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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】熱転写ローラ及び熱転写システム
(51)【国際特許分類】
   F16C 13/00 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
F16C13/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020046578
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021148158
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】沖田 功
(72)【発明者】
【氏名】秋 充
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-101711(JP,A)
【文献】特開平11-050158(JP,A)
【文献】特開平07-157938(JP,A)
【文献】特開平08-229937(JP,A)
【文献】特開2016-117588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 13/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の形状を有するローラ本体と、
前記ローラ本体に取り付けられたペルチェ素子を含み、前記ローラ本体を加熱するための加熱部と、
を備え、
前記ペルチェ素子は、発熱面と、前記発熱面と反対の吸熱面とを含み、
前記ペルチェ素子は、前記発熱面が前記ローラ本体の径方向外方を向き、前記吸熱面が前記ローラ本体の径方向内方を向くように、前記ローラ本体に取り付けられ、
前記ローラ本体は、
前記ローラ本体と同軸に設けられた中心孔と、
前記中心孔の内面と前記ローラ本体の外周面との間に配置され、前記ローラ本体の軸方向に延びる周辺孔を含み、
前記ペルチェ素子は、前記周辺孔の内面に取り付けられており、
前記周辺孔は、前記ローラ本体の径方向内方において前記吸熱面に面する空気層を含む、
熱転写ローラ。
【請求項2】
筒状の形状を有するローラ本体と、前記ローラ本体を加熱するための加熱部と、を含む熱転写ローラと、
前記ローラ本体の温度を検出する温度検出部と、
前記ローラ本体の温度に基づいて、前記ローラ本体が所定の目標温度となるように前記加熱部を制御するコントローラと、
を備え、
前記加熱部は、前記ローラ本体の周方向に間隔をおいて配置された複数のペルチェ素子を含み、
前記複数のペルチェ素子のそれぞれは、発熱面と、前記発熱面と反対の吸熱面とを含み、
前記複数のペルチェ素子のそれぞれは、前記発熱面が前記ローラ本体の径方向外方を向き、前記吸熱面が前記ローラ本体の径方向内方を向くように、前記ローラ本体に取り付けられ、
前記温度検出部は、前記ローラ本体の周方向に間隔をおいて配置された複数の温度センサを含み、
前記複数の温度センサは、前記複数のペルチェ素子よりも前記ローラ本体の外周面の近くに配置されており、
前記複数の温度センサは、前記ローラ本体の周方向に互いに並んで配置された第1温度センサと第2温度センサとを含み、
前記複数のペルチェ素子は、前記ローラ本体の周方向において、前記第1温度センサと前記第2温度センサとの間に配置された第1ペルチェ素子を含み、
前記コントローラは、前記第1温度センサが検出した前記ローラ本体の温度と、前記第2温度センサが検出した前記ローラ本体の温度との平均値が、前記所定の目標温度となるように、前記第1ペルチェ素子への電圧を制御する、
熱転写システム。
【請求項3】
筒状の形状を有するローラ本体と、前記ローラ本体を加熱するための加熱部と、を含む熱転写ローラと、
前記ローラ本体の温度を検出する温度検出部と、
前記ローラ本体の温度に基づいて、前記ローラ本体が所定の目標温度となるように前記加熱部を制御するコントローラと、
を備え、
前記加熱部は、前記ローラ本体の周方向に間隔をおいて配置された複数のペルチェ素子を含み、
前記複数のペルチェ素子のそれぞれは、発熱面と、前記発熱面と反対の吸熱面とを含み、
前記複数のペルチェ素子のそれぞれは、前記発熱面が前記ローラ本体の径方向外方を向き、前記吸熱面が前記ローラ本体の径方向内方を向くように、前記ローラ本体に取り付けられ、
前記温度検出部は、前記ローラ本体の周方向に間隔をおいて配置された複数の温度センサを含み、
前記コントローラは、
前記複数の温度センサが検出した前記ローラ本体の温度から、前記ローラ本体の所定角度部分の平均温度を算出し、
前記平均温度が前記所定の目標温度となるように、前記複数のペルチェ素子への電圧を制御する、
熱転写システム。
【請求項4】
前記ローラ本体は、前記ローラ本体と同軸に設けられた孔を含み、
前記複数のペルチェ素子は、前記孔の内面に取り付けられる、
請求項2又は3のいずれかに記載の熱転写システム。
【請求項5】
前記ローラ本体は、
前記ローラ本体と同軸に設けられた中心孔と、
前記中心孔の内面と前記ローラ本体の外周面との間に配置され、前記ローラ本体の軸方向に延びる周辺孔を含み、
前記複数のペルチェ素子は、前記周辺孔の内面に取り付けられている。
請求項2からのいずれかに記載の熱転写システム。
【請求項6】
前記周辺孔は、前記ローラ本体の径方向内方において前記吸熱面に面する空気層を含む、
請求項に記載の熱転写システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写ローラ及び熱転写システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写ローラは、基材シート上に転写層を転写するために用いられる。例えば特許文献1に開示されているように、従来、熱転写ローラには、誘電コイルを用いた誘電発熱によってローラ本体を加熱するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-107780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように誘電コイルを用いた熱転写ローラは、重量が大きくなる。そのため、熱転写ローラを取り外すことは容易ではない。また、熱転写ローラが高温の状態から冷却されるまでには、多くの時間がかかる。そのため、加熱中に熱転写ローラが故障した場合には、熱転写ローラが十分に冷却されるまで、長い時間、待たなければならない。本発明の課題は、熱転写ローラを軽量化すると共に、熱転写ローラの冷却に要する時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る熱転写ローラは、ローラ本体と加熱部とを備える。ローラ本体は、筒状の形状を有する。加熱部は、ローラ本体に取り付けられたペルチェ素子を含む。加熱部は、ローラ本体を加熱する。ペルチェ素子は、発熱面と、発熱面と反対の吸熱面とを含む。ペルチェ素子は、発熱面がローラ本体の径方向外方を向き、吸熱面がローラ本体の径方向内方を向くように、ローラ本体に取り付けられる。
【0006】
本態様に係る熱転写ローラでは、ローラ本体の加熱にペルチェ素子が用いられる。そのため、熱転写ローラを軽量化することができる。また、誘電発熱が用いられる場合と比べて、熱転写ローラの冷却に要する時間を短縮することができる。また、ペルチェ素子の発熱面によって、ローラ本体の外周面を効率よく加熱することができる。
【0007】
ローラ本体は、ローラ本体と同軸に設けられた孔を含んでもよい。ペルチェ素子は、孔の内面に取り付けられてもよい。この場合、ペルチェ素子のローラ本体への取り付けが容易である。
【0008】
ローラ本体は、中心孔と周辺孔とを含んでもよい。中心孔は、ローラ本体と同軸に設けられてもよい。周辺孔は、中心孔の内面とローラ本体の外周面との間に配置されてもよい。周辺孔は、ローラ本体の軸方向に延びていてもよい。ペルチェ素子は、周辺孔の内面に取り付けられてもよい。この場合、ペルチェ素子をローラ本体の外周面の近くに配置することができる。それにより、ペルチェ素子によって、ローラ本体の外周面を効率よく加熱することができる。
【0009】
周辺孔は、ローラ本体の径方向内方において吸熱面に面する空気層を含んでもよい。この場合、空気層に空気を流すことによって、熱転写ローラの冷却に要する時間をさらに短縮することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る熱転写システムは、上述した熱転写ローラと、温度検出部と、コントローラとを含む。温度検出部は、ローラ本体の温度を検出する。コントローラは、ローラ本体の温度に基づいて、ローラ本体が所定の目標温度となるようにペルチェ素子への電圧を制御する。本態様に係る熱転写システムでは、熱転写ローラの温度を精度よく制御することができる。
【0011】
加熱部は、ローラ本体の周方向に間隔をおいて配置された複数のペルチェ素子を含んでもよい。温度検出部は、ローラ本体の周方向に間隔をおいて配置された複数の温度センサを含んでもよい。この場合、熱転写ローラの温度を均一に精度よく制御することができる。
【0012】
複数の温度センサは、第1温度センサを含んでもよい。複数のペルチェ素子は、第1ペルチェ素子を含んでもよい。コントローラは、第1温度センサが検出したローラ本体の温度が、所定の目標温度となるように、第1ペルチェ素子への電圧を制御してもよい。この場合、熱転写ローラにおいて、第1温度センサと第1ペルチェ素子とが配置された部分の温度を精度よく制御することができる。
【0013】
複数の温度センサは、第1温度センサと第2温度センサとを含んでもよい。第1温度センサと第2温度センサとは、ローラ本体の周方向に並んで配置されてもよい。複数のペルチェ素子は、第1ペルチェ素子を含んでもよい。第1ペルチェ素子は、ローラ本体の周方向において、第1温度センサと第2温度センサとの間に配置されてもよい。コントローラは、第1温度センサが検出したローラ本体の温度と、第2温度センサが検出したローラ本体の温度との平均値が、所定の目標温度となるように、第1ペルチェ素子への電圧を制御してもよい。この場合、熱転写ローラの温度を均一に精度よく制御することができる。
【0014】
コントローラは、複数の温度センサが検出したローラ本体の温度から、ローラ本体の所定角度部分の平均温度を算出してもよい。コントローラは、平均温度が所定の目標温度となるように、複数のペルチェ素子への電圧を制御してもよい。この場合、温度が低下した部分を迅速に目標温度に戻すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱転写ローラを軽量化すると共に、熱転写ローラの冷却に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る熱転写システムの構成を示す模式図である。
図2】実施形態に係る熱転写ローラの断面図である。
図3】第1変形例に係る熱転写ローラの断面図である。
図4】第1変形例に係る熱転写ローラの拡大断面図である。
図5】第2変形例に係る熱転写ローラの断面図である。
図6】第2変形例に係る転写ローラの拡大断面図である。
図7】第3変形例に係る熱転写システムの構成を示す模式図である。
図8】第3変形例に係る熱転写ローラの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る熱転写システム1の構成を示す模式図である。熱転写システム1は、基材シート上に転写層を転写するために用いられる。例えば、熱転写システム1は、燃料電池用の触媒層を固体電解質膜に転写するために用いられる。図1に示すように、熱転写システム1は、熱転写ローラ2と、第1コネクタ3と、第2コネクタ4と、コントローラ5と、温度検出部6とを備える。
【0018】
熱転写ローラ2は、軸受7,8を介して、回転可能に支持部材91,92に支持されている。熱転写ローラ2は、図示しないモータ等のアクチュエータによって回転されるように構成されている。熱転写ローラ2は、ローラ本体10と、第1軸11と、第2軸12と、加熱部13とを含む。図2は、熱転写ローラ2の断面図である。図1及び図2に示すように、ローラ本体10は、中空の円筒状の形状を有している。ローラ本体10は、ローラ本体10の軸線方向に延びる中心孔14を含む。中心孔14は、ローラ本体10と同軸に配置されている。
【0019】
第1軸11は、ローラ本体10の一端に接続されている。第2軸12は、ローラ本体10の他端に接続されている。第1軸11は、軸受7を介して、回転可能に支持部材91に支持されている。第2軸12は、軸受8を介して、回転可能に支持部材92に支持されている。
【0020】
加熱部13は、ローラ本体10を加熱する。加熱部13は、第1コネクタ3を介して、電力ケーブル15に接続されている。電力ケーブル15は、コントローラ5に接続されている。第1コネクタ3は、例えばスリップリングによって、加熱部13と電力ケーブル15とを電気的に接続している。或いは、第1コネクタ3は、電磁誘導などの他の手段によって、加熱部13と電力ケーブル15とを電気的に接続してもよい。
【0021】
図2に示すように、加熱部13は、複数の加熱体16A-16Hを含む。複数の加熱体16A-16Hは、ローラ本体10の周方向に間隔をおいて配置されている。複数の加熱体16A-16Hは、第1~第8加熱体16A-16Hを含む。なお、加熱体の数は、8個に限らない。加熱体の数は、8個より少なくてもよく、或いは、8個より多くてもよい。
【0022】
図1に示すように、第1加熱体16Aは、複数の第1ペルチェ素子17Aを含む。複数の第1ペルチェ素子17Aは、ローラ本体10の軸線方向に並んで配置されている。なお、図1では、複数の第1ペルチェ素子17Aの1つのみに符号17Aを付して、他の複数の第1ペルチェ素子17Aの符号は省略されている。複数の第1ペルチェ素子17Aは、ローラ本体10に取り付けられている。複数の第1ペルチェ素子17Aは、互いに電気的に接続されている。複数の第1ペルチェ素子17Aは、第1コネクタ3を介して、電力ケーブル15に接続されている。なお、図1では、複数の加熱体16A-16Hのうち第1加熱体16Aのみが図示され、他の加熱体は省略されている。
【0023】
図2に示すように、第1ペルチェ素子17Aは、中心孔14の内面に取り付けられている。第1ペルチェ素子17Aは、発熱面18Aと、発熱面18Aと反対の吸熱面19Aとを含む。第1ペルチェ素子17Aは、発熱面18Aがローラ本体10の径方向外方を向き、吸熱面19Aがローラ本体10の径方向内方を向くように、ローラ本体10に取り付けられている。第1ペルチェ素子17Aの発熱面18Aは、中心孔14の内面に接触している。
【0024】
第2加熱体16Bは、複数の第2ペルチェ素子17Bを含む。第2ペルチェ素子17Bは、ローラ本体10の周方向に第1ペルチェ素子17Aと並んで配置されている。第1ペルチェ素子17Aと第2ペルチェ素子17Bとは、ローラ本体10の周方向に間隔をおいて配置されている。第2ペルチェ素子17Bの構成は、第1ペルチェ素子17Aと同様である。また、第3~第8加熱体16C-16Hは、それぞれ複数の第3~第8ペルチェ素子17C-17Hを含む。第3~第8加熱体16C-16Hの構成は、第1加熱体16A、或いは第2加熱体16Bの構成と同様である。従って、第3~第8加熱体16C-16Hについては、詳細な説明を省略する。
【0025】
温度検出部6は、ローラ本体10の温度を検出する。温度検出部6は、複数の温度センサ21A-21Hを含む。温度センサは、例えば熱電対である。ただし、温度センサは、他の種類のセンサであってもよい。複数の温度センサ21A-21Hは、ペルチェ素子17A-17Hよりもローラ本体10の外周面の近くに配置されている。複数の温度センサ21A-21Hは、ローラ本体10の周方向に互いに並んで配置されている。複数の温度センサ21A-21Hは、ローラ本体10の周方向に間隔を置いて配置されている。複数の温度センサ21A-21Hは、複数のペルチェ素子17A-17Hにそれぞれ対応して設けられている。複数の温度センサ21A-21Hは、ローラ本体10の周方向において、複数のペルチェ素子17A-17Hの間にそれぞれ配置されている。
【0026】
複数の温度センサ21A-21Hは、第1~第8温度センサ21A-21Hを含む。図1に示すように、第1温度センサ21Aは、ローラ本体10の軸線方向に延びている。第1温度センサ21Aは、第2コネクタ4を介して、センサケーブル22に接続されている。センサケーブル22は、コントローラ5に接続されている。第2コネクタ4は、例えばスリップリングによって、第1温度センサ21Aとセンサケーブル22とを電気的に接続している。或いは、第2コネクタ4は、電磁誘導などの他の手段によって、第1温度センサ21Aとセンサケーブル22とを電気的に接続してもよい。なお、図1では、複数の温度センサ21A-21Hのうち第1温度センサ21Aと第2温度センサ21Bのみが図示され、他の温度センサ21C-21Hは省略されている。
【0027】
第1ペルチェ素子17Aは、第1温度センサ21Aの近傍に配置されている。第1ペルチェ素子17Aは、ローラ本体10の周方向において、第1温度センサ21Aと第2温度センサ21Bとの間に配置されている。第2ペルチェ素子17Bは、第2温度センサ21Bの近傍に配置されている。第3~第8温度センサ21C-21Hは、それぞれ第3~第8ペルチェ素子17C-17Hの近傍に配置されている。第3~第8温度センサ21C-21Hの構成は、第1温度センサ21A、或いは第2温度センサ21Bの構成と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0028】
コントローラ5は、CPUなどのプロセッサと、RAM及びROMなどのメモリとを含む。コントローラ5は、電力ケーブル15を介して、複数の加熱体16A-16Hに供給される電力の電圧を制御する。コントローラ5は、複数の温度センサ21A-21Hが検出した温度を示す信号を、センサケーブル22を介して受信する。コントローラ5は、ローラ本体10の温度に基づいて、ローラ本体10が所定の目標温度となるようにペルチェ素子17A-17Hへの電圧を制御する。
【0029】
詳細には、コントローラ5は、複数の温度センサ21A-21Hが検出したローラ本体10の各部分の温度が、所定の目標温度となるように、第1~第8ペルチェ素子17A-17Hへの電圧をそれぞれ制御する。例えば、コントローラ5は、第1温度センサ21Aが検出したローラ本体10の温度が、所定の目標温度となるように、第1ペルチェ素子17Aへの電圧を制御する。コントローラ5は、第2温度センサ21Bが検出したローラ本体10の温度が、所定の目標温度となるように、第2ペルチェ素子17Bへの電圧を制御する。
【0030】
以上説明した本実施形態に係る熱転写ローラ2では、ローラ本体10の加熱にペルチェ素子が用いられる。そのため、熱転写ローラ2を軽量化することができる。また、誘電発熱が用いられる場合と比べて、熱転写ローラ2の冷却に要する時間を短縮することができる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0032】
転写ローラの構造は、上記の実施形態のものに限らず変更されてもよい。例えば、ローラ本体10の形状が変更されてもよい。図3は、第1変形例に係る熱転写ローラ2の断面図である。図3に示すように、第1変形例では、ローラ本体10は、複数の周辺孔23A-23Hを含む。複数の周辺孔23A-23Hは、ローラ本体10の径方向において、中心孔14の内面とローラ本体10の外周面との間に配置される。
【0033】
複数の周辺孔23A-23Hは、ローラ本体10の軸方向に延びている。複数の周辺孔23A-23Hは、ローラ本体10の周方向に互いに並んで配置されている。複数の周辺孔23A-23Hは、複数の加熱体16A-16Hに対応して設けられる。複数の周辺孔23A-23Hは、第1~第8周辺孔23A-23Hを含む。第1ペルチェ素子17Aは、第1周辺孔23Aの内面に取り付けられている。
【0034】
図4は、第1変形例に係る熱転写ローラ2の拡大断面図である。図4に示すように、第1周辺孔23Aの内面は、外径側に位置する第1内面231と、内径側に位置する第2内面232とを含む。第1ペルチェ素子17Aの発熱面18Aは、第1内面231に接触している。
【0035】
第2~第8ペルチェ素子17B-17Hも、第1ペルチェ素子17Aと同様に、第2~第8周辺孔23B-23Hの内面にそれぞれ取り付けられている。第1変形例では、ペルチェ素子17A-17Hをローラ本体10の外周面の近くに配置することができる。それにより、ローラ本体10を効率よく加熱することができる。
【0036】
図5は、第2変形例に係る熱転写ローラ2の断面図である。図5に示すように、第2変形例では、複数の空気層24A-24Hを含む。複数の空気層24A-24Hは、複数の加熱体16A-16Hに対応して設けられる。複数の空気層24A-24Hは、第1~第8空気層24A-24Hを含む。
【0037】
図6は、第2変形例に係る熱転写ローラ2の拡大断面図である。第1空気層24Aは、第1ペルチェ素子17Aに対して、ローラ本体10の径方向内方に位置している。第1空気層24Aは、第1周辺孔23A内において、第1ペルチェ素子17Aの吸熱面19Aに面している。第1ペルチェ素子17Aの発熱面18Aは、第1内面231に接触している。第2~第8空気層24B-24Hは、第1空気層24Aと同様に、それぞれ第2~第8周辺孔23B-23Hに設けられている。第2変形例では、空気層24A-24Hに空気を流すことによって、ローラ本体10を迅速に冷却することができる。
【0038】
コントローラ5による熱転写ローラ2の温度制御は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、コントローラ5は、互いに隣接する2つの温度センサが検出したローラ本体10の温度の平均値が、所定の目標温度となるように、当該2つの温度センサの間に位置するペルチェ素子への電圧を制御してもよい。例えば、コントローラ5は、第1温度センサ21Aが検出したローラ本体10の温度と、第2温度センサ21Bが検出したローラ本体10の温度との平均値が、所定の目標温度となるように、第1ペルチェ素子17Aへの電圧を制御する。この場合、熱転写ローラ2の温度を均一に精度よく制御することができる。
【0039】
図7は、第3変形例に係る熱転写システム1の構成を示す模式図である。第3変形例に係る熱転写システム1は、エンコーダ9を備えている。エンコーダ9は、ローラ本体10の回転位置を検出する。コントローラ5は、エンコーダケーブル25を介して、ローラ本体10の回転位置を示すエンコーダ信号を受信する。
【0040】
コントローラ5は、複数の温度センサ21A-21Hが検出したローラ本体10の温度から、ローラ本体10の所定角度部分の温度変化を算出する。コントローラ5は、温度変化に応じて、複数のペルチェ素子17A-17Hへの電圧を制御する。例えば、図8に示すように、コントローラ5は、第1温度センサ21Aが、第1回転位置θ1から第2回転位置θ2まで移動したときの温度変化を算出する。コントローラ5は、温度変化に応じて、第1ペルチェ素子17Aへの電圧を制御する。第3変形例に係る熱転写システム1では、例えば、ローラ本体10の第1回転位置θ1から第2回転位置θ2までの部分が、シートと接触したことにより低下した熱を考慮して、第1ペルチェ素子17Aへの電圧を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、熱転写ローラを軽量化すると共に、熱転写ローラの冷却に要する時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0042】
2 熱転写ローラ
5 コントローラ
6 温度検出部
10 ローラ本体
13 加熱部
14 中心孔
17A 第1ペルチェ素子
18A 発熱面
19A 吸熱面
21A 第1温度センサ
21B 第2温度センサ
23A 第1周辺孔
24A 第1空気層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8