(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】静圧気体軸受用気体絞り構造および静圧気体軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 32/06 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
F16C32/06 Z
(21)【出願番号】P 2020183083
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】冨田 博嗣
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-162732(JP,U)
【文献】特開昭63-207589(JP,A)
【文献】米国特許第10557501(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/06
B23Q 1/38
H02K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状気体流路に形成して支持対象物と対向する静圧気体軸受用気体絞り構造であって、
前記管状気体流路の上流側から下流側に向かって積層される多数の気体絞り層が、前記管状気体流路を形成する管壁部分と該管壁部分の内壁面に架橋して一体に形成する多数のリブ部分とでそれぞれ構成され、
前記気体絞り層のリブ部分が、前記気体絞り層の管壁部分の流路断面を所定のリブ配置間隔で平行に分断して遮断し、
前記気体絞り層が、前記管状気体流路に沿って隣接する前記管壁部分および前記リブ部分で相互に一体化され、
前記隣接する気体絞り層のリブ部分が、前記隣接する気体絞り層の相互間で異なった架橋方向に配置されていることを特徴とする気体絞り構造。
【請求項2】
前記支持対象物と対向する最表面に設けた気体絞り層が、前記リブ部分を所定の間隔で連結する連結部分を有し、
前記最表面に設けた気体絞り層の総流路断面積が、該最表面に設けた気体絞り層以外の前記気体絞り層の総流路断面積よりも少なく、
前記最表面に設けた気体絞り層の管壁部分が、前記最表面に設けた気体絞り層と対向して隣接する気体絞り層の管壁部分と一体化され、
前記最表面に設けた気体絞り層の連結部分が、前記最表面に設けた気体絞り層と対向して隣接する気体絞り層のリブ部分と一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の気体絞り構造。
【請求項3】
給気源と連通して管状気体流路の入口端を形成する給気孔と該管状気体流路の出口端を形成する流出孔とが形成されたベースプレートと、該ベースプレートの表面に形成された前記流出孔に挿入して密着した気体絞り部材とを備えた静圧気体軸受であって、
前記気体絞り部材が、請求項1または請求項2に記載の気体絞り構造を有していることを特徴とする静圧気体軸受。
【請求項4】
前記気体絞り部材の出口面が、前記ベースプレートの表面と面一または前記ベースプレートの表面より落ち込んでいることを特徴とする請求項3に記載の静圧気体軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静圧気体軸受用気体絞り構造および静圧気体軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受外から軸受内に導入した加圧流体の圧力を利用して支持対象物を支持する静圧気体軸受において、絞りと呼ばれる気体流の抵抗となる部分が支持対象物と静圧気体軸受との間の隙間(軸受すきま)の手前に設けられている。
静圧気体軸受に絞りを設けると、軸受すきまが小さくなると軸受すきま内全体に満たされている気体(気体膜)の圧力が上昇し、軸受すきまが大きくなると軸受すきま内の気体膜の圧力が低下するため、静圧気体軸受に加わる負荷加重と軸受すきま内の気体膜の圧力が釣り合う位置で支持対象物を静圧気体軸受から浮き上がった状態で保持することができる。
【0003】
このような静圧気体軸受用気体絞り構造の1つとして、従来、通気性を有する多孔質を利用した多孔質絞りが知られている。
多孔質絞りとは、多孔質体に形成された微細孔を絞りとして利用すると共に多孔質体の表面を軸受すきま内への給気面として活用するものであり、多孔質体としては、金属粉体を焼結したものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-299779号公報(特に、[0025])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多孔質絞りにおいては、多孔質体の通気性が静圧気体軸受の負荷容量(静圧気体軸受の耐荷重)の大小に直結していることから、多孔質体の通気性の制御は極めて重要である。
しかしながら、上述したような焼結金属を用いた多孔質体は、通気性の個体差が大きく、通気性の制御には更なる改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、軸受すきま内への面給気を実現しつつ通気性を容易に調整可能な静圧気体軸受用気体絞り構造および静圧気体軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、管状気体流路に形成して支持対象物と対向する静圧気体軸受用気体絞り構造であって、前記管状気体流路の上流側から下流側に向かって積層される多数の気体絞り層が、前記管状気体流路を形成する管壁部分と該管壁部分の内壁面に架橋して一体に形成する多数のリブ部分とでそれぞれ構成され、前記気体絞り層のリブ部分が、前記気体絞り層の管壁部分の流路断面を所定のリブ配置間隔で平行に分断して遮断し、前記気体絞り層が、前記管状気体流路に沿って隣接する前記管壁部分および前記リブ部分で相互に一体化され、前記隣接する気体絞り層のリブ部分が、前記隣接する気体絞り層の相互間で異なった架橋方向に配置されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載された気体絞り構造の構成に加えて、前記支持対象物と対向する最表面に設けた気体絞り層が、前記リブ部分を所定の間隔で連結する連結部分を有し、前記最表面に設けた気体絞り層の総流路断面積が、該最表面に設けた気体絞り層以外の前記気体絞り層の総流路断面積よりも少なく、前記最表面に設けた気体絞り層の管壁部分が、前記最表面に設けた気体絞り層と対向して隣接する気体絞り層の管壁部分と一体化され、前記最表面に設けた気体絞り層の連結部分が、前記最表面に設けた気体絞り層と対向して隣接する気体絞り層のリブ部分と一体化されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、給気源と連通して管状気体流路の入口端を形成する給気孔と該管状気体流路の出口端を形成する流出孔とが形成されたベースプレートと、該ベースプレートの表面に形成された前記流出孔に挿入して密着した気体絞り部材とを備えた静圧気体軸受であって、前記気体絞り部材が、請求項1または請求項2に記載の気体絞り構造を有していることにより、前述した課題を解決するものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載された静圧気体軸受の構成に加えて、前記気体絞り部材の出口面が、前記ベースプレートの表面と面一または前記ベースプレートの表面より落ち込んでいることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明は、管状気体流路に形成されて支持対象物と対向する静圧気体軸受用気体絞り構造であることにより、支持対象物との間の軸受すきまに対して面給気となるため、気体絞り構造を組み込んだ静圧気体軸受の耐荷重、すなわち、静圧気体軸受の負荷容量を高めることができるとともに、以下のような本発明に特有の効果を奏することができる。
すなわち、管状気体流路の上流側から下流側に向かって積層される多数の気体絞り層が、管状気体流路を形成する管壁部分とこの管壁部分の内壁面に架橋して一体に形成する多数のリブ部分とでそれぞれ構成され、気体絞り層のリブ部分が、気体絞り層の管壁部分の流路断面を所定のリブ配置間隔で平行に分断して遮断し、気体絞り層が、管状気体流路に沿って隣接する管壁部分およびリブ部分で相互に一体化され、隣接する気体絞り層のリブ部分が、隣接する気体絞り層の相互間で異なった架橋方向に配置されていることにより、気体絞り構造内に多数の微細流路が形成されて気体絞り構造が擬似的な多孔質として機能して軸受すきま内への面給気を実現するため、リブ部分のリブ配置間隔や気体絞り層の積層数を調整するだけで気体絞り構造の通気性を容易に調整することができる。
【0012】
請求項2に係る発明の気体絞り構造によれば、請求項1に係る発明の気体絞り構造が奏する効果に加えて、支持対象物と対向する最表面に設けた気体絞り層が、リブ部分を所定の間隔で連結する連結部分を有し、最表面に設けた気体絞り層の総流路断面積が、この最表面に設けた気体絞り層以外の気体絞り層の総流路断面積よりも少なく、最表面に設けた気体絞り層の管壁部分が、最表面に設けた気体絞り層と対向して隣接する気体絞り層の管壁部分と一体化され、最表面に設けた気体絞り層の連結部分が、最表面に設けた気体絞り層と対向して隣接する気体絞り層のリブ部分と一体化されていることにより、最表面に設けた気体絞り層の気体の通過量がこの最表面に設けた気体絞り層以外の気体絞り層の気体の通過量よりも小さくなり、多孔質絞りにおける表面目詰まりのような機能を奏するため、気体の圧縮性に起因して支持対象物が振動してしまう自励振動現象の発生を抑制することができる
【0013】
請求項3に係る発明の静圧気体軸受によれば、気体絞り部材が、請求項1または請求項2に記載の気体絞り構造を有していることにより、気体絞り部材が擬似的な多孔質として機能するため、リブ部分のリブ配置間隔や気体絞り層の積層数を調整するだけで気体絞り部材の通気性を容易に調整することができる。
【0014】
請求項4に係る発明の静圧気体軸受によれば、請求項3に係る発明の静圧気体軸受が奏する効果に加えて、気体絞り部材の出口面が、ベースプレートの表面と面一またはベースプレートの表面より落ち込んでいることにより、気体絞り部材の出口面が支持対象物と当接しにくくなるため、気体絞り部材の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例である静圧気体軸受の斜視図。
【
図3】ベースプレートの断面構造を示す
図1のIII-III断面図。
【
図7】本発明の一実施例である静圧気体軸受用気体絞り構造の積層状態を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、管状気体流路に形成して支持対象物と対向する静圧気体軸受用気体絞り構造であって、管状気体流路の上流側から下流側に向かって積層される多数の気体絞り層が、管状気体流路を形成する管壁部分とこの管壁部分の内壁面に架橋して一体に形成する多数のリブ部分とでそれぞれ構成され、気体絞り層のリブ部分が、気体絞り層の管壁部分の流路断面を所定のリブ配置間隔で平行に分断して遮断し、気体絞り層が、管状気体流路に沿って隣接する管壁部分および前記リブ部分で相互に一体化され、隣接する気体絞り層のリブ部分が、隣接する気体絞り層の相互間で異なった架橋方向に配置され、軸受すきま内への面給気を実現しつつ通気性を容易に調整可能なものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0017】
例えば、本発明における気体は、如何なる気体であってもよいが、空気であることが好ましい。
【0018】
例えば、本発明の気体絞り構造を形成するための材料は、樹脂や金属、セラミックス等、いかなるものであってもよい。
【実施例1】
【0019】
以下、
図1乃至
図9に基づいて、本発明の一実施例である気体絞り構造を備えた静圧気体軸受100を説明する。
【0020】
<1.静圧気体軸受100の概要>
まず、
図1および
図2に基づいて、静圧気体軸受100の概要について説明する。
図1は本発明の一実施例である静圧気体軸受の斜視図であり、
図2は
図1のII-II断面図である。
【0021】
静圧気体軸受100は、
図1に示すように、円柱状のベースプレート110と、このベースプレート110に圧入嵌合された樹脂製の気体絞り部材120とを備えている。
また、ベースプレート110には、給気源と接続された空気配管Tと接続するための継手Jが取り付けられている。
【0022】
したがって、外部の給気源から供給された圧縮空気Gは、
図2に示すように、ベースプレート110および気体絞り部材120によって構成される管状気体流路を通り、気体絞り部材120に形成された無数の噴出孔から噴出される。
よって、静圧気体軸受100は、支持対象物に対して面給気となる。
【0023】
<2.ベースプレート>
次に、
図1乃至
図3に基づいて、ベースプレート110について説明する。
図3は、ベースプレートの断面構造を示す
図1のIII-III断面図である。
【0024】
ベースプレート110は、
図1に示すように、円柱状の下部プレート111と、この下部プレート111に載置される円柱状の上部プレート112とから構成されている。
下部プレート111と上部プレート112とは、図示されない結合手段により、空気が下部プレート111と上部プレート112との間から漏れないように結合されている。
【0025】
下部プレート111の側面には、継手Jの雄ネジと螺合する雌ネジが形成された給気孔111aが等間隔に4つ形成されている。
下部プレート111の上面には、出口孔111bが等間隔に4つ形成されている。
【0026】
給気孔111aは、下部プレート111の中心方向に向かって伸びており、出口孔111bは下部プレート111の鉛直下方に向かって伸びている。
給気孔111aと出口孔111bとは、下部プレート111の内部で連通して、静圧気体軸受100の管状気体流路の一部となる下部流路111cを形成している。
したがって、給気孔111aは、管状気体流路の入口端を形成している。
【0027】
上部プレート112には、下部プレート111の出口孔111bと対向する位置に静圧気体軸受100の管状気体流路の出口端を形成する流出孔112aが形成されている。
流出孔112aは、上部プレート112の下面側に形成された大径の入口部112a1と、上部プレート112の上面側に形成された小径の出口部112a2とから形成された、鉛直方向に伸びる段付き孔である。
入口部112a1の直径は、下部プレート111の出口孔111bよりも大径となっている。
【0028】
<3.気体絞り部材>
次に、
図1、
図2、
図4乃至
図9に基づいて、気体絞り部材120について説明する。
【0029】
<3.1.気体絞り部材の外部構造>
まず、
図1、
図2、
図4、
図5に基づいて、気体絞り部材120の外部構造について説明する。
図4は
図1に示す気体絞り部材の斜視図である、
図5は
図1に示す気体絞り部材の平面図である。
【0030】
気体絞り部材120は、
図2および
図4に示すように、円筒状の部材であり、ベースプレート110の表面に形成された流出孔112aに挿入される。
気体絞り部材120は、流出孔112aの出口部112a2に挿入される円筒状の小径部121と、流出孔112aの入口部112a1に挿入される円筒状の大径部122とから構成されている。
したがって、気体絞り部材120は、大径部122から圧縮空気Gが流入し、小径部121から圧縮空気Gが流出する。
【0031】
小径部121の直径φs(
図4参照)は、流出孔112aの出口部112a2の直径Do(
図3参照)よりも僅かに大きくなっている。
また、大径部122の直径φb(
図4参照)は、流出孔112aの入口部112a1の直径Di(
図3参照)よりも僅かに大きくなっている。
したがって、気体絞り部材120を上部プレート112に挿入する際は、気体絞り部材120を上部プレート112に対して圧入嵌合する必要がある。
気体絞り部材120が上部プレート112に圧入嵌合されることで、気体絞り部材120と上部プレート112の流出孔112aとの間から空気が漏れないようになっている。
【0032】
気体絞り部材120が上部プレート112に圧入嵌合された状態において、大径部122の上面122aは、
図2に示すように、上部プレート112の流出孔112aのプレート内部上壁112a3(
図3参照)と当接する。
また、気体絞り部材120が上部プレート112に圧入嵌合された状態において、小径部121の出口面121aは、
図1および
図2に示すように、上部プレート112の表面112bと面一になっており、支持対象物と対向する。
【0033】
<3.2.気体絞り部材の内部構造(気体絞り構造)>
次に、
図2、
図4乃至
図9に基づいて、気体絞り部材120の内部構造、すなわち、本発明の一実施例である気体絞り構造について説明する。
図6は、
図5のVI-VI断面図であり、
図7は、本発明の一実施例である静圧気体軸受用気体絞り構造の積層状態を説明する模式図であり、
図8は、
図6のVIII-VIII断面図であり、
図9は、
図5のIX-IX断面図である。
なお、
図7については、リブ部分の配置関係を明示するために、管壁部分の図示を省略している。
【0034】
気体絞り部材120には、
図6に示すように、静圧気体軸受100の管状気体流路の一部となる円筒状の内部流路123が形成されている。
内部流路123は、小径部121の出口面121aと大径部122の下面122bとを繋ぐ鉛直方向に延びる流路であり、内部流路123の出口側には、内部流路123に流入した気体を絞る気体絞り構造124が形成されている。
【0035】
気体絞り構造124は、
図7に示すように、内部流路123の上流側(大径部122の下面122b)から下流側(小径部121の出口面121a)に向かって積層される多数の気体絞り層124aおよび最表面に設けた気体絞り層124bにより構成されている。
【0036】
気体絞り層124aは、
図8に示すように、内部流路123を形成する管壁部分124a1と、この管壁部分124a1の内壁面に架橋して一体に形成されるリブ部分124a2とで構成されている。
気体絞り層124aのリブ部分124a2は、
図7に示すように、断面形状が矩形状になっている。
また、この気体絞り層124aのリブ部分124a2は、
図8に示すように、気体絞り層124aの管壁部分124a1の流路断面を所定のリブ配置間隔L1で平行に分断して遮断している。
【0037】
ベースプレート110に圧入嵌合した際に支持対象物と対向する最表面に設けた気体絞り層124bは、内部流路123を形成する管壁部分124b1(
図5参照)と、この管壁部分124b1の内壁面に架橋して一体に形成されるリブ部分124b2(
図7参照)と、このリブ部分124b2を所定の接続間隔L2で連結する連結部分124b3とで形成されている。
【0038】
連結部分124b3は、
図7に示すように、断面形状が矩形状になっている。
また、連結部分124b3の接続間隔L2は、本実施例において、リブ配置間隔L1と等しくなっている。
したがって、最表面に設けた気体絞り層124bには、平面視でリブ配置間隔L1(=接続間隔L2)を4辺の長さとする正方形状の噴出孔124b4が形成されている。
よって、最表面に設けた気体絞り層124bにおける総流路断面積(噴出孔124b4の開口面積の総和)は、気体絞り層124aにおける総流路断面積(リブ部分124a2によって形成される隙間の総和)よりも小さくなっている。
すなわち、最表面に設けた気体絞り層124bにおける管壁部分124b1の流路断面は、この最表面に設けた気体絞り層124b以外の気体絞り層124aにおける管壁部分124a1の流路断面よりも閉塞されている。
【0039】
次に、隣接する気体絞り層124aの関係および最表面に設けた気体絞り層124bと最表面に設けた気体絞り層124bに隣接する気体絞り層124aとの関係について説明する。
【0040】
上流側と下流側とで隣接する気体絞り層124aは、
図6および
図7に示すように、互いに積層方向で対向している。
そして、この上流側と下流側とで対向して隣接する気体絞り層124aは、
図6に示すように、管壁部分124a1およびリブ部分124a2で相互に一体化されている。
さらに、n(=1、2、3・・・)層目の気体絞り層124aのリブ部分124a2と、n+2層目の気体絞り層124aのリブ部分124a2は、
図7に示すように、同方向に延びているが、平面視における架橋位置が水平方向(積層方向と直交する方向)にずれている。
また、上流側と下流側とで対向して隣接する気体絞り層124aのリブ部分124a2は、
図7に示すように、積層方向で相互に捩れて(本実施例においては、約90度捩れて)、すなわち、隣接する気体絞り層124aの相互間で異なった架橋方向に配置されている。
【0041】
最表面に設けた気体絞り層124bとこの最表面に設けた気体絞り層124bに隣接する気体絞り層124aも、
図6および
図7に示すように、互いに積層方向で対向している。
そして、最表面に設けた気体絞り層124bの管壁部分124b1は、
図6に示すように、この最表面に設けた気体絞り層124bに対向して隣接する気体絞り層124aの管壁部分124a1と一体化されている。
また、最表面に設けた気体絞り層124bのリブ部分124b2とこの最表面に設けた気体絞り層124bに隣接する気体絞り層124aのリブ部分124a2も、
図7に示すように、積層方向で相互に捩れて(本実施例においては、約90度捩れて)配置されている。
したがって、本実施例においては、最表面に設けた気体絞り層124bの連結部分124b3は、この最表面に設けた気体絞り層124bに隣接する気体絞り層124aのリブ部分124a2の直上に配置されている。
そして、最表面に設けた気体絞り層124bの連結部分124b3は、
図6に示すように、この最表面に設けた気体絞り層124bに対向して隣接する気体絞り層124aのリブ部分124a2と一体化されている。
【0042】
また、本実施例では、気体絞り層124aのリブ部分124a2の幅w1(
図8参照)は、全層で等しくなっていると共に、最表面に設けた気体絞り層124bのリブ部分124b2の幅および連結部分124b3の幅w2(
図7参照)とも等しくなっている。
【0043】
このように気体絞り構造124が形成されていることにより、
図9に示すような微細流路Cが無数に気体絞り構造124の内部に形成され、本実施例の気体絞り構造は多孔質体と同様の気体絞り構造となる。
【0044】
<3.静圧気体軸受100が奏する効果>
以上説明した本実施例の気体絞り構造を備えた静圧気体軸受100によれば、管状気体流路(ベースプレート110の下部流路111c、流出孔112a、気体絞り部材120の内部流路123)の上流側から下流側に向かって積層される多数の気体絞り層124a(本段落では、最表面に設けた気体絞り層124bも含む)が、管状気体流路を形成する管壁部分124a1とこの管壁部分124a1の内壁面に架橋して一体に形成される多数のリブ部分124a2とでそれぞれ構成され、気体絞り層124aのリブ部分124a2が、気体絞り層124aの管壁部分124a1の流路断面を所定のリブ配置間隔で平行に分断して遮断し、気体絞り層124aが、管状気体流路に沿って隣接する管壁部分124a1およびリブ部分124a2で相互に一体化され、隣接する気体絞り層124aのリブ部分124a2が、隣接する気体絞り層124aの相互間で異なった架橋方向に配置されていることにより、気体絞り構造124内に多数の微細流路Cが形成されて気体絞り構造124が擬似的な多孔質として機能するため、リブ部分124a2のリブ配置間隔や気体絞り層124aの積層数を調整するだけで気体絞り構造124の通気性を容易に調整することができる。
【0045】
また、最表面に設けた気体絞り層124bの総流路断面積が、この最表面に設けた気体絞り層124b以外の前記気体絞り層124aの総流路断面積よりも少なくなっていることにより、最表面に設けた気体絞り層124bの気体の通過量がこの最表面に設けた気体絞り層124b以外の気体絞り層124aの気体の通過量よりも小さくなり、多孔質絞りにおける表面目詰まりのような機能を奏するため、気体の圧縮性に起因して支持対象物が振動してしまう自励振動現象の発生を抑制することができる。
【0046】
また、気体絞り部材120の出口面121aが、ベースプレート110の表面112bと面一であることにより、気体絞り部材120の出口面121aが支持対象物と当接しにくくなるため、気体絞り部材120の損傷を防ぐことができる。
【0047】
<変形例>
以上、本発明の一実施例である静圧気体軸受100について説明したが、本発明の静圧気体軸受は、上述した実施例の静圧気体軸受100に限定されるものではない。
【0048】
例えば、本実施例において、気体絞り部材はベースプレートの表面に形成された流出孔に圧入嵌合されていたが、気体絞り部材が流出孔に挿入された後に流出孔と密着し、気体絞り部材と流出孔との間の隙間から空気が漏れなければ、流出孔に対する気体絞り部材の挿入形態はいかなるものであってもよく、例えば、接着剤により気体絞り部材を流出孔に固定してもよい。
【0049】
例えば、本実施例において、ベースプレートに圧入嵌合される気体絞り部材は、樹脂製であったが、気体絞り部材の素材は、気体絞り構造を形成できるものであれば、樹脂に限定されるものではない。
【0050】
例えば、本実施例において、ベースプレートに圧入嵌合される気体絞り部材の個数は、4つに限定されるものではない。
また、下部プレートに形成される給気孔の個数は、ベースプレートに圧入嵌合される気体絞り部材の個数と同数であれば、その数は、如何なるものであってもよい。
さらに、下部プレートの給気孔および出口孔の位置は、如何なる位置であってもよい。
【0051】
例えば、本実施例において、上部プレート112の流出孔112aの入口部112a1の直径Diは、下部プレート111の出口孔111bの直径よりも大径であったが、入口部112a1の直径Diは、出口孔111bの直径と同径であってもよいし、出口孔111bの直径よりも小径であってもよい。
【0052】
例えば、本実施例において、気体絞り部材の出口面が、ベースプレートの表面と面一であったが、気体絞り部材の出口面が、ベースプレートの表面より落ち込んでいてもよい。
この場合、気体絞り部材の出口面がベースプレートの表面と面一である場合よりも気体絞り部材の出口面が支持対象物と当接しにくくなるため、気体絞り部材の損傷をさらに防ぐことができる。
【0053】
例えば、本実施例において、気体絞り層のリブ部分の断面形状は矩形状であったが、気体絞り層のリブ部分の断面形状は円形状等、いかなる形状であってもよい。
【0054】
例えば、本実施例において、最表面に設けた気体絞り層の架橋部分の断面形状は矩形状であったが、気体絞り層の架橋部分の断面形状は円形状等、いかなる形状であってもよい。
【0055】
例えば、本実施例において、上流側と下流側とで対向して隣接する気体絞り層のリブ部分は、積層方向で相互に90度捩れて配置されていたが、上流側と下流側とで対向して隣接する気体絞り層のリブ部分の相互の捩れ角は、90度に限定されるものではなく、如何なる捩れ角であってもよい。
【0056】
例えば、本実施例において、気体絞り層のリブ部分のリブ配置間隔は、等間隔となっていたが、気体絞り層のリブ部分のリブ配置間隔は、これに限定されるものではなく、等間隔でなくてもよい。
【0057】
例えば、本実施例において、最表面に設けた気体絞り層の連結部分の接続間隔は、リブ部分のリブ配置間隔と等しくなっていたが、最表面に設けた気体絞り層の連結部分の接続間隔は、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
100 ・・・ 静圧気体軸受
110 ・・・ ベースプレート
111 ・・・ 下部プレート
111a ・・・ 給気孔
111b ・・・ 出口孔
111c ・・・ 下部流路(管状気体流路)
112 ・・・ 上部プレート
112a ・・・ 流出孔(管状気体流路)
112a1・・・ 入口部
112a2・・・ 出口部
112a3・・・ プレート内部上壁
112b ・・・ 表面
120 ・・・ 気体絞り部材
121 ・・・ 小径部
121a ・・・ 出口面
122 ・・・ 大径部
122a ・・・ 上面
122b ・・・ 下面
123 ・・・ 内部流路(管状気体流路)
124 ・・・ 気体絞り構造
124a ・・・ 気体絞り層
124a1・・・ 管壁部分
124a2・・・ リブ部分
124b ・・・ 最表面に設けた気体絞り層
124b1・・・ 管壁部分
124b2・・・ リブ部分
124b3・・・ 連結部分
124b4・・・ 噴出孔
J ・・・ 継手
T ・・・ 空気配管
G ・・・ 圧縮空気
C ・・・ 微細流路
Do ・・・ 出口部直径
Di ・・・ 入口部直径
Φs ・・・ 小径部直径
Φb ・・・ 大径部直径
L1 ・・・ リブ配置間隔
L2 ・・・ 接続間隔
w1 ・・・ リブ部分の幅
w2 ・・・ 連結部分の幅