(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】ホール素子、および電子部品
(51)【国際特許分類】
H10N 52/80 20230101AFI20240619BHJP
H10N 52/00 20230101ALI20240619BHJP
G01R 33/07 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H10N52/80 D
H10N52/00 P
H10N52/00 U
G01R33/07
(21)【出願番号】P 2020089885
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北出 哲也
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/101823(WO,A1)
【文献】特開2005-259803(JP,A)
【文献】特開2016-021568(JP,A)
【文献】特開2007-003237(JP,A)
【文献】特開2016-025348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 52/80
H10N 52/00
G01R 33/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を検出するためのホール素子であって、
半導体領域を有する基板と、
前記基板に配置された第1駆動電極と、
前記基板において前記第1駆動電極から第1方向に離間して配置された第1接地電極と、
前記基板において前記第1駆動電極から前記第1方向とは異なる第2方向に離間して配置された第2接地電極と、
前記第1駆動電極から前記第1接地電極および前記第2接地電極に向かって流れる、前記基板の表面に垂直な成分の電流によって発生するホール電圧を検出するための第1電極群を含む検出電極群と
、
前記基板において前記第1接地電極から前記第2方向に離間して配置され、かつ前記第2接地電極から前記第1方向に離間して配置された第2駆動電極とを備え、
前記検出電極群は、前記第2駆動電極から前記第1接地電極および前記第2接地電極に向かって流れる、前記基板の表面に垂直な成分の電流によって発生するホール電圧を検出するための第2電極群を含む、ホール素子。
【請求項2】
前記基板の前記第1駆動電極と前記第1接地電極との間、および、前記基板の前記第1駆動電極と前記第2接地電極との間において、前記基板の表面から垂直な方向に形成される第1絶縁層をさらに備える、請求項
1に記載のホール素子。
【請求項3】
前記基板の、前記第1駆動電極と前記検出電極群のうち前記第1駆動電極に隣接して配置される電極との間において、前記基板の表面から垂直な方向に形成される第2絶縁層をさらに備え、
前記基板の表面からの前記第2絶縁層の深さは、前記基板の表面からの前記第1絶縁層の深さよりも浅い、
請求項2に記載のホール素子。
【請求項4】
前記基板は、前記基板の法線方向から平面視したときに矩形状を有しており、
前記ホール素子は、前記基板の4隅において、前記基板の表面から垂直な方向に形成される第3絶縁層をさらに備える、請求項1
または請求項2に記載のホール素子。
【請求項5】
前記第3絶縁層の各々は、前記ホール素子の外周方向に湾曲している、
請求項4に記載のホール素子。
【請求項6】
請求項1~
請求項5のいずれか1項に記載のホール素子と、
前記ホール素子を制御する制御回路とを備える電子部品。
【請求項7】
半導体領域を有する基板に形成されたホール素子と、
前記ホール素子に作用する磁界を検出する制御回路とを備える電子部品であって、
前記ホール素子は、
第1電極と、
前記第1電極から第1方向に離間して配置される第2電極と、
前記第1電極から第1方向と直交する第2方向に離間して配置される第3電極と、
前記第2電極から前記第2方向に離間しかつ前記第3電極から前記第1方向に離間して配置される第4電極と、
検出電極群とを備え、
前記検出電極群は、
前記第1電極から前記第2電極および前記第3電極に前記基板の表面に垂直な成分の電流が流れており、かつ、前記第4電極から前記第2電極および前記第3電極に前記基板の表面に垂直な成分の電流が流れている第1状態において発生するホール電圧を検出し、
前記第2電極から前記第1電極および前記第4電極に前記基板の表面に垂直な成分の電流が流れており、かつ、前記第3電極から前記第1電極および前記第4電極に前記基板の表面に垂直な成分の電流が流れている第2状態において発生するホール電圧を検出し、
前記制御回路は、前記第1状態で検出されたホール電圧と、前記第2状態でホール電圧との差分に基づいて前記ホール素子に作用する磁界を検出する、電子部品。
【請求項8】
半導体領域を有する基板に形成される第1ホール素子および第2ホール素子と、
前記第1ホール素子および前記第2ホール素子に作用する磁界を検出する制御回路とを備える電子部品であって、
前記第1ホール素子は、
第1駆動電極と、
第2駆動電極と、
前記第1駆動電極から第1方向に離間して配置され、かつ、前記第2駆動電極から前記第1方向とは異なる第2方向に離間して配置された第1接地電極と、
前記第1駆動電極から前記第2方向に離間して配置され、かつ、前記第2駆動電極から前記第1方向に離間して配置された第2接地電極と、
前記第1駆動電極から前記第1接地電極および前記第2接地電極に前記基板の表面に垂直な成分の電流が流れており、かつ、前記第2駆動電極から前記第1接地電極および前記第2接地電極に前記基板の表面に垂直な成分の電流が流れている状態において発生するホール電圧を検出するための第1検出電極群とを備え、
前記第2ホール素子は、
第3駆動電極と、
第4駆動電極と、
前記第3駆動電極から前記第2方向に離間して配置され、かつ、前記第3駆動電極から前記第1方向に離間して配置された第3接地電極と、
前記第3駆動電極から前記第1方向に離間して配置され、かつ、前記第4駆動電極から前記第2方向に離間して配置された第4接地電極と、
前記第3駆動電極から前記第3接地電極および前記第4接地電極に前記基板の表面に垂直な成分の電流が流れており、かつ、前記第4駆動電極から前記第3接地電極および前記第4接地電極に前記基板の表面に垂直な成分の電流が流れている状態において発生するホール電圧を検出するための第2検出電極群とを備え、
前記制御回路は、前記第1検出電極群で検出されたホール電圧と、前記第2検出電極群で検出されたホール電圧との差分に基づいて前記第1ホール素子および前記第2ホール素子に作用する磁界を検出する、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁界を検出するためのホール素子、および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4674578号公報(特許文献1)には、いわゆる縦型のホール素子を用いた磁気センサが開示されている。このホール素子では、1軸の磁界を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、磁界を検出するホール素子の分野では、2方向の磁界を検出する技術が要求されている。しかしながら、特許文献1記載の発明では、1方向の磁界しか検出できず、2方向の磁界を検出することができないという問題がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、2方向以上の磁界を検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、ホール素子は、磁界を検出するためのものである。ホール素子は、半導体領域を有する基板と、基板に配置された第1駆動電極と、基板において第1駆動電極から第1方向に離間して配置された第1接地電極と、基板において第1駆動電極から第1方向とは異なる第2方向に離間して配置された第2接地電極とを備える。ホール素子は、さらに、第1駆動電極から第1接地電極および第2接地電極に向かって流れる、基板の表面に垂直な成分の電流によって発生するホール電圧を検出するための第1電極群を含む検出電極群を備える。
【0007】
ある局面において、ホール素子は、基板において第1接地電極から第2方向に離間して配置され、かつ第2接地電極から第1方向に離間して配置された第2駆動電極をさらに備える。検出電極群は、第2駆動電極から第1接地電極および第2接地電極に向かって流れる、基板の表面に垂直な成分の電流によって発生するホール電圧を検出するための第2電極群を含む。
【0008】
ある局面において、ホール素子は、基板に配置された第3駆動電極と、第3駆動電極から離間して配置された第3接地電極を備える。ホール素子は、さらに、検出電極群は、基板において第3駆動電極から第3接地電極に向かって、基板の表面に平行な成分の電流によって発生するホール電圧を検出するための第3電極群を備える。
【0009】
ある局面において、ホール素子は、基板の第1駆動電極と第1接地電極との間、および、基板の第1駆動電極と第2接地電極との間において、基板の表面から垂直な方向に形成される第1絶縁層をさらに備える。
【0010】
ある局面において、ホール素子は、基板の、第1駆動電極と検出電極群のうち第1駆動電極に隣接して配置される電極との間において、基板の表面から垂直な方向に形成される第2絶縁層をさらに備える。また、基板の表面からの第2絶縁層の深さは、基板の表面からの第1絶縁層の深さよりも浅い。
【0011】
ある局面において、基板は、基板の法線方向から平面視したときに矩形状を有している。ホール素子は、基板の4隅において、基板の表面から垂直な方向に形成される第3絶縁層をさらに備える。
【0012】
ある局面において、第3絶縁層の各々は、ホール素子の外周方向に湾曲している。
本開示の別の局面に従うと、電子部品は、上述のいずれか1項に記載のホール素子と、ホール素子を制御する制御回路とを備える。
【0013】
本開示の別の局面に従うと、電子部品は、半導体領域を有する基板に形成されたホール素子と、ホール素子に作用する磁界を検出する制御回路とを備える。ホール素子は、第1電極と、第1電極から第1方向に離間して配置される第2電極と、第1電極から第1方向と直交する第2方向に離間して配置される第3電極と、第2電極から第2方向に離間しかつ第3電極から第1方向に離間して配置される第4電極と、検出電極群とを備える。検出電極群は、第1電極から第2電極および第3電極に基板の表面に垂直な成分の電流が流れており、かつ、第4電極から第2電極および第3電極に基板の表面に垂直な成分の電流が流れている第1状態において発生するホール電圧を検出する。また、検出電極群は、第2電極から第1電極および第4電極に基板の表面に垂直な成分の電流が流れており、かつ、第3電極から第1電極および第4電極に基板の表面に垂直な成分の電流が流れている第2状態において発生するホール電圧を検出する。制御回路は、第1状態で検出されたホール電圧と、第2状態でホール電圧との差分に基づいてホール素子に作用する磁界を検出する。
【0014】
本開示の別の局面に従うと、電子部品は、半導体領域を有する基板に形成される第1ホール素子および第2ホール素子と、第1ホール素子および第2ホール素子に作用する磁界を検出する制御回路とを備える。第1ホール素子は、第1駆動電極と、第2駆動電極と、第1駆動電極から第1方向に離間して配置され、かつ、第2駆動電極から第1方向とは異なる第2方向に離間して配置された第1接地電極と、第1駆動電極から第2方向に離間して配置され、かつ、第2駆動電極から第1方向に離間して配置された第2接地電極と、第1駆動電極から第1接地電極および第2接地電極に基板の表面に垂直な成分の電流が流れており、かつ、第2駆動電極から第1接地電極および第2接地電極に基板の表面に垂直な成分の電流が流れている状態において発生するホール電圧を検出するための第1電極群とを備える。第2ホール素子は、第3駆動電極と、第4駆動電極と、第3駆動電極から第2方向に離間して配置され、かつ、第3駆動電極から第1方向に離間して配置された第3接地電極と、第3駆動電極から第1方向に離間して配置され、かつ、第4駆動電極から第2方向に離間して配置された第4接地電極と、第3駆動電極から第3接地電極および第4接地電極に基板の表面に垂直な成分の電流が流れており、かつ、第4駆動電極から第3接地電極および第4接地電極に基板の表面に垂直な成分の電流が流れている状態において発生するホール電圧を検出するための第2電極群とを備える。制御回路は、第1電極群で検出されたホール電圧と、第2電極群で検出されたホール電圧との差分に基づいて第1ホール素子および第2ホール素子に作用する磁界を検出する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、1つの電極から2つの電極に向かって流れる基板の表面に垂直な成分の電流によって発生するホール電圧を検出することにより、2方向の磁界を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態に従う磁気センサの構成例である。
【
図2】本実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図3】本実施の形態に従うホール素子の断面図である。
【
図4】本実施の形態に従うホール素子および制御回路を示した図である。
【
図5】別の実施の形態に従うホール素子および制御回路を示した図である。
【
図6】別の実施の形態に従うホール素子および制御回路を示した図である。
【
図7】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図8】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図9】別の実施の形態に従うホール素子の断面図である。
【
図10】オフセット電圧のキャンセルを説明するための図である。
【
図11】オフセット電圧のキャンセルを説明するための図である。
【
図12】別の実施の形態に従うホール素子および制御回路を示した図である。
【
図13】別の実施の形態に従うホール素子を示した図である。
【
図14】別の実施の形態に従う制御回路を示した図である。
【
図15】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図16】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図17】別の実施の形態に従うホール素子および制御回路を示した図である。
【
図18】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図19】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図20】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図21】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図22】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図23】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図24】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図25】別の実施の形態に従うホール素子をZ軸方向から平面視したときを示した図である。
【
図26】別の実施の形態に従う制御回路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
<第1の実施の形態>
[磁気センサの構成]
図1は、本実施の形態に従うホール素子が適用される磁気センサ1000の構成例である。磁気センサ1000は、ホール素子100に加えて、制御回路500を備える。制御回路500は、検出部602と、電流源604と、制御部606と、スイッチ回路608とを有する。制御部606は、制御回路500の各構成部を制御する。検出部602は、磁界を検出する。スイッチ回路608は本実施の形態では用いられず、後述の実施の形態で説明する。したがって、本実施の形態の制御回路500は、スイッチ回路608を有さないようにしてもよい。本実施の形態のホール素子100は、いわゆる縦型のホール素子であり、ホール素子100が形成される半導体基板の表面に垂直な方向に流れる電流を用いて磁界を検出する。ホール素子100は、ホール素子に作用する磁界に応じたホール電圧を出力する。検出部602は、ホール素子100から出力されたホール電圧に基づいて、ホール素子100に作用する磁界を検出する。また、電流源604は、ホール素子100においてホール電圧を発生させるための駆動電流をホール素子100に制御部606の制御により供給する。なお、制御回路500は、電流源604の代わりに、電圧源を備えるようにしてもよい。電圧源は、ホール素子100においてホール電圧を発生させるための駆動電圧をホール素子100に供給するものである。
【0019】
従来の縦型のホール素子では、1方向の磁界しか検出することができなかった。一方で磁界を検出するホール素子の分野では、2方向以上の磁界を検出する技術が要求されている。また、2方向以上の磁界を検出するために、磁気センサが1軸の磁界のみを検出する2つのホール素子を備える構成が考えられる。しかしながら、この構成では、磁気センサのサイズが大型化してしまう。そこで、本実施の形態のホール素子100では、以下に説明するように、駆動電流を供給するための2組の電極(後述の第1駆動電極101,第2駆動電極102,第1接地電極151,第2接地電極152)が配置される。これにより、2方向の磁界(本実施の形態では、X軸およびY軸)の各々に対応するホール電圧が検出される。したがって、ホール素子は該ホール電圧に基づいて2方向の磁界を検出しつつ、磁気センサを小型化できる。なお、第2駆動電極102は省略されてもよい。
【0020】
[ホール素子100の構成]
図2および
図3は、ホール素子100の構成例を示す図である。
図2および
図3を参照して、この実施の形態に係るホール素子100の概略構造について説明する。本実施の形態の図面において、ホール素子100の厚さ方向の軸をZ軸とする。Z軸は、後述する半導体基板250の表面250Aの法線方向の軸でもある。また、Z軸に直交する軸をX軸およびY軸とする。X軸方向が、本開示の「第1方向」に対応する。Y軸方向が、本開示の「第2方向」に対応する。
図2は、ホール素子100をZ軸方向から平面視したときの図である。
図2の例では、ホール素子100は矩形状であり、より特定的には、正方形状である。また、
図3(A)は、
図2の直線P-P’における断面図であり、
図3(B)は、
図2の直線Q-Q’における断面図であり、
図3(C)は、
図2の直線R-R’における断面図であり、
図3(D)は、
図2の直線S-S’における断面図である。
【0021】
図2に示すように、ホール素子100は、半導体基板250を有する。
図3に示すように半導体基板250は、半導体領域260(Nウェル)を有する。半導体基板250は、たとえば、P型のシリコン基板(P-sub)である。また、半導体領域260は、半導体基板250の表面250AにN型の導電型不純物が導入されて拡散層(ウェル)として形成される。半導体領域260は、半導体基板250に囲繞される態様で形成される。
【0022】
また、ホール素子100の周縁には、ホール素子100を他の素子と分離すべく、P型からなる拡散層(図示せず)が形成される。ホール素子100の4隅には、さらに、P型からなる拡散層230が形成されている。拡散層230は、本開示の「第3絶縁層」に対応する。
図3に示すように、半導体領域260の表面260Aにおいて拡散層230によって囲まれる領域(活性領域)には、同表面の不純物濃度(N型)が高められる態様で12個のコンタクト領域101A,102A,151A,152A,201A~208A(N+拡散層)が形成される。また、12個のコンタクト領域のそれぞれには、12個の電極(
図2および
図3の例では電極101,102,151,152,201~208)が形成される。12個のコンタクト領域と、該12個のコンタクト領域の各々に形成された12個の電極とにおいては、良好なオーミックコンタクトが形成される。
【0023】
また、ホール素子100は、
図2に示されるように、十字形状の拡散層302によるpn接合分離を通じて、4つの領域180A~180Dに分割されている。拡散層302は、本実施形態の「第1絶縁層」に対応する。拡散層302は、半導体領域260よりも浅い拡散深さを有する。
図3に示すように、拡散層302により、半導体領域260において電流通路が形成されている。また、4つの領域180A~180Dの各々において、半導体基板250の内部においても電気的に区画された領域が形成される。この形成された領域が、磁界を検出可能な磁気検出部HP(ホールプレート)となっている。
図2の例では、ホール素子100においてハッチングが付されていない箇所が磁気検出部となる。
【0024】
以下に、本実施の形態の12個の電極101,102,151,152,201~208を説明する。ホール素子100は、12個の電極として、第1駆動電極101と、第2駆動電極102と、第1接地電極151と、第2接地電極152と、第1検出電極201と、第2検出電極202と、第3検出電極203と、第4検出電極204と、第5検出電極205と、第6検出電極206と、第7検出電極207と、第8検出電極208とを有する。第1検出電極201と、第2検出電極202と、第3検出電極203と、第4検出電極204と、第5検出電極205と、第6検出電極206と、第7検出電極207と、第8検出電極208とを総括的に「検出電極群」とも称する。
【0025】
第1駆動電極101および第2駆動電極102は、制御部606の制御により、電流源604からの駆動電流が供給される電極である。第1接地電極151および第2接地電極152は、接地電位を有する電極である。検出電極群は、発生した磁界により生じたホール電圧を検出するための電極である。
【0026】
なお、本願の図面(たとえば
図2)の例では、第1駆動電極101および第2駆動電極102を「VDD」と示している。また、第1接地電極151および第2接地電極152を「GND」と示している。また、+Fxは、X軸方向の磁界に対応する正のホール電圧が検出されることを示す。-Fxは、X軸方向の磁界に対応する負のホール電圧が検出されることを示す。+Fyは、Y軸方向の磁界に対応する正のホール電圧が検出されることを示す。-Fyは、Y軸方向の磁界に対応する負のホール電圧が検出されることを示す。本明細書において、正のホール電圧とは、該ホール電圧に対応するローレンツ力の方向が該ホール電圧を検出する検出電極に向かう方向となる電圧である。負のホール電圧とは、該ホール電圧に対応するローレンツ力の方向が該ホール電圧を検出する検出電極から離れる方向となる電圧である。また、本願の図面の太矢印は駆動電流が流れていることを示している。
【0027】
領域180Aに、第1駆動電極101、第1検出電極201、および第2検出電極202が形成される。領域180Bに、第1接地電極151、第5検出電極205、および第6検出電極206が形成される。領域180Cに、第2接地電極152、第7検出電極207、および第8検出電極208が形成される。領域180Dに、第2駆動電極102、第3検出電極203、および第4検出電極204が形成される。
【0028】
また、第1駆動電極101および第2駆動電極102と、第1接地電極151および第2接地電極152と、第1検出電極201および第3検出電極203と、第2検出電極202および第4検出電極204と、第5検出電極205および第7検出電極207と、第6検出電極206および第8検出電極208との各々は、重心Cにおいて、点対称の位置関係にある。
【0029】
第1接地電極151は、第1駆動電極101のX軸の正方向に離間して配置される。第2接地電極152は、第1駆動電極101のY軸の負方向に離間して配置される。第2駆動電極102は、第1接地電極151のY軸の負方向でありかつ第2接地電極152のX軸の正方向に離間して配置される。
【0030】
また、第1検出電極201は、第1駆動電極101のX軸の負方向に離間して配置される。第2検出電極202は、第1駆動電極101のY軸の正方向に離間して配置される。第3検出電極203は、第2駆動電極102のX軸の正方向に離間して配置される。第4検出電極204は、第2駆動電極102のY軸の負方向に離間して配置される。第5検出電極205は、第1接地電極151のX軸の正方向に離間して配置される。第6検出電極206は、第1接地電極151のY軸の正方向に離間して配置される。第7検出電極207は、第2接地電極152のX軸の負方向に離間して配置される。第8検出電極208は、第2接地電極152のY軸の負方向に離間して配置される。
【0031】
図4は、ホール素子100と、検出部602との配線の接続関係を説明するための図である。検出部602は、アンプ502,504,506,508と、合算部510,512と、Y軸検出部514と、X軸検出部516とを有する。
【0032】
第1検出電極201と第3検出電極203とがアンプ502に接続されている。第5検出電極205と第7検出電極207とがアンプ504に接続されている。第2検出電極202と第4検出電極204とがアンプ506に接続されている。第6検出電極206と第8検出電極208とがアンプ508に接続されている。
【0033】
図3(A)および
図3(C)に示すように、第1駆動電極101に駆動電流が供給されると、該駆動電流は第1駆動電極101から第1接地電極151および第2接地電極152へと流れる。ここで、第1駆動電極101と第1接地電極151との間、および第1駆動電極101と第2接地電極152との間に、Z軸の負方向に拡散層302が形成されている。したがって、駆動電流の経路として、Z軸の負方向の経路I1、XY平面に平行な経路I2、およびZ軸の正方向の経路I3が形成される。第1駆動電極101から第1接地電極151および第2接地電極152までの駆動電流は、経路I1、経路I2、および経路I3の順番で流れる。
【0034】
図3(B)および
図3(D)に示すように、第2駆動電極102に駆動電流が供給されると、該駆動電流は第2駆動電極102から第1接地電極151および第2接地電極152へと流れる。ここで、第2駆動電極102と第1接地電極151との間、および第2駆動電極102と第2接地電極152との間に、Z軸の負方向に拡散層302が形成されている。したがって、駆動電流の経路として、Z軸の負方向の経路I1、XY平面に平行な経路I2、およびZ軸の正方向の経路I3が形成される。第2駆動電極102から第1接地電極151および第2接地電極152までの駆動電流は、経路I1、経路I2、および経路I3の順番で流れる。
【0035】
図3(A)に示すように、Y軸の正方向の磁界が生じている場合には、第1検出電極201では、該Y軸方向の磁界と、経路I1での駆動電流とに基づくホール効果により、負のホール電圧(-Fy)が検出される。また、Y軸の正方向の磁界が生じている場合には、第5検出電極205では、該Y軸方向の磁界と、経路I3での駆動電流とに基づくホール効果により、負のホール電圧(-Fy)が検出される。
【0036】
図3(B)に示すように、Y軸の正方向の磁界が生じている場合には、第7検出電極207では、該Y軸方向の磁界と、経路I3での駆動電流とに基づくホール効果により、正のホール電圧(+Fy)が検出される。また、Y軸の正方向の磁界が生じている場合には、第3検出電極203では、該Y軸方向の磁界と、経路I1での駆動電流とに基づくホール効果により、正のホール電圧(+Fy)が検出される。
【0037】
図3(C)に示すように、X軸の正方向の磁界が生じている場合には、第2検出電極202では、該X軸方向の磁界と、経路I1での駆動電流とに基づくホール効果により、負のホール電圧(-Fx)が検出される。また、X軸の正方向の磁界が生じている場合には、第8検出電極208では、該X軸方向の磁界と、経路I3での駆動電流とに基づくホール効果により、負のホール電圧(-Fx)が検出される。
【0038】
図3(D)に示すように、X軸の正方向の磁界が生じている場合には、第6検出電極206では、該X軸方向の磁界と、経路I3での駆動電流とに基づくホール効果により、正のホール電圧(+Fx)が検出される。また、X軸の正方向の磁界が生じている場合には、第4検出電極204では、該X軸方向の磁界と、経路I1での駆動電流とに基づくホール効果により、正のホール電圧(+Fx)が検出される。
【0039】
図4に示すように、アンプ502において、第1検出電極201および第3検出電極203で検出されたホール電圧(Y軸方向の磁界に対応するホール電圧)が増幅される。アンプ504において、第5検出電極205と第7検出電極207とで検出されたホール電圧(Y軸方向の磁界に対応するホール電圧)が増幅される。アンプ506において、第2検出電極202と第4検出電極204とで検出されたホール電圧(X軸方向の磁界に対応するホール電圧)が増幅される。アンプ508において、第6検出電極206と第8検出電極208とで検出されたホール電圧(X軸方向の磁界に対応するホール電圧)が増幅される。
【0040】
合算部510は、アンプ502で増幅されたホール電圧値(Y軸方向の磁界に対応するホール電圧値)と、アンプ504で増幅されたホール電圧値(Y軸方向の磁界に対応するホール電圧値)とを合算する。Y軸検出部514は、合算部510で合算されたホール電圧値に基づいて、Y軸の磁界を検出する。
【0041】
合算部512は、アンプ506で増幅されたホール電圧値(X軸方向の磁界に対応するホール電圧値)と、アンプ508で増幅されたホール電圧値(X軸方向の磁界に対応するホール電圧値)とを合算する。X軸検出部516は、合算部512で合算されたホール電圧値に基づいて、X軸の磁界を検出する。
【0042】
以上のように、本実施の形態のホール素子100は、駆動電流を供給するための2組の電極(第1駆動電極101と、第2駆動電極102と、第1接地電極151と、第2接地電極152)を有する。また、検出電極群のうちの一部の第1電極群(本実施の形態では第1検出電極201、第2検出電極202、第5検出電極205、および第8検出電極208)では、第1駆動電極101から第1接地電極151および第2接地電極152に駆動電流が流れている状態において、磁界に応じてホール電圧が発生する。
図3(A)で説明したように、第1駆動電極101から第1接地電極151に流れる駆動電流に基づくホール電圧により、Y軸検出部514はY軸方向の磁界を検出する。また、
図3(C)で説明したように、第1駆動電極101から第2接地電極152に流れる駆動電流に基づくホール電圧により、X軸検出部514はX軸方向の磁界を検出する。したがって、本実施の形態のホール素子100は、2方向の磁界を検出できる。
【0043】
また、検出電極群のうちの一部の第2検出電極群(第3検出電極203、第4検出電極204、第6検出電極206、および第7検出電極207)では、第2駆動電極102から第1接地電極151および第2接地電極152に駆動電流が流れる状態において、磁界に応じてホール電圧が発生する。
図3(B)で説明したように、第2駆動電極102から第1接地電極151に流れる駆動電流に基づくホール電圧により、Y軸検出部514はY軸方向の磁界が検出される。また、
図3(D)で説明したように、第2駆動電極102から第1接地電極151に流れる駆動電流に基づくホール電圧により、X軸検出部514はX軸方向の磁界が検出される。したがって、第2駆動電極102が設けられていないホール素子と比較して、X軸方向の磁界に対応するホール電圧値、およびY軸方向の磁界に対応するホール電圧値を増加させることができる。よって、X軸方向およびY軸方向の磁界の検出の精度(感度)を向上させることができる。
【0044】
また、
図2で説明したように、ホール素子100の4隅に拡散層230が形成される。この拡散層230により、ホール効果により移動したキャリアを磁気検出部に留まらせることができ、磁界の検出精度を向上させることができる。
【0045】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の磁気センサ1000Aは、第1の実施の形態の磁気センサ1000における配線が簡素化されたものである。
図5は、第2の実施の形態のホール素子100と、検出部602Aとの配線の接続関係を説明するための図である。検出部602Aは、アンプ502,506と、Y軸検出部514と、X軸検出部516とを有する。
【0046】
Y軸検出部514は、アンプ502で増幅されたホール電圧(Y軸方向の磁界に対応するホール電圧)に基づいて、Y軸の磁界を検出する。また、X軸検出部516は、アンプ506で増幅されたホール電圧(X軸方向の磁界に対応するホール電圧)に基づいて、X軸の磁界を検出する。
【0047】
第2の実施の形態の磁気センサ1000Aでは、第1の実施の形態の磁気センサ1000に比べると感度は半減するものの、検出用回路の配線を簡素化できるため製造コストを削減することができる。磁気センサの設計者は、ホール素子に求められる感度、および配線コストに応じて、第1の実施の形態の構成および第2の実施の形態の構成のいずれを採用するかを決定すればよい。
【0048】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態の磁気センサ1000Bは、1方向の磁気の検出精度を従来の磁気センサよりも高めたものである。
図6は、ホール素子100と、検出部602Bとの配線の接続関係を説明するための図である。検出部602Bは、アンプ502,504と、合算部510と、Y軸検出部514とを有する。
【0049】
第1の実施の形態の磁気センサ1000では、2方向の磁界を検出できる一方、第3の実施の形態の磁気センサ1000Bでは、1方向の磁気の精度を従来の磁気センサよりも高めることができる。したがって、磁気センサの設計者は、検出すべき磁界の方向を2方向にするのか、1方向の磁気の検出精度を高めるのかに応じて第2の実施の形態の構成および第3の実施の形態の構成のいずれを採用するかを決定すればよい。
【0050】
<第4の実施の形態>
上述の実施の形態では、ホール素子100の4隅に形成された拡散層230は、ホール素子100をZ軸方向から平面視したときに、矩形状である構成を説明した。第4の実施の形態の拡散層は、ホール素子の外周方向に湾曲している。
【0051】
図7は、第4の実施の形態のホール素子100Aの構成例を示す図である。ホール素子100Aにおいては、4隅に形成された拡散層230の代わりに拡散層2202が形成されている。拡散層2202は、ホール素子100Aの外周100Xの方向に湾曲している湾曲面2202Aを有する。
【0052】
たとえば、ホール効果により移動したキャリアが矩形状である拡散層230の頂部に当たると、反射方向が一意に定まらないため、キャリアが検出電極側に移動しない状態となり得る。そうすると、検出されるホール電圧が不確定となり、検出精度が低下する場合がある。本実施の形態のように、拡散層が湾曲面2202Aを有するように形成することにより、頂部が形成されないため、キャリアの反射方向の不確定さを低減することが可能となる。したがって、ホール効果により移動したキャリアを確実に検出電極の近傍に移動させることができ、結果として、ホール電圧の検出精度を向上させることができる。
【0053】
<第5の実施の形態>
上述の実施の形態においては、駆動電極に供給した電流の一部が、拡散層302の表面を伝達して検出電極に漏れる場合がある。この場合には、駆動電極から接地電極に流れる駆動電流の量が減少することから、検出精度が低下する場合がある。第5の実施の形態においては、拡散層302よりも浅い拡散層を備えることにより、このような検出精度の低下を防止するものである。
図8は、第5の実施の形態のホール素子100Bの構成図である。また、
図9は、
図8の直線P-P’における断面図である。
図8および
図9に示すように、
図8に示すように、第5の実施の形態のホール素子は、拡散層302とは別に、拡散層322を有する。拡散層322は、本開示の「第2絶縁層」に対応する。以下では、第1駆動電極101、第2駆動電極102と、第1接地電極151と、第2接地電極152とを、総括的に、「駆動用電極群」と称する場合がある。
【0054】
拡散層322は、検出電極群を構成する複数の検出電極(第1検出電極201~第8検出電極208)のうちの少なくとも1つの電極と、駆動用電極群の電極との間に形成される。
図8の例では、拡散層322は、検出電極群の各々の電極と、駆動用電極群の各々の電極との間に形成される。
図9に示すように、拡散層322は、Z軸方向に向かって形成される。また、拡散層322の厚み方向の深さ(Z軸方向の寸法)は、拡散層302の厚み方向の深さよりも浅い。
【0055】
このように、拡散層322が形成されることにより、拡散層302の表面を伝達する電流の量を低減できる。したがって、駆動電極から接地電極に流れる駆動電流の量が減少することを防止できる。また、拡散層322は、拡散層302よりも浅いことにより、検出電極群の各々の電極へのホール効果によるキャリアを移動させることができる。以上により、本実施の形態のホール素子では、検出精度の低下を防止できる。
【0056】
<第6の実施の形態>
駆動用電極群および検出電極群の各々の電極は重心C(
図2参照)において、完全に対称となるように配置されることが好ましい。しかしながら、駆動用電極群および検出電極群の各々の電極の配置位置に関する誤差による位置ずれ(アライメントずれ)などがあるため、検出電極群で検出される電圧には、ホール電圧とともにオフセット電圧(不平衡電圧)が含まれる。オフセット電圧に起因して、磁界の検出精度が低下する場合がある。第6の実施の形態では、このオフセット電圧をキャンセルする磁気センサを説明する。
【0057】
図10および
図11は、ホール素子と等価であるブリッジ回路を示した図である。
図10は、VDDからGNDまでにおいて、接点F1および接点F2を経由して駆動電流を流した場合を示す図である。
図11は、VDDからGNDまでにおいて、接点F3から接点F4に駆動電流を流した場合を示した図である。
図10と
図11とでは、駆動電流の供給の向きが90度異なっている。ブリッジ回路を構成する4つの抵抗のうち3つの抵抗の抵抗値をRとし、1つの抵抗の抵抗値をR+αとする。αは、抵抗値のオフセットである。
図10において、点Lでの電位は以下の式(1)のようになり、点Mでの電位は以下の式(2)のようになり、点Lと点Mとの電位差は、以下の式(3)のように示される。以下の式のSは、磁界により発生したホール電圧である。
【0058】
【0059】
また、
図11において、点Lでの電位は以下の式(4)のようになり、点Mでの電位は以下の式(5)のようになり、点Lと点Mとの電位差は、以下の式(6)のように示される。
【0060】
【0061】
式(3)の電圧値と式(6)の電圧値との差分は、以下の式(7)となる。
【0062】
【0063】
式(7)からも明らかなように、式(3)と式(6)との差分を算出することにより、ホール素子のオフセット電圧に対応する抵抗値がキャンセルされるとともに、ホール電圧の値を2倍にすることができる。
【0064】
本実施の形態では、検出部602と、電流源604とが接続されているスイッチ回路608が用いられる(
図1参照)。本実施の形態では、スイッチ回路608を制御することにより、第1状態と第2状態とに切換えることができる。第2状態は、第1状態における駆動電極を接地電極とし、第1状態における接地電極を駆動電極とする状態である。
【0065】
第1状態は、
図3および
図4に示す状態(
図10に対応する状態)である。
図12は、第2状態(
図11に対応する状態)を示す図である。
図12に示すように、第2状態では、第1駆動電極101および第2駆動電極102の各々が第1接地電極および第2接地電極となり、第1接地電極151および第2接地電極152の各々が第1駆動電極および第2駆動電極となる。
【0066】
また、第1駆動電極101が、本開示の「第1電極」に対応し、第1接地電極151が、本開示の「第2電極」に対応し、第2接地電極152が、本開示の「第3電極」に対応し、第2駆動電極102が、本開示の「第4電極」に対応する。
【0067】
図4に示すように、第1状態は、第1電極(第1駆動電極101)に供給された駆動電流が第2電極(第1接地電極151)および第3電極(第2接地電極152)に流れておりかつ第4電極(第2駆動電極102)に供給された駆動電流が第2電極(第1接地電極151)および第3電極(第2接地電極152)に流れている状態である。
【0068】
図12に示すように、第2状態は、第2電極(第1接地電極151)に供給された駆動電流が第1電極(第1駆動電極101)および第4電極(第2駆動電極102)に流れておりかつ第3電極(第2接地電極152)に供給された駆動電流が第1電極(第1駆動電極101)および第4電極(第2駆動電極102)に流れている状態である。
【0069】
Y軸検出部514は、該第1状態であるときの合算部510からの出力値(ホール電圧)を記憶部(図示せず)に格納し、第2状態であるときの合算部510からの出力値(ホール電圧)を記憶部に格納する。そして、Y軸検出部514は、第1状態であるときの合算部510からの出力値と、第2状態であるときの合算部510からの出力値との差分値を算出する。Y軸検出部514は、該差分値に基づいて、Y軸方向の磁界を検出する。このY軸方向の磁界は、オフセット電圧がキャンセルされた磁界である。
【0070】
X軸検出部516は、第1状態であるときの合算部512からの出力値(ホール電圧)を記憶部に格納し、第2状態であるときの合算部512からの出力値(ホール電圧)を記憶部に格納する。そして、X軸検出部516は、第1状態であるときの合算部512からの出力値と、第2状態であるときの合算部512からの出力値との差分値を算出する。X軸検出部516は、該差分値に基づいて、X軸方向の磁界を検出する。このX軸方向の磁界は、オフセット電圧がキャンセルされた磁界である。
【0071】
以上のように、第6の実施の形態の磁気センサにおいては、1つのホール素子を第1状態および第2状態に切換えることによって、オフセット電圧がキャンセルされたの磁界を検出することができる。
【0072】
<第7の実施の形態>
第6の実施の形態では、1つのホール素子を第1状態および第2状態のいずれかに切換えることによりオフセット電圧がキャンセルされた磁界を検出する構成を説明した。第7の実施の形態の磁気センサは、スイッチ回路を省略するとともに、第1状態であるホール素子と第2状態であるホール素子とを用いて、オフセット電圧がキャンセルされた磁界を検出する。
図13および
図14は、第7の実施の形態の磁気センサの構成例を示す図である。第7の実施の形態の磁気センサは、第1ホール素子801と、第2ホール素子802と、検出部602Gを含む制御回路とを有する。
図13は、第1ホール素子801と、第2ホール素子802とを示した図であり、
図14は、検出部602Gを示した図である。第1ホール素子801は、
図2のホール素子100と同一の構成である。以下に、第2ホール素子802を説明する。
【0073】
第2ホール素子802は、第3駆動電極103と、第4駆動電極104と、第3接地電極153と、第4接地電極154と、第11検出電極211と、第12検出電極212と、第13検出電極213と、第14検出電極214と、第15検出電極215と、第16検出電極216と、第17検出電極217と、第18検出電極218とを有する。
図2で説明した「検出電極群」は、「第1検出電極群」とも称する。また、第11検出電極211と、第12検出電極212と、第13検出電極213と、第14検出電極214と、第15検出電極215と、第16検出電極216と、第17検出電極217と、第18検出電極218とを総括的に「第2検出電極群」とも称する。
【0074】
第3駆動電極103および第4駆動電極104は、制御部606の制御により、駆動電流が供給される電極である。第3接地電極153および第4接地電極154は、接地電位に接続された電極である。検出電極群は、発生した磁界により生じたホール電圧を検出するための電極である。
【0075】
また、第3駆動電極103および第4駆動電極104と、第3接地電極153および第4接地電極154と、第11検出電極211および第13検出電極213と、第12検出電極212および第14検出電極214と、第15検出電極215および第17検出電極217と、第16検出電極216および第18検出電極218との各々は、重心Cにおいて、点対称の位置関係にある。
【0076】
第3接地電極153は、第3駆動電極103のY軸の負方向に離間して配置される。第4接地電極154は、第3駆動電極103のX軸の負方向に離間して配置される。第4駆動電極104は、第3接地電極153のX軸の負方向に離間して配置されかつ第4接地電極154のY軸の負方向に離間して配置される。
【0077】
また、第11検出電極211は、第3駆動電極103のY軸の正方向に離間して配置される。第12検出電極212は、第3駆動電極103のX軸の正方向に離間して配置される。第13検出電極213は、第4駆動電極104のY軸の負方向に離間して配置される。第14検出電極214は、第4駆動電極104のX軸の負方向に離間して配置される。第15検出電極215は、第3接地電極153のY軸の負方向に離間して配置される。第16検出電極216は、第3接地電極153のX軸の正方向に離間して配置される。第17検出電極217は、第4接地電極154のY軸の正方向に離間して配置される。第18検出電極218は、第4接地電極154のX軸の負方向に離間して配置される。
【0078】
第2検出電極群は、第3駆動電極103から第3接地電極153および第4接地電極154に駆動電流が流れており、かつ、第4駆動電極104から第3接地電極153および第4接地電極154に駆動電流が流れている状態において、磁界に応じて発生するホール電圧を検出する。
【0079】
次に、
図14を用いて、各電極と、検出部602Gとの接続関係を説明する。検出部602Gは、アンプ502,504,506,508,552,554,556,558と、合算部510,512,560,562と、差分部580,582と、Y軸検出部514と、X軸検出部516とを有する。
【0080】
第16検出電極216と第18検出電極218とがアンプ552に接続されている第14検出電極214と第12検出電極212とがアンプ554に接続されている。第15検出電極215と第17検出電極217とがアンプ556に接続されている。第11検出電極211と第13検出電極213とがアンプ558に接続されている。
【0081】
合算部560は、アンプ552で増幅されたホール電圧値(第2ホール素子802におけるY軸方向の磁界に対応するホール電圧値)と、アンプ554で増幅されたホール電圧値(第2ホール素子802におけるY軸方向の磁界に対応するホール電圧値)とを合算する。
【0082】
差分部580は、合算部510から出力されるホール電圧の合算値(第1ホール素子801におけるY軸方向の磁界に対応するホール電圧値)と、合算部560から出力されるホール電圧の合算値(第2ホール素子802におけるY軸方向の磁界に対応するホール電圧値)との差分値を算出する。この差分値は、オフセット電圧がキャンセルされたY軸方向のホール電圧である。Y軸検出部514は、該ホール電圧に基づいて、Y軸の磁界を検出する。
【0083】
合算部562は、アンプ556で増幅されたホール電圧値(第2ホール素子802におけるX軸方向の磁界に対応するホール電圧値)と、アンプ558で増幅されたホール電圧値(第2ホール素子802におけるX軸方向の磁界に対応するホール電圧値)とを合算する。なお、合算部510,512の処理は、
図4と同様である。
【0084】
差分部582は、合算部512から出力されるホール電圧の合算値(第1ホール素子801におけるX軸方向の磁界に対応するホール電圧値)と、合算部562から出力されるホール電圧の合算値(第2ホール素子802におけるX軸方向の磁界に対応するホール電圧値)との差分値を算出する。この差分値は、オフセット電圧がキャンセルされたX軸方向のホール電圧である。X軸検出部516は、該ホール電圧に基づいて、X軸の磁界を検出する。
【0085】
以上により、第7の実施の形態の磁気センサは、オフセット電圧がキャンセルされた、X軸方向およびY軸方向の磁界を検出できる。
【0086】
第7の実施の形態のホール素子においては、第6の実施の形態の磁気センサと比べると、2つのホール素子が必要となりサイズが大きくなり、スイッチ回路を必要としない。磁気センサの設計者は、装置サイズ、およびスイッチ回路の有無に応じて、第6の実施の形態の構成および第7の実施の形態の構成のいずれを採用するかを決定すればよい。
【0087】
以下では、「上述の第1状態のホール素子と第2状態のホール素子との関係」、および「第1ホール素子と第2ホール素子との関係」をまとめて「特定の関係」とも称する。
【0088】
<第8の実施の形態>
上述の実施の形態では、主に、検出される磁界の方向が2方向(X軸方向およびY軸方向)であるホール素子を説明した。第8の実施の形態では、検出可能な磁界の方向が3方向(X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向)であるホール素子を説明する。
図15は、第8の実施の形態のホール素子100Hの構成例を示す図である。ホール素子100Hは、ホール素子100(
図2参照)に形成されている4隅の拡散層230が省略されるとともに、該4隅の各々に、コンタクト領域および電極が配置される(つまり、4つのコンタクト領域と、4つの電極が配置される)。該4つの電極は、第5駆動電極105、第5接地電極155、第20検出電極220、および第21検出電極221である。第20検出電極220、および第21検出電極221が、本開示の「第3電極群」に対応する。
図15および後述の
図16の例では、拡散層322が設けられている。
【0089】
第5駆動電極105は、第1検出電極201のY軸の正方向に離間しており、かつ第2検出電極202のX軸の負方向に離間して配置される。第5接地電極155は、第3検出電極203のY軸の負方向側であり、かつ第4検出電極204のX軸の正方向に離間して配置される。第20検出電極220は、第7検出電極207のY軸の負方向側であり、かつ第8検出電極208のX軸の負方向に離間して配置される。第21検出電極221は、第7検出電極205のY軸の正方向側であり、かつ第6検出電極206のX軸の正方向に離間して配置される。
【0090】
本実施の形態では、X軸およびY軸の磁界を検出するX・Y軸モードと、Z軸の磁界を検出するZ軸モードとに制御回路により切り換えられる。
図15は、X・Y軸モードに切り換えられているときを示す図である。
図16は、Z軸モードに切り換えられているときを示す図である。Z軸モードにおいて、磁気センサがZ軸の磁界を検出するために、半導体基板の表面における駆動電流の水平成分(たとえば、
図3に示す経路I2を流れる電流)が用いられる。
【0091】
X・Y軸モードは、
図15に示すように、第1駆動電極101と第2駆動電極102とに駆動電流が供給されており、第1接地電極151と第2接地電極152とが接地電位を有するモードである。また、X・Y軸モードは、第5駆動電極105には駆動電流が供給されておらず、第5接地電極155が接地電位を有さないモードである。
【0092】
Z軸モードは、
図16に示すように、第1駆動電極101と第2駆動電極102とに駆動電流が供給されておらず、第1接地電極151と第2接地電極152とが接地電位を有さないモードである。また、Z軸モードは、第5駆動電極105に駆動電流が供給されており、第5接地電極155が接地電位を有するモードである。つまり、Z軸モードでは、第5駆動電極105に供給された駆動電流が拡散層を経由して第5接地電極155まで流れるモードである。
【0093】
図16に示すように、Z軸の正方向の磁界が生じている場合には、第20検出電極220では、該Z軸方向の磁界と、駆動電流の水平成分の電流(たとえば、
図3に示す経路I2を流れる電流)とに基づくホール効果により、正のホール電圧(+Fz)が検出される。また、Z軸の正方向の磁界が生じている場合には、第21検出電極221では、該Z軸方向の磁界と、駆動電流の水平成分の電流(たとえば、
図3に示す経路I2を流れる電流)とに基づくホール効果により、負のホール電圧(-Fz)が検出される。
【0094】
図17は、本実施の形態の磁気センサ1000Hの構成例を示す図である。
図17に示すように、磁気センサ1000Hは、ホール素子100Hと、検出部602Hを有する制御回路とを有する。第20検出電極220と、第21検出電極221とはアンプ509に接続されている。アンプ509では、第20検出電極220と、第21検出電極221とで検出されたホール電圧(Z軸方向の磁界に対応するホール電圧)が増幅される。Z軸検出部514は、アンプ509で増幅されたホール電圧値に基づいて、Z軸の磁界を検出する。
【0095】
以上のように、本実施の形態の磁気センサ1000Hであれば、X軸およびY軸のみならず、Z軸の磁界をも検出できる。
【0096】
[その他の実施の形態]
(1) 上述した電極の配置に限られず、電極を他の配置にした場合であっても、磁気センサは、磁界を検出できる。
図18は、別の実施の形態のY軸の磁界を検出するモードを示す図である。
図4の例では、内側の4つの電極が駆動電極および接地電極である構成が示されているが、
図18の例では、外側の4つの電極が駆動電極および接地電極である構成が示されている。
【0097】
図19および
図20は、Y軸の磁界を検出せずにX軸の磁界を検出するモードであるときのホール素子を示した図である。
図19の例では、内側の4つの電極が駆動電極および接地電極である構成が示されているが、
図20の例では、外側の4つの電極が駆動電極および接地電極である構成が示されている。
【0098】
(2)
図21は、
図16のホール素子と、「特定の関係」にあるホール素子を示す図である。制御回路は、Z軸の磁界を検出するモードにおいて、
図16で示したホール素子の状態と、
図21で示したホール素子の状態とに所定期間毎に切換えることにより、オフセット電圧がキャンセルされたZ軸の磁界を検出できる。また、磁気センサは、
図16で示した第1ホール素子と、
図21で示した第2ホール素子とを備えることによりオフセット電圧がキャンセルされたZ軸の磁界を検出できる。
【0099】
(3)
図16においては、磁気センサが、Z軸の磁界を検出するための1つの電極群(第5駆動電極105、第5接地電極155、第20検出電極220、および第21検出電極221)を有する構成を説明した。しかしながら、ホール素子は、Z軸の磁界を検出するための複数の電極群を有する構成が採用されてもよい。
図22は、4組の電極群を有する構成が採用されたホール素子の構成例である。
図22の例では、ホール素子は、4つの電極群700A~700Dを有する。4つの電極群700A~700Dの各々は、2つの駆動電極2つの検出電極により構成される。また、X軸の磁界を検出するモードにおいてもX軸の磁界を検出するための複数の電極群を有する構成が採用されてもよい。Y軸の磁界を検出するモードにおいてもY軸の磁界を検出するための複数の電極群を有する構成が採用されてもよい。
【0100】
また、
図23は、
図22で示したホール素子と「特定の関係」にあるホール素子を示す図である。制御回路は、
図22で示したホール素子の状態と、
図22で示したホール素子の状態とに所定期間毎に切換えることにより、オフセット電圧がキャンセルされたZ軸の磁界を検出できる。
【0101】
(4)
図15の例では、Z軸の磁界を検出するための第5駆動電極105と第5接地電極155とが
図2のホール素子100に対して新たに設けられる例を説明した。しかしながら、第5駆動電極105と第5接地電極155とを新たに設けずにZ軸の磁界を検出する構成が採用されてもよい。
図24は、この構成が採用されたホール素子の構成例を示す図である。
図24の構成であっても、磁気センサは、Z軸の磁界を検出できる。
図25は、
図24のホール素子と、「特定の関係」にあるホール素子を示す図である。制御回路は、Z軸の磁界を検出するモードにおいて、
図24で示したホール素子の状態と、
図25で示したホール素子の状態とに所定期間毎に切換えることにより、オフセット電圧がキャンセルされたZ軸の磁界を検出できる。また、磁気センサは、
図24で示した第1ホール素子と、
図25で示した第2ホール素子とを備えることによりオフセット電圧がキャンセルされたZ軸の磁界を検出できる。なお、
図24および
図25の例では拡散層2202を有する構成が採用されている。なお、
図24および
図25の例では、拡散層2202が採用されている。
【0102】
(5) 第7の実施の形態で説明した検出部602Gの構成は他の構成としてもよい。
図26は、検出部602Gとは異なる検出部602Iの構成を示した図である。以下では、第1ホール素子801と、第2ホール素子802とにおいて、駆動電極またはグランド電極との位置関係が同一である電極を、「対応する電極」という。対応する電極は、検出されるホール電圧の方向(X軸の正方向、X軸方向の負方向、Y軸の正方向、およびY軸の負方向)が同一である。たとえば、第1ホール素子801の第3検出電極203と、第2ホール素子802の第12検出電極212とは対応する電極となる。
【0103】
図26の例では、対応する電極のホール電圧が平均化されて1のアンプに入力される。
図26の例では、第3検出電極203からの配線と、第12検出電極212からの配線とがアンプ502に接続されている。つまり、第3検出電極203で検出されたホール電圧(+Fx)と、第12検出電極212でホール電圧(+Fx)とが平均化されて、新たなホール電圧(+Fx)として、アンプ502に入力される。他の検出電極からのホール電圧も同様に、1のアンプに入力される。
【0104】
また、検出部602Gは、第1状態および第2状態に切替える第5の実施の形態の検出部に適用されてもよい。
【0105】
検出部602G(
図14参照)においては、たとえば、第3電極203および第1電極201で検出されたホール電圧と、第7電極207および第5電極205で検出されたホール電圧とが合算部510で合算されることから、感度を向上させつつ、オフセット電圧をキャンセルできる。一方、検出部602I(
図26参照)においては、アンプの数を減少させることができる。磁気センサの設計者は、検出精度、およびアンプの数(つまり、磁気センサの装置サイズ)に応じて、検出部602Gおよび検出部602Iのいずれを採用するかを決定すればよい。
【0106】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
100 ホール素子、101 第1駆動電極、102 第2駆動電極、151 第1接地電極、152 第2接地電極、201 第1検出電極、202 第2検出電極、203 第3検出電極、204 第4検出電極、205 第5検出電極、206 第6検出電極、207 第7検出電極、208 第8検出電極、230 拡散層、250 半導体基板、260 半導体領域、500 制御回路、502,504,506,508 アンプ
510,512 合算部、514 Y軸検出部、516 X軸検出部、1000 磁気センサ。