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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20240619BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20240619BHJP
   H01L 31/0747 20120101ALI20240619BHJP
【FI】
H01L31/04 420
H01L31/04 240
H01L31/06 455
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020210725
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097253
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴久
(72)【発明者】
【氏名】石橋 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】小西 克典
(72)【発明者】
【氏名】足立 大輔
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-155710(JP,A)
【文献】特開2014-075526(JP,A)
【文献】特開2015-177175(JP,A)
【文献】特開2014-053459(JP,A)
【文献】特開2016-167507(JP,A)
【文献】特開2015-012171(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178305(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0124160(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103137455(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、
前記第1半導体層の材料膜の表面を酸化処理して、前記第1半導体層の材料膜の表面に第1酸化処理層を形成する酸化処理層形成工程と、
前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域に、第1マスクを形成するマスク形成工程と、
前記第1マスクを用いて前記第2領域における前記第1酸化処理層および前記第1半導体層の材料膜を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記第1半導体層および前記第1酸化処理層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記第1マスクを除去するマスク除去工程と、
前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を洗浄する洗浄工程と、
を含み、
前記第1酸化処理層は、
前記マスク除去工程において、前記第1マスクを除去する溶液から前記第1半導体層を保護しつつ、
前記洗浄工程において、前記半導体基板の表面を洗浄する溶液によって除去される、
太陽電池の製造方法。
【請求項2】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、
前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域に、第1マスクを形成するマスク形成工程と、
前記第1マスクを用いて前記第2領域における前記第1半導体層の材料膜を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記第1半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を酸化処理して、前記半導体基板の表面に第1酸化処理層を形成する酸化処理層形成工程と、
前記第1マスクを除去するマスク除去工程と、
前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を洗浄する洗浄工程と、
を含み、
前記第1酸化処理層は、
前記マスク除去工程において、前記第1マスクを除去する溶液から前記半導体基板を保護しつつ、
前記洗浄工程において、前記半導体基板の表面を洗浄する溶液によって除去される、
太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記洗浄工程の後に、
前記第1領域における前記第1半導体層の上および前記第2領域に、前記第2半導体層の材料膜を形成する第2半導体層材料膜形成工程と、
第2マスクを用いて前記第1領域における前記第2半導体層の材料膜を除去することにより、前記第2領域に、パターン化された前記第2半導体層を形成し、前記第2マスクを除去する第2半導体層形成工程と、
を含み、
前記第1半導体層形成工程の前に、前記半導体基板の前記一方主面側に、第3半導体層を形成する第3半導体層形成工程を更に含み、
前記酸化処理層形成工程では、前記第3半導体層の表面を酸化処理して、前記第3半導体層の表面に第2酸化処理層を形成し、
前記第2酸化処理層は、
前記マスク除去工程において、前記第1マスクを除去する溶液から前記第3半導体層を保護しつつ、
前記洗浄工程または前記第2半導体層形成工程において少なくとも一部が除去され、前記第2半導体層形成工程後には全てが除去されている、
請求項1または2に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記第1半導体層および前記第3半導体層は、シリコンを主成分とする材料を含み、
前記第1酸化処理層および前記第2酸化処理層はシリコン酸化膜であり、
前記マスク除去工程において、前記第1マスクを剥離する溶液はアルカリ溶液であり、
前記洗浄工程または前記第2半導体層形成工程は、フッ酸処理を含む、
請求項3に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、
前記第1半導体層の材料膜の表面を酸化処理して、前記第1半導体層の材料膜の表面に第1酸化処理層を形成する酸化処理層形成工程と、
前記半導体基板の前記他方主面側に、リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、
前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域に、マスクを形成するマスク形成工程と、
前記マスクを用いて前記第2領域における前記リフトオフ層、前記第1酸化処理層および前記第1半導体層の材料膜を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記第1半導体層、前記第1酸化処理層および前記リフトオフ層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記マスクを除去するマスク除去工程と、
前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を洗浄する洗浄工程と、
前記第1領域における前記リフトオフ層の上および前記第2領域に、前記第2半導体層の材料膜を形成する第2半導体層材料膜形成工程と、
前記リフトオフ層を除去することにより、前記第1領域における前記第2半導体層の材料膜を除去し、前記第2領域に、パターン化された前記第2半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、
を含み、
前記第1酸化処理層は、
前記マスク除去工程において、前記マスクを除去する溶液から前記第1半導体層を保護しつつ、
前記第2半導体層形成工程において、前記リフトオフ層を除去する溶液によって除去される、
太陽電池の製造方法。
【請求項6】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、
前記半導体基板の前記他方主面側に、リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、
前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域に、マスクを形成するマスク形成工程と、
前記マスクを用いて前記第2領域における前記リフトオフ層および前記第1半導体層の材料膜を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記第1半導体層および前記リフトオフ層を形成する第1半導体層形成工程と、
前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を酸化処理して、前記半導体基板の表面に第1酸化処理層を形成する酸化処理層形成工程と、
前記マスクを除去するマスク除去工程と、
前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を洗浄する洗浄工程と、
前記第1領域における前記リフトオフ層の上および前記第2領域に、前記第2半導体層の材料膜を形成する第2半導体層材料膜形成工程と、
前記リフトオフ層を除去することにより、前記第1領域における前記第2半導体層の材料膜を除去し、前記第2領域に、パターン化された前記第2半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、
を含み、
前記第1酸化処理層は、
前記マスク除去工程において、前記マスクを除去する溶液から前記半導体基板を保護しつつ、
前記洗浄工程において、前記半導体基板の表面を洗浄する溶液によって除去される、
太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記第1半導体層形成工程の前に、前記半導体基板の前記一方主面側に、第3半導体層を形成する第3半導体層形成工程を更に含み、
前記酸化処理層形成工程では、前記第3半導体層の表面を酸化処理して、前記第3半導体層の表面に第2酸化処理層を形成し、
前記第2酸化処理層は、
前記マスク除去工程において、前記マスクを除去する溶液から前記第3半導体層を保護しつつ、
前記洗浄工程または前記第2半導体層形成工程において少なくとも一部が除去され、前記第2半導体層形成工程後には全てが除去されている、
請求項5または6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記第1半導体層および前記第3半導体層は、シリコンを主成分とする材料を含み、
前記第1酸化処理層および前記第2酸化処理層はシリコン酸化膜であり、
前記マスク除去工程において、前記マスクを剥離する溶液はアルカリ溶液であり、
前記洗浄工程または前記第2半導体層形成工程は、フッ酸処理を含む、
請求項7に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記リフトオフ層の上に、前記リフトオフ層を保護する第1保護層を形成する第1保護層形成工程を更に含み、
前記マスク形成工程では、パターン印刷法を用いて、前記マスクとしてパターン印刷レジストを形成し、
前記第1半導体層形成工程では、更に、前記マスクを用いて前記第2領域における前記第1保護層を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記第1保護層を形成し、
前記第1領域における前記第1保護層は、
前記第1半導体層形成工程において、前記パターン化に使用される溶液から前記第1領域における前記リフトオフ層を保護し、
前記マスク除去工程において、前記パターン印刷レジストを除去する溶液で除去される、
請求項5または6に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記第1半導体層は、シリコンを主成分とする材料を含み、
前記第1酸化処理層はシリコン酸化膜であり、
前記リフトオフ層は、酸化珪素、窒化珪素、またはそれらの複合物を主成分とする材料を含み、
前記第1保護層は、シリコンを主成分とする材料を含み、
前記第1半導体層形成工程において、前記パターン化に使用される溶液はフッ酸を含み、
前記マスク除去工程において、前記パターン印刷レジストを除去する溶液はアルカリ溶液であり、
前記洗浄工程または前記第2半導体層形成工程は、フッ酸処理を含む、
請求項9に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記第1半導体層形成工程の前に、前記半導体基板の前記一方主面側に、第3半導体層を形成する第3半導体層形成工程を更に含み、
前記酸化処理層形成工程では、前記第3半導体層の表面を酸化処理して、前記第3半導体層の表面に第2酸化処理層を形成し、
前記第2酸化処理層の上に絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層の上に、前記絶縁層を保護する第2保護層を形成する第2保護層形成工程と、
を含み、
前記第2酸化処理層は、
前記マスク除去工程において、前記パターン印刷レジストを除去する溶液から前記第3半導体層を保護しつつ、
前記洗浄工程または前記第2半導体層形成工程において少なくとも一部が除去され、前記第2半導体層形成工程後には全てが除去され、
前記第2保護層は、
前記第1半導体層形成工程において、前記パターン化に使用される溶液から前記絶縁層を保護し、
前記マスク除去工程において、前記パターン印刷レジストを除去する溶液で除去され、
前記絶縁層は、
前記マスク除去工程において、前記パターン印刷レジストを除去する溶液から前記第3半導体層を保護し、
前記第2半導体層形成工程において、前記リフトオフ層を除去する溶液で除去される、
請求項9または10に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項12】
前記第3半導体層は、シリコンを主成分とする材料を含み、
前記第2酸化処理層はシリコン酸化膜であり、
前記絶縁層は、酸化珪素、窒化珪素、またはそれらの複合物を主成分とする材料を含み、
前記第2保護層は、シリコンを主成分とする材料を含み、
前記第2半導体層形成工程において、前記リフトオフ層を除去する溶液はフッ酸を含む、
請求項11に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項13】
半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域および前記第2領域に、前記第1半導体層および前記第2半導体層に跨って電極層材料膜を形成する電極層材料膜形成工程と、
前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域および前記第2領域に、マスクを形成するマスク形成工程と、
前記マスクを用いて前記第1領域と前記第2領域との境界における前記電極層材料膜を除去することにより、前記第1領域にパターン化された前記第1電極層を形成し、前記第2領域にパターン化された前記第2電極層を形成する電極層形成工程と、
前記第1電極層と前記第2電極層との間において露出した前記第1半導体層の表面および前記第2半導体層の表面を酸化処理して、露出した前記第1半導体層の表面および前記第2半導体層の表面に酸化処理層を形成する酸化処理層形成工程と、
前記マスクを除去するマスク除去工程と、
を含み、
前記酸化処理層は、前記マスク除去工程において、前記マスクを除去する溶液から、前記第1電極層と前記第2電極層との間における前記第1半導体層および前記第2半導体層を保護する、
太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面電極型(バックコンタクト型)の太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を用いた太陽電池として、受光面側および裏面側の両面に電極が形成された両面電極型の太陽電池と、裏面側のみに電極が形成された裏面電極型の太陽電池とがある。両面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されるため、この電極により太陽光が遮蔽されてしまう。一方、裏面電極型の太陽電池では、受光面側に電極が形成されないため、両面電極型の太陽電池と比較して太陽光の受光率が高い。特許文献1および2には、裏面電極型の太陽電池が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の太陽電池は、光電変換層として機能する半導体基板と、半導体基板の裏面側の一部に順に積層された第1真性半導体層および第1導電型半導体層(第1半導体層)、および第1電極層と、半導体基板の裏面側の他の一部に順に積層された第2真性半導体層および第2導電型半導体層(第2半導体層)、および第2電極層とを備える。また、この太陽電池は、半導体基板の受光面側に順に積層された第3真性半導体層(第3半導体層)および光学調整層を備える。光学調整層は、入射光の反射を低減する反射防止層として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-26269号公報
【文献】国際公開第2012/132836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、第1導電型半導体層のパターニング、および、第2導電型半導体層のパターニングのうちの少なくとも第1導電型半導体層のパターニングにおいて、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法が用いられる。その際、コストダウンの観点から、フォトレジストを剥離する溶液としてアルカリ溶液を使用することが考えられる。
しかし、アルカリ溶液が裏面側の第1導電型半導体層を溶解してしまうことがある。そのため、キャリアの取り出し効率が低下し、太陽電池の性能が低下してしまう。
或いは、アルカリ溶液によって、露出した半導体基板にダメージが生じてしまうことがある。そのため、キャリアのライフタイムが低下し、太陽電池の性能が低下してしまう。
【0006】
また、電極層のパターニングにおいても、コストダウンの観点から、フォトレジストを剥離する溶液としてアルカリ溶液を使用することが考えられる。しかし、アルカリ溶液が、電極層の間において露出した第1導電型半導体層および第2導電型半導体層を溶解してしまうことがある。そのため、キャリアの取り出し効率が低下し、太陽電池の性能が低下してしまう。
【0007】
本発明は、太陽電池の低コスト化および性能低下の抑制が可能な太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、前記第1半導体層の材料膜の表面を酸化処理して、前記第1半導体層の材料膜の表面に第1酸化処理層を形成する酸化処理層形成工程と、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域に、第1マスクを形成するマスク形成工程と、前記第1マスクを用いて前記第2領域における前記第1酸化処理層および前記第1半導体層の材料膜を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記第1半導体層および前記第1酸化処理層を形成する第1半導体層形成工程と、前記第1マスクを除去するマスク除去工程と、前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を洗浄する洗浄工程と、を含む。前記第1酸化処理層は、前記マスク除去工程において、前記第1マスクを除去する溶液から前記第1半導体層を保護しつつ、前記洗浄工程において、前記半導体基板の表面を洗浄する溶液によって除去される。
【0009】
また、本発明に係る別の太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域に、第1マスクを形成するマスク形成工程と、前記第1マスクを用いて前記第2領域における前記第1半導体層の材料膜を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記第1半導体層を形成する第1半導体層形成工程と、前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を酸化処理して、前記半導体基板の表面に第1酸化処理層を形成する酸化処理層形成工程と、前記第1マスクを除去するマスク除去工程と、前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を洗浄する洗浄工程と、を含む。前記第1酸化処理層は、前記マスク除去工程において、前記第1マスクを除去する溶液から前記半導体基板を保護しつつ、前記洗浄工程において、前記半導体基板の表面を洗浄する溶液によって除去される。
【0010】
また、本発明に係る別の太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、前記第1半導体層の材料膜の表面を酸化処理して、前記第1半導体層の材料膜の表面に第1酸化処理層を形成する酸化処理層形成工程と、前記半導体基板の前記他方主面側に、リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域に、マスクを形成するマスク形成工程と、前記マスクを用いて前記第2領域における前記リフトオフ層、前記第1酸化処理層および前記第1半導体層の材料膜を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記第1半導体層、前記第1酸化処理層および前記リフトオフ層を形成する第1半導体層形成工程と、前記マスクを除去するマスク除去工程と、前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を洗浄する洗浄工程と、前記第1領域における前記リフトオフ層の上および前記第2領域に、前記第2半導体層の材料膜を形成する第2半導体層材料膜形成工程と、前記リフトオフ層を除去することにより、前記第1領域における前記第2半導体層の材料膜を除去し、前記第2領域に、パターン化された前記第2半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、を含む。前記第1酸化処理層は、前記マスク除去工程において、前記マスクを除去する溶液から前記第1半導体層を保護しつつ、前記第2半導体層形成工程において、前記リフトオフ層を除去する溶液によって除去される。
【0011】
また、本発明に係る別の太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記他方主面側に、前記第1半導体層の材料膜を形成する第1半導体層材料膜形成工程と、前記半導体基板の前記他方主面側に、リフトオフ層を形成するリフトオフ層形成工程と、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域に、マスクを形成するマスク形成工程と、前記マスクを用いて前記第2領域における前記リフトオフ層および前記第1半導体層の材料膜を除去することにより、前記第1領域に、パターン化された前記第1半導体層および前記リフトオフ層を形成する第1半導体層形成工程と、前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を酸化処理して、前記半導体基板の表面に第1酸化処理層を形成する酸化処理層形成工程と、前記マスクを除去するマスク除去工程と、前記第2領域における露出した前記半導体基板の表面を洗浄する洗浄工程と、前記第1領域における前記リフトオフ層の上および前記第2領域に、前記第2半導体層の材料膜を形成する第2半導体層材料膜形成工程と、前記リフトオフ層を除去することにより、前記第1領域における前記第2半導体層の材料膜を除去し、前記第2領域に、パターン化された前記第2半導体層を形成する第2半導体層形成工程と、を含む。前記第1酸化処理層は、前記マスク除去工程において、前記マスクを除去する溶液から前記半導体基板を保護しつつ、前記洗浄工程において、前記半導体基板の表面を洗浄する溶液によって除去される。
【0012】
また、本発明に係る別の太陽電池の製造方法は、半導体基板と、前記半導体基板の一方主面側と反対側の他方主面側の一部である第1領域に順に積層された第1半導体層および第1電極層と、前記半導体基板の前記他方主面側の他の一部である第2領域に順に積層された第2半導体層および第2電極層とを備える裏面電極型の太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域および前記第2領域に、前記第1半導体層および前記第2半導体層に跨って電極層材料膜を形成する電極層材料膜形成工程と、前記半導体基板の前記他方主面側の前記第1領域および前記第2領域に、マスクを形成するマスク形成工程と、前記マスクを用いて前記第1領域と前記第2領域との境界における前記電極層材料膜を除去することにより、前記第1領域にパターン化された前記第1電極層を形成し、前記第2領域にパターン化された前記第2電極層を形成する電極層形成工程と、前記第1電極層と前記第2電極層との間において露出した前記第1半導体層の表面および前記第2半導体層の表面を酸化処理して、露出した前記第1半導体層の表面および前記第2半導体層の表面に酸化処理層を形成する酸化処理層形成工程と、前記マスクを除去するマスク除去工程と、を含む。前記酸化処理層は、前記マスク除去工程において、前記マスクを除去する溶液から、前記第1電極層と前記第2電極層との間における前記第1半導体層および前記第2半導体層を保護する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、太陽電池の低コスト化および性能低下の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本実施形態に係る太陽電池を背面側からみた図である。
図1B】本実施形態に係る別の太陽電池を背面側からみた図である。
図2A図1Aの太陽電池におけるII-II線断面図である。
図2B図1Bの別の太陽電池におけるII-II線断面図である。
図3A】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程および第3半導体層形成工程を示す図である。
図3B】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図である。
図3C】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図である。
図3D】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図3E】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図である。
図3F】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト除去工程(マスク除去工程)を示す図である。
図3G】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1洗浄工程を示す図である。
図3H】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図である。
図3I】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
図3J】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図である。
図3K】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図3L】第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図4図3Bおよび図3Eに示す酸化処理層形成工程の一例を説明するための図である。
図5A】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程および第3半導体層形成工程を示す図である。
図5B】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図である。
図5C】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるリフトオフ層形成工程および絶縁層形成工程を示す図である。
図5D】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図である。
図5E】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図5F】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図である。
図5G】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト除去工程(マスク除去工程)を示す図である。
図5H】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1洗浄工程を示す図である。
図5I】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図である。
図5J】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
図5K】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図である。
図5L】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図5M】第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図6A】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程および第3半導体層形成工程を示す図である。
図6B】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図である。
図6C】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるリフトオフ層形成工程、第1保護層形成工程、絶縁層形成工程および第2保護層形成工程を示す図である。
図6D】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図である。
図6E】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図6F】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図である。
図6G】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト除去工程(マスク除去工程)を示す図である。
図6H】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1洗浄工程を示す図である。
図6I】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図である。
図6J】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
図6K】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図である。
図6L】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図6M】第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図7A】従来の太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程および第3半導体層形成工程を示す図である。
図7B】従来の太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図である。
図7C】従来の太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図7D】従来の太陽電池の製造方法におけるレジスト除去工程(マスク除去工程)を示す図である。
図7E】従来の太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図である。
図7F】従来の太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。
図7G】従来の太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図である。
図7H】従来の太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図7I】従来の太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図7J】従来の太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図8A】本実施形態の変形例に係る太陽電池の断面図であって、図1AのII-II線相当の断面図である。
図8B】本実施形態の変形例に係る別の太陽電池の断面図であって、図1BのII-II線相当の断面図である。
図9A】第1実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程を示す図である。
図9B】第1実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図である。
図9C】第1実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における透明電極層形成工程を示す図である。
図9D】第1実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図である。
図9E】第1実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図である。
図10A】第2実施形態または第3実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程を示す図である。
図10B】第2実施形態または第3実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図である。
図10C】第2実施形態または第3実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における透明電極層形成工程を示す図である。
図10D】第2実施形態または第3実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図である。
図10E】第2実施形態または第3実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0016】
(太陽電池)
図1Aは、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図であり、図1Bは、本実施形態に係る別の太陽電池を背面側からみた図である。図1Aおよび図1Bに示す太陽電池1は、裏面電極型(バックコンタクト型、裏面接合型ともいう。)の太陽電池である。太陽電池1は、2つの主面を備えるn型(第2導電型)半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。
【0017】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向(X方向)に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向(Y方向)に延在する。
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第1方向(X方向)に交互に設けられている。
なお、第1領域7および第2領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
【0018】
図1Aに示すように、第1領域7と第2領域8との間に境界領域9があってもよいし、図1Bに示すように、第1領域7と第2領域8との間に境界領域9がなくてもよい。境界領域9とは、後述するように、p型半導体層とn型半導体層とが重なり合っている領域である。
【0019】
図2Aは、図1Aの太陽電池におけるII-II線断面図であり、図2Bは、図1Bの太陽電池におけるII-II線断面図である。図2Aおよび図2Bに示すように、太陽電池1は、ヘテロ接合型の太陽電池である。太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光する側の一方の主面である受光面側に順に積層された真性半導体層13および光学調整層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の他方の主面である裏面側の一部(主に、第1領域7)に順に積層された真性半導体層23、p型(第1導電型)半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(主に、第2領域8)に順に積層された真性半導体層33、n型(第2導電型)半導体層35、および第2電極層37を備える。なお、以下では、真性半導体層23およびp型半導体層25を第1半導体層ともいい、真性半導体層33およびn型半導体層35を第2半導体層ともいう。また、真性半導体層13を第3半導体層ともいう。
【0020】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。
半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0021】
真性半導体層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。真性半導体層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7および境界領域9に形成されている。真性半導体層33は、半導体基板11の裏面側の第2領域8および境界領域9に形成されている。真性半導体層13,23,33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコンを主成分とする材料で形成される。
真性半導体層13,23,33は、いわゆるパッシベーション層として機能し、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0022】
光学調整層15は、半導体基板11の受光面側の真性半導体層13上に形成されている。光学調整層15は、入射光の反射を防止する反射防止層として機能するとともに、半導体基板11の受光面側および真性半導体層13を保護する保護層として機能する。光学調整層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0023】
p型半導体層25は、真性半導体層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7および境界領域9に形成されている。p型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。p型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体層である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。
【0024】
n型半導体層35は、真性半導体層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8および境界領域9に形成されている。n型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。n型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型半導体層である。
【0025】
図2Aでは、n型半導体層35および真性半導体層33の一部は、境界領域9において、隣接するp型半導体層25および真性半導体層23の一部の上に重なっている。一方、図2Bでは、n型半導体層35および真性半導体層33の一部と、p型半導体層25および真性半導体層23の一部とは重なっていない。
【0026】
第1電極層27は、p型半導体層25上に形成されており、第2電極層37は、n型半導体層35上に形成されている。
第1電極層27は、p型半導体層25上に順に積層された透明電極層28と金属電極層29とを有する。第2電極層37は、n型半導体層35上に順に積層された透明電極層38と金属電極層39とを有する。
透明電極層28,38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)等が挙げられる。金属電極層29,39は、銀等の金属粉末を含有する導電性ペースト材料で形成される。
【0027】
(従来の太陽電池の製造方法)
次に、図7A図7Jを参照して、図1Aおよび図1Bに示す本実施形態の太陽電池1と同様の構成を有する従来の太陽電池1Xの製造方法、およびその課題について説明する。図7Aは、従来の太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程および第3半導体層形成工程を示す図であり、図7B図7Dは、従来の太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)、第1半導体層形成工程およびレジスト除去工程(マスク除去工程)を示す図である。また、図7Eは、従来の太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図であり、および図7Fは、従来の太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。また、図7Gは、従来の太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図であり、図7H図7Jは、従来の太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
【0028】
まず、図7Aに示すように、例えばCVD法(化学気相堆積法)を用いて、半導体基板11Xの裏面側の全面に、真性半導体層材料膜23ZXおよびp型半導体層材料膜25ZXを順に積層(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程)。また、後述するように、p型半導体層材料膜25ZXの上にSiOのような絶縁層を積層(製膜)してもよい。
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11Xの受光面側の全面に、真性半導体層13Xを積層(製膜)する(第3半導体層形成工程)。また、後述するように、真性半導体層13Xの上にSiOのような絶縁層を積層(製膜)してもよい。なお、真性半導体層材料膜23ZXおよびp型半導体層材料膜25ZXと、真性半導体層13Xとの製膜の順序は限定されない。
【0029】
次に、図7B図7Dに示すように、フォトリソグラフィ法を用いて、半導体基板11Xの裏面側において、第2領域8における真性半導体層材料膜23ZXおよびp型半導体層材料膜25ZXを除去することにより、真性半導体層23Xおよびp型半導体層25Xのパターニングを行う(第1半導体層形成工程)。
【0030】
具体的には、図7Bに示すように、半導体基板11Xの両面側の全面にフォトレジスト90Xを塗布した後に、裏面側において第2領域8におけるフォトレジスト90Xを露光および現像して除去する(レジスト形成工程:マスク形成工程)。その後、図7Cに示すように、フォトレジスト90Xをマスクとしたエッチング法を用いて、真性半導体層23Xおよびp型半導体層25Xのパターニングを行う。p型半導体層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えばフッ酸と硝酸との混合液等の酸性溶液が用いられる。
その後、図7Dに示すように、フォトレジスト90Xを剥離する(レジスト除去工程:マスク除去工程)。フォトレジスト90Xに対するエッチング溶液としては、安価なアルカリ溶液が用いられる。このとき、第1の課題が生じる(詳細は後述する)。
【0031】
なお、第1半導体層形成工程では、半導体基板11Xの裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23ZXの一部または全部を残すように、p型半導体層25Xのパターニングを行ってもよい。
【0032】
次に、半導体基板11Xの両面側をクリーニングする(第1洗浄工程)。第1洗浄工程では、例えばオゾン処理を行った後、フッ酸処理が行われる。フッ酸処理とは、フッ酸のみならず、フッ酸に他の種類の酸(第1洗浄工程では、例えば塩酸)を含めた混合物での処理も含むものとする。
【0033】
次に、図7Eに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11Xの裏面側の全面に、真性半導体層材料膜33ZXおよびn型半導体層材料膜35ZXを順に積層(製膜)する(第2半導体層材料膜形成工程)。
【0034】
次に、図7Fに示すように、フォトリソグラフィ法を用いて、半導体基板11Xの裏面側において、第1領域7における真性半導体層材料膜33ZXおよびn型半導体層材料膜35ZXを除去することにより、真性半導体層33Xおよびn型半導体層35Xのパターニングを行う(第2半導体層形成工程)。
【0035】
具体的には、上述した第1半導体層形成工程と同様に、フォトレジスト90Xをマスクとしてアルカリ溶液を用いてエッチングが行われ、その後、有機溶剤を用いてフォトレジスト90Xを剥離する。
【0036】
なお、第1半導体層形成工程において、半導体基板11Xの裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23ZXの全部が残る場合、第2半導体層材料膜形成工程および第2半導体層形成工程では、真性半導体層材料膜の積層(製膜)を行わず、n型半導体層35Xのパターニングを行えばよい。また、第1半導体層形成工程において、半導体基板11Xの裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23ZXの一部が残る場合、第2半導体層材料膜形成工程および第2半導体層形成工程では、除去された分だけ真性半導体層材料膜の積層(製膜)を行い、真性半導体層およびn型半導体層35Xのパターニングを行えばよい。
【0037】
次に、図7Gに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11Xの受光面側の全面に、光学調整層15Xを積層(製膜)する(光学調整層形成工程)。
【0038】
次に、図7Hに示すように、例えばスパッタリング法等のPVD法(物理気相成長法)を用いて、半導体基板11Xの裏面側の全面に、透明電極層材料膜28ZXを積層(製膜)する(電極層形成工程)。
【0039】
次に、図7Iに示すように、例えばエッチングペーストを用いたエッチング法を用いて、透明電極層材料膜28ZXの一部を除去することにより、透明電極層28X,38Xのパターニングを行う(電極層形成工程)。透明電極層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば塩酸または塩化第二鉄水溶液が用いられる。
【0040】
次に、図7Jに示すように、例えば印刷法または塗布法を用いて、透明電極層28X上に金属電極層29Xを形成し、透明電極層38Xの上に金属電極層39Xを形成することにより、第1電極層27Xおよび第2電極層37Xを形成する。
以上の工程により、従来の裏面電極型の太陽電池1Xが完成する。
【0041】
(第1の課題)
一般に、p型半導体層25Xのパターニング、および、n型半導体層35Xのパターニングのうちの少なくともp型半導体層25Xのパターニングにおいて、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング法が用いられる。その際、コストダウンの観点から、フォトレジスト90Xを剥離する溶液としてアルカリ溶液を使用することが考えられる。
しかし、p型半導体層25Xのドーパント濃度が低いと、アルカリ溶液が裏面側のp型半導体層25Xを溶解してしまうことがある。そのため、キャリアの取り出し効率が低下し、太陽電池の性能が低下してしまう。また、アルカリ溶液が受光面側の真性半導体層13Xを溶解してしまう。そのため、キャリアのライフタイムが低下し、太陽電池の性能が低下してしまう。
【0042】
この点に関し、裏面側および受光面側に、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料からなる保護層を製膜することが考えられる。しかし、例えばCVDによる製膜では、保護層に複数のピンホールが発生するため、アルカリ溶液が保護層のピンホールを介してp型半導体層25Xおよび真性半導体層13Xを溶解してしまう。そのため、p型半導体層25Xによるキャリアの取り出し効率が低下し、また真性半導体層13Xによるキャリアのライフタイムが低下し、太陽電池の性能が低下してしまう。
【0043】
p型半導体層25Xのパターニング、および、n型半導体層35Xのパターニングのうちの少なくともp型半導体層25Xのパターニングのためのフォトレジスト90Xの剥離において、有機溶剤を用いると、保護層のピンホールを介したp型半導体層25Xおよび真性半導体層13Xの溶解が抑制されるが、コストが高くなる。
また、保護層のピンホールを介したp型半導体層25Xおよび真性半導体層13Xの溶解を抑制するためには、保護層におけるピンホールの発生を抑制することが考えられる。保護層におけるピンホールの発生を抑制するためには、
・クリーンルーム内で作業し、製造プロセス中の異物の付着を回避すること、
・保護層の膜厚を厚くすること、または、
・保護層を多層化すること、
が考えられる。しかし、製膜環境のクリーン化(クリーンルーム内での作業)は、設備投資コストが大きい。保護層の厚膜化および保護層の多層化は、製膜時間の増加および除去プロセスの増加等による、製造プロセスの増加およびコスト面で容易ではない。
【0044】
この課題に関し、本願発明者らは、太陽電池1の製造プロセス中にp型半導体層25および真性半導体層13を保護するとともに、製造プロセス中に自然に除去される保護層を、裏面側のp型半導体層25上および受光面側の真性半導体層13上に形成することを考案した。
【0045】
また、p型半導体層25Xのパターニングにおいて、フォトレジスト90Xを剥離するアルカリ溶液によって、露出する半導体基板11Xにダメージが生じてしまうことがある。そのため、キャリアのライフタイムが低下し、太陽電池の性能が低下してしまう。
【0046】
この課題に関し、本願発明者らは、太陽電池1の製造プロセス中に半導体基板11を保護するとともに、製造プロセス中に自然に除去される保護層を、露出する半導体基板11上に形成することを考案する。
【0047】
(第1実施形態に係る太陽電池の製造方法)
以下、図3A図3Lおよび図4を参照して、図1Aおよび図2Aに示す本実施形態に係る太陽電池1の製造方法(第1実施形態に係る太陽電池の製造方法)について説明する。図3Aは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程および第3半導体層形成工程を示す図であり、図3Bは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図である。また、図3Cは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図であり、図3Dは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。また、図3Eは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図であり、図3Fは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト除去工程(マスク除去工程)を示す図であり、図3Gは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1洗浄工程を示す図である。また、図3Hは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図であり、図3Iは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。また、図3Jは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図であり、図3Kおよび図3Lは、第1実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。また、図4は、図3Bおよび図3Eに示す酸化処理層形成工程の一例を説明するための図である。
【0048】
まず、図3Aに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、真性半導体層材料膜23Zおよびp型半導体層材料膜25Zを順に積層(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程)。
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、真性半導体層13を積層(製膜)する(第3半導体層形成工程)。なお、真性半導体層材料膜23Zおよびp型半導体層材料膜25Zと、真性半導体層13との製膜の順序は限定されない。
受光面側の真性半導体層13は、後の第2半導体層材料膜形成工程において製膜されてもよい。この場合、この段階で製膜された受光面側の真性半導体層は、後の酸化処理層形成工程において表面が酸化される処理を施されず、後の第1半導体層形成工程において除去されてもよい。或いは、この段階で受光面側に真性半導体層が形成されなくてもよい、すなわちこの段階で真性半導体層形成工程がなくてもよい。
【0049】
次に、図3Bに示すように、p型半導体層材料膜25Zの表面を酸化処理して、p型半導体層材料膜25Zの表面に第1酸化処理層25Oを形成する(酸化処理層形成工程)。また、真性半導体層13の表面を酸化して、真性半導体層13の表面に第2酸化処理層13Oを形成する(酸化処理層形成工程)。なお、上述したように酸化処理層形成工程の前に受光面側に真性半導体層13が形成されない場合、半導体基板11の受光面側の表面が酸化処理されて、半導体基板11の受光面側の表面に第2酸化処理層が形成されてもよい。
【0050】
具体的には、図4に示すように、半導体基板11をオゾン水に浸水することにより、p型半導体層材料膜25Zの表面および真性半導体層13の表面(または、半導体基板11の受光面側の表面)にオゾン(O3)を浸透させる。これにより、p型半導体層材料膜25Zの表面および真性半導体層13の表面(または、半導体基板11の受光面側の表面)にシリコン酸化膜(SiOx、xは1以上の任意の数)が形成される。
なお、単に半導体基板11を加熱することで、例えば空気中の酸素との結合により、p型半導体層材料膜25Zの表面および真性半導体層13の表面(または、半導体基板11の受光面側の表面)を酸化させてもよい。
【0051】
このようにして形成されたシリコン酸化膜(SiOx)は、すなわち第1酸化処理層25Oおよび第2酸化処理層13Oは、アルカリ溶液に対して耐性を有し、フッ酸処理(フッ酸、またはフッ酸と他の種類の酸との混合物での処理)で容易に除去される。
更に、既存のシリコン層を酸化させて形成した酸化膜は、ピンホールがない緻密な膜である。これにより、アルカリ溶液が酸化膜のピンホールを介してp型半導体層材料膜25Zおよび真性半導体層13を溶解してしまうことを抑制することができる。
【0052】
なお、既存のシリコン層を酸化させて形成したシリコン酸化膜は、0.1nm以上2.0nm程度の膜厚であり、例えばCVD法を用いて製膜したシリコン酸化層と比較して薄く均一である。
【0053】
次に、図3C図3Fに示すように、フォトリソグラフィ法を用いて、半導体基板11の裏面側において、第2領域8における真性半導体層材料膜23Z、p型半導体層材料膜25Zおよび第1酸化処理層25Oを除去することにより、第1領域7に、パターン化された真性半導体層23、p型半導体層25および第1酸化処理層25Oを形成する(第1半導体層形成工程)。
【0054】
具体的には、図3Cに示すように、半導体基板11の両面側の全面にフォトレジスト90を塗布した後に、裏面側において第2領域8におけるフォトレジスト90を露光および現像して除去する(レジスト形成工程:マスク形成工程)。その後、図3Dに示すように、フォトレジスト90をマスクとしたエッチング法を用いて、真性半導体層23、p型半導体層25および第1酸化処理層25Oのパターニングを行う。真性半導体層23、p型半導体層25および第1酸化処理層25Oに対するエッチング溶液としては、例えばフッ酸と硝酸の混合液等の酸性溶液が用いられる。
【0055】
このとき、図3Eに示すように、フォトレジスト90から露出した第2領域8における半導体基板11の表面を酸化処理して、露出した半導体基板11の表面に酸化処理層11Oを形成してもよい(酸化処理層形成工程)。例えば、上述したように、図4に示すように、半導体基板11をオゾン水に浸水することにより、露出した半導体基板11の表面にオゾン(O3)を浸透させる。これにより、露出した半導体基板11の表面にシリコン酸化膜(SiOx、xは1以上の任意の数)が形成される。
【0056】
その後、図3Fに示すように、フォトレジスト90を剥離する(レジスト除去工程:マスク除去工程)。フォトレジスト90に対するエッチング溶液としては、安価なアルカリ溶液が用いられる。
このとき、第1酸化処理層25Oは、フォトレジスト90を剥離するアルカリ溶液からp型半導体層材料膜25Zを保護し、第2酸化処理層13Oは、フォトレジスト90を剥離するアルカリ溶液から真性半導体層13を保護する。また、第1酸化処理層25Oおよび第2酸化処理層13Oは、ピンホールがない緻密な膜であるので、アルカリ溶液が酸化膜のピンホールを介してp型半導体層材料膜25Zおよび真性半導体層13が溶解してしまうことが抑制される。
また、酸化処理層11Oは、フォトレジスト90を剥離するアルカリ溶液から、露出した半導体基板11を保護する。
【0057】
なお、第1半導体層形成工程では、半導体基板11の裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23Zの一部または全部を残すように、p型半導体層25のパターニングを行ってもよい。
【0058】
次に、図3Gに示すように、半導体基板11の両面側をクリーニングする(第1洗浄工程)。第1洗浄工程では、例えばオゾン処理を行った後、フッ酸処理(フッ酸、またはフッ酸と他の種類の酸との混合物での処理)が行われる。
このとき、第1酸化処理層25Oおよび第2酸化処理層13Oは、フッ酸処理によって除去される。なお、裏面側の第1酸化処理層25Oでは、全部が除去される必要がある。一方、受光面側の第2酸化処理層13Oでは、全部が除去されてもよいし、一部が除去されて、残りが後述する第2半導体層形成工程において用いられる薬液によって除去されてもよい。
また、酸化処理層11Oは、フッ酸処理によって除去される。なお、酸化処理層11Oでは、全部が除去される必要がある。
【0059】
次に、図3Hに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、真性半導体層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Zを順に積層(製膜)する(第2半導体層材料膜形成工程)。
【0060】
次に、図3Iに示すように、フォトリソグラフィ法を用いて、半導体基板11の裏面側において、第1領域7における真性半導体層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Zを除去することにより、第2領域8に、パターン化された真性半導体層33およびn型半導体層35を形成する(第2半導体層形成工程)。
【0061】
具体的には、上述した第1半導体層形成工程と同様に、フォトレジスト90をマスクとしてアルカリ溶液を用いてエッチングが行われ、その後、有機溶剤を用いてフォトレジスト90を剥離する。
このとき、上述したように、受光面側の第2酸化処理層13Oの残りが、フッ酸処理や、オゾン処理後のフッ酸処理(すなわち、第2半導体層形成工程後の第2洗浄工程)によって除去されてもよい。
なお、n型半導体層35のエッチングのためのアルカリ溶液のアルカリ濃度は、上述した第1半導体層形成工程におけるフォトレジスト90の剥離のためのアルカリ溶液のアルカリ濃度よりも低い(例えば、n型半導体層のエッチングのためのアルカリ溶液のアルカリ濃度は、フォトレジストの剥離のためのアルカリ溶液のアルカリ濃度の半分以下である。)。そのため、n型半導体層35のエッチングのためのアルカリ溶液から、真性半導体層13を保護する必要はない。
【0062】
なお、第1半導体層形成工程において、半導体基板11の裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23Zの全部が残る場合、第2半導体層材料膜形成工程および第2半導体層形成工程では、真性半導体層材料膜の積層(製膜)を行わず、n型半導体層35のパターニングを行えばよい。また、第1半導体層形成工程において、半導体基板11の裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23Zの一部が残る場合、第2半導体層材料膜形成工程および第2半導体層形成工程では、除去された分だけ真性半導体層材料膜の積層(製膜)を行い、真性半導体層およびn型半導体層35のパターニングを行えばよい。
【0063】
次に、図3Jに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、光学調整層15を積層(製膜)する(光学調整層形成工程)。
【0064】
次に、図3Kに示すように、例えばスパッタリング法等のPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、透明電極層材料膜28Zを積層(製膜)する(電極層形成工程)。
【0065】
次に、図3Lに示すように、例えばエッチングペーストを用いたエッチング法を用いて、透明電極層材料膜28Zの一部を除去することにより、パターン化された透明電極層28,38を形成する(電極層形成工程)。透明電極層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば塩酸または塩化第二鉄水溶液が用いられる。
【0066】
次に、例えば印刷法または塗布法を用いて、透明電極層28上に金属電極層29を形成し、透明電極層38上に金属電極層39を形成することにより、第1電極層27および第2電極層37を形成する。
以上の工程により、図2Aに示す本実施形態の裏面電極型の太陽電池1が得られる。
【0067】
以上説明したように、第1実施形態の太陽電池の製造方法によれば、既存のシリコン層を酸化させてシリコン酸化膜、すなわち第1酸化処理層25Oおよび第2酸化処理層13Oを形成する。これにより、第1酸化処理層25Oによって、第1パターニングにおけるフォトレジストを剥離するアルカリ溶液から、裏面側のp型半導体層25を保護することができ、第2酸化処理層13Oによって、第1パターニングにおけるフォトレジストを剥離するアルカリ溶液から、受光面側の真性半導体層13を保護することができる。更に、既存のシリコン層を酸化させたシリコン酸化膜は、ピンホールがない緻密な膜であるので、ピンホールを介したアルカリ溶液によるp型半導体層25および真性半導体層13の溶解が抑制される。そのため、p型半導体層25によるキャリアの取り出し効率の低下が抑制され、また真性半導体層13によるキャリアのライフタイムの低下が抑制され、その結果、太陽電池の性能低下が抑制される。
また、フォトレジストを剥離する溶液として安価なアルカリ溶液を使用することができるので、太陽電池の低コスト化が可能である。
【0068】
また、第1酸化処理層25Oおよび第2酸化処理層13Oは、第1洗浄工程または第2半導体層形成工程において一部が除去され、第2半導体層形成工程後には全てが除去されている。このように、既存の製造プロセスの途中で第1酸化処理層25Oおよび第2酸化処理層13Oが除去されるので、極力プロセスを増やすことなく、太陽電池の性能低下が抑制される。
【0069】
また、第1実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1パターニングにおいて露出する半導体基板11の表面に酸化処理層11Oを形成する。これにより、酸化処理層11Oによって、第1パターニングにおけるフォトレジストを剥離するアルカリ溶液から、露出する半導体基板11を保護することができる。そのため、半導体基板11のキャリアのライフタイムの低下が抑制され、その結果、太陽電池の性能低下が抑制される。
また、上述したように、フォトレジストを剥離する溶液として安価なアルカリ溶液を使用することができるので、太陽電池の低コスト化が可能である。
【0070】
また、酸化処理層11Oは、第1洗浄工程において除去される。このように、半導体基板11の表面の一部が除去されるので、半導体基板11の表面に付着した異物等の除去効果が高く、第1洗浄工程における半導体基板11の表面の洗浄効果を高めることができる。これにより、例えば半導体基板と半導体層との直列抵抗の向上効果が得られる。
また、上述したように、既存の製造プロセスの途中で酸化処理層11Oが除去されるので、極力プロセスを増やすことなく、太陽電池の性能低下が抑制される。
【0071】
(第2実施形態に係る太陽電池の製造方法)
以下、図5A図5Lを参照して、図1Bおよび図2Bに示す本実施形態に係る太陽電池1の製造方法(第2実施形態に係る太陽電池の製造方法)について説明する。図5Aは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程および第3半導体層形成工程を示す図であり、図5Bは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図である。また、図5Cは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるリフトオフ層形成工程および絶縁層形成工程を示す図であり、図5Dは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図であり、図5Eは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。また、図5Fは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図であり、図5Gは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト除去工程(マスク除去工程)を示す図であり、図5Hは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1洗浄工程を示す図である。また、図5Iは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図であり、図5Jは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。また、図5Kは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図であり、図5Lおよび図5Mは、第2実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
【0072】
まず、図5Aに示すように、上述同様に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、真性半導体層材料膜23Zおよびp型半導体層材料膜25Zを順に積層(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程)。
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、真性半導体層13を積層(製膜)する(第3半導体層形成工程)。なお、真性半導体層材料膜23Zおよびp型半導体層材料膜25Zと、真性半導体層13との製膜の順序は限定されない。
受光面側の真性半導体層13は、後の第2半導体層材料膜形成工程において製膜されてもよい。この場合、この段階で製膜された受光面側の真性半導体層は、後の酸化処理層形成工程において表面が酸化される処理を施されず、後の第1半導体層形成工程において除去されてもよい。或いは、この段階で受光面側に真性半導体層が形成されなくてもよい、すなわちこの段階で真性半導体層形成工程がなくてもよい。
【0073】
次に、図5Bに示すように、上述同様に、p型半導体層材料膜25Zの表面を酸化処理して、p型半導体層材料膜25Zの表面に第1酸化処理層25Oを形成する(酸化処理層形成工程)。また、真性半導体層13の表面を酸化処理して、真性半導体層13の表面に第2酸化処理層13Oを形成する(酸化処理層形成工程)。なお、上述したように酸化処理層形成工程の前に受光面側に真性半導体層13が形成されない場合、半導体基板11の受光面側の表面が酸化処理されて、半導体基板11の受光面側の表面に第2酸化処理層が形成されてもよい。
【0074】
次に、図5Cに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、具体的には第1酸化処理層25O上の全面に、リフトオフ層(犠牲層)41を積層(製膜)する(リフトオフ層形成工程)。
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、具体的には第2酸化処理層13O上の全面に、絶縁層43を積層(製膜)する(絶縁層形成工程)。
リフトオフ層41および絶縁層43は、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の材料で形成される。これにより、リフトオフ層41および絶縁層43は、アルカリ溶液に対して耐性を有し、フッ酸処理(フッ酸、またはフッ酸と他の種類の酸との混合物での処理)で容易に除去される。リフトオフ層41および絶縁層43の膜厚は、例えば1nm以上1μm以下であると好ましい。
【0075】
次に、図5D図5Gに示すように、フォトリソグラフィ法を用いて、半導体基板11の裏面側において、第2領域8における真性半導体層材料膜23Z、p型半導体層材料膜25Z、第1酸化処理層25Oおよびリフトオフ層41を除去することにより、第1領域7に、パターン化された真性半導体層23、p型半導体層25、第1酸化処理層25Oおよびリフトオフ層41を形成する(第1半導体層形成工程)。
【0076】
具体的には、図5Dに示すように、半導体基板11の両面側の全面にフォトレジスト90を塗布した後に、裏面側において第2領域8におけるフォトレジスト90を露光および現像して除去する(レジスト形成工程:マスク形成工程)。その後、図5Eに示すように、フォトレジスト90をマスクとして、第2領域8における真性半導体層材料膜23Z、p型半導体層材料膜25Z、第1酸化処理層25Oおよびリフトオフ層41をエッチングすることにより、真性半導体層23、p型半導体層25、第1酸化処理層25Oおよびリフトオフ層41を形成する。真性半導体層材料膜23Z、p型半導体層材料膜25Z、第1酸化処理層25Oおよびリフトオフ層41に対するエッチング溶液としては、例えばオゾンをフッ酸に溶解させた混合液、またはフッ酸と硝酸との混合液等の酸性溶液が用いられる。
【0077】
このとき、図5Fに示すように、上述同様に、フォトレジスト90から露出した第2領域8における半導体基板11の表面を酸化処理して、露出した半導体基板11の表面に酸化処理層11Oを形成してもよい(酸化処理層形成工程)。
【0078】
その後、図5Gに示すように、フォトレジスト90を除去する。フォトレジスト90に対するエッチング溶液としては、安価なアルカリ溶液が用いられる。
このとき、第1酸化処理層25Oは、フォトレジスト90を剥離するアルカリ溶液からp型半導体層材料膜25Zを保護し、第2酸化処理層13Oは、フォトレジスト90を剥離するアルカリ溶液から真性半導体層13を保護する。また、例えリフトオフ層41および絶縁層43にピンホールがあったとしても、第1酸化処理層25Oおよび第2酸化処理層13Oは、ピンホールがない緻密な膜であるので、アルカリ溶液が酸化処理層のピンホールを介してp型半導体層材料膜25Zおよび真性半導体層13が溶解してしまうことが抑制される。
また、酸化処理層11Oは、フォトレジスト90を剥離するアルカリ溶液から、露出した半導体基板11を保護する。
【0079】
なお、第1半導体層形成工程では、半導体基板11の裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23Zの一部または全部を残すように、p型半導体層25のパターニングを行ってもよい。
【0080】
次に、図5Hに示すように、半導体基板11の両面側をクリーニングする(第1洗浄工程)。第1洗浄工程では、例えばオゾン処理を行った後、フッ酸処理(フッ酸、またはフッ酸と他の種類の酸との混合物での処理)が行われる。
このとき、酸化処理層11Oは、フッ酸処理によって除去される。なお、酸化処理層11Oでは、全部が除去される必要がある。
【0081】
次に、図5Iに示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、具体的には第1領域7におけるリフトオフ層41上および第2領域8に、真性半導体層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Zを順に積層(製膜)する(第2半導体層材料膜形成工程)。
【0082】
次に、図5Jに示すように、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法を利用して、半導体基板11の裏面側において、第1領域7における真性半導体層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Zを除去し、第2領域8に、パターン化された真性半導体層33およびn型半導体層35を形成する(第2半導体層形成工程)。
【0083】
具体的には、リフトオフ層41を除去することにより、リフトオフ層41上の真性半導体層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Zを除去し、真性半導体層33およびn型半導体層35を形成する。リフトオフ層41の除去溶液としては、例えばフッ酸等の酸性溶液が用いられる。
このとき、絶縁層43も除去される。
また、このとき、第1酸化処理層25Oおよび第2酸化処理層13Oは、フッ酸処理によって除去される。なお、受光面側の第2酸化処理層13Oは、上述した第1洗浄工程において絶縁層43とともに除去されてもよい。
【0084】
なお、第1半導体層形成工程において、半導体基板11の裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23Zの全部が残る場合、第2半導体層材料膜形成工程および第2半導体層形成工程では、真性半導体層材料膜の積層(製膜)を行わず、n型半導体層35のパターニングを行えばよい。また、第1半導体層形成工程において、半導体基板11の裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23Zの一部が残る場合、第2半導体層材料膜形成工程および第2半導体層形成工程では、除去された分だけ真性半導体層材料膜の積層(製膜)を行い、真性半導体層およびn型半導体層35のパターニングを行えばよい。
【0085】
次に、図5Kに示すように、上述同様に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、光学調整層15を積層(製膜)する(光学調整層形成工程)。
【0086】
次に、図5Lに示すように、上述同様に、例えばスパッタリング法等のPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、透明電極層材料膜28Zを積層(製膜)する(電極層形成工程)。
【0087】
次に、図5Mに示すように、上述同様に、例えばエッチングペーストを用いたエッチング法を用いて、透明電極層材料膜28Zの一部を除去することにより、パターン化された透明電極層28,38を形成する(電極層形成工程)。透明電極層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば塩酸または塩化第二鉄水溶液が用いられる。
【0088】
次に、例えば印刷法または塗布法を用いて、透明電極層28上に金属電極層29を形成し、透明電極層38上に金属電極層39を形成することにより、第1電極層27および第2電極層37を形成する。
以上の工程により、図2Bに示す本実施形態の裏面電極型の太陽電池1が得られる。
【0089】
以上説明したように、第2実施形態の太陽電池の製造方法でも、上述した第1実施形態の太陽電池の製造方法と同様の利点を得ることができる。
【0090】
更に、第2実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第2半導体層形成工程において、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法を利用してn型半導体層35をパターニングするので、太陽電池の製造プロセスの簡略化、短縮化が可能となる。これにより、太陽電池の低コスト化、生産性向上が達成される。
【0091】
また、第2実施形態の太陽電池の製造方法によれば、受光面側において、真性半導体層13上に絶縁層43が形成されるので、第1半導体層形成工程において、フォトレジストを除去する際、絶縁層43が、フォトレジストを除去する溶液、例えばアルカリ溶液から真性半導体層13を保護する。これにより、真性半導体層13の溶解が抑制され、太陽電池の性能低下が抑制される。
なお、絶縁層43は、第2半導体層形成工程において、リフトオフ層41を除去する際に、リフトオフ層41を除去する溶液、例えばフッ酸を含む酸性溶液によって自然に除去される。
【0092】
ところで、リフトオフプロセスでは、第1導電型半導体層25に接するリフトオフ層41の一部が、フッ酸等の酸性溶液に溶解し難いことがある。この点に関し、第2実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1導電型半導体層25の表面に形成された第1酸化処理層25Oがフッ酸等の酸性溶液で容易に除去されるので、この第1酸化処理層25Oに接するリフトオフ層41の一部もフッ酸等の酸性溶液で容易に除去される。
また、第1導電型半導体層25の表面(第1酸化処理層25O)が除去されるので、第1導電型半導体層25の表面の洗浄効果が得られる。これにより、第1導電型半導体層25と透明電極層28との直列抵抗Rsの向上効果が得られる。
【0093】
(第3実施形態に係る太陽電池の製造方法)
本願発明者は、第1パターニングにおいて、パターン印刷レジストを用いることを考案している。パターン印刷法を用いたパターン印刷レジストによれば、従来のスピンコート法を用いたフォトレジスト(フォトリソグラフィ法)におけるレジストの露光および現像が不要となる(製造プロセスの簡略化)。
【0094】
(第2の課題)
第1半導体層形成工程において、真性半導体層23、p型半導体層25およびリフトオフ層41のパターニングの際に、パターン印刷レジスト90に覆われた第1領域7におけるリフトオフ層41が剥離してしまうことがある。
これは、従来のスピンコート法を用いたフォトレジスト(フォトリソグラフィ法)に代えて、レジストの露光および現像が不要な(製造プロセスの簡略化が可能な)、パターン印刷法を用いたパターン印刷レジストを使用したことによるものと予想される。
パターン印刷法によるパターン印刷レジストの組成は、スピンコート法によるフォトレジストの組成と比較して粗いと予想される。これにより、エッチング液の含有成分であるフッ酸がパターン印刷レジスト90を通過して、リフトオフ層41に染み込み、リフトオフ層41が剥離することが予想される。
リフトオフ層41が剥離してしまうと、第2半導体層形成工程におけるリフトオフプロセスが正常に行われなくなってしまう。
【0095】
(第3の課題)
同様に、第1半導体層形成工程において、真性半導体層23、p型半導体層25およびリフトオフ層41のパターニングの際に、パターン印刷レジスト90に覆われた受光面側の絶縁層43が剥離してしまうことが予想される。
【0096】
第2の課題に関し、本願発明者らは、p型半導体層のエッチング溶液からリフトオフ層を保護し、パターン印刷レジストを除去するアルカリ溶液で自然に除去される保護層を、裏面側のリフトオフ層上に形成することを考案する。
また、第3の課題に関し、本願発明者らは、p型半導体層のエッチング溶液から絶縁層を保護する保護層を、受光面側の絶縁層上に形成することを考案する。
【0097】
以下、図6A図6Lを参照して、図1Bおよび図2Bに示す本実施形態に係る太陽電池1の製造方法(第3実施形態に係る太陽電池の製造方法)について説明する。図6Aは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程および第3半導体層形成工程を示す図であり、図6Bは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図である。また、図6Cは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるリフトオフ層形成工程、第1保護層形成工程、絶縁層形成工程および第2保護層形成工程を示す図であり、図6Dは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図であり、図6Eは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。また、図6Fは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図であり、図6Gは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト除去工程(マスク除去工程)を示す図であり、図6Hは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1洗浄工程を示す図である。また、図6Iは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図であり、図6Jは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。また、図6Kは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における光学調整層形成工程を示す図であり、図6Lおよび図6Mは、第3実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
【0098】
まず、図6Aに示すように、上述同様に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、真性半導体層材料膜23Zおよびp型半導体層材料膜25Zを順に積層(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程)。
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、真性半導体層13を積層(製膜)する(第3半導体層形成工程)。なお、真性半導体層材料膜23Zおよびp型半導体層材料膜25Zと、真性半導体層13との製膜の順序は限定されない。
受光面側の真性半導体層13は、後の第2半導体層材料膜形成工程において製膜されてもよい。この場合、この段階で製膜された受光面側の真性半導体層は、後の酸化処理層形成工程において表面が酸化される処理を施されず、後の第1半導体層形成工程において除去されてもよい。或いは、この段階で受光面側に真性半導体層が形成されなくてもよい、すなわちこの段階で真性半導体層形成工程がなくてもよい。
【0099】
次に、図6Bに示すように、上述同様に、p型半導体層材料膜25Zの表面を酸化処理して、p型半導体層材料膜25Zの表面に第1酸化処理層25Oを形成する(酸化処理層形成工程)。また、真性半導体層13の表面を酸化処理して、真性半導体層13の表面に第2酸化処理層13Oを形成する(酸化処理層形成工程)。なお、上述したように酸化処理層形成工程の前に受光面側に真性半導体層13が形成されない場合、半導体基板11の受光面側の表面が酸化処理されて、半導体基板11の受光面側の表面に第2酸化処理層が形成されてもよい。
【0100】
次に、図6Cに示すように、上述同様に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、具体的には第1酸化処理層25O上の全面に、リフトオフ層(犠牲層)41を積層(製膜)する(リフトオフ層形成工程)。
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、具体的には第2酸化処理層13O上の全面に、絶縁層43を積層(製膜)する(絶縁層形成工程)。
【0101】
次に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、具体的にはリフトオフ層41上の全面に、リフトオフ層41を保護する第1保護層51を積層(製膜)する(第1保護層形成工程)。
また、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、具体的には絶縁層43上の全面に、絶縁層43を保護する第2保護層53を積層(製膜)する(第2保護層形成工程)。
第1保護層51および第2保護層53は、シリコンを主成分とする材料で形成される。これにより、第1保護層51および第2保護層53は、酸処理、例えばフッ酸処理(フッ酸、またはフッ酸と他の種類の酸との混合物での処理)に対して耐性を有し、アルカリ溶液で容易に除去される。第1保護層51および第2保護層53の膜厚は、例えば1nm以上50nm以下であると好ましい。
【0102】
次に、図6D図6Gに示すように、パターン印刷レジストを用いて、半導体基板11の裏面側において、第2領域8における第1保護層51、リフトオフ層41、第1酸化処理層25O、p型半導体層材料膜25Zおよび真性半導体層材料膜23Zを除去することにより、第1領域7に、パターン化された真性半導体層23、p型半導体層25、第1酸化処理層25O、リフトオフ層41および第1保護層51を形成する(第1半導体層形成工程)。
【0103】
具体的には、図6Dに示すように、半導体基板11の裏面側の第1領域7、および半導体基板11の受光面側の全面に、パターン印刷法を用いてパターン印刷レジスト90を形成する(レジスト形成工程:マスク形成工程)。パターン印刷レジストの膜厚は、例えば1μm以上50μm以下である。その後、図6Eに示すように、パターン印刷レジスト90をマスクとして、第2領域8における第1保護層51、リフトオフ層41、第1酸化処理層25O、第1導電型半導体層材料膜25Zおよび真性半導体層材料膜23Zをエッチングすることにより、真性半導体層23、p型半導体層25、第1酸化処理層25O、リフトオフ層41および第1保護層51を形成する。第1保護層51、リフトオフ層41、第1酸化処理層25O、第1導電型半導体層材料膜25Zおよび真性半導体層材料膜23Zに対するエッチング溶液としては、例えばオゾンをフッ酸に溶解させた混合液、またはフッ酸と硝酸との混合液等の酸性溶液が用いられる。
【0104】
このとき、第1保護層51は、パターン印刷レジスト90を通過するエッチング溶液からリフトオフ層41を保護する。ここで、リフトオフ層41を保護するとは、パターン印刷レジスト90を形成した第1領域7のリフトオフ層41を第1半導体層形成工程完了時に残存させるよう、リフトオフ層41上に形成した第1保護層51により、リフトオフ層41とエッチング溶液とが接触する時間や面積を抑制することを意味する。
【0105】
高いパターン精度を実現することや、パターン印刷レジストの使用量を削減する観点から、第1半導体層形成工程完了時に残存させるリフトオフ層41の面積は、パターン印刷レジスト90を形成した領域の30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であればさらに好ましい。
第1半導体層形成工程完了時にリフトオフ層41が残存するのであれば、第1保護層51は第1半導体層形成工程完了時に必ずしも残存しなくてもよいが、リフトオフ層41を精度よく残存させるためには、第1半導体層形成工程完了時に第1保護層51が残存していることが好ましい。第1半導体層形成工程完了時に残存させる第1保護層51の面積は、パターン印刷レジスト90を形成した領域の30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であればさらに好ましい。
【0106】
パターン印刷レジスト90を形成した領域と第1半導体層形成工程完了時のリフトオフ層41や第1保護層51が残存した領域の面積は、例えば、パターン印刷レジスト形成後と後述するパターン印刷レジスト剥離後に、同一領域を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡等により観察し、パターン印刷レジスト90を形成した領域と、リフトオフ層41や第1保護層51の領域の面積とをそれぞれ測定することにより求めることができる。
【0107】
また、第1半導体層形成工程完了時に残存したリフトオフ層41の膜厚と、リフトオフ層41形成直後のリフトオフ層41の膜厚との差は小さい方が好ましい。これは、膜厚の減少量が少ないほど、リフトオフ層41の形成膜厚を減らし得るからである。具体的には、第1半導体層形成工程完了時に残存したリフトオフ層41の膜厚は、リフトオフ層41形成直後の膜厚の20%以上であることが好ましく、50%以上であることより好ましく、80%以上であればさらに好ましい。
【0108】
第1半導体層形成工程完了時に残存したリフトオフ層41の膜厚と、リフトオフ層41形成直後のリフトオフ層41や第1保護層51の膜厚との比率は、例えば、次のようにして求めることができる。同じ膜厚になるように形成したリフトオフ層41を有する工程仕掛品を2枚準備する。一方の工程仕掛品のリフトオフ層41の膜厚をリフトオフ層41と第1保護層51の形成直後に測定する。もう一方の工程仕掛品に対し、第1半導体層形成工程を実施し、この工程完了後にリフトオフ層41と第1保護層51の膜厚を測定する。2つの工程仕掛品の膜厚を比較することで膜厚の比率を算出することができる。なお、リフトオフ層41や第1保護層51の膜厚は、工程仕掛品の断面を走査型顕微鏡等で観察することで測定することができる。また、リフトオフ層41や第1保護層51の膜厚に分布がある場合は、一つの工程仕掛品に対し、10か所程度の場所でリフトオフ層41や第1保護層51の膜厚を測定し、平均値を求めればよい。
【0109】
ここで一例を挙げて考察すると、エッチング液としてフッ酸(HF)と硝酸(HNO)を用いる場合、フッ酸の含有量が少ないとパターン印刷レジスト90をエッチング液が通過しても、第1保護層51を適切な厚みとすることで、エッチング溶液からリフトオフ層41を保護すると考えられる。
また、エッチング液としてオゾンをフッ酸に溶解させた混合液を用いると、パターン印刷レジスト90に覆われていない第1保護層51を溶解させることができる。具体的には、オゾン(O)によって第1保護層51の表面が酸化してSiOとなり、フッ酸(HF)によってSiOが溶ける。これを繰り返すことにより、第1保護層51が溶解する。
一方、パターン印刷レジスト90に覆われる第1保護層51では、オゾンがパターン印刷レジスト90を通過する際に失活し、第1保護層51の酸化が生じない。これにより、パターン印刷レジスト90に覆われる第1保護層51は、パターン印刷レジスト90をフッ酸(HF)が通過しても、溶解しないものと考えられる。
【0110】
同様に、第2保護層53は、パターン印刷レジスト90を通過するエッチング溶液から絶縁層43を保護する。
【0111】
ここで、図6Fに示すように、上述同様に、パターン印刷レジスト90から露出した第2領域8における半導体基板11の表面を酸化処理して、露出した半導体基板11の表面に酸化処理層11Oを形成してもよい(酸化処理層形成工程)。
【0112】
その後、図6Gに示すように、パターン印刷レジスト90を除去する。パターン印刷レジスト90に対するエッチング溶液としては、安価なアルカリ溶液が用いられる。
このとき、アルカリ溶液によって、裏面側の第1保護層51および受光面側の第2保護層53が除去される。
このとき、第1酸化処理層25Oは、フォトレジスト90を剥離するアルカリ溶液からp型半導体層材料膜25Zを保護し、第2酸化処理層13Oは、フォトレジスト90を剥離するアルカリ溶液から真性半導体層13を保護する。また、例えリフトオフ層41および絶縁層43にピンホールがあったとしても、第1酸化処理層25Oおよび第2酸化処理層13Oは、ピンホールがない緻密な膜であるので、アルカリ溶液が酸化処理層のピンホールを介してp型半導体層材料膜25Zおよび真性半導体層13が溶解してしまうことが抑制される。
また、酸化処理層11Oは、フォトレジスト90を剥離するアルカリ溶液から、露出した半導体基板11を保護する。
【0113】
なお、第1半導体層形成工程では、半導体基板11の裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23Zの一部または全部を残すように、p型半導体層25のパターニングを行ってもよい。
【0114】
次に、図6Hに示すように、半導体基板11の両面側をクリーニングする(第1洗浄工程)。第1洗浄工程では、例えばオゾン処理を行った後、フッ酸処理(フッ酸、またはフッ酸と他の種類の酸との混合物での処理)が行われる。
このとき、酸化処理層11Oは、フッ酸処理によって除去される。なお、酸化処理層11Oでは、全部が除去される必要がある。
【0115】
次に、図6Iに示すように、上述同様に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、具体的には第1領域7におけるリフトオフ層41上および第2領域8に、真性半導体層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Zを順に積層(製膜)する(第2半導体層材料膜形成工程)。
【0116】
次に、図6Jに示すように、上述同様に、リフトオフ層(犠牲層)を用いたリフトオフ法を利用して、半導体基板11の裏面側において、第1領域7における真性半導体層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Zを除去し、第2領域8に、パターン化された真性半導体層33およびn型半導体層35を形成する(第2半導体層形成工程)。
【0117】
具体的には、リフトオフ層41を除去することにより、リフトオフ層41上の真性半導体層材料膜33Zおよびn型半導体層材料膜35Zを除去し、真性半導体層33およびn型半導体層35を形成する。リフトオフ層41の除去溶液としては、例えばフッ酸等の酸性溶液が用いられる。
このとき、絶縁層43も除去される。
また、このとき、第1酸化処理層25Oおよび第2酸化処理層13Oは、フッ酸処理によって除去される。なお、受光面側の第2酸化処理層13Oは、上述した第1洗浄工程において絶縁層43とともに除去されてもよい。
【0118】
なお、第1半導体層形成工程において、半導体基板11の裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23Zの全部が残る場合、第2半導体層材料膜形成工程および第2半導体層形成工程では、真性半導体層材料膜の積層(製膜)を行わず、n型半導体層35のパターニングを行えばよい。また、第1半導体層形成工程において、半導体基板11の裏面側の第2領域8における真性半導体層材料膜23Zの一部が残る場合、第2半導体層材料膜形成工程および第2半導体層形成工程では、除去された分だけ真性半導体層材料膜の積層(製膜)を行い、真性半導体層およびn型半導体層35のパターニングを行えばよい。
【0119】
次に、図6Kに示すように、上述同様に、例えばCVD法を用いて、半導体基板11の受光面側の全面に、光学調整層15を積層(製膜)する(光学調整層形成工程)。
【0120】
次に、図6Lに示すように、上述同様に、例えばスパッタリング法等のPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、透明電極層材料膜28Zを積層(製膜)する(電極層形成工程)。
【0121】
次に、図6Mに示すように、上述同様に、例えばエッチングペーストを用いたエッチング法を用いて、透明電極層材料膜28Zの一部を除去することにより、パターン化された透明電極層28,38を形成する(電極層形成工程)。透明電極層材料膜に対するエッチング溶液としては、例えば塩酸または塩化第二鉄水溶液が用いられる。
【0122】
次に、例えば印刷法または塗布法を用いて、透明電極層28上に金属電極層29を形成し、透明電極層38上に金属電極層39を形成することにより、第1電極層27および第2電極層37を形成する。
以上の工程により、図2Bに示す本実施形態の裏面電極型の太陽電池1が得られる。
【0123】
以上説明したように、第3実施形態の太陽電池の製造方法でも、上述した第1実施形態の太陽電池の製造方法および第2実施形態の太陽電池の製造方法と同様の利点を得ることができる。
【0124】
更に、第3実施形態の太陽電池の製造方法によれば、第1半導体層形成工程において、パターン印刷法によるパターン印刷レジストを用いてp型半導体層25をパターニングするので、スピンコート法によるフォトレジスト(フォトリソグラフィ法)を用いた場合と比較して、レジストの露光および現像の工程を削減することができ、太陽電池の製造プロセスの簡略化、短縮化が可能となる。
また、第1半導体層形成工程において、パターン印刷レジストを除去する溶液として安価なアルカリ溶液を採用する。
これらにより、太陽電池の低コスト化、生産性向上が達成される。
【0125】
また、第3実施形態の太陽電池の製造方法によれば、裏面側において、リフトオフ層41上に第1保護層51を形成するので、第1半導体層形成工程において、p型半導体層25をパターニングする際、第1保護層51が、パターン印刷レジストを通過したエッチング溶液、例えばオゾンをフッ酸に溶解させた混合液から、リフトオフ層41を保護する。これにより、p型半導体層25をパターニングする際に、リフトオフ層41の剥離が抑制される。
なお、第1保護層51は、パターン印刷レジストを除去する際に、パターン印刷レジストを除去する溶液、例えばアルカリ溶液によって自然に除去される。
【0126】
また、第3実施形態の太陽電池の製造方法によれば、受光面側において、絶縁層43上に第2保護層53が形成されるので、第1半導体層形成工程において、p型半導体層25をパターニングする際、第2保護層53が、パターン印刷レジストを通過したエッチング溶液、例えばオゾンをフッ酸に溶解させた混合液から、絶縁層43を保護する。これにより、p型半導体層をパターニングする際に、絶縁層43の剥離が抑制される。
なお、第2保護層53は、パターン印刷レジストを除去する際に、パターン印刷レジストを除去する溶液、例えばアルカリ溶液によって自然に除去される。
【0127】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
(変形例1)
上述した従来の太陽電池の製造方法において、コストダウンの観点から、透明電極層28X,38Xのパターニングのためのレジストを剥離する溶液としてアルカリ溶液を使用してもよい(図7Hおよび図7I参照)。この場合、上述した第1の課題と同様の課題が生じる。
【0128】
すなわち、透明電極層28X,38Xのパターニングにおいて、レジストを剥離するアルカリ溶液が、透明電極層28X,38Xの間の境界において露出するp型半導体層25Xおよびn型半導体層35Xを溶解してしまうことがある。そのため、キャリアの取り出し効率が低下し、太陽電池の性能が低下してしまう。
【0129】
この課題に関し、本願発明者らは、太陽電池1の製造プロセス中にp型半導体層25およびn型半導体層35を保護する保護層を、透明電極層28,38の間の境界において露出するp型半導体層25およびn型半導体層35上に形成することを考案する。
【0130】
図9Aは、第1実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程を示す図であり、図9Bは、第1実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図であり、図9Cは、第1実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における透明電極層形成工程を示す図である。また、図9Dは、第1実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図であり、図9Eは、第1実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図である。
【0131】
まず、図9Aに示すように、上述同様に、例えばスパッタリング法等のPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、すなわち第1領域7および第2領域8に、p型半導体層25およびn型半導体層35に跨って透明電極層材料膜28Zを積層(製膜)する(透明電極層材料膜形成工程)。
【0132】
次に、図9Bに示すように、半導体基板11の裏面側の第1領域7および第2領域8に、レジスト90を形成する(レジスト形成工程:マスク形成工程)。
【0133】
次に、図9Cに示すように、レジスト90をマスクとして、第1領域7と第2領域8との境界における透明電極層材料膜28Zを除去することによって、第1領域7に、パターン化された透明電極層28を形成し、第2領域8に、パターン化された透明電極層38を形成する(透明電極層形成工程)。
【0134】
次に、図9Dに示すように、透明電極層28と透明電極層38との間において露出したp型半導体層25の表面およびn型半導体層35の表面を酸化処理して、露出したp型半導体層25およびn型半導体層35の表面に酸化処理層26Oを形成する(酸化処理層形成工程)。
【0135】
次に、図9Eに示すように、レジスト90を除去する(レジスト除去工程:マスク除去工程)。このとき、酸化処理層26Oは、レジスト90を除去するアルカリ溶液から、透明電極層28と透明電極層38との間におけるp型半導体層25およびn型半導体層35を保護する。なお、酸化処理層26Oは、除去されず残ってもよい。
【0136】
この変形例1の太陽電池の製造方法によれば、透明電極層28,38のパターニングにおいて露出するp型半導体層25の表面およびn型半導体層35の表面に酸化処理層26Oを形成する。これにより、酸化処理層26Oによって、透明電極層28,38のパターニングにおけるレジスト90を剥離するアルカリ溶液から、透明電極層28,38の間において露出するp型半導体層25およびn型半導体層35を保護することができる。そのため、アルカリ溶液によるp型半導体層25およびn型半導体層35の溶解が抑制され、p型半導体層25およびn型半導体層35によるキャリアの取り出し効率の低下が抑制され、太陽電池の性能低下が抑制される。
また、上述したように、レジストを剥離する溶液として安価なアルカリ溶液を使用することができるので、太陽電池の低コスト化が可能である。 なお、透明電極層28,38の間に形成された酸化処理層26Oは除去する必要がないので、極力プロセスを増やすことなく、太陽電池の性能低下が抑制される。
【0137】
なお、この変形例1の太陽電池の製造方法によれば、図8Aに示すように、透明電極層28,38の間におけるp型半導体層25およびn型半導体層35の表面に、酸化処理層26Oが形成された太陽電池1が得られる。
【0138】
(変形例2)
図10Aは、第2実施形態または第3実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における透明電極層材料膜形成工程を示す図であり、図10Bは、第2実施形態または第3実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図であり、図10Cは、第2実施形態または第3実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における透明電極層形成工程を示す図である。また、図10Dは、第2実施形態または第3実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法における酸化処理層形成工程を示す図であり、図10Eは、第2実施形態または第3実施形態の変形例に係る太陽電池の製造方法におけるレジスト形成工程(マスク形成工程)を示す図である。
【0139】
まず、図10Aに示すように、上述同様に、例えばスパッタリング法等のPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、すなわち第1領域7および第2領域8に、p型半導体層25およびn型半導体層35に跨って透明電極層材料膜28Zを積層(製膜)する(透明電極層材料膜形成工程)。
【0140】
次に、図10Bに示すように、半導体基板11の裏面側の第1領域7および第2領域8に、レジスト90を形成する(レジスト形成工程:マスク形成工程)。
【0141】
次に、図10Cに示すように、レジスト90をマスクとして、第1領域7と第2領域8との境界における透明電極層材料膜28Zを除去することによって、第1領域7に、パターン化された透明電極層28を形成し、第2領域8に、パターン化された透明電極層38を形成する(透明電極層形成工程)。
【0142】
次に、図10Dに示すように、透明電極層28と透明電極層38との間において露出したp型半導体層25の表面およびn型半導体層35の表面を酸化処理して、露出したp型半導体層25およびn型半導体層35の表面に酸化処理層26Oを形成する(酸化処理層形成工程)。
【0143】
次に、図10Eに示すように、レジスト90を除去する(レジスト除去工程:マスク除去工程)。このとき、酸化処理層26Oは、レジスト90を除去するアルカリ溶液から、透明電極層28と透明電極層38との間におけるp型半導体層25およびn型半導体層35を保護する。なお、酸化処理層26Oは、除去されず残ってもよい。
【0144】
この変形例2の太陽電池の製造方法でも、透明電極層28,38のパターニングにおいて露出するp型半導体層25の表面およびn型半導体層35の表面に酸化処理層26Oを形成する。これにより、酸化処理層26Oによって、透明電極層28,38のパターニングにおけるレジスト90を剥離するアルカリ溶液から、透明電極層28,38の間において露出するp型半導体層25およびn型半導体層35を保護することができる。そのため、アルカリ溶液によるp型半導体層25およびn型半導体層35の溶解が抑制され、p型半導体層25およびn型半導体層35によるキャリアの取り出し効率の低下が抑制され、太陽電池の性能低下が抑制される。
また、上述したように、レジストを剥離する溶液として安価なアルカリ溶液を使用することができるので、太陽電池の低コスト化が可能である。 なお、透明電極層28,38の間に形成された酸化処理層26Oは除去する必要がないので、極力プロセスを増やすことなく、太陽電池の性能低下が抑制される。
【0145】
なお、この変形例2の太陽電池の製造方法によれば、図8Bに示すように、透明電極層28,38の間におけるp型半導体層25およびn型半導体層35の表面に、酸化処理層26Oが形成された太陽電池1が得られる。
【0146】
(その他の変形例)
また、上述した実施形態では、第1半導体層、第2半導体層または透明電極層のパターニングのためのマスクとして、樹脂材料を含むレジストを使用する形態を例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、種々の材料を含むマスクを使用する形態にも適用可能である。例えば、無機物ハードマスクを使用する形態であってもよい。このようなマスクでは、マスク材料製膜後にエッチングによりパターニングする方法に代えて、マスク材料製膜後にレーザによりパターニングする方法がある。或いは、マスク材料製膜時に製膜マスクを用いてマスク材料をパターン製膜する方法がある。このようなマスクを使用する場合であっても、マスクを除去する溶液に安価なアルカリ溶液を使用する形態であれば、本発明が好適に適用可能である。
【0147】
また、上述した実施形態では、
・第1半導体層のパターニング前に、第1半導体層および第3半導体層の表面に酸化処理層を形成する例
・第1半導体層のパターニング後に、露出した半導体基板の表面に酸化処理層を形成する例
・透明電極層のパターニング後に、透明電極層の間の露出した第1半導体層および第2半導体層の表面に酸化処理層を形態する例
について説明した。本発明は、これらのうちいずれか1つの酸化処理層を形成する形態であってもよい。これによれば、パターニングのためのマスクを除去する溶液に安価なアルカリ溶液を使用しても、第1半導体層、第2半導体層、第3半導体層および半導体基板のうちいずれかをアルカリ溶液から保護することができ、太陽電池の性能低下を抑制することができる。なお、本発明は、これらのうち2つ以上の酸化処理層を形成する形態であってもよい。これによれば、パターニングのためのマスクを除去する溶液に安価なアルカリ溶液を使用しても、第1半導体層、第2半導体層、第3半導体層または半導体基板をアルカリ溶液から保護する効果を高めることができ、太陽電池の性能低下をより抑制することができる。
【0148】
また、上述した実施形態では、第1導電型半導体層25をp型半導体層、第2導電型半導体層35をn型半導体層としたが、第1導電型半導体層25をn型半導体層、第2導電型半導体層35をp型半導体層に置き換えてもよい。
【0149】
また、上述した実施形態では、図2Aおよび図2Bに示すようにヘテロ接合型の太陽電池1の製造方法を例示したが、本発明の特徴は、ヘテロ接合型の太陽電池に限らず、ホモ接合型の太陽電池等の種々の太陽電池の製造方法に適用可能である。
【0150】
また、上述した実施形態では、半導体基板11としてn型半導体基板を例示したが、半導体基板11は、結晶シリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型半導体基板であってもよい。
【0151】
また、上述した実施形態では、結晶シリコン基板を有する太陽電池を例示したが、これに限定されない。例えば、太陽電池は、ガリウムヒ素(GaAs)基板を有していてもよい。
【符号の説明】
【0152】
1,1X 太陽電池
7 第1領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
8 第2領域
9 境界領域
11,11X 半導体基板
13,13X 真性半導体層(第3半導体層)
15,15X 光学調整層
23,23X 真性半導体層(第1半導体層)
23Z,23ZX,33Z,33ZX 真性半導体層材料膜
25,25X 第1導電型半導体層(第1半導体層)
25Z,25ZX 第1導電型半導体層材料膜(第1半導体層材料膜)
27,27X 第1電極層
28,28X,38,38X 透明電極層
28Z,28ZX 透明電極層材料膜
29,29X,39,39X 金属電極層
33,33X 真性半導体層(第2半導体層)
35,35X 第2導電型半導体層(第2半導体層)
35Z,35ZX 第2導電型半導体層材料膜(第2半導体層材料膜)
37,37X 第2電極層
41 リフトオフ層
43 絶縁層
51 第1保護層
53 第2保護層
25O 第1酸化処理層
13O 第2酸化処理層
11O,26O 酸化処理層
90,90X レジスト(マスク)
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図5M
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
図6M
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E