(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えて内燃エンジンがオンの状態で静止している路上走行車両を制御する方法
(51)【国際特許分類】
F16D 48/02 20060101AFI20240619BHJP
F16H 61/688 20060101ALI20240619BHJP
F16H 63/46 20060101ALI20240619BHJP
F16H 61/04 20060101ALI20240619BHJP
F16D 25/10 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
F16D48/02 640L
F16H61/688
F16H63/46
F16H61/04
F16D25/10 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020158620
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】102019000017504
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ バローネ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ナンニーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジャコモ センセリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ マルコーニ
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-015184(JP,A)
【文献】特開2010-100179(JP,A)
【文献】特開2007-192322(JP,A)
【文献】特開2007-315475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 48/02
F16H 59/00-61/12
F16H 61/684、61/688
F16H 63/46
F16D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション(7)を備えて内燃エンジン(4)がオンの状態で静止している路上走行車両(1)を制御する方法であって、前記路上走行車両(1)が前記内燃エンジン(4)をオンの状態にして静止しているときに、
第1のクラッチ(16A)と関連付けられる前進ギアを噛み合わせるステップと、
前記第1のクラッチ(16A)とは異なるとともに前記第1のクラッチ(16A)から独立している第2のクラッチ(16B)と関連付けられる後進ギア(R)を噛み合わせるステップと、
前記第1のクラッチ(16A)を閉じて第1のトルク(T
A)を前記第1のクラッチ(16A)に伝達させる
とともに、前記第2のクラッチ(16B)を閉じて、前記後進ギア(R)のギア比と前記前進ギアのギア比との間の商を前記第1のトルク(T
A)に乗じたものに等しい第2のトルク(T
B)を前記第2のクラッチ(16B)に伝達させるステップと、
を含む制御方法において、
前記トランスミッション(7)の副シャフト(17)の回転速度(ω
2)を検出するステップと、
前記トランスミッション(7)の前記副シャフト(17)の前記回転速度(ω
2)に応じて、前記第1のトルク(T
A)及び/又は前記第2のトルク(T
B)を調節するステップと、
を更に含むことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記第1のトルク(T
A)が3~7Nmの範囲である、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記第1のトルク(T
A)は、前記内燃エンジン(4)の最大トルクの0.4%~0.9%の範囲である、請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記トランスミッション(7)の前記副シャフト(17)の前記回転速度(ω
2)が前記副シャフト(17)に接続されるセンサ(28)によって測定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記トランスミッション(7)の前記副シャフト(17)の前記回転速度(ω
2)がゼロとなるように前記第1のトルク(T
A)及び/又は前記第2のトルク(T
B)が調節される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記第1のトルク(T
A)及び/又は前記第2のトルク(T
B)は
、フィードバック制御によって調節される、請求項
5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記第1のトルク(T
A)及び/又は前記第2のトルク(T
B)は、
ゼロと前記トランスミッション(7)の前記副シャフト(17)の前記回転速度(ω
2
)との間の差である制御エラー(ε)を入力として受けるPIDコントローラ(30)によって調節される、請求項
6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記トランスミッション(7)の前記副シャフト(17)の前記回転速度(ω
2)がゼロでないとき、前記トランスミッション(7)の前記副シャフト(17)の前記回転速度(ω
2)と同じ方向で作用する前記トルク(T
A、T
B)が減少される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記トランスミッション(7)の前記副シャフト(17)の前記回転速度(ω
2)が絶対値で安全閾値を超える場合、両方の前記クラッチ(16A,16B)が開放される、請求項1から
8のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項10】
前記路上走行車両(1)のドアが開放される場合に両方の前記クラッチ(16A,16B)が開放される、請求項1から
9のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項11】
周期的に且つ前記クラッチ(16A,16B)が閉じてから所定の時間が経過した後、 両方の前記クラッチ(16A,16B)を開放するステップと、
両方の前記クラッチ(16A,16B)が開放しているときに、前記クラッチ(16A,16B)へのオイルの供給を制御する制御弁(32)を迅速に且つ繰り返し開閉することにより、前記制御弁(32)を洗浄するステップと、
前記制御弁(32)を洗浄した後に前記クラッチ(16A,16B)を再び閉じるステップと、
を更に含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、その開示全体が参照により本願に組み入れられる2019年9月30日に出願されたイタリア特許出願第102019000017504号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えて内燃エンジンがオンの状態で静止している路上走行車両を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインは、互いに同軸で互いに独立しているとともに互いに内側に挿入される一対の主シャフトと、それぞれがそれぞれの主シャフトを内燃エンジンのドライブシャフトに接続するようになっている2つの同軸クラッチと、動きを駆動輪に伝達するとともにそれぞれがギアを形成するそれぞれのギアトレインによって主シャフトに結合され得る少なくとも1つの副シャフトとを備える。
【0004】
ギアシフト中、現在のギアが副シャフトを主シャフトに結合し、一方で、追従するギアが副シャフトを他の主シャフトに結合し、結果として、ギアシフトは、2つのクラッチを交差させることによって、すなわち、現在のギアに関連付けられるクラッチを開放することによって及び同時に追従するギアと関連付けられるクラッチを閉じることによって行われる。
【0005】
内燃エンジンがオンの状態で路上走行車両が静止しているとき(例えば、内燃エンジンをオンにした直後、又は、より頻繁には、交通により引き起こされる停止中)に、内燃エンジンは、非常に低い回転速度(すなわち、エンジンが「アイドリング状態にある」)を有するとともに、燃焼不規則性を特徴とし得る(特に、内燃エンジンが非常に高い回転速度で非常に大きな最大出力を生み出すように設計されるとき)。内燃エンジンが非常に低い回転速度を有するときに起こる燃焼不規則性は、ドライバーが認識できる機械的なノイズ(しばしば「石畳音」という表現で特定される)をもたらし得る共振現象によって増幅されることがあるトルク/速度振動を生み出す(路上走行車両が静止しており且つ内燃エンジンが非常に低い回転速度を有することから、「カバー」できる他のノイズが存在しないため)。
【0006】
米国特許出願公開第2011284336号明細書は、ニュートラル時に、特にトランスミッションシャフトが特定のクリアランスを有するスプライン接続によってドライブシャフトに接続されるときに、自動車のドライブトレインで発生するノイズを低減する方法について記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えて内燃エンジンがオンの状態で静止している路上走行車両を制御する方法を提供することであり、前記方法は、前述の機械的ノイズの発生を回避すると同時に、実施が簡単で経済的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に係る、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えて内燃エンジンがオンの状態で静止している路上走行車両を制御する方法が提供される。
【0009】
添付の特許請求の範囲は、本発明の好ましい実施形態を記載し、明細書本文の一体部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
ここで、本発明の非限定的な実施形態を示す添付図面を参照して本発明を説明する。
【
図1】本発明の制御方法にしたがって制御される、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを伴うドライブトレインを備える後輪駆動の路上走行車両の概略平面図である。
【
図3】2つのクラッチによって伝達される2つの異なるトルクの経路を強調する、
図1のドライブトレインの概略図である。
【
図4】ドライブトレインの制御ユニットに実装される制御ロジックのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、数字1は、全体として、2つの前従動(すなわち、非駆動)輪2と2つの後駆動輪3とを備える路上走行車両(特に、自動車)を示す。前方位置には、ドライブトレイン6によって駆動輪3に伝達されるトルクを生成するドライブシャフト5を備える内燃エンジン4がある。ドライブトレイン6は、後輪駆動アセンブリに配置されるデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7と、ドライブシャフト5をデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7の入力に接続するトランスミッションシャフト8とを備える。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、トレインのような態様でセルフロック差動装置9に接続され、セルフロック差動装置9からは一対のアクスルシャフト10が延び、各アクスルシャフト10は駆動輪3と一体である。
【0012】
路上走行車両1は、エンジン4を制御するエンジン4の制御ユニット11と、ドライブトレイン6を制御するドライブトレイン6の制御ユニット12と、バスライン13とを備え、バスライン13は、例えばCAN(カー・エリア・ネットワーク)プロトコルにしたがって製造され、路上走行車両1全体に延びるとともに、2つの制御ユニット11,12が互いに通信できるようにする。言い換えると、エンジン4の制御ユニット11及びドライブトレイン6の制御ユニット12は、バスライン13に接続され、したがって、バスライン13を介して送信されるメッセージによって互いに通信できる。更に、エンジン4の制御ユニット11及びドライブトレイン6の制御ユニット12は、専用の同期ケーブル14によって互いに直接に接続可能であり、専用の同期ケーブル14は、バスライン13によって引き起こされる遅延を伴うことなく、ドライブトレイン6の制御ユニット12からエンジン4の制御ユニット11へ信号を直接に送信できる。或いは、同期ケーブル14がなくてもよく、また、2つの制御ユニット11,12間の全ての通信がバスライン13を使用してやりとりされてもよい。
【0013】
図2によれば、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、互いに同軸で互いに独立しているとともに互いに内側に挿入される一対の主シャフト15を備える。更に、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、それぞれがそれぞれの主シャフト15をトランスミッションシャフト8の介在により内燃エンジン4のドライブシャフト5に接続するようになっている2つの同軸クラッチ16を備え、各クラッチ16は、オイルバスクラッチであり、そのため、圧力制御され(すなわち、クラッチ16の開閉の程度は、クラッチ16内のオイルの圧力によって決定される)、別の実施形態によれば、各クラッチ16は、乾式クラッチであり、したがって、位置制御される(すなわち、クラッチ16の開閉の程度は、クラッチ16の可動要素の位置によって決定される)。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、駆動輪3に動きを伝達する差動装置9に接続される1つの単一の副シャフト17を備え、別の同等の実施形態によれば、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7が2つの副シャフト17を備え、これらの副シャフト17はいずれも差動装置9に接続される。
【0014】
デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、ローマ数字で示される7つの前進ギア(第1のギアI、第2のギアII、第3のギアIII、第4のギアIV、第5のギアV、第6のギアVI、及び、第7のギアVII)と後進ギア(Rで示される)とを有する。主シャフト15及び副シャフト17は複数のギアトレインによって互いに機械的に結合され、各ギアトレインは、それぞれのギアを形成するとともに、主シャフト15に取り付けられる主ギアホイール18と、副シャフト17に取り付けられる副ギアホイール19とを備える。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7の正確な動作を可能にするために、全ての奇数ギア(第1のギアI、第3のギアIII、第5のギアV、第7のギアVII)が同じ主シャフト15に結合され、一方、全ての偶数ギア(第2のギアII、第4のギアIV、及び、第6のギアVI)は他方の主シャフト15に結合される。
【0015】
各主ギアホイール18は、常に主シャフト15と一体に回転するようにそれぞれの主シャフト15にスプライン結合されるとともに、それぞれの副ギアホイール19と恒久的に噛み合い、一方、各副ギアホイール19は、副シャフト17に遊動態様で装着される。更に、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は4つの同期装置20を備え、各同期装置は、副シャフト17と同軸に装着され、2つの副ギアホイール19間に配置されるとともに、2つのそれぞれの副ギアホイール19を副シャフト17に対して二者択一的に取り付けるべく(すなわち、2つのそれぞれの副ギアホイール19が副シャフト17と角度的に一体になるようにするべく)動作されるように設計される。言い換えると、各同期装置20は、副ギアホイール19を副シャフト17に取り付けるべく一方向に移動され得る、或いは、他の副ギアホイール19を副シャフト17に取り付けるべく他方向に移動され得る。
【0016】
デュアルクラッチトランスミッション7は、駆動輪3に動きを伝達する差動装置9に接続される1つの単一の副シャフト17を備え、別の同等の実施形態によれば、デュアルクラッチトランスミッション7が2つの副シャフト17を備え、これらの副シャフト17はいずれも差動装置9に接続される。
【0017】
図1によれば、路上走行車両1は、ドライバーのための運転位置を確保する乗員室を備え、運転位置は、シート(図示せず)と、ステアリングホイール21と、アクセルペダル22と、ブレーキペダル23と、2つのパドルシフタ24,25とを備え、2つのパドルシフタ24,25はデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7を制御してステアリングホイール21の両側に接続される。アップシフトパドルシフタ24は、アップシフト(すなわち、現在のギアよりも高く且つ現在のギアと隣接する新しいギアの噛み合い)を要求するためにドライバーによって(短い圧力により)操作され、一方、ダウンシフトパドルシフタ25は、ダウンシフト(すなわち、現在のギアよりも低く且つ現在のギアと隣接する新しいギアの噛み合い)を要求するためにドライバーによって(短い圧力により)操作される。
【0018】
使用時、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、路上走行車両1が内燃エンジン4をオンの状態にして静止している期間を検出し、この状態で(及び、この状態でのみ)、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、(全ての奇数ギアと関連付けられる)クラッチ16Aと関連付けられる前進ギア(通常は第1のギアI)と噛み合い、クラッチ16Aと異なるとともにクラッチ16Aから独立している(全ての偶数ギアに関連付けられる)クラッチ16Bと関連付けられる後進ギアRと噛み合い、その後、
図3が概略的に示すように、路上走行車両1が内燃エンジン4をオンの状態にして静止しているときに、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、クラッチ16AにトルクT
Aを伝達させるべくクラッチ16Aを閉じるとともに、後進ギアRのギア比と前進ギア(すなわち、第1のギアI)のギア比との間の商をトルクT
Aに乗じたものに等しいトルクT
Bをクラッチ16Bに伝達させるべくクラッチ16Bを閉じる。このようにして、トランスミッション7の副シャフト17は、全体として、ゼロトルクを受ける。これは、副シャフト17において、2つのトルクT
A,T
Bが同じ絶対値及び反対方向を有し、したがって、それらのトルクがお互いを相殺するからである。
【0019】
一例として、トルクTAは3~7Nmの範囲であり、すなわち、トルクTAは、内燃エンジン4の最大トルクの0.4%~0.9%の範囲であり、結果として、トルクTA(及び後進ギアRのギア比が第1のギアIのギア比と同様であるため、トルクTAと同様のトルクTBも)は非常に小さい。確かに、2つのクラッチ16A,16Bにより伝達されるトルクTA,TBの機能は、路上走行車両1を動かすという機能ではなく(代わりに、静止したままでなければならない)、異なる機械的なクリアランスを閉じるという機能、したがって、ドライブトレイン6が機械的ノイズの発生を回避できるようにするという機能である。更に、アイドリングを継続するために内燃エンジン4によって生成されるべきトルクの適度な増大は、燃焼不規則性を減らし、したがって、機械的ノイズを生み出す可能性があるそれらの機械的応力を減らすより有利な作用状態へエンジンポイントを移動させる。
【0020】
これらの状態では、各クラッチで、駆動ディスク26(
図2に概略的に示される)が内燃エンジン4と同じ回転速度ω
Eで回転し、従動ディスク27(
図2に概略的に示される)が静止している(路上走行車両1が静止したままでなければならないため)ため、両方のクラッチ16A,16Bがスリップモードで動作するのは明らかである。しかしながら、内燃エンジン4の回転速度ω
Eは緩やかであり(内燃エンジン4がアイドリングしている)、2つのクラッチ16A,16Bにより伝達されるトルクT
A、T
Bが小さいため、スリップモードに起因してクラッチ16A,16Bで起こる放熱は、控えめであり重要ではない。
【0021】
図4に概略的に示される好ましい実施形態によれば、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω
2を(例えば、トランスミッション7の副シャフト17に対して直接的又は間接的に接続されるセンサ28によって)検出するとともに、トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω
2に基づいてトルクT
A及び/又はトルクT
Bを調節し、それにより、トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω
2がゼロのままとなる。言い換えると、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、(既に前述したように、路上走行車両1が移動する必要がないため)トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω
2がゼロになる(ゼロのままとなる)ようにするべくトルクT
A及び/又はトルクT
Bを調節する。
【0022】
図4に示される好ましい実施形態によれば、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、トルクT
A及び/又はトルクT
Bを調節するためにフィードバック制御を実施し、このフィードバック制御では、制御エラーεがゼロ(目標値に相当する)とトランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω
2との間の差に等しい。特に、フィードバック制御は、ゼロ(目標値に相当する)とトランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω
2との間の差を決定することによって制御エラーεを計算する減算器ブロック29の使用を伴うとともに、制御エラーεを入力として受けてクラッチ16A及びクラッチ16Bをそれぞれ制御するためのトルクT
A及びトルクT
Bを出力として生成するPIDコントローラ30の使用を伴う。
【0023】
PIDコントローラ30は初期トルクT0(ゼロ以外)も受け、また、最初に、トルクTAが初期トルクT0に等しいと仮定され(したがって、トルクTBは、関連するギアのギア比に応じて計算される)、その後、必要に応じて、PIDコントローラ30は、制御エラーεに基づき、トルクTAの値(当初は初期トルクT0の値に等しい)及び/又はトルクTBの値(当初は、関連するギアのギア比を通じて初期トルクT0の値から導き出される)を変更する。制御エラーεが常に(実質的に)ゼロである場合、トルクTAの値は初期トルクT0の値に等しいままであり、また、トルクTBの値は依然として初期トルクT0の値から(関連するギアのギア比を通じて)導き出されたままである。
【0024】
好ましい実施形態によれば、トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω2がゼロでない場合には、(トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω2に対して反対方向に作用するトルクTA又はTBを増大させるのではなく)トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω2と同じ方向で作用するトルクTA又はTBが減少され、このようにして、常に小さいままでなければならないトルクTA及びTBが過度に増大することが防止される。
【0025】
好ましい実施形態によれば、トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω2が絶対値で安全閾値を超える場合には、ドライバーによって認識され得る路上走行車両1の動きを引き起こすのではなく(逆に、ドライバーは、路上走行車両1が静止したままであることを期待する)機械的なノイズを有することが好ましいため、ドライブトレイン6の制御ユニット12が両方のクラッチ16A,16Bを開放する。
【0026】
トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω2に関連して前述した制御モードは、別の方法として、トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω2を使用しないが、その代わりに、トランスミッション7の副シャフト17の角度位置(トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω2の時間積分であり、したがって、単に、他の形態のトランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω2であり、すなわち、トランスミッション7の副シャフト17の回転速度ω2の変換である)を使用して実施され得る。
【0027】
好ましい実施形態によれば、明らかな個人の安全上の理由により、誰かが路上走行車両1に出入りしているときには、路上走行車両1が動く可能性が全くないようにしなければならないため、路上走行車両1のドアが開かれる場合、ドライブトレイン6の制御ユニット12は両方のクラッチ16A,16Bを開放する。
【0028】
好ましい実施形態によれば、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、周期的に、且つ、クラッチ16A,16Bが閉じてから所定の時間(例えば20~30秒)が経過した後、ある瞬間(例えば1秒未満)にわたって両方のクラッチ16A,16Bを開放し、両方のクラッチ16A,16Bが開放しているときには、クラッチ16A,16Bへのオイルの供給を制御する制御弁32を迅速に且つ繰り返し開閉することにより制御弁32を洗浄するとともに、最終的には、制御弁32を洗浄した後、クラッチ16A,16Bを再び閉じる。確かに、オイルの生理学的な不純物に起因して、制御弁32が長時間にわたってほぼ閉じたままであるとき(つまり、クラッチ16A,16Bが非常に小さいトルクTA,TBを伝達するときに必要である半開き状態を制御弁が維持するとき)には、クラッチ16A,16Bによって伝達されるトルクTA、TBを正確に制御することを困難にする圧力振動が存在する可能性があり、この欠点は、制御弁32の振動により制御弁32を洗浄することによって解決され得る。言い換えると、制御弁32の半閉鎖位置は、それが長期間続く場合、制御弁32を遮断又は詰まらせる可能性があり、したがって、規則的な時間間隔で、制御弁32は、それらを制御できるようにするべく振動される。
【0029】
本明細書中に記載される実施形態は、この理由で本発明の保護の範囲を越えることなく、互いに組み合わせられ得る。
【0030】
前述の制御方法は様々な利点を有する。
【0031】
まず第一に、前述の制御方法は、路上走行車両1が内燃エンジン4をオンの状態にして静止しているときにドライバーにより認識され得る機械的なノイズ(しばしば「石畳音」という表現で特定される)の発生を回避する。この結果は、クラッチ16A,16Bの下流側のドライブトレイン6全体がクラッチ16A,16Bによって伝達されるトルクTA,TBを受け、それにより、全ての機械的なクリアランスが埋め合わされるという事実に起因して得られる。
【0032】
更に、前述の制御方法は、その実行が限られた記憶空間と低い計算能力とを必要とするため、実施するのが容易且つ経済的である。
【符号の説明】
【0033】
1 路上走行車両
2 前輪
3 後輪
4 エンジン
5 ドライブシャフト
6 ドライブトレイン
7 トランスミッション
8 トランスミッションシャフト
9 差動装置
10 アクスルシャフト
11 エンジン制御ユニット
12 ドライブトレイン制御ユニット
13 バスライン
14 同期ケーブル
15 主シャフト
16 クラッチ
17 副シャフト
18 主ギアホイール
19 副ギアホイール
20 同期装置
21 ステアリングホイール
22 アクセルペダル
23 ブレーキペダル
24 アップシフトパドルシフタ
25 ダウンシフトパドルシフタ
26 駆動ディスク
27 従動ディスク
28 センサ
29 減算器ブロック
30 PID制御
31 計算ブロック
32 制御弁
ωE 回転速度
ω2 回転速度
T0 初期トルク
TA トルク
TB トルク
ε 制御エラー