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  • 特許-樹脂材料及び多層プリント配線板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】樹脂材料及び多層プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240619BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240619BHJP
   C08L 35/00 20060101ALI20240619BHJP
   C08F 222/40 20060101ALI20240619BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240619BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240619BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240619BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240619BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08G59/40
C08L35/00
C08F222/40
C08K3/013
C08K3/36
C08L101/00
H05K1/03 610N
H05K3/46 T
H05K3/46 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020025553
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2020132880
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019026711
(32)【優先日】2019-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 悠子
(72)【発明者】
【氏名】林 達史
(72)【発明者】
【氏名】久保 顕紀子
(72)【発明者】
【氏名】竹田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】新土 誠実
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204639(JP,A)
【文献】特開2010-229313(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114286(WO,A1)
【文献】特開昭62-007710(JP,A)
【文献】特開2016-079366(JP,A)
【文献】特開2012-193325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
C08K
C08G
H05K 1/03
H05K 3/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド骨格を3個以上有しかつイミド骨格を1個以上有するポリマレイミド化合物Aと、
マレイミド骨格を3個以上有しかつイミド骨格を1個以上有するポリマレイミド化合物とは異なる熱硬化性化合物と、
硬化促進剤と、
無機充填材とを含み、
前記ポリマレイミド化合物Aが、分岐構造を有することにより3個以上の末端を有し、かつ3個以上の前記末端に前記マレイミド骨格を有し、
前記ポリマレイミド化合物Aが、ダイマージアミンに由来する骨格を少なくとも1個有し、
前記熱硬化性化合物が、エポキシ化合物を含む、樹脂材料。
【請求項2】
記ダイマージアミンに由来する骨格が、前記末端における前記マレイミド骨格と直接結合している、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項3】
前記末端における前記マレイミド骨格がエステル結合を介して主鎖と結合している、請求項1又は2に記載の樹脂材料。
【請求項4】
前記ポリマレイミド化合物Aの分子量が1000以上50000以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項5】
樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記無機充填材の含有量が50重量%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項6】
前記無機充填材がシリカである、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項7】
硬化剤を含み、
前記硬化剤が、フェノール化合物、活性エステル化合物、及びカルボジイミド化合物の内の少なくとも1種の成分を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項8】
前記硬化剤が、フェノール化合物と活性エステル化合物とを含む、請求項に記載の樹脂材料。
【請求項9】
前記熱硬化性化合物及び前記硬化剤の内の少なくとも一方が、アミド結合又はイミド結合を有する、請求項又はに記載の樹脂材料。
【請求項10】
前記熱硬化性化合物が、アミド結合又はイミド結合を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項11】
樹脂フィルムである、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項12】
絶縁材料として用いられる、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項13】
多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために用いられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項14】
回路基板と、
前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、
複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、
複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、請求項1~13のいずれか1項に記載の樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマレイミド化合物を含む樹脂材料に関する。また、本発明は、上記樹脂材料を用いた多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置、積層板及びプリント配線板等の電子部品を得るために、様々な樹脂材料が用いられている。例えば、多層プリント配線板では、内部の層間を絶縁するための絶縁層を形成したり、表層部分に位置する絶縁層を形成したりするために、樹脂材料が用いられている。上記絶縁層の表面には、一般に金属である配線が積層される。また、上記絶縁層を形成するために、上記樹脂材料がフィルム化された樹脂フィルムが用いられることがある。上記樹脂材料及び上記樹脂フィルムは、ビルドアップフィルムを含む多層プリント配線板用の絶縁材料等として用いられている。
【0003】
下記の特許文献1には、マレイミド基と、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基とを有する化合物を含有する樹脂組成物が開示されている。特許文献1には、この樹脂組成物の硬化物を、多層プリント配線板等の絶縁層として用いることができることが記載されている。
【0004】
下記の特許文献2には、ビスマレイミド化合物を含み、該ビスマレイミド化合物が、マレイミド基2個と、特定の構造を有するポリイミド基1個以上とを有する電子材料用樹脂組成物が開示されている。上記ビスマレイミド化合物において、2個の上記マレイミド基は、各々独立して、8以上の原子が直鎖状に連結した第1の連結基を少なくとも介して、上記ポリイミド基の両端に結合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2016/114286A1
【文献】特開2018-90728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載のような従来の樹脂材料を用いて絶縁層を形成した場合に、硬化物の誘電正接が十分に低くならなかったり、熱寸法安定性が十分に高くならなかったりすることがある。
【0007】
また、従来の樹脂材料を用いて絶縁層を形成した場合に、硬化物の伸び特性が十分に高くならなかったり、硬化物の曲げ特性が十分に高くならなかったりすることがある。
【0008】
本発明の目的は、樹脂材料の硬化物において、1)誘電正接を低くすることができ、2)熱寸法安定性を高めることができ、3)伸び特性を高めることができ、4)曲げ特性を高めることができる樹脂材料を提供することである。また、本発明は、上記樹脂材料を用いた多層プリント配線板を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、マレイミド骨格を3個以上有しかつイミド骨格を1個以上有するポリマレイミド化合物と、硬化促進剤とを含む、樹脂材料が提供される。
【0010】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記ポリマレイミド化合物が、分岐構造を有することにより3個以上の末端を有し、かつ3個以上の前記末端に前記マレイミド骨格を有する。
【0011】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記ポリマレイミド化合物が、ダイマージアミンに由来する骨格を少なくとも1個有する。
【0012】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記ポリマレイミド化合物が、ダイマージアミンに由来する骨格を少なくとも1個有し、前記ダイマージアミンに由来する骨格が、前記末端における前記マレイミド骨格と直接結合している。
【0013】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記末端における前記マレイミド骨格がエステル結合を介して主鎖と結合している。
【0014】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記ポリマレイミド化合物の分子量が1000以上50000以下である。
【0015】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、無機充填材を含む。
【0016】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、前記無機充填材の含有量が50重量%以上である。
【0017】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記無機充填材がシリカである。
【0018】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、マレイミド骨格を3個以上有しかつイミド骨格を1個以上有するポリマレイミド化合物とは異なる熱硬化性化合物を含む。
【0019】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記熱硬化性化合物が、マレイミド化合物、エポキシ化合物、ビニル化合物、ベンゾオキサジン化合物、又はシアネートエステル化合物である。
【0020】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、前記熱硬化性化合物と、硬化剤とを含み、前記熱硬化性化合物が、エポキシ化合物を含み、前記硬化剤が、フェノール化合物、活性エステル化合物、及びカルボジイミド化合物の内の少なくとも1種の成分を含む。
【0021】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記硬化剤が、フェノール化合物と活性エステル化合物とを含む。
【0022】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記熱硬化性化合物及び前記硬化剤の内の少なくとも一方が、アミド結合又はイミド結合を有する。
【0023】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記熱硬化性化合物が、アミド結合又はイミド結合を有する。
【0024】
本発明に係る樹脂材料のある特定の局面では、前記樹脂材料は、樹脂フィルムである。
【0025】
本発明に係る樹脂材料は、絶縁材料として好適に用いられる。
【0026】
本発明に係る樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
【0027】
本発明の広い局面によれば、回路基板と、前記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の前記絶縁層間に配置された金属層とを備え、複数の前記絶縁層の内の少なくとも1層が、上述した樹脂材料の硬化物である、多層プリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る樹脂材料は、マレイミド骨格を3個以上有しかつイミド骨格を1個以上有するポリマレイミド化合物と、硬化促進剤とを含む。本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、樹脂材料の硬化物において、1)誘電正接を低くすることができ、2)熱寸法安定性を高めることができ、3)伸び特性を高めることができ、4)曲げ特性を高めることができるという、1)~4)の効果を全て発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0031】
本発明に係る樹脂材料は、マレイミド骨格を3個以上有しかつイミド骨格を1個以上有するポリマレイミド化合物と、硬化促進剤とを含む。上記マレイミド骨格と上記イミド骨格は、上記ポリマレイミド化合物において、部分骨格として存在する。
【0032】
本願明細書では、上記ポリマレイミド化合物として、トリマートリアミンに由来するトリマレイミドを含んでいてもよい樹脂材料を開示する。本発明に係る樹脂材料では、上記ポリマレイミド化合物は、ポリマレイミド化合物(但し、トリマートリアミンに由来するトリマレイミドを除く)であることが好ましい。本発明に係る樹脂材料は、マレイミド骨格を3個以上有しかつイミド骨格を1個以上有するポリマレイミド化合物(但し、トリマートリアミンに由来するトリマレイミドを除く)と、硬化促進剤とを含むことが好ましい。本願明細書では、マレイミド骨格を3個以上有しかつイミド骨格を1個以上有するポリマレイミド化合物(但し、トリマートリアミンに由来するトリマレイミドを除く)と、硬化促進剤とを含む樹脂材料の発明も開示する。
【0033】
本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、樹脂材料の硬化物において、1)誘電正接を低くすることができ、2)熱寸法安定性を高めることができ、3)伸び特性を高めることができ、4)曲げ特性を高めることができるという、1)~4)の効果を全て発揮することができる。
【0034】
本発明に係る樹脂材料では、硬化物の伸び特性を高めることができるので、メッキピール強度を高めることができる。また、本発明に係る樹脂材料では、硬化物の曲げ特性が高く、硬化物の柔軟性を高めることができるので、クラックの発生を抑えることができる。そのため、本発明の樹脂材料を用いて得た多層プリント配線板等の信頼性を高めることができる。
【0035】
また、本発明に係る樹脂材料の硬化物は、応力緩和性を高めることができるので、反りの発生を効果的に抑えることができ、また、熱衝撃及び物理衝撃等によるクラックの発生を効果的に抑えることができる。
【0036】
また、本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、デスミア処理によってスミアを効果的に除去することができる。また、本発明に係る樹脂材料では、上記の構成が備えられているので、エッチング後の表面粗度の均一性を高めることができ、また、絶縁層と金属層との密着性を高めることができる。
【0037】
本発明に係る樹脂材料は、樹脂組成物であってもよく、樹脂フィルムであってもよい。上記樹脂組成物は、流動性を有する。上記樹脂組成物は、ペースト状であってもよい。上記ペースト状には液状が含まれる。取扱性に優れることから、本発明に係る樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0038】
本発明に係る樹脂材料は、熱硬化性材料であることが好ましい。上記樹脂材料が樹脂フィルムである場合には、該樹脂フィルムは、熱硬化性樹脂フィルムであることが好ましい。
【0039】
以下、本発明に係る樹脂材料に用いられる各成分の詳細、及び本発明に係る樹脂材料の用途などを説明する。
【0040】
[マレイミド骨格を3個以上有しかつイミド骨格を1個以上有するポリマレイミド化合物]
本発明に係る樹脂材料は、マレイミド骨格を3個以上有しかつイミド骨格を1個以上有するポリマレイミド化合物(以下、「ポリマレイミド化合物A」と記載することがある)を含む。上記ポリマレイミド化合物Aは、ポリマレイミド化合物(但し、トリマートリアミンに由来するトリマレイミドを除く)であることが好ましい。上記マレイミド骨格及び上記イミド骨格はそれぞれ、上記ポリマレイミド化合物Aにおいて、部分骨格として存在する。本発明に係る樹脂材料に含まれる上記ポリマレイミド化合物Aは、トリマートリアミンに由来するトリマレイミドとは異なる化合物であることが好ましい。上記ポリマレイミド化合物Aは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
上記ポリマレイミド化合物Aは、熱硬化性化合物である。
【0042】
上記ポリマレイミド化合物Aは、分岐構造を有することが好ましい。分岐構造を有するポリマレイミド化合物Aは、末端を3個以上有する。したがって、上記ポリマレイミド化合物Aは、分岐構造を有することにより3個以上の末端を有することが好ましい。上記ポリマレイミド化合物Aが分岐構造を有することにより、ポリマレイミド化合物Aの分子量が1000以上100000以下である場合には、硬化物の熱寸法安定性も高めることができ、特に、分子量が10000以下である場合には、樹脂材料の溶融粘度を低くすることができ、基板等の凹凸に対する埋め込み性を高めることができる。また、上記ポリマレイミド化合物Aが分岐構造を有することにより、ポリマレイミド化合物Aの分子量が10000以上の場合には、樹脂フィルムの柔軟性を高めることができる。
【0043】
樹脂材料の溶融粘度を低くする観点、硬化物の誘電正接を低くする観点及び硬化物の熱寸法安定性を高める観点からは、上記ポリマレイミド化合物Aは、分岐構造を有することにより3個以上の末端を有し、かつ3個以上の上記末端に上記マレイミド骨格を有することが好ましい。なお、この場合、上記ポリマレイミド化合物Aの全ての末端が上記マレイミド骨格を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0044】
樹脂材料の溶融粘度をより一層低くする観点、硬化物の誘電正接をより一層低くする観点及び硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点からは、上記ポリマレイミド化合物Aは、分岐構造を有することにより3個以上の末端を有し、かつ全ての上記末端に上記マレイミド骨格を有することがより好ましい。
【0045】
上記の1)~4)の効果を全て発揮させる観点から、上記末端における上記マレイミド骨格はエステル結合を介してポリマレイミド化合物Aにおける主鎖と結合していることが好ましい。上記ポリマレイミド化合物Aは、上記末端におけて上記マレイミド骨格を有する分岐鎖において、エステル結合を有することが好ましい。
【0046】
上記の1)~4)の効果を全て発揮させる観点から、上記ポリマレイミド化合物Aにおける上記マレイミド骨格の数は3個以上である。
【0047】
上記ポリマレイミド化合物Aにおける上記マレイミド骨格の数は、好ましくは4個以上、好ましくは25個以下、より好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下である。上記マレイミド骨格の数が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記の1)~4)の効果をより一層効果的に発揮させることができる。なお、上記ポリマレイミド化合物Aにおける上記マレイミド骨格の数は3個であってもよい。
【0048】
上記ポリマレイミド化合物Aは、上記末端以外の部分にマレイミド骨格を有していてもよい。
【0049】
上記の1)~4)の効果を全て発揮させる観点から、上記ポリマレイミド化合物Aにおける上記イミド骨格の数は1個以上である。
【0050】
上記ポリマレイミド化合物Aにおける上記イミド骨格の数は、好ましくは3個以上、好ましくは25個以下、より好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下、特に好ましくは4個以下である。上記イミド骨格の数が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記の1)~4)の効果をより一層効果的に発揮させることができる。なお、上記ポリマレイミド化合物Aにおける上記イミド骨格の数は1個であってもよい。
【0051】
上記ポリマレイミド化合物Aにおいて、上記マレイミド骨格の数と上記イミド骨格の数とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0052】
硬化物の誘電正接をより一層低くする観点及び硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点からは、上記ポリマレイミド化合物Aにおける上記マレイミド骨格の数と、上記イミド骨格の数とは同一であるか、又は、上記マレイミド骨格の数が上記イミド骨格の数よりも多いことが好ましい。
【0053】
上記マレイミド骨格の数が上記イミド骨格の数よりも多い場合、上記マレイミド骨格の数は上記イミド骨格の数よりも、1個以上で多いことが好ましく、2個以上で多いことがより好ましい。上記マレイミド骨格の数が上記イミド骨格の数よりも多い場合、上記マレイミド骨格の数は上記イミド骨格の数よりも、6個以下で多いことが好ましく、5個以下で多いことがより好ましく、4個以下で多いことが更に好ましく、3個以下で多いことが特に好ましい。これらの場合には、硬化物の誘電正接を更により一層低くすることができ、かつ硬化物の熱寸法安定性を更により一層高めることができる。
【0054】
上記ポリマレイミド化合物Aにおいて、マレイミド骨格の数が上記イミド骨格の数よりも少なくてもよい。上記マレイミド骨格の数が上記イミド骨格の数よりも少ない場合、上記マレイミド骨格の数の上記イミド骨格の数の対する比(マレイミド骨格の数/イミド骨格の数)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。この場合には、硬化物の誘電正接を更により一層低くすることができ、かつ硬化物の熱寸法安定性を更により一層高めることができる。
【0055】
上記ポリマレイミド化合物Aは、例えば、下記式(10A)で表される構造又は下記式(10B)で表される構造を有していてもよい。下記式(10A)又は下記式(10B)で表される構造は、ポリマレイミド化合物Aにおいて、側鎖に存在していてもよい。下記式(10A)で表される構造は、例えば、1,3-Diamino-2-propanol等のヒドロキシル基を有するジアミン化合物と、6-Maleimidohexanoic acid等のカルボン酸とを用いて、上記ヒドロキシル基とカルボキシル基とを反応させることにより得ることができる。また、下記式(10B)で表される構造は、例えば、セリノール等のモノアミン化合物とヒドロキシル基を複数有する化合物とを末端にて反応させて得られた化合物と、6-Maleimidohexanoic acid等のカルボン酸とを用いて、上記ヒドロキシル基とカルボキシル基とを反応させることにより得ることができる。
【0056】
【化1】
【0057】
上記式(10A)中、R1及びR2はそれぞれ四価の有機基を表す。
【0058】
【化2】
【0059】
上記式(10B)中、R1は四価の有機基を表す。
【0060】
上記ポリマレイミド化合物Aは、ダイマージアミンに由来する骨格を少なくとも1個有することが好ましい。上記ダイマージアミンに由来する骨格は、柔軟性を有する骨格である。そのため、上記ポリマレイミド化合物Aが、上記ダイマージアミンに由来する骨格を有する場合には、Bステージフィルム等の樹脂フィルムのシート性を向上させることが可能となる。また、硬化物の応力緩和性を高めることができるので、反りの発生を効果的に抑えることができ、多層プリント配線板等の信頼性を高めることができる。さらに、エッチング性を高めることができるので、デスミア処理によってスミアを効果的に除去することができる。
【0061】
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点及び絶縁層と金属層との密着性をより一層高める観点からは、上記ポリマレイミド化合物Aにおける上記ダイマージアミンに由来する骨格の数は、好ましくは1個以上、より好ましくは2個以上、好ましくは10個以下、より好ましくは25個以下である。また、ポリマレイミド化合物Aの合成時において、合成材料中のアミンのモル数100%中、上記ダイマージアミンのモル数は10%以上80%以下であることが好ましい。
【0062】
上記ポリマレイミド化合物Aにおいて、上記ダイマージアミンに由来する骨格は、該ポリマレイミド化合物Aの上記末端における上記マレイミド骨格と直接結合していることが好ましい。より具体的には、上記ダイマージアミンに由来する骨格における窒素原子の内の1個は、上記末端における上記マレイミド骨格における窒素原子であることが好ましい。この場合には、マレイミド基の反応性をより一層高めることができ、硬化反応を十分に進行させることができる。その結果、硬化物の熱寸法安定性を更により一層高めることができ、また、絶縁層と金属層との密着性を更により一層高めることができる。
【0063】
上記ポリマレイミド化合物Aにおいて、全ての上記マレイミド骨格が、上記ダイマージアミンに由来する骨格と直接結合していてもよく、直接結合していなくてもよい。
【0064】
上記ポリマレイミド化合物Aにおける上記マレイミド骨格の数と、上記ダイマージアミンに由来する骨格の数とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0065】
上記ポリマレイミド化合物Aは、上記ダイマージアミン以外のジアミン化合物に由来する骨格を有していてもよい。
【0066】
上記ポリマレイミド化合物Aが上記ポリカルボン酸に由来する骨格を有する場合において、上記ポリマレイミド化合物Aは、ダイマージアミンと酸二無水物との反応物に由来する骨格を有することが好ましい。上記ダイマージアミンと酸二無水物との反応物に由来する骨格は、上記イミド骨格を有することが好ましい。この場合には、硬化物の誘電正接を更により一層低くすることができ、かつ硬化物の熱寸法安定性を更により一層高めることができる。なお、上記ダイマージアミンと酸二無水物との反応物に由来する骨格は、上記ダイマージアミンに由来する骨格を有する。
【0067】
上記ポリマレイミド化合物Aは、上記マレイミド骨格と、ジアミン化合物に由来する骨格との間に、上記ダイマージアミンと酸二無水物との反応物に由来する骨格を有することが好ましい。
【0068】
上記酸二無水物としては、テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0069】
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、及びビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
【0070】
上記ダイマージアミンとしては、例えば、バーサミン551(商品名、BASFジャパン社製、3,4-ビス(1-アミノヘプチル)-6-ヘキシル-5-(1-オクテニル)シクロヘキセン)、バーサミン552(商品名、コグニクスジャパン社製、バーサミン551の水添物)、並びにPRIAMINE1075、及びPRIAMINE1074(商品名、いずれもクローダジャパン社製)等が挙げられる。
【0071】
上記ダイマージアミン以外のジアミン化合物としては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、2,7-ジアミノフルオレン、4,4’-エチレンジアニリン、イソホロンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、1,4-ジアミノブタン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,7-ジアミノヘプタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,5-ジアミノペンタン、1,8-ジアミノオクタン、1,3-ジアミノプロパン、1,11-ジアミノウンデカン、及び2-メチル-1,5-ジアミノペンタン等が挙げられる。
【0072】
上記ダイマージアミンに由来する骨格は、脂肪族環を有するか又は有さない。上記ダイマージアミンに由来する骨格は、脂肪族環を有していてもよく、有さなくてもよい。
【0073】
上記ダイマージアミン以外のジアミン化合物に由来する骨格は、芳香族環を有するか又は有さない。上記ダイマージアミン以外のジアミン化合物に由来する骨格は、芳香族環を有していてもよく、有さなくてもよい。
【0074】
上記ダイマージアミン以外のジアミン化合物に由来する骨格は、脂肪族環を有するか又は有さない。上記ダイマージアミン以外のジアミン化合物に由来する骨格は、脂肪族環を有していてもよく、有さなくてもよい。
【0075】
上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。
【0076】
上記脂肪族環としては、モノシクロアルカン環、ビシクロアルカン環、トリシクロアルカン環、テトラシクロアルカン環、及びジシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0077】
上記ポリマレイミド化合物Aの分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは5000を超え、更に好ましくは7500以上、特に好ましくは8000以上、好ましくは70000以下、より好ましくは50000以下、更に好ましくは25000以下、特に好ましくは18000以下、最も好ましくは15000以下である。上記ポリマレイミド化合物Aの分子量が上記下限以上であると、樹脂材料の線膨張係数を低く抑えることができる。また、上記ポリマレイミド化合物Aの分子量が70000を超えると、上記ポリマレイミド化合物Aの分子量が70000以下である場合と比べて、樹脂材料の溶融粘度が高くなり、凹凸表面に対する埋め込み性が低下することがある。さらに、上記ポリマレイミド化合物Aの分子量が50000を超えると、上記ポリマレイミド化合物Aの分子量が50000以下である場合と比べて、樹脂材料の溶融粘度が高くなり、凹凸表面に対する埋め込み性が低下することがある。上記マレイミド化合物の分子量は1000以上50000以下であることが特に好ましい。
【0078】
上記ポリマレイミド化合物Aの分子量は、上記ポリマレイミド化合物Aが重合体ではない場合、及び上記ポリマレイミド化合物Aの構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記ポリマレイミド化合物Aの分子量は、上記ポリマレイミド化合物Aが重合体である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0079】
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点、絶縁層と金属層との密着性をより一層高める観点から、上記ポリマレイミド化合物Aの軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。
【0080】
上記軟化点は、示差走査熱量測定装置(例えば、TA・インスツルメント社製「Q2000」を用いて、昇温速度3℃/分で-30℃から260℃まで窒素雰囲気下で加熱を行い、リバースヒートフローの変曲点から求めることができる。
【0081】
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記ポリマレイミド化合物Aの含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記ポリマレイミド化合物Aの含有量が上記下限以上であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高くし、絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。上記ポリマレイミド化合物Aの含有量が上記上限以下であると、樹脂材料の溶融粘度を低くすることができ、基板等の凹凸に対する埋め込み性を高めることができる。
【0082】
[熱硬化性化合物]
上記樹脂材料は、マレイミド骨格及びイミド骨格をそれぞれ3個以上有するポリマレイミド化合物とは異なる熱硬化性化合物を含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物は、上記ポリマレイミド化合物Aとは異なる熱硬化性化合物である。なお、上記熱硬化性化合物は、ポリマレイミド化合物Aと反応する化合物であってもよい。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
上記熱硬化性化合物としては、スチレン化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、マレイミド化合物、エポキシ化合物、ビニル化合物、ベンゾオキサジン化合物、シアネートエステル化合物、ポリアリレート化合物、ジアリルフタレート化合物、アクリレート化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0084】
上記熱硬化性化合物は、マレイミド化合物、エポキシ化合物、ビニル化合物、ベンゾオキサジン化合物、又はシアネートエステル化合物であることが好ましく、エポキシ化合物、又はビニル化合物を含むことがより好ましく、エポキシ化合物を含むことが更に好ましい。この場合には、硬化物の誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0085】
上記熱硬化性化合物及び後述する硬化剤の内の少なくとも一方が、アミド結合又はイミド結合を有することが好ましい。上記熱硬化性化合物が、アミド結合又はイミド結合を有することが好ましい。上記硬化剤が、アミド結合又はイミド結合を有することが好ましい。上記熱硬化性化合物及び上記硬化剤の内の双方が、アミド結合又はイミド結合を有することが好ましい。アミド結合又はイミド結合を有する熱硬化性化合物の使用により、熱硬化性化合物とマレイミド化合物との相溶性を高めることができ、デスミア性をより一層高めることができる。アミド結合又はイミド結合を有する硬化剤の使用により、硬化剤とマレイミド化合物との相溶性を高めることができ、デスミア性をより一層高めることができる。上記熱硬化性化合物及び上記硬化剤はそれぞれ、アミド結合を有していてもよく、イミド結合を有していてもよい。上記樹脂材料は、アミド結合又はイミド結合を有するエポキシ化合物を含むことが特に好ましい。
【0086】
<マレイミド化合物>
上記マレイミド化合物は、マレイミド骨格を3個以上有しかつイミド骨格を1個以上有するポリマレイミド化合物とは異なるマレイミド化合物(以下、「マレイミド化合物X」と記載することがある)である。上記マレイミド化合物Xは、ポリマレイミド化合物Aとは異なるマレイミド化合物である。上記マレイミド化合物Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0087】
上記マレイミド化合物Xは、ビスマレイミド化合物であってもよい。
【0088】
上記マレイミド化合物Xとしては、N-フェニルマレイミド及びN-アルキルビスマレイミド等が挙げられる。
【0089】
上記マレイミド化合物Xは、ダイマージアミン以外のジアミン化合物又はトリマートリアミン以外のトリアミン化合物に由来する骨格を有することが好ましい。
【0090】
上記マレイミド化合物Xは、芳香族骨格を有することが好ましい。
【0091】
上記マレイミド化合物Xでは、マレイミド骨格における窒素原子と、芳香族環とが結合していることが好ましい。
【0092】
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点からは、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記マレイミド化合物Xの含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0093】
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記マレイミド化合物Xの含有量は、好ましくは2.5重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは7.5重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは35重量%以下である。上記マレイミド化合物Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0094】
本発明の効果を効果的に発揮する観点からは、上記マレイミド化合物Xの分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、好ましくは30000未満、より好ましくは20000未満である。
【0095】
上記マレイミド化合物Xの分子量は、上記マレイミド化合物Xが重合体ではない場合、及び上記マレイミド化合物Xの構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記マレイミド化合物Xの分子量は、上記マレイミド化合物Xが重合体である場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0096】
上記マレイミド化合物Xの市販品としては、例えば、大和化成工業社製「BMI4000」及び「BMI5100」、Designer Molecules Inc.製「BMI-3000」、並びに日本化薬社製「MIR-3000」等が挙げられる。
【0097】
<エポキシ化合物>
上記エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用可能である。上記エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物である。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ化合物、ナフチレンエーテル型エポキシ化合物、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ化合物等が挙げられる。
【0099】
上記エポキシ化合物は、グリシジルエーテル化合物であってもよい。上記グリシジルエーテル化合物とは、グリシジルエーテル基を少なくとも1個有する化合物である。
【0100】
誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性及び難燃性を高める観点からは、上記エポキシ化合物は、芳香族骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、ナフタレン骨格又はフェニル骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、芳香族骨格を有するエポキシ化合物であることがより好ましい。
【0101】
誘電正接をより一層低くし、かつ硬化物の線膨張係数(CTE)を良好にする観点からは、上記エポキシ化合物は、25℃で液状のエポキシ化合物と、25℃で固形のエポキシ化合物とを含むことが好ましい。
【0102】
上記25℃で液状のエポキシ化合物の25℃での粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましい。
【0103】
上記エポキシ化合物の粘度は、例えば動的粘弾性測定装置(レオロジカ・インスツルメンツ社製「VAR-100」)等を用いて測定することができる。
【0104】
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、無機充填材の含有量が50重量%以上であっても、絶縁層の形成時に流動性が高い樹脂材料が得られる。このため、樹脂材料の未硬化物又はBステージ化物を回路基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
【0105】
上記エポキシ化合物の分子量は、上記エポキシ化合物が重合体ではない場合、及び上記エポキシ化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記エポキシ化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
【0106】
硬化物の熱寸法安定性をより一層高める観点からは、樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは4重量%以上、より好ましくは7重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下である。
【0107】
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記エポキシ化合物の含有量は、好ましくは15重量%以上、より好ましくは25重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、好ましくは40重量%以下である。上記エポキシ化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0108】
上記エポキシ化合物の含有量の、上記ポリマレイミド化合物Aと後述するフェノール化合物と活性エステル化合物との合計の含有量に対する重量比(上記エポキシ化合物の含有量/上記ポリマレイミド化合物Aと後述するフェノール化合物と活性エステル化合物との合計の含有量)は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上である。上記エポキシ化合物の含有量の、上記ポリマレイミド化合物Aと後述するフェノール化合物と活性エステル化合物との合計の含有量に対する重量比(上記エポキシ化合物の含有量/上記ポリマレイミド化合物Aと後述するフェノール化合物と活性エステル化合物との合計の含有量)は、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。上記重量比が上記下限以上及び上記上限以下であると、誘電正接をより一層低くし、熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0109】
<ビニル化合物>
上記ビニル化合物として、従来公知のビニル化合物を使用可能である。上記ビニル化合物は、少なくとも1個のビニル基を有する有機化合物である。上記ビニル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0110】
上記ビニル化合物としては、ジビニルベンジルエーテル化合物が挙げられる。
【0111】
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記ビニル化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記ビニル化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0112】
<ベンゾオキサジン化合物>
上記ベンゾオキサジン化合物としては、P-d型ベンゾオキサジン、及びF-a型ベンゾオキサジン等が挙げられる。上記ベンゾオキサジン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0113】
上記ベンゾオキサジン化合物の市販品としては、四国化成工業社製「P-d型」等が挙げられる。その他、脂肪族のベンゾオキサジンであってもよい。
【0114】
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記ベンゾオキサジン化合物の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。上記ベンゾオキサジン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0115】
<シアネートエステル化合物>
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記シアネートエステル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0116】
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT-30」及び「PT-60」)、並びにビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA-230S」、「BA-3000S」、「BTP-1000S」及び「BTP-6020S」)等が挙げられる。
【0117】
上記樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記シアネートエステル化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、好ましくは85重量%以下、より好ましくは75重量%以下である。上記シアネートエステル化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0118】
[無機充填材]
上記樹脂材料は、無機充填材を含むことが好ましい。上記無機充填材の使用により、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができる。また、上記無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。上記無機充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素等が挙げられる。
【0120】
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、また、硬化物の誘電正接がより一層低くなる。また、シリカの使用により、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
【0121】
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、上記無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
【0122】
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは500nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、エッチング後の表面粗度を小さくし、かつメッキピール強度を高くすることができ、また、絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。
【0123】
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
【0124】
上記無機充填材は、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材が球状である場合には、上記無機充填材のアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0125】
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。上記無機充填材が表面処理されていることにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。また、上記無機充填材が表面処理されていることにより、硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができ、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
【0126】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0127】
樹脂材料中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65重量%以上、特に好ましくは68重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上であると、誘電正接が効果的に低くなる。上記無機充填材の含有量が上記上限以下であると、熱寸法安定性を高め、硬化物の反りを効果的に抑えることができる。上記無機充填材の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さをより一層小さくすることができ、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成することができる。さらに、この無機充填材の含有量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることと同時に、スミア除去性を良好にすることも可能である。
【0128】
[硬化剤]
上記樹脂材料は、硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤は特に限定されない。上記硬化剤として、従来公知の硬化剤を使用可能である。上記硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
上記硬化剤としては、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物(カルボジイミド硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、ホスフィン化合物、ジシアンジアミド、及び酸無水物等が挙げられる。上記硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
【0130】
熱寸法安定性をより一層高める観点から、上記硬化剤は、フェノール化合物、活性エステル化合物、カルボジイミド化合物及び酸無水物の内の少なくとも1種の成分を含むことが好ましい。熱寸法安定性をより一層高める観点から、上記硬化剤は、フェノール化合物、活性エステル化合物、及びカルボジイミド化合物の内の少なくとも1種の成分を含むことがより好ましく、フェノール化合物と活性エステル化合物との双方を含むことが更に好ましい。
【0131】
熱寸法安定性をより一層高める観点から、上記熱硬化性化合物がエポキシ化合物を含み、上記硬化剤がフェノール化合物と活性エステル化合物との双方を含むことが好ましい。
【0132】
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0133】
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD-2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH-7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH-7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA-1356」及び「LA-3018-50P」)等が挙げられる。
【0134】
上記活性エステル化合物とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に脂肪族鎖、脂肪族環又は芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物は、例えばカルボン酸化合物又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物又はチオール化合物との縮合反応によって得られる。活性エステル化合物の例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0135】
【化3】
【0136】
上記式(1)中、X1は、脂肪族鎖を含む基、脂肪族環を含む基又は芳香族環を含む基を表し、X2は、芳香族環を含む基を表す。上記芳香族環を含む基の好ましい例としては、置換基を有していてもよいベンゼン環、及び置換基を有していてもよいナフタレン環等が挙げられる。上記置換基としては、炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、好ましくは12以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
【0137】
上記式(1)中、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいベンゼン環との組み合わせ、置換基を有していてもよいベンゼン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。さらに、上記式(1)中、X1及びX2の組み合わせとしては、置換基を有していてもよいナフタレン環と、置換基を有していてもよいナフタレン環との組み合わせが挙げられる。
【0138】
上記活性エステル化合物は特に限定されない。熱寸法安定性及び難燃性をより一層高める観点からは、上記活性エステル化合物は、2個以上の芳香族骨格を有する活性エステル化合物であることが好ましい。硬化物の誘電正接を低くし、かつ硬化物の熱寸法安定性を高める観点から、活性エステル化合物の主鎖骨格中にナフタレン環を有することがより好ましい。
【0139】
上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC-8000-65T」、「EXB9416-70BK」及び「EXB8100-65T」等が挙げられる。
【0140】
上記カルボジイミド化合物は、下記式(2)で表される構造単位を有する化合物である。下記式(2)において、右端部及び左端部は、他の基との結合部位である。上記カルボジイミド化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0141】
【化4】
【0142】
上記式(2)中、Xは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、シクロアルキレン基に置換基が結合した基、アリーレン基、又はアリーレン基に置換基が結合した基を表し、pは1~5の整数を表す。Xが複数存在する場合、複数のXは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0143】
好適な一つの形態において、少なくとも1つのXは、アルキレン基、アルキレン基に置換基が結合した基、シクロアルキレン基、又はシクロアルキレン基に置換基が結合した基である。
【0144】
上記カルボジイミド化合物の市販品としては、日清紡ケミカル社製「カルボジライト V-02B」、「カルボジライト V-03」、「カルボジライト V-04K」、「カルボジライト V-07」、「カルボジライト V-09」、「カルボジライト 10M-SP」、及び「カルボジライト 10M-SP(改)」、並びに、ラインケミー社製「スタバクゾールP」、「スタバクゾールP400」、及び「ハイカジル510」等が挙げられる。
【0145】
上記酸無水物としては、テトラヒドロフタル酸無水物、及びアルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0146】
上記酸無水物の市販品としては、新日本理化社製「リカシッド TDA-100」等が挙げられる。
【0147】
上記エポキシ化合物100重量部に対する上記活性エステル化合物と上記フェノール化合物との合計の含有量は、好ましくは70重量部以上、より好ましくは85重量部以上、好ましくは150重量部以下、より好ましくは120重量部以下である。上記活性エステル化合物と上記フェノール化合物との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高め、残存未反応成分の揮発をより一層抑制できる。
【0148】
上記樹脂フィルム中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記ポリマレイミド化合物Aと上記熱硬化性化合物と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。上記ポリマレイミド化合物Aと上記熱硬化性化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化性により一層優れ、熱寸法安定性をより一層高めることができる。
【0149】
[硬化促進剤]
上記樹脂材料は、硬化促進剤を含む。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂材料を速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0150】
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物等のアニオン性硬化促進剤、アミン化合物等のカチオン性硬化促進剤、リン化合物及び有機金属化合物等のアニオン性及びカチオン性硬化促進剤以外の硬化促進剤、並びに過酸化物等のラジカル性硬化促進剤等が挙げられる。
【0151】
上記イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0152】
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0153】
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン化合物等が挙げられる。
【0154】
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0155】
上記過酸化物としてはジクミルペルオキシド、及びパーヘキシル25B等が挙げられる。
【0156】
硬化温度をより一層低く抑え、硬化物の反りを効果的に抑える観点からは、上記硬化促進剤は、上記アニオン性硬化促進剤を含むことが好ましく、上記イミダゾール化合物を含むことがより好ましい。
【0157】
過酸化物である硬化促進剤とアニオン性硬化促進剤とを併用していてもよい。特にビニル化合物とエポキシ化合物とが併用される場合に、上記の2種の硬化促進剤を用いることにより、より一層良好な硬化物が得られる場合がある。
【0158】
硬化温度をより一層低く抑え、硬化物の反りを効果的に抑える観点からは、上記硬化促進剤100重量%中、上記アニオン性硬化促進剤の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。したがって、上記硬化促進剤は、上記アニオン性硬化促進剤であることが最も好ましい。
【0159】
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。樹脂材料中の無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料が効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、樹脂材料の保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
【0160】
[熱可塑性樹脂]
上記樹脂材料は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0161】
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に樹脂組成物又はBステージ化物が濡れ拡がり難くなる。
【0162】
上記樹脂材料に含まれているフェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0163】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0164】
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鉄住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
【0165】
ハンドリング性、低粗度でのメッキピール強度及び絶縁層と金属層との密着性を高める観点から、上記熱可塑性樹脂は、ポリイミド樹脂(ポリイミド化合物)であることが好ましい。
【0166】
溶解性を良好にする観点からは、上記ポリイミド化合物は、テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとを反応させる方法によって得られたポリイミド化合物であることが好ましい。
【0167】
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、及びビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
【0168】
上記ダイマージアミンとしては、例えば、バーサミン551(商品名BASFジャパン社製、3,4-ビス(1-アミノヘプチル)-6-ヘキシル-5-(1-オクテニル)シクロヘキセン)、バーサミン552(商品名、コグニクスジャパン社製、バーサミン551の水添物)、PRIAMINE1075、PRIAMINE1074(商品名、いずれもクローダジャパン社製)等が挙げられる。
【0169】
なお、上記ポリイミド化合物は末端に、酸無水物構造、マレイミド構造、シトラコンイミド構造を有していてもよい。この場合には、上記ポリイミド化合物とエポキシ樹脂とを反応させることができる。上記ポリイミド化合物とエポキシ樹脂とを反応させることにより、硬化物の熱寸法安定性を高めることができる。
【0170】
保存安定性により一層優れた樹脂材料を得る観点からは、上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
【0171】
上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0172】
上記熱可塑性樹脂、上記ポリイミド樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。樹脂材料中の上記無機充填材及び上記溶剤を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量(熱可塑性樹脂がポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂である場合には、ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂の含有量)は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂材料の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記下限以上であると、樹脂フィルムの形成がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。上記熱可塑性樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0173】
[溶剤]
上記樹脂材料は、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、樹脂材料の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂材料の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0174】
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-アセトキシ-1-メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N-メチル-ピロリドン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
【0175】
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物中の上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
【0176】
上記樹脂材料がBステージフィルムである場合には、上記Bステージフィルム100重量%中、上記溶剤の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0177】
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂材料は、有機充填材、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、及び揺変性付与剤等を含んでいてもよい。
【0178】
上記有機充填材としては、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等からなる粒子状物が挙げられる。上記有機充填材としてフッ素樹脂粒子を用いることにより、硬化物の比誘電率をより一層低くすることができる。上記有機充填材の平均粒径は1μm以下であることが好ましい。上記有機充填材の平均粒径が上記上限以下であると、エッチング後の表面粗度を小さくし、かつメッキピール強度を高くすることができ、また、絶縁層と金属層との密着性をより一層高めることができる。上記有機充填剤の平均粒径は、50nm以上であってもよい。
【0179】
上記有機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
【0180】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0181】
(樹脂フィルム)
上述した樹脂組成物をフィルム状に成形することにより樹脂フィルム(Bステージ化物/Bステージフィルム)が得られる。上記樹脂材料は、樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムは、Bステージフィルムであることが好ましい。
【0182】
樹脂組成物をフィルム状に成形して、樹脂フィルムを得る方法としては、以下の方法が挙げられる。押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法。溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法。従来公知のその他のフィルム成形法。薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
【0183】
樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば50℃~150℃で1分間~10分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
【0184】
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0185】
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロス等に沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。
【0186】
上記樹脂フィルムは、金属箔又は基材フィルムと、該金属箔又は基材の表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムの形態で用いることができる。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
【0187】
上記積層フィルムの上記基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルム等のオレフィン樹脂フィルム、並びにポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材フィルムの表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
【0188】
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下である。
【0189】
(半導体装置、プリント配線板、銅張積層板及び多層プリント配線板)
上記樹脂材料は、半導体装置において半導体チップを埋め込むモールド樹脂を形成するために好適に用いられる。
【0190】
上記樹脂材料は、絶縁材料として好適に用いられる。上記樹脂材料は、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられる。
【0191】
上記プリント配線板は、例えば、上記樹脂材料を加熱加圧成形することにより得られる。
【0192】
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属層を表面に有する積層対象部材を積層できる。金属層を表面に有する積層対象部材と、上記金属層の表面上に積層された樹脂フィルムとを備え、上記樹脂フィルムが、上述した樹脂材料である、積層構造体を好適に得ることができる。上記樹脂フィルムと上記金属層を表面に有する積層対象部材とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを、金属層を表面に有する積層対象部材に積層可能である。
【0193】
上記金属層の材料は銅であることが好ましい。
【0194】
上記金属層を表面に有する積層対象部材は、銅箔等の金属箔であってもよい。
【0195】
上記樹脂材料は、銅張積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板が挙げられる。
【0196】
上記銅張積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1μm~50μmの範囲内であることが好ましい。また、上記樹脂材料の硬化物と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
【0197】
上記樹脂材料は、多層基板を得るために好適に用いられる。
【0198】
上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。この多層基板の絶縁層が、上記樹脂材料により形成されている。また、多層基板の絶縁層が、積層フィルムを用いて、上記積層フィルムの上記樹脂フィルムにより形成されていてもよい。上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
【0199】
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
【0200】
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ、特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
【0201】
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
【0202】
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
【0203】
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数層の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料を用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
【0204】
多層基板のうち多層プリント配線板においては、低い誘電正接が求められ、絶縁層による高い絶縁信頼性が求められる。本発明に係る樹脂材料では、誘電正接を低くし、かつ絶縁層と金属層との密着性及びエッチング性能を高めることによって絶縁信頼性を効果的に高めることができる。従って、本発明に係る樹脂材料は、多層プリント配線板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
【0205】
上記多層プリント配線板は、例えば、回路基板と、上記回路基板の表面上に配置された複数の絶縁層と、複数の上記絶縁層間に配置された金属層とを備える。上記絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂材料の硬化物である。
【0206】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂材料を用いた多層プリント配線板を模式的に示す断面図である。
【0207】
図1に示す多層プリント配線板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の絶縁層13~16が積層されている。絶縁層13~16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の絶縁層13~16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13~15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13~16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
【0208】
多層プリント配線板11では、絶縁層13~16が、上記樹脂材料の硬化物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13~16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13~16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層プリント配線板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層プリント配線板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
【0209】
(粗化処理及び膨潤処理)
上記樹脂材料は、粗化処理又はデスミア処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
【0210】
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
【0211】
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30℃~85℃で1分間~30分間、硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50℃~85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
【0212】
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0213】
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0214】
硬化物の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは10nm以上であり、好ましくは300nm未満、より好ましくは200nm未満、更に好ましくは150nm未満である。この場合には、硬化物と金属層との接着強度が高くなり、更に絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。さらに、導体損失を抑えることができ、信号損失を低く抑えることができる。上記算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に準拠して測定される。
【0215】
(デスミア処理)
上記樹脂材料を予備硬化させることにより得られた硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、COレーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60μm~80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることが多い。
【0216】
上記スミアを除去するために、硬化物の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
【0217】
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物等の化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0218】
上記樹脂材料の使用により、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さが十分に小さくなる。
【0219】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0220】
以下の材料を用意した。
【0221】
(ポリマレイミド化合物A)
ポリマレイミド化合物1:
以下の合成例1に従って、下記式(X1)で表されるポリマレイミド化合物1(分子量11000)を合成した。なお、下記式(X1)で表される構造のうち、ダイマージアミンに由来する骨格は、該ダイマージアミンに由来する骨格の代表構造であり、例えば、該ダイマージアミンに由来する骨格における炭化水素鎖は不飽和結合を有している場合もある。下記式(X1)において、該ダイマージアミンに由来する骨格における炭化水素鎖に不飽和結合が存在するポリマレイミド化合物が含まれる場合がある。合成されたポリマレイミド化合物は、ダイマージアミンに由来する骨格における炭化水素鎖が不飽和結合を有しているポリマレイミド化合物を含む場合がある。得られたポリマレイミド化合物1は、マレイミド骨格を4個、イミド骨格を5個、ダイマージアミンに由来する骨格を1個有する。なお、マレイミド骨格数、イミド骨格数及びダイマージアミンに由来する骨格数は、ポリマレイミド化合物の数平均分子量からの算出値である。
【0222】
<合成例1>
500mLのナスフラスコに150mLのトルエン及び100mLのN-メチル-2-ピロリドンを入れ、プリアミン1075を10.3g(25mmol)、ビス(アミノメチル)ノルボルナンを11.6g(75mmol)添加した。次いで、ピロメリット酸二無水物27.3g(135mmol)を少しずつ添加した。次いで、ディーンスターク装置にナスフラスコを取り付け、4時間加熱還流した。このようにして、末端に酸無水物構造を有しかつ複数のイミド骨格を有する化合物を得た。縮合時に排出される水分を除去し、室温に戻した後、セリノールを4.75g(50mmol)加えて攪拌し、同様に加熱し反応させた。このようにして、両末端がそれぞれジオールである化合物を得た。次いで、室温に戻した後、6-マレイミドカプロン酸を21.1g(100mmol)加えて攪拌し、同様に加熱して反応させた。反応終了後、水洗し、有機層をメタノール中に滴下し、再沈殿させた後、乾燥し、ポリマレイミド化合物1を得た。
【0223】
【化5】
【0224】
ポリマレイミド化合物2:
以下の合成例2に従って、下記式(X2)で表されるポリマレイミド化合物2(分子量56000)を合成した。得られたポリマレイミド化合物2は、マレイミド骨格を3個以上、イミド骨格を1個以上、ダイマージアミンに由来する骨格を1個以上有する。なお、マレイミド骨格数、イミド骨格数及びダイマージアミンに由来する骨格数は、ポリマレイミド化合物の数平均分子量からの算出値である。
【0225】
【化6】
【0226】
上記式(X2)中、X21は下記式(X21)で表される構造を表し、X22は下記式(X22)で表される構造を表し、下記式(X23)で表される構造を表す。下記式(X21)におけるl、下記式(X22)におけるm、下記式(X23)におけるnは、式:n/(l+m+n)=0.2を満たす。なお、下記式(X22)で表される構造のうち、ダイマージアミンに由来する骨格は、該ダイマージアミンに由来する骨格の代表構造であり、例えば、該ダイマージアミンに由来する骨格における炭化水素鎖は不飽和結合を有している場合もある。例えば、下記式(X22)において、該ダイマージアミンに由来する骨格における炭化水素鎖に不飽和結合が存在するポリマレイミド化合物が含まれる場合がある。合成されたポリマレイミド化合物は、ダイマージアミンに由来する骨格における炭化水素鎖が不飽和結合を有しているポリマレイミド化合物を含む場合がある。
【0227】
【化7】
【0228】
【化8】
【0229】
【化9】
【0230】
<合成例2>
500mLのナスフラスコに150mLのトルエン及び100mLのN-メチル-2-ピロリドンを入れ、プリアミン1075を20.0g(48.8mmol)、ビス(アミノメチル)ノルボルナンを5.01g(32.5mmol)、ジアミノプロパノールを2.25g(25mmol)添加した。次いで、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物65.7g(126mmol)を少しずつ添加した。次いで、ディーンスターク装置にナスフラスコを取り付け、4時間加熱還流した。このようにして、両末端にアミンを有しかつ複数のイミド骨格を有する化合物を得た。縮合時に排出される水分を除去し、室温に戻した後、無水マレイン酸を2.70g(27.5mmol)加えて攪拌し、同様に加熱し反応させた。このようにして、両末端にマレイミド骨格を有する化合物を得た。次いで、室温に戻した後、6-マレイミドカプロン酸を3.96g(18.8mmol)加えて攪拌し、同様に加熱して反応させた。次いで、反応終了後、水洗し、有機層をメタノール中に滴下し、再沈殿させた後、乾燥し、ポリマレイミド化合物2を得た。
【0231】
合成例1,2で合成したポリマレイミド化合物Aの分子量は、以下のようにして求めた。
【0232】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
島津製作所社製高速液体クロマトグラフシステムを使用し、テトラヒドロフラン(THF)を展開媒として、カラム温度40℃、流速1.0ml/分で測定を行った。検出器として「SPD-10A」を用い、カラムはShodex社製「KF-804L」(排除限界分子量400,000)を2本直列につないで使用した。標準ポリスチレンとして、東ソー社製「TSKスタンダードポリスチレン」を用い、重量平均分子量Mw=354,000、189,000、98,900、37,200、17,100、9,830、5,870、2,500、1,050、500の物質を使用して較正曲線を作成し、分子量の計算を行った。
【0233】
(熱硬化性化合物)
ビフェニル型エポキシ化合物(日本化薬社製「NC-3000」)
ナフタレン型エポキシ化合物(新日鉄住金化学社製「ESN-475V」)
レゾルシノールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製「EX-201」)
アミド結合含有エポキシ化合物(日本化薬社製「WHR-991S」)
マレイミド化合物(N-アルキルビスマレイミド、Designer Molecules Inc.製「BMI-1500」)
【0234】
(無機充填材)
シリカ含有スラリー(シリカ75重量%:アドマテックス社製「SC4050-HOA」、平均粒径1.0μm、アミノシラン処理、シクロヘキサノン25重量%)
【0235】
(硬化剤)
活性エステル化合物1含有液(DIC社製「EXB-9416-70BK」、固形分70重量%)
活性エステル化合物2含有液(DIC社製「HPC-8150-62T」、固形分62重量%)
フェノール化合物含有液(DIC社製「LA-1356」、固形分60重量%)
【0236】
(硬化促進剤)
ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業社製「DMAP」)
2-フェニル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業社製「2P4MZ」、アニオン性硬化促進剤)
【0237】
(熱可塑性樹脂)
ポリイミド化合物(ポリイミド樹脂):
テトラカルボン酸二無水物とダイマージアミンとの反応物であるポリイミド化合物含有溶液(不揮発分26.8重量%)を以下の合成例3に従って合成した。
【0238】
<合成例3>
撹拌機、分水器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、テトラカルボン酸二無水物(SABICジャパン合同会社製「BisDA-1000」)300.0gと、シクロヘキサノン665.5gとを入れ、反応容器中の溶液を60℃まで加熱した。次いで、反応容器中に、ダイマージアミン(クローダジャパン社製「PRIAMINE1075」)89.0gと、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製)54.7gとを滴下した。次いで、反応容器中に、メチルシクロヘキサン121.0gと、エチレングリコールジメチルエーテル423.5gとを添加し、140℃で10時間かけてイミド化反応を行った。このようにして、ポリイミド化合物含有溶液(不揮発分26.8重量%)を得た。得られたポリイミド化合物の分子量(重量平均分子量)は20000であった。なお、酸成分/アミン成分のモル比は1.04であった。
【0239】
合成例3で合成したポリイミド化合物の分子量は、以下のようにして求めた。
【0240】
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定:
島津製作所社製高速液体クロマトグラフシステムを使用し、テトラヒドロフラン(THF)を展開媒として、カラム温度40℃、流速1.0ml/分で測定を行った。検出器として「SPD-10A」を用い、カラムはShodex社製「KF-804L」(排除限界分子量400,000)を2本直列につないで使用した。標準ポリスチレンとして、東ソー社製「TSKスタンダードポリスチレン」を用い、重量平均分子量Mw=354,000、189,000、98,900、37,200、17,100、9,830、5,870、2,500、1,050、500の物質を使用して較正曲線を作成し、分子量の計算を行った。
【0241】
(実施例1~3及び比較例1~3)
下記の表1に示す成分を下記の表1に示す配合量(単位は固形分重量部)で配合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌し、樹脂材料を得た。
【0242】
樹脂フィルムの作製:
アプリケーターを用いて、離型処理されたPETフィルム(東レ社製「XG284」、厚み25μm)の離型処理面上に得られた樹脂材料を塗工した後、100℃のギヤオーブン内で2分30秒間乾燥し、溶剤を揮発させた。このようにして、PETフィルム上に、厚さが40μmである樹脂フィルム(Bステージフィルム)が積層されている積層フィルム(PETフィルムと樹脂フィルムとの積層フィルム)を得た。
【0243】
(評価)
(1)誘電正接
得られた樹脂フィルムを190℃で90分間加熱して、硬化物を得た。得られた硬化物を幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して10枚を重ね合わせて、関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びキーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーN5224A PNA」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)にて、周波数5.8GHzにて誘電正接を測定した。
【0244】
[誘電正接の判定基準]
○:誘電正接が2.8×10-3未満
×:誘電正接が2.8×10-3以上
【0245】
(2)熱寸法安定性(平均線膨張係数(CTE))
得られた厚さ40μmの樹脂フィルム(Bステージフィルム)を190℃で90分間加熱して得られた硬化物を3mm×25mmの大きさに裁断した。熱機械的分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「EXSTAR TMA/SS6100」)を用いて、引っ張り荷重33mN及び昇温速度5℃/分の条件で、裁断された硬化物の25℃~150℃までの平均線膨張係数(ppm/℃)を算出した。
【0246】
[平均線膨張係数の判定基準]
○○:平均線膨張係数が23ppm/℃以下
○:平均線膨張係数が23ppm/℃を超え27ppm/℃以下
×:平均線膨張係数が27ppm/℃を超える
【0247】
(3)伸び特性
得られた厚さ40μmの樹脂フィルム(Bステージフィルム)を190℃で90分間加熱して得られた硬化物を10mm×100mmの大きさに裁断した。引っ張り試験機(SHIMADZU社製「AGS-J 100N」)を用いて、チャック間距離60mm、引っ張り速度5mm/minの条件で測定し、最大伸びの測定を行った。初期張力は0.35Nとした。測定は繰り返し5回行い、破断伸びの平均値(平均破断伸び)を算出した。
【0248】
[伸び特性の判定基準]
○○:平均破断伸びが1.5%以上
○:平均破断伸びが1.2%以上1.5%未満
×:平均破断伸びが1.2%未満
【0249】
(4)曲げ特性(繰り返し折り曲げ性)
得られた厚さ40μmの樹脂フィルム(Bステージフィルム)を190℃で90分間加熱して得られた硬化物を30mm×150mmの大きさに裁断した。面状体U字折り返し試験機(ユアサ社製)を用いて、200回/min、180℃折り曲げ(折り曲げギャップ5mm)、フィルムストローク70mmの条件で折り曲げ試験を行った。測定は繰り返し5回行い、平均値を算出した。
【0250】
[曲げ特性(繰り返し折り曲げ性)の判定基準]
○○:2000回折り曲げ後割れなし
○:折り曲げ回数が100回以上2000回未満で割れ
×:折り曲げ回数が100回未満で割れ
【0251】
(5)デスミア性(ビア底の残渣の除去性)
ラミネート・半硬化処理:
得られた樹脂フィルムを、CCL基板(日立化成工業社製「E679FG」)に真空ラミネートし、180℃で30分間加熱し、半硬化させた。このようにして、CCL基板に樹脂フィルムの半硬化物が積層されている積層体Aを得た。
【0252】
ビア(貫通孔)形成:
得られた積層体Aの樹脂フィルムの半硬化物に、COレーザー(日立ビアメカニクス社製)を用いて、上端での直径が60μm、下端(底部)での直径が40μmであるビア(貫通孔)を形成した。このようにして、CCL基板に樹脂フィルムの半硬化物が積層されており、かつ樹脂フィルムの半硬化物にビア(貫通孔)が形成されている積層体Bを得た。
【0253】
ビアの底部の残渣の除去処理:
(a)膨潤処理
60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」)に、得られた積層体Bを入れて、10分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
【0254】
(b)過マンガン酸塩処理(粗化処理及びデスミア処理)
80℃の過マンガン酸カリウム(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」)粗化水溶液に、膨潤処理後の積層体Bを入れて、30分間揺動させた。次に、25℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」)を用いて2分間処理した後、純水で洗浄を行い、評価サンプルを得た。
【0255】
評価サンプルのビアの底部を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、ビア底の壁面からの最大スミア長を測定した。ビア底の残渣の除去性を以下の基準で判定した。
【0256】
[ビア底の残渣の除去性の判定基準]
○○:最大スミア長が2μm未満
○:最大スミア長が2μm以上3μm未満
×:最大スミア長が3μm以上
【0257】
組成及び結果を下記の表1に示す。
【0258】
【表1】
【符号の説明】
【0259】
11…多層プリント配線板
12…回路基板
12a…上面
13~16…絶縁層
17…金属層
図1