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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20240619BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240619BHJP
【FI】
B32B7/023
C08J7/04 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020085376
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021178474
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】314017635
【氏名又は名称】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原木 秀巳
(72)【発明者】
【氏名】鹿又 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 和嗣
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-222106(JP,A)
【文献】特開2015-037000(JP,A)
【文献】特開2010-277080(JP,A)
【文献】特開2015-034955(JP,A)
【文献】特開2018-004682(JP,A)
【文献】特開2010-241937(JP,A)
【文献】特開2015-084029(JP,A)
【文献】特開2018-097187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
C08J 7/04- 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方面にアンチブロッキング層を備える光学フィルムであって、
前記アンチブロッキング層の表面に形成された凹凸の平均傾斜角θaが0.13~0.15°であり、
前記透明基材及び前記アンチブロッキング層の2層からなる積層体のヘイズが2.0%以下であることを特徴とする、光学フィルム。
【請求項2】
前記透明基材の他方面に更に硬化層を備える、請求項1に記載の光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチブロッキング層を有する光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学フィルムの生産に使用されるトリアセチルセルロース(TAC)等の透明基材は、ロール状に巻き取られて提供されている。光学フィルムの製造工程では、ロールから透明基材を巻き出して搬送しながら、表面処理や硬化膜形成等の各種処理が行われる。光学フィルムの製造過程において、中間製品をロール状に巻き取って次工程に搬送する場合があるが、透明基材の表面平滑性のため、ロール状に巻き取ったフィルムの表裏が貼り付き(ブロッキングし)、次工程での生産性を低下させる原因となる。
【0003】
ブロッキングを改善する方法として、透明基材として表面に凹凸を有するフィルムを用いる方法や、透明基材上に形成する硬化膜にアンチブロッキング剤を添加して表面凹凸を形成する方法がある。
【0004】
透明基材として表面に凹凸を有するフィルムを用いた場合、ブロッキング耐性は良好であるが、透明性が低下するため、中間工程における外観の検査がしにくいという問題があった。
【0005】
また、硬化膜にアンチブロッキング剤を添加するなどして表面凹凸を形成した場合も同様に、ブロッキング耐性は良好になるが、透明性が低下するため、中間工程における外観の検査がしにくいという問題がある。これに加え、アンチブロッキング剤が硬化膜の機能を阻害する可能性があった。
【0006】
よって、外観検査がしやすく、硬化膜の機能を阻害しないアンチブロッキング性フィルムとして、TACフィルム等の光学等方性基材の両面のうち、硬化膜の形成面と逆側の面にアンチブロッキング層(AB層)を設けたものが考えられる。
【0007】
例えば、特許文献1には、ロール状に巻き取ったフィルムのブロッキングを防止するために、フィラーを混入していないベース材と、フィラーを混入したフィラー混入材とを2層に押し出すことにより、一方面が平滑面で、他方面がアンチブロック面である支持材を形成したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-49392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、アンチブロッキング性を評価する指標としては、JIS B 0601に規定される算術平均粗さRaが用いられてきた。しかしながら、本願の発明者が検討したところ、アンチブロッキング層表面の算術平均粗さRaが、アンチブロッキング性を発現させるために必要であると従来考えられてきた数値範囲内にある場合でも、アンチブロッキング性が十分に発現しない場合があることがわかった。
【0010】
また、アンチブロッキング層を設けると、一般にフィルムの透明性が低下するが、上述の通り、フィルムの外観検査を容易にする上で透明性が高いことは重要な要素である。
【0011】
それ故に、本発明は、透明性が高く、ブロッキング耐性を有する光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る光学フィルムは、透明基材の一方面にアンチブロッキング層を備え、アンチブロッキング層の表面に形成された凹凸の平均傾斜角θaが0.13~0.15°であり、透明基材及びアンチブロッキング層の2層からなる積層体のヘイズが2.0%以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明性が高く、ブロッキング耐性を有する光学フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る光学フィルムの層構成を示す断面図
図2】実施形態に係る光学フィルムの層構成の他の例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、実施形態に係る光学フィルムの層構成を示す断面図であり、図2は、実施形態に係る光学フィルムの層構成の他の例を示す断面図である。
【0016】
図1に示す光学フィルム11は、透明基材1の一方面にアンチブロッキング層2を積層したものである。また、図2に示す光学フィルム12は、図1に示す光学フィルム11における透明基材1の他方面(アンチブロッキング層2が積層されていない側の面)に、更に硬化層3を積層したものである。
【0017】
透明基材1は、可視光線の透過性に優れた材料により形成される。透明基材1は、アンチブロッキング剤を含有せず、表面が平滑なものであれば良く、透明基材1の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂を利用できる。これらの中でも、光学等方性を有し、透明性、表面の平滑性に優れたトリアセチルセルロース(TAC)からなるフィルムを用いることが好ましい。透明基材1の厚みは、特に限定されないが、10~200μmとすることが好ましい。
【0018】
透明基材1の片面または両面には、他の層との密着性を向上させるために、表面改質処理を施しても良い。表面改質処理としては、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理、界面活性剤やシランカップリング剤等の塗布、Si蒸着等を例示できる。
【0019】
アンチブロッキング層2は、フィルム同士の貼り付き(ブロッキング)を防止するために設けられる層であり、表面に微細な凹凸を有する。アンチブロッキング層2は、図1に示す光学フィルム11の巻回時にアンチブロッキング層2と透明基材1とのブロッキングを防止する。また、図2に示すように、透明基材1の他方面に他の硬化層3(図2参照)が積層される場合、光学フィルム12の巻回時にアンチブロッキング層2と硬化層3とのブロッキングを防止する。アンチブロッキング層2の表面の微細な凹凸は、アンチブロッキング層2に含まれるアンチブロッキング剤によって形成される。アンチブロッキング剤としては、シリカやアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン樹脂等の微粒子を用いることができる。アンチブロッキング層2は、バインダー樹脂とアンチブロッキング剤とを含有する塗工液を、透明基材1の一方面に塗工し、塗膜を硬化させることにより形成することができる。アンチブロッキング層2の膜厚は特に限定されないが、0.5~1.5μmとすることが好ましい。
【0020】
硬化層3は、光学フィルム12にハードコート性や反射防止性、屈折率調整等の各種の機能を付与する機能層であり、バインダー樹脂を少なくとも含有する塗工液を、透明基材1の一方面に塗工し、塗膜を硬化させることにより形成することができる。
【0021】
ここで、本実施形態に係るアンチブロッキング層2の表面に形成された凹凸の平均傾斜角θaは、0.08~0.15°の範囲であれば良い。平均傾斜角θaは、θa=tan-1Δaで定義される値である(ただし、Δa=(h1+h2+・・・+hn)/Lで定義される値であり、h1~hnは、それぞれ、JIS B 0601に規定される粗さ曲線において、隣接する凸部の頂点と凹部の最下点の差であり、Lは、粗さ曲線の基準長さである)。
【0022】
従来、アンチブロッキング性を評価する指標としては、JIS B 0601に規定される算術平均粗さRaが用いられてきた。しかしながら、本願の発明者が検討したところ、アンチブロッキング層2の算術平均粗さRaが、アンチブロッキング性を発現させるために必要であると従来考えられてきた数値範囲内にある場合でも、アンチブロッキング性が十分に発現しない場合があることがわかった。また、本願発明者が更に検討したところ、アンチブロッキング層2の表面の平均傾斜角θaが上記の範囲内にあれば、アンチブロッキング性と透明性とを両立できることを見出した。
【0023】
アンチブロッキング層2の表面の平均傾斜角θaが0.08°未満の場合、アンチブロッキング層2によるアンチブロッキング性が不十分となる。また、アンチブロッキング層2の表面の平均傾斜角θaが0.15°を超える場合、凹凸が粗くなり透明性(ヘイズ)が低下する。つまり、平均傾斜角θaが0.08~0.15°の範囲内であることにより、巻回時におけるブロッキング耐性と透明性とを両立した光学フィルム11とすることができる。
【0024】
図1に示す光学フィルム11、すなわち、透明基材1とアンチブロッキング層2の2層からなる積層体のヘイズは、2.0%以下であれば良い。光学フィルム11のヘイズが2.0%を超えると、透明性が低下するため、光学フィルム11の外観検査や、光学フィルム11に更に硬化層3を積層した光学フィルム12の外観検査がしにくくなる。
【0025】
上記のアンチブロッキング層2及び硬化層3を形成するための樹脂組成物に使用可能なバインダー樹脂としては、電離放射線または紫外線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型樹脂を使用でき、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0026】
単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
2官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0029】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0031】
上述した活性エネルギー線硬化性樹脂は1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述した活性エネルギー線硬化性樹脂は、塗工液中でモノマーであっても良いし、一部が重合したオリゴマーであっても良い。
【0032】
また、活性エネルギー線硬化型樹脂としては、上述したラジカル重合性官能基を有する化合物の他に、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを単独でまたは混合して使用することができる。モノマーとしては、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を例示できる。
【0033】
上述した活性エネルギー線硬化型樹脂は、光重合開始剤の添加を条件として、紫外線の照射により硬化させることができる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等のカチオン重合開始剤を単独でまたは混合して使用できる。
【0034】
また、アンチブロッキング層2及び/または硬化層3を形成するための樹脂組成物には、適宜有機溶剤を添加しても良い。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、水等のうち、1種類または2種類以上を混合して使用できる。
【0035】
更に、アンチブロッキング層2及び/または硬化層3を形成するための樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を加えることができる。添加剤としては、例えば消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等が挙げられる。
【0036】
上記の実施形態に係る光学フィルム11及び12は、アンチブロッキング剤を含有しない透明基材1の一方面にアンチブロッキング層2を積層した層構成を有する。透明基材1の他方面(図1及び図2における上面)は凹凸がない平滑面であるため、アンチブロッキング剤を添加した基材と比べて透明性を向上させることができる。また、アンチブロッキング層2の表面の平均傾斜角が上述した範囲内であることによって、光学フィルム11及び12の巻回時におけるブロッキングを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、透明性が高く、ブロッキング耐性を有する光学フィルムを提供することができる。
【0037】
また、透明基材1に積層したアンチブロッキング層2によりブロッキング耐性が付与されるため、図2に示す硬化層3にアンチブロッキング剤を添加する必要がなく、アンチブロッキング剤により硬化層3の機能が阻害されることも回避できる。
【0038】
尚、図2に示す光学フィルム12を製造する場合、アンチブロッキング層2及び硬化層3の積層順序は特に限定されず、いずれを先に形成しても良い。
【0039】
また、図2に示す光学フィルム12において、硬化層3を透明基材1から剥離可能となるように形成しても良い。光学フィルム12をこのように構成した場合、硬化層3を他の部材(例えば、偏光板や表示パネル)に貼り合わせた後、透明基材1及びアンチブロッキング層2の2層を硬化層3から剥離させても良い。すなわち、透明基材1及びアンチブロッキング層2の2層を硬化層3の支持体として使用することが可能である。
【実施例
【0040】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0041】
(実施例1)
透明基材として、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムを使用した。透明基材の片面に、バインダーとしてアクリル酸エステル組成物を35質量部と、シリカフィラー(D50:0.2~0.3μm、D90:0.4~0.5μm)を10質量部と、光重合開始剤としてTPOを5質量部と、表1に示す割合で混合した混合溶剤50質量部とを配合したアンチブロッキング層形成用塗料を調製した。調製したアンチブロッキング層形成用塗料を透明基材の片面に塗布し、乾燥させた後、紫外線照射により硬化させることによりアンチブロッキング層を形成し、図1に示す光学フィルムを得た。尚、アンチブロッキング層形成用塗料の塗工量は、硬化後のアンチブロッキング層の膜厚が表1に示す値となるように調整した。作製した2層構成の光学フィルムを透明性及び平均傾斜角の評価用サンプルとした。
【0042】
また、フィルムの透明基材の他方面に、バインダーとして紫外線硬化型アクリル樹脂と、光重合開始剤とを含有するハードコート層形成用塗工液を塗布し、乾燥させた後、紫外線照射により硬化させることにより硬化層(ハードコート層)を係止し、図2に示す層構成を有する光学フィルムを得た。作製した3層構成の光学フィルムをアンチブロッキング性の評価用サンプルとした。
【0043】
【表1】
【0044】
(実施例2~6)
アンチブロッキング層形成用塗料に用いた混合溶剤の組成及び/または硬化後のアンチブロッキング層の膜厚を表1に示す通りに変更したことを除き、実施例1と同様にして、図1及び図2に示す層構成の光学フィルムを作製し、それぞれ、透明性及び平均傾斜角の評価用サンプル及びアンチブロッキング性の評価用サンプルとした。
【0045】
(比較例1)
アンチブロッキング層を形成せずに、透明基材を透明性及び平均傾斜角の評価用サンプルとした。また、透明基材の片面に実施例と同様に硬化層(ハードコート層)を積層し、得られた光学フィルムを、アンチブロッキング層の評価用サンプルとした。
【0046】
(比較例2及び3)
シリカフィラーとして、D50が0.1μm未満、D90が0.1~0.3μmであるものを用いたことと、アンチブロッキング層形成用塗料に用いた混合溶剤の組成及び硬化後のアンチブロッキング層の膜厚を表1に示す通りに変更したことを除き、実施例1と同様にして、図1及び図2に示す層構成の光学フィルムを作製し、それぞれ、透明性及び平均傾斜角の評価用サンプル及びアンチブロッキング性の評価用サンプルとした。
【0047】
(比較例4~7)
アンチブロッキング層形成用塗料に用いた混合溶剤の組成及び/または硬化後のアンチブロッキング層の膜厚を表1に示す通りに変更したことを除き、実施例1と同様にして、図1及び図2に示す層構成の光学フィルムを作製し、それぞれ、透明性及び平均傾斜角の評価用サンプル及びアンチブロッキング性の評価用サンプルとした。
【0048】
[透明性]
評価用サンプルの透明性は、ヘイズにより評価した。ヘイズは、JIS K7105に準拠し、ヘイズメーター(NDH2000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。ヘイズが2.0%以下の場合に透明性が高いと評価した。
【0049】
[平均傾斜角]
評価用サンプルの平均傾斜角は、非接触表面・層断面形状計測システム(解析装置:バートスキャン(登録商標)R3300FL-Lite-AC、解析ソフトウェア:VertScan4、株式会社菱化システム製)を用いて光り干渉方式により測定した。
【0050】
[アンチブロッキング性]
10cm角の正方形に裁断したアンチブロッキング性評価用のサンプルを5枚重ね、恒温室で90°で1時間加熱した後、貼り付き(ブロッキング)の発生程度を目視にて観察し、以下の判定基準に基づいてアンチブロッキング性を評価した。アンチブロッキング性は、◎または△であればアンチブロッキング性ありと評価した。
◎:ブロッキングなし
△:ブロッキングした面積の合計がサンプルの面積の4割以下
×:全面ブロッキングした
【0051】
表2に、実施例1~6及び比較例1~7に係る光学フィルムのヘイズ及び平均傾斜角の測定値と、アンチブロッキング性の評価を示す。
【0052】
【表2】
【0053】
実施例1~6に係る光学フィルムは、透明基材及びアンチブロッキング層の2層の積層体のヘイズが2.0%以下、かつ、アンチブロッキング層の表面の平均傾斜角θaが0.08~0.15の範囲内であり、透明性及びアンチブロッキング性のいずれも良好であった。
【0054】
これに対して、比較例1においては、アンチブロッキング層を設けていないため、平均傾斜角θaが小さすぎ、アンチブロッキング性が得られなかった。
【0055】
また、比較例2、3及び5に係る光学フィルムは、平均傾斜角θaが小さすぎ、アンチブロッキング性が得られなかった。
【0056】
比較例4、6及び7に係る光学フィルムは、アンチブロッキング性は良好であったが、透明性が不足した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、ディスプレイ装置に用いられる光学フィルムとして利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 透明基材
2 アンチブロッキング層
3 硬化層
11、12 光学フィルム
図1
図2