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  • 特許-非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/533 20210101AFI20240619BHJP
   H01M 50/107 20210101ALI20240619BHJP
   H01M 50/152 20210101ALI20240619BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240619BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240619BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240619BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20240619BHJP
   H01M 50/559 20210101ALI20240619BHJP
   H01M 50/567 20210101ALI20240619BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20240619BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20240619BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/107
H01M50/152
H01M50/184 D
H01M50/193
H01M50/342 101
H01M50/548 201
H01M50/559
H01M50/567
H01M50/586
H01M50/593
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020060003
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021158075
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡司
(72)【発明者】
【氏名】山下 修一
(72)【発明者】
【氏名】福岡 孝博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛也
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 弘光
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-147821(JP,A)
【文献】特開平10-241654(JP,A)
【文献】特開2000-011980(JP,A)
【文献】特開平08-069785(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125413(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 50/30-50/392
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及びセパレータを含む電極体と、前記電極体を収容する有底円筒形状の外装体と、前記外装体の開口部を封止する封口体とを備える非水電解質二次電池であって、
前記封口体は、
正極端子である第1弁キャップと、
防爆弁と、
前記第1弁キャップと前記防爆弁との間に挟持された中間部材と、
前記防爆弁の底部と接しつつ、曲折した周縁部において絶縁部材を介して前記第1弁キャップ、前記中間部材、及び、前記防爆弁をかしめ固定した第2弁キャップとを含み、
前記中間部材は、リング形状を有し、厚さが不均一であり、
前記第1弁キャップと前記中間部材との間の接触圧力が、不均一である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記防爆弁と前記中間部材との間の接触圧力が、不均一である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
正極、負極、及びセパレータを含む電極体と、前記電極体を収容する有底円筒形状の外装体と、前記外装体の開口部を封止する封口体とを備える非水電解質二次電池であって、
前記封口体は、
正極端子である第1弁キャップと、
防爆弁と、
前記第1弁キャップと前記防爆弁との間に挟持された中間部材と、
前記防爆弁の底部と接しつつ、曲折した周縁部において絶縁部材を介して前記第1弁キャップ、前記中間部材、及び、前記防爆弁をかしめ固定した第2弁キャップとを含み、
前記中間部材は、らせん形状を有
前記第1弁キャップと前記中間部材との間の接触圧力が、不均一である、非水電解質二次電池。
【請求項4】
正極、負極、及びセパレータを含む電極体と、前記電極体を収容する有底円筒形状の外装体と、前記外装体の開口部を封止する封口体とを備える非水電解質二次電池であって、
前記封口体は、
正極端子である第1弁キャップと、
防爆弁と、
前記第1弁キャップと前記防爆弁との間に挟持された中間部材と、
前記防爆弁の底部と接しつつ、曲折した周縁部において絶縁部材を介して前記第1弁キャップ、前記中間部材、及び、前記防爆弁をかしめ固定した第2弁キャップとを含み、
前記中間部材は、リング形状を有し、外周縁から内周縁に向けて傾斜を有
前記第1弁キャップと前記中間部材との間の接触圧力が、不均一である、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、電極体及び電解質を収容した外装体の開口部を封口体で密封している。封口体に防爆等の機能を持たせるために、封口体が複数の部品から構成される場合がある。この場合、封口体内部において、絶縁部材を介して複数の部品をかしめ固定し、金属部品同士を接触させて導通を確保している場合がある。特許文献1には、スペーサーの表面に金属めっきを施し、さらに、スペーサーと金属箔との接触面を溶接することで内部抵抗を小さくした封口体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-27020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、二次電池は、用途が拡大しており、使用環境についても、屋内に限らず屋外でも使用される場合もある。屋外では屋内に比べて温度や湿度の変化が大きく環境が過酷であり、絶縁部材が劣化して、かしめ固定された封口体の導通部の接触圧力が低下して、電池の内部抵抗が上昇することがある。特許文献1は、絶縁部材の劣化については考慮しておらず、導通部の接触圧力の低下について、未だ改善の余地がある。
【0005】
本開示の目的は、過酷な環境下でも内部抵抗の上昇を抑制することができる非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、正極、負極、及びセパレータを含む電極体と、電極体を収容する有底円筒形状の外装体と、外装体の開口部を封止する封口体とを備える。封口体は、正極端子である第1弁キャップと、防爆弁と、第1弁キャップと防爆弁との間に挟持された中間部材と、防爆弁の底部と接しつつ、曲折した周縁部において絶縁部材を介して第1弁キャップ、中間部材、及び、防爆弁をかしめ固定した第2弁キャップとを含み、第1弁キャップと中間部材との間の接触圧力が、不均一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る非水電解質二次電池によれば、長期使用後にも、内部抵抗の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例である円筒型の二次電池の軸方向断面図である。
図2図1に示した二次電池が備える封口体の断面図である。
図3】(a)~(c)は、図2に示した封口体を構成する中間部材の正面図及び側面図であり、(d)は、従来の二次電池に用いられる中間部材の正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、図面を参照しながら、本開示に係る円筒型の二次電池の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、円筒型の二次電池の仕様に合わせて適宜変更することができる。また、外装体は円筒型に限定されず、例えば角型等であってもよい。また、以下の説明において、複数の実施形態、変形例が含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0010】
図1は、実施形態の一例である円筒型の二次電池10の軸方向断面図である。二次電池10は、電極体14と、電極体14を収容する外装体15と、外装体15の開口部を封止する封口体16とを備える。電極体14は、正極11及び負極12がセパレータ13を介して巻回されてなる巻回型の構造を有する。電極体14の最外周は、図1においてはセパレータ13であるが、負極12でもよい。また、電極体14は、巻回型に限定されず、積層型でもよい。以下では、説明の便宜上、封口体16側を「上」、外装体15の底部側を「下」として説明する。
【0011】
正極11は、帯状の正極集電体と、正極集電体の両面に形成された正極合剤層とを有してもよい。正極集電体には、例えば、アルミニウムなどの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。正極合剤層は、少なくとも正極活物質を含み、導電剤、結着剤等を含んでもよい。正極活物質としては、Co等の遷移金属元素を含有するリチウム含有遷移金属酸化物が例示できる。正極11は、正極活物質等を溶剤に分散させた正極合剤スラリーを正極集電体の両面に塗布した後、正極合剤層を乾燥及び圧縮することにより作製できる。
【0012】
負極12は、帯状の負極集電体と、負極集電体の両面に形成された負極合剤層とを有してもよい。負極集電体には、例えば、銅などの金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。負極合剤層は、少なくとも負極活物質を含み、結着剤等を含んでもよい。負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料が例示できる。負極12は、負極活物質等を溶媒に分散させた負極合剤スラリーを負極集電体の両面に塗布した後、負極合剤層を乾燥及び圧縮することにより作製できる。
【0013】
外装体15には、電極体14以外に非水電解質(図示せず)が収容されている。非水電解質の非水溶媒(有機溶媒)としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を用いることができ、これらの溶媒は2種以上を混合して用いることができる。非水電解質の電解質塩としては、LiPF、LiBF、LiCFSO等及びこれらの混合物を用いることができる。非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、例えば0.5~2.0モル/Lとすることができる。
【0014】
外装体15の開口部が封口体16で塞がれることで、二次電池10の内部は、密閉される。電極体14の上下には、絶縁板17,18がそれぞれ設けられる。正極11の内周側端部に取り付けられた正極リード19は、絶縁板17の貫通孔を通って上方に延び、封口体16に溶接される。二次電池10では、封口体16が正極端子となる。他方、負極12の外周側端部に取り付けられた負極リード20は、絶縁板18の外側を通って、外装体15の底部側に延び、外装体15の底部内面に溶接される。二次電池10では、外装体15が負極端子となる。
【0015】
外装体15は、有底の円筒型の金属製の外装缶である。外装体15と封口体16との間にはガスケット21が設けられ、二次電池10の内部の密閉性が確保されている。外装体15は、例えば側面部を外側からプレスして形成された、封口体16を支持する溝入部22を有する。溝入部22は、外装体15の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面でガスケット21を介して封口体16を支持する。
【0016】
次に、図2に示す封口体16の断面図を参照しながら、封口体16について詳説する。封口体16は、正極端子である第1弁キャップ30と、防爆弁32と、第1弁キャップ30と防爆弁32との間に挟持された中間部材34と、防爆弁32の底部と接しつつ、曲折した周縁部において絶縁部材36を介して第1弁キャップ30、中間部材34、及び、防爆弁32をかしめ固定した第2弁キャップ38とを含む。
【0017】
封口体16を構成する各部材は、例えば、円板形状又はリング形状を有し、絶縁部材36を除く各部材は互いに電気的に接続されている。防爆弁32と第2弁キャップ38とは各々の中央部で互いに接続されており、例えば、相互に超音波溶接等で固定されている。防爆弁32と第1弁キャップ30とは、中間部材34を介して、各々の周縁部で互いに電気的に接続されている。
【0018】
封口体16は、防爆機能を有する。異常発熱で二次電池10の内圧が上昇すると、防爆弁32が第1弁キャップ30側に膨れて第2弁キャップ38から離れることにより両者の電気的接続が遮断される。さらに内圧が上昇すると、防爆弁32が破断し、第1弁キャップ30の開口部30aからガスが排出される。
【0019】
第1弁キャップ30の形状は、特に限定されないが、封口体16のうち第1弁キャップ30が正極端子となるため、図2に示すように上方に突出していてもよい。これにより、第1弁キャップ30と外部機器等との接続がしやすくなる。第1弁キャップ30の材質は、導通できれば特に限定されず、例えば、ニッケルめっきされた鉄、アルミニウム、又はアルミニウム合金であってもよい。
【0020】
防爆弁32は、例えば、薄板状の金属製の部材である。上記のように、二次電池10の内圧が上昇した際には、リング状の中間部材34の内周円を支点に上方に反転することで、第2弁キャップ38から離間する。防爆弁32は、図2に示すようにノッチ40を有していてもよい。ノッチ40は、二次電池10の内圧がさらに上昇した際に破断する起点となる。
【0021】
第2弁キャップ38は、上記のように第1弁キャップ30、中間部材34、及び防爆弁32を外周から覆うので、これらの部材よりも大きい円板形状の部材であり、二次電池10の内圧を防爆弁32に伝えるため、貫通孔を有する。第2弁キャップ38の材質は、導通できれば特に限定されず、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金であってもよい。
【0022】
絶縁部材36は、第2弁キャップ38と、第1弁キャップ30、中間部材34、及び防爆弁32とを、周縁部において電気的に隔離する。また、絶縁部材36は、弾性を有し、上下方向に圧縮されることで第1弁キャップ30、中間部材34、及び防爆弁32の間の密閉性が確保される。換言すれば、第1弁キャップ30、中間部材34、及び防爆弁32の周縁部を、絶縁部材36及び第2弁キャップ38で被覆し、上下方向に荷重をかけてかしめ固定することによって、圧縮された絶縁部材36からの反発力が第1弁キャップ30、中間部材34、及び防爆弁32に上下方向から加わり、一定以上の接触圧力を確保させることができる。絶縁部材36の材質は、上記の機能を果たせれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)などを用いることができる。
【0023】
次に、図3を参照しながら、中間部材34について説明する。図3(a)~(c)は、本開示に係る封口体16を構成する中間部材34の正面図及び側面図であり、図3(d)は、従来の二次電池10に用いられる中間部材34の正面図及び側面図である。
【0024】
図3(a)の中間部材34aは、リング形状であり、厚さが不均一である。左側半分の厚みがt1であり、右側半分の厚みがt1よりも厚いt2である。厚みの異なる部分を有する中間部材34aを用いて封口体16を構成することで、第1弁キャップ30と中間部材34aとの間の接触圧力が、不均一になり、所謂片当たりした状態となる。これにより、長期の使用で絶縁部材36の弾性力が低下したとしても、中間部材34aと第1弁キャップ30との間において、片当たりによって、少なくとも他の部分に比べて強い圧力で接触している部分では一定以上の接触圧力を保持することができるので、内部抵抗の上昇抑制が可能となる。同様に、防爆弁32と中間部材34aとの間の接触圧力が、不均一になっていることが好ましい。
【0025】
図3(a)において、厚みt1は、例えば、0.05mm~1.0mmであり、好ましくは、0.1mm~0.5mmである。厚みt2は、例えば、0.1mm~1.5mmであり、好ましくは、0.2mm~0.6mmであり、厚みt2と厚みt1との差は、例えば、0.05mm~0.5mmであり、好ましくは、0.05mm~0.2mmである。なお、中間部材34aにおいて、厚みが大きい部分と厚みが小さい部分の面積比は、1:1には限られず、1:3~3:1であることが好ましい。
【0026】
図3(b)の中間部材34bは、らせん形状を有し、所謂スプリングワッシャの形状を有する。一端部の上面と他端部の上面との高さの差t3は、例えば、0.3mm~1.0mmであり、好ましくは、0.5mm~0.9mmである。また、中間部材34bの厚みは、例えば、0.05mm~1.0mmであり、好ましくは、0.1mm~0.5mmであり、一定であってもよい。らせん形状を有する中間部材34bを用いて封口体16を構成することで、中間部材34bに局所的に弾性力が働くため、第1弁キャップ30と中間部材34bとの間の接触圧力が、不均一になり、所謂片当たりした状態となる。これにより、長期の使用で絶縁部材36の弾性力が低下したとしても、中間部材34bと第1弁キャップ30との間において、片当たりによって、少なくとも他の部分に比べて強い圧力で接触している部分では一定以上の接触圧力を保持することができるので、内部抵抗の上昇抑制が可能となる。
【0027】
図3(c)の中間部材34cは、リング形状であり、外周縁から内周縁に向けて傾斜を有する。外周縁の上面と内周縁の上面との高さの差t4は、例えば、0.1mm~0.7mmであり、好ましくは、0.3mm~0.5mmである。また、中間部材34cの厚みは、例えば、0.05mm~1.0mmであり、好ましくは、0.1mm~0.5mmであり、一定であってもよい。外周縁から内周縁に向けて傾斜を有する中間部材34cを用いて封口体16を構成することで、中間部材34cに局所的に弾性力が働くため、第1弁キャップ30と中間部材34cとの間の接触圧力が、不均一になり、所謂片当たりした状態となる。これにより、長期の使用で絶縁部材36の弾性力が低下したとしても、中間部材34cと第1弁キャップ30との間において、片当たりによって、少なくとも他の部分に比べて強い圧力で接触している部分では一定以上の接触圧力を保持することができるので、内部抵抗の上昇抑制が可能となる。
【0028】
図3(d)の中間部材34dは、リング形状を有し、通常のワッシャの形状を有する。中間部材34dの厚みは、0.3mm程度で一定である。中間部材34dを用いて封口体16を構成することで、中間部材34dが第1弁キャップ30と防爆弁32との間で平行に近い状態でかしめられるため、第1弁キャップ30と中間部材34dとの間の接触圧力が均一になる。長期の使用で絶縁部材36の弾性力が低下すると、中間部材34bと第1弁キャップ30との間の接触圧力は、接触面において一様に低下するので、二次電池10の内部抵抗が上昇する恐れがある。
【実施例
【0029】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
<実施例1>
[正極の作製]
正極活物質として、LiCoOで表されるコバルト酸リチウムを用いた。この正極活物質を100質量部と、導電剤としてのアセチレンブラック(AB)を1質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を1質量部とを混合し、さらに、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合剤スラリーを調製した。次に、この正極合剤スラリーをアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥機で乾燥させた後、所定の電極サイズに切り取り、ローラを用いて圧延して帯状の正極を得た。また、正極の長さ方向の一端部に活物質が形成されていない無地部を形成し、その無地部にアルミニウムの正極リードを超音波溶接で固定した。
【0031】
[負極の作製]
負極活物質として、天然黒鉛の粉末を用いた。この負極活物質100質量部と、結着剤としてのスチレン-ブタジエンゴム(SBR)1質量部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)1質量部とを混合し、さらに、水を適量加えて、負極合剤スラリーを調製した。次に、この負極合剤スラリーを、銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥機で乾燥させた後、所定の電極サイズに切り取り、ローラを用いて圧延して帯状の正極を得た。また、負極の長さ方向の一端部に活物質が形成されていない無地部を形成し、その無地部にニッケルの負極リードを超音波溶接で固定した。
【0032】
[電極体の作製]
作製された正極及び負極を、セパレータを介して渦巻状に巻回することにより、巻回型の電極体を作製した。その際、正極の正極リードが接続された一端部が内周側(巻き始め側)に位置し、負極の負極リードが接続された一端部が外周側(巻き終わり側)に位置するようにした。セパレータは、ポリエチレン製の微多孔膜の片面にポリアミドとアルミナのフィラーを分散させた耐熱層が形成されたものを用いた。
【0033】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、体積比でEC:EMC:DMC=3:3:4となるように混合した混合溶媒に、LiPFを1モル/Lとなるように添加し非水電解液を調製した。
【0034】
[中間部材の作製]
Ni-Fe-Niの3層クラッド板を、中心線を境界にして一方の厚みが0.3mmで、他方の厚み0.4mmになるようにプレス加工した。直径がクラッド板の中心線を通るようにリング状に打ち抜き加工を行い、中間部材を作製した。当該中間部材は、外形が図3(a)に示すものと同様であり、外径がφ15mm、内径がφ6.3mmであった。
【0035】
[封口体の作製]
第2弁キャップの上に、絶縁部材と、防爆弁とを積層し、防爆弁の底部と第2弁キャップとを超音波で溶接した。さらに、防爆弁の上に、上記の中間部材と、第1弁キャップとを積層した後に、第2弁キャップの周縁部を曲折し、絶縁部材を介して第1弁キャップ、中間部材、及び、防爆弁をかしめ固定することで封口体を作製した。
【0036】
[二次電池の作製]
直径φ18mm、高さ65mmの有底円筒形状の外装体を準備した。上記の電極体の上下に絶縁板をそれぞれ配置し、負極リードを外装体の底部に溶接して、正極リードを上記の封口体に溶接してから、電極体を外装体に収容した。その後、外装体の内部に非水電解液を注入した。さらに、外装体の開口部を、ガスケットを介して封口体で封口して、円筒型の非水電解質二次電池を作製した。作製した二次電池は、公称電圧が4.2Vで、定格容量が1500mAhであった。このようにして、二次電池を5個作製した。
【0037】
[耐久性の評価]
上記5個の二次電池の全てについて、下記のヒートショックサイクル試験を行なった。ヒートショックサイクル試験前後で、低抵抗計(測定周波数1kHzに設定した交流4端子法)を用いて、二次電池の内部抵抗を測定した。5個の二次電池の内部抵抗の平均値を算出して耐久性を評価した。
<ヒートショックサイクル試験>
二次電池を、-30℃で30分保持し、さらに70℃で30分保持するヒートショック試験を1サイクルとした。本サイクル試験を500回行った後、二次電池を室温に戻して、500サイクル後の内部抵抗を測定した。その後、さらに、本サイクルを500回行った後、二次電池を室温に戻して、1000サイクル後の内部抵抗を測定した。
【0038】
<実施例2>
中間部材の作製において、プレス加工した厚み0.3mmのNi-Fe-Niの3層クラッド板を用いて、外径がφ15mmで、内径がφ6.3mmのリング状試料を打ち抜き加工により作製し、さらに、このリング状試料に2mm幅の切り込みを1か所入れた後に一端部の上面と他端部の上面との高さの差が0.7mmになるように曲げ成形して中間部材を作製したこと以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製し、評価を行った。なお、封口体作製時のかしめ荷重は、実施例1と同じであった。また、当該中間部材は、外形が図3(b)に示すものと同様であった。
【0039】
<実施例3>
中間部材の作製において、プレス加工した厚み0.3mmのNi-Fe-Niの3層クラッド板を用いて、外径がφ15mmで、内径がφ6.3mmのリング状試料を打ち抜き加工により作製し、さらに、このリング状試料の中心部を先端直径φ10mmの球形パンチでプレスして外周縁の上面と内周縁の上面との高さの差が0.4mmのお椀形状になるようにして中間部材を作製したこと以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製し、評価を行った。なお、封口体作製時のかしめ荷重は、実施例1と同じであった。また、当該中間部材は、外形が図3(c)に示すものと同様であった。
【0040】
<比較例>
中間部材の作製において、プレス加工した厚み0.3mmのNi-Fe-Niの3層クラッド板を用いて、外径がφ15mmで、内径がφ6.3mmのリング状に打ち抜き加工して中間部材を作製したこと以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製し、評価を行った。なお、封口体作製時のかしめ荷重は、実施例1と同じであった。また、当該中間部材は、外形が図3(d)に示すものと同様であった。
【0041】
実施例及び比較例における、ヒートショックサイクル試験後の電池の内部抵抗の測定結果を表1に示す。実施例及び比較例の電池の各々おいて、ヒートショックサイクル試験前の電池の内部抵抗の平均値を100として、500サイクル後及び1000サイクル後の内部抵抗の平均値を相対値で示した。なお、封口体作製時のかしめ荷重は、実施例1と同じであった。また、実施例1~3及び比較例の初期の電池の内部抵抗は同じ値であった。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1~3では、比較例に比べて電池の内部抵抗の上昇を大幅に抑制することができた。実施例及び比較例のいずれの電池においても、絶縁部材の弾性は同程度低下していると考えられるが、実施例の電池では、中間部材の形状の効果により、金属部品間で接触圧力が高い状態を維持できており、電池の内部抵抗の上昇を抑制することができたと推察される。
【符号の説明】
【0044】
10 二次電池、11 正極、12 負極、13 セパレータ、14 電極体、15 外装体、16 封口体、17,18 絶縁板、19 正極リード、20 負極リード、21 ガスケット、22 溝入部、30 第1弁キャップ、32 防爆弁、34 中間部材、36 絶縁部材、38 第2弁キャップ
図1
図2
図3