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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20240619BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20240619BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B60H1/34 671A
B60H1/34 611B
F24F13/15 B
F24F13/20 207
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020114776
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012733
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】丸山 智也
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-268524(JP,A)
【文献】特開平02-225933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/15
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気路に配置され、回動により風向を調整可能な風向調整羽根と、
この風向調整羽根を回動させるアクチュエータと、
前記風向調整羽根よりも前記通気路の下流側に、前記風向調整羽根の回動方向と交差する方向に沿って配置された下流側羽根と、
前記風向調整羽根及び前記下流側羽根に対して前記通気路の下流側に位置し、前記風向調整羽根と非連結の操作ノブと、
この操作ノブの操作に応じて前記アクチュエータを制御して前記風向調整羽根の振り角を設定する手動モードと、前記操作ノブの操作に依らずに前記アクチュエータを制御して前記風向調整羽根を自動的に回動させる自動モードと、を有し、設定手段により前記手動モードと前記自動モードとのいずれかを選択的に設定可能な制御手段と、を備え、
前記操作ノブは、前記下流側羽根に沿って移動することで前記制御手段の前記手動モードでの前記風向調整羽根の振り角を指示する
ことを特徴とする風向調整装置
【請求項2】
風向調整羽根よりも通気路の下流側に、前記風向調整羽根の回動方向と同方向に回動可能に配置された下流側羽根を備え、
操作ノブは、前記下流側羽根に対し前記通気路の下流側に配置され、前記下流側羽根と一体的に回動することで制御手段の手動モードでの前記風向調整羽根の振り角を指示する
ことを特徴とする請求項記載の風向調整装置。
【請求項3】
乗員の着座位置から目視可能な位置に配置された車両用の風向調整装置である
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動により風向を調整可能な風向調整羽根を備える風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物などにおける空調装置(室内機)には、人の位置などを検出して様々な風向に向けて自動的に風向調整羽根を動かす自動モードを備えるものが広く普及している。このような空調装置の場合、使用者は自動風向調整の動作そのものには関心を払うことが少なく、全体として室内の快適さに関心を払う。風向を調整する際には、一般的に、手元のリモコンを利用する。これは、室内機は通常壁などの高い位置にあって直接羽根を操作することが殆どなく、あるいは、着座姿勢から立って室内機に直接手を触れることの煩雑さから、遠隔操作が通常となっているからである。
【0003】
それに対し、乗用車などの車両用の空調装置においては、吹出口にある風向調整装置と乗員との距離が接近しており、かつ、乗員の着座位置も建築物における室内機との位置関係と異なり固定的である。そのため、車両用の空調装置においては、乗員が風向調整羽根の向きを直接手動操作して好みの快適さを設定する場合が多くある。
【0004】
また、現在風向調整羽根をモータなどのアクチュエータにより動作させるタイプの風向調整装置と、手動のみで動作させるタイプの風向調整装置とが混在しており、モータを利用するタイプの風向調整装置は少数派である。また、風向調整装置を普段使い慣れていない同乗者が風向を操作する場合には、モータを利用するタイプであるか否かを考えることなく手動で直接風向を操作することが有り得る。そのため、モータを利用するタイプの風向調整装置においても、直接風向を調整可能な仕様が求められる。
【0005】
さらに、風向調整装置は乗員に対して快適な風を供給する必要から、一般にインストルメントパネルでもその他の箇所でも乗員から目につきやすい位置に配置されることが多い。そのような場合、風向調整羽根を自動的に首振り動作させたときに、風向調整羽根の動作に合わせてその操作用の操作ノブが動くと、乗員にとって視覚的に邪魔に感じることが懸念される。一方で、操作ノブが目立たないと、手動操作において支障を来す。
【0006】
例えば、モータなどの動力源により風向調整羽根を回動させる風向調整装置において、動力源から風向調整羽根に動力を伝え、かつ、風向調整羽根からの力が動力源に直接及ばないようにするクラッチ機構を用いるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-67208号公報 (第3-5頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の構成の場合、風向調整羽根に摺動可能に設けられた操作ノブの摺動抵抗が大きいとクラッチが滑り、摺動抵抗が小さいと風向調整羽根の首振り動作時に操作ノブが連動して往復動作することとなる。頻繁にクラッチを滑らせるような使い方がされれば、クラッチ機能が低下することが懸念される。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、風向調整羽根を手動と自動とのそれぞれで選択的に動作させることが可能であり、風向調整羽根を手動操作するときには直感的に操作可能であるとともに、風向調整羽根を自動動作させたときに操作ノブが視覚的に邪魔になりにくい風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の風向調整装置は、通気路に配置され、回動により風向を調整可能な風向調整羽根と、この風向調整羽根を回動させるアクチュエータと、前記風向調整羽根よりも前記通気路の下流側に、前記風向調整羽根の回動方向と交差する方向に沿って配置された下流側羽根と、前記風向調整羽根及び前記下流側羽根に対して前記通気路の下流側に位置し、前記風向調整羽根と非連結の操作ノブと、この操作ノブの操作に応じて前記アクチュエータを制御して前記風向調整羽根の振り角を設定する手動モードと、前記操作ノブの操作に依らずに前記アクチュエータを制御して前記風向調整羽根を自動的に回動させる自動モードと、を有し、設定手段により前記手動モードと前記自動モードとのいずれかを選択的に設定可能な制御手段と、を備え、前記操作ノブは、前記下流側羽根に沿って移動することで前記制御手段の前記手動モードでの前記風向調整羽根の振り角を指示するものである。
【0011】
求項記載の風向調整装置は、請求項記載の風向調整装置において、風向調整羽根よりも通気路の下流側に、前記風向調整羽根の回動方向と同方向に回動可能に配置された下流側羽根を備え、操作ノブは、前記下流側羽根に対し前記通気路の下流側に配置され、前記下流側羽根と一体的に回動することで制御手段の手動モードでの前記風向調整羽根の振り角を指示するものである。
【0012】
請求項記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、乗員の着座位置から目視可能な位置に配置された車両用の風向調整装置であるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の風向調整装置によれば、風向調整羽根を手動と自動とのそれぞれで選択的に動作させることが可能であり、風向調整羽根を手動操作するときには操作ノブを用いて直感的に操作可能であるとともに、風向調整羽根を自動動作させたときには、操作ノブが風向調整羽根の動作に連動せずに一定の位置を保つことができ、視覚的に邪魔になりにくく、かつ、操作ノブの操作方向と風向調整羽根の回動方向とが一致し、風向調整時に風向調整羽根を直感的に操作できる
【0014】
求項記載の風向調整装置によれば、請求項記載の風向調整装置の効果に加えて、操作ノブの操作方向と風向調整羽根の回動方向とが一致し、風向調整時に風向調整羽根を直感的に操作できる。
【0015】
請求項記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、手動操作時には、乗員が操作ノブを容易に、かつ、直感的に操作できるとともに、自動動作時には、操作ノブが移動しないので、目視可能な位置にあっても視覚的に邪魔になりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の一実施の形態の風向調整装置を示す横断面図、(b)は同上風向調整装置を示す縦断面図である。
図2】同上風向調整装置の一部を示すブロック図である。
図3】同上風向調整装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図3において、10は風向調整装置である。風向調整装置10は、エアアウトレット、ベンチレータなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置10は、風が吹き出す側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置10は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置10は、任意の位置に配置されていてよいが、好ましくは、乗員の着座位置から目視可能な、インストルメントパネルなどの所定の設置位置に配置されている。図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置10の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0019】
風向調整装置10は、本体部12を備えている。本体部12は、構造部材としてのダクト部であるケース14を有する。
【0020】
ケース14は、風を案内する通気路15が内部に区画されている。ケース14は、前後方向に筒状に形成されている。本実施の形態において、ケース14は、角筒状に形成されている。ケース14の中心軸に平行な方向が通気路15の通気方向である。つまり、本実施の形態において、通気路15の通気方向は、前後方向であり、後方から前方に向かって通気される。すなわち、通気路15において、後側は通気方向の上流側、前側は通気方向の下流側である。
【0021】
図示される例では、ケース14は、上下方向に扁平であり、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。したがって、風向調整装置10は、横型の薄型に形成されている。
【0022】
ケース14の前端部にフィニッシャ16が取り付けられている。フィニッシャ16は、風向調整装置10の意匠部を構成する。フィニッシャ16は、本体部12に備えられる。フィニッシャ16には、吹出口17が形成されている。吹出口17は、四角形状に形成されている。本実施の形態において、吹出口17は、左右方向に長手状、つまり横長に形成されている。図示される例では、吹出口17の開口方向は、前後方向となっている。
【0023】
また、図1(a)及び図1(b)に示すように、ケース14内部の通気路15に風向調整羽根20が配置されている。風向調整羽根20は、板状(フィン状)に形成されたルーバである。風向調整羽根20は、一主面及び他主面が、それぞれ風を案内する案内面となっている。案内面が通気方向を横切って位置するように風向調整羽根20が通気路15に配置されている。風向調整羽根20は、ケース14に対して回動可能に支持された回動軸21を有する。回動軸21の中心が、風向調整羽根20の回動中心となる。回動軸21は、ケース14に回動可能に支持される。すなわち、ケース14には、回動軸21を受ける軸受け穴などの軸受け部22が形成されている。
【0024】
本実施の形態において、風向調整羽根20には、第一の風向調整羽根20aと、第二の風向調整羽根20bと、が設定されている。
【0025】
図示される例では、第一の風向調整羽根20aは、上下方向、すなわち吹出口17の長手方向と交差または直交する方向に沿って配置された縦フィンである。第一の風向調整羽根20aは、回動により風向を左右に調整するように配置されている。第一の風向調整羽根20aの回動軸21aは、上下方向に突設され、軸受け部22aに回動可能に支持される。
【0026】
一方、第二の風向調整羽根20bは、左右方向、すなわち吹出口17の長手方向に沿って配置された横フィンである。第二の風向調整羽根20bは、回動により風向を上下に調整するように配置されている。すなわち、第二の風向調整羽根20bと第一の風向調整羽根20aとは、回動方向が互いに交差している。第二の風向調整羽根20bの回動軸21bは、上下方向に突設され、軸受け部22bに回動可能に支持される。
【0027】
本実施の形態では、第一の風向調整羽根20aが第二の風向調整羽根20bよりも通気路15の下流側、つまり吹出口17に近い側に配置されている。第一の風向調整羽根20aは、吹出口17に臨んで位置している。すなわち、第一の風向調整羽根20aは、通気路15の下流側、本実施の形態では通気路15の出口部分に位置する。
【0028】
風向調整羽根20は、アクチュエータ24により回動される。アクチュエータ24は、例えばサーボモータなどのモータである。図示される例では、アクチュエータ24は、通気路15の外部に配置されている。アクチュエータ24は、風向調整羽根20の回動軸21に対し、伝達手段25を介して連結されている。伝達手段25は、例えば回動軸21と歯合されるギヤなどにより構成され、アクチュエータ24の駆動力を回動軸21に伝達して、風向調整羽根20を回動させる機能を有する。
【0029】
本実施の形態において、アクチュエータ24には、第一の風向調整羽根20aを回動させる第一のアクチュエータ24aと、第二の風向調整羽根20bを回動させる第二のアクチュエータ24bと、が設定されている。
【0030】
第一のアクチュエータ24aは、ケース14の下方に配置されている。第一のアクチュエータ24aは、第一の伝達手段25aを介して第一の風向調整羽根20aの回動軸21aと連結されている。
【0031】
また、第二のアクチュエータ24bは、ケース14の側方に配置されている。第二のアクチュエータ24bは、第二の伝達手段25bを介して第二の風向調整羽根20bの回動軸21bと連結されている。
【0032】
そして、本実施の形態において、風向調整羽根20は、複数配置され、図示しないリンクなどにより互いに連結されて互いに平行を維持しつつ同方向に回動するように連動される。第一の風向調整羽根20aは、左右方向、すなわち吹出口17の長手方向に互いに離れて複数配置されている。第二の風向調整羽根20bは、上下方向、すなわち吹出口17の長手方向と交差または直交する方向に互いに離れて複数配置されている。
【0033】
風向調整羽根20の振り角は、操作ノブ30によって指示可能となっている。操作ノブ30は、風向調整羽根20に対して通気路15の下流側に位置する。操作ノブ30は、風向調整羽根20と非連結に配置されている。すなわち、操作ノブ30は、風向調整羽根20に対して機械的に連結されていない。本実施の形態において、操作ノブ30は、第一の風向調整羽根20a及び第二の風向調整羽根20bのそれぞれに対して機械的に連結されていない。つまり、本実施の形態は、操作ノブ30と風向調整羽根20とを連結するためのクラッチなどの連結機構が廃された構成となっている。したがって、風向調整羽根20と操作ノブ30とは、それぞれ独立して動作可能となっている。
【0034】
操作ノブ30は、下流側部材である下流側羽根31に取り付けられている。下流側羽根31は、風向調整羽根20よりも通気路15の下流側に配置されている。下流側羽根31は、板状(フィン状)に形成されたルーバである。本実施の形態において、下流側羽根31は、左右方向、すなわち吹出口17の長手方向に沿って配置されている。すなわち、下流側羽根31は、第一の風向調整羽根20aの回動方向と交差する方向に沿って配置され、第二の風向調整羽根20bと平行または略平行に配置されている。図示される例では、下流側羽根31は、吹出口17の上下方向の中央部に配置されている。
【0035】
また、下流側羽根31は、通気路15に回動可能に支持されている。下流側羽根31は、長手方向の両端部に下流側回動軸32を有する。下流側回動軸32の中心が下流側羽根31の回動中心となる。本実施の形態において、下流側回動軸32は、回動軸21bと平行または略平行に配置されている。下流側回動軸32は、ケース14に回動可能に支持される。すなわち、ケース14には、下流側回動軸32を受ける軸受け穴などの回動軸受け部33が形成されている。下流側羽根31は、第一の風向調整羽根20aの回動方向と交差または直交する方向、及び、第二の風向調整羽根20bの回動方向と同方向に回動可能となっている。本実施の形態において、下流側羽根31は、上下方向に回動可能となっている。下流側羽根31は、操作ノブ30を上下に移動させることで追従して上下に回動するように構成されている。
【0036】
そして、操作ノブ30は、下流側羽根31に対し通気路15の下流側に配置されて吹出口17に露出している。操作ノブ30の操作は、検出手段35によって検出される。検出手段35は、使用者による操作ノブ30の操作に応じた風向調整羽根20の振り角の指示を読み取り可能である。本実施の形態において、検出手段35には、第一の風向調整羽根20aに対する振り角を検出する第一の検出手段35aと、第二の風向調整羽根20bに対する振り角を検出する第二の検出手段35bと、が設定されている。
【0037】
第一の検出手段35aは、下流側羽根31に沿って取り付けられており、この第一の検出手段35aに取り付けられた操作ノブ30が下流側羽根31に沿って移動可能となっている。第一の検出手段35aは、下流側羽根31に沿う操作ノブ30の操作量または移動量を検出する。つまり、第一の検出手段35aは、中立位置にある操作ノブ30が下流側羽根31に沿って一方向またはその反対方向の他方向に移動したときに、その中立位置からの移動量を、移動方向を含めて検出する。本実施の形態において、第一の検出手段35aは、例えば下流側羽根31の長手方向に抵抗値が可変される可変抵抗器すなわちスライドボリューム抵抗が用いられる。つまり、操作ノブ30の下流側羽根31に対する摺動抵抗は、第一の検出手段35aを構成するスライドボリューム抵抗の摺動抵抗に応じて決定される。この例では、第一の検出手段35aは、中立位置にある操作ノブ30が一方向に移動するとその移動量に応じて抵抗値が増加し、他方向に移動するとその移動量に応じて抵抗値が減少することから、操作ノブ30の中立位置からの移動量を、移動方向を含めてアナログ量として検出可能となっている。
【0038】
第二の検出手段35bは、下流側羽根31の下流側回動軸32に取り付けられている。第二の検出手段35bは、下流側羽根31の回動量を検出する。つまり、第二の検出手段35bは、操作ノブ30による下流側羽根31の回動量を検出する。言い換えると、第二の検出手段35bは、操作ノブ30の下流側羽根31と交差する方向である上下方向への操作量または移動量を検出する。つまり、第二の検出手段35bは、中立位置にある下流側羽根31が操作ノブ30の操作により一方向またはその反対方向の他方向に回動したときに、その中立位置からの回動量を、回動方向を含めて検出する。本実施の形態において、第二の検出手段35bは、例えば下流側羽根31の回動により抵抗値が可変される可変抵抗器すなわちボリューム抵抗(ポテンショメータ)が用いられる。この例では、第二の検出手段35bは、中立位置にある下流側羽根31が操作ノブ30の操作により一方向に回動するとその回動量に応じて抵抗値が増加し、他方向に回動するとその回動量に応じて抵抗値が減少することから、下流側羽根31の中立位置からの回動量、つまり操作ノブ30の下流側羽根31と交差する方向への移動量を、その方向を含めてアナログ量として検出可能となっている。
【0039】
アクチュエータ24は、図2に示す制御手段40により制御される。制御手段40としては、プログラム可能なマイコンボードなどが好適に用いられる。制御手段40には、入力側に検出手段35が電気的に接続され、出力側にアクチュエータ24が電気的に接続されている。本実施の形態において、制御手段40の入力側端子40aは、アナログ入力端子であり、出力側端子40bはデジタル出力端子である。制御手段40は、検出手段35から入力されたアナログ量に応じてデジタルの制御値を生成してアクチュエータ24に出力することで、アクチュエータ24を介して、風向調整羽根20を、検出手段35により検出されたアナログ量、つまり操作ノブ30の操作量に応じた振り角で回動させるように構成されている。制御手段40には、電源部43から給電されている。また、制御手段40は、検出手段35、及び、アクチュエータ24などとともに、接地電位に接続されている。
【0040】
制御手段40には、手動モードと自動モードとが設定されている。制御手段40は、手動モードにおいて、操作ノブ30(図3)の操作に応じてアクチュエータ24を制御して風向調整羽根20(図1(a)及び図1(b))の振り角を設定する。つまり、制御手段40は、手動モードにおいて、第一の検出手段35aにより検出された、下流側羽根31に沿う操作ノブ30の操作量または移動量(図1(a))に基づき、第一の風向調整羽根20aの振り角を設定する。また、手動モードにおいて、制御手段40は、第二の検出手段35bにより検出された、下流側羽根31と交差する方向への操作ノブ30の操作量または移動量(図1(b))に基づき、第二の風向調整羽根20bの振り角を設定する。
【0041】
一方、制御手段40は、自動モードにおいて、操作ノブ30(図3)の操作に依らずにアクチュエータ24を制御して風向調整羽根20を自動的に回動させる。制御手段40の手動モードと自動モードとは、設定手段45を用いて、使用者が選択的に設定可能である。設定手段45は、使用者が操作可能な、機械的、あるいは電気的なスイッチなどが好適に用いられる。
【0042】
そして、風向調整装置10では、使用者が設定手段45により手動モードと自動モードとのいずれかを設定すると、制御手段40は、設定されたモードで動作する。
【0043】
手動モードが設定されている場合、図1(a)及び図1(b)に示すように、使用者が操作ノブ30を操作すると、その操作に応じて風向調整羽根20が回動する。
【0044】
つまり、使用者が、操作ノブ30を摘み、第一の風向調整羽根20aを向けたい方向へと下流側羽根31に沿って移動させると、その移動量及び方向を第一の検出手段35aにより検出した結果が制御手段40(図2)に入力される。同様に、使用者が、操作ノブ30を摘み、第二の風向調整羽根20bを向けたい方向へと下流側羽根31と一体的に回動させると、その回動量及び方向を第二の検出手段35bにより検出した結果が制御手段40(図2)に入力される。
【0045】
図2に示す制御手段40では、入力された第一の検出手段35a及び/または第二の検出手段35bからのアナログ信号を読み取り、そのアナログ信号の変換処理を行って操作ノブ30の移動量及び移動方向に応じたデジタル信号(パルス信号)を生成し、第一のアクチュエータ24a及び/または第二のアクチュエータ24bに出力する。そして、第一のアクチュエータ24a及び/または第二のアクチュエータ24bが、制御手段40から出力されたデジタル信号に応じて駆動されることで、図1(a)及び図1(b)の二点鎖線に示すように、操作ノブ30の操作に応じた回動角度で第一の風向調整羽根20a及び/または第二の風向調整羽根20bを回動させる。
【0046】
したがって、使用者があたかも操作ノブ30を用いて第一の風向調整羽根20a及び/または第二の風向調整羽根20bを直接操作したかのように、操作ノブ30の操作に応じて第一の風向調整羽根20a及び/または第二の風向調整羽根20bが動作することで、従来の手動操作と同様の感覚で風向制御が可能になる。
【0047】
一方、自動モードが設定されている場合、図2に示す制御手段40は、予め決められたパターン、または、使用者によって入力あるいは指定されたパターンにしたがってデジタル信号を生成し、第一のアクチュエータ24a及び/または第二のアクチュエータ24bに出力することで、第一のアクチュエータ24a及び/または第二のアクチュエータ24bが、このデジタル信号に応じて図1(a)及び図1(b)に示す第一の風向調整羽根20a及び/または第二の風向調整羽根20bを自動的に回動させる。例えば、制御手段40(図2)は、第一の風向調整羽根20a及び/または第二の風向調整羽根20bを所定の速度または周期で繰り返し往復回動(オートスイング動作)させるようにデジタル信号を生成し出力する。操作ノブ30は、第一の風向調整羽根20a及び第二の風向調整羽根20bと非連結で独立しているから、第一の風向調整羽根20a及び/または第二の風向調整羽根20bの動作に対して非連動であって移動せず、また、仮に使用者が操作ノブ30を操作しても、その操作に伴う第一及び第二の検出手段35a,35bからの入力は制御手段40(図2)に無視される。
【0048】
このように、一実施の形態によれば、風向調整羽根20に対して操作ノブ30を非連結とし、制御手段40によって、操作ノブ30の操作に応じてアクチュエータ24を制御して風向調整羽根20の振り角を設定する手動モードと、操作ノブ30の操作に依らずにアクチュエータ24を制御して風向調整羽根20を自動的に回動させる自動モードと、のいずれかを選択的に実施することで、風向調整羽根20を手動と自動とのそれぞれで選択的に動作させることが可能であり、風向調整羽根20を手動操作するときには操作ノブ30を用いて直感的に操作可能であるとともに、風向調整羽根20を自動動作させたときには、操作ノブ30が風向調整羽根20の動作に連動せずに一定の位置を保つことができ、視覚的に邪魔になりにくい。すなわち、風向調整羽根20の自動動作の可視化を望まない場合の操作ノブ30の動作を止めることが可能である。
【0049】
風向調整羽根20よりも通気路15の下流側に、第一の風向調整羽根20aの回動方向と交差する方向に沿って下流側羽根31を配置するとともに、この下流側羽根31に対し通気路15の下流側に操作ノブ30を配置し、制御手段40の手動モードにおいて、操作ノブ30を下流側羽根31に沿って移動することで第一の風向調整羽根20aの振り角を指示するので、操作ノブ30の操作方向と第一の風向調整羽根20aの回動方向とが一致し、風向調整時に第一の風向調整羽根20aを直感的に操作できる。
【0050】
風向調整羽根20よりも通気路15の下流側に、第二の風向調整羽根20bの回動方向と同方向に回動可能に下流側羽根31を配置するとともに、この下流側羽根31に対し通気路15の下流側に操作ノブ30を配置し、制御手段40の自動モードにおいて、操作ノブ30を下流側羽根31と一体的に回動することで第二の風向調整羽根20bの振り角を指示するので、操作ノブ30の操作方向と第二の風向調整羽根20bの回動方向とが一致し、風向調整時に第二の風向調整羽根20bを直感的に操作できる。
【0051】
また、風向調整装置10は、乗員の着座位置から目視可能な位置に配置された車両用であるため、手動操作時には、乗員が操作ノブ30を容易に、かつ、直感的に操作できるとともに、自動動作時には、操作ノブ30が移動しないので、目視可能な位置にあっても視覚的に邪魔になりにくい。そのため、例えば自動動作時の操作ノブ30の移動によって、運転者や同乗者の不快感を生じさせたり、運転者の集中を殺いだりすることがない。
【0052】
なお、一実施の形態において、第一及び第二の検出手段35a,35bは、可変抵抗を用いて操作ノブ30の操作量を連続的な値としてアナログ的に検出する構成としたが、センサなどを用いて、操作ノブ30の操作量を不連続な(断続的な)値として検出する構成などでもよい。
【0053】
また、風向調整羽根20、アクチュエータ24、及び、検出手段35は、それぞれ、複数ずつ設定されているが、いずれか一つのみでもよい。例えば、第一の風向調整羽根20a及び第一のアクチュエータ24aを備えない構成の場合、操作ノブ30は下流側羽根31に沿って移動可能に配置されていなくてもよい。また、第二の風向調整羽根20b及び第二のアクチュエータ24bを備えない構成の場合、操作ノブ30及び下流側羽根31も回動可能でなくてもよい。
【0054】
操作ノブ30を直接操作する構成に代えて、または、操作ノブ30を直接操作する構成に加えて、無線信号を受信する無線通信部を制御手段40に設け、リモコンなどの遠隔操作手段を用いて、制御手段40により第一の風向調整羽根20a及び/または第二の風向調整羽根20bの回動を操作してもよいし、遠隔操作手段を設定手段45として利用してもよい。
【0055】
また、設定手段45は、スマートフォンなどの携帯端末にインストールされたソフトウェア(アプリ)などとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば自動車の空調用の車両用風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 風向調整装置
15 通気路
20 風向調整羽根
24 アクチュエータ
30 操作ノブ
31 下流側羽根
40 制御手段
45 設定手段
図1
図2
図3