(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】超音波診断システム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2020136919
(22)【出願日】2020-08-14
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大住 良太
(72)【発明者】
【氏名】奥村 貴敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健太郎
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-172014(JP,A)
【文献】特表2018-527054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0114241(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0180110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプローブと、
前記複数のプローブのうちの少なくとも1つのプローブと同じ検査場所に配設される少なくとも1つの操作表示部と、
前記複数のプローブ、及び、前記操作表示部と通信する通信部と、
前記複数のプローブに関連付けられた物理量を計測する計測部と、
計測した前記物理量に基づいて、
前記検査場所における被検体の位置、又は、前記検査場所におけるベッド上の特定の位置に最も近いプローブを、前記複数のプローブの中の特定プローブ
として前記操作表示部
に対応付ける対応付け部と、
前記検査場所と異なる場所に配設される超音波サーバであって、前記特定プローブで収集された第1のデータを前記通信部を介して受信し、受信した前記第1のデータに基づいて第2のデータを生成し、生成した前記第2のデータを前記通信部を介して前記操作表示部に送信する超音波サーバと、
を備える超音波診断システム。
【請求項2】
前記対応付け部は、
前記検査場所における被検体の位置、又は、前記検査場所におけるベッド上の特定の位置を、前記検査場所の所定位置
とし、前記所定位置に最も近いプローブを前記特定プローブとする、
請求項1に記載の超音波診断システム。
【請求項3】
前記計測部は、前記複数のプローブの夫々の位置を検出し、
前記対応付け部は、前記複数のプローブと前記所定位置との間の夫々の距離に基づいて、前記検査場所の所定位置に最も近いプローブを前記特定プローブとする、
請求項2に記載の超音波診断システム。
【請求項4】
前記対応付け部は、前記特定プローブと前記操作表示部とが一旦対応付けられた後は、前記特定プローブと前記所定位置の距離が、他のプローブと前記所定位置の距離よりも遠くなった場合でも、前記特定プローブと前記操作表示部との対応付けを維持する、
請求項3に記載の超音波診断システム。
【請求項5】
前記対応付け部は、前記所定位置の周りに所定範囲を設定し、前記特定プローブが前記所定範囲の外に出た場合は、(a)前記特定プローブと前記操作表示部との対応付けを解除する、(b)前記所定範囲内にある前記特定プローブ以外のプローブと前記操作表示部とを対応付ける、及び、(c)警告を出力する、の少なくとも1つを実行する、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の超音波診断システム。
【請求項6】
接続開始を指示する接続開始信号を入力する入力インターフェース、をさらに備え、
前記対応付け部は、前記接続開始信号が入力された時に、前記所定位置に最も近いプローブを前記特定プローブとする、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の超音波診断システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの操作表示部は、携帯可能に構成された複数のポータブル操作表示部であり、
前記複数のポータブル操作表示部に関連付けられた第2物理量を計測する第2計測部、
をさらに備え、
前記対応付け部は、計測した前記第2物理量に基づいて、前記複数のポータブル操作表示部の中の特定ポータブル操作表示部と前記特定プローブとを対応付け、
前記超音波サーバは、生成した前記第2のデータを、前記通信部を介して、前記特定ポータブル操作表示部に送信する、
請求項2乃至6のいずれか1項に記載の超音波診断システム。
【請求項8】
前記第2計測部は、前記複数のポータブル操作表示部の夫々の位置を検出し、
前記対応付け部は、前記複数のポータブル操作表示部と前記所定位置との間の夫々の距離に基づいて、前記検査場所の所定位置に最も近いポータブル操作表示部を前記特定ポータブル操作表示部とする、
請求項7に記載の超音波診断システム。
【請求項9】
前記対応付け部は、前記特定ポータブル操作表示部と前記特定プローブとが一旦対応付けられた後は、前記特定ポータブル操作表示部と前記所定位置の距離が、他のポータブル操作表示部と前記所定位置の距離よりも遠くなった場合でも、前記特定ポータブル操作表示部と前記特定プローブとの対応付けを維持する、
請求項8に記載の超音波診断システム。
【請求項10】
前記対応付け部は、前記所定位置の周りに第2所定範囲を設定し、前記特定ポータブル操作表示部が前記第2所定範囲の外に出た場合は、(a)前記特定ポータブル操作表示部と前記特定プローブとの対応付けを解除する、(b)前記第2所定範囲内にある前記特定ポータブル操作表示部以外のポータブル操作表示部と前記特定プローブとを対応付ける、及び、(c)警告を出力する、の少なくとも1つを実行する、
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の超音波診断システム。
【請求項11】
前記複数のプローブは、前記通信部と無線で通信するように構成される、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の超音波診断システム。
【請求項12】
前記複数のポータブル操作表示部は、前記通信部と無線で通信するように構成される、
請求項7乃至11のいずれか1項に記載の超音波診断システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの操作表示部は、前記検査場所に配設される前記操作表示部と、前記検査場所と異なる検査場所に配設される少なくとも1つの他の操作表示部とを含み、
前記超音波サーバは、前記操作表示部に接続されているプローブ、前記操作表示部に接続可能なプローブ、及び、前記他の操作表示部に接続されているプローブを含むプローブリストを、前記操作表示部に表示させる、
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の超音波診断システム。
【請求項14】
前記プローブリストには、前記プローブリストの中のプローブとの接続可能性を示す情報が含まれ、
前記超音波サーバは、(a)前記プローブが前記操作表示部以外のディスプレイに接続されているか否か、(b)前記プローブに関する診断状況と通信状況、(c)前記プローブの充電状況、(d)前記プローブの所定位置からの距離、及び、(e)前記プローブが所定範囲内にあるか否か、の少なくとも1つに基づいて、前記接続可能性を判断する、
請求項13に記載の超音波診断システム。
【請求項15】
前記プローブリストには、前記プローブリストの接続優先度を示す情報が含まれ、
前記接続優先度は、ユーザによって設定される、
請求項13又は14に記載の超音波診断システム。
【請求項16】
前記プローブリストには、前記プローブリストの接続優先度を示す情報が含まれ、
前記超音波サーバは、前記プローブの識別情報及び診断状況の少なくともいずれか一方と、前記接続優先度とが関連付けられたデータに基づいて、前記接続優先度を設定する、
請求項13又は14に記載の超音波診断システム。
【請求項17】
前記プローブリストには、前記プローブの位置情報が含まれる、
請求項13乃至16のいずれか1項に記載の超音波診断システム。
【請求項18】
前記超音波サーバは、2以上の前記プローブが前記通信部を介した通信を行う場合において、前記接続優先度の高い方のプローブに優先的に転送レートを確保する、
請求項15又は16に記載の超音波診断システム。
【請求項19】
複数のプローブと、
前記複数のプローブのうちの少なくとも1つのプローブと同じ検査場所に配設される複数の操作表示部と、
前記複数のプローブ、及び、前記複数の操作表示部と通信する通信部と、
前記複数のプローブに関連付けられた第1物理量を計測する計測部と、
前記複数の操作表示部に関連付けられた第2物理量を計測する第2計測部と、
前記第1物理量と前記第2物理量に基づいて、前記複数のプローブの中の特定プローブと、前記複数の操作表示部の中の特定操作表示部とを対応付ける対応付け部と、
前記検査場所と異なる場所に配設される超音波サーバであって、前記特定プローブで収集された第1のデータを前記通信部を介して受信し、受信した前記第1のデータに基づいて第2のデータを生成し、生成した前記第2のデータを前記通信部を介して前記特定操作表示部に送信する超音波サーバと、を備える超音波診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された振動素子から発生する超音波パルスや超音波連続波を被検体内に放射し、被検体組織の音響インピーダンスの差異によって生じる超音波反射を振動素子により電気信号に変換して、被検体内の情報を非侵襲的に収集するものである。超音波診断装置を用いた医療検査は、超音波プローブを体表に接触させる操作によって、被検体内部の断層画像や3次元画像などの医用画像を容易に生成し、収集することができるため、臓器の形態診断や機能診断に広く用いられている。
【0003】
超音波診断装置の1つの形態として、超音波プローブと、超音波プローブを除いた構成品(以下、装置本体という)とを無線で接続する超音波診断システムが提案されている。この種の超音波診断システムでは、超音波プローブと装置本体とを接続するケーブルが不要となるため操作性が向上するものの、検査場所ごとに、例えば、病院内の検査室ごとに装置本体を設置する必要がある。このため、患者が少ない場合は無駄である。一方、これを避けようとすると、患者のいる検査室に装置本体を移動させる必要がある。また、入院病棟の病室で超音波検査を行う場合や、手術中に超音波検査が必要となる場合などにおいても、装置本体をその都度移動させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、検査場所ごとに装置本体を設置したり、複数の検査場所の間で装置本体を移動させたりすることを不要とし、また、検査場所の近傍に複数の超音波プローブが在る場合でも、検査に用いる超音波プローブを適切に選択できるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の超音波診断システムは、複数のプローブと、前記複数のプローブのうちの少なくとも1つのプローブと同じ検査場所に配設される少なくとも1つの操作表示部と、前記複数のプローブ、及び、前記操作表示部と通信する通信部と、前記複数のプローブに関連付けられた物理量を計測する計測部と、計測した前記物理量に基づいて、前記複数のプローブの中の特定プローブと前記操作表示部とを対応付ける対応付け部と、前記検査場所と異なる場所に配設される超音波サーバであって、前記特定プローブで収集された第1のデータを前記通信部を介して受信し、受信した前記第1のデータに基づいて第2のデータを生成し、生成した前記第2のデータを前記通信部を介して前記操作表示部に送信する超音波サーバと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る超音波診断システムのシステム構成例を示す図。
【
図2】検査室における構成品の配置例を模式的に示す図。
【
図3】第1の実施形態の超音波診断システムの機能構成例を示すブロック図。
【
図4】第1の実施形態の超音波診断システムにおける処理例を示すフローチャート。
【
図5】第1の実施形態の第1変形例にかかる超音波診断システムにおける処理例を示すフローチャート。
【
図6】第1の実施形態の第2変形例にかかる超音波診断システムにおける処理例を示すフローチャート。
【
図7】第2の実施形態の超音波診断システムのシステム構成例を示す図。
【
図8】第2の実施形態の超音波診断システムの機能構成例を示すブロック図。
【
図9】第2の実施形態の超音波診断システムにおける処理例を示すフローチャート。
【
図10】第2の実施形態の変形例にかかる超音波診断システムにおける処理例を示すフローチャート。
【
図11】第3の実施形態の超音波診断システムの機能構成例を示すブロック図。
【
図12】ディスプレイに表示されるプローブリストの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断システム1のシステム構成例を示す図である。超音波診断システム1は、複数の超音波プローブ10(以下、単に複数のプローブ10と呼ぶ)、少なくとも1つの操作表示部30、基地局40(通信装置40とも呼ぶ)、及び、超音波サーバ50を備える。
【0010】
操作表示部30は、操作部としての操作パネル20と、ディスプレイ22とを備えて構成され、
図1に示す例では、検査室Aに操作パネルA20とディスプレイA22が配設され、検査室Bに操作パネルB20とディスプレイB22が配設されている。
【0011】
操作パネル20には、トラックボールや各種のスイッチやダイアルが配置される。また、操作パネル20は、タッチパネルを含んで構成されてもよい。タッチパネルは、パネル面をユーザがタッチすることにより、パネル面の表示内容に応じた各種のデータや情報を入力できるように構成されている。ディスプレイ22は、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネルを備えて構成される表示デバイスである。
【0012】
複数のプローブ10のうち、少なくとも1つのプローブ10は、操作パネル20及びディスプレイ22と同じ検査場所に配設される。ここで、検査場所の一例は、例えば、
図1に例示するように、病院内の検査室Aや検査室Bなどであるが、検査場所はこれに限定されず、超音波画像を用いた検査や診察を行い得る場所は検査場所となり得る。例えば、病院内の診察室や、患者が入院している病室なども検査場所の一例である。
【0013】
図1に示す例では、プローブa10、プローブb10、プローブc10、プローブd10、プローブe10の5つのプローブ10のうち、プローブa10とプローブb10が検査室Aに配置され、プローブc10、プローブd10及びプローブe10が検査室Bに配置されている。
【0014】
通信装置40(或いは基地局40)は、検査場所の近傍に配置される。
図1に示す例では、通信装置40は検査室Aに配設されているが、これに限定されない。例えば、通信装置40は、検査室Bに配設されてもよいし、検査室Aや検査室B以外の場所でもよく、各プローブ10と通信可能な位置に配設されれば良い。
【0015】
通信装置40と各プローブ10との間の通信は、
図1に示すように無線でもよいが、本実施形態では、これに限定されることなく、通信装置40と各プローブ10との間の通信を有線で行ってもよい。なお、以下では、通信装置40と各プローブ10との間の通信を無線で行うものとして説明する。
【0016】
通信装置40と各プローブ10との間の通信を無線で行う場合、無線通信として種々の通信方式をとり得る。例えば、第5世代移動通信システム(所謂、5Gシステム)と呼ばれる無線通信方式のうちの「ローカル5G」と呼ばれる通信方式を用いて、通信装置40と各プローブ10との間を無線で通信することができる。一般的な5Gシステムが、キャリアと呼ばれる特定の通信事業者が全国で展開する均一な通信サービスであるのに対して、「ローカル5G」は、地方自治体や一般企業が主体となって、自らの建物や敷地内といった特定のエリアで自営の5Gネットワークを構築、運用、利用するものである。通信装置40と各プローブ10との間の通信を「ローカル5G」の無線通信で行う場合、通信装置40が基地局となり、各プローブ10が端末となる。
【0017】
この他、IEEE802.11規格に基づく無線LAN通信、所謂、Wi-Fi(登録商標)システムや、UWB(Ultra-Wide-Band)と呼ばれる超広帯域無線システムを、通信装置40と各プローブ10との間の無線通信に用いることもできる。次世代の規格であるIEEE802.11ayのWi-Fiでは、100Gbpsの超高速通信を目指しているとも言われている。
【0018】
プローブ10の信号のうち、超音波信号は超高速通信が必要とされるものの、プローブ10の制御用の信号の通信はそれ程高速性が求められない。そこで、超音波信号の通信に関しては、上述したローカル5Gなどの超高速通信方式を採用する一方、プローブ制御信号の通信に関しては、Bluetooth(登録商標)などの比較的低速の通信方式を採用してもよい。
【0019】
超音波サーバ50は、検査室Aや検査室Bなどの検査場所とは異なる場所に配設される。例えば、病院内の所定のサーバ室などに配設される。通信装置40と超音波サーバ50とは、例えば、病院内のネットワーク70を介して接続される。病院内のネットワーク70は、有線ネットワークとして構築することもできるし、上述したローカル5G等の無線ネットワークとして構築することもできる。
【0020】
また、超音波サーバ50は、検査場所のある建物とは遠く離れた場所に設置することもできる。この場合、超音波サーバ50と
図1に示すネットワーク70は、病院内ネットワークと、病院内ネットワークとは別の有線又は無線の高速ネットワークとによって構成されることになる。
【0021】
検査室Aに配設された操作パネルA20やディスプレイA22、及び、検査室Bに配設された操作パネルB20やディスプレイB22も、ネットワーク70を介して超音波サーバ50に接続される。
【0022】
後述するように、超音波サーバ50は、複数のプローブ10と複数の操作表示部30(操作パネル20及びディスプレイ22)がネットワーク70に接続されている場合、複数のプローブ10の中から1つの特定プローブ10を決定し、この特定プローブ10に接続されるべき1つの操作表示部30とを対応付ける。そして、超音波サーバ50は、特定プローブ10と、この特定プローブ10に対応付けられた操作表示部30との間の通信を確立する。
【0023】
その後、超音波サーバ50は、特定プローブ10で収集された第1のデータ(例えば、超音波データ)を、通信装置40を介して受信し、受信した第1のデータに基づいて第2のデータ(例えば、超音波画像データ)を生成する。そして、生成した第2のデータを、特定プローブ10に対応付けられた操作表示部30のディスプレイ22に、通信装置40を介して送信し、ディスプレイ22に、第2のデータ(例えば、超音波画像データ)に基づく超音波画像を表示させる。
【0024】
図2は、検査室Aにおける、上述した構成品の配置例を模式的に示す図である。検査室Aには、検査対象である被検体(例えば、患者)が横臥するためのベッドが配置されている。ベッドの左側には、医師や超音波検査技師などのユーザが操作する操作パネル20と、超音波画像などが表示されるディスプレイ22が配置されている。また、検査室Aの所定の場所、例えば、検査室Aの隅の壁には、通信装置40(例えば、基地局40)が設置されている。
【0025】
また、
図2では、仮想的な小球を用いて検査室内の「所定位置」を示している。
図2に示す例では、検査時に患者が横臥するベッドの枕の位置が「所定位置」として設定されている。この他、「所定位置」は、ディスプレイ22の位置、操作パネル20の位置、又は、検査場所における被検体の位置のいずれかの位置でもよい。
【0026】
プローブa10とプローブb10は、通信装置40と無線接続されるため、検査室A内の任意の位置に配置され、また、任意の位置に移動可能である。例えば、
図2に示した状態では、プローブa10はベッド上の所定位置に近い場所に配置され、プローブb10は、ベッドから離れた位置に置かれているテーブルの上に配置されている。
【0027】
上述した「所定位置」は、後述するように、複数のプローブ10が通信装置40と通信可能に配置されている場合に、複数のプローブ10の中から特定プローブ10を決定するために用いられる。
図2に示す例では、検査室A内に配置されているプローブa10及びプローブb10、並びに、検査室Bに配置されているプローブc10、プローブd10、及び、プローブe10の中から1つの特定プローブ10が決定される。
【0028】
図3は、第1の実施形態の超音波診断システム1の機能構成例を示すブロック図である。複数のプローブ10の夫々、例えば、検査室A内のプローブa10及びプローブb10と、検査室B内のプローブc10、プローブd10及びプローブe10は、無線通信によって基地局40(即ち、通信装置40)と接続され、基地局40は、ネットワーク70を介して、超音波サーバ50と接続されている。
【0029】
また、検査室A内の操作パネルA20とディスプレイA22、及び、検査室B内の操作パネルB20とディスプレイB22も、ネットワーク70を介して、超音波サーバ50と接続されている。
【0030】
各プローブ10は、例えば、振動子アレイ101、送受信回路102、信号処理回路103、無線I/F(Interface)回路104、位置(物理量)計測回路105、及び、制御回路106を備えて構成される。
【0031】
振動子アレイ101は複数の振動子が配列されており、例えば、振動子の数に対応する数の送信チャネルと受信チャネルとを備えている。振動子アレイ101は、送受信回路102を介して電気信号として送信チャネルごとに印加される送信信号を超音波信号に変換して被検体に送信すると共に、被検体内から反射される超音波反射信号を受信して電気信号に変換して、各受信チャネルに出力する。
送受信回路102は、例えば、送信回路、送受信分離回路、高圧スイッチ、増幅器、A/D変換機、及び、受信バッファメモリを備えて構成される。
【0032】
送受信回路102の中の送信回路は、送信信号を送信チャンネルごとに生成して送受信分離回路に出力する。送信回路では、振動子アレイ101から送信される各送信信号に遅延時間が付与される。そして、送信回路において生成された複数の送信信号はそれぞれ対応する送信チャンネルに出力され、送受信分離回路及び高圧スイッチを介して振動子アレイ101の各素子に印加される。送信チャネルの各送信信号に遅延時間を付与することにより、振動子アレイ101からは、指向性を有する超音波送信ビームが形成された超音波信号が送信される。
【0033】
一方、送受信回路102のうち受信系を構成する増幅器は、受信チャンネルごとに取得された受信信号を増幅し、A/D変換器に出力する。A/D変換器は、増幅器から出力された受信チャンネルごとのアナログRF(radio frequency)受信信号をディジタルRF受信信号にA/D変換する。A/D変換後の、受信チャンネルごとのディジタルRF受信信号は、受信バッファメモリに保存される。
【0034】
信号処理回路103はビームフォーマとデータ圧縮回路からなる。ビームフォーマでは、送受信回路102の受信バッファメモリに保存された受信信号にビームフォーミングを適用する。ビームフォーマは、受信チャンネルごとの受信遅延時間を各受信信号に付与して加算する整相加算方式のビームフォーミングを適用してもよいし、被検体の内部の音速分布を考慮した遅延時間補正を施す適応的ビームフォーミングを適用してもよい。また信号処理回路103ではビームフォーミングを行わず、超音波サーバ50でビームフォーミングを行うようにしてもよい。データ圧縮部では、ビームフォーミング前またはビームフォーミング後の超音波受信信号(以下、超音波データ又は第1のデータと呼ぶ)を無線通信レートの最大値を超えない程度に圧縮する。
【0035】
無線I/F回路104は、信号処理回路103から得られたビームフォーミング前またはビームフォーミング後の超音波データを、無線通信の規格、例えば、ローカル5Gシステムの規格に沿った無線信号に変換して基地局40に送出する。無線I/F回路104は、超音波データの他、超音波サーバ50の処理に必要な信号やデータを、基地局40に送出する。
【0036】
位置(物理量)計測回路105は、プローブに関連付けられた物理量(例えば、自プローブの位置など)を計測する回路である。位置(物理量)計測回路105で計測された物理量のデータも、超音波受信信号と共に無線I/F回路104を介して基地局40に送られる。位置(物理量)計測回路105のより詳しい動作は後述する。
制御回路106は、送受信回路102、信号処理回路103、無線I/F回路104を制御するプロセッサを有する回路である。
【0037】
基地局40は、プローブ10の夫々と超音波サーバ50とを中継する通信装置40である。信号処理回路103から出力されるビームフォーミング前またはビームフォーミング後の超音波データ、位置(物理量)計測回路105から出力される自プローブの位置などの物理量のデータ、及び、超音波サーバ50の処理に必要な信号やデータは、各プローブの無線I/F回路104から基地局40に送られてくる。基地局40では、これらのデータを、ネットワーク70を介して超音波サーバ50に送出する。
【0038】
一方、超音波サーバ50からは、プローブ10に対する各種の制御信号がネットワーク70を介して基地局40に送られてくる。基地局40では、これら各種の制御信号をプローブ10の無線I/F回路104に送出する。前述したように、基地局40と無線I/F回路104との間の通信は、例えば、ローカル5G規格に従う無線通信などを用いて行われる。
【0039】
超音波サーバ50は、超音波データ処理を行うコンピュータであり、例えば、有線I/F(interface)回路502、信号処理回路504、画像処理回路506、記憶回路508、及び、処理回路510を備えて構成される。
有線I/F回路502は、超音波サーバ50をネットワーク70に接続させるためのインターフェースである。
【0040】
信号処理回路504は、プローブ10から送られてくる第1のデータ、即ち、ビームフォーミング前またはビームフォーミング後の超音波データから、各種の撮像法に応じた超音波画像データを生成する。ビームフォーミング前の超音波データに対しては、前述した適応的ビームフォーミングを適用し、その後、超音波画像データを生成する。
【0041】
信号処理回路504は、例えば、Bモード法、カラードプラ法、パルスドプラ法、造影撮像法、弾性撮像法などの各種撮像法に応じた超音波画像データを生成する。信号処理回路504で生成する超音波画像データは、各種撮像法に対応する画素データが、距離方向(被検体の深度方向)に配列された1次元の超音波画像データや、距離方向とアジマス方向に配列された2次元の超音波画像データであり、或いは、距離方向とアジマス方向及エレベーション方向に配列された3次元の超音波画像データである。
【0042】
画像処理回路506は、信号処理回路504が生成した超音波画像データを、ディスプレイ22の表示に適したデータ配列に変換して、表示画像としての超音波画像データを生成する。また、画像処理回路506は、超音波画像の表示位置を示すデータ、超音波画像と共にディスプレイ22に表示させる各種の補助データ、ユーザによる操作のための補助データ、患者情報に関するデータ等を表示するための各種の文字、図形、線図データを生成して超音波画像データに合成して、第2のデータ(即ち、表示用の超音波画像データ)を生成する。
【0043】
画像処理回路506で生成された表示用の超音波画像データは、有線I/F回路502によってネットワーク70の伝送に適したフォーマットに変換され、ディスプレイ22に送られる。
【0044】
記憶回路508は、信号処理回路504で生成された超音波画像データや、画像処理回路506で生成された表示用超音波画像データを記憶することができる。また記憶回路508は、例えば、患者ID、医師の所見などの診断情報や、診断プロトコルや各種ボディーマークなどの各種データを記憶する。この他、記憶回路508は、信号処理回路504や画像処理回路506で行う処理がソフトウェア処理を伴う場合、これらソフトウェア処理に必要なプログラムを記憶することができる。また、記憶回路508は、処理回路510が具備するプロセッサが実行する各種のプログラムを記憶する。記憶回路508は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)の他、HDD(Hard Disk Drive)や光ディスク装置等の外部記憶装置を含む記憶媒体である。
【0045】
処理回路510は、情報処理装置としての機能を実現するプロセッサを具備する回路であり、超音波サーバ50の処理全体を制御する。例えば、操作パネル20を介した操作者から入力された各種設定要求や、各種制御プログラム及び各種データに基づき、超音波サーバ50の処理を包括的に制御する。
【0046】
また、処理回路510は、対応付け機能512を実現する。対応付け機能512は、各プローブ10の位置(物理量)計測回路105で計測された物理量、例えば、各プローブ10の位置に基づいて、複数のプローブ10の中の特定プローブと操作表示部30(操作パネル20及びディスプレイ22)とを対応付ける機能である。対応付け機能512のより具体的な説明は、後述する。
【0047】
処理回路510は、例えば、CPUや、専用又は汎用のプロセッサを備える回路である。プロセッサは、記憶回路508に記憶した各種のプログラムを実行することによって、各種の機能を実現する。処理回路510は、FPGAやASIC等のハードウェアで構成してもよい。これらのハードウェアによっても後述する各種の機能を実現することができる。また、処理回路510は、プロセッサとプログラムによるソフトウェア処理と、ハードウェア処理とを組み合わせて、各種の機能を実現することもできる。
【0048】
(対応付け処理)
本実施形態の超音波診断システム1では、
図1乃至
図3に示したように、複数のプローブ10と複数の操作表示部30(操作パネル20及びディスプレイ22)が、1つの超音波サーバ50に連接可能となっている。このため、ある特定のプローブ10と、ある特定の操作表示部30とを適切に対応付けることが重要となる。対応付けが不適切であると、例えば、所望ではないプローブ10、例えば、検査室Bにあるプローブc10で収集した超音波データに基づいて生成された超音波画像が、検査室Aに設置されているディスプレイA22に表示される、といったことが起こり得る。
【0049】
図4は、第1の実施形態の超音波診断システム1における処理例、特に、プローブ10と操作表示部30の対応付けに焦点を当てた処理例を示すフローチャートである。以下、
図4のフローチャートの流れに沿って説明する。
【0050】
第1の実施形態の超音波診断システム1では、複数のプローブ10の夫々は、ある検査場所から他の検査場所への移動が可能であるものの、ディスプレイ22と操作パネル20で構成される操作表示部30に関しては、所定の検査場所に固定されていることを想定している。そして、それぞれの検査場所に設置されている操作表示部30の識別情報を、超音波サーバ50が保有しているものと想定している。例えば、
図1等に示す例では、検査室Aに設置されているディスプレイA22及び操作パネルA20の夫々の識別情報、及び、検査室Bに設置されているディスプレイB22及び操作パネルB20の夫々の識別情報を、超音波サーバ50が保有していることを想定している。
【0051】
このような想定の下、まず、ステップST101では、各検査場所に配設された複数のプローブ10の夫々は、自プローブの位置を計測する、或いは、自プローブに関連付けられた物理量を計測する。自プローブの位置、或いは、物理量の計測は、例えば、各プローブ10内の位置(物理量)計測回路105が行う。或いは、各プローブ10の位置を、別途設ける計測手段によって計測してもよい。
【0052】
そして、ステップST102では、各プローブ10は、計測した自プローブの位置、或いは、自プローブに関連付けられた物理量を、基地局40を介して超音波サーバ50に送出する。
【0053】
プローブ10の位置を計測する方法には種々の方式が考えられる。例えば、基地局40(通信装置40)、或いは、図示しない発信機からの電波を利用して測位することができる。例えば、基地局40または図示しない発信機からの電波強度を用いて自プローブ10の位置を推定するRSSI(Received Signal Strength Indicator)方式や、電波強度だけでなく、電波の到来方向の角度を測定するAoA(Angle of Arrival)方式、或いは、複数の発信機を用いた三角測量によって測位する三角測位方式を用いて測位することができる。
【0054】
また、図示しない磁気発生装置を検査場所の近傍に設置し、プローブ10に取り付けた磁気センサによって測位する方法を用いても良いし、GPS(Global Positioning System)を用いてもよい。この他、加速度センサをプローブ10に取り付け、加速度情報を用いて自プローブの位置を求めても良い。別途設ける計測手段として光学カメラを検査室に設置し、光学カメラの画像から各プローブの位置を計測してもよい。
【0055】
さらに、測位精度を高めるために、上述した複数の方式を組み合わせても良い。また、計測する位置の次元は、2次元でもよいし、高さ方向の情報も含めた3次元でもよい。
なお、光学カメラ等で計測された各プローブ10の位置情報も、ネットワーク70経由等で超音波サーバ50に送出される。
【0056】
位置を直接計測することに替えて、各プローブに関連付けられた物理量を計測し、計測した物理量を超音波サーバ50に送出するようにしてもよい。例えば、基地局40または発信機からの電波の強度を計測し、計測した電波強度を、各プローブに関連付けられた物理量として超音波サーバ50に送出してもよい。また、複数のプローブ10の中から、操作表示部30に対応付ける特定プローブを決定するために、医師や超音波検査技師などのユーザが、プローブ10を現に把持し、まさにこれからそのプローブ10を使おうとしていることを示す情報として、プローブ10の外周近傍に設けた温度センサによって計測したユーザの手の温度や、プローブ内に設けた加速度センサで計測した振動や位置変動を示す加速度情報を、各プローブに関連付けられた物理量として超音波サーバ50に送出してもよい。
【0057】
ステップST103では、超音波サーバ50は、各プローブ10から送られてきた自プローブの位置、又は、自プローブに関連付けられた物理量に基づいて、複数のプローブ10の中の特定プローブ10と、各検査場所に設置されているディスプレイ22及び操作パネルA20とを対応付ける。ステップST103の処理は、超音波サーバ50の対応付け機能512が行う。
【0058】
前述したように、超音波サーバ50は、各検査場所に設置されているディスプレイ22及び操作パネル20の夫々の識別情報を保有している。例えば、検査室Aに設置されているディスプレイA22及び操作パネルA20の夫々の識別情報を保有している。一方、各検査場所(例えば、検査室A)には、
図2に示したように、「所定位置」が設定されている。例えば、検査室Aのベッドの上に「所定位置」が設定されている。
【0059】
超音波サーバ50の対応付け機能512は、複数のプローブ10から送られてくる各プローブ10の位置に基づいて、複数のプローブ10の中から、「所定位置」に最も近いプローブ10を特定プローブ10として決定する。例えば、検査室Aに置かれているプローブa10及びプローブb10と、検査室Bに置かれているプローブc10、プローブd10、プローブe10の5つのプローブ10の中から、検査室A内の「所定位置」に最も近いプローブa10を、特定プローブ10として決定する。
【0060】
超音波サーバ50の対応付け機能512は、複数のプローブ10から送られてくる各プローブ10に関連付けられた物理量(例えば、各プローブ10で受信する電波の強度)に基づいて、複数のプローブ10の中から、「所定位置」に最も近いプローブ10を特定プローブ10として決定してもよい。
【0061】
その後、超音波サーバ50の対応付け機能512は、検査場所の「所定位置」に基づいて決定された特定プローブ10と、検査場所に設置されているディスプレイ22及び操作パネル20とを対応付ける。
【0062】
ステップST104では、超音波サーバ50の対応付け機能512は、対応付けられた特定プローブ10とディスプレイ22及び操作パネル20との間の通信を確立する。この通信の確立により、例えば、検査室AにあるディスプレイA22及び操作パネルA20は、「所定位置」に最も近い特定プローブ10、即ち、プローブa10とだけ接続されることになる。
【0063】
ステップST105では、超音波サーバ50は、特定プローブ10に対応付けられた操作パネル20からの制御データに基づいて、特定プローブ10から送出される超音波データから超音波画像データを生成し、生成した超音波画像データを、特定プローブ10に対応付けられたディスプレイ22に送信する。
【0064】
そして、ステップST106では、超音波サーバ50は、超音波画像データに基づいて、特定プローブ10に対応付けられたディスプレイ22に超音波画像を表示させる。
【0065】
(第1の実施形態の変形例)
図5は、第1の実施形態の第1変形例にかかる超音波診断システム1の処理例を示すフローチャートである。第1の実施形態の第1変形例と前述した第1の実施形態の処理(
図4)との相違点は、ステップST200の処理が付加されている点である。その他の処理は第1の実施形態と同じである。
【0066】
ステップST200では、接続開始信号がユーザの入力インターフェースから入力されたか否かをモニタし、接続開始信号が入力された時に、ステップST103に進む。即ち、ステップST200では、接続開始信号が入力された時に、「所定位置」に最も近いプローブ10を、特定プローブ10として決定する。
【0067】
接続開始信号が入力される入力インターフェースは、例えば、検査場所に設置されている操作パネル20や、プローブ10に設けられる適宜のスイッチ等である。ステップST200の処理は、超音波サーバ50の対応付け機能512が行う。
【0068】
図6は、第1の実施形態の第2変形例にかかる超音波診断システム1の処理例を示すフローチャートである。第1の実施形態の第2変形例と前述した第1の実施形態の処理(
図4)との相違点は、ステップST210乃至ステップST230の処理が付加されている点である。その他の処理は第1の実施形態と同じである。
【0069】
プローブ10が無線接続である場合、ユーザはプローブ10を比較的容易に移動させることが可能である。したがって、特定プローブ10と操作パネル20及びディスプレイ22とが一旦対応付けられ、特定プローブ10と操作パネル20及びディスプレイ22との間で信号授受が行われているときでも、特定プローブ10を移動させることができる。この結果、一旦決定された特定プローブ10の所定位置までの距離が、特定プローブ10以外の他のプローブ10より遠くなることが起こり得る。このような場合、一旦決定された特定プローブ10と他のプローブ10とを、所定位置からの距離による判定のみに基づいて切り替えると、特定プローブ10と他のプローブ10とがユーザの意思に反して頻繁に切り替わる恐れがある。
【0070】
そこで、ステップST210では、一旦決定された特定プローブ10の所定位置までの距離が、特定プローブ10以外の他のプローブ10より遠くなったと判定された場合でも(ステップST210のYES)、特定プローブ10が所定の範囲内(例えば、「所定位置」から所定の範囲内)にある場合には(ステップST220のYES)、ステップST105に戻り、特定プローブ10と操作パネル20及びディスプレイ22との対応付けと通信を維持するものとしている。
【0071】
一方、ステップST220にて、特定プローブ10が所定の範囲外に出たと判定されると(ステップST220のNO)、その旨をユーザに通知させるためのアラームを発生する(ステップST230)。なお、ステップST230では、アラーム発生に替えて、或いは、アラーム発生に加えて、特定プローブ10と操作パネル20及びディスプレイ22との対応付けを解除してもよいし、特定プローブ10以外の、所定範囲内にある所定位置に近い方の他のプローブ10と操作パネル20及びディスプレイ22とを対応付けるようにしても良い。
【0072】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態の超音波診断システム1では、複数のプローブ10の夫々は、ある検査場所から他の検査場所への移動が可能であるものの、ディスプレイ22と操作パネル20で構成される操作表示部30に関しては、所定の検査場所に固定されていることを想定している。これに対して、第2の実施形態の超音波診断システム1では、複数のプローブ10の夫々だけでなく、複数の操作表示部30の夫々も、ある検査場所から他の検査場所へと、検査場所間の移動が可能であるように構成されていることを想定している。
【0073】
第2の実施形態の超音波診断システム1における操作表示部30は、例えば、タブレット端末のように携帯が可能なポータブルディスプレイ端末60として構成されている。ポータブルディスプレイ端末60は、超音波画像を表示することができ、かつ、各種の操作データを入力可能なタッチパネル型ディスプレイを備えている。
【0074】
図7は、第2の実施形態の超音波診断システム1のシステム構成例を示す図である。第1の実施形態との相違点は、操作パネル20及びディスプレイ22から構成される操作表示部30がポータブルディスプレイ端末60に置き換わっている点と、操作パネル20及びディスプレイ22が有線でネットワーク70に接続されているのに対して、ポータブルディスプレイ端末60は無線で基地局40(通信装置40)に接続されている点である。
【0075】
図7に示す例では、ポータブルディスプレイ端末A60が検査室Aに配置され、ポータブルディスプレイ端末B60が検査室Bに配置されているが、前述したように、各ポータブルディスプレイ端末60はユーザが持ち運ぶことが可能である。したがって、ポータブルディスプレイ端末A60が検査室Bに配置され、ポータブルディスプレイ端末B60が検査室Aに配置される場合もある。或いは、ポータブルディスプレイ端末A60とポータブルディスプレイ端末B60の2つのポータブルディスプレイ端末60が検査室A又は検査室Bの一方の検査室に配置されることもあり得る。
【0076】
図8は、第2の実施形態の超音波診断システム1の機能構成例を示すブロック図である。
図8において、ポータブルディスプレイ端末60以外の構成品に関しては、第1の実施形態(
図3)と同じである。
【0077】
ポータブルディスプレイ端末60は、前述したように、超音波画像を表示することができ、かつ、各種の操作データを入力可能なタッチパネル型ディスプレイを備えている他、位置(物理量)計測回路601を備えている。位置(物理量)計測回路601の機能、構成は、プローブ10が具備する位置(物理量)計測回路105と同じであり、説明を省略する。
【0078】
図9は、第2の実施形態の超音波診断システム1における処理例、特に、プローブ10とポータブルディスプレイ端末60との対応付けに焦点を当てた処理例を示すフローチャートである。
【0079】
まず、ステップST301では、各検査場所に配設された複数のプローブ10の夫々、及び、ポータブルディスプレイ端末60は、自プローブ10の位置及び自ポータブルディスプレイ端末60の位置を計測する、或いは、自プローブ10及び自ポータブルディスプレイ端末60に関連付けられた物理量を計測する。自プローブ10の位置、或いは、自プローブ10に関連付けられた物理量の計測は、第1の実施形態と同様に、例えば、各プローブ10内の位置(物理量)計測回路105が行う。一方、自ポータブルディスプレイ端末60の位置、或いは、自ポータブルディスプレイ端末60に関連付けられた物理量の計測は、例えば、各ポータブルディスプレイ端末60内の位置(物理量)計測回路605が行う。
【0080】
各ポータブルディスプレイ端末60が、自ポータブルディスプレイ端末60の位置、或いは、自ポータブルディスプレイ端末60に関連付けられた物理量の意味や、これらを計測する方法は、第1の実施形態において説明した、自プローブの位置或いは自プローブに関連付けられた物理量の意味や、これらを計測する方法と実質的に同じであり、説明を省略する。
【0081】
ステップST302では、各プローブ10及び各ポータブルディスプレイ端末60は、計測した自プローブの位置及び自ポータブルディスプレイ端末の位置、或いは、自プローブ10及び自ポータブルディスプレイ端末60に関連付けられた物理量を、基地局40を介して超音波サーバ50に送出する。
【0082】
ステップST303で、超音波サーバ50は、各プローブ10及び各ポータブルディスプレイ端末60から送られてきた各プローブ10の位置及び各ポータブルディスプレイ端末60の位置、又は、各プローブ10及び各ポータブルディスプレイ端末60に関連付けられた物理量及びに基づいて、複数のプローブ10の中の特定プローブ10と、複数のポータブルディスプレイ端末60の中の特定ポータブルディスプレイ端末60とを対応付ける。
【0083】
複数のポータブルディスプレイ端末60の中から特定ポータブルディスプレイ端末60を決定する方法は、複数のプローブ10の中から特定プローブ10を決定する方法と同じ方法を採用することができる。例えば、検査室内の「所定位置」に最も近いポータブルディスプレイ端末60を、特定ポータブルディスプレイ端末60として決定することができる。ステップST303の処理は、超音波サーバ50の対応付け機能512が行う。
【0084】
ステップST304では、超音波サーバ50の対応付け機能512は、対応付けられた特定プローブ10と特定ポータブルディスプレイ端末60との間の通信を確立する。
【0085】
ステップST305では、超音波サーバ50は、特定プローブ10に対応付けられた特定ポータブルディスプレイ端末60からの制御データに基づいて、特定プローブ10から送出される超音波データから超音波画像データを生成し、生成した超音波画像データを、特定プローブ10に対応付けられた特定ポータブルディスプレイ端末60に送信する。
【0086】
そして、ステップST306では、超音波サーバ50は、超音波画像データに基づいて、特定プローブ10に対応付けられた特定ポータブルディスプレイ端末60に超音波画像を表示させる。
【0087】
(第2の実施形態の変形例)
図10は、第2の実施形態の変形例にかかる超音波診断システム1の処理例を示すフローチャートである。第2の実施形態の変形例と前述した第2の実施形態の処理(
図9)との相違点は、ステップST410乃至ステップST430の処理が付加されている点である。その他の処理は第2の実施形態と同じである。
【0088】
ポータブルディスプレイ端末60は無線接続であるため、ユーザはポータブルディスプレイ端末60を容易に移動させることが可能である。したがって、特定プローブ10と特定ポータブルディスプレイ端末60とが一旦対応付けられ、特定プローブ10と特定ポータブルディスプレイ端末60との間で、超音波サーバ50を介した信号授受が行われているときでも、特定ポータブルディスプレイ端末60を移動させることができる。この結果、一旦決定された特定ポータブルディスプレイ端末60の所定位置までの距離が、特定ポータブルディスプレイ端末60以外の他のポータブルディスプレイ端末60より遠くなることが起こり得る。このような場合、プローブ10に関する状況と同様に、一旦決定された特定ポータブルディスプレイ端末60と他のポータブルディスプレイ端末60とを、所定位置からの距離による判定のみに基づいて切り替えると、特定ポータブルディスプレイ端末60と他のポータブルディスプレイ端末60とがユーザの意思に反して頻繁に切り替わる恐れがある。
【0089】
そこで、ステップST410では、一旦決定された特定ポータブルディスプレイ端末6の所定位置までの距離が、特定ポータブルディスプレイ端末60以外の他のポータブルディスプレイ端末60より遠くなったと判定された場合でも(ステップST410のYES)、特定ポータブルディスプレイ端末60が所定の範囲内にある場合には(ステップST420のYES)、ステップST305に戻り、特定プローブ10と特定ポータブルディスプレイ端末60との対応付けと通信を維持するものとしている。
【0090】
一方、ステップST420にて、特定ポータブルディスプレイ端末60が所定の範囲外に出たと判定されると(ステップST420のNO)、その旨をユーザに通知させるためのアラームを発生する(ステップST430)。なお、第1の実施形態の第2変形例と同様に、ステップST430では、アラーム発生に替えて、或いは、アラーム発生に加えて、特定プローブ10と特定ポータブルディスプレイ端末60との対応付けを解除してもよいし、特定ポータブルディスプレイ端末60以外の、所定範囲内にある所定位置に近い方の他のポータブルディスプレイ端末60と特定プローブ10とを対応付けるようにしても良い。
【0091】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態の超音波診断システム1の機能構成例を示すブロック図である。第1の実施形態(
図3参照)との相違点は、超音波サーバ50の処理回路510が、プローブリスト表示機能514を有している点である。
【0092】
例えば、第1の実施形態の第1変形例では、ユーザは検査場所に設置されている操作パネル20(例えば、検査室Aに設置されている操作パネルA20)を操作して、接続開始指令を送信する等して検査開始の指示を行い、そのタイミングでプローブ10の所定位置からの距離に基づいて特定プローブ10を決定している。そして、特定プローブ10と、操作パネルA20及びディスプレイA22と接続するようにしている。
【0093】
一方、ユーザは、複数のプローブ10の夫々の接続可能性や接続優先度の状況などを知り、その結果に基づいて、複数のプローブ10の中から、操作パネルA20及びディスプレイA22と接続させたい特定のプローブ10を判断したいことがある。第3の実施形態では、そのようなプローブ選択を支援するための情報を、例えば、プローブリストとして、ディスプレイA22等に表示させるようにしている。
【0094】
図12は、プローブリスト画面DSに表示されるプローブリストの一例を示す図である。プローブリストは、超音波診断システム1が利用される所定の検査室に関連するプローブの接続状況を一覧的に表示するものである。
【0095】
例えば、検査室Aに関連するプローブの接続状況を示すプローブリストは、検査室Aに設置されているディスプレイA22のプローブリスト画面DSに表示される。この場合、例えば、同じく検査室Aに設置されている操作パネルA20に設けられるスイッチ又はボタンを押下することにより、ディスプレイA22のプローブリスト画面DSに表示される。なお、操作パネルA20にタッチパネルスクリーンが設けられている場合は、このタッチパネルスクリーンにプローブリスト画面DSを表示させてもよい。
【0096】
プローブリストには、例えば、プローブの接続状況をプローブのアイコンと共に表示する「接続プローブ」の列、プローブが接続されているディスプレイを示す「接続ディスプレイ」の列、及び、プローブの接続優先度を示す「優先度」の列が設けられている。
【0097】
「接続プローブ」の列に表示されるプローブのアイコンは、接続されるプローブの形状を模式的に示すと共に、プローブ形状の右下にはそのプローブの識別情報、例えば、「P001」などが表示される。また、プローブのアイコンは、異なる背景を有しており、背景の明るさによって、各プローブの接続状態が一目で判るようになっている。例えば、最も明るい背景の「ハイライト」表示、中程度の明るさの「通常」表示、最も暗い背景の「グレーダウン」表示などにより、各プローブの接続状態を表すことができる。
【0098】
例えば、「ハイライト」表示は、そのプローブが現在ディスプレイA22に接続されていることを示している。「通常」表示は、そのプローブが現在接続可能であることを示している。ただし、現在接続されているプローブは除かれる。「グレーダウン」表示は、そのプローブが現在接続できないことを示している。
【0099】
ここで、プローブの接続可能性は、(a)当該プローブが当該ディスプレイ(例えば、ディスプレイA22)以外のディスプレイに接続されているか否か、(b)当該プローブに関する診断状況と通信状況、(c)当該プローブの充電状況、(d)当該プローブの所定位置からの距離、及び、(e)当該プローブが所定範囲内にあるか否か、の少なくとも1つに基づいて判断される。この判断は、例えば、超音波サーバ50のプローブリスト表示機能514が行う。
【0100】
ここで診断状況とは、どのような診断が実行されるのかを示す情報であり、プローブの通信速度への要求値に関連する情報である。具体的には、検査対象である被検体の解剖学的部位、Bモード法やカラードプラ法などの撮像モード、フレームレート等の撮像条件、造影検査か非造影検査か等の検査の内容等の情報である。これらの診断状況によって、当該診断を行うために必要なプローブの通信速度への要求値が異なってくる。
【0101】
一方、通信状況とは、当該プローブが現在実現できる最大通信速度を意味している。診断状況(例えば、プローブの通信速度への要求値)と通信状況(例えば、実現可能な最大通信速度)との対比により、当該プローブの接続可能性を判断することができる。
【0102】
「接続ディスプレイ」の列には、各プローブ10が現在接続してるディスプレイの識別情報が表示される。「接続プローブ」列が「ハイライト」表示の場合、同じ行の「接続ディスプレイ」の列には、自ディスプレイの識別情報(例えば、「D00aa」等)が表示されることになる
【0103】
「優先度」の列には、プローブの接続優先度を示す数字が表示される。接続優先度は、超音波サーバ50が管理している各プローブ10について予め設定されており、超音波サーバ50が記憶回路508等に予め記憶しているデータである。
【0104】
接続優先度は、ユーザが設定することもできるし、或いは、プローブ10の識別情報や診断状況と接続優先度とを関連付けたデータ(例えば、ルックアップテーブル)によって超音波サーバ50が自動的に設定することもできる。
【0105】
診断状況は、前述したように、どのような診断が実行されるのかを示す情報であり、造影検査か非造影検査か等の検査の内容を含む情報である。例えば造影検査のように診断コストの高い検査では、それに用いられるプローブの接続優先度を高くするのが望ましい。
【0106】
プローブリストの「優先度」の列には、このようにして設定された接続優先度が表示される。ユーザは、ディスプレイ22に表示されたプローブリストを参照することによって、各プローブの接続状況を確認できる。さらにユーザは、プローブリストを見ながら、例えば操作パネル20に設けられたプローブ選択ボタンにより、使用したいプローブを選択することも可能である。
【0107】
なお、接続優先度に基づいて、プローブリストへの表示以外の機能を実現することもできる。例えば、基地局40に接続されているプローブが複数ある場合において、優先度の高い方のプローブに優先的に転送レートを確保する、といった機能を実現することもできる。
【0108】
この他、超音波サーバ50のプローブリスト表示機能514は、プローブリストに、各プローブの「所定位置」からの距離に関するデータ、或いは、前記プローブの位置情報を付加的に表示してもよい。
【0109】
なお、実施形態のディスプレイ及び操作パネル、基地局(又は通信装置)、位置(物理量)計測回路、及び、対応付け機能は、夫々、特許請求の範囲の操作表示部、通信部、計測部、及び、対応付け部の一例である。また、実施形態のポータブルディスプレイ端末、及び、ポータブルディスプレイ端末内の位置(物理量)計測回路は、夫々、特許請求の範囲のポータブル操作表示部、及び、第2計測部の一例である。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0111】
1 超音波診断システム
10 プローブ
20 操作パネル
22 ディスプレイ
30 操作表示部
40 基地局(通信装置)
50 超音波サーバ
60 ポータブルディスプレイ端末
70 ネットワーク
105 位置(物理量)計測回路
510 処理回路
512 対応付け機能
514 プローブリスト表示機能