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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】封着・被覆用材
(51)【国際特許分類】
   C03C 8/04 20060101AFI20240619BHJP
   C03C 8/16 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
C03C8/04
C03C8/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020154306
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048472
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104639
【弁理士】
【氏名又は名称】早坂 巧
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩三
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04624934(US,A)
【文献】特開2018-058716(JP,A)
【文献】特開2020-097511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に酸化鉛もアルカリ金属酸化物も含有せず,モル%で,
SiO :30~50%
Al :1~10%
:10~32%
BaO :~25%
ZnO :1~10%
Bi3 :0~6%,及び
RO : 18~40%
(Rは,Mg,Ca,Sr,Ba及びZnを包括的に表す。)
を含有し、但し
MgOの含有量は1%以下
であることを特徴とする,封着・被覆用ガラス。
【請求項2】
実質的に酸化鉛もアルカリ金属酸化物も含有せず,モル%で,
SiO :32~48%
Al :2~8%
:12~30%
BaO :8~22%
ZnO :1~8%
Bi3 :0~6%,及び
RO :21~38%
(Rは,Mg,Ca,S,Ba及びZnを包括的に表す。)
を含有し、但し
MgOの含有量は1%以下
であることを特徴とする,封着・被覆用ガラス。
【請求項3】
CaOとSrOのうち少なくとも1種を合計で1~20モル%含有する,請求項1又は2の封着・被覆用ガラス。
【請求項4】
SiOとBの合計含有量が50~70モル%である,請求項1~3の何れかの封着・被覆用ガラス。
【請求項5】
ROに対するSiOのモル比:
[SiO/RO]
が1~2である,請求項1~4の何れかの封着・被覆用ガラス。
【請求項6】
粉末の形態の請求項1~5の何れかのガラスを含んでなる封着・被覆用材。
【請求項7】
粉末の形態の請求項1~5の何れかのガラスとフィラー粉末とを含んでなり,フィラー粉末の含有量が40重量%を超えないものである,封着・被覆用材。
【請求項8】
有機バインダーと溶剤を更に含んでなるペーストの形態である,請求項6又は7の封着・被覆用材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は封着・被覆ガラスを含んでなる材料に関し,より具体的には電子デバイス等の物品の製造過程における部材間の封着のための,また電子部品に形成された電極や抵抗体の保護,絶縁のための,封着・被覆用材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス等の物品の製造において使用される封着用材には,できるだけ低温で対象物品と封着できること,それらの部品の熱膨張係数に近似していること,及び確実な封着のために焼成時に十分な流動性を示すこと等の特性が求められている。
【0003】
また,電子部品の表面に使用される被覆用材においても,(1)被覆物と熱膨張係数が近いこと,(2)工程で酸を使用するため耐酸性があること,(3)比較的低温で焼成できること等の要求特性がある。
【0004】
上記の物品において封着や被覆用として使用されているガラスは,一般的にPbO-SiO-B系のものであり,またそれらの熱膨張係数を下げて電子部品のそれに適合させる目的で,コーディエライトのような低膨張性セラミックを添加して熱膨張係数を調節した材料も使用されてきた。
【0005】
しかし,鉛を含むガラスは,環境上の観点から近年使用が避けられてきており,鉛を含有しないガラスの開発が行われている。鉛を含まないガラスとしては,Bi-SiOーB系ガラス(特許文献1)などが知られている。
【0006】
しかし,これまで開発されてきた無鉛ガラスには,軟化温度が高くそのため焼成温度が高くなるという問題点や,軟化温度を下げるようZnOあるいはBiの割合を高めた組成とした場合,耐酸性が低下するという問題点がある。更に,Biの含有量を高めたものは焼成時に結晶化しやすくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-230973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の背景において,本発明は,鉛及びアルカリ金属酸化物を含有せず、800℃以下という比較的低温で焼成でき,焼成時に結晶化せず,耐酸性に優れるガラスであって,熱膨張係数が55~80×10-7/℃である封着・被覆用ガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上述の従来技術の問題点の解決に向けて研究を重ねた結果,ある特定の成分範囲のガラス組成物にした場合,耐酸性がよく,800℃以下の温度で封着できるガラスが得られることを見出し,この知見に基づき更に検討を重ねて本発明を完成させるに至った。すなわち,本発明は以下を提供する。
【0010】
1.実質的に酸化鉛もアルカリ金属酸化物も含有せず,モル%で,
SiO :30~50%
Al :1~10%
:10~32%
BaO :5~25%
ZnO :1~10%
Bi3 :0~6%,及び
RO :18~40%
(Rは,Mg,Ca,Sr,Ba及びZnを包括的に表す。)
を含有することを特徴とする,封着・被覆用ガラス。
2.実質的に酸化鉛もアルカリ金属酸化物も含有せず,モル%で,
SiO :32~48%
Al :2~8%
:12~30%
BaO :8~22%
ZnO :1~8%
Bi3 :0~6%,及び
RO :21~38%
(Rは,Mg,Ca,S,Ba及びZnを包括的に表す。)
を含有することを特徴とする,封着・被覆用ガラス。
3.CaOとSrOのうち少なくとも1種を合計で1~20モル%含有する,上記1又は2の封着・被覆用ガラス。
4.SiOとBの合計含有量が50~70モル%である,上記1~3の何れかの封着・被覆用ガラス。
5.ROに対するSiOのモル比:
[SiO/RO]
が1~2である,上記1~4の何れかの封着・被覆用ガラス。
6.粉末の形態の上記1~5の何れかのガラスを含んでなる封着・被覆用材。
7.粉末の形態の上記1~5の何れかのガラスとフィラー粉末とを含んでなり,フィラー粉末の含有量が40重量%を超えないものである,封着・被覆用材。
8.有機バインダーと溶剤を更に含んでなるペーストの形態である,上記6又は7の封着・被覆用材。
【発明の効果】
【0011】
上記構成になる本発明の封着・被覆用材は800℃以下で焼成することができる。また本発明のガラス粉末は,セラミックフィラー粉末との混合物として焼成してもフィラーと反応せず結晶の析出が起こらないため,流動性に優れ,このため冷却固化後の機械的強度が高く,耐久性に優れた封着,被覆用材として使用することができる。また本発明の封着・被覆用材は,熱膨張係数を約55~80×10-7/℃の範囲で,更には約60~80×10-7/℃の範囲でも容易に調節することができる。従って,この点においても封着・被覆に適した材料として有利に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)封着・被覆用ガラス
本発明の封着・被覆用ガラスを構成する各成分と,本発明の目的の達成に適したそれらの含有量範囲は以下の通りである。
【0013】
SiOはガラスを形成する成分であり,30~50モル%の範囲で含有させることが好ましい。SiOの含有量が30モル%より少ない場合,ガラスが得られないおそれがあり,また得られたとしても熱膨張係数が高くなり,封着ができなくなるおそれがある一方,SiOの含有量が50モル%より多くなると,ガラスが溶融しがたくなり,また製造時に融液中で未溶融物として溶け残るおそれがあるためである。これらの要素を考慮すると,SiOの含有量は32~48モル%とするのがより好ましく,35~45モル%とするのが更に好ましい。
【0014】
Alはガラスを形成する成分であり,1~10モル%の範囲で含有させることが好ましい。Alの含有量が1モル%より少ない場合,ガラスが得られないおそれがある一方,Alの含有量が10モル%より多い場合,製造時に融液中で未溶融物として溶け残るおそれがあるためである。これらの要素を考慮すると,Alの含有量は2~8モル%とするのがより好ましい。
【0015】
はガラスを形成する成分であり10~32モル%の範囲で含有させることが好ましい。Bの含有量が10モル%より少ない場合,ガラスが得られないおそれがあり,また得られたとしても軟化温度が高くなり,所望の温度での封着ができなくなるおそれがある一方,Bの含有量が32モル%より多くなると,ガラスの熱膨張係数が高くなり封着,被覆ができなくなるおそれがあるためである。これらの要素を考慮すると,Bの含有量は12~30モル%とするのがより好ましく,15~25モル%とするのが更に好ましい。
【0016】
BaOはガラス形成性を高め,軟化温度を下げる成分であり,5~25モル%の範囲で含有させることが好ましい。BaOの含有量が5モル%より少ない場合,軟化温度を下げる効果がないおそれがある一方,BaOの含有量が25モル%より多い場合,ガラス形成性が却って悪くなるおそれがあるためである。これらの要素を考慮すると,BaOの含有量は8~22モル%とするのがより好ましく,10~20モル%とするのが更に好ましい。
【0017】
ZnOはガラス形成性を上げる成分であり,1~10モル%の範囲で含有させることが好ましい。ZnOの含有量が1モル%より少ない場合,ガラスの形成性が悪くなるおそれがある一方,ZnOの含有量が10モル%より多い場合,ガラスの耐酸性が悪くなるおそれがあるためである。これらの要素を考慮すると,ZnOの含有量は1~8モル%とするのがより好ましく,3~8モル%とするのが更に好ましい。
【0018】
Biは必須成分ではないが,ガラス状態を安定させ,軟化温度を下げる成分として含有させることができ,その場合含有量は6モル%以下とすることが好ましい。Biの含有量が6モル%を超えるとガラスの形成性が悪くなるあるいは焼成時に結晶が析出し易くなり,封着,被覆不良が発生するおそれがあるためである。これらの要素を考慮すると,Biの含有量は5モル%以下とするのがより好ましく,3モル%以下とするのが更に好ましい。
【0019】
CaO及びSrOは必須成分ではないが,ガラスの形成性を高める成分として含有させることができ,その場合,それらの合計含有量を20モル%以下とするのが好ましい。合計含有量が20モル%を超えるとガラスの形成性が悪くなるおそれがあるためである。これらの要素を考慮すると,CaOとSrOの合計含有量は1~20モル%とするのがより好ましい。
【0020】
MgOは必須成分ではないが,他のアルカリ土類金属酸化物と併用するとガラスの液相温度を下げるように作用するため,含有させてもよい。但しMgOの含有量が5モル%を超える場合,ガラスが得られなくなるか又はガラスの結晶化を誘発するおそれがあるため,含有量は5モル%以下とする必要があり,またそのようなおそれの確実な防止のためには,MgOの含有量は1モル%以下とするのがより好ましく,含有しないことが更に好ましい。
【0021】
ZrOは必須成分ではないが,ガラスの耐酸性を向上させる成分として含有させることができ,その場合含有量は7モル%以下とするのがが好ましい。ZrOが7モル%を超えるとガラスの形成性が悪くなるかあるいは焼成時に結晶が析出し易くなり,封着,被覆不良が発生するおそれがあるためである。
【0022】
本発明の封着・被覆用ガラスは,RO(Rは,Mg,Ca,Sr,Ba,及びZnを包括的に表す。)の含有量を18~40モル%とすることが好ましい。含有量が18モル%より少ない場合750℃付近での焼成における流動性に悪影響を及ぼすおそれがあり,焼成のために高い温度が必要となるため好ましくない一方,含有量が40モル%を超える場合,ガラスの耐酸性が悪くなるおそれがあるためである。これらの要素を考慮すると,ROの含有量は21~38モル%とするのがより好ましく,25~36モル%とするのが更に好ましい。
【0023】
上記成分に加えて,ガラス製造時の安定性の向上,結晶化の抑制,熱膨張係数の調整の目的で,La,Nb,TeO,CeO,TiOを合計で5モル%までの範囲で加えることができる。
【0024】
本発明の封着・被覆ガラスは,焼成時に電子部品等に影響がないよう800℃以下で焼成されることが好ましいため,その軟化温度は,おおよその目安ではあるが,約600℃~750℃の範囲にあることが好ましく,約650℃~730℃の範囲にあることがより好ましい。
【0025】
(2)セラミックフィラー
本発明のガラスからなる粉末はそのまま封着・被覆用材として使用することができるが,熱膨張係数の調整及び強度の向上の目的で,必要に応じてセラミックフィラーとの混合粉末の形態の封着・被覆用材として使用することもできる。セラミックフィラーの配合量は,ガラスとの合計量の40重量%以下となるよう適宜設定することができる。配合するセラミックフィラーの例としては,コーディエライト,ジルコン,リン酸ジルコニウム,チタン酸アルミニウム,ムライト,アルミナ,ウィレマイト,シリカ(α―クォーツ,クリストバライト,トリジマイト)等が挙げられる。これらの中でリン酸ジルコニウム及びジルコンは,焼成時にガラスを結晶化させる懸念なしに熱膨張係数を調整できるものであり,その点から特に好ましい。
【0026】
更には,本発明の封着・被覆用材は,封止・被覆対象物の表面に適用するのに便利な形態,例えばペーストやシートの形態として提供することもできる。
【0027】
ペーストの形態の封着・被覆用材の調製は,溶剤び有機バインダーの少なくとも1種と粉末形態の本発明のガラス及び該当する場合はフィラー粉末とを混合することにより行えばよい。本発明のガラスの平均粒径は,特に限定されないが,通常は1~10μmとするのが好ましく,2~8μmとするのがより好ましい。
【0028】
前記有機バインダーとして何を用いるかについては特に制限されず,封着・被覆用材の具体的用途に応じて,公知のバインダーの中から適宜採用することができる。例えば,エチルセルロース等のセルロース樹脂が挙げられるが,これらに限定されない。
【0029】
前記溶剤は,用いる有機バインダーに応じて適宜選択すればよく,例えばエタノール,メタノール,イソプロパノール等のアルコール類;テルピネオール(α-テルピネオール,又はα-テルピネオールを主成分としたβ-テルピネオール及びγ-テルピネオールとの混合物)等の有機溶剤が挙げられるが,これらに限定されない。なお溶剤は,単独で用いてもよく,2種以上を併用してもよい。
【0030】
ペーストの調製においては,上記以外にも,必要に応じて,例えば可塑剤,増粘剤,増感剤,界面活性剤,分散剤等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0031】
本発明の封着・被覆用材をシートの形態とするには,例えば,ペーストの形態の封着・被覆用材をを基材上に塗布し,塗膜を室温又は加熱下に乾燥させればよい。
【実施例
【0032】
以下,実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが,本発明がこれらの実施例により限定されることは意図しない。
【0033】
〔ガラス及びガラス粉末の製造〕
表1~3の実施例1~18及び表4の比較例1~4に示すガラス組成となるように原料を調合,混合し,該混合物を白金るつぼに入れ,1400~1500℃の温度で1時間溶融した。ガラス融液の大半を双ロール法で急冷してガラスフレークを得,これをポットミルを用いて粉砕してガラス粉末とし,後述のように熱示唆分析(DTA)にかけた。融液の残部は予め加熱しておいたカーボン板にブロック状に流し出し,ガラス転移温度より約50℃高い温度に設定した電気炉中での徐冷を経てガラスブロックとした。
【0034】
〔ガラスとフィラーの混合粉末の調整〕
表5の実施例19~21に示す割合でガラス粉末とセラミックフィラー粉末を調合し混合粉末をそれぞれ調製した。
【0035】
〔評価1〕
実施例1~18,比較例1~4について,ガラス粉末を用いてガラス転移温度,軟化温度,及び結晶化温度を,並びにガラスブロックの熱膨張係数を,次の方法により測定した。結果を表1~4に示す。
【0036】
(1)ガラス転移温度,軟化温度,結晶化温度
ガラス粉末約60~80mgを白金セルに充填し,DTA測定装置(リガク社製Thermo Plus EVO2 TG-DTA8122)を用いて,室温から20℃/分で1000℃まで昇温させてガラス転移温度(Tg),軟化温度(Ts),及び結晶化温度(Tp)を測定した。
【0037】
(2)ガラスの熱膨張係数
上記のガラスブロックを約5×5×15mmに切り出し,研磨して測定用のサンプルとした。TMA測定装置を用いて,室温から10℃/分で昇温したときに得られる熱膨張曲線から,50℃と300℃の2点に基づく熱膨張係数(α)を求めた。
【0038】
〔評価2〕
ガラスの耐酸性
実施例1~18,及び比較例1~3の各ガラスについて,次の方法により耐酸性を測定した。即ち,上記のガラスブロックを約5×5×15mmに切り出し,70%硝酸に浸漬して室温で2時間静置した。浸漬前に対する浸漬後のガラスブロックの重量変化の割合(%)を求めた。結果は表1~4に示す。
【0039】
〔評価3〕
流動性(750℃焼成)
実施例1~18,及び比較例1~3の各ガラスについて,次の方法により750℃で焼成した際の流動性を調べた。即ち,各ガラス粉末約5gを内径20mmの金型に入れ,プレス成形して圧粉体にし,それらを昇温速度200℃/時間で750℃まで昇温し,その温度に1時間保持した後,それらの焼成状態を観察した。結果を表1~4に示す。表面にガラス光沢があり,流動したものを○,表面にガラス光沢がなく,流動性がなかったものを×とした。
【0040】
〔評価4〕
ガラとフィラーの混合粉末の圧粉体の熱膨張係数
実施例19,20及び21の各混合粉末約5gをそれぞれ内径20mmの金型に入れ,プレス成形して圧粉体とした。各圧粉体を750℃で1時間焼成し,得られた焼結体を約5×5×15mmに切り出し,試験体を作製した。試験体につき,TMA測定装置を用いて,室温から10℃/分で昇温したときに得られる熱膨張曲線から50℃と300℃の2点に基づく熱膨張係数(α)を求めた。結果を表1~4に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
上記の表に見られるように,実施例1~18のガラスは,軟化温度が664℃~763℃の範囲にあり,何れも800℃を超えない温度(750℃)において十分な流動性を持たせた状態での焼成が可能である。また,何れの実施例のガラスも室温から1000℃までの範囲で結晶化温度の存在が検出されないため,800℃以下での焼成時に結晶化が起こるおそれはない。更に,何れの実施例のガラスも,本発明における好ましい55~80×10-7/℃の範囲内の膨張係数を示している。これらに対し,Bi含有量が本発明のガラスより高い(9.0モル%)比較例1のガラスは,耐酸性試験での重量減少が顕著である。Bi含有量が同様に高い比較例2のガラスでは,Al含有量が高い(18.0モル%)ため耐酸性試験での重量減少は抑制されているものの,その高いAl含有量により1000℃までの範囲に結晶化温度が存在するようになり,焼成時に結晶が析出して流動性が悪くなる。また,B含有量がやや高く(33モル%)RO含有量がやや低い(17.0モル%)比較例3のガラスは,熱膨張係数が50×10-7/℃と小さ過ぎ,本発明の目的には適さない。また比較例4のガラスは,RO含有量が低く(15モル%),その結果流動性が悪い。
【0047】
このように,本発明のガラスは,軟化温度,熱膨張係数の点で半導体などの物品の封着に適しており,且つ耐酸性に優れたものとしても提供できるため,広範な種々の電子デバイスや電子部品各部の封着や接着に用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のガラスはその粉末単独でもあるいはこれとセラミックフィラー粉末との混合物としても,900℃以下の温度で封着・被覆用材として使用することができる。また,本発明のガラスはセラミックフィラーと反応しないため,それらの混合物も封着・被覆用材としての使用時(焼成時)の流動性に優れ,冷却固化後の機械的強度及び耐久性が高い。従って本発明の封着・被覆用剤は,半導体素子の封着,被覆に適した材料として使用することができる。