(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】同軸導波管変換器
(51)【国際特許分類】
H01P 5/103 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
H01P5/103 E
(21)【出願番号】P 2020104920
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003388
【氏名又は名称】東京計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】松永 基
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 敬一
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03023382(US,A)
【文献】米国特許第03293573(US,A)
【文献】国際公開第2018/016071(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/101699(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力の伝送路を変換する同軸導波管変換器であって、
前記
高周波電力の伝送方向に平行して相対向する2つの短辺壁部と、該2つの短辺壁部に直
交して相対向するとともに前記2つの短辺壁部より大きい幅に形成された2つの長辺壁部と、前記伝送方向の一方側を閉塞する閉塞壁部とを有して方形状の内部空間を画成するとともに、前記伝送方向の他方側において開口部が形成された方形導波管と、
前記閉塞壁部において前記方形導波管の外部から前記内部空間に突出するように前記伝送方向に延在する導体である突出部と、
前記2つの長辺壁部の対向方向に延在するとともに前記突出部と一方の長辺壁部とを接続する導体である第1接続部と、
前記2つの短辺壁部の対向方向に延在するとともに前記突出部または前記第1接続部と前記2つの短辺壁部の少なくとも一方とを接続
し、前記第1接続部が接続されている長辺壁部から離間する導体である第2接続部と
を備える同軸導波管変換器。
【請求項2】
前記第1接続部は、該第1接続部が接続される長辺壁部側に向かって前記伝送方向における前記開口部側に傾斜するように形成される傾斜部を有することを特徴とする請求項1に記載の同軸導波管変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、同軸線路と導波管とに伝送路を変換する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同軸線路と導波管とに高周波電力の伝送路を変換する同軸導波管変換器として、モノポール給電を用いたモノポール型同軸導波管変換器や、ループ型結合を用いたループ型同軸導波管変換器などが知られている。
【0003】
図13に示すように、モノポール型同軸導波管変換器8は、伝送方向一方が開口された中空の方形状に形成され、伝送方向に平行に相対向する2つの短辺壁部と、これら2つの短辺壁部を接続するように対向する長辺壁部とを有する方形導波管80と、この方形導波管80の一方の長辺壁部において伝送方向に直行するように、方形導波管80内に突出される同軸線の中心導体であるプローブ84とによって構成される。
【0004】
また、
図14に示すように、ループ型同軸導波管変換器9は、方形導波管80と、この方形導波管80における開口部に対向する壁部において、伝送方向に沿うように方形導波管80内に突出されるとともに、長辺壁部に接続されてループアンテナをなすプローブ94とによって構成される。
【0005】
なお、関連する技術として、端面を短絡した導波管と、中心導体に接続されたプローブを有する同軸線路とを備え、導波管の短絡面に直交する側面の挿入孔から導波管内部へ同軸線路のプローブを挿入する構成の導波管-伝送線路変換器において、導波管の側面と同軸線路との間に、プローブを中心とするラジアル線路を設け、このラジアル線路で導波管と同軸線路のインピーダンス整合を図ることを特徴とする導波管-伝送線路変換器、が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ループ型同軸導波管変換器には、真空環境における耐電力性はモノポール型同軸導波管変換器より高いものの、更なる耐電力性の向上が求められている。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、真空環境における耐電力性をより向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本実施形態の同軸導波管変換器は、高周波電力の伝送路を変換する同軸導波管変換器であって、前記伝送方向に平行して相対向する2つの短辺壁部と、該2つの短辺壁部に直行して相対向するとともに前記2つの短辺壁部より大きい幅に形成された2つの長辺壁部と、前記伝送方向の一方側を閉塞する閉塞壁部とを有して方形状の内部空間を画成するとともに、前記伝送方向の他方側において開口部が形成された方形導波管と、前記閉塞壁部において前記方形導波管の外部から前記内部空間に突出するように前記伝送方向に延在する導体である突出部と、前記2つの長辺壁部の対向方向に延在するとともに前記突出部と一方の長辺壁部とを接続する導体である第1接続部と、前記2つの短辺壁部の対向方向に延在するとともに前記突出部または前記第1接続部と前記2つの短辺壁部の少なくとも一方とを接続する導体である第2接続部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、真空環境における耐電力性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す側面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す斜視図である。
【
図4】第2の実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す側面図である。
【
図5】第3の実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す斜視図である。
【
図6】第3の実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す側面図である。
【
図7】第1の実施形態に係る同軸導波管変換器の反射特性を示す図である。
【
図8】第3の実施形態に係る同軸導波管変換器の反射特性を示す図である。
【
図9】第4の実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す斜視図である。
【
図10】第4の実施形態に係る同軸導波管変換器の反射特性を示す図である。
【
図11】第5の実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す斜視図である。
【
図12】第5の実施形態に係る同軸導波管変換器の反射特性を示す図である。
【
図13】従来のモノポール型同軸導波管変換器の構成を示す斜視図である。
【
図14】従来のループ型同軸導波管変換器の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
第1の実施形態に係る同軸導波管変換器について説明する。
図1、
図2は、それぞれ、本実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す斜視図、側面図である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る同軸導波管変換器1は、ミリ波、マイクロ波などの高周波電力の伝送方向(
図1中y方向)一方が開口された中空の方形状に形成された方形導波管10と、方形導波管10内に突出するように外部から挿入されたプローブ11とを備える。
【0015】
方形導波管10は、2つの長辺壁部101a,101bと、2つの短辺壁部102a,102bと、基端壁部103とを有する。2つの長辺壁部101a,101bのそれぞれは、伝送方向に直行するz方向に対向するように設けられた壁部である。2つの短辺壁部102a,102bのそれぞれは、伝送方向及びz方向に直行するx方向に対向するとともに、z方向に離間した2つの長辺壁部101a,101bを接続するように設けられた壁部である。2つの長辺壁部101a,101bと、2つの短辺壁部102a,102bとによって、伝送方向に直行する方向から伝送路が囲繞される。
【0016】
2つの短辺壁部102a,102bのそれぞれは、z方向の辺の長さが距離L1となるように形成されるのに対し、2つの長辺壁部101a,101bのそれぞれは、x方向の辺の長さが距離L1より大きい距離L2となるように形成される。
【0017】
基端壁部103は、2つの長辺壁部101a,101bと、2つの短辺壁部102a,102bとにより形成された方形筒形状の一方の底部を成すように、伝送方向の基端側に設けられた壁部である。伝送方向における基端壁部103の逆側には開口部104が形成される。
【0018】
プローブ11は、突出部110aと、第1接続部110bと、2つの第2接続部111a,111bとを有する。突出部110aは、基端壁部103に形成された孔1031から方形導波管10内部に挿入され、伝送方向に延在する同軸ケーブルの中心導体である。第1接続部110bは、z方向に延在し、長辺壁部101の一方、本実施形態においては長辺壁部101bと突出部110aとを電気的に接続する導体である。本実施形態においては、突出部110a及び第1接続部110bは、略L字状に屈曲された中心導体として構成される。
【0019】
2つの第2接続部111a,111bは、それぞれ、x方向に延在するとともに、突出部110a及び第1接続部110bと短辺壁部102とを電気的に接続する円柱状の導体である。本実施形態においては、第2接続部111aが短辺壁部102aと接続され、第2接続部111bが短辺壁部102bと接続される。なお、2つの第2接続部111a,111bの接続位置は、求める特性に応じた計算に基づく突出部110aまたは第1接続部110b上の位置に決定される。
【0020】
このような同軸導波管変換器1によれば、ループアンテナ構造における電界分布の集中を2つの第2接続部111a,111b上に分散することができ、これによってループアンテナと比較して耐電力性をより向上させることができる。
【0021】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る同軸導波管変換器について説明する。
図3、
図4は、それぞれ、第2の実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す斜視図、側面図である。
【0022】
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る同軸導波管変換器2は、プローブ11に代えてプローブ21を備える点が第1の実施形態とは異なる。プローブ21は、突出部210と、第1接続部211と、第2接続部212とを有する。
【0023】
突出部210は、基端壁部103に形成された孔1031から方形導波管10内部に挿入され、伝送方向に延在する同軸ケーブルの中心導体である。第1接続部211は、z方向に延在し、長辺壁部101の一方、本実施形態においては長辺壁部101bと突出部210とを電気的に接続する導体である。
【0024】
第2接続部212は、x方向に延在するとともに、突出部210または第1接続部211と短辺壁部102a,102bとを電気的に接続する角柱上の導体である。第2接続部212は、短辺壁部102aと短辺壁部102bとを接続するように設けられ、突出部210は、第2接続部212を介して第1接続部211と接続される。
【0025】
このように、第2接続部212を角柱状に形成した同軸導波管変換器2によっても、第1の実施形態に係る同軸導波管変換器1と同様の効果を得ることができる。
【0026】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る同軸導波管変換器について説明する。
図5、
図6は、それぞれ、本実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す斜視図、側面図である。
図7、
図8は、それぞれ、第1、第3の実施形態に係る同軸導波管変換器の反射特性を示す図である。
【0027】
図5、
図6に示すように、本実施形態に係る同軸導波管変換器3は、プローブ21に代えて、プローブ31を備える点において第2の実施形態とは異なる。プローブ31は、第1接続部211に代えて、第1接続部311を備える点においてプローブ21とは異なる。
【0028】
第1接続部311は、第1接続部211と同様に、第2接続部212を介して突出部210と接続されるとともに、長辺壁部101bと接続される全体として厚みのある板状に形成された導体である。第1接続部311は、伝送方向(y方向)の開口部104側において傾斜部3111が形成され、側方(x方向)から見て1辺が傾斜する略台形状に形成される。傾斜部3111は、z方向における長辺壁部101b側に向かって伝送方向の開口部104側に傾斜するように形成される。
【0029】
このような傾斜部3111を有する第1接続部311によれば、
図7に示す第1の実施形態に係る同軸導波管変換器1の反射特性と比較して、
図8に示すように帯域を広くすることができ、反射特性を向上させることができる。
【0030】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る同軸導波管変換器について説明する。
図9は、本実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す斜視図である。
図10は、本実施形態に係る同軸導波管変換器の反射特性を示す図である。
【0031】
図9に示すように、本実施形態に係る同軸導波管変換器4は、プローブ11に代えて、プローブ41を備える点において第1の実施形態とは異なる。プローブ41は、短辺壁部102aと接続される第2接続部111aを有さない点においてプローブ11とは異なる。
【0032】
このように、一方の第2接続部111bのみを有するプローブ41を備える同軸導波管変換器4によっても、
図10に示すように、第1の実施形態に係る同軸導波管変換器1と同様な反射特性を達成することができる。
【0033】
<第5の実施形態>
第5の実施形態に係る同軸導波管変換器について説明する。
図11は、実施形態に係る同軸導波管変換器の構成を示す斜視図である。
図12は、本実施形態に係る同軸導波管変換器の反射特性を示す図である。
【0034】
図11に示すように、本実施形態に係る同軸導波管変換器5は、プローブ11に代えて、プローブ51を備える点において第1の実施形態とは異なる。プローブ51は、短辺壁部102aと接続される第2接続部111aに代えて、x方向における短辺壁部102a側へ突出するように且つ短辺壁部102aに接続されないように延在する延在部511aを有する点においてプローブ11とは異なる。
【0035】
このように、一方に短辺壁部102bと接続する第2接続部111bを有し、他方に短辺壁部102aと接続しない延在部511aを有するプローブ51を備える同軸導波管変換器5によっても、
図12に示すように、第1の実施形態に係る同軸導波管変換器1と同様な反射特性を達成することができる。
【0036】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 同軸導波管変換器
10 方形導波管
101a,101b 短辺壁部
102a,102b 長辺壁部
11 プローブ
110a 突出部
110b 第1接続部
111a,111b 第2接続部