(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240619BHJP
G02F 1/1345 20060101ALI20240619BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G09F9/00 348Z
G02F1/1345
G06F3/041 660
G09F9/00 342
(21)【出願番号】P 2020056270
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】321010863
【氏名又は名称】トライベイル テクノロジーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100184527
【氏名又は名称】渡邉 賢二
(72)【発明者】
【氏名】若松 良平
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-321158(JP,A)
【文献】特開2000-284725(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0047472(KR,A)
【文献】米国特許第04842373(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0357122(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/133-1/1334
1/1339-1/1368
G09F9/00-9/46
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域と前記表示領域の周囲にある額縁領域とを有する基板と、
前記基板上の前記額縁領域に形成される電極端子と絶縁膜と、
前記絶縁膜に開口されたコンタクトホールと、
少なくとも前記電極端子を覆う防湿絶縁材料と、を備えており、
前記額縁領域は、前記防湿絶縁材料を形成しない塗布禁止領域と、前記塗布禁止領域以外の領域で前記防湿
絶縁材料を塗布
する領域と、に分けられ、
前記電極端子は前記防湿
絶縁材料を塗布
する領域に形成され、
前記塗布禁止領域と前記防湿
絶縁材料を塗布
する領域との間には、前記コンタクトホールが設けられ、
前記コンタクトホールにより前記防湿絶縁材料の前記塗布禁止領域への侵入が阻止されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記防湿絶縁材料は、前記コンタクトホールの少なくとも1個の開口縁において、丸くなって当該コンタクトホールを埋めていない、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記コンタクトホールは複数形成されており、互いに分離している、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記コンタクトホールの開口縁に、半導体層、金属膜、透明導電膜の少なくとも1層を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記防湿絶縁材料を形成しない領域内にアライメントマークを有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記基板と重畳する保護カバーまたはタッチスクリーンをさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集積回路または集積回路付き回路基板を表示パネルに接続した表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置を構成する表示パネルへ外部からの信号を供給するために、集積回路または集積回路を備えた回路基板を表示パネルの絶縁性基板に実装する技術が知られている。この際、表示パネルと当該回路とを接続するための電極が露出していると、電極の腐食や異物による短絡等の問題が生じる。その防止のために、表示パネルの絶縁性基板の裏面および表面に防湿絶縁材料を塗布する技術が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、防湿絶縁材料は液状であるため塗布領域の制御が難しい。特に薄いガラス基板やプラスチック基板などのように基板自体が変形しやすい基板に塗布した場合、基板の傾きや変形により、塗布が不要な領域にまで防湿絶縁材料が侵入してしまう可能性がある。
【0005】
このような状況であっても、例えば、特許文献1に記載の液晶表示装置に用いられる液晶パネルのように、防湿絶縁材料を塗布した後にFPC等を実装してバックライトや光学シートと共に表示装置に組み入れる場合には、大きな問題は生じない。しかし、防湿絶縁材料を塗布した後に例えばタッチセンサに用いるタッチスクリーンや、液晶表示装置を保護する透明保護板を液晶パネル上に貼りつける場合には、問題が生じうる。
【0006】
具体的には、このような場合、両者の重ね合わせの精度を維持するためにアライメントマークが重要となるが、防湿絶縁材料が所定の位置に設けられたアライメントマークをも覆ってしまった場合には読取りができなくなる問題が生じうる。すなわち、塗布工程および次工程の歩留まりに影響を及ぼすといった不具合が生じている。
【0007】
本開示は以上のような課題を解決するためになされたものであり、防湿絶縁材料を塗布する領域を容易に制御することが可能な表示パネルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる表示装置は、表示領域と前記表示領域の周囲にある額縁領域とを有する基板と、前記基板上の前記額縁領域に形成される電極端子と絶縁膜と、前記絶縁膜に開口されたコンタクトホールと、少なくとも前記電極端子を覆う防湿絶縁材料と、を備えており、前記額縁領域は、前記防湿絶縁材料を形成しない塗布禁止領域と、前記塗布禁止領域以外の領域で前記防湿絶縁材料を塗布する領域と、に分けられ、前記電極端子は前記防湿絶縁材料を塗布する領域に形成され、前記塗布禁止領域と前記防湿絶縁材料を塗布する領域との間には、前記コンタクトホールが設けられ、前記コンタクトホールにより前記防湿絶縁材料の前記塗布禁止領域への侵入が阻止されていることを特徴とする表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示を適用した表示装置においては、防湿絶縁材料を塗布する領域を容易に制御することが可能であるため、防湿絶縁材料が所定外の領域に侵入することにより生じる不具合を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る表示装置の液晶パネルの模式図である。
【
図2】実施の形態1に係る表示装置の液晶パネルの実装部を拡大した平面図である。
【
図3】実施の形態1に係る表示装置の液晶パネルの実装部を拡大した断面図である。
【
図4】本開示の表示装置のアレイ基板の工程フローを示す断面図である。
【
図5】本開示の表示装置のアレイ基板の薄膜トランジスタと画素電極との断面図である。
【
図6】実施の形態2に係る表示装置のアレイ基板の実装部を拡大した断面図である。
【
図7】本開示の表示装置のモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
本開示の表示装置が備える液晶パネルの構成を説明する。
図1は、実施の形態1に係る表示装置の液晶パネルを示しており、ここでは液晶表示装置の液晶パネルを例にして模式的な平面図として示している。
【0012】
液晶表示装置は表示領域に複数の画素6がマトリクス上に配置されて構成される。そして、複数の画素6の配置に応じて延在する走査配線7や信号配線8と、走査配線7と信号配線8の交差部近傍に形成されて各々の配線と接続するTFT(Thin Film Transitor)と、画素電極等とが形成されたアレイ基板10と、当該アレイ基板10と液晶を介して対向配置されてカラーフィルタやブラックマトリクス等が形成された対向基板(図示せず)とを貼り合わせた液晶パネルを備える。
【0013】
公知の技術により、液晶パネルの両面には偏光板や位相板が貼り付けられ、バックライト、外部回路や筐体等が取り付けられて液晶表示装置が完成する。(いずれも図示せず)
【0014】
次に、アレイ基板10の説明を行う。アレイ基板10は、ガラス、プラスチック等の絶縁性基板1上に各種素子を形成した基板である。平面的には、画像等の表示に直接寄与する表示領域51と、表示領域51の外周である額縁領域52とに分けられる。額縁領域52には、COG(Chip On Film)またはCOF(Chip On Film)実装技術により、走査配線駆動回路60および信号配線駆動回路61で図示するような集積回路が実装されている。
【0015】
また、アレイ基板10の端部には、走査配線駆動回路60および信号配線駆動回路61に制御信号、クロック、画像データ等を供給する外部回路と接続するフレキシブル基板9の複数の端子(図示せず)が設けられている。フレキシブル基板9とアレイ基板10とが重なる領域(点線で図示)は実装部9aであり、後述するように端子の電極2が並置されている。
【0016】
なお、
図1では、表示領域51から、走査配線駆動回路60または信号配線駆動回路61の出力部へ延びる走査配線または信号配線の引き出し配線や、走査配線駆動回路60および信号配線駆動回路61の入力部と、アレイ基板10の端部に設けられたフレキシブル基板9の複数の端子とを接続する入力配線が多数本あるが、図の簡略化のためにこれらの多数の配線は図示していない。
【0017】
小型のパネルでは、配線の総本数が比較的少ないので、走査配線用駆動回路60および信号配線用駆動回路61を一体化した駆動回路が使用されることがある。一体化する際には、各々のフレキシブル基板9もまとめて1枚にすることがある。
【0018】
図2は、実施の形態1に係る表示装置の液晶パネルにおけるフレキシブル基板の実装部の平面図である。
図3は、
図2においてA-Aで示す箇所の断面図である。以下、フレキシブル基板の実装部について説明するが、当該実装部の構造は走査配線用駆動回路60および信号配線用駆動回路61等の集積回路の実装部と同様の構造であり、ここでの説明は、それらの実装部にも適用できる。
【0019】
図3に示すように、液晶パネルにおけるアレイ基板10の額縁領域52上には複数の電極2が並置されている。これらの複数の電極2は前述の通り、外部回路から電圧を供給されて、表示領域51内の配線や画素電極に伝達するための電極端子である。電極2には電圧が印加されるため異物や腐食から保護するために、電極2を覆うように防湿樹脂材料12が塗布される。
【0020】
一方、アライメントマーク11のように防湿樹脂材料12を塗布しない領域も存在する。
図3において、アライメントマーク11を囲む四角い領域は、塗布禁止領域21である。図示していないが、塗布禁止領域21以外の領域であれば、防湿樹脂材料12を塗布しても構わない。なお、
図3においては、塗布禁止領域21としてアライメントマーク11を含めた近傍領域を設定したが、他に防湿樹脂材料12を塗布してはいけない領域があれば、同様である。
【0021】
図2と
図3に示すように、塗布禁止領域21の周囲を囲むように複数のコンタクトホール5が形成されている。そして、防湿樹脂材料12は、コンタクトホール5の開口縁で丸く収まっており、コンタクトホール5を埋めていない。つまり、防湿樹脂材料12はコンタクトホール5の開口縁において堰き止められている。以下、この構造について説明する。
【0022】
防湿絶縁材料は液体である。表面張力の特性から、液体は自身の表面積をできる限り小さくしたいという傾向を有する。そのため、液体である防湿絶縁材料がコンタクトホールで設けた窪みを超える際、窪みが無い場合と比べると、より多くのエネルギーが必要となる。
【0023】
したがって、このようなコンタクトホール5を塗布禁止領域21の近傍に複数個設けることにより、防湿絶縁材料12が塗布禁止領域21に侵入することを阻止することができる。そのため、
図3に示すようにアライメントマーク11が防湿絶縁材料12に覆われることもないため、アライメント不良となる不具合を防止することができる。この効果により、例えば、液晶表示パネルの視認側にタッチパネルや保護板を重畳させる際にもアライメントを正常に行うことができ、位置がずれることを防止できる。
【0024】
次に、
図2、
図3に示す電極端子の製造方法について
図4と
図5とを用いて説明する。
図4は、
図3に示す電極端子の製造フローである。
図5は、電極端子と同時に表示領域内に形成される薄膜トランジスタと画素電極との断面図である。
【0025】
図4(a)は走査配線の写真製版後の状態を示している。図示する通り、ガラス、プラスチック等の絶縁性基板1上に、Al、Cr、Mo、Ti、Ta、W、Ni、Cu、Au、Ag等の金属や、これらの合金または積層膜からなるアライメントマーク11が形成されている。この金属層は、
図5においてゲート電極13と同じ層で形成してもよく、ゲート電極13は走査配線7と接続してもよい。
【0026】
次に、
図4(b)に示すように、この上層の全面に酸化膜、窒化膜等からなる絶縁膜3が形成されている。この絶縁膜3は、
図5におけるゲート絶縁膜14と対応してもよい。
図5においては、ゲート電極13を覆うゲート絶縁膜14上に半導体層15とオーミックコンタクト膜16とが積層して形成されているが、
図4(b)においては当該積層構造を図示していない。これに関しては後述の実施の形態2において説明する。
【0027】
その後、
図5に示すように、信号配線8と同一層からなるソース電極17やドレイン電極18が、オーミックコンタクト膜16と重なるように形成される。図示しないが、ソース電極17は信号配線8と接続している。ソース電極17とドレイン電極18から露出するオーミックコンタクト膜16は最終的に除去される。その際、アレイ基板上の電極端子の周囲に信号配線(図示せず)も形成する。
【0028】
図5から、ソース電極17とドレイン電極18との間において、オーミックコンタクト膜16は除去されて、半導体層15はTFTのチャネル部となる。このようにして、スイッチング素子であるTFTが構成されている。
【0029】
その後、
図4(c)に示すように、この上層の全面に酸化膜、窒化膜等からなる絶縁膜4を形成する。この絶縁膜4は、
図5における保護絶縁膜19と対応してもよい。
【0030】
その後、
図3に示すように、絶縁膜形成後、不要な絶縁膜3および絶縁膜4を除去してコンタクトホール5を形成する。
【0031】
この上層の前面に透明導電膜を成膜した後、パターニングにより不要な透明導電膜を除去する。この透明導電膜は、
図5における画素電極20と対応してもよい。一方、
図4(c)においては当該透明導電膜を図示していない。これに関しても後述の実施の形態2において説明する。
【0032】
本実施の形態においては、塗布禁止領域21とそれ以外の領域との境界に配置された複数のコンタクトホールが各々互いに分離している構造を図示した。各々のコンタクトホールを分離せずに形成しても効果はあるが、各々のコンタクトホールを分離させた場合、各々の開口縁の数や長さが増大するため、防湿絶縁材料が塗布禁止領域に侵入することをより確実に防止できる。
【0033】
今回のアレイ基板の製造フローは、従来の製造フローと同一であり、マスクおよび工程の追加も不要であるため、生産効率を低下させることがない。
【0034】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2に係る表示装置のアレイ基板の額縁領域上の実装部の構成を示す。実施の形態2では、コンタクトホール5の開口縁に絶縁膜3、4が存在する領域において半導体層15と同層の半導体層15a、信号配線8と同層の導電膜8a、画素電極20と同層の透明導電膜20aをも残している点が、実施の形態1と異なる。なお、
図6に示すように、半導体層、導電膜、透明導電膜をすべて積層させても良いが、そのうち少なくとも1層のみ設けてもよい。
【0035】
そのため、本実施の形態においては、実施の形態1で説明した構造よりもコンタクトホールの深さ方向での高低差が大きくなる。
図6において防湿絶縁材料(図示せず)が窪みを超える際に必要となる液体の表面積は実施の形態1の構造よりも大きくなるため、実施の形態1の状況に比べてさらにエネルギーを要することになる。これにより、本実施の形態においては防湿絶縁材料の侵入をより確実に防止することが可能となる。
【0036】
実施の形態1、2で説明した液晶パネルは、前述したとおり、アレイ基板と対向基板との間に液晶を封入するようにシール材で互いに貼り合わせて構成されている。この液晶パネルを備えるモジュールについて
図7に示す。当該モジュールを適宜、各機器に組み込むことにより表示装置が完成する。なお、
図7においては液晶パネルで特有な偏光板等の図示は省略している。
【0037】
図7から、液晶パネル30は光学シート31とともに、光源を備えるバックライト32上に位置し、フレーム33内に収納されている。液晶パネル30上には透明な接着層34を介して保護カバー35が配置されている。透明な接着層34は透明な粘着シートでもよいし、硬化型の液状樹脂でもよい。また、保護カバー35はタッチ検出機能を有するタッチスクリーンでもよいし、あるいは、液晶パネル30と保護カバー35との間にタッチスクリーンを配置してもよい。本開示は、特に
図7のように液晶パネル30と保護カバー35とを積層する構造に有効である。
【0038】
実施の形態1、2では、液晶パネルを用いた液晶表示装置について説明してきたが、本開示は液晶表示装置には限定されない。液晶パネルは、有機ELパネルでもよいし、電気泳動型のパネルでもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 基板、2 電極、3 絶縁膜、4 絶縁膜、5 コンタクトホール、
6 画素、7 走査配線、8 信号配線、9 フレキシブル基板、9a 実装部、
10 アレイ基板、11 アライメントマーク、12 防湿樹脂材料、
13 ゲート電極、14 ゲート絶縁膜、15 半導体層、16 オーミックコンタクト膜、
17 ソース電極、18 ドレイン電極、19 保護絶縁膜、20 画素電極、
21 塗布禁止領域、30 液晶パネル、51 表示領域、52 額縁領域、
60 走査配線駆動回路、61 信号配線駆動回路