稿読取装置1の動作を制御するコントローラと、原稿を光学的に読取るイメージセンサとを筐体内に備える。ADF200は、読取ユニット100へ向かう搬送路に沿って原稿を自動的に搬送する。図1の例では、ADF200は、読取ユニット100の上面の長辺の1つに設けられた一対のヒンジにより、読取ユニット100へ開閉自在に連結されている。
【0014】
図2は、原稿読取装置1における原稿の読取りの仕組みについて説明するための断面図である。読取ユニット100は、読取ユニット100の上面に、ガラス台101、流し読みガラス102及び白色部材103を有する。また、読取ユニット100は、ガラス台101の下方でガラス台101と平行に図中の左右方向に延設されるガイドレール109、及びガイドレール109上に設置される第1読取モジュール105を有する。第1読取モジュール105は、図2には示していない光学ユニットモータ306により駆動されて、ガイドレール109に沿って移動可能である。
【0015】
原稿読取装置1は、原稿を読取る動作として、ガラス台101上に載置された原稿を読取る圧板読取り、及びADF200により搬送される原稿を読取る流し読みの双方で動作可能である。圧板読取りの際には、第1読取モジュール105は、ガラス台101上に載置された原稿の下面を、ガイドレール109に沿って移動しながら1ラインずつ読取る。流し読みの際には、第1読取モジュール105は、流し読みガラス102の下方に静止したまま、ADF200により流し読みガラス102上に搬送されて来る原稿の下面を読取る。
【0016】
ADF200は、原稿トレイ201、トレイガイド202、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206を有する。原稿トレイ201上には原稿が載置される。トレイガイド202は、原稿トレイ201上に載置された原稿の(搬送方向に直交する)幅方向の位置を規制する。ピックアップローラ204は、原稿トレイ201に載置された原稿を給送するローラである。分離ローラ対206は、ピックアップローラ204によって給送された原稿が1枚ずつ搬送路へ送出されるように、ピックアップローラ204によって給送された複数枚の原稿を分離する。ADF200は、図2には示していない搬送モータ307及び分離クラッチ308をさらに有する。搬送モータ307は、ピックアップローラ204、分離ローラ対206、搬送ローラ対207、リード上流ローラ対210、リード下流ローラ対217及び排出ローラ対219を回転させるための駆動力を発生させる。分離クラッチ308は、原稿の搬送が開始される場合に、搬送モータ307の駆動力をピックアップローラ204及び分離ローラ対206へ伝達すると共に、ピックアップローラ204を原稿束の上面に当接させる。それにより、ピックアップローラ204が1枚の原稿を原稿束から給送する。ピックアップローラ204は、搬送モータ307の駆動力を受けて図中で時計回りの方向に回転駆動される。分離ローラ対206は、同じく搬送モータ307の駆動力を受けて回転駆動される。
【0017】
ADF200は、さらに、搬送路に沿って上流から下流へ順に配置される搬送ローラ対207、リード上流ローラ対210、白色部材211、及び流し読みガラス216を有する。また、ADF200は、流し読みガラス216の上方に設置される第2読取モジュール212を有する。
【0018】
搬送ローラ対207は、分離ローラ対206により原稿束から分離された原稿を、搬送路に沿って下流へ搬送する。分離クラッチ308は、原稿の先端が搬送ローラ対207に到達するタイミングに応じて、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206への搬送モータ307の駆動力の伝達を遮断してこれらローラを停止する。それにより、次の原稿の搬送路への進入が一時的に中断される。なお、原稿の先端が搬送ローラ対207に到達するタイミングは、例えば、分離センサ208が原稿の先端を検知したタイミングから所定時間が経過したタイミングに設定され得る。所定時間は、原稿の搬送速度と分離センサ208から搬送ローラ対207までの距離とに基づいて設定されてもよい。
【0019】
また、分離クラッチ308は、原稿の後端が分離センサ208を通過すると、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206への搬送モータ307の駆動力の伝達を開始する。それにより、次の原稿の搬送路への給送が開始される。
【0020】
リード上流ローラ対210は、搬送ローラ対207から搬送されて来る原稿を、搬送路の下面読取区間及び上面読取区間へ送り込む。下面読取区間の上方には白色部材211が、下面読取区間の下方には読取ユニット100の流し読みガラス102が位置する。また、上面読取区間の上方には流し読みガラス216が、上面読取区間の下方には読取ユニット100の白色部材103が位置する。原稿は、下面読取区間を通過する際に、第1読取モジュール105の第1LED対106a、106bにより光を照射される。第1読取モジュール105は、この原稿からの反射光を、第1レンズアレイ107を通して第1ラインセンサ108で光学的に読取る。両面読取のケースでは、原稿は、下面読取区間での上述した読取り(表面の読取り)の後、上面読取区間を通過する際に、第2読取モジュール212の第2LED対213a、213bにより光を照射される。第2読取モジュール212は、この原稿からの反射光を、第2レンズアレイ214を通して第2ラインセンサ215で光学的に読取る(裏面の読取り)。
【0021】
ADF200は、さらに、リード下流ローラ対217、排出ローラ対219、排紙トレイ220及び白色部材221を有する。リード下流ローラ対217は、上面読取区間の下流に位置し、読取り後の原稿を搬送路に沿って搬送する。排出ローラ対219は、搬送路の終点において、リード下流ローラ対217から搬送されて来る原稿を排紙トレイ220へ排出する。白色部材221は、圧板読取りの際に、第1読取モジュール105から照射される光を反射する。
【0022】
なお、第1読取モジュール105及び第2読取モジュール212において、図2に示したような直接光学系の代わりに、レンズ及びミラーのセットを含む縮小光学系が採用されてもよい。また、ここでは原稿読取装置1が圧板読取り及び流し読みの双方で動作可能である例を説明したが、本開示に係る技術は、流し読みのみで動作する装置にも適用可能である。
【0023】
図3は、本実施形態に係る原稿読取装置1の制御機能の構成の一例を示すブロック図である。図3の例では、原稿読取装置1の制御機能は、リーダコントローラ300及びシステムコントローラ310により提供される。図4は、本実施形態に係る原稿読取装置1のローラ群、モータ及びクラッチの間の接続関係を示す駆動構成図である。
【0024】
リーダコントローラ300は、リーダCPU301、リーダROM302及びリーダRAM303を備える。リーダCPU(Central Processing Unit)301は、リーダコントローラ300の機能の全般を制御するプロセッサである。リーダROM(Read Only Memory)302は、不揮発性メモリであり、リーダコントローラ300の制御機能のための制御プログラムを記憶する。リーダRAM(Random Access Memory)303は、所謂メインメモリであり、リーダCPU301に作業用の一時的な記憶領域を提供する。リーダCPU301は、リーダROM302に予め記憶された制御プログラムをリーダRAM303へロードして実行する。
【0025】
図4に示したように、原稿読取装置1のピックアップローラ204、分離ローラ対206、搬送ローラ対207、リード上流ローラ対210、リード下流ローラ対217及び排出ローラ対219は、搬送モータ307により駆動される。このように単一のモータで原稿搬送用のローラ群の全てを駆動する1モータ方式を採用することで、原稿読取装置1の小型化及び低コスト化が可能とされる。搬送モータ307からピックアップローラ204及び分離ローラ対206への駆動力の伝達は、伝達手段としての分離クラッチ308によりオン又はオフされ得る。搬送ローラ対207、リード上流ローラ対210、リード下流ローラ対217及び排出ローラ対219は、搬送モータ307へ直接接続されてよく、搬送モータ307の回転に連動して回転駆動される。
【0026】
図3に戻ると、リーダCPU301は、上述した光学ユニットモータ306、搬送モータ307及び分離クラッチ308へ接続される。搬送モータ307は、例えばパルスモータであり、リーダCPU301は、搬送モータ307へ出力する駆動パルス数を制御することにより、搬送モータ307の回転量を所望の値へ制御する。この駆動パルス数は、搬送される原稿が進む距離(搬送距離ともいう)を左右する。したがって、リーダCPU301は、搬送モータ307へ出力した駆動パルス数をカウントすることにより、原稿の搬送距離を測定することができる。
【0027】
リーダCPU301は、さらに、幅センサ309、長さセンサ203、原稿センサ205、分離センサ208、リードセンサ209、排紙センサ218及び小サイズセンサ222へ接続される。幅センサ309は、原稿トレイ201上に載置され、トレイガイド202で規制された原稿の幅方向の長さを検知する。長さセンサ203は、原稿トレイ201上に載置された原稿の搬送方向(読取り時の副走査方向)の長さを検知する。原稿センサ205は、原稿トレイ201上に載置された原稿の有無を検知する。分離センサ208は、搬送路上で分離ローラ対206と搬送ローラ対207との間に配置され、搬送される原稿の先端及び後端を検知する。リードセンサ209は、搬送路上で搬送ローラ対207とリード上流ローラ対210との間に配置され、下面読取区間へ進入しようとする原稿の先端及び後端を検知する。排紙センサ218は、搬送路上でリード下流ローラ対217と排出ローラ対219との間に配置され、排出ローラ対219により排出される原稿を検知する。小サイズセンサ222は、後に図8を用いて説明するように、原稿トレイ201上に小サイズ原稿が載置されていることを検知するために使用される。
【0028】
リーダCPU301は、さらに、第1ラインセンサ108、第2ラインセンサ215、第1LED対106a、106b、第2LED対213a、213b、画像処理部304及び画像メモリ305へ接続される。画像処理部304は、リーダCPU301による制御の下で、第1ラインセンサ108により読取られた原稿の読取画像データについて、例えばノイズ除去といった画像処理を行い、処理後の読取画像データを画像メモリ305に記憶させる。リーダCPU301は、システムコントローラ310からコマンドデータバス317を介して受信される画像出力要求に応じて、画像メモリ305に記憶された読取画像データを、画像データバス318を介してシステムコントローラ310へ出力する。また、リーダCPU301は、原稿の読取りのタイミングに合わせて、垂直同期信号及び水平同期信号を、画像データバス318を介してシステムコントローラ310へ供給する。垂直同期信号は読取画像データの先頭の出力タイミングの基準として、水平同期信号は各ラインの先頭の出力タイミングの基準として、システムコントローラ310により参照される。
【0029】
システムコントローラ310は、システムCPU311、システムROM312、システムRAM313、画像処理部314、画像メモリ315及び操作ユニット316を備える。システムCPU311は、システムコントローラ310の機能の全般を制御するプロセッサである。システムCPU311は、例えば、コマンドデータバス317を介して、原稿読取装置1における原稿の読取りの制御に関するコマンド及びデータをリーダCPU301と交換する。システムROM312は、不揮発性メモリであり、システムコントローラ310の制御機能のための制御プログラムを記憶する。システムRAM313は、所謂メインメモリであり、システムCPU311に作業用の一時的な記憶領域を提供する。システムCPU311は、システムROM312に予め記憶された制御プログラムをシステムRAM313へロードして実行する。
【0030】
画像処理部314は、システムCPU311による制御の下で、リーダコントローラ300の画像処理部304から画像データバス318を介して読取画像データを取得する。画像処理部314は、取得した読取画像データについて、後に説明するような解像度の変換及び色成分の削減といった画像処理を行い、処理後の読取画像データを画像メモリ315に記憶させる。操作ユニット316は、ユーザから指示及び情報入力を受け付け、ユーザへ画像及び情報を提示するためのユーザインタフェースを提供するユニットである。操作ユニット316は、例えば、タッチセンサ、ボタン、スイッチ、キーパッド、ディスプレイ、マイクロフォン及びスピーカのうちの1つ以上を含み得る。
【0031】
本実施形態において、原稿読取装置1は、高品質モード及び低品質モードを含む少なくとも2つの動作モードで動作可能である。高品質モードは相対的に高い読取品質に対応し、低品質モードは相対的に低い読取品質に対応する。操作ユニット316は、これら複数の動作モードのうちの1つをユーザインタフェース(例えば、画面上に表示される設定メニュー)を介してユーザに選択させ、ユーザにより選択された選択動作モードをシステムCPU311へ通知する。システムCPU311は選択動作モードをリーダCPU301へ通知し、リーダCPU301は、通知された選択動作モードに基づいて、搬送モータ307による各ローラの回転駆動を制御する。
【0032】
本実施形態において、読取画像の品質は、読取解像度を含み得る。即ち、高品質モードにおける読取品質はより精細な読取解像度に対応し、低品質モードにおける読取品質はより粗い読取解像度に対応し得る。概して、流し読みの際には、より精細な読取解像度の画像を取得するために、より低速な速度で原稿を搬送することを要する。よって、リーダCPU301は、通常、選択動作モードが高品質モードである場合には、選択動作モードが低品質モードである場合と比較してより遅い速度で、搬送モータ307を回転させる。追加的に又は代替的に、読取画像の品質は、色成分数を含んでもよい。例えば、高品質モードにおける読取品質は色成分数のより多いフルカラーモードに対応し、低品質モードにおける読取品質は色成分数のより少ないモノクロモードに対応してもよい。このケースでも、リーダCPU301は、通常、選択動作モードが高品質モードである場合には、選択動作モードが低品質モードである場合と比較してより遅い速度で、搬送モータ307を回転させる。
【0033】
<<2.課題の説明>>
ADF200でカード(例えば、名刺)のような搬送方向の原稿長が比較的短い小サイズ原稿を搬送する際には、搬送方向の原稿長が比較的長い大サイズ原稿を搬送する場合と比較して、原稿の後端がより早くピックアップローラ204から離れる。この結果、ピックアップローラ204は、次の原稿に当接して当該次の原稿を給送する。このような現象を、つれ送りと称する。例えば、つれ送りによって次の原稿の先端が分離センサ208へ到達してしまうと、分離センサ208は先行する原稿の後端を正しく検知できず、次の原稿の給送を正確に進めることができなくなってしまう。
【0034】
図5は、サイズの大きい原稿(例えばA5やハガキなど)のつれ送りの一例について説明するための説明図である。図6は、サイズの小さい原稿(例えば、名刺など)のつれ送りの一例について説明するための説明図である。
【0035】
図5では、右から左へ、ピックアップローラ204、分離ローラ対206、分離センサ208及び搬送ローラ対207が示されている。搬送路は、分離ローラ対206を始点として、ここでは左方向へ伸びる。搬送開始の時点で、図5(a)に示したように、原稿11及び次原稿12からなる原稿束が、先端を分離ローラ対206に合わせてセットされている。原稿11及び次原稿12のサイズは、図6に示す原稿よりも大きい。
【0036】
リーダCPU301は、原稿の読取りの指示を受信すると、搬送モータ307に駆動力を発生させ、分離クラッチ308に搬送モータ307の駆動力をピックアップローラ204及び分離ローラ対206へ伝達させる。すると、ピックアップローラ204は、回転しながら原稿11に当接して原稿11を給送する。原稿11は、搬送路へ進入し、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206により搬送される。やがて、図5(b)に示したように、原稿11の後端11bがピックアップローラ204から離れる。すると、ピックアップローラ204は、次原稿12に当接して次原稿12を給送する。即ち、この時点からつれ送りが発生する。
【0037】
やがて、図5(c)に示したように、原稿11の先端11aが搬送ローラ対207へ到達する。リーダCPU301は、例えば原稿11の先端11aが分離センサ208により検知された時点から、搬送モータ307へ出力した駆動パルス数をカウントする。そして、リーダCPU301は、カウンタ値が分離センサ208と搬送ローラ対207との間の距離に対応する値になると、原稿11の先端11aが搬送ローラ対207へ到達したと判定し得る。図5(b)の時点から図5(c)の時点までに、原稿11は、距離Dだけ進んでいる。原稿11及び次原稿12は搬送モータ307の共通の駆動力で回転駆動されるローラにより搬送されることから、次原稿12も同じく距離Dだけ進んでいる。
【0038】
図5(c)の時点以降、原稿11は、搬送ローラ対207により搬送される。そのため、リーダCPU301は、原稿11の先端11aが搬送ローラ対207に到達したことに応じて、分離クラッチ308に、搬送モータ307の駆動力のピックアップローラ204及び分離ローラ対206への伝達を遮断させる。しかし、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206の回転は、即座には停止しない。
【0039】
機械的な構造及び特性によって決まるローラ停止遅延の後、図5(d)に示したように、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206の回転は完全に停止する。このローラ停止遅延の間、次原稿12は、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206により搬送されて距離Dだけ進む。結果的に、次原稿12のつれ送り量は合計で距離D+Dに達する。しかし、図5の例では、距離の和D+Dが分離ローラ対206から分離センサ208までの距離Dmarginに満たないため、原稿11が搬送ローラ対207によってさらに搬送された後、分離センサ208は原稿11の後端を正しく検知することができる。即ち、次の原稿12の給送を開始することができる。
【0040】
リーダCPU301は、分離センサ208により原稿11の後端が検知されたことに応じて、分離クラッチ308に、搬送モータ307の駆動力のピックアップローラ204及び分離ローラ対206への伝達を再開させる。それにより、原稿11及び次原稿12が適正な間隔を開けて順に搬送されていくことになる。
【0041】
ここで、図5に示した距離Dは、例えばピックアップローラ204と搬送ローラ対207との間の距離から原稿のサイズを減算した長さに相当し得る。したがって、原稿のサイズがより小さければ、距離Dがより長くなる。
【0042】
図6においても、右から左へ、ピックアップローラ204、分離ローラ対206、分離センサ208及び搬送ローラ対207が示されている。搬送開始の時点で、図6(a)に示したように、原稿13及び次原稿14からなる原稿束が、先端を分離ローラ対206に合わせてセットされている。原稿13及び次原稿14のサイズは、図5に示した原稿よりも小さい(搬送方向において短い)。
【0043】
図5の例と同様、搬送開始時に、ピックアップローラ204は、分離クラッチ308を介して搬送モータ307の駆動力を受け、回転しながら原稿13に当接して、原稿13を給送する(図6(a)参照)。原稿13は、搬送路へ進入して分離ローラ対206により搬送され、やがて原稿13の後端13bがピックアップローラ204から離れる(図6(b)参照)。すると、ピックアップローラ204は、次原稿14に当接して次原稿14を給送する。原稿13は、引続き分離ローラ対206により搬送され、次原稿14もまたピックアップローラ204により搬送される。
【0044】
図6(c)に示した時点で、原稿13の先端13aが搬送ローラ対207へ到達する。リーダCPU301は、搬送モータ307へ出力した駆動パルス数のカウンタ値に基づいて、原稿13の先端13aが搬送ローラ対207へ到達したと判定する。図6(b)の時点から図6(c)の時点までに、原稿13及び次原稿14は距離Dだけ進んでいるが、距離Dは、図6のケースでは、図5のケースと比較してより大きい。
【0045】
リーダCPU301は、原稿13の先端13aが搬送ローラ対207に到達したことに応じて、分離クラッチ308に、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206への駆動力の伝達を遮断させる。ピックアップローラ204及び分離ローラ対206のローラ停止遅延は、原稿のサイズに関わらず同一である。ローラ停止遅延の後、図6(d)に示したように、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206の回転は完全に停止する。このローラ停止遅延の間、次原稿14は、距離Dだけ進む。図5のケース及び図6のケースで、搬送速度が同じであれば、距離Dは変化しない。次原稿14のつれ送り量は合計で距離D+Dに達する。図6の例では、距離の和D+Dが分離ローラ対206から分離センサ208までの距離Dmarginを上回る。そのため、原稿13の後端が分離センサ208を通過しても、次原稿14が分離センサ208によって検知されているため、分離センサ208は原稿13の後端が通過したことを正しく検知することができない。即ち、次の原稿14の給送を開始することができない。
【0046】
ここで、図5及び図6の距離Dは、ローラ停止遅延の間に次原稿12が進む距離である。ローラへの駆動力の伝達が遮断された時点のローラの回転速度が大きいほど、即ち原稿の搬送速度が速いほど、距離Dは長くなる。そこで、つれ送りによって原稿の正確な分離が妨げられることを防止するために、原稿の搬送速度を低く抑えて距離Dを短縮する解決策が考えられる。距離Dを短縮すれば、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206の完全な停止までに小サイズ原稿の先端を分離センサ208へ到達させないことが可能であるものと予期される。
【0047】
ここで、原稿の搬送速度は、通常は生産性とトレードオフの関係にある。とりわけ、1モータ方式を採用した原稿読取装置1のケースでは、ローラ半径が同一であるとすれば、流し読みの際に読取区間を通過する原稿の速度も搬送速度に等しい。そして、読取区間を通過する原稿の速度は、上述したように、読取区間における原稿の読取品質に影響する。例えば、ユーザが生産性を重視して低品質モードを選択した場合に、セットされた原稿サイズが小さいために原稿間の分離に失敗すれば、生産性は却って低下する。一方、原稿の搬送速度を画一的に抑制することは、つれ送りが実質的な問題を生じさせないより大きいサイズの原稿を読取るケースでの生産性向上の機会を手放すことにつながる。
【0048】
<<3.搬送制御の詳細>>
以下に、本実施形態における搬送制御を説明する。
【0049】
(1)大サイズ原稿を流し読みする場合
リーダCPU301は、セットされた原稿のサイズが大サイズである場合において、選択動作モードが高品質モードであるときは、搬送モータ307を第1回転速度で回転させる。また、リーダCPU301は、セットされた原稿のサイズが大サイズである場合において、選択動作モードが低品質モードであるときは、搬送モータ307を上記第1回転速度よりも高速な第2回転速度で回転させる。
【0050】
(2)小サイズ原稿を流し読みするケース
リーダCPU301は、セットされた原稿のサイズが小サイズである場合には、選択動作モードが高品質モードであるか又は低品質モードであるかに関わらず、搬送モータ307を上記第1回転速度で回転させる。
【0051】
なお、ここでの大サイズ及び小サイズとの用語は、原稿サイズ間の相対的な関係に言及したものであり、本開示に係る技術を適用可能な原稿の絶対的なサイズを何ら限定しない。単なる例示として、大サイズ原稿は、A4、B5といった使用頻度の高いサイズ(通常サイズともいう)の原稿であってもよく、小サイズ原稿は、名刺サイズの原稿であってもよい。
【0052】
小サイズとは、例えば、搬送方向の原稿長が、ピックアップローラ204から、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206への搬送モータ307の駆動力の伝達が遮断されるタイミングにおける先行する原稿の位置までの長さより短いサイズであり得る。なお、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206への搬送モータ307の駆動力の伝達が遮断されるタイミングは、本実施形態では、先行する原稿の先端が搬送ローラ対207に到達するタイミングに対応する。
【0053】
本実施形態では、小サイズ原稿の流し読みの際には、読み取りモードが高品質モードか低品質モードかに関わらず第1回転速度で搬送モータ307を駆動させる。この結果、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206の停止遅延の間に小サイズ原稿が搬送される距離が、第2回転速度で搬送モータ307を駆動させる場合に比べて小さくなる。その結果、先行する小サイズ原稿に後続する次の原稿が分離センサ208へ到達してしまうことを抑制することができる。
【0054】
図7(a)は、リーダCPU301による搬送モータ307を用いた搬送速度の制御においてリーダCPU301が選択することのできる搬送速度の候補と対応する読取品質との間の関係の例を示している。図7(a)の例では、搬送速度の制御モードとして、4通りのモードM1、M2、M3及びM4が選択可能である。制御モードM1では、搬送速度は最も低速なV1となる。搬送速度V1で原稿が搬送される場合、各読取モジュールは、フルカラー、且つ主走査方向及び副走査方向の双方で高解像度(例えば、600dpi)で原稿を読取ることができる。制御モードM2では、搬送速度は中程度のV2となる。搬送速度V2で原稿が搬送される場合、各読取モジュールは、フルカラー、且つ主走査方向において低解像度(例えば、300dpi)、副走査方向において高解像度で原稿を読取ることができる。制御モードM3及びM4では、搬送速度は最も高速なV3となる。制御モードM3では、各読取モジュールは、フルカラー、且つ主走査方向及び副走査方向の双方で低解像度で原稿を読取る。制御モードM4では、各読取モジュールは、モノクロ、且つ主走査方向及び副走査方向の双方で高解像度で原稿を読取る。
【0055】
搬送速度V1、V2及びV3の実際の値は、読取モジュールの読取り及び移動の性能(例えば、1ライン当たりの読取時間)と、所要の主走査解像度及び副走査解像度から決定され得る。とりわけ、搬送速度V1は、ピックアップローラ204及び分離ローラ対206のローラ停止遅延の間に後続する小サイズ原稿の先端が分離センサ208へ到達しない速度である。一方、搬送速度V3(又はV2及びV3)は、当該ローラ停止遅延の間に後続する小サイズ原稿の先端が分離センサ208へ到達する速度である。
【0056】
図7(b)は、大サイズ原稿を読取る場合で、ユーザにより選択されるカラーモードと主走査/副走査解像度との各組合せ(即ち、読取品質のモード)について、リーダCPU301がどの制御モードを選択するかの例を示している。例えば、ユーザがフルカラー且つ両方向で600dpiを選択した場合、リーダCPU301は制御モードM1を選択し、よって原稿は搬送速度V1で搬送される。ユーザがフルカラー且つ主走査方向で300dpi、副走査方向で600dpiを選択した場合、リーダCPU301は制御モードM2を選択し、よって原稿は搬送速度V2で搬送される。ユーザがフルカラー且つ両方向で300dpiを選択した場合、リーダCPU301は制御モードM3を選択し、よって原稿は搬送速度V3で搬送される。ユーザがモノクロを選択した場合、解像度の選択に関わらず、リーダCPU301は制御モードM4を選択し、よって原稿は搬送速度V3で搬送される。
【0057】
図7(c)は、小サイズ原稿を読取るケースで、ユーザにより選択されるカラーモードと主走査/副走査解像度との各組合せ(即ち、読取品質のモード)について、リーダCPU301がどの制御モードを選択するかの例を示している。このケースでは、リーダCPU301は、ユーザによりどういった読取品質が選択されたとしても、制御モードM1を選択し、よって原稿は最も低速な搬送速度V1で搬送される。
【0058】
リーダROM302は、図7(a)~図7(c)に示したような読取品質、制御モード及び搬送速度(又は搬送モータ307の回転速度)の間の対応関係を示すマッピングテーブルを予め記憶する。リーダCPU301は、当該マッピングテーブルを参照することにより、システムCPU311により指定された読取品質とセンサにより検知された原稿サイズとの組合せに対応する制御モードを決定する。そして、リーダCPU301は、決定した制御モードで、搬送モータ307に駆動力を発生させ、各読取モジュールに原稿の読取りを行わせる。
【0059】
図8は、原稿サイズを検知するための手法の一例について説明するための説明図である。図8(a)~図8(d)の各々は、原稿トレイ201上に載置された原稿、トレイガイド202、長さセンサ203、原稿センサ205及び小サイズセンサ222の間の位置関係の例を、ADF200の上面から見た形で示している。図8(a)の第1の例では、原稿センサ205及び小サイズセンサ222のセンサ出力が共にオンであることから、リーダCPU301は、大サイズ原稿がADF200にセットされていると判定し得る。図8(b)の第2の例では、原稿センサ205のセンサ出力はオフであり、小サイズセンサ222のセンサ出力はオンであることから、リーダCPU301は、小サイズ原稿がADF200にセットされていると判定し得る。図8(c)の第3の例では、原稿センサ205のセンサ出力はオンであり、小サイズセンサ222のセンサ出力はオフであることから、リーダCPU301は、原稿が原稿トレイ201上で適切にセットされていないと判定し得る。図8(d)の第4の例では、原稿センサ205及び小サイズセンサ222のセンサ出力が共にオフであることから、リーダCPU301は、原稿が原稿トレイ201上で適切にセットされていないと判定し得る。第3の例及び第4の例では、リーダCPU301は、原稿の搬送及び読取りを開始しなくてよい。このようなセンサ構成によって原稿のサイズを自動的に検知可能とすることで、リーダCPU301は、ユーザによる明示的な原稿サイズの指定を要することなく、過度なつれ送りを回避するための適切な搬送速度で原稿を搬送することができる。
【0060】
小サイズ原稿の低品質モード(例えば、低解像度モード又はモノクロモード)での流し読みの際に原稿搬送用のローラ群を上記第1回転速度で回転駆動すると、ユーザが低品質を指定したにも関わらず、高い読取品質の読取画像データが得られることになる。この読取品質を、読取モジュールにおける読取動作を可変的に制御して引き下げ可能とすることは、モジュールの構造を複雑化させ、装置のコストを増大させる。そこで、画像処理部314は、原稿のサイズが小サイズである場合において、選択動作モードが低品質モードであるときに、個々の読取モジュールにより生成される読取画像の品質を変換してもよい。具体的には、小サイズ原稿且つ低品質モードのケースで、上記第1回転速度に対応する搬送速度V1で搬送されながら読取られた原稿の読取画像の品質は、高品質モードに対応する読取品質となる。画像処理部314は、この高い読取品質で生成された読取画像を、低品質モードに対応する低い読取品質の画像へ変換する。読取品質の変換は、例えば、読取画像データの画素値をリサンプリングし又は間引くことによる解像度の削減を含んでもよい。また、読取品質の変換は、フルカラーの読取画像データの減色(例えば、グレースケール化又はモノクロ化)を含んでもよい。
【0061】
<<4.処理の流れ>>
図9Aは、本実施形態において原稿読取装置1により実行される概略的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。図9Aに示した処理は、例えば、システムCPU311及びリーダCPU301が連携して原稿読取装置1の各部を制御することにより実現され得る。なお、以下の説明では、処理ステップをS(ステップ)と略記する。
【0062】
まず、S901で、システムCPU311は、操作ユニット316を介してユーザによる動作モードの選択を受け付ける。例えば、ユーザは、高い読取品質(例えば、フルカラー又は高解像度)に対応する動作モード及び低い読取品質(例えば、モノクロ又は低解像度)に対応する動作モードを含む複数の動作モードのうち1つを選択する。システムCPU311は、ユーザにより選択された動作モードをリーダCPU301へ通知する。
【0063】
次いで、S902及びS903で、リーダCPU301は、原稿センサ205及び小サイズセンサ222からの出力信号に基づいて、原稿トレイ201上に載置されている原稿のサイズを判定する。例えば、原稿センサ205及び小サイズセンサ222の双方が原稿を検知している場合(S902-YES)、リーダCPU301は、S904で、大サイズ原稿がセットされていると判定する。また、原稿センサ205が原稿を検知しておらず、小サイズセンサ222が原稿を検知している場合(S902-NO,S903-YES)、リーダCPU301は、S905で、小サイズ原稿がセットされていると判定する。いずれのケースにも該当しない場合、S906で、リーダCPU301は給紙異常をユーザへ通知し、図9Aの処理は終了する。
【0064】
サイズが正常に検知された場合、S907で、リーダCPU301は、システムCPU311から通知された選択動作モードと、センサを用いて検知した原稿のサイズとの組合せに対応する制御モードを、図7を用いて説明した対応関係を参照して決定する。例えば、検知された原稿のサイズが大サイズである場合には、選択動作モードに依存して、決定される制御モードは、モードM1、M2、M3又はM4のいずれかであり得る。検知された原稿のサイズが小サイズである場合には、選択動作モードに関わらず、決定される制御モードは、モードM1であり得る。
【0065】
次いで、S908で、リーダCPU301は、搬送制御を開始する。リーダCPU301は、例えば、搬送制御の開始時に、決定した制御モードに基づいて、第1読取モジュール105(及び、両面読取のケースでは第2読取モジュール212)に読取動作のパラメータを設定し、及び搬送モータ307の駆動力を設定する。読取動作のパラメータは、例えば、読取解像度及びカラーモードを含む。シェーディング処理の設定がさらに行われてもよい。搬送モータ307の駆動力は、S907で決定した制御モードに関連付けて予め定義されている搬送速度(例えば、V1、V2又はV3のいずれか)に対応する。
【0066】
次いで、S909で、リーダCPU301は、原稿束に含まれる原稿の枚数だけ、搬送制御処理を繰返す。ここでの搬送制御処理のより詳細な流れの一例を後にさらに説明する。
【0067】
全ての原稿の読取りが終了すると、S910で、リーダCPU301は、搬送制御を終了する。例えば、リーダCPU301は、各読取モジュールを待機位置へ移動させ、及び搬送モータ307の回転を停止する。その後、図9Aの処理は終了する。
【0068】
図9Bは、図9AのS909において実行され得る搬送制御処理の詳細な流れの一例を示すフローチャートである。
【0069】
まず、S911で、リーダCPU301は、分離クラッチ308を接続状態へ切替える。すると、ピックアップローラ204が搬送モータ307の駆動力を受けて回転し、原稿束の上面へ当接して原稿をピックアップする。ピックアップされた原稿は、分離ローラ対206により原稿束から分離され搬送される。
【0070】
次いで、S912で、リーダCPU301は、原稿の先端が分離センサ208へ到達した後の搬送モータ307への出力パルス数をカウントすることにより、原稿の先端の搬送ローラ対207への到達を待ち受ける。リーダCPU301は、原稿の先端が搬送ローラ対207へ到達すると、S913で、分離クラッチ308を遮断状態へ切替える。また、S914で、リーダCPU301は、搬送制御用のパラメータである給紙フラグをオフに初期化する。給紙フラグは、次の原稿の給紙を行うべきかを制御するためのフラグである。
【0071】
次いで、S915で、リーダCPU301は、リードセンサ209からの出力信号を監視し、当該出力信号がオンになるのを待ち受ける。リードセンサ209からの出力信号がオンになる前に、リーダCPU301は、S916で、分離センサ208の出力信号に基づいて、分離センサ208へ原稿の後端が到達したかを判定する。分離センサ208へ原稿の後端が到達し(分離センサの出力信号がオフ)、且つ次の原稿の存在が検知されている場合、リーダCPU301は、S917で分離クラッチ308を接続状態へ切替え、S918で給紙フラグをオンに設定する。すると、一旦停止したピックアップローラ204が搬送モータ307の駆動力を受けて再度回転し、次の原稿をピックアップする。例えば、原稿の搬送方向の長さがリードセンサ209と分離センサ208との間の距離よりも短い場合、原稿の先端がリードセンサ209へ到達する前に、この処理分岐で次の原稿がピックアップされ得る。
【0072】
リードセンサ209からの出力信号がオンになると、S920で、リーダCPU301は、各読取モジュールに、原稿の読取りを開始させる。リーダCPU301は、各読取モジュールが原稿を読取っている間、S921で、リードセンサ209からの出力信号を監視し、当該出力信号がオフになるのを待ち受ける。リードセンサ209からの出力信号がオフになる前に、リーダCPU301は、S922で、分離センサ208の出力信号に基づいて、分離センサ208へ原稿の後端が到達したかを判定する。なお、S916で分離センサ208へ原稿の後端が既に到達済みである場合には、この処理分岐の処理ステップはスキップされ得る。分離センサ208へ原稿の後端が到達し(分離センサの出力信号がオフ)、且つ次の原稿の存在が検知されている場合、リーダCPU301は、S923で分離クラッチ308を接続状態へ切替え、S924で給紙フラグをオンに設定する。例えば、原稿の搬送方向の長さがリードセンサ209と分離センサ208との間の距離以上である場合、原稿の先端がリードセンサ209へ到達した後に、この処理分岐で次の原稿がピックアップされ得る。
【0073】
リードセンサ209からの出力信号がオフになると、S925で、リーダCPU301は、各読取モジュールに、原稿の読取りを終了させる。次いで、S926で、リーダCPU301は、システムCPU311から通知された選択動作モードと決定した制御モードとに基づいて、読取画像について品質変換が必要か否かを判定する。例えば、原稿のサイズが小サイズである場合において、選択動作モードが低品質モードであるときに、原稿の読取画像の品質を、例えば高解像度から低解像度へ又はフルカラーからモノクロへ変換することが必要であると判定され得る。品質変換が必要であると判定された場合、処理はS927へ進む。一方、品質変換が必要ではないと判定された場合、処理はS928へ進む。
【0074】
S927で、リーダCPU301は、画像メモリ305に記憶されている読取画像データを画像データバス318を介してシステムコントローラ310へ出力する。システムコントローラ310の画像処理部314は、リーダコントローラ300から入力された読取画像データの品質を変換し、変換後の読取画像データを画像メモリ315に記憶させる。一方、S928でも、リーダCPU301は、画像メモリ305に記憶されている読取画像データを画像データバス318を介してシステムコントローラ310へ出力する。システムコントローラ310の画像処理部314は、リーダコントローラ300から入力された読取画像データを、その品質を変換することなく画像メモリ315に記憶させる。
【0075】
次いで、S929で、リーダCPU301は、給紙フラグがオフを示しているかを判定する。給紙フラグがオンを示している場合、次の原稿が存在するため、処理はS912へ戻り、上述した搬送制御処理が繰返される。給紙フラグがオフを示している場合、図9Bの搬送制御処理は終了する。搬送路の終点に達した原稿は、排紙トレイ220へ排出される。
【0076】
<<5.他のアプローチとの比較>>
ここでは、低品質モードをユーザが選択した状況で、小サイズ原稿を読取るケースに焦点を当てて、上述した実施形態と、比較例としての代替的なアプローチとの間の生産性の相違について検討する。
【0077】
図10(a)は、上述した実施形態における1枚目の小サイズ原稿に後続する2枚目の小サイズ原稿の給紙開始のタイミングを示すタイミングチャートである。図10(b)は、図10(a)のタイミングチャートの時刻Tにおける原稿間の位置関係を示している。
【0078】
図10(a)に示したように、上述した実施形態では、1枚目の原稿15の後端が分離センサ208により検知された時刻Tにおいて、分離クラッチ308が遮断状態から接続状態へ切替わる。このとき、2枚目の原稿16は、既にある程度つれ送りにより進んでいる可能性があるものの、1枚目の原稿15からは適切に分離された状態で、搬送路の下流へ搬送される。原稿搬送用のローラは一定の(低速な搬送速度に対応する)回転速度で回転し、2枚目の原稿16が搬送路を進んでいる間に、1枚目の原稿15が各読取区間において読取られ得る。
【0079】
原稿搬送用のローラを一定の低速な回転速度で回転させる代わりに、各読取区間を原稿が通過する際にローラの回転速度を引き上げるという代替的なアプローチが考えられる。そうすれば、各読取区間における原稿の搬送速度が速くなり、原稿の読取品質はそれに応じて低下するため、小サイズ原稿の読取画像の品質を低品質モードに合わせて変換することが不要となる。しかし、1モータ方式においてローラの回転速度を引き上げると、図6を用いて説明した過度なつれ送りが生じる。よって、このアプローチでは、1枚目の原稿の読取りの終了が検知された後に2枚目の原稿の搬送を再開する構成を採用して、つれ送りを回避する必要性がある。
【0080】
図11(a)は、この代替的なアプローチにおける図10(a)と同様のタイミングチャートである。図11(b)は、図11(a)のタイミングチャートの時刻Tにおける原稿間の位置関係を示している。
【0081】
図11(a)に示したように、上述した代替的なアプローチでは、1枚目の原稿15の読取りが終了する時刻Tまで、分離クラッチ308は遮断状態に維持される。時刻Tで、分離クラッチ308が接続状態へ切替わり、2枚目の原稿16の給紙が開始される。この場合、各原稿の読取りに要する時間は図10(a)のケースと比較して短縮されるものの、原稿間の給紙間隔がより長くなる。したがって、この代替的なアプローチは、生産性を重視して低い読取品質を許容したユーザのニーズに反する。対照的に、上述した実施形態では、相対的に原稿間の給紙間隔を短くすることができる。よって、上述した実施形態は、代替的なアプローチと比較して生産性の観点でも有利であることが理解される。
【0082】
<<6.まとめ>>
ここまで、図1図11を用いて、本開示の実施形態について詳細に説明した。上述した実施形態では、原稿のサイズが第1サイズである場合において、ユーザにより選択された選択動作モードが高い読取品質に対応する第1動作モードであるときは、原稿搬送用のローラ群が、第1回転速度で駆動される。原稿のサイズが上記第1サイズである場合において、選択動作モードが低い読取品質に対応する第2動作モードであるときは、原稿搬送用のローラ群が、上記第1回転速度よりも高速な第回転速度で駆動される。原稿のサイズが上記第1サイズよりも小さい第2サイズである場合には、選択動作モードに関わらず、原稿搬送用のローラ群が、上記第1回転速度で駆動される。かかる構成によれば、小サイズ原稿を搬送するケースで、過度なつれ送りに起因する原稿間の分離の失敗といった原稿読取りの不都合を解消し又は軽減することができる。
【0083】
また、上述した実施形態では、上記第1回転速度は、原稿のサイズが上記第2サイズである場合に、次の原稿の搬送を一時停止するためのローラ停止遅延の間に次の原稿の先端が原稿間の分離を検知する分離センサへ到達しない速度である。かかる構成によれば、ローラへの駆動力の伝達の遮断からローラの停止までの時間遅延をゼロにはできないとしても、前の原稿と次の原稿との間に確実に空隙を生じさせて、これら原稿を正しく分離することができる。
【0084】
また、上述した実施形態では、原稿の先端が搬送ローラに到達したことに応じて、搬送モータからピックアップローラ及び分離ローラへの駆動力の伝達が遮断され得る。かかる構成によれば、搬送モータの駆動力を制御してローラの回転速度を変更する必要性なく、搬送ローラにより前の原稿を下流へ搬送しつつ、次の原稿を分離センサの手前で停止させることができる。その後、原稿の後端が分離センサにより検知されたことに応じて、搬送モータの駆動力のピックアップローラ及び分離ローラへの伝達が再開され得る。それにより、前の原稿と次の原稿との間の給紙間隔を短い空隙に維持しながら原稿を搬送することで、高い生産性を達成することができる。
【0085】
また、上述した実施形態では、原稿のサイズが上記第2サイズである場合において、選択動作モードが上記第2動作モードであるときに、原稿を読取ることにより生成された読取画像の品質が、高い読取品質から低い読取品質へ変換され得る。読取画像の品質とは、例えば読取解像度又は色成分数を含み得る。かかる構成によれば、選択動作モードに必ずしも対応しない回転速度を過度なつれ送りの回避のために使用しつつ、ユーザが望んだ通りの品質の読取画像を提供することができる。また、読取画像データのデータサイズを軽量にすることを望むユーザのニーズを満たすこともできる。
【0086】
<<7.その他の実施形態>>
上記実施形態は、1つ以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理の形式でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0087】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0088】
1:原稿読取装置、100:読取ユニット、108:第1ラインセンサ(読取手段)
、200:ADF、204:ピックアップローラ(第1ローラ)、206:分離ローラ対(第3ローラ)、207:搬送ローラ対(第2ローラ)、208:分離センサ(第1検知手段)、215:第2ラインセンサ(読取手段)、222:小サイズセンサ(第2検知手段)、307:搬送モータ(駆動手段)、308:分離クラッチ(伝達手段)、301:リーダCPU(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11