(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】照明光学系、照明方法、及び検査装置
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20240619BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20240619BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240619BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240619BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240619BHJP
F21V 14/02 20060101ALI20240619BHJP
G01N 21/956 20060101ALN20240619BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240619BHJP
【FI】
G03F1/84
G01N21/84 E
G02B5/02 C
G02B5/00 Z
F21V5/00 600
F21V14/02 100
G01N21/956 A
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2020167812
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】仙洞田 哲也
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-194852(JP,A)
【文献】特開2011-095642(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168993(WO,A1)
【文献】特開2008-152116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0052953(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
G03F 7/20
G03F 9/00-9/02
G01N 21/84
G02B 5/02
G02B 5/00
G02B 26/08
G02B 27/09
F21V 5/00-5/10
F21V 14/00-14/08
G01N 21/956
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光が入射する回折格子と、
前記回折格子における前記照明光の入射位置を変えるように、前記回折格子を回転させる回転駆動部と、を備え、
前記回折格子には、
前記回折格子の回転中心を中心として、第1の半径を有する円環状の第1の領域には、第1の回折格子パターンが形成され、
前記回転中心を中心として、前記第1の半径よりも小さい第2の半径を有する円環状の第2の領域には、前記第1の回折格子パターンと異なる回折角を有する第2の回折格子パターンが形成され
、
前記第1の回折格子パターンでの回折による拡がり角が前記第2の回折格子パターンでの回折による拡がり角よりも小さくなっている照明光学系。
【請求項2】
前記回折格子に対する前記照明光の入射位置を径方向に移動させる駆動機構をさらに備えた請求項1に記載の照明光学系。
【請求項3】
請求項
1、又は2に記載の照明光学系と、
前記照明光学系から出射される照明光を被検査物に集光する対物レンズと、
を備える検査装置。
【請求項4】
前記対物レンズは、反射屈折型であることを特徴とする請求項
3に記載の検査装置。
【請求項5】
照明光を回折格子に入射させるステップと、
前記回折格子における前記照明光の入射位置を変えるように、前記回折格子を回転させるステップと、を備え、
前記回折格子には、
前記回折格子の回転中心を中心として、第1の半径を有する円環状の第1の領域には、第1の回折格子パターンが形成され、
前記回転中心を中心として、前記第1の半径よりも小さい第2の半径を有する円環状の第2の領域には、前記第1の回折格子パターンと異なる回折角を有する第2の回折格子パターンが形成され
、
前記第1の回折格子パターンでの回折による拡がり角が前記第2の回折格子パターンでの回折による拡がり角よりも小さくなっている照明方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学系、照明方法、及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはレンズアレイを用いた照明光学系が開示されている。特許文献1では、レンズアレイをモータで回転させることで、スペックルノイズを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
試料の欠陥を検査する検査装置では、照明光を適切な分布にしたいという要望がある。このため、照明光学系において、変形照明を用いて照明NA(Numerical Aperture)分布を変えることがある。具体的には、試料上のパターンの種類やピッチ、欠陥の種類によって、照明光の空間分布や角度分布を変えることで、欠陥の検出感度を高くすることができる。
【0005】
本開示は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、照明光を適切な分布にすることができる照明光学系、照明方法、及び検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の一態様にかかる照明光学系は、照明光が入射する回折格子と、前記回折格子における前記照明光の入射位置を変えるように、前記回折格子を回転させる回転駆動部と、を備え、前記回折格子には、前記回折格子の回転中心を中心として、第1の半径を有する円環状の第1の領域には、第1の回折格子パターンが形成され、前記回転中心を中心として、前記第1の半径よりも小さい第2の半径を有する円環状の第2の領域には、前記第1の回折格子パターンと異なる回折角を有する第2の回折格子パターンが形成されている。
【0007】
上記の照明光学系は、前記回折格子に対する前記照明光の入射位置を径方向に移動させる駆動機構をさらに備えていてもよい。
【0008】
上記の照明光学系において、前記第1の回折格子パターンでの回折による拡がり角が前記第2の回折格子パターンでの回折による拡がり角よりも小さくなっていてもよい。
【0009】
本実施形態の一態様にかかる検査装置は、上記の照明光学系と、前記照明光学系から出射される照明光を被検査物に集光する対物レンズと、を備えている。
【0010】
上記の検査装置において、前記対物レンズは、反射屈折型であってもよい。
【0011】
本実施形態の一態様にかかる照明方法は、照明光を回折格子に入射させるステップと、前記回折格子における前記照明光の入射位置を変えるように、前記回折格子を回転させるステップと、を備え、前記回折格子には、前記回折格子の回転中心を中心として、第1の半径を有する円環状の第1の領域には、第1の回折格子パターンが形成され、前記回転中心を中心として、前記第1の半径よりも小さい第2の半径を有する円環状の第2の領域には、前記第1の回折格子パターンと異なる回折角を有する第2の回折格子パターンが形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、照明光を適切な分布にすることができる照明光学系、照明方法、及び検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施の形態にかかる検査装置の全体構成を示す模式図である。
【
図4】第1の領域で回折されたレーザ光を説明するための図である。
【
図5】第2の領域で回折されたレーザ光を説明するための図である。
【
図6】変形例にかかる回折格子の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について以下に図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0015】
本発明の実施の形態に係る検査装置について、
図1を参照して説明する。
図1は、実施の形態に係る検査装置10の構成を示す図である。
図1に示すように、検査装置10は、光源11、ミラー12、13、偏光ビームスプリッタ14、λ/4板15、対物レンズ16、投影レンズ17、照明光学系20Aを備えている。
【0016】
検査装置10は、半導体製造工程で用いられるフォトマスクにおける欠陥を検出する際に利用されるマスク検査装置である。検査装置10には、検査用光源である光源11が設けられている。光源11は、照明光となるレーザ光L1を発生する。光源11としては、例えば、直線偏光で発振する紫外レーザ装置が用いられる。なお、光源11の波長は、照明する用途に応じて適宜変更することができる。ここでは、光源11は、例えば、直径1mmのレーザ光を出射するものとする。
【0017】
光源11からのレーザ光L1は、ミラー12、13で折り返され、照明光学系20Aに入射する。検査装置10には、入射するレーザ光のスペックルノイズを低減させ、かつ照明分布を制御するため、照明光学系20Aが設けられている。照明光学系20Aの構成については、後に説明する。
【0018】
照明光学系20Aから出射されるレーザ光L2は、S波となっている。レーザ光L2は、偏光ビームスプリッタ14に入射すると下方に反射され、λ/4板15を通過して円偏光に変換される。ここでは、右偏光とする。
【0019】
円偏光に変換されたレーザ光L2は、対物レンズ16を通り、検査対象であるマスク30のパターン面の検査領域に集光するように照射される。対物レンズ16は、凹面鏡16a、凸面鏡16bを備える、反射屈折型の対物レンズである。
【0020】
なお、
図1においては、検査対象であるマスク30として、ペリクル付きのフォトマスクの例を示しているが、これに限定されるものではない。また、パターンは、遮光パターンの他、ハーフトーンパターンや位相シフトパターン等であってもよい。マスク30はEUV(Extreme ultraviolet lithography)露光に用いられるEUVマスクであってもよい。
【0021】
マスクパターン面で反射した光、すなわち、検査領域から発生する検査光は、反対方向の左偏光になる。検査光は、対物レンズ16を通過した後、λ/4板15を通過するとP偏光となる。このため、検査光は、偏光ビームスプリッタ14を通過して上方に進む。上方に進む検査光は、投影レンズ17を通過した後、光検出器18で受講される。光検出器18としては、例えば、TDI(Time Delay Integration)カメラ等が用いられる。
【0022】
ここで、実施の形態1に係る照明光学系20Aの構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、本実施の形態に係る照明光学系20Aの構成を示す図である。
図2に示すように、照明光学系20Aは、回折格子21、回転駆動部22、レンズ23a~23c、ロッド型ホモジナイザ24、駆動機構25を備えている。
【0023】
回折格子21は、入射するレーザ光L1を拡散する拡散板として機能する。回折格子21は、例えば、石英からなる円板である。回折格子21の表面には、入射するレーザ光L1を回折するための回折格子パターンが形成されている。回折格子21を透過したレーザ光L1は、所定の回折角度で拡がりながら進む。なお、回折格子21は、透過型の回折格子となっているが、反射型の回折格子であってもよい。回折格子21の詳細な構成については、後述する。
【0024】
回転駆動部22は、回折格子21を回転する。回転駆動部22は、例えば、モータ22aや回転軸22bなどを有している。回転駆動部22は、回折格子21を所定の回転速度で回転軸22b周りに回転させている。回転軸22bは、レーザ光L1の光軸に対して平行になっている。
【0025】
さらに、駆動機構25は、回転駆動部22を直線的に移動させる。駆動機構25は、モータやリニアガイドなどを備えている。駆動機構25は、回折格子21に対するレーザ光L1の入射位置を径方向に変化させる。具体的には、駆動機構25の動作によって、
図3の白抜き矢印方向に、レーザ光L1の入射位置が変化する。なお、入射位置を径方向に変化させるため、ユーザが手動で回折格子21の位置を変えてもよい。
【0026】
回折格子21の出射側には、レンズ23aが設けられている。回転駆動部22により回転させた回折格子21に入射したレーザ光L1は、所定の回折角度で広がって進む。回折格子21からのレーザ光L1は、全てレンズ23aに入射する。これにより、光量損失を低減することができる。また、回転駆動部22は、回折格子21を回転させているため、スペックルノイズを低減することができる。
【0027】
レンズ23aに入射したレーザ光は平行ビームに変換され、次のレンズ23bを通ることで、ロッド型ホモジナイザ24の入射面に集光する。ロッド型ホモジナイザ24は、例えば、透明で屈折率が高い材質で形成された四角柱状の導光部材である。ロッド型ホモジナイザ24における光の伝播方向が長手方向となっている。
【0028】
ロッド型ホモジナイザ24の材質は、周囲(例えば、空気)よりも屈折率が高いものであればよい。ロッド型ホモジナイザ24は、例えば、石英、フッ化物又は樹脂などで形成することができる。ロッド型ホモジナイザ24に入射したレーザ光は、ロッド型ホモジナイザ24の側面で全反射を繰り返しながらその内部を伝播し、入射面と反対側の出射面から出射する。ロッド型ホモジナイザ24の内部において、入射されたレーザ光の空間的な光強度分布が均一化される。
【0029】
ロッド型ホモジナイザ24の出射側には、レンズ23cが設けられている。ロッド型ホモジナイザ24から出射したレーザ光がレンズ23cを通過することにより、平行ビームであるレーザ光L2が形成される。
【0030】
本実施の形態に係る検査装置10では、ロッド型ホモジナイザ24の出射面が検査対象のマスク30のパターン面に投影照明される。従って、ロッド型ホモジナイザ24の出射面でのレーザ光の強度分布は、マスク30のパターン面の検査領域に照射されるレーザ光の強度分布と等しい。
【0031】
ここで、回折格子21の構成について、
図3を用いて説明する。
図3は回折格子21の構成を示す平面図である。具体的には、レーザ光L1の光軸と直交する平面における回折格子21の構成を示している。回折格子21は、第1の回折格子パターン201と、第2の回折格子パターン202と、貫通穴231とが設けられている。
【0032】
貫通穴231は、
図2の回転軸22bが挿入されるための穴である。ここでは、円盤状の回折格子21の中心に貫通穴231が形成されている。貫通穴231に回転軸22bが挿入されて固定されている。したがって、円盤状の回折格子21の中心が回転中心AXとなる。
【0033】
回転中心AXの外側には、第1の回折格子パターン201と第2の回折格子パターン202とが設けられている。第1の回折格子パターン201及び第2の回折格子パターン202は、回転中心AXを中心とする円環状(リング状)の領域に形成されている。第1の回折格子パターン201が設けられた領域を第1の円環領域211とする。第2の回折格子パターン202が設けられた領域を第2の円環領域212とする。第1の円環領域211と第2の円環領域212は、回転中心AXを中心とする同心円状に形成されている。ここで、第1の円環領域211は、第2の円環領域212よりも大きくなっている。
【0034】
第1の回折格子パターン201はピッチ、深さ、傾斜角度等が一定の微細パターンとなっている。第1の円環領域211には、均一な第1の回折格子パターン201が形成されている。第2の回折格子パターン202はピッチ、深さ、傾斜角度等が一定の微細パターンとなっている。第2の円環領域212には、均一な第2の回折格子パターン202が形成されている。
【0035】
例えば、第1の円環領域211の半径を半径r1とし、第2の円環領域212の半径を半径r2とすると、半径r2は半径r1よりも小さくなる。なお、半径r1、半径r2は、回転中心AXから、円環の内周端までの距離である。第1の円環領域211の幅は、レーザ光L1のスポット径よりも大きくなっている。第2の円環領域212の幅は、レーザ光L1のスポット径よりも大きくなっている。
【0036】
第1の円環領域211と第2の円環領域212とは重ならない領域である。つまり、第1の円環領域211と第2の円環領域212との間には間隔221が形成されている。換言すると第1の円環領域211と第2の円環領域212とは、所定の間隔221を隔てて、同心円状に配置されている。
【0037】
第1の円環領域211、及び第2の円環領域212は、回転中心AXを中心とする円環状に設けられている。よって、回転駆動部22が回折格子21を回転させた場合でも、レーザ光L1は、第1の円環領域211、又は第2の円環領域212のいずれか一方に入射する。
【0038】
駆動機構25が回折格子21を駆動させることで、レーザ光L1の入射位置を第1の円環領域211から第2の円環領域212に変えることができる。あるいは、駆動機構25が回折格子21を駆動させることで、レーザ光L1の入射位置を第2の円環領域212から第1の円環領域211に変えることができる。つまり、駆動機構25の駆動位置によって、レーザ光L1が第1の円環領域211及び第2の円環領域212のどちらに入射するかが決まる。
【0039】
レーザ光L1が第1の円環領域211に入射する時の回折格子21の位置を第1の駆動位置とする。レーザ光L1が第2の円環領域212に入射する時の回折格子21の位置を第2の駆動位置とする。
図3では、第1の駆動位置において、回折格子21が回転した場合に、レーザ光L1の入射位置の軌跡を第1の入射領域241として示している。第2の駆動位置において、回折格子21が回転した場合に、レーザ光L1の入射位置の軌跡を第2の入射領域242として示している。回折格子21が回転中心AX周りに回転しているため、第1の入射領域241及び第2の入射領域242は、回転中心AXを中心とする同心円となる。第1の入射領域241は、第2の入射領域242よりも大きい円形である。
【0040】
レーザ光L1のスポット径は、第1の円環領域211及び第2の円環領域212の円環の幅よりも小さくなっている。したがって、第1の入射領域241は、第1の円環領域211に含まれている。つまり、第1の入射領域241は、第1の円環領域211からはみ出していない。したがって、第1の駆動位置で回折格子21を回転させた場合、レーザ光L1は、常時、第1の回折格子パターン201で回折される。
【0041】
第2の入射領域242は、第2の円環領域212に含まれている。つまり、第2の入射領域242は、第2の円環領域212からはみ出していない。したがって、第2の駆動位置で回折格子21を回転させた場合、レーザ光L1は、常時、第2の回折格子パターン202で回折される。
【0042】
回折格子21の具体例について説明する。回折格子21は、例えば、直径34mm、厚さ1mmの円盤となっている、回折格子21の材質は、例えば、ArFグレード合成石英である。具体的には、合成石英としては、信越石英株式会社製SUPRASIL-P700FやAGC株式会社製AQR等を用いることができる。貫通穴231は例えば、直径12mmの円形である。r1は、例えば、14.5mmである。第1の円環領域211の幅は3mmとなっている。なお、回折格子21に入射するレーザ光L1のスポット径は3mm以下とする。例えば、スポット径は数μm~数十μmとなっている。
【0043】
第1の回折格子パターン201と第2の回折格子パターン202とでは、回折角が異なっている。例えば、第1の回折格子パターン201と第2の回折格子パターン202では、サイズ、ピッチ、傾斜角度、深さなどの少なくとも一つ以上が異なる微細パターンが形成されている。このようにすることで、第1の回折格子パターン201と第2の回折格子パターン202とを異なる回折角を有する回折格子パターンにすることができる。
【0044】
図4、及び
図5を参照して、レーザ光L1の回折角について説明する。
図4は、第1の円環領域211にレーザ光L1が入射した場合の回折光を示す模式図である。つまり、
図4は、第1の回折格子パターン201で回折されたレーザ光L1を示している。
図5は、第2の円環領域212にレーザ光L1が入射した場合の回折光を示す模式図である。つまり、
図5は、第2の回折格子パターン202で回折されたレーザ光L1を示している。ここで、レーザ光L1の波長は193.4nmとなっている。
図4、
図5では、回折格子21から所定の距離離れた面におけるレーザ光L1のスポット形状を示している。
【0045】
図4では、一次の回折光の回折角θinが約1.8°になっている。最も次数の高い回折光の回折角θoutが約9.0°になっている。光軸と直交する平面におけるレーザ光L1のスポット形状はリング状となる。また、回折格子21は、レーザ光L1をより多くの次数の回折光に分離することが好ましい。もちろん、隣接する次数の回折光の一部が重なっていてもよい。
【0046】
図5に示すように、第1の回折格子パターン201での回折による拡がり角が第2の回折格子パターン202での回折による拡がり角よりも小さくなっている。よって、レーザ光L1が第1の円環領域211に入射した場合よりも、第2の円環領域212に入射した場合、レーザ光L1のスポット形状が大きくなっている。第1の駆動位置では、第1の回折格子パターン201によって、NA分布などの照明分布が決まる。第2の駆動位置では、第2の回折格子パターン202によって、NA分布などの照明分布が決まる。
【0047】
このようにすることで、レーザ光L1の空間分布や角度分布を変えることができる。検査対象に応じて駆動機構25による駆動位置を変えることで、適切な照明光分布を得ることができる。検査対象に応じて適切な分布の照明光を生成することができるため、検査精度を向上することができる。例えば、第1の回折格子パターンではレーザ光L1の空間分布をガウシアン分布とし、第2の回折格子パターンでは、フラットな空間分布とすることができる。
【0048】
ラインアンドスペースの検査、異物の検査、コンタクトホールの検査など、検査の種類に応じて、照明光の分布を変えてもよい。例えば、ラインアンドスペースの検査では照明光の斜め入射成分を多くし、コンタクトホールの検査では照明光の垂直入射成分を多くすることができる。
【0049】
また、第1の駆動位置では、均一な第1の回折格子パターン201でレーザ光L1が拡散するため、安定して検査を行うことができる。同様に、第2の駆動位置では、均一な第2の回折格子パターン202でレーザ光L2が拡散するため、安定して検査を行うことができる。また、アパーチャやスリットなどを使用しないで、照明光の分布を変えることができる。よって、光量のロスを抑制することができる。
【0050】
また、第2の円環領域212の外側にある第1の円環領域211では、第2の回折格子パターン202よりも拡がり角(拡散角)が小さくなるように第1の回折格子パターン201を形成することが望ましい。この理由について説明する。回折格子21の回転速度をより速くすることで、スペックルノイズをより抑制することができる。特に、半径が小さい第2の円環領域212では、より回転速度を速くすることが望まれる。一方、拡がり角度が大きい方がよりスペックルノイズを抑制することができる。
【0051】
したがって、より速い回転角度が要求される第2の円環領域212において、拡がり角を大きくすることが好ましい。換言すると、第2の円環領域212を第1の円環領域211よりも大きい拡がり角とすることで、回転速度を低くした場合でも、スペックルノイズを抑制することができる。このため、回転駆動部22を比較的低い回転角度で用いることができるため、モータ22a等の寿命を長くすることができる。
【0052】
なお、上記の説明では、第1の回折格子パターン201、第2の回折格子パターン202が形成される領域が円環状の領域となっていたが、第1の回折格子パターン201、第2の回折格子パターン202が形成される領域は、円環状に限定されるものではない。つまり、第1の直動位置とした状態で回折格子21を回転させた場合に、レーザ光L1が入射する円形の第1の入射領域241に第1の回折格子パターン201が形成されていればよい。従って、第1の回折格子パターン201が形成されている領域は第1の入射領域241よりも大きい領域であればよい。
【0053】
同様に、第2の直動位置とした状態で回折格子21を回転させた場合に、レーザ光L1が入射する円形の第2の入射領域242に第2の回折格子パターン202が形成されていればよい。従って、第2の回折格子パターン202が形成されている領域は第2の入射領域242よりも大きい領域であればよい。
【0054】
なお、
図3では第1の円環領域211と第2の円環領域212の2つの領域が回折格子21に形成されていたが、回折格子21に形成される領域は3つ以上であってもよい。つまり、3つ以上の回折格子パターンを形成しても良い。例えば、
図6に示すように、第2の円環領域212の内側に第3の円環領域213をさらに形成してもよい。第2の円環領域212と第3の円環領域213とは、間隔221を隔てて配置されている。
【0055】
第3の円環領域213には第3の回折格子パターンが形成されている。第3の回折格子パターンは、第1及び第2の回折格子パターンと回折角が異なっている。第1の回折格子パターン、第2の回折格子パターン、及び第3の回折格子パターンでは、サイズ、ピッチ、傾斜角度、深さなどの少なくとも一つ以上が異なる微細パターンが形成されている。このようにすることで、第3の回折格子パターンを第1及び第2の回折格子パターンと異なる回折角にすることができる。
【0056】
もちろん、第3の円環領域213のさらに内側に第4の円環領域、第5の円環領域等と形成しても良い。そして、それぞれの円環領域で異なる回折格子パターンを形成する。これにより、照明光の調整をより細かく行うことができる。また、上記の通り、内側の領域ほど、拡がり角を大きくすることが好ましい。これにより、回転駆動部22が低い回転速度で回折格子21を回転させた場合でも、効果的にスペックルノイズを抑制することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。
【符号の説明】
【0058】
10 検査装置
11 光源
12 ミラー
13 ミラー
14 偏光ビームスプリッタ
15 λ/4板
16 対物レンズ
16a 凹面鏡
16b 凸面鏡
17 投影レンズ
18 光検出器
20A 照明光学系
21 回折格子
22 回転駆動部
22a モータ
22b 回転軸
23 レンズ
24 ロッド型ホモジナイザ
25 駆動機構
201 第1の回折格子パターン
202 第2の回折格子パターン
211 第1の円環領域
212 第2の円環領域
213 第3の円環領域
221 間隔
231 貫通穴
241 第1の入射領域
242 第2の入射領域