(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】ショーケース
(51)【国際特許分類】
A47F 3/04 20060101AFI20240619BHJP
F25D 17/06 20060101ALI20240619BHJP
F25D 23/02 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A47F3/04 E
F25D17/06 304
F25D23/02 301F
(21)【出願番号】P 2020062780
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博則
(72)【発明者】
【氏名】原田 聴
(72)【発明者】
【氏名】関 和芳
(72)【発明者】
【氏名】平木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高岡 光幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴芳
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-121798(JP,U)
【文献】実開昭54-037099(JP,U)
【文献】特開2016-138719(JP,A)
【文献】特開平10-148456(JP,A)
【文献】特開2018-194177(JP,A)
【文献】特開2017-038811(JP,A)
【文献】実開平01-102675(JP,U)
【文献】特開2000-314583(JP,A)
【文献】実開昭57-050687(JP,U)
【文献】実開昭61-071890(JP,U)
【文献】特開2016-156517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 3/04
F25D 17/06
F25D 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を有し、前記貯蔵室に被冷却物を出し入れするための開口部が設けられた断熱箱体と、
前記開口部を開閉可能にスライド方向に移動するように配されるスライド扉と、
前記貯蔵室を冷却するための冷却装置と、を備え、
前記開口部を構成する前記断熱箱体の開口縁部は、前記スライド扉の前記スライド方向における端部を挿入可能な溝部を有し、
前記溝部を構成し前記スライド方向に沿う溝壁のうち、前記スライド扉の厚さ方向について前記貯蔵室から最も離れた位置にある第1溝壁は、前記貯蔵室側に突出する突出部を有し、
前記溝部を構成し前記スライド扉の厚さ方向に沿う底壁には、前記第1溝壁と対向するように延出する中間壁が設けられており、
前記スライド扉の前記端部は、前記スライド扉が前記開口部を全て覆う閉位置にあるとき、前記中間壁が挿入される溝状の受け部を有し、
前記突出部は、その基端部から突出端に向かう傾斜面を有し、
前記スライド扉が前記閉位置にあるとき、
前記中間壁は、これが挿入される前記受け部と接触せず、
前記スライド扉の前記端部は、前記底壁と接触せず、
前記突出部は、前記スライド扉と接触せず、前記突出部の前記突出端と前記スライド扉との間にはクリアランス空間が生じており、
前記突出部に結露が発生すると、前記クリアランス空間に結露水が入り込み前記クリアランス空間が塞がれるショーケース。
【請求項2】
前記第1溝壁は、第1中空部を有する
請求項1に記載のショーケース。
【請求項3】
前記開口縁部は正面視で矩形状をなしており、
前記開口縁部のうち、前記スライド方向に沿う2つの辺部には、前記スライド扉を前記スライド方向に移動させるためのレールがそれぞれ設けられており、
前記レールのうち上側に位置する上レールは、レール中空部を有する請求項1
または請求項2に記載のショーケース。
【請求項4】
前記上レールは、前記スライド扉が挿入される挿入部を有し、前記挿入部を構成する複数の上レール壁のうち、最も前記貯蔵室に近い前記上レール壁には前記挿入部と前記貯蔵室とを連通するレール連通口が設けられている
請求項3に記載のショーケース。
【請求項5】
前記上レールは、前記スライド扉が挿入される挿入部を有し、
前記挿入部には、柔軟性を有する緩衝材が前記スライド扉との間を埋めるように配されている
請求項3または請求項4に記載のショーケース。
【請求項6】
前記開口縁部のうち、前記スライド方向と交わる2つの辺部には、サイドフレームがそれぞれ設けられており、
前記各サイドフレームの下部には、前記レールのうち下側に位置する下レールと隙間が生じるように切欠部が設けられている
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のショーケース。
【請求項7】
前記スライド扉は、扉本体と、前記扉本体を取り囲む扉枠体と、を有し、
前記スライド扉の前記端部は、硬質樹脂製の扉枠体の一部からなり、
前記溝部は、前記開口縁部に取り付けられた硬質樹脂製の枠状部材の一部により構成されている請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載のショーケース。
【請求項8】
前記スライド扉は、水平方向に交わるように上下方向に立設されており、
前記貯蔵室に冷気を循環供給するための庫内ファンを備え、
前記庫内ファンは、前記貯蔵室内の冷気が前記スライド扉に沿って下降するように前記貯蔵室内に設けられている
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のショーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や飲料品等を外部から視認可能な状態で温蔵、冷蔵または冷凍保管するショーケースが知られており、その一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のショーケースは、ショーケース本体の開口部にスライド開閉自在な一対のスライド扉が配置され、開口部の左右には側枠が配置されている。また、各スライド扉の戸先端と各側枠との間には、シール構造が設けられている。シール構造は、スライド扉の戸先端に設けられた嵌合凹部と、側枠に設けられた嵌合凸部と、を含んでいる。スライド扉を閉じた状態において、嵌合凹部と嵌合凸部が互いに凹凸嵌合しつつ、嵌合凹部の内部に配置されたパッキンに対して嵌合凸部が密着することで、スライド扉の戸先端と側枠の隙間を封止している。これにより、スライド扉を閉じた状態において、当該隙間からショーケース本体内の冷気が外部に漏れることが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシール構造によれば、スライド扉が閉じられる度に、側枠の嵌合凸部と、スライド扉の嵌合凹部のパッキンとが密着する。このため、繰り返しの使用(扉開閉)によりパッキンが摩耗すると、封止性が低下してしまうのが実情である。また、封止性の低下を防ぐために、劣化したパッキンを交換する手間が生じているのが実情である。
【0005】
本願明細書に記載の技術は上記のような実情に基づいて完成されたものであって、スライド扉の構成部品の使用による劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願明細書に記載の技術に関わるショーケースは、貯蔵室を有し、前記貯蔵室に被冷却物を出し入れするための開口部が設けられた断熱箱体と、前記開口部を開閉可能にスライド方向に移動するように配されるスライド扉と、を備え、前記開口部を構成する前記断熱箱体の開口縁部は、前記スライド扉の前記スライド方向における端部を挿入可能な溝部を有し、前記溝部を構成し前記スライド方向に沿う溝壁のうち、前記スライド扉の厚さ方向について前記貯蔵室から最も離れた位置にある第1溝壁は、前記貯蔵室側に突出する突出部を有し、前記突出部は、前記スライド扉が前記開口部を全て覆う閉位置にあるとき、前記スライド扉との間にクリアランス空間を生じるように突出している。
【0007】
このようにすれば、スライド扉が閉位置にあるとき、スライド扉の端部が開口縁部の溝部に挿入されると、スライド扉と開口縁部との間の冷気の流通経路の幅を狭めることができる。また、溝部を構成する第1溝壁に貯蔵室側に突出する突出部を設けることで、冷気の流通経路に狭窄部(クリアランス空間)が形成されるため、冷気の流通を減少させて、断熱性を確保しやくなる。一方で、スライド扉が閉位置にあるとき、突出部とスライド扉との間にはクリアランス空間が生じているため、スライド扉が閉じられる度に、開口縁部とスライド扉とが接触する事態を避けやすくなる。その結果、使用を重ねてもスライド扉の構成部品が接触により劣化する事態を抑制できるようになる。
【0008】
また、前記溝部を構成し前記スライド扉の厚さ方向に沿う底壁には、前記第1溝壁と対向するように延出する中間壁が設けられており、前記スライド扉の前記端部は、前記スライド扉が前記閉位置にあるとき、前記中間壁が挿入される溝状の受け部を有する。このようにすれば、スライド扉が閉位置にあるとき、開口縁部の溝部に設けられた中間壁が、スライド扉の受け部に挿入されると、スライド扉と開口縁部との間の冷気の流通経路を蛇行形状にすることができる。これにより、冷気の流路抵抗が大きくなり、外部に漏れる冷気の流通量を削減できるため、断熱性を向上できる。
【0009】
また、前記突出部は、断面山状をなしている。このようにすれば、突出部の断面山状の斜面により、スライド扉と突出部との間には、断面くさび状の空間が形成されるようになる。突出部に結露が発生した場合には、断面くさび状の空間に結露水が貯留しやすくなり、貯留した結露水が毛細血管現象によって突出部とスライド扉との間のクリアランス空間に入り込むと、クリアランス空間が結露水で塞がれるようになる。その結果、外部に漏れる冷気の流通を遮断できるため、断熱性を向上できる。
【0010】
また、前記第1溝壁は、第1中空部を有する。このようにすれば、第1中空部により断熱性を高めることができ、開口縁部における結露の発生を抑制しやすくなる。
【0011】
また、前記受け部内には、中空筒状をなす弾性部材が前記受け部の延在方向に沿って配されており、前記スライド扉が前記閉位置にあるとき、前記中間壁は前記弾性部材に当接している。このようにすれば、スライド扉が閉位置にあるとき、中間壁が弾性部材に当接することで、貯蔵室内から外部への冷気の流通を遮断できるようになる。
【0012】
また、前記スライド扉は、水平方向に交わるように上下方向に立設されており、前記弾性部材は、前記受け部内に上下方向に延在するように配されている。このようにすれば、結露水が中空筒状の弾性部材内を滴下して排水可能となる。
【0013】
また、前記開口縁部は正面視で矩形状をなしており、前記開口縁部のうち、前記スライド方向に沿う2つの辺部には、前記スライド扉を前記スライド方向に移動させるためのレールがそれぞれ設けられており、前記レールのうち上側に位置する上レールは、レール中空部を有する。このようにすれば、レール中空部により断熱性を高めることができるため、上レールにおける結露の発生を抑制しやすくなる。
【0014】
また、前記上レールは、前記スライド扉が挿入される挿入部を有し、前記挿入部を構成する複数の上レール壁のうち、最も前記貯蔵室に近い前記上レール壁には、前記挿入部と前記貯蔵室とを連通するレール連通口が設けられている。このようにすれば、上レールに発生する結露を効果的に抑制できるようになる。
【0015】
また、前記上レールは、前記スライド扉が挿入される挿入部を有し、前記挿入部には、柔軟性を有する緩衝材が前記スライド扉との間を埋めるように配されている。このようにすれば、スライド扉が閉位置にあるとき、開口縁部の溝部及びスライド扉の受け部と、挿入部と、が連通しないようになるため、上レールに発生する結露を抑制しやすくなる。
【0016】
また、前記開口縁部のうち、前記スライド方向と交わる2つの辺部には、サイドフレームがそれぞれ設けられており、前記各サイドフレームの下部には、前記レールのうち下側に位置する下レールと隙間が生じるように切欠部が設けられている。このようにすれば、スライド扉の表面に結露が発生した場合に、滴下する結露水を当該隙間に導くことができるようになり、結露水がショーケースの設置床面に滴下して設置床面を濡らしてしまう事態を抑制できるようになる。
【0017】
また、前記スライド扉は、扉本体と、前記扉本体を取り囲む扉枠体と、を有し、前記スライド扉の前記端部は、硬質樹脂製の扉枠体の一部からなり、前記溝部は、前記開口縁部に取り付けられた硬質樹脂製の枠状部材の一部により構成されている。このようにすれば、前記端部及び前記溝部を軟質樹脂製の部材により構成する場合に比べて、劣化を抑制しやすくなる。
【0018】
また、前記貯蔵室に冷気を循環供給するための庫内ファンを備え、前記庫内ファンは、前記貯蔵室内の冷気が前記スライド扉に沿って下降するように前記貯蔵室内に設けられている。このようにすれば、貯蔵室内を循環する冷気の流れは、貯蔵室側からクリアランス空間を通って外部へ流出する冷気の流れと逆方向となり、クリアランス空間からの冷気の流出量を削減できるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本願明細書に記載の技術によれば、スライド扉の構成部品の使用による劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図8】上レールのレール連通口を貯蔵室から視た拡大平面図
【
図16】第2実施形態に係る右サイドフレーム付近を拡大して示す断面図
【
図17】第3実施形態に係る右サイドフレーム付近を拡大して示す断面図
【
図18】第3実施形態に係る上レール付近の結露水の流れを示す斜視図
【
図19】第4実施形態に係る冷気の循環方向を示す断面図
【
図20】第5実施形態に係る右サイドフレーム付近を拡大して示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るショーケース10として、縦型の冷蔵貯蔵庫について
図1から
図15を参照して説明する。各図の一部には、X軸、Y軸、及びZ軸を示しており、各軸方向が各図で共通した方向となるように描かれている。また、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向とする。
【0022】
ショーケース10は、
図1に示すように、全体として縦長の箱状をなし、食料品や飲料品等の被冷却物を冷蔵状態で収容しつつ陳列する。ショーケース10は、断熱箱体11と、一対のスライド扉14A,14Bと、機械室15と、を備える。断熱箱体11は、外部に対して断熱性を有しており、正面視で矩形状をなす開口部30が前面側に設けられている。一対のスライド扉14A,14Bは、開口部30を開閉可能に断熱箱体11の前面に配されており、所定のスライド方向(左右方向)に摺動する。
【0023】
断熱箱体11は、ステンレス等の熱良導性金属板が箱状に組み立てられた外箱と内箱との間に、発泡ウレタン等の発泡樹脂からなる断熱材が発泡充填された構造をなしている。断熱箱体11の内部空間は、
図3及び
図4に示すように、その大部分が被冷却物を貯蔵するための貯蔵室13となっている。貯蔵室13には、複数の棚柱に差し渡される形で支持された棚13Aが、上下方向に複数個並ぶように設けられている。
【0024】
機械室15は、
図1、
図3及び
図4に示すように、断熱箱体11の下方側に配されており、その前側はフロントパネル15Aで覆われている。機械室15には、貯蔵室13を冷却するための冷却装置18(冷凍装置)の一部、ショーケース10の各部に電力を供給するための電源等が収容されている。機械室15の下面の四隅には、設置床面に載置される複数の脚部12が設けられている。
【0025】
冷却装置18は、
図3及び
図4に示すように、圧縮機16と、凝縮器17と、凝縮器ファン19と、冷却器21と、を備える。圧縮機16、凝縮器17、及び凝縮器ファン19は、機械室15に収容されている。冷却器21は、断熱箱体11の内部における天井部分(後述する冷却器室20)に配されている。圧縮機16、凝縮器17、及び冷却器21は、上下に延びる冷媒管28により連結されており、冷媒を所定の循環方向に循環させて、既知の冷凍サイクルを形成している。
【0026】
断熱箱体11の内部における天井部分には、
図3及び
図4に示すように、庫内ドレンパンを兼ねたエアダクト23が張設されている。エアダクト23の上側には、冷却器室20が形成されている。エアダクト23の前側(スライド扉14A,14B側)には空気の吸込口25が、後側には吹出口26が設けられている。冷却器室20には、冷却器21が収容されると共に、吸込口25に対向する形で庫内ファン24が配されている。
【0027】
冷却運転は、圧縮機16、凝縮器ファン19及び庫内ファン24が駆動されることで行われる。冷却運転において、貯蔵室13内の空気は吸込口25から冷却器室20内に吸い込まれ、冷却器21を通過する過程で熱交換されて冷気となる。冷気は、
図3の矢線W1で示すように、吹出口26から貯蔵室13内に吹き出されて、断熱箱体11の後側の壁面11Aに沿って底側の壁面11Bまで下降し、底側の壁面11Bに沿って後側から前側に流れる。そして、底側の壁面11Bの前側からスライド扉14A,14Bに沿って上昇して、吸込口25に循環する。このようにして貯蔵室13が冷却される。
【0028】
また適宜行われる除霜運転の際に、冷却器21等からの除霜水は、エアダクト23で受けられたのち、ドレンホース27(
図4)を通って蒸発皿(庫外ドレンパン)99に貯留される。
【0029】
スライド扉14A,14Bは、
図2及び
図4に示すように、前後方向にずれる形で配されている。スライド扉14A,14Bが開口部30を全て覆う閉位置(以下、単に閉位置と記す)にあるとき、左右方向の左側かつ前後方向の後側に位置するスライド扉をスライド扉14A、左右方向の右側かつ前後方向の前側に位置するスライド扉をスライド扉14Bとする。スライド扉14A,14Bの構成は左右対称で基本的に同じであるため、以下においては、右側のスライド扉14Bについて主に説明する。
【0030】
スライド扉14Bは、
図5に示すように、扉本体80Bと、扉枠体81Bと、を備える。扉本体80Bは、ガラス、アクリル等の透明板からなり、正面視で矩形状をなしている。使用者は、透明な扉本体80Bから貯蔵室13内の状態を視認可能となっている。扉枠体81Bは、上下方向に延びる一対の扉側枠(扉右枠84B、扉左枠85B)と、左右方向に延びる一対の扉横枠(扉上枠86B、扉下枠87B)と、を有し、これらが枠状となるように複数のネジ89B(
図6A等)により組み立てられている。扉枠体81Bは、摩耗しにくい硬質樹脂(例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、フッ素樹脂(PTFE)、ポリエチレン(PE)等の合成樹脂)製とされる。また、扉下枠87Bには2つの戸車82Bが取り付けられている(
図10)。
【0031】
スライド扉14Bの扉右枠84Bは、
図6Aに示すように、扉本体80Bの右側部において上下方向に延在する扉枠側部90Bと、2つの扉枠壁(第1扉枠壁91B、第2扉枠壁92B)と、を有しており、扉枠側部90Bと扉枠壁91B,92Bによって溝状の受け部93Bが形成されている。第1扉枠壁91B、第2扉枠壁92Bは、扉枠側部90Bの前後方向の前端部、後端部のそれぞれから右方に延びている。受け部93Bには、スライド扉14Bが閉位置にあるとき、後述する右サイドフレーム61の中間壁65が挿入される。また、扉右枠84Bは、前面に取手部83Bを有し、利用者は取手部83Bに手を掛けてスライド扉14Bをスライド移動させる。
【0032】
スライド扉14Aの構成は、スライド扉14Bの構成と左右対称であり、スライド扉14Aの扉左枠85A、扉右枠84Aの構成は、上記したスライド扉14Bの扉右枠84B、扉左枠85Bの構成とそれぞれ同様である。
【0033】
次に、断熱箱体11の開口部30を取り囲む開口縁部について説明する。断熱箱体11の開口縁部は、
図1に示すように、スライド扉14A,14Bをスライド可能に保持するためのガイドフレーム40(枠状部材の一例)が取り付けられている。ガイドフレーム40は、開口縁部の上部、下部、右部、左部にそれぞれ配される上レール41と、下レール51と、右サイドフレーム61と、左サイドフレーム71と、を有し、これらが全体として矩形の枠状をなしている。上レール41及び下レール51は、スライド方向(左右方向)に沿って設けられており、スライド扉14A,14Bをスライド方向に移動可能に保持している。右サイドフレーム61及び左サイドフレーム71は、上下方向に延在している。上レール41、下レール51、右サイドフレーム61、及び左サイドフレーム71は、摩耗しにくい硬質樹脂(例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、フッ素樹脂(PTFE)、ポリエチレン(PE)等の合成樹脂)製とされる。
【0034】
上レール41は、
図7に示すように、スライド扉14A,14Bの上部がそれぞれ挿入可能な溝状の挿入部41A,41Bを有する。スライド扉14Aの上部は、挿入部41Aに挿入され、スライド扉14Bの上部は、挿入部41Bに挿入され、これらの挿入部41A,41Bに沿って移動する。上レール41は、断熱箱体11の開口縁部の上部において左右方向に延在するレール天板部42と、3つの上レール壁(第1上レール壁44、第2上レール壁46、第3上レール壁48)と、を備えており、レール天板部42と上レール壁44,46,48によって2つの挿入部41A,41Bが形成されている。上レール壁44,46,48は、レール天板部42から下方に延びており、前後方向(Y軸方向、スライド扉14A,14Bの厚さ方向)について庫外側から貯蔵室13側に向かって、第1上レール壁44、第2上レール壁46、第3上レール壁48の順に並んで設けられている。
【0035】
上レール壁44,46,48のうち最も庫外側の(貯蔵室13から最も離れている)第1上レール壁44は、
図7に示すように、中空状(袋状)をなすレール中空部44Aを有する。貯蔵室13が冷却されると、上レール41の温度が低下し、上レール41において外部(庫外)の暖かい空気が接触する部分には結露が発生しやすくなる。そこで、上レール壁44にレール中空部44Aを形成することで、上レール41の断熱性を高め、結露の発生を抑制できるようになる。
【0036】
また、第3上レール壁48には、
図7及び
図8に示すように、挿入部41Aと貯蔵室13とを連通する複数のレール連通口49が設けられている。複数のレール連通口49は、第3上レール壁48のうち、スライド扉14Aが閉位置にあるときに少なくともスライド扉14Aと対向する部分に並んで形成されている(
図1)。スライド扉14Aは庫内側(後側)に配されるスライド扉であり、スライド扉14Aと対向する第3上レール壁48には、結露が生じやすい。また、上レール41内に発生する結露は、スライド扉14A,14Bの開閉に伴う振動により庫内に滴下すると、使用者に不快感を与える原因となる。そこで、第3上レール壁48の結露が発生しやすい部分にレール連通口49を設けることで、挿入部41Aと貯蔵室13とが連通して、結露を効果的に抑制できるようになる。一方で、スライド扉14Bが挿入される挿入部41Bを形成する第1上レール壁44及び第2上レール壁46には、レール連通口49は設けられていない。このようにすれば、上レール41内に発生する結露を効果的に抑制しつつ、第1上レール壁44及び第2上レール壁46においては、レール連通口49を形成する加工作業を省くことができる。
【0037】
下レール51は、
図9及び
図10に示すように、スライド扉14A,14Bの下部が挿入される溝状の挿入部51Aを有する。下レール51は、断熱箱体11の開口縁部の下部において左右方向に延在するレール底板部52と、2つの下レール壁(第1下レール壁54、第2下レール壁56)と、を備える。下レール壁54,56は、レール底板部52から上方に延びており、前後方向について庫外側から貯蔵室13側に向かって第1下レール壁54、第2下レール壁56の順に並んで設けられている。また、挿入部51Aには、スライド扉14A,14Bの各戸車82A,82Bが載置される載置壁55,57がレール底板部52から上方に延びている。載置壁55、57の高さは、下レール壁54、56に比して小さく形成されている。戸車82A,82Bが載置壁55、57に載置されつつ回転することで、スライド扉14A,14Bがスライド方向に円滑に移動する。
【0038】
次に、右サイドフレーム61及び左サイドフレーム71について説明する。両者の構造は基本的に同じであるため、以下では、主に右サイドフレーム61について説明する。右サイドフレーム61の上端部、下端部にはそれぞれ、
図11及び
図12に示すように、柔軟性を有するゴム製の緩衝材(上緩衝材32,下緩衝材33)が設けられている。スライド扉14Bが閉位置にあるとき、その扉右枠84Bが緩衝材32,33に当接する。換言すると、スライド扉14Bが右方にスライド移動されて扉右枠84Bが緩衝材32,33に当接すると、スライド扉14Bが閉位置となる。柔軟性を有する緩衝材32,33を設けることで、扉右枠84Bが、右サイドフレーム61に接触して破損してしまう事態が抑制されている。
【0039】
右サイドフレーム61は、
図6Aに示すように、全体として溝状をなす溝部61Aを有し、溝部61Aに対して、スライド扉14Bの扉右枠84Bの右端部84B1が挿入可能となっている。右サイドフレーム61は、上下方向に延在するサイドフレーム側部62と、3つの溝壁(第1溝壁64、第2溝壁66、第3溝壁68)と、中間壁65,67と、を備える。溝壁64、66、68は、サイドフレーム側部62から左方に延びており、前後方向について庫外側から貯蔵室13側に向かって、第1溝壁64、第2溝壁66、第3溝壁68の順に並んで設けられている。サイドフレーム側部62、第1溝壁64、及び第2溝壁66により溝部61Aが構成されており、サイドフレーム側部62の一部が溝部61Aの底壁となっている。中間壁65は、第1溝壁64と第2溝壁66との間に、サイドフレーム側部62から第1溝壁64及び第2溝壁66と対向するように延出している。中間壁65の延出長は、第1溝壁64と第2溝壁66に比して小さく形成されている。
【0040】
第1溝壁64は、
図6A及び
図6Bに示すように、貯蔵室13側に突出する断面山状の突出部64Aを有する。突出部64Aは、スライド扉14Bが閉位置にあるとき、スライド扉14Bの第1扉枠壁91Bとの間にクリアランス空間(隙間)S1を生じるように第1溝壁64から突出している。クリアランス空間Sの前後方向の寸法は例えば0.7mm程度と微小とされる。
【0041】
上記した構成によれば、
図6A及び
図6Bに示すように、スライド扉14Bが閉位置にある状態において、スライド扉14Bの扉右枠84Bの右端部84B1が、右サイドフレーム61の溝部61Aに挿入されると、貯蔵室13側から外部への冷気の流通経路は、
図6Aの矢線W3で示すように蛇行する形となり、流通経路の幅は狭められるようになると共に、流路抵抗が大きくなる。また、溝部61Aを構成する第1溝壁64に突出部64Aを設けることで、冷気の流通経路W3に狭窄部(クリアランス空間S1)が形成されるため、冷気の流通を減少させて、断熱性を確保しやくなる。一方で、スライド扉14Bが閉位置に移動する際、右サイドフレーム61とスライド扉14B(扉右枠84Bの第1扉枠壁91B)との間にはクリアランス空間S1が介在するため、両者が接触する事態を避けやすくなる。その結果、使用を重ねてもスライド扉14Bの構成部品(扉右枠84B)が接触により劣化(摩耗)する事態を抑制できるようになる。さらに、扉右枠84B及び右サイドフレーム61はいずれも硬質樹脂製であるため、万が一両者が接触した場合であっても、軟質樹脂製に比して、摩耗しにくく、劣化しにくいものとなっている。
【0042】
また、突出部64Aは、
図6Bに示すように、断面山状をなしており、スライド扉14Bが閉位置にあるとき、スライド扉14Bの第1扉枠壁91Bと突出部64Aの山状の斜面との間には、断面くさび状の空間S2が突出部64Aの左右両側に形成されている。突出部64Aに結露が発生した場合には、当該空間S2に結露水が貯留されやすいものとなる。そして、貯留した結露水は毛細血管現象によってクリアランス空間S1に入り込むようになる。これにより、クリアランス空間S1が結露水で塞がれると、外部に漏れる冷気の流通が遮断され、断熱性が向上される。
【0043】
ところで、貯蔵室13側から外部への流通経路W3に入り込んだ冷気の一部は、上下方向に延在する右サイドフレーム61の溝部61A及び扉右枠84Bの受け部93Bに沿って上昇し、上レール41に結露を生じさせる可能性がある。そこで、本実施形態では、
図11及び
図12に示すように、右サイドフレーム61の上端部に設けられた上緩衝材32を、スライド扉14Bが閉位置にあるとき、少なくとも上レール41とスライド扉14Bとの間に生じる隙間を塞ぐような形状に形成している。上緩衝材32は、
図13に示すように、上レール41の挿入部41A,41Bにそれぞれ埋設される第1埋設部32Aと、第2埋設部32Bと、有する。第2埋設部32Bは、上レール41の挿入部41Bとスライド扉14Bとの間を埋めるような形状をなしている。上緩衝材32により、溝部61A及び受け部93Bと、挿入部41A,41Bと、が連通しないようになるため、上レール41に発生する結露を抑制しやすくなる。
【0044】
また、右サイドフレーム61(具体的には第1溝壁64)の下部には、
図14及び
図15に示すように、その前面に切欠部98が形成されている。これにより、右サイドフレーム61の第1溝壁64と、下レール51(具体的には第1下レール壁54)との間には隙間Gが生じようになる。隙間Gの上下方向の寸法は2mmから3mm程度とされる。切欠部98を設けることで、スライド扉14Bの前面に結露が発生した場合に、滴下する結露水を隙間Gに導くことができるようになり、結露水がショーケース10の設置床面に滴下して設置床面を濡らしてしまう事態を抑制できるようになる。切欠部98から下レール51に導かれた結露水は、下レール51に接続されたドレンホース97(
図4)を通って庫外ドレンパン99に貯留される。
【0045】
仮に切欠部98を形成せずに、第1溝壁64の下部前面を第1下レール壁54の上部で覆う構成とすると、第1溝壁64の下部において第1下レール壁54の上部で覆われた部分は肉厚となるため、肉厚に起因した段差が生じる。段差には結露水が貯留可能となるため、このような構成によっても結露水の滴下は抑制可能である。しかしながら、結露水の貯留に十分な段差を形成すると、製品外径が大きくなったり、外観の意匠性が劣ったりしてしまう。これに対して、本実施形態の切欠部98によれば、製品外径が大きくならずにシンプルな外観を維持したまま、結露水の滴下を抑制できる。
【0046】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るショーケース110は、右サイドフレーム161及び左サイドフレーム171の構造が第1実施形態と異なる。右サイドフレーム161及び左サイドフレーム171の構造は基本的に同じであるため、以下では、主に右サイドフレーム161について説明する。なお、上記した第1実施形態と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0047】
右サイドフレーム161の第1溝壁164は、
図16に示すように、中空状(袋状)の第1中空部164Bを有する。貯蔵室13が冷却されると、右サイドフレーム161の温度も低下するため、右サイドフレーム161において外部(庫外)の暖かい空気が接触する部分には結露が発生しやすくなる。そこで、庫外に面する第1溝壁164に第1中空部164Bを形成することで、右サイドフレーム161の断熱性を高め、結露の発生を抑制できるようになる。
【0048】
<第3実施形態>
第3実施形態に係るショーケース210は、スライド扉114A,114Bの受け部193A,193Bに中空筒状の柔軟性を有するチューブ95(弾性部材の一例)が配されている点が第1実施形態と異なる。スライド扉114A,114Bの構造は基本的に同じであるため、以下では、主にスライド扉114Bについて説明する。なお、上記した第1実施形態と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0049】
スライド扉114Bの扉右枠184Bの溝状の受け部193Bには、
図17及び
図18に示すように、チューブ95が上下方向に延在するように配されている。スライド扉114Bが閉位置にあるとき、右サイドフレーム261の中間壁265の先端がチューブ95に当接して、チューブ95が中間壁265の先端を包むように変形する。これにより、貯蔵室13側から外部への冷気の流通が遮断されるようになり、断熱性を向上できる。なお、扉枠壁191B,192B及び中間壁265の突出端の形状は、チューブ95との接触面積が大きくなるように屈曲又は湾曲するように形成されている。
【0050】
また、上レール41に結露が発生した場合には、結露水が
図18の一点鎖線の矢線で示すように、チューブ95の内部空洞に流入して下降して排水されるようになる。チューブ95を結露水の排水経路として利用することで、上レール41内に結露が発生した場合に、結露水が滴下してしまう事態を抑制しやすくなる。なお、
図18は、結露水の流れが明示されるように、部材の一部を切除した状態で図示している。
【0051】
<第4実施形態>
第4実施形態に係るショーケース310は、貯蔵室13内の冷気の循環方向が第1実施形態から第3実施形態と異なる。上記した第1実施形態から第3実施形態と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0052】
エアダクト123において、
図19に示すように、空気の吸込口125は後側に形成され、吹出口126は前側に形成されている。また、庫内ファン124は、吹出口126から吹き出した冷気がスライド扉14A,14Bの内面(貯蔵室13側の面)に沿って下降するように配置及び回転方向が調整されているものとされる。
【0053】
冷気は、
図19の矢線W5で示すように、吹出口126から貯蔵室13内に吹き出されてスライド扉14A,14Bの内面に沿って下降し、断熱箱体11の底側の壁面11Bに沿って前側から後側に流れる。そして、断熱箱体11の後側の壁面11Aに沿って上昇して、吸込口125に循環する。
【0054】
循環方向W5に沿って流れる冷気は、
図19に示すように、断熱箱体11の底側の壁面11Bに沿って前側から後側に流れ、貯蔵室13側からクリアランス空間S1を通って外部へ流出する流通経路W3における冷気の流れ(
図6A)とは、貯蔵室13の底部において逆方向となる。従って、冷気の流通経路W3への流入量を削減しやすくなる。その結果、クリアランス空間S1を通る冷気を減少させて、断熱性を向上できるようになる。
【0055】
<第5実施形態(関連技術)>
第5実施形態に係るショーケース410は、スライド扉214A,214Bの構造、及び右サイドフレーム361、左サイドフレーム371の構造が第3実施形態と異なる。スライド扉214A,214Bの構造は基本的に同じであるため、以下では、主にスライド扉214Bについて説明する。また、右サイドフレーム361及び左サイドフレーム371の構造は基本的に同じであるため、以下では、主に右サイドフレーム361について説明する。上記した第3実施形態と同様の構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0056】
スライド扉214Bの扉右枠284Bには、
図20に示すように、扉枠側部90Bの前後方向の中間部から右方に延びる突起96Bが形成されている。また、右サイドフレーム361には、第3実施形態のような中間壁は形成されておらず、その溝部61Aにはチューブ95が上下方向に延在するように配されている。
【0057】
このようにすることで、スライド扉214Bが閉位置にあるとき、扉右枠284Bの突起96Bの突出端がチューブ95に当接して、チューブ95が突起96Bの先端を包むように変形する。これにより、貯蔵室13側から外部への冷気の流通が遮断されるようになり、断熱性を確保できるようになる。
【0058】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0059】
(1)上レール41、下レール51、右サイドフレーム61,161、及び左サイドフレーム71,171、並びに扉枠体81A,81Bは、全体が硬質樹脂製としたが、外表面側が硬質樹脂製であれば、内部は硬質樹脂以外の金属製等であっても構わない。
【0060】
(2)スライド扉14A,14B,114A,114Bは、1枚のみ、又は引き違い形式の3枚以上からなる構成であっても構わない。
【0061】
(3)庫内ファン24,124、冷却器21の配置は図示に限られず、冷気が所望の方向に循環すれば他の配置であっても構わない。
【0062】
(4)本明細書に記載の技術は、縦型冷蔵庫以外のショーケース、庫内が0℃未満に保持される冷凍ショーケース、庫内が高温に保持される温蔵ショーケースであっても構わない。
【符号の説明】
【0063】
10,110,210,310:ショーケース、11:断熱箱体、13:貯蔵室、14A,14B,114A,114B:スライド扉、24,124:庫内ファン、32:上緩衝材(緩衝材)、40:ガイドフレーム(枠状部材)、41:上レール(レール)、41A:レール中空部、42:レール天板部、44,46,48:上レール壁、49:レール連通口、51:下レール(レール)、61,161,261:右サイドフレーム(サイドフレーム)、61A:溝部、62:底壁、64,164:第1溝壁、64A,164A:突出部、65,265:中間壁、71,171,271:左サイドフレーム(サイドフレーム)、80B:扉本体、81B:扉枠体、84B,184B,284B:扉右枠(扉側枠)、93B,193B:受け部、95:チューブ(弾性部材)、98:切欠部、164B:第1中空部、S1:クリアランス空間