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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】容器入り冷凍食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/42 20060101AFI20240619BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20240619BHJP
   B65D 75/58 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A23G9/42
A23L3/36 Z
B65D75/58
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020058091
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021153511
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日 令和1年8月5日 販売した場所 株式会社セブン-イレブン・ジャパンの直営店舗および加盟店舗のうち関東地区西東京エリア(資料1「店舗一覧表」参照)
(73)【特許権者】
【識別番号】591116036
【氏名又は名称】アヲハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 優子
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528553(JP,A)
【文献】Amebaブログ [オンライン], 2019.08.21 [検索日 2024.01.17], インターネット:<URL:https://ameblo.jp/12v/entry-12509970766.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 9/42
A23L 3/36
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍食品組成物が容器に格納されている、容器入り冷凍食品組成物であって、
前記容器は、注出口を備え、前記冷凍食品組成物を格納する部位が可撓性を有し、
前記冷凍食品組成物は、常温のときに液体である液部を含み、
前記液部が、イヌリンを2.0質量%以上、16.0質量%以下の濃度で含み、かつ、ペクチンを含まないか1.0質量%未満の濃度で含み、果汁及び野菜汁からなる群より選ばれる少なくとも1つをさらに含み、
前記冷凍食品組成物は、常温のときに固体である成分をさらに含み、
前記常温のときに固体である成分は、果肉及び固形の野菜からなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、
容器入り冷凍食品組成物。
【請求項2】
前記液部が前記ペクチンを含み、
前記ペクチンがLMペクチンであることを特徴とする、
請求項1に記載の容器入り冷凍食品組成物。
【請求項3】
前記液部が、前記ペクチンを0.9質量%以下の濃度で含むことを特徴とする、
請求項1又は2に記載の容器入り冷凍食品組成物。
【請求項4】
前記液部の初期弾性率が、5.5N/m以下であり、
前記液部の初期弾性率は、前記液部と前記液部以外の成分とに分け、解凍した前記液部を内径35mm、高さ10mmのテフロン(登録商標)製リングに充填し、-25℃の凍結庫で一晩凍結処理して作製した円柱状の試料を当該リングから取り出した後、-20℃で1時間静置して、当該-20℃の環境から取り出した直後に、気温20℃の環境下で、テクスチャーアナライザー及び直径0.5インチの円柱状プランジャーを用いて、測定速度2mm/sec、圧縮歪率50%の条件で、当該試料の底面に対して垂直となるように前記プランジャーを貫入させて測定されることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか1項に記載の容器入り冷凍食品組成物。
【請求項5】
前記注出口の最小径(内径)が、10mm以上、30mm以下であることを特徴とする、
請求項1~のいずれか1項に記載の容器入り冷凍食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器入り冷凍食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
果肉を含むシャーベットが従来知られている。例えば、特許文献1には、果物の皮からなる容器内に冷凍状のシャーベットを含む冷菓が記載されている。また、近年、冷菓が注出口を備えるパウチに入っているパウチ入り冷菓が知られている。
【0003】
しかしながら、冷菓を注出口の口径が小さい容器に入れたものは、注出口から冷菓を絞り出し難いものが多い。よって、注出口を有する容器に充填されている冷菓の絞り出し易さについては改善の余地がある。また、食品であるため、絞り出し易さと味とを両立させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-95729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の一態様は、揉み解し易いことにより容器の注出口から絞り出し易く、かつ味が良好な容器入り冷凍食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、冷凍食品組成物が液部を含み、液部が特定量のイヌリンを含み、かつペクチンを含まないか特定量含むことにより、容器内の冷凍食品組成物が揉み解し易く、かつ味が良好になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)冷凍食品組成物が容器に格納されている、容器入り冷凍食品組成物であって、前記容器は、注出口を備え、前記冷凍食品組成物を格納する部位が可撓性を有し、前記冷凍食品組成物は、常温のときに液体である液部を含み、前記液部が、イヌリンを2.0質量%以上、16.0質量%以下の濃度で含み、かつ、ペクチンを含まないか1.0質量%未満の濃度で含むことを特徴とする、容器入り冷凍食品組成物、
(2)前記液部が前記ペクチンを含み、前記ペクチンがLMペクチンであることを特徴とする、(1)の容器入り冷凍食品組成物、
(3)前記液部が、前記ペクチンを0.9質量%以下の濃度で含むことを特徴とする、(1)又は(2)の容器入り冷凍食品組成物、
(4)前記液部の初期弾性率が5.5N/m以下であり、前記液部の初期弾性率は、前記液部と前記液部以外の成分とに分け、解凍した前記液部を内径35mm、高さ10mmのテフロン(登録商標)製リングに充填し、-25℃の凍結庫で一晩凍結処理して作製した円柱状の試料を当該リングから取り出した後、-20℃で1時間静置して、当該-20℃の環境から取り出した直後に、気温20℃の環境下で、テクスチャーアナライザー及び直径0.5インチの円柱状プランジャーを用いて、測定速度2mm/sec、圧縮歪率50%の条件で、当該試料の底面に対して垂直となるように前記プランジャーを貫入させて測定されることを特徴とする、(1)~(3)のいずれか1つの容器入り冷凍食品組成物、
(5)前記液部は、果汁及び野菜汁からなる群より選ばれる少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする、(1)~(4)のいずれか1つの容器入り冷凍食品組成物、
(6)常温のときに固体である成分をさらに含むことを特徴とする、(1)~(5)のいずれか1つの容器入り冷凍食品組成物、
(7)前記常温のときに固体である成分は、果肉及び固形の野菜からなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、(6)の容器入り冷凍食品組成物、
(8)前記注出口の最小径(内径)が、10mm以上、30mm以下であることを特徴とする、(1)~(7)のいずれか1つの容器入り冷凍食品組成物、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、容器の注出口から容易に絞り出し易く、かつ味が良好な容器入り冷凍食品組成物を提供することができる。したがって、容器入り冷凍食品組成物の更なる需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、単に「%」と記載されている場合は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0010】
<本発明の容器入り冷凍食品組成物の特徴>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物は、冷凍食品組成物が容器に格納されている、容器入り冷凍食品組成物であって、前記容器は、注出口を備え、前記冷凍食品組成物を格納する部位が可撓性を有し、前記冷凍食品組成物は、常温のときに液体である液部を含み、前記液部が、イヌリンを2.0質量%以上、16.0質量%以下の濃度で含み、かつ、ペクチンを含まないか1.0質量%未満の濃度で含む。本発明の一態様によれば、冷凍食品組成物を容器の注出口から容易に絞り出し易く、かつ冷凍食品組成物の味を良好にすることができる。例えば、本発明の一態様によれば、凍結している冷凍食品組成物を揉み解し易くすることができるので、容器から冷凍食品組成物を容易に絞り出すことができる。
【0011】
<冷凍食品組成物の態様>
本発明において冷凍食品組成物は、冷凍されている飲食用の組成物を意図する。冷凍食品組成物の態様としては、例えば、冷菓が挙げられ、冷菓としては、例えば、アイスクリーム、シャーベットが挙げられる。シャーベットとは液体を凍結させた冷菓を意図するが、後述する果肉、固形の野菜等の固体の成分が含まれていてもよい。
【0012】
<液部>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物は常温(20℃)のときに液体である液部を含む。「液部」は常温で静置すると融けて液体となる成分を意味し、冷凍食品組成物として提供される態様において液部は凍結している。
【0013】
<液部の含有量>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物に含まれる液部の含有量は、当該容器入り冷凍食品組成物の潰しやすさの観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。また、本発明において、果肉及び固形の野菜等の常温のときに固体である成分を含有する態様において、容器に冷凍食品組成物の内容物を充填するときに当該成分を均一に充填する観点、及び喫食時の当該成分の味わい及び食感を良好にする観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0014】
<果汁・野菜汁>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物において、液部は、果物及び/又は野菜の味わいを与える観点から、果汁及び野菜汁のうち少なくとも一方を含むことがより好ましい。例えば、果物又は野菜を常法により搾汁した搾汁液、濃縮液、及びこれらの希釈液等が挙げられる。果汁の原料としての果実としては、例えば、柑橘類、ベリー類、白桃、リンゴ、ナシ、バナナ、マンゴー、モモ、パイナップル、ブドウ、メロン、キウイ、サクランボ等が挙げられる。柑橘類としては、例えば、グレープフルーツ、レモン、ミカン、オレンジ等が挙げられる。ベリー類としては、例えば、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー等が挙げられる。野菜汁の原料の野菜としては、ニンジン、トマト等が挙げられる。本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物に含まれる果汁及び野菜汁は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
【0015】
<果汁・野菜汁の含有量>
液部に含まれる果汁及び野菜汁(ストレート換算)の含有量は、果物及び野菜の味わいをより効果的に与える観点から、液部の質量に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。また、風味の観点から、好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である。
【0016】
<初期弾性率>
液部の初期弾性率は、揉み解して絞り出し易い観点から、好ましくは5.7N/m以下であり、より好ましくは5.5N/m以下であり、さらに好ましくは5.3N/m以下である。また、液部の初期弾性率の下限値は特に限定されず、揉み解し易さの観点から低ければ低いほどよいが、例えば、0.01N/m以上である。0.01N/m以上であることにより、容器から果肉等よりも先に液部が出てしまうこと(液走り)を防ぐことができる。
【0017】
<初期弾性率の測定方法>
液部の初期弾性率の測定方法は、一般的な測定方法を用いるとよく、例えば、テクスチャーアナライザーを用いて測定することができる。冷凍食品組成物が、後述する、常温のときに固体である成分を含むときは、冷凍されている状態の液部を分けて初期弾性率を測定してもよい。
【0018】
具体的には、液部の初期弾性率は、次の通り測定される。まず、冷凍食品組成物が、常温において固体である成分等の液部以外の成分を含むときは、液部と当該液部以外の成分とに分ける。次に、解凍した液部を内径35mm、高さ10mmのテフロン(登録商標)製リングに充填し、-25℃の凍結庫で一晩凍結処理して円柱状の試料を作製する。次に、当該試料を当該リングから取り出した後、-20℃で1時間静置する。その後、当該-20℃の環境から取り出した直後に、気温20℃の環境下で、テクスチャーアナライザー及び直径0.5インチの円柱状プランジャーを用いて、測定速度2mm/sec、圧縮歪率50%の条件で、当該試料の底面に対して垂直となるようにプランジャーを貫入させて測定する。テクスチャーアナライザーとして、TA.XT Plus(Stable Micro Systems社製)が使用される。
【0019】
<液部の糖度>
液部の糖度は、揉み解し易さの観点から、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上である。また、液部の糖度は、風味の観点から、好ましくは30%以下であり、より好ましくは20%以下である。液部の糖度とは、本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物を冷凍させる前の内容物の液部について測定した糖度である。
【0020】
<液部の糖度の測定方法>
液部の糖度の測定方法は、一般的な測定方法を用いるとよく、具体的には、糖度計を用いる。糖度計としては、例えば、手持屈折計(アタゴ社製)等を用いることができる。
【0021】
<イヌリンの含有量>
液部は、イヌリンを2.0質量%以上、16.0質量%以下の濃度で含む。液部に含まれるイヌリンの含有量が2.0質量%未満であると、冷凍食品組成物を揉み解し難くなり、容器の注出口から内容物を絞り出し難くなる。喫食者が冷凍食品組成物を注出口から直接喫食するためには、解凍状態が進んでから、例えば冷凍庫から取り出してから長時間経過してからでないと容器の注出口から内容物を絞り出すことができない。また、液部に含まれるイヌリンの濃度が16.0質量%超であると、冷凍食品組成物の味が悪くなる。なお、イヌリンは水溶性であるため、液部は溶解しているイヌリンを含む。
【0022】
また、本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物は、後述の通り、果肉、固形の野菜等の常温のときに固体である成分を含み得る。当該態様において、液部に含まれるイヌリンの濃度が2.0質量%未満であると、冷凍食品組成物を揉み解し難くなることにより、果肉及び固形の野菜の少なくとも一方を柔らかくすることができないため、果肉及び固形の野菜の少なくとも一方も注出口から絞り出し難くなる。換言すれば、本発明の一態様は、冷凍食品組成物を揉み解し易いことにより、常温のときに固体である成分が入っていても、当該成分を揉み解し易く、注出口から絞り出し易い。
【0023】
<イヌリンの好ましい含有量>
液部に含まれるイヌリンの濃度は、容器の注出口からより容易に内容物を絞り出すことができ、口当たりを滑らかにする観点から、好ましくは2.0質量%以上であり、より好ましくは4.0質量%以上である。また、当該濃度は、味をより良好にする観点から、液部の総質量に対して、好ましくは12.0質量%以下であり、より好ましくは10.0質量%以下である。
【0024】
<ペクチンの含有量>
液部は、ペクチンを含まないか、1.0質量%未満の濃度で含む。ペクチンの濃度が1.0質量%以上であると、冷凍食品組成物の味が悪くなる。なお、ペクチンは水溶性であるため、液部は溶解しているペクチンを含む。
【0025】
本発明の一態様において、液部はペクチンを含むことがより好ましい。液部がペクチンを1.0質量%未満の濃度で含むことにより、常温のときに固体である成分を含む場合、当該固体の成分の液部内での分散性が良くなる。これにより、冷凍食品組成物の生産効率が向上する。つまり、各容器に冷凍食品組成物の内容物を充填する場合、予め大きなタンク等に、冷凍食品組成物の容器複数個分の材料を格納し、各容器に充填することが考えられる。しかし、当該分散性が悪いとタンク内で固体の成分が沈殿し、各容器に充填し難くなる。本発明の一態様はペクチンを液部の1.0質量%未満の濃度で含むことで、当該分散性が良好になり、各容器に充填し易くなる。
【0026】
<ペクチンの好ましい含有量>
液部に含まれるペクチンの含有量は、液部中における果肉及び固形の野菜の少なくとも一方の分散性を良好にする観点から、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上である。また、当該含有量は、絞り出し易さ、味を良好にする観点から、好ましくは0.9質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下である。
【0027】
<ペクチンの種類>
液部に含まれるペクチンは、LMペクチン(ローメトキシペクチン)であっても、HMペクチン(ハイメトキシペクチン)であってもよい。LMペクチンとは、DE値(エステル化度)が50%以下のペクチンをいい、HMペクチンとは、エステル化度が50%超のペクチンをいう。LMペクチンとしては、例えば、SLENDID(登録商標)Speciality Pectin 100-J(三晶株式会社製)、GRINDSTED(登録商標)Pectin LC-810(Dupont製)、GRINDSTED(登録商標)Pectin LC-710(Dupont製)等が挙げられる。HMペクチンとしては、例えば、DD slow set(三晶株式会社製)、APA102、APA103(Yantai Andre Pectin co製)等が挙げられる。フレーバーリリース及び口当たりをより良好にする観点から、ペクチンはLMペクチンであることが好ましい。
【0028】
<液部のその他の成分>
液部は、イヌリン、ペクチン、果汁及び野菜汁とは異なる、常温(20℃)のときに液体である成分を含んでもよい。当該成分としては、例えば、水、乳製品、茶類、果汁及び野菜汁以外の青果物からの抽出物等が挙げられる。水は、その他の成分の濃度、味の濃さ等を調整する観点から用いてもよい。また、常温のときに液体である成分に、常温のときに液体である成分以外の別の成分が溶解又は分散していてもよい。当該別の成分としては、例えば、調味料(例えば、砂糖等)、酸味料(例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸等)、呈味料(例えば、グルタミン酸ソーダ等)等が挙げられる。
【0029】
<常温のときに固体である成分>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物は、常温(20℃)のときに固体である成分を含むことがより好ましい。「常温のときに固体である成分」とは常温で静置しても融けずに固体のままである成分をいう。常温のときに固体である成分は冷凍食品組成物として提供される場面においても固体である。本発明の一態様によれば、常温のときに固体である成分が入っていても、当該成分を揉み解し易いので、注出口から固体の成分を絞り出し易い。従来の技術では、喫食者が、パウチからそのまま直接喫食するためには、注出口から内容物を絞り出すために、果肉等の固体の成分を配合させないことが多い。果肉等を配合するためには、喫食前に喫食者が内容物をパウチの外から揉み解し、適度に柔らかくしてから喫食する必要がある。しかし、本発明の一態様においては、果肉等の固体の成分が入っていても、注出口から固体の成分を絞り出し易い。
【0030】
<果肉・固形の野菜>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物は、常温のときに固体である成分の一態様として、果肉及び固形の野菜のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。本発明によれば、冷凍食品組成物を揉み解し易くなることにより、果肉及び固形の野菜も揉み解し易くなり、注出口から出やすい形状に容易にすることができる。よって、果肉及び野菜の風味、食感も容易に味わえる冷凍食品組成物を提供することができる。なお、本明細書において「固形の野菜」とは、一定の形状を有する固体の野菜であり、野菜汁のように流動性を有するように処理されていない状態の野菜を意味する。
【0031】
<果肉・野菜の種類>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物に含まれる果肉及び固形の野菜の種類は、特に限定されず、例えば、果汁及び野菜汁の原料として列挙したものを挙げることができる。果肉及び固形の野菜は、生の果物及び野菜であってもよいし、生の果肉及び野菜に乾燥処理、糖浸漬処理等の加工を施したものであってもよい。本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物に含まれる果肉及び固形の野菜は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。また、本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物に含まれる果肉及び固形の野菜と、果汁及び野菜汁の原料である果物及び野菜の種類は、同じであってもよく、異なってもよい。
【0032】
<果肉・固形の野菜の形状>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物に含まれる果肉及び固形の野菜の形状は特に限定されず、例えば、原料の果物、野菜の形状に応じて適宜設定してもよい。例えば、柑橘類の場合、冷凍食品組成物に包含させる果肉は、一房そのままの形状としてもよい。
【0033】
<果肉・固形の野菜の大きさ>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物に含まれる果肉及び固形の野菜の大きさは、適宜設定すればよい。例えば、当該大きさは、容器の注出口の大きさ、目的とする食感、果肉及び野菜の種類等に応じて設定すればよい。容器の注出口から容易に絞り出すことができる観点から、揉み解すことによって注出口を通過可能になる大きさであることが好ましく、揉み解さなくても注出口を通過可能である大きさであることがより好ましい。
【0034】
<果肉・固形の野菜の含有量>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物に含まれる果肉及び固形の野菜の含有量(生換算)は、容器に冷凍食品組成物の内容物を充填するときに果肉及び固形の野菜の少なくとも一方を均一に充填する観点、及び喫食時の果物及び野菜の味わい及び食感をより良好にする観点から、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。また、容器入り冷凍食品組成物の潰しやすさの観点から、次の範囲が好ましい。つまり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。
【0035】
<常温のときに固体であるその他の成分>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物は、前述した果肉及び固形の野菜以外の、常温(20℃)のときに固体である成分を含んでもよい。例えば、果肉及び野菜とは異なる青果類、菓子類、穀物類、豆類等が挙げられる。
【0036】
<容器の構造>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物に用いる容器は、注出口を備え、冷凍食品組成物を格納する部位が可撓性を有していればよい。以下、冷凍食品組成物を格納する部位を容器の「本体」ともいう。例えば、本発明における容器は、冷凍食品組成物を格納する本体に注出口が設けられたものが挙げられる。より具体的には、本発明における容器は、注出口が本体とは別体に設けられ、当該注出口が本体に取り付けられている構造でもよく、本体自体の一部が注出口となる構造でもよい。本体と別体に設けられた注出口が本体に取り付けられている構造の容器の例として、スパウトパウチが挙げられる。また、本体の一部が注出口となる構造の場合、袋(本体)の一部を切断することで注出口を設ける構造が挙げられる。当該構造の場合、注出口を形成するためのミシン目を袋に設けておいてもよい。
【0037】
<容器の材料>
本発明における容器の材料は特に限定されず、冷凍食品組成物が入っている部位が可撓性を有していればよい。可撓性を持たすための容器の材料としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ナイロン等が挙げられる。
【0038】
<注出口の最小径>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物に用いる容器の注出口の最小径(内径)は、果肉及び/又は固形の野菜が含まれていても、容器の注出口から内容物をより容易に絞り出すことができる観点から、次の範囲が好ましい。つまり、好ましくは10mm以上であり、より好ましくは15mm以上である。また、喫食者が口に咥え易い観点から、好ましくは30mm以下であり、より好ましくは20mm以下である。なお、本明細書において注出口の径について記載する場合、特に断りのない限り内径を意図する。
【0039】
<注出口の形状>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物に用いる容器の注出口の開口面の輪郭は特に限定されない。例えば、円、楕円、雫型、多角形等が挙げられる。どのような形状であっても本発明によれば、容器の内容物を容易に絞り出すことができる。
【0040】
<容器入り冷凍食品組成物の製造方法>
本発明の一態様に係る容器入り冷凍食品組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、各成分を混合したり溶解させたりして、容器に封入して凍結させればよい。
【0041】
<封入工程>
冷凍食品組成物の各成分を容器に封入する工程では、前述した全ての成分を予め混合や溶解したものを封入してもよく、一部の成分は、他の成分と予め混合せずに、容器に封入した後に、他の成分と混合されてもよい。例えば、果肉や固形の野菜は、他の成分とは別に容器に加えられてもよい。また、本体とは別体の注出口を本体に取り付ける構造の容器を採用する場合は、注出口を付ける前の容器に全ての成分を封入した後に、容器を密封するときに注出口を取り付けてもよい。
【0042】
<凍結工程>
冷凍食品組成物の全ての成分が格納された容器を凍結する工程における、凍結方法及び凍結条件は特に限定されず、従来公知の方法を適宜採用すればよい。
【0043】
<保存条件>
また、凍結工程後に引き続いて、凍結状態が維持されるように保存してもよい。保存方法は従来公知の方法を適宜採用すればよい。
【0044】
以下、本発明について、実施例、比較例及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例
【0045】
[実施例1]
表1に示す配合で、果汁(レモン、リンゴ、ブドウ、グアバ)、食物繊維、及び清水をミキサーへ投入し、5分間撹拌を行なった。その後、果肉としてグレープフルーツ(少なくとも1辺が15mm以下の直方体状)、及び撹拌した混合物を表1に示す配合で混合してスパウトパウチに入れた。口径(内径)15mmの注出口を取り付けつつ、スパウトパウチに封をした後、80℃で30分間加熱し、-30℃で24時間冷凍することによって、スパウトパウチ入りシャーベット状食品を作製した。なお、スパウトパウチの材質は、本体がPE・PP、注出口がPPである。また、本体の厚さは0.1mmである。また、表1において、果汁濃度はストレート換算である。
【0046】
[実施例2~5、及び比較例1、2]
実施例2~4、及び比較例1、2において、表1に示す配合量にした以外は実施例1と同様にしてスパウトパウチ入りシャーベット状食品を作製した。実施例5において、果肉としてオレンジ(最長部の長さ:15mm)を用い、表1に示す配合量にした以外は実施例1と同様にしてスパウトパウチ入りシャーベット状食品を作製した。
【0047】
[実施例6、及び比較例3~5]
実施例6において、表2、3に示す配合量で、食物繊維としてイヌリン、及びLMペクチン(SLENDID Speciality Pectin 100-J(三晶株式会社製))を併用した以外は、実施例1と同様にしてスパウトパウチ入りシャーベット状食品を作製した。比較例3~5において、食物繊維の種類を表2に示すものに変更した以外は実施例6と同様にしてスパウトパウチ入りシャーベット状食品を作製した。なお、比較例3のシトラスファイバーは一部不溶性であるので、「液部における食物繊維の濃度(質量%)」は、食物繊維と液部との総質量に対する食物繊維の割合(質量%)を示している。
【0048】
[実施例7~10、及び比較例6]
実施例7~10、及び比較例6において、イヌリン及びSLENDID Speciality Pectin 100-Jの配合量を表3に示す配合量にした以外は実施例6と同様にしてスパウトパウチ入りシャーベット状食品を作製した。
【0049】
[実施例11、12、及び比較例7]
実施例11、12、及び比較例7において、それぞれペクチンとしてLMペクチンであるGRINDSTED(登録商標)Pectin LC-810(Dupont製)を用い、イヌリン及びLC-810の配合量を表4に示す配合量にした以外は実施例6と同様にしてスパウトパウチ入りシャーベット状食品を作製した。
【0050】
[実施例13、14、及び比較例8]
実施例13、14、及び比較例8において、それぞれペクチンとしてHMペクチンであるAPA102(Yantai Andre Pectin co製)を用い、イヌリン及びAPA102の配合量を表5に示す配合量にした以外は実施例6と同様にしてスパウトパウチ入りシャーベット状食品を作製した。
【0051】
<官能評価>
各実施例及び比較例の容器入りシャーベット状食品を冷凍庫から取り出して揉み解し、スパウトパウチから内容物を絞り出した。各スパウトパウチ入りシャーベット状食品の注出口からの内容物の絞り出し易さを、下記評価基準により評価した。また、各スパウトパウチ入りシャーベット状食品の味、フレーバーリリース、口当たりを下記評価基準により評価した。
【0052】
<絞り出し易さの評価基準>
◎:非常に容易に絞り出せた。
○:◎より劣るが、容易に絞り出せた。
×:容易に絞り出すことは困難であった。
【0053】
<味の評価基準>
◎:非常に果物の味わいが感じられ、非常に美味しかった。
○:◎より劣るが、果物の味わいが感じられ、美味しかった。
×:果物以外の味が感じられ、不味かった。
【0054】
<フレーバーリリースの評価基準>
+++:果実フレーバーが大変強かった。
++:+++より劣るが、果実フレーバーが強かった。
+:++より劣るが、果実フレーバーがあった。
-:果実フレーバーのマスキングが強い。
【0055】
<口当たりの評価基準>
+++:口当たりが非常に滑らかであった。
++:+++より劣るが、口当たりが滑らかであった。
+:++より劣るが、口当たりが滑らかであった。
-:口当たりが滑らかでなかった。
【0056】
<分散性の評価>
液部中の果肉の分散性を、以下の評価基準により評価した。
【0057】
<分散性の評価基準>
+++:最初から最後まで液部と果肉とが非常に均一に分散した状態で充填することができた。
++:+++より劣るが、最初から最後まで液部と果肉とが均一に分散した状態で充填することができた。
+:++より劣るが、最初から最後まで液部と果肉とが分散した状態で充填することができた。
-:充填するときに、液部と果肉とが偏った状態であった。
【0058】
<初期弾性率の測定>
シャーベット状食品の液部の初期弾性率は次の通り測定した。まず、容器入りシャーベット状食品の容器表面を切断して内容物を取り出し、果肉部と液部とに分けた。次に、解凍した液部を内径35mm、高さ10mmのテフロン(登録商標)製リングに充填し、-25℃の凍結庫で一晩凍結処理して円柱状の試料を作製した。リングから試料を取り出した後、-20℃で1時間静置後、当該-20℃の環境から取り出した直後に、気温20℃の環境下で、テクスチャーアナライザー及び直径0.5インチの円柱状プランジャー(型番:P/0.5R)を用いて、測定速度2mm/sec、圧縮歪率50%の条件で、当該試料の底面に対して垂直となるようにプランジャーを貫入させて測定に供した。テクスチャーアナライザーTA.XT Plus(Stable Micro Systems社製)を用いて測定した。
【0059】
<糖度の測定>
冷凍前の液部の糖度を、手持屈折計(アタゴ社製)を用いて測定した。
【0060】
<評価及び測定の結果>
各評価及び測定の結果を表1~5に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
表1~5に示すように、液部が、イヌリンを2.0質量%以上、16.0質量%以下の濃度で含み、かつ、ペクチンを含まないか1.0質量%未満含むことで、スパウトパウチ内の内容物を絞り出しやすく、かつ、味が良好であることが示された。これにより、喫食者は注出口から良好な味の冷凍食品組成物を直接経口摂取しやすいことが示された。
【0067】
より詳細には、表1から、液部が、イヌリンを2.0質量%以上、16.0質量%以下の濃度で含み、かつ、ペクチンを含まないものは、スパウトパウチ内の内容物を絞り出しやすく、かつ、味が良好であることが示された。
【0068】
表2から、食物繊維としてシトラスファイバーを用いた比較例3は、揉み解しやすさの目安である初期弾性率が21.93N/mと高く、とても揉み解せるものではなかった。食物繊維としてグルコマンナンを用いた比較例4は、初期弾性率が高いのみならず、いわゆるコンニャク臭がつき、自然な果汁含有食品とはいえなかった。食物繊維としたペクチンのみを用いた比較例5は、初期弾性率が11.05N/mと高く、かつ味が好ましくなかった。また、比較例5は、マスキング効果によりフレーバーリリースが低下し、ペクチン特有のぬめり感が生じた。
【0069】
表3~5から、液部が、イヌリンを2.0質量%以上、16.0質量%以下の濃度で含み、かつ、ペクチンを含まないか、0.9質量%以下の濃度であるとき、初期弾性率が問題なく、味も良い冷凍食品組成物が得られることが示された。液部における食物繊維濃度6質量%のうち、ペクチンが0質量%~0.9質量%、イヌリンが5.1質量%~6.0質量%の範囲であると、初期弾性率が問題なく、味も良い冷凍食品組成物が得られることが示されたともいえる。また、特に、実施例11~14から、LMペクチンを用いたとき、HMペクチンを用いたときよりもフレーバーリリース、味、及び分散性のバランスが良くなることが示された。
【0070】
[実施例15、16]
果肉量をそれぞれ40質量%、75質量%にした以外は実施例3と同様にしてスパウトパウチ入りシャーベット状食品を作製した(それぞれ実施例15、16)。次に、当該シャーベット状食品について、前述の官能評価を行なった。その結果、実施例15、16の絞り出し易さ、味、フレーバーリリース、口あたりは、いずれも実施例3と同じ評価となった。