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  • 特許-熱源機の制御装置 図1
  • 特許-熱源機の制御装置 図2
  • 特許-熱源機の制御装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】熱源機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/83 20180101AFI20240619BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240619BHJP
   F24F 11/58 20180101ALI20240619BHJP
【FI】
F24F11/83
F25B1/00 399Y
F24F11/58
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020027889
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021131206
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】松井 駿
(72)【発明者】
【氏名】武田 俊
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-221623(JP,A)
【文献】特開2014-035148(JP,A)
【文献】特開2019-078501(JP,A)
【文献】特開2012-057864(JP,A)
【文献】特開2011-106699(JP,A)
【文献】特開2018-189313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/83
F25B 1/00
F24F 11/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して配置され、負荷率を可変に設定可能な複数の室外ユニットを有する熱源機の制御装置であって、
上記熱源機全体の負荷が部分負荷で運転される場合に、一部の室外ユニットの負荷率を大きく設定し、他の室外ユニットの負荷率を小さく設定するとともに、負荷率が大きい室外ユニットと負荷率が小さい室外ユニットとが隣り合う組み合わせが少なくとも1組存在するように構成され
上記熱源機全体の負荷が部分負荷で運転される場合に、一部の室外ユニットと他の室外ユニットとで負荷率が異なるように各室外ユニットの負荷率が設定され、負荷率が小さい室外ユニットの間に1つ以上の負荷率が大きい室外ユニットが配置されることにより、上記負荷率が大きい室外ユニットに吸入される外気の風量が増加するように構成されていることを特徴とする熱源機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源機に備えられた複数台の室外ユニットの運転を制御する熱源機の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の室外ユニットを備えた熱源機では、負荷が100%よりも小さい場合に、一部の室外ユニットだけを選択的に運転状態にするとともに、各室外ユニットの運転時間が所定時間に到達するごとに運転順序をローテーションして、複数台の室外ユニットの運転時間を均等化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-281577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように室外ユニットの運転時間に応じて運転時間をローテーションすれば、各室外ユニットの累積運転時間を均等化することはできる。しかし、本願発明者らは、例えば各室外ユニットの運転効率などは、種々の環境条件等の運転条件が影響し、運転時間を均等化しても各室外ユニットや全体の運転効率を向上させることは必ずしもできないことに思い至った。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、熱源機の運転効率を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
互いに隣接して配置され、負荷率を可変に設定可能な複数の室外ユニットを有する熱源機の制御装置であって、
上記熱源機全体の負荷が部分負荷で運転される場合に、一部の室外ユニットと他の室外ユニットとで負荷率が異なるように各室外ユニットの負荷率が設定されるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
これにより、一部の室外ユニットをCOPが大きい状態で運転させるようにして、熱源機全体の運転効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱源機の運転効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】熱源機を含む空気調和システムの概略構成を示す説明図である。
図2】室外ユニットの負荷率とCOPとの関係の例を示すグラフである。
図3】室外ユニットの負荷率の設定に応じたCOPの例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(空気調和システムの概略構成)
熱源機を含む空気調和システムは、例えば図1に示すように、複数台の空冷ヒートポンプなどの室外ユニット111を含む室外ユニットモジュール110を備えている。上記室外ユニット111は、それぞれ往水配管121、およびインバータポンプ131を介して、冷水や温水を2次側の空調機141に供給し、還水配管151を介して回収するようになっている。上記往水配管121と還水配管151とのユニット間には、熱源機側と負荷側とに流れる冷水や温水の流量をバランスさせるフリーバイパス回路161が設けられるとともに、還水配管151には膨張タンク174が設けられている。また、往水配管121、および還水配管151には、温度センサ171・172、および流量センサ173が設けられ、運転負荷の算出等が行われるようになっている。
【0011】
また、各室外ユニットは、それぞれ、往水配管121に連通する冷水出口の冷水の温度を検出する図示しない温度センサを備え、上記冷水出口の冷水の温度が所定の設定温度になるようにして、負荷率を制御できるようになっている。
【0012】
上記室外ユニットモジュール110は、例えばモジュールコントローラ211によって運転状態が制御されるようになっている。具体的には、例えば、温度センサ171・172や流量センサ173によって検出された水温や流量に基づきモジュールコントローラ211によって負荷率(定格能力に対する冷却能力の割合)が求められ、室外ユニットモジュール110の出口温度が設定温度になるように、室外ユニット111の冷水出口の冷水の温度が設定され、制御されるようになっている。ここで、上記冷水の設定温度は、各室外ユニット111ごと(または所定のグループごと)に異ならせて、それぞれ異なる負荷率で運転し得るようになっている。より詳しくは、例えば、中央熱源コントローラ212からの指示により、熱源機全体の負荷率や外気温度などに応じて、あらかじめ定められた各室外ユニット111の設定温度や負荷率のパターンに基づいて制御されるようになっている。
【0013】
(各室外ユニットモジュール110の負荷率の制御の例)
室外ユニットモジュール110のCOPは、例えば冷房運転時の性能を図2に示すように外気温度と負荷率とに応じて変化し、一般に、外気温度が低いほど、また、負荷率が100%よりも小さい所定の範囲で大きくなる。
【0014】
また、室外ユニットモジュール110を構成する室外ユニット111は、例えば、それぞれ、4台の単位装置が所定の方向に連接されて成り、室外ユニットモジュール110は、上記室外ユニット111が上記所定の方向と垂直な方向に10台ずつ隣接配置されて構成されている。さらに、上記のような室外ユニットモジュール110は、例えば建物の屋上に設置されるが、往々にして、屋上に部分的に建てられた建物や壁などに囲まれて配置される。このため、外気温や風向、風速などに応じて、熱溜まりができたり、各室外ユニット111で周囲の空気の流れなどの運転条件が異なり、COPの低下やバラツキなどが生じることがある。特に、互いに隣接する室外ユニット111が同時に運転状態になると、1台当たりの室外ユニット111に流入する外気の流量が減少したり、室外ユニット111から吐出した空気が建物や周囲の壁に当たって下降流となり外気より温度の高い空気を吸い込むことになり、実際に吸入される外気の温度が上昇したりしがちになる。
【0015】
このため、例えば熱源機全体の負荷率が80%である場合に、全ての室外ユニット111(ユニット番号1~10)が、それぞれ80%の負荷率で運転されたとすると、例えば図3に運転パターン1として破線で示すように10台の室外ユニット111のうち、中央部付近の室外ユニット111のCOPが低下し得る。そこで、例えば運転パターン2として、一連の10台の室外ユニット111のうち中央部付近で、かつ、互いに離間したユニット番号4、7の室外ユニット111が40%の負荷率、他の室外ユニットが90%の負荷率で運転されたとすると、熱源機全体の負荷率は同じ80%であっても、ユニット番号4、7の室外ユニット111のCOPは、これらの負荷率が小さいことによって、例えば運転パターン1の場合に3.2~3.3であったのが、運転パターン2の場合には4.0~4.1と約25%上昇する。
【0016】
しかも、上記ユニット番号4、7の室外ユニット111に隣接するユニット番号3、5、6、8の室外ユニット111のCOPも、上昇する。これは、ユニット番号4、7の室外ユニット111の負荷率を低下させたことによって、これらに吸入される外気の風量が減少し、これに伴って他の室外ユニット111に吸入される外気の風量が増加したり温度が低下したりするためと考えられる。
【0017】
一方、例えばユニット番号1、2、9、10の室外ユニット111のCOPはわずかに低下しているが、これは、負荷率が80%から90%にされたことによる影響が大きいと考えられる。しかしながら、そのような負荷率が大きい領域で負荷率を多少増大させることによるCOPの低下の影響よりも、他の室外ユニット111を例えば負荷率が30~50%などの領域で運転することによるCOPの上昇の影響の方が大きいことによって、熱源機全体での平均COPは、例えば3.4から3.6と、約5~6%上昇させることができる。
【0018】
上記のようなCOPの上昇効果は、例えば、熱源機全体の負荷率が、60%以上、かつ、外気温が、冷房運転の場合に30℃以上、または暖房運転の場合に5℃以下である場合に、各室外ユニット111の負荷率の設定が行われることによって得やすくすることができる。
【0019】
上記のような負荷率の設定は、具体的には、例えば各室外ユニット111の冷水出口の冷水の温度の設定によって行うことができる。すなわち、例えば負荷率が100%のときに室外ユニットモジュール110の冷水入口温度が17℃、冷水出口温度が7℃だとした場合、負荷が80%であれば、冷水入口温度は15℃になる。そこで、ユニット番号4、7の室外ユニット111では冷水出口温度が11℃に設定されることによって、40%の負荷率で運転させる一方、他の室外ユニット111では冷水出口温度が6℃に設定されることによって、90%の負荷率で運転させることができる。
【0020】
(その他の事項)
上記のような各室外ユニット111の負荷率の設定は、あらかじめ設定された設定温度や負荷率のパターンに基づいて制御されるのに限らず、例えば適宜負荷等の運転稼働情報に基づいて各室外ユニット111のCOPを求め、COPの小さい例えば複数の室外ユニット111を優先的に小さな負荷率で運転させる技術を適用したりしてもよい。そのような制御は、例えば、別途設けられたPLCにより運転稼働情報や外気温度、負荷熱量などに基づいて各室外ユニット111のCOPを求め、中央熱源コントローラを介してモジュールコントローラ211に負荷率の設定を行わせるようにすることなどにより行うことができる。また、他の室外ユニットよりも負荷率が小さく設定される室外ユニットは、冬期暖房運転時のデフロスト発生時間割合(ユニットがデフロストしている時間/運転時間)が大きいユニットに基づいて複数選択されるようにしたりしてもよい。
【0021】
また、例えば各室外ユニット111に設定される負荷率や冷水出口温度などを示す指令が、遠隔監視センターからインターネット、および中央熱源コントローラ212等を介してモジュールコントローラ211に送られて、その指令に応じてモジュールコントローラ211が各室外ユニット111の負荷率等を制御するようにしてもよい。
【0022】
上記のように、室外ユニット111やそのグループなどごとに負荷率が異なるように制御されることによって、熱源機の運転効率を向上させることが容易にできる。
【符号の説明】
【0023】
110 室外ユニットモジュール
111 室外ユニット
121 往水配管
131 インバータポンプ
141 空調機
151 還水配管
161 フリーバイパス回路
171・172 温度センサ
173 流量センサ
174 膨張タンク
211 モジュールコントローラ
212 中央熱源コントローラ
図1
図2
図3