(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】軸配置、駆動ユニットおよび作業装置
(51)【国際特許分類】
B62M 6/55 20100101AFI20240619BHJP
F16C 19/16 20060101ALI20240619BHJP
F16C 19/54 20060101ALI20240619BHJP
F16C 35/063 20060101ALI20240619BHJP
F16C 25/08 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B62M6/55
F16C19/16
F16C19/54
F16C35/063
F16C25/08 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020070195
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10 2019 205 246.0
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ローランド・デリング
(72)【発明者】
【氏名】ジークムント・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ホルスト
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-012953(JP,A)
【文献】特開平09-095289(JP,A)
【文献】特開2014-196036(JP,A)
【文献】特表2015-514629(JP,A)
【文献】特開2006-307899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 1/00 ー 11/18
F16C 19/16
F16C 19/54
F16C 35/063
F16C 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- モータ(3)と、
- 伝動装置(20)と、
- その内部(40i、50i)で前記モータ(3)および/または前記伝動装置(20)が少なくとも部分的に収容され、および/または支承されているハウジング(40、50)と、
を備え、
前記伝動装置(20)および/または前記モータ(3)が、軸配置(30)を備えた軸(32)を有する、
モータ動力で駆動可能な作業装置(1)のための駆動ユニット(80)において、
前記軸配置(30)は、
- 軸(32)と、
- 前記軸(32)をハウジング(40、50)上またはハウジング内に支承および位置合わせするために構成された、少なくとも第1のベアリング(33)および第2のベアリング(34)と、
- 予圧および減衰ベアリングとして、前記軸(32)を軸方向に予圧し、機械的振動を減衰させるために設定されたさらなる第3のベアリング(36)とを備え、
前記第3のベアリング(36)は、前記軸(32)を予圧するために支持リング(38)およびローラーベアリング(37)を有し、
前記第3のベアリング(36)は前記軸(32)の機械的振動を減衰させるための減衰要素(39)を有し、前記減衰要素(39)は、前記軸(32)の一端(32-1)を間接的または直接的に軸方向に囲む、弾性および/または減衰材料を用いた、または、弾性および/または減衰材料からなる弾性要素である、
駆動ユニット(80)。
【請求項2】
前記作業装置(1)は、追加的に筋力で駆動可能である、作業装置(1)、車両(1’)、自転車、電動自転車、イーバイク、ペデレックおよび/またはエスペデレックである、請求項1に記載の駆動ユニット(80)。
【請求項3】
前記第3のベアリング(36)が
、前記軸(32)に対して端部に位置する固定ベアリングとして、および/またはハウジング(40、50)上またはハウジング内に取り付けるために構成されている、請求項1
または2に記載の
駆動ユニット(80)。
【請求項4】
前記第1のベアリング(33)が、前記軸(32)に対して端部に位置する浮動ベアリングとして構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の
駆動ユニット(80)。
【請求項5】
前記第2のベアリング(34)が、前記軸(32)に対して非端部の中間に位置する固定ベアリングとして構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の
駆動ユニット(80)。
【請求項6】
請求項1
~5のいずれか一項にかかる駆動ユニット(80)と、前記駆動ユニット(80)を制御するために設定された制御ユニット(10)とを備えた
モータ動力で駆動可能な作業装置(1)。
【請求項7】
前記作業装置(1)は、追加的に
筋力で駆動可能であり、作業装置(1)、車両(1’)、自転車、電動自転車、イーバイク、ペデレックおよび/またはエスペデレック
である、請求項6に記載のモータ動力で駆動可能な作業装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸配置、駆動ユニットおよび作業装置に関する。本発明は、特に、作業装置、車両、自転車、電動自転車、イーバイク、ペデレックおよび/またはエスペデレックのための軸配置と、モータ動力で、特に追加的に筋力で駆動可能な作業装置、車両、自転車、電動自転車、イーバイク、ペデレックおよび/またはエスペデレックのための駆動ユニットと、車両、自転車、電動自転車、イーバイク、ペデレックおよび/またはエスペデレック自体とに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの作業装置は、モータを含む駆動ユニットを使用して駆動される。ここで、モータまたはその部品および/または基礎となる伝動装置のコンポーネントは、対応する作動部品を外部に対して保護し、それらの保持および支承を保証し、場合によっては閉じられた潤滑室を画定するために、少なくとも部分的にハウジング上に、またはハウジング内にある。対応する軸の従来の配置では、一方では、対応して設けられたベアリングによって、基礎となる軸の支承および位置合わせを高精度で保証する必要があり、他方では、従来では正確な機能のためにそれぞれの軸を軸方向に予圧する必要があるという問題がある。さらに、軸の動きから外部への機械的振動の伝達は可能な限り回避する必要がある。これらの付帯条件の全ては、従来満たすことが難しく、少なくとも構造の複雑性が高くなる。
【発明の概要】
【0003】
これに対し、請求項1の特徴を備えた本発明にかかる軸配置は、一方で、基礎となる軸の支承および位置合わせを、負荷がかかった状態でも高精度で保証でき、他方で、正しい機能に必要な予圧力が、誘発振動を抑制するためにおよび/または抑制する際に生成され加えられるという利点を有する。これは、請求項1の特徴を有する本発明により、軸と、軸をハウジング上またはハウジング内に支承および位置合わせするために構成された、少なくとも第1のベアリングおよび第2のベアリングと、予圧および/または減衰ベアリングとして、軸を軸方向に予圧し、および/または機械的振動に対して特に外側に向かって減衰させるために設定されたさらなる第3のベアリングと、を備えて構成された作業装置、車両、自転車、電動自転車、イーバイク、ペデレックおよび/またはエスペデレックのための軸配置によって達成される。
【0004】
従属請求項は、本発明の好ましい展開形態を示している。
本発明にかかる軸配置の好ましい実施形態によれば、第3のベアリングは、特に軸に対して端部に位置する固定ベアリングとして、および/またはハウジング上またはハウジング内に取り付けるために構成することができる。
【0005】
また、追加的にまたは代替的に、第3のベアリングは軸を予圧するために支持リングおよび/またはローラーベアリングを有することができ、後者は、特にボールベアリングまたは深溝ボールベアリングとして構成されている。本発明にかかる源配置のさらなる好ましい実施例によれば、第3のベアリングは、軸の機械的振動を減衰させるための減衰要素を有する。
【0006】
これは、例えば、特に弾性および/または減衰材料を用いて、好ましくはエラストマーもしくはエラストマー発泡体などを用いて、またはエラストマーもしくはエラストマー発泡体などから、軸の一端を間接的または直接的に軸方向に囲む弾性要素として構成することができる。
【0007】
本発明にかかる軸配置の他の好ましい展開形態では、第1のベアリングは、軸に対して端部に位置する浮動ベアリングとして、および/または第2のベアリングは、軸に対して非端部の、中間に位置する固定ベアリングとして構成されている。
【0008】
本発明にかかる軸配置の別の好ましい展開形態によれば、それぞれの軸は、モータ動力で、特に追加的に筋力で駆動可能な作業装置、車両、自転車、電動自転車、イーバイク、ペデレックおよび/またはエスペデレックの、伝動装置の軸および/または駆動部の軸として、電気駆動部のロータ、伝動装置および/または駆動ユニットのロータ軸として構成されている。
【0009】
本発明の他の態様によれば、モータ動力で、特に追加的に筋力で駆動可能な作業装置、車両、自転車、電動自転車、イーバイク、ペデレックおよび/またはエスペデレック自体のための作業装置の駆動ユニットも提供される。これは、モータと、伝動装置と、その内部でモータおよび/または伝動装置が少なくとも部分的に収容され、および/または支承されているハウジングとを備えて構成され、伝動装置および/またはモータは、本発明によって構成された軸配置を備えた軸を有する。
【0010】
また、他の態様によれば、本発明は、モータ動力で、場合によって追加的に筋力で駆動可能な作業装置、車両、自転車、電動自転車、イーバイク、ペデレックおよび/またはエスペデレックに関する。作業装置は、本発明によって構成された駆動ユニットと、駆動ユニットを制御するために設定された制御ユニットとを備えて構成されている。
【0011】
添付の図面を参照して、本発明の実施形態を詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態が実現される電動自転車としての車両の例の概略図である。
【
図2】本発明にかかる駆動ユニットの実施形態における、本発明にかかる軸配置の実施形態を、概略部分断面図および/または斜視図で示す。
【
図3】本発明にかかる駆動ユニットの実施形態における、本発明にかかる軸配置の実施形態を、概略部分断面図および/または斜視図で示す。
【
図4】本発明にかかる駆動ユニットの実施形態における、本発明にかかる軸配置の実施形態を、概略部分断面図および/または斜視図で示す。
【
図5】本発明にかかる駆動ユニットの実施形態における、本発明にかかる軸配置の実施形態を、概略部分断面図および/または斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例および技術的背景を、
図1から
図5を参照して以下に詳述する。同じおよび同等の、ならびに同じまたは同等作用の要素およびコンポーネントには、同じ参照番号を付す。指定された要素およびコンポーネントの詳細な説明は、出現する全ての場合に再現されているわけではない。
【0014】
示された特徴およびさらなる特性は、任意の形態で互いに分離することができ、本発明の核心を離れることなく、任意に互いに組み合わせることができる。
まず、例えば本発明にかかる作業装置1の好ましい実施形態である電動自転車1’を、
図1を参照して詳述する。
【0015】
車両1は、電動自転車として、前輪9-1、後輪9-2、およびペダル7-1および8-1を有する2つのクランク7、8を備えたクランク駆動部2が配置されたフレーム12を含む。電気駆動部3またはモータは、クランク駆動部2に組み込まれている。後輪9-2にはピニオン6が配置されている。
【0016】
運転者および/または電気駆動部3によって提供される駆動トルクは、クランク駆動部2のチェーンリング4からチェーン5を介してピニオン6に伝達される。
また、車両1のハンドルには、場合によって構成された電気駆動部3に接続された、本発明によって構成および設定された制御ユニット10が配置されている。また、フレーム12内またはフレーム12上には、電気駆動部3に電力供給するために使用されるバッテリー11が構成されている。
【0017】
フレーム12には、クランクケース14およびクランク軸15を有するクランクベアリング13またはボトムブラケットが組み込まれている。
図1からの本発明にかかる車両1の駆動ユニット80は、クランク駆動部2および電気駆動部3またはモータを有し、運転者の筋力によって加えられるトルクを支持するための、後者によって生成可能なまたは生成されるトルクを、
図1に明示的に図示されない対応する伝達装置を介して受容でき、出力要素4としてのチェーンリングに伝達できる。
【0018】
制御ユニット10は、運転者の筋力によって加えられるトルクを支持するために、駆動部80によって生成され、特に車両1のクランク軸の意味での被駆動軸15に加えることができる、および/または加えられるモータトルクを制御および/または調整するように設定されている。
【0019】
すでに上で詳述したように、本発明の核となる態様は、作業装置1、特に対応する車両1’のための軸配置30を生成し、基礎となる駆動ユニット80の軸32が、例えばモータ3および/または伝動装置20のものを、軸32をハウジング40、50上またはハウジング40、50内に支承および位置合わせするための第1のベアリングおよび第2のベアリング33、34に加え、予圧および/または減衰ベアリングとして、基礎となる軸32を軸方向に予圧し、および/または機械的振動に対して好ましくは外側に向かって、すなわちハウジング40、50外部で減衰させるために設定された、さらなる特に第3のベアリング36を有することにある。
【0020】
本発明をさらに説明するために、
図2から
図5は、本発明にかかる駆動ユニット80の実施形態における、本発明にかかる軸配置30の実施形態を、概略的な部分断面図および/または斜視図で示す。
【0021】
ここで、
図2および
図3は、本発明にかかる車両1’の本発明の基礎となる駆動ユニット80全体を、斜視図および側面図で、それぞれ部分的に断面で示す。
図2および3によれば、駆動ユニット80は、とりわけ、電気モータによって形成され、ひいてはロータ31およびステータ35と、外側ハウジング40および内側ハウジング50とを含む電気駆動部3を有する。
【0022】
設けられた第1および第2のベアリング33および34は、ハウジング40、50上またはハウジング40、50内に、本発明にかかる軸配置30としてロータ軸32を支承する。さらに、本発明によれば、予圧および/または減衰ベアリングとしての第3のベアリングは、支持リング38と、ボールベアリングまたは深溝ボールベアリングの形態のローラーベアリング37と、減衰要素39とを備えて端部に構成されている。
【0023】
図4および
図5は、軸配置30自体、すなわち、ロータ31の基礎となるロータ軸32を、斜視図または側面図およびそれぞれ部分的に断面で示しており、ロータ軸32は、軸32に対して端部に位置する浮動ベアリング33としての第1のベアリングと、軸32に対して端部になく、特に、浮動ベアリング33の反対側の他の端部32-1にある、略中間に位置する第2の固定ベアリング34とに加えて、第3のベアリングとしての端部に位置する固定ベアリングを備えて、ここでは図示されていないハウジング40、50に支承および支持されており、または支承および支持され、第3のベアリング36は、深溝ボールベアリング37を備えた支持リング38により、軸32を予圧するために使用される。さらに、任意で、機械的振動を減衰させる減衰要素39が形成されている。
【0024】
本発明のこれらのおよび他の特徴および特性を、以下の記述によってさらに説明する。
市場にあるか、または他の方法で公知の駆動ユニット80は、例えばギア軸またはロータ軸を軸方向に予圧するために、例えばばね、波形ばねなどの通常追加で設けられた弾性要素を、通常構成されている2つのベアリングの1つを介して使用する。
【0025】
代替的な設計では、例えば、従来のベアリングの1つをエラストマースリーブに収容することができる。
現在の設計では、軸を予圧し、同時に部分的に振動を減衰させるために、軸のベアリングを使用する。
【0026】
ばねまたは波形ばねを使用する場合、振動の減衰部は通常設けられていないため、振動は例えば減衰されない状態で、ベアリング外輪を介して伝達される。
エラストマースリーブを使用した従来の代替的な構成では、負荷がかかった状態でのベアリングの精度が制限される。
【0027】
本発明にかかる軸配置30の構成によって、基礎となる軸32、例えばロータ軸またはギア軸を、誘導振動の同時低減を伴う予圧および/または減衰ベアリングとしての追加のベアリング36を介して、的確に予圧することが可能となる。
【0028】
これは、本発明によれば、機能の分離、(i)一方では、軸32の支承は従来設けられているベアリング33、34を介して実現され、(ii)他方では、軸32の予圧および/または減衰は、新たに設けられた予圧および/または減衰ベアリング36を介して実現されることによって達成され、したがって、負荷がかかった状態でも軸を正確に支承し、振動を外部に対して減衰できる。
【0029】
的確に材料を選択することにより、特に共振を減衰させることができる。
予圧および/または減衰ベアリング36の追加のベアリング箇所は、例えば以下のものから構成される。
- ローラーベアリング37、例えば深溝ボールベアリング、
- 端部に取り付けられている例えばエラストマー製の減衰要素39、および/または
- 実施形態に応じて追加の支持リング38。