(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】入力ペン
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0354 20130101AFI20240619BHJP
G06F 3/03 20060101ALI20240619BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20240619BHJP
G06F 3/046 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G06F3/0354 445
G06F3/03 400F
G06F3/044 B
G06F3/046 Q
(21)【出願番号】P 2020183904
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 剛史
【審査官】遠藤 孝徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-101475(JP,A)
【文献】特許第5999803(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0154528(US,A1)
【文献】国際公開第2016/158418(WO,A1)
【文献】特開2020-77115(JP,A)
【文献】特許第6756525(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03 - 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、入力先端を有するとともに該入力先端を前記軸筒の先端から露出させた状態で前記軸筒に収容される電磁誘導ユニットと、を備える電磁誘導タッチペンと、
前記入力先端が先端側に位置するように前記電磁誘導タッチペンが前記軸筒ごと内部に挿入される外筒と、前記外筒の先端に装着され押圧により変形可能であるとともに前記入力先端を被覆する接触先端と、前記接触先端の内部に押圧により後退して前記入力先端と接触して押圧する押圧部と、を備える静電容量タッチペンと、を有するとともに、
前記入力先端の反応荷重が前記接触先端の反応荷重の2倍以上である、入力ペン。
【請求項2】
前記外筒の外周に周方向に形成される環状溝と、
前記環状溝に周方向に等配されて形成される複数の開口と、
前記環状溝に嵌入される弾性リングと、をさらに備え、
前記弾性リングの緊縮により前記電磁誘導タッチペンが前記外筒に保持される、請求項1に記載の入力ペン。
【請求項3】
前記外筒と前記電磁誘導タッチペンとの保持荷重は、前記入力先端の反応荷重の2倍以上である、請求項2に記載の入力ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入力ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画面上への物理的な接触により入力を行うポインティングデバイスが広く用いられている。すなわち、ペン形に形成されたタッチペンで、位置検出装置が設けられた板状の入力装置の入力面に先端を接触させた接触位置を検出するものである。そのようなタッチペンには様々な入力方式がある。下記特許文献1には、いわゆる静電容量方式と電磁誘導方式という、2つの異なる入力方式のタッチペンを1つの軸に収容して、入力装置によって入力方式を使い分けることが可能な入力ペンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された入力ペンでは、異なる入力方式のタッチペンが軸の両端に装着されている。そのため、入力方式を切り替えたいときには軸を反転する必要があり、頻繁な入力方式の切り替えには適していない。また、入力ペンを一旦机上等においたあと再び使用する場合、両方のタッチペンのいずれが静電容量方式なのかあるいは電磁誘導方式なのかが分かりにくく、使用してみて適切でない入力方式を選んでしまうこともある。
【0005】
本願の実施態様は、異なる入力方式のタッチペンを1つの軸に備えつつ、入力方式の切替の際にも軸の反転又はノック動作の不要な入力ペンの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の実施態様に係る入力ペンは、軸筒と、入力先端を有するとともに該入力先端を前記軸筒の先端から露出させた状態で前記軸筒に収容される電磁誘導ユニットと、を備える電磁誘導タッチペンと、前記入力先端が先端側に位置するように前記電磁誘導タッチペンが前記軸筒ごと内部に挿入される外筒と、前記外筒の先端に装着され押圧により変形可能であるとともに前記入力先端を被覆する接触先端と、前記接触先端の内部に押圧により後退して前記入力先端と接触して押圧する押圧部と、を備える静電容量タッチペンと、を有するとともに、前記入力先端の反応荷重が前記接触先端の反応荷重の2倍以上である。
【0007】
上記構成により、本願の第1の実施態様に係る入力ペンは、電磁誘導タッチペンと静電容量タッチペンとをいずれも外筒の先端側に備えている。そして、入力面への反応荷重が、接触先端の変形のみにとどまり入力先端にまで至らないような比較的小さい場合には静電容量タッチペンとして使用できる。一方、入力面への反応荷重が、接触先端の変形が入力先端にまで至るような比較的大きい場合には電磁誘導タッチペンとして使用できる。
【0008】
本願の第2の実施態様に係る入力ペンは、第1の実施態様の構成に加え、前記外筒の外周に周方向に形成される環状溝と、前記環状溝に周方向に等配されて形成される複数の開口と、前記環状溝に嵌入される弾性リングと、をさらに備え、前記弾性リングの緊縮により前記電磁誘導タッチペンが前記外筒に保持される。
【0009】
上記構成により、本願の第2の実施態様に係る入力ペンは、外筒の環状溝に嵌入される弾性リングによって、電磁誘導タッチペンが保持されることで、使用中に電磁誘導タッチペンが外筒に対して先端側に脱落するようなことが防止できる。
【0010】
本願の第3の実施態様に係る入力ペンは、第2の実施態様の構成に加え、前記外筒と前記電磁誘導タッチペンとの保持荷重は、前記入力先端の反応荷重の2倍以上である。
【0011】
上記構成により、本願の第3の実施態様に係る入力ペンは、弾性リングによる外筒と電磁誘導タッチペンとの保持荷重によって、入力先端に反応荷重がかかっている場合でも、電磁誘導タッチペンが外筒に対して後端側にずれて移動するようなことが防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本願の実施態様は上記のように構成されているので、異なる入力方式のタッチペンを1つの軸に備えつつ、入力方式の切替の際にも軸の反転又はノック動作の不要な入力ペンを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図6A】入力ペンの使用状態における正面図である。
【
図6B】入力ペンの使用状態における右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において共通している符号は、各図の説明において特に言及されていなくても同一の構成を指し示すものである。
【0015】
図1は、実施形態の入力ペン1の斜視図である。入力ペン1は、外筒30と、係止部材21と、接触先端22とで構成される静電容量タッチペン20に、電磁誘導タッチペン10が挿入された構造を有する。外筒30の後端からは、電磁誘導タッチペン10の軸筒13の後端が突出している。導電性プラスチック製で断面正六角形の外筒30の後端近傍には外方に突出したクリップホルダ39が形成され、このクリップホルダ39にステンレス鋼製のクリップ41が装着される。外筒30の外周には、周方向に形成される環状溝37が複数本(図中では4本)形成され、この環状溝37の各々にはステンレス鋼製の弾性リング40が嵌入される。
【0016】
図2は、実施形態の入力ペン1の分解斜視図である。静電容量タッチペン20は、
図1と同様に、外筒30と、係止部材21と、接触先端22とで構成される。外筒30の後端近傍にクリップホルダ39を介してクリップ41が装着されること、及び、外筒30の外周に形成される複数本の環状溝37の各々に弾性リング40が嵌入されることもまた
図1と同様である。電磁誘導タッチペン10は、木製で断面正六角形の軸筒13に電磁誘導ユニット11が収容された構造を有し、軸筒13の先端からは電磁誘導ユニット11の入力先端12が露出している。
【0017】
図3A、
図3B及び
図3Cは、外筒30のそれぞれ斜視図、正面図及び右側面図である。外筒30は、断面正六角形を呈し外径が最大の部分である大径部31と、大径部31の先端側に位置し外径が縮小した円柱状の被径止部32と、被径止部32の先端側に位置し外径がさらに縮小した円柱状の装着部33とで構成される。大径部31の後端近傍には外方に突出したクリップホルダ39が形成され、このクリップホルダ39にステンレス鋼製のクリップ41が装着される。大径部31の外周には、周方向に形成される環状溝37が複数本(図中では4本)形成され、この環状溝37の各々にはステンレス鋼製の弾性リング40が嵌入される。被径止部32の外周には雄ネジが形成されている。また、装着部33の先端には導通孔36が貫通している。
【0018】
図3Dは、外筒30を先端側から見た底面図である。大径部31の後端にクリップホルダ39を介して装着されるクリップ41、大径部31の先端側に位置する被径止部32、弾性リング40の一部、被径止部32の先端側に位置する装着部33、及び装着部33の先端に貫通している導通孔36が視認される。
【0019】
図3Eは、外筒30を後端側から見た平面図である。大径部31の後端にクリップホルダ39を介して装着されるクリップ41、外筒30の内部空間を形成する収容部34及び移行部35、移行部35から先端側に貫通する導通孔36、並びに弾性リング40の一部が視認される。
【0020】
図3Fは、
図3Bのa-a断面図である。大径部31の後端にクリップホルダ39を介して装着されるクリップ41、大径部31の先端側に位置する被径止部32、弾性リング40の一部、被径止部32の先端側に位置する装着部33、及び装着部33の先端に貫通している導通孔36が視認される。外筒30の内部空間は、大径部31の内部空間を占める収容部34と、収容部34の先端側で内径が縮小する移行部35と、移行部35から先端側に貫通する導通孔36とで構成される。大径部31の外周に形成される環状溝37の各々には、外周の6辺の一つおきに等配されて形成される複数の(本実施形態では3個の)開口38が形成されている。弾性リング40は、環状溝37のうち開口38が形成されていない部分に係止し、開口38の部分で収容部34にまで嵌入している。
【0021】
図4は、静電容量タッチペン20の分解斜視図である。外筒30の装着部33に接触先端22を装着してから、係止部材21を被径止部32に装着することで、
図2に示す静電容量タッチペン20が形成される。
【0022】
図5A及び
図5Bは、入力ペン1のそれぞれ正面図及び右側面図である。
図2に示す電磁誘導タッチペン10の外径は、
図3Fに示す収容部34の内径より僅かに小さいため、電磁誘導タッチペン10は静電容量タッチペン20の後端から収容部34に挿入され、軸筒13の後端が大径部31の後端から露出している。大径部31の先端に装着される係止部材21の先端から、接触先端22が露出している。大径部31の外周に形成される環状溝37には弾性リング40が嵌入している。
【0023】
図5Cは、入力ペン1を先端側から見た底面図である。本図では視認されない大径部31の後端にクリップホルダ39を介して装着されるクリップ41、大径部31の先端に装着される係止部材21、弾性リング40の一部、及び係止部材21の先端から露出している接触先端22が視認される。
【0024】
図5Dは、入力ペン1を後端側から見た平面図である。大径部31の後端にクリップホルダ39を介して装着されるクリップ41、外筒30に収容される軸筒13、軸筒13の内部空間である貫通孔14、及び弾性リング40の一部が視認される。
【0025】
図5Eは、
図5Aのb-b断面図である。外筒30の大径部31の後端から、電磁誘導タッチペン10が収容部34に挿入されている。電磁誘導タッチペン10は、木製の軸筒13の貫通孔14の前半部分に電磁誘導ユニット11が挿入された構造を有する。電磁誘導ユニット11の先端の入力先端12は、軸筒13の先端から露出している。電磁誘導ユニット11は、図示は省略するが、電磁誘導タッチペン10として必要な回路基板、電磁誘導コイル、フェライトコア、筆圧検知部等を備えている。収容部34に収容されている電磁誘導タッチペン10は、環状溝37に嵌入している弾性リング40により外筒30に保持されている。また、電磁誘導タッチペン10の入力先端12と、静電容量タッチペン20の接触先端22とは、同一の軸線上に、しかも同一の方向を向いて配設されている。
【0026】
図5Fは、
図5Eのc-c断面図である。軸心に電磁誘導ユニット11を収容する軸筒13は、環状溝37に嵌入している弾性リング40により外筒30に保持されている。弾性リング40は、長辺40aと短辺40bとが交互に配された六角形状に形成されている。弾性リング40のうち、短辺40bは環状溝37のうち開口38が形成されていない部分に係止し、また、長辺40aは開口38の部分で収容部34にまで嵌入して、電磁誘導タッチペン10の外側面に接している。このように装着された弾性リング40の緊縮により電磁誘導タッチペン10が外筒30に保持されている。
【0027】
図5Gは、
図5Eの先端部分の拡大図である。電磁誘導タッチペン10は、入力先端12が静電容量タッチペン20の先端側に位置するように、外筒30の内部に挿入されている。電磁誘導タッチペン10の入力先端12は外筒30の内部の移行部35に位置している。外筒30の大径部31の先端側には外径が縮小した円柱状の被径止部32が形成され、被径止部32の外周には雄ネジが形成されている。また、被径止部32の先端側には外径がさらに縮小した円柱状の装着部33が形成されている。装着部33の先端には導通孔36が貫通している。
【0028】
一方、静電容量タッチペン20の接触先端22は、導電性ゴムにより形成され、円筒形状の外装部22aと、外装部22aの先端を閉塞するドーム状の接触部22bと、外装部22aの後端縁から外方へフランジ状に突出した支持部22cと、接触部22bの内面から後方へ突出する円柱状の押圧部22dとで構成される。
【0029】
係止部材21は、合成樹脂製で、先端方向へ外形が僅かに縮小する略筒状に形成されている。係止部材21の後端側の内面には、被径止部32の外周の雄ネジと螺号する雌ネジが形成されている。
【0030】
接触先端22は、押圧部22dを導通孔36へ挿入しつつ、支持部22cが被径止部32と装着部33との段部に当接するまで外装部22aを装着部33に被覆するようにして、外筒30の先端に装着される。この状態で、係止部材21を被径止部32と螺合させることで、接触先端22の脱落が防止される。この状態で、98~245mN程度の比較的軽い反応荷重で端末に触れることで静電容量タッチペン20としての入力が可能である。なお、接触先端22は押圧により変形可能であるが、端末との接触により生じた荷重が接触先端22の反応荷重(294~490mN)に満たないときは、入力先端12と押圧部22dとは離間した状態を保ち、電磁誘導タッチペン10による入力はなされない。
【0031】
図6A及び
図6Bはそれぞれ、入力ペンの使用状態における正面図及び右側面図であり、また、
図6Cは、
図6Aのd-d断面図である。これらの図では、端末との接触により接触先端22が変形を被っている以外は、それぞれ
図5A、
図5B及び
図5Eと同じである。
【0032】
図6Dは、
図6Cの先端部分の拡大図である。端末との接触により生じた荷重が接触先端22の反応荷重以上であるときは、接触先端22は変形し、それに伴い押圧部22dが相対的に後退し、入力先端12と接触する。これにより、電磁誘導ユニット11では入力先端12への押圧による電磁誘導が生じ、電磁誘導タッチペン10としての入力が可能となる。なお、この状態であっても、静電容量タッチペン20による入力は可能である。
【0033】
ここで、弾性リング40による電磁誘導タッチペン10の保持荷重は、電磁誘導タッチペン10の反応荷重(294~490mN)の2倍以上(980mN以上)としている。これにより、電磁誘導タッチペン10の反応荷重の範囲内で入力作業が行われている限り、電磁誘導タッチペン10が外筒30に対し相対的に後方にずれることはない。
【0034】
なお、外筒30及び軸筒13の形状は、上述のような断面正六角形には限定されず、断面を円形、三角形又は四角形等の任意の形状としてもよい。また、外筒30において環状溝37が設けられる箇所は、上述の実施形態のように先端側には限定されず、後方側であっても、また、中間位置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、入力ペンに利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 入力ペン
10 電磁誘導タッチペン 11 電磁誘導ユニット 12 入力先端
13 軸筒 14 貫通孔
20 静電容量タッチペン 21 係止部材 22 接触先端
22a 外装部 22b 接触部 22c 支持部
22d 押圧部
30 外筒 31 大径部 32 被径止部
33 装着部 34 収容部 35 移行部
36 導通孔 37 環状溝 38 開口
39 クリップホルダ
40 弾性リング 41 クリップ