(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】換気構造及び換気構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20240619BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20240619BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
E04F13/08 101S
E04F13/08 101W
E04B1/70 E
E04G23/02 H
(21)【出願番号】P 2020121379
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 丈
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-049515(JP,U)
【文献】特開2009-235677(JP,A)
【文献】特開2009-074258(JP,A)
【文献】特開2006-177059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
E04B 1/70
E04G 23/02
E04B 1/348
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設外壁に新設外壁を取り付けた
バルコニー付き建物の
バルコニーの床と下階の天井との間の空間を換気する換気構造であって、
前記新設外壁は、矩形板状とされ、下階の前記新設外壁の上辺部に設けられたフランジ部と、上階の前記バルコニーの前記新設外壁の下辺部に設けられた溝部とを嵌合させて取りけられており、
下階の前記新設外壁
の前記上辺部を切り欠いて設けた、前記空間に接続される開口部と、
前記新設外壁に取り付けられたブラケットと、
前記開口部を覆うように、前記ブラケットを介して取り付けられた新設化粧材と、を備え、
前記新設化粧材は、前記新設化粧材の上縁及び下縁と前記新設外壁との間に隙間を有して設けられている
ことを特徴する、換気構造。
【請求項2】
前記新設化粧材の上縁と前記新設外壁との間の隙間は、前記新設化粧材の下縁と前記新設外壁との間の隙間より小さい
ことを特徴とする、請求項1に記載の換気構造。
【請求項3】
前記新設外壁に設けられた開口部は、前記既設外壁に設けられた開口部に対向するように設けられ、前記建物内の換気経路に接続されている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の換気構造。
【請求項4】
既設外壁に新設外壁を取り付けた
バルコニー付き建物の
バルコニーの床と下階の天井との間の空間を換気する換気構造の施工方法であって、
前記既設外壁の
前記空間に接続される開口部を覆っている既設化粧材を撤去する既設化粧材撤去工程と、
前記既設外壁に、
矩形板状の前記新設外壁を
、下階の前記新設外壁の上辺部に設けられたフランジ部と、上階の前記バルコニーの前記新設外壁の下辺部に設けられた溝部とが嵌合するように取り付ける新設外壁取付工程と、
前記新設外壁に、ブラケットを取り付けるブラケット取付工程と、
下階の前記新設外壁の
前記上辺部を切り欠いて設けた、前記既設外壁の前記開口部を介して前記空間に接続される開口部を覆うように、新設化粧材を前記ブラケットに、前記新設化粧材の上縁及び下縁と前記新設外壁との間に隙間を有するように取り付ける新設化粧材取付工程と、を含む
ことを特徴とする、換気構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設外壁に新設外壁を取り付けた建物の換気構造及び換気構造の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物を換気する換気構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、バルコニーユニットの床部と1階の天井部との間に位置する壁部に、空間と連通する軒先側換気口が設けられ、バルコニーユニットに隣接する居室外壁部のバルコニーユニットの床部との接合部に、空間と連通する居室側換気口が設けられている構成が開示されている。これにより、バルコニー付き建物におけるバルコニーユニットの床部と1階の天井部との間の空間を換気する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、既設外壁に新設外壁を取り付けた場合の換気について記載がない。そのため、特許文献1に記載の発明では、新設外壁を既設外壁に取り付けた際に、換気のための開口部が外部に見えてしまったりして、外観の見栄えが悪くなる、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、新設外壁を既設外壁に取り付けた場合に、外観の見栄えを向上させることができる換気構造及び換気構造の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の換気構造は、既設外壁に新設外壁を取り付けたバルコニー付き建物のバルコニーの床と下階の天井との間の空間を換気する換気構造であって、前記新設外壁は、矩形板状とされ、下階の前記新設外壁の上辺部に設けられたフランジ部と、上階の前記バルコニーの前記新設外壁の下辺部に設けられた溝部とを嵌合させて取りけられており、下階の前記新設外壁の前記上辺部を切り欠いて設けた、前記空間に接続される開口部と、前記新設外壁に取り付けられたブラケットと、前記開口部を覆うように、前記ブラケットを介して取り付けられた新設化粧材と、を備え、前記新設化粧材は、前記新設化粧材の上縁及び下縁と前記新設外壁との間に隙間を有して設けられていることを特徴する。
【0008】
ここで、本発明の換気構造では、前記新設化粧材の上縁と前記新設外壁との間の隙間は、前記新設化粧材の下縁と前記新設外壁との間の隙間より小さくてもよい。
【0009】
また、本発明の換気構造では、前記新設外壁に設けられた開口部は、前記既設外壁に設けられた開口部に対向するように設けられていてもよい。
【0010】
また、本発明の換気構造では、前記既設外壁に設けられた開口部は、前記建物内の換気経路に接続されていてもよい。
【0011】
また、本発明の換気構造では、前記ブラケットと、前記新設外壁との間には、弾性のあるスペーサが介在されていてもよい。
【0012】
さらに、本発明の換気構造の施工方法では、既設外壁に新設外壁を取り付けたバルコニー付き建物のバルコニーの床と下階の天井との間の空間を換気する換気構造の施工方法であって、前記既設外壁の前記空間に接続される開口部を覆っている既設化粧材を撤去する既設化粧材撤去工程と、前記既設外壁に、矩形板状の前記新設外壁を、下階の前記新設外壁の上辺部に設けられたフランジ部と、上階の前記バルコニーの前記新設外壁の下辺部に設けられた溝部とが嵌合するように取り付ける新設外壁取付工程と、前記新設外壁に、ブラケットを取り付けるブラケット取付工程と、前記新設外壁の前記上辺部を切り欠いて設けた、前記既設外壁の前記開口部を介して前記空間に接続される開口部を覆うように、新設化粧材を前記ブラケットに、前記新設化粧材の上縁及び下縁と前記新設外壁との間に隙間を有するように取り付ける新設化粧材取付工程と、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明のバルコニー付き建物の換気構造では、新設外壁は、矩形板状とされ、下階の新設外壁の上辺部に設けられたフランジ部と、上階のバルメコニーの新設外壁の下辺部に設けられた溝部とを嵌合させて取りけられており、下階の新設外壁の上辺部を切り欠いて設けた、バルコニーの床と下階の天井との間の空間に接続される開口部と、新設外壁に取り付けられたブラケットと、開口部を覆うように、ブラケットを介して取り付けられた新設化粧材と、を備え、新設化粧材は、新設化粧材の上縁及び下縁と新設外壁との間に隙間を有して設けられている。そのため、新設外壁と新設化粧材の上縁及び下縁の隙間から、開口部へと空気を流してバルコニーの床と下階の天井との間の空間を換気することができる。そのため、隙間を広くせずに、換気に必要な開口面積を確保することができる。その結果、外観の見栄えを向上させた換気構造とすることができる。
【0014】
また、新設化粧材の上縁と新設外壁との間の隙間は、新設化粧材の下縁と新設外壁との間の隙間より小さいことで、新設化粧材の上縁と新設外壁との隙間を小さくしつつ、換気効率を維持することができる。そのため、新設化粧材の上縁と新設外壁との隙間からゴミが入り込むことを防止しつつ、換気効率を維持することができる。
【0015】
また、新設外壁に設けられた開口部は、既設外壁に設けられた開口部に対向するように設けられていることで、新設化粧材の上縁及び下縁と新設外壁との間の隙間から、新設外壁の開口部を介して、既設外壁の開口部へと空気を流して換気することができる。そのため、換気のための開口部を、外部に見せることなく、ユニット建物の換気をすることができる。
【0016】
また、既設外壁に設けられた開口部は、建物内の換気経路に接続されていることで、新設化粧材の上縁及び下縁と新設外壁との間の隙間から、新設外壁の開口部と既設外壁の開口部を介して、ユニット建物内の換気経路へと空気を流して換気することができる。
【0017】
また、ブラケットと、新設外壁との間には、弾性のあるスペーサが介在されていることで、弾性のあるスペーサで新設外壁の外面の凹凸を吸収させることができる。そのため、ブラケットを新設外壁に対して正しい姿勢で取り付けることができる。その結果、新設化粧材を正しい位置に取り付けることができ、新設化粧材と新設外壁との間の隙間を所望の大きさにすることができる。
【0018】
このように構成された本発明の既設外壁に新設外壁を取り付けたバルコニー付き建物のバルコニーの床と下階の天井との間の空間を換気する換気構造の施工方法では、既設外壁の上記空間に接続される開口部を覆っている既設化粧材を撤去する既設化粧材撤去工程と、既設外壁に、矩形板状の新設外壁を、下階の新設外壁の上辺部に設けられたフランジ部と、上階のバルコニーの新設外壁の下辺部に設けられた溝部とが嵌合するように取り付ける新設外壁取付工程と、新設外壁に、ブラケットを取り付けるブラケット取付工程と、新設外壁の上辺部を切り欠いて設けた、既設外壁の開口部を介して上記空間に接続される開口部を覆うように、新設化粧材をブラケットに、新設化粧材の上縁及び下縁と新設外壁との間に隙間を有するように取り付ける新設化粧材取付工程と、を含む。そのため、新設外壁と新設化粧材の上縁及び下縁の隙間から、新設外壁および既設外壁の開口部へと空気を流してバルコニーの床と下階の天井との間の空間を換気することができる。そのため、隙間を広くせずに、換気に必要な開口面積を確保することができる。その結果、外観の見栄えを向上させた換気構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1のユニット建物の既設外壁に新設外壁を取り付けた状態を示す分解斜視図である。
【
図2】実施例1のユニット建物の既設外壁に新設外壁を取り付けた状態を示す平面図である。
【
図4】実施例1の新設外壁を示す平面図であり、
図4(a)が一般部新設外壁を示す図であり、
図4(b)がカット部付新設外壁を示す図である。
【
図5】実施例1のブラケットと新設化粧材を示す斜視図である。
【
図6】実施例1のブラケットの取付状態を示す断面図である。
【
図8】実施例1の既設化粧材撤去工程を説明する図である。
【
図9】実施例1の新設外壁取付工程を説明する図である。
【
図10】実施例1の新設外壁取付工程を説明する図である。
【
図11】実施例1のブラケット取付工程を説明する図である。
【
図12】実施例1の新設化粧材取付工程を説明する図である。
【
図13】別の実施例のカット部付新設外壁を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による換気構造及び換気構造の施工方法を実現する実施形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
実施例1における換気構造は、工場で予め製造された建物ユニットを建築現場へ搬送して、建築現場で複数の建物ユニットを並べて組み立てることによって構築するユニット建物に適用される。
【0022】
実施例1における換気構造は、バルコニー付きユニット建物におけるバルコニーの床と下階の天井との間の空間を換気するバルコニー床下換気構造に適用される。
【0023】
[ユニット建物の構成]
図1は、実施例1のユニット建物の既設外壁に新設外壁を取り付けた状態を示す分解斜視図である。
図2は、実施例1のユニット建物の既設外壁に新設外壁を取り付けた状態を示す平面図である。以下、実施例1のユニット建物の構成を説明する。
【0024】
図1及び
図2に例示すように、ユニット建物1は、1階部分に4つの建物ユニット10並べ、2階部分に3つの建物ユニット10を積み重ね、残る2階の左前の部分にバルコニーユニット20を積み重ねて組み上げたものである。ユニット建物1の既設外壁5に、新設外壁105が取り付けられている。
【0025】
[換気構造の構成]
【0026】
図3は、
図2に示したA-A線矢視の断面図である。
図4は、実施例1の新設外壁を示す平面図であり、
図4(a)が一般部新設外壁を示す図であり、
図4(b)がカット部付新設外壁を示す図である。以下、実施例1の換気構造の構成を説明する。
【0027】
(既設外壁)
【0028】
図3に示すように、バルコニーユニット20は、手摺29を備える。手摺29は、既設外壁5としての手摺部既設外壁25と、手摺部既存内壁26と、角型鋼の胴縁21とで構成されている。
【0029】
手摺部既存内壁26の下部には、水切シート22と、水切シート22を目隠しするためのカバー水切材23が設けられている。
【0030】
1階の建物ユニット10の既設外壁5としての下階既設外壁15と、手摺部既設外壁25との間には、開口部50を有する。すなわち、既設外壁5は、開口部(換気口)50を備える。開口部50は、水平方向に延在したスリット状に形成されている。
【0031】
開口部50は、換気経路としての第1空間S1と第2空間S2に接続されている。すなわち、開口部50は、ユニット建物1内の換気経路に接続されている。
【0032】
第1空間S1は、水切シート31と水返しシート33とで形成されている。第1空間S1は、開口部50に接続されている。第1空間S1は、ガラリ32を通して、第2空間S2に通じている。
【0033】
第2空間S2は、バルコニーユニット20の床板24と、バルコニーユニット20の下の1階の建物ユニット10の天井板13と、の間の空間として形成されている。
【0034】
床板24は、床小梁27の上面に貼り付けられている。床小梁27は、受け具28を介して、1階の建物ユニット10の天井梁11間に架け渡されている。受け具28は、ボルト34とナット35によって、1階の建物ユニット10の天井梁11の上側のフランジ11aの上面に取り付けられている。
【0035】
天井板13は、天井小梁12の下面に貼り付けられている。天井小梁12は、1階の建物ユニット10の天井梁11間に架け渡されている。天井小梁12は、1階の建物ユニット10の天井梁11の下側のフランジ11bの上面に取り付けられている。
【0036】
すなわち、開口部50は、第1空間S1とガラリ32を通して、第2空間S2へ通じている。言い換えると、開口部50は、ユニット建物1の換気経路に接続されている。
【0037】
(新設外壁)
図1及び
図3に示すように、新設外壁105は、既設外壁5に取り付けられた胴縁101を介して、ビス等によって取り付けられる。
図4に示すように、新設外壁105は、カット部119を有するカット部付新設外壁115と、カット部119を有しない一般部新設外壁125と、を有する。
【0038】
図4(a)に示すように、カット部付新設外壁115は、矩形の板状に形成されている。カット部付新設外壁115の長さL1を1791mmとして、高さH1を408mmとすることができる。
【0039】
カット部付新設外壁115は、本体部116と、フランジ部117と、溝部118と、カット部119と、を備える。
【0040】
本体部116は、例えば、表面にタイル116aが敷き詰められている。各タイル116aの間には、目地116bが形成されている。
【0041】
フランジ部117は、本体部116の上端から上方に突出して形成されている。溝部118は、本体部116の下端に溝状に形成されている。
【0042】
カット部119は、フランジ部117と本体部116を所定の大きさの矩形に切り欠いた形状に形成されている。カット部119は、フランジ部117から、目地116bと、タイル116aの一部を矩形に切り欠いた形状に形成されている。
【0043】
図4(b)に示すように、一般部新設外壁125は、矩形の板状に形成されている。一般部新設外壁125の長さL1を1791mmとして、高さH1を408mmとすることができる。
【0044】
一般部新設外壁125は、既設外壁5のうち、カット部付新設外壁115が取り付けられていない部分に取り付けられる。
【0045】
一般部新設外壁125は、カット部119を有しない点以外は、カット部付新設外壁115と同様の構成である。一般部新設外壁125は、本体部126と、フランジ部127と、溝部128と、を備える。
【0046】
本体部126は、例えば、表面にタイル126aが敷き詰められている。各タイル126aの間には、目地126bが形成されている。
【0047】
フランジ部127は、本体部126の上端から上方に突出して形成されている。溝部128は、本体部126の下端に溝状に形成されている。
【0048】
このように構成されたカット部付新設外壁115は、溝部118に一般部新設外壁125のフランジ部127が嵌合し、フランジ部127に一般部新設外壁125の溝部128が嵌合するようになっている。
【0049】
既設外壁5に取り付けられたカット部付新設外壁115の上部に、一般部新設外壁125が取り付けられた状態では、
図3に示すように、カット部119と一般部新設外壁125の下端とで、開口部150が形成される。
【0050】
図4(a)に示すように、開口部150の長さL2を216mmとして、高さH2を40mmとすることができる。
【0051】
新設外壁105に設けられた開口部150は、既設外壁5に設けられた開口部50に対向するように設けられている。
【0052】
(ブラケット)
図5は、実施例1のブラケットと新設化粧材を示す斜視図である。
図6は、実施例1のブラケットの取付状態を示す断面図である。以下、実施例1のブラケットの構成を説明する。
【0053】
図1及び
図3に示すように、新設外壁105には、ブラケット130が取り付けられる。ブラケット130は、新設外壁105の開口部150と略同じ高さに取り付けられる。ブラケット130は、開口部150が設けられていない位置に取り付けられる。
【0054】
図5に示すように、ブラケット130は、長さD1(例えば、300mm)とすることができる。ブラケット130は、長さD2(例えば、900mm)の間隔で設けることができる。1つのブラケット130には、2つの新設化粧材140を取り付けることができる。すなわち、1つの新設化粧材140を、長さD3(例えば、150mm)だけブラケット130と重なるように配置することができる。1つのブラケット130から、隣のブラケット130のまでの長さは、長さD4(例えば、870mm)とすることができる。
【0055】
ブラケット130は、
図6に示すように、例えばアルミ製で、表部131と、裏部132と、上部133と、下部134と、で断面略矩形の筒状に形成されている。ブラケット130は、黒色とすることができる。
【0056】
表部131には、ビスを挿入可能な貫通穴131aが形成されている。裏部132は、平坦状に形成されている。裏部132には、ビスを挿入可能な貫通穴132aが形成されている。
【0057】
裏部132には、弾性のあるスペーサ135が、例えば接着剤等によって取り付けられている。スペーサ135は、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)製とすることができる。スペーサ135は、黒色とすることができる。スペーサ135の厚さTは、例えば3mmとすることができる。スペーサ135には、ビスを挿入可能な貫通穴135aが形成されている。
【0058】
このように構成されたブラケット130は、裏部132と新設外壁105の間にスペーサ135を介在させた状態で、ビスによって、新設外壁105に取り付けられる。
【0059】
このビスが、新設外壁105の目地116bに打ち込まれることで、ブラケット130が、新設外壁105に取り付けられる。なお、
図6に示すように、カット部付新設外壁115と一般部新設外壁125との間の目地116bに嵌められた、断面矩形の棒状のスペーサ部品136を介して、ブラケット130を取り付けてもよい。
【0060】
(新設化粧材)
図7は、実施例1の新設化粧材140を示す斜視図である。以下、実施例1の新設化粧材140の構成を説明する。
【0061】
図7に示すように、新設化粧材140は、例えばアルミ製で、上部141と、下部142と、第1縦部143と、第2縦部144と、第1縦部143と第2縦部144とを接続する接続部145とで、ブラケット130を覆うような形状に形成されている。
【0062】
新設化粧材140は、水平方向に延在した水平モールとして構成されている。下部142には、複数の水切り穴148が形成されている。
【0063】
新設化粧材140の上部141と、ブラケット130の上部133とを当接させた状態で、新設化粧材140の上部141にビスが打ち込まれて、新設化粧材140がブラケット130に取り付けられるようになっている。
【0064】
新設化粧材140は、新設外壁105の開口部150を覆うように、ブラケット130を介して、新設外壁105に取り付けられている。
【0065】
図3及び
図5に示すように、新設化粧材140の上部141の端部(上縁)と、新設外壁105との間に隙間W1が形成されるように、新設化粧材140は、新設外壁105に取り付けられている。新設化粧材140の下部142の端部(下縁)と、新設外壁105との間に隙間W2が形成されるように、新設化粧材140は、新設外壁105に取り付けられている。すなわち、新設化粧材140は、新設化粧材140の上縁及び下縁と新設外壁105との間に隙間を有して設けられている。
【0066】
隙間W1は、例えば、4mmとすることができる。隙間W2は、例えば、6mmとすることができる。すなわち、新設化粧材140の上縁と新設外壁105との間の隙間W1は、新設化粧材140の下縁と新設外壁105との間の隙間W2より小さくなるように、新設化粧材140は、新設外壁105に取り付けられてもよい。
【0067】
[換気面積]
以下、実施例1の換気構造の換気面積について説明する。
【0068】
このように構成された換気構造は、
図3に示すように、新設化粧材140の上縁と新設外壁105との間に隙間W1と、新設化粧材140の下縁と新設外壁105との間に隙間W2から、空気Aが流入する。次いで、既設外壁5の開口部50から、空気Bが流入する。次いで、空気Bは、第1空間S1を通って第2空間S2へ流れる。
【0069】
この際、空気Aの給気面積SAは、以下の式から算出される。
給気面積SA=(隙間W1*長さD4+隙間W2*長さD4)/長さD2
例えば、長さD2を900mmとし、長さD4を870mmとすると、給気面積SAは、96.6cm2/mとなり、9.6mm幅/mとなり、必要換気寸法7mm幅/mを確保することができる。
【0070】
必要換気面積は、以下の式から算出される。
必要換気面積=長さ1800mmあたり*7mm
よって、必要換気面積は、12600mm2とすることができる。
【0071】
換気面積は、以下の式から算出される。
換気面積=長さL2*高さH2
長さL2を216mmとし、高さH2を40mmとすると、換気面積は、17280mm2とすることができ、必要換気面積である12600mm2を確保することができる。
【0072】
空気Bの給気面積SBは、以下の式から算出される。
給気面積SB=換気面積/新設化粧材の長さ
新設化粧材140の長さを1.8mとすると、給気面積SBは、9.6mm巾/mとなり、必要換気寸法7mm幅/mを確保することができる。
【0073】
[換気構造の施工方法]
図8は、実施例1の既設化粧材撤去工程を説明する図である。
図9及び
図10は、実施例1の新設外壁取付工程を説明する図である。
図11は、実施例1のブラケット取付工程を説明する図である。
図12は、実施例1の新設化粧材取付工程を説明する図である。以下、実施例1の換気構造の施工方法を説明する。
【0074】
(既設化粧材撤去工程)
図8に示すように、既設化粧材撤去工程では、既設外壁5から既設化粧材40を撤する。既設化粧材40は、既設外壁5の開口部50を覆った水平モールである。
【0075】
(新設外壁取付工程)
図9に示すように、新設外壁取付工程では、既設外壁5に、上下方向に延在した胴縁101を、例えばビスによって取り付ける。次いで、
図10に示すように、カット部付新設外壁115と一般部新設外壁125とを胴縁101に、例えばビスによって取り付ける。これにより、カット部付新設外壁115と一般部新設外壁125との間に、開口部150が形成される。
【0076】
この際、カット部付新設外壁115は、溝部118に一般部新設外壁125のフランジ部127が嵌合し、フランジ部117に一般部新設外壁125の溝部128が嵌合する。
【0077】
(ブラケット取付工程)
図11に示すように、カット部付新設外壁115と一般部新設外壁125との隙間にスペーサ部品136を嵌めて、スペーサ135が取り付けられたブラケット130を、例えばビスによって胴縁101に取り付ける。すなわち、ブラケット130を、胴縁101を介して、新設外壁105に取り付ける。
【0078】
(新設化粧材取付工程)
図12に示すように、新設外壁105の開口部150を覆うように、新設化粧材140をブラケット130に取り付ける。新設化粧材140を、上縁と新設外壁105との間に隙間W1と、下縁と新設外壁105との間に隙間W2と、を有するように取り付ける。以上の工程を経て、ユニット建物1の換気構造が施工される。
【0079】
[換気構造の作用]
以下、実施例1の換気構造は、既設外壁5に新設外壁105を取り付けたユニット建物1の換気構造である。この換気構造は、新設外壁105に設けられた開口部150と、新設外壁105に取り付けられたブラケット130と、開口部150を覆うように、ブラケット130を介して取り付けられた新設化粧材140と、を備え、新設化粧材140は、新設化粧材140の上縁及び下縁と新設外壁105との間に隙間を有して設けられている(
図3)。
【0080】
これにより、新設外壁105と新設化粧材140の上縁及び下縁の隙間から、開口部150へと空気を流して換気することができる。そのため、隙間を広くせずに、換気に必要な開口面積を確保することができる。また、換気のための開口部150を、外部に見せることなく、ユニット建物1の換気をすることができる。その結果、外観の見栄えを向上させた換気構造とすることができる。
【0081】
実施例1の換気構造において、新設化粧材140の上縁と新設外壁105との間の隙間W1は、新設化粧材140の下縁と新設外壁105との間の隙間W2より小さい(
図3)。
【0082】
これにより、新設化粧材140の上縁と新設外壁105との隙間W1の隙間を小さくしつつ、換気効率を維持することができる。そのため、新設化粧材140の上縁と新設外壁105との隙間W1からゴミが入り込むことを防止しつつ、換気効率を維持することができる。
【0083】
実施例1の換気構造において、新設外壁105に設けられた開口部150は、既設外壁5に設けられた開口部50に対向するように設けられている(
図3)。
【0084】
これにより、新設化粧材140の上縁及び下縁と新設外壁105との間の隙間から、新設外壁105の開口部150を介して、既設外壁5の開口部50へと空気を流して換気することができる。そのため、換気のための開口部50,150を、外部に見せることなく、ユニット建物1の換気をすることができる。その結果、外観の見栄えを向上させた換気構造とすることができる。
【0085】
実施例1の換気構造において、既設外壁5に設けられた開口部50は、建物内の換気経路に接続されている(
図3)。
【0086】
これにより、新設化粧材140の上縁及び下縁と新設外壁105との間の隙間から、新設外壁105の開口部150と既設外壁5の開口部50を介して、ユニット建物1内の換気経路へと空気を流して換気することができる。
【0087】
実施例1の換気構造において、ブラケット130と、新設外壁105との間には、弾性のあるスペーサ135が介在されている(
図5)。
【0088】
これにより、弾性のあるスペーサ135で新設外壁105の外面の凹凸を吸収させることができる。そのため、ブラケット130を新設外壁105に対して正しい姿勢で取り付けることができる。その結果、新設化粧材140を正しい位置に取り付けることができ、新設化粧材140と新設外壁105との間の隙間を所望の大きさにすることができる。
【0089】
実施例1の換気構造において、既設外壁5に新設外壁105を取り付けたユニット建物1の換気構造の施工方法でる。この施工方法は、既設外壁5の開口部50を覆っている既設化粧材40を撤去する既設化粧材撤去工程と、既設外壁5に、開口部150を有する新設外壁105を取り付ける新設外壁取付工程と、新設外壁105に、ブラケット130を取り付けるブラケット取付工程と、新設外壁105の開口部150を覆うように、新設化粧材140をブラケット130に、新設化粧材140の上縁及び下縁と新設外壁105との間に隙間を有するように取り付ける新設化粧材取付工程と、を含む(
図8~
図12)。
【0090】
これにより、新設外壁105と新設化粧材140の上縁及び下縁の隙間から、開口部50,150へと空気を流して換気することができる。そのため、隙間を広くせずに、換気に必要な開口面積を確保することができる。また、換気のための開口部50,150を、外部に見せることなく、ユニット建物1の換気をすることができる。その結果、外観の見栄えを向上させた換気構造とすることができる。
【0091】
以上、本発明の換気構造を実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0092】
実施例1では、カット部119は、フランジ部117から、目地116bと、タイル116aの一部を矩形に切り欠いた形状に形成されている例を示した。しかし、カット部119は、
図13(a)に示すように、フランジ部117と目地116bだけを切り欠くようにカットすることもできる。また、カット部119は、
図13(b)に示すように、目地116bだけをカットすることもできる。
【0093】
実施例1では、新設外壁105の開口部150を、既設外壁5の開口部50に対向するように設ける例を示した。しかし、新設外壁105の開口部150は、既設外壁5の開口部50に対向しないように設けてもよい。
【0094】
実施例1における換気構造は、バルコニー付きユニット建物におけるバルコニーの床と下階の天井との間の空間を換気するバルコニー床下換気構造に適用される例を示した。しかし、本発明は、ユニット建物の上階の床と下階の天井との間の空間を換気する換気構造に適用することもできる。
【0095】
実施例1における換気構造は、ユニット建物に適用する例を示した。しかし、本発明の換気構造は、在来工法や、ツーバイフォー工法等の他の工法で構築された集合住宅に適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 ユニット建物
5 既設外壁
50 開口部
105 新設外壁
130 ブラケット
135 スペーサ
140 新設化粧材
150 開口部
W1 隙間
W2 隙間