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  • 特許-酸素貯蔵材料およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】酸素貯蔵材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/83 20060101AFI20240619BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20240619BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240619BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20240619BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B01J23/83 A ZAB
B01J37/03 B
B01J37/08
B01J37/16
F01N3/10 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020537619
(86)(22)【出願日】2019-01-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 US2019012476
(87)【国際公開番号】W WO2019136340
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】62/614,594
(32)【優先日】2018-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513089291
【氏名又は名称】パシフィック インダストリアル デベロップメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バートン,アナトリー
(72)【発明者】
【氏名】バートン,ミラ
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユンクイ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ラシャペル,ジェフリー
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-511298(JP,A)
【文献】特表2019-529068(JP,A)
【文献】米国特許第6585944(US,B1)
【文献】特開2017-221933(JP,A)
【文献】特表2011-526197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
F01N 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウムの酸化物、セリウムの酸化物、セリウム以外の少なくとも1種の希土類金属の酸化物、少なくとも1種の遷移金属の酸化物からなる酸素貯蔵材料(OSM)であって、
前記OSMの総重量に対して、酸化セリウム含有量が15重量%~35重量%、酸化ジルコニウムの含有量が40重量%~70重量%、酸化セリウム以外の希土類金属の酸化物の含有量が5重量%~10重量%、遷移金属酸化物の含有量が2重量%~8重量%であり、
前記希土類金属は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウムまたはそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記遷移金属は、銅、鉄、ニッケル、コバルト、マンガンまたはそれらの組み合わせからなる群から選択され、
CeO還元性が100%であり、1100℃で4時間のエイジング後に、150~550℃にわたるTPR-Hプロファイルが二峰性で、酸素貯蔵能(OSC)が少なくとも1.5mmol H/gである、酸素貯蔵材料。
【請求項2】
前記希土類金属は、ランタン、イットリウムまたはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の酸素貯蔵材料。
【請求項3】
前記遷移金属は、銅、鉄、またはそれらの組み合わせである、請求項1または2に記載の酸素貯蔵材料。
【請求項4】
1100℃で4時間のエイジング後に、TPR-Hプロファイルが二峰性で低温Tmaxが350~400℃、高温Tmaxが450~550℃にあり、酸素貯蔵能が1.5mmol H/gから最大2.5mmol H/gの範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸素貯蔵材料。
【請求項5】
1100℃で4時間のエイジング後に、TPR-Hプロファイルが二峰性で低温Tmaxが150~250℃、高温Tmaxが350~450℃にあり、酸素貯蔵能が1.5mmol H/gから最大2.5mmol H/gの範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸素貯蔵材料。
【請求項6】
請求項1に記載の酸素貯蔵材料(OSM)を製造するための方法であって、
(a)ジルコニウム塩、セリウム塩、希土類金属塩および遷移金属塩を含む多価金属含有溶液を調製する工程と、
(b)前記多価金属含有溶液を塩基溶液に一滴ずつ添加して混合水酸化物沈殿物を形成する工程と、
(c)前記混合水酸化物沈殿物を水で洗浄し、陰イオンおよび陽イオン混合物をすべて除去する工程と、
(d)前記洗浄した混合酸化物を乾燥させる工程と、
(e)前記混合酸化物を不活性な環境または還元性の環境で焼成する工程と、
(f)前記焼成した混合酸化物を4時間、1100℃、大気中で、エイジングさせる工程と、
を含む、方法。
【請求項7】
前記多価金属含有溶液は、ジルコニウム、セリウム、希土類金属、遷移金属の水溶性硝酸塩、塩化物または硫酸塩およびそれらの組み合わせからなる、請求項6に記載の酸素貯蔵材料を製造するための方法。
【請求項8】
前記塩基は、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水または水酸化テトラアルキルアンモニウムからなる群から選択される、請求項6または7に記載の酸素貯蔵材料を製造するための方法。
【請求項9】
前記不活性な環境または前記還元性の環境における前記焼成は、500℃から最大900℃の範囲の温度で、2時間から最大5時間行われる、請求項6から8のいずれか1項に記載の酸素貯蔵材料を製造するための方法。
【請求項10】
車両の排ガスを処理するための、三元触媒、ディーゼル酸化触媒または酸化触媒における、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法によって形成されたOSMの使用。
【請求項11】
車両の排ガスを処理するための、三元触媒、ディーゼル酸化触媒または酸化触媒における、請求項1~5のいずれか1項に記載のOSMの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には、触媒用途で使用することが可能な酸素貯蔵材料に関する。
【背景技術】
【0002】
「背景技術」の項における説明は単に本開示に関連する背景情報を提供するだけであり、先行技術を構成しない可能性がある。
【0003】
車両の排ガスを処理するための三元触媒では、酸素貯蔵材料(OSM)としてセリウム-ジルコニウム混合酸化物が広く用いられている。OSMをうまく応用するには、OSMが満たすべき要件がいくつかある。これらの要件には、熱安定性の高さ、焼結耐性、貴金属に対する相容性がゆえにOSMの表面に貴金属を十分に分散できることが含まれる。
【0004】
従来のセリア-ジルコニアベースのOSMの製造には、異なる方法が使用される。これらの方法には、特開平5-193948号に記載されているようなゾル-ゲル技術、特開平5-155622号に示されているような試薬間の固相反応、米国特許第6,139,814号に定義されているような含浸が含まれる。熱安定性のあるOSMを製造するのに最も一般的かつ広く用いられる方法は、米国特許第6,171,572号、同第6,214,306号、同第6,255,242号、同第6,387,338号、同第7,431,910号、同第7,919,429号ならびに米国特許出願公開第2016/0207027号に基づく沈殿/共沈である。沈殿/共沈技術で製造されたOSMは、焼結に対する耐性が高く、場合によっては、1100℃でエイジング後の表面積が15~25m/gを超える可能性がある。
【0005】
OSMの高い酸化還元活性は、複数の特徴のうち、OSMの組成、結晶相、表面積、多孔性のタイプ、白金族金属(PGM)の分散にとりわけ左右される、相互作用で生じる現象である。米国特許第6,468,941号では、過酷な状態でエイジングさせた(>1100℃)セリア-ジルコニアベースの材料の酸素貯蔵能が、CeO含有量に依存している。具体的には、CeO含有量が最大30~35重量%まで増すと、酸素貯蔵能(OSC)も最大1.0~1.1mmol H/gまで高くなる。CeO含有量をさらに増しても、OSCの上昇にはつながらない。これは、セリア含有量の多い混合酸化物のCeOの一部しか、酸素の貯蔵に利用できないことを意味する。米国特許第8,187,995号および米国特許出願公開第2013/0029840号には、最大1.3~1.5mmol H/gの酸素貯蔵能を示す特定の立方晶パイロクロア構造を有するセリア-ジルコニア混合酸化物が記載されている。酸素貯蔵能の高さがゆえ、OSMの使用量を減らすことができ、コーティング層の厚さが最小限に抑えられ、背圧が低下し、触媒コンバーターの重量とコストも下がる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
総酸素貯蔵能(OSC)が高いだけでなく、混合酸化物の別の重要な特徴に、酸化還元反応が生じる温度がある。触媒の「ライトオフ」温度を下げて未処理の排気ガスの量を減らすことによってコールドスタートエミッションの問題を解決する上で、低温での酸化還元反応を可能にする材料(例えば、高レドックス活性材料など)が重要である。米国特許第7,943,104号に、インジウム(In)およびスズ(Sn)ドーパントを用いて酸素を移動しやすくすることが説明されている。エイジングさせたOSMを動作させるための最大温度(Tmax)は、550~600℃から350~450℃にシフトする。ドーパントとしてSnを使用することでレドックス機能を促進する同様の効果が、米国特許出願公開第2015/0375203号に開示された。米国特許第6,585,944号では、レドックス特性を向上させるために、様々な遷移金属、例えば、Ni、Cu、Fe、MnならびにAgおよびBiが提案されている。これらのプロモーターを用いると、OSCを最大1.5mmol H/gまで高め、Tmaxを300~350℃までシフトさせることができる。
【0007】
したがって、酸素貯蔵能が高く還元性も向上した三元触媒(TWC)および四元触媒の要件を満たす酸素貯蔵材料が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、広義には、レドックス特性が改善され、メソ多孔性が向上し、耐焼結性のある酸素貯蔵材料(OSM)に関する。特に、本開示は、広義には酸素貯蔵能が高く(すなわち、OSC>1.5mmol H/g)、還元性が向上した(すなわち、150℃~550℃の温度範囲にTmaxが2つある二峰性のTPR-Hプロファイル)酸素貯蔵材料(OSM)を提供する。このOSMは、触媒および触媒担体として使用するのに適している。この酸素貯蔵材料を製造する方法は、ジルコニウム塩、セリウム塩、希土類金属塩および遷移金属塩を含む溶液の調製と、それに続く、構成要素となるすべての金属水酸化物と塩基との共沈を含む。
【0009】
本明細書で提供する説明から、他の応用分野も明らかになるであろう。この説明および具体的な実施例は、例示のみを目的としたものにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示をよく理解することができるように、添付の図面を参照して、例として示す本開示の様々な形態について説明する。
図1図1は、本開示の教示内容による酸素貯蔵材料(OSM)を形成するための方法を示すフローチャートの概略図である。
図2図2は、1,100℃で4時間エイジング後の実施例1のOSMのTPR-Hプロファイルのグラフ表示である。
図3図3は、1,100℃で4時間エイジング後の実施例2のOSMのTPR-Hプロファイルのグラフ表示である。
図4図4は、1,100℃で4時間エイジング後の実施例3のOSMのTPR-Hプロファイルのグラフ表示である。
【0011】
本明細書にて説明する図面は、例示目的のものにすぎず、どのような形であれ本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、決して本開示またはその用途または使用を限定することを意図するものではない。例えば、本開示全体を通して、本明細書に含まれる教示内容に沿って製造され、使用される酸素貯蔵材料(OSM)の組成および使用についてさらに十分に説明するために、このOSMを車両の排ガス低減に用いられる三元触媒(TWC)とともに説明する。四元触媒、ディーゼル酸化触媒、酸化触媒などの他の触媒または他の触媒用途にそのようなOSMを取り入れて使用することは、本開示の範囲内であると考えられる。説明全体を通して、対応する参照番号は、同様のまたは対応する部分および特徴を示すことを理解されたい。
【0013】
本開示は、広義には、ジルコニウムの酸化物、セリウムの酸化物、セリウム以外の少なくとも1種の希土類金属の酸化物、少なくとも1種の遷移金属の酸化物を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなる酸素貯蔵材料(OSM)を提供する。このOSMは、OSMの総重量に対して、酸化ジルコニウムの含有量が30重量%以上、遷移金属酸化物の含有量が8重量%以下である。このOSMは、1100℃で4時間のエイジング後にTPR-Hプロファイルが二峰性で酸素貯蔵能(OSC)が少なくとも1.5mmol H/gであり、CeO還元性が100%である。
【0014】
望ましい場合、OSMは、酸化ジルコニウムの含有量が、OSMの総重量に対して30重量%~80重量%の範囲であってもよいし、あるいは、約40重量%~約70重量%であってもよい。OSM中の酸化セリウム含有量についても、5重量%~50重量%の範囲であってもよいし、あるいは、約10重量%~約45重量%の範囲、あるいは、約15重量%~約35重量%の範囲であってもよい。
【0015】
本開示の別の態様によれば、OSM中に存在する希土類金属は、ランタン、ネオジム、プラセオジム、イットリウムまたはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないように選択することができる。OSMにおけるこれらの希土類金属の含有量は、OSMの総重量に対して、0重量%から最大15重量%の範囲であってもよいし、あるいは、約5重量%~10重量%の範囲であってもよい。OSM中に存在する希土類金属の量は、OSMの結晶格子を安定化させるのに十分である。
【0016】
OSM中に存在する遷移金属は、限定されないが、銅、鉄、ニッケル、コバルト、マンガンまたはそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。OSM中に存在する遷移金属の量は、0重量%から最大8重量%までの範囲であってもよいし、あるいは、約1重量%~約7重量%の範囲、あるいは、約2重量%~約5重量%の範囲であってもよい。
【0017】
本開示の別の態様によれば、酸素貯蔵材料は、1100℃で4時間のエイジング後に、CeO還元性が100%である。これは、従来の材料について以前に報告されているよりも著しく高い。さらに、このOSMは、1100℃で4時間のエイジング後に、TPR-Hプロファイルが二峰性で、酸素貯蔵能(OSC)が少なくとも1.5mmol H/g、あるいは、約1.5mmol H/gから最大約2.5mmol H/gまでの範囲であることを特徴とし得る。二峰性のTPR-Hプロファイルは、350~400℃と450~550℃がTmaxになる2つの明確に異なるピーク、あるいは150~250℃と350~450℃がTmaxになる2つのピークを持つことを特徴とする。
【0018】
ここで図1を参照すると、酸素貯蔵材料(OSM)を製造するための方法1が提供される。方法1は、(a)ジルコニウム塩、セリウム塩、希土類金属塩および遷移金属塩を含む溶液を調製する工程5と、(b)多価金属含有溶液を塩基溶液に添加して混合水酸化物共沈物を形成する工程10と、(c)沈殿した混合水酸化物をエイジングさせる工程15と、(d)沈殿した混合水酸化物を水で洗浄し、陰イオンおよび陽イオン混合物を除去する工程20と、(e)洗浄した混合酸化物を乾燥させる工程25と、(f)混合酸化物を不活性な環境または還元性の環境で焼成する工程30と、を含む。
【0019】
塩溶液の調製5の際に、方法1では、ジルコニウム、希土類金属、遷移金属の水溶性多価金属硝酸塩、塩化物、硫酸塩およびそれらの組み合わせを使用する。沈殿10に使用される塩基は、アルカリ水酸化物、アンモニア水または水酸化テトラアルキルアンモニウムから選択される。空気乾燥させた材料の焼成30は、不活性な環境または還元性の環境で行われる。焼成30は、約500℃から最大900℃の範囲の温度で、約2~5時間行われるか、あるいは、約600℃~約800℃の範囲の温度で行われるおよび/または約3時間~約5時間行われる。
【0020】
本開示の目的のために、本明細書では、当業者に知られている想定される変動(測定値の限界とばらつきなど)による測定可能な値および範囲に関して、「約」および「実質的に」という表現を使用する。
【0021】
本開示の目的のために、「重量」という用語は、単位がグラム、キログラムなどになる質量の値をいう。また、上限値と下限値によって数値の範囲に言及する場合、上限値および下限値それ自体ならびに、その数値の範囲に包含されるすべての数を含む。例えば、40重量%~60重量%という範囲の濃度は、40重量%、60重量%、その間のすべての濃度(例えば、40.1%、41%、45%、50%、52.5%、55%、59%など)を含む。
【0022】
本開示の目的のために、「少なくとも1」および「1以上の」要素という表現を同義に使用し、これらの表現が同じ意味を持つ場合がある。これらの表現は、単一の要素または複数の要素を含むことを示し、要素の末尾に接尾辞「(s)」を付してそのことを表す場合もある。例えば、「少なくとも1種のポリウレタン」、「1種以上のポリウレタン」および「ポリウレタン(polyurethane(s))」を同義に使用する場合があり、これらに同じ意味を持たせることを意図している。
【0023】
以下の具体的な実施例は、本開示の教示内容に従って形成した酸素貯蔵材料(OSM)ならびに、その特性を示すためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に開示した特定の実施形態には多くの変更を加えることができ、それでもなお、本開示の意図または範囲から逸脱したりこれを超えたりすることなく同等または類似の結果を得られることが、当業者であれば本開示に照らして自明であろう。また、本明細書で報告した特性が、日常的に測定され、複数の異なる方法で得られる特性を表すことも、当業者であれば理解するであろう。本明細書に記載の方法は、そのような方法の1つを表し、本開示の範囲を超えることなく他の方法を利用することができる。
【実施例
【0024】
実施例1
【0025】
ZrOCl*8HO 90.5gと、27.9%硝酸セリウム(III)溶液64.5gと、19.3%硝酸イットリウム溶液15.55gと、18.3%硝酸ランタン溶液11.85gと、Fe(NO*6HO 18.2gとを、脱イオン(DI)水200gと混合することによって、Zr塩、Ce塩、La塩、Y塩およびFe塩を含有する溶液を調製する。この多価金属を含む溶液を、25%NHOH溶液700gの入った1リットルのビーカーに滴下する。形成された沈殿物を、ブフナーフィルターを用いて濾過し、脱イオン水で洗浄して、過剰な塩化物、硝酸塩およびアンモニウムイオンを除去する。
【0026】
回収した湿った沈殿物を、130℃の電気オーブンで12時間乾燥させる。次に、乾燥した沈殿物を窒素中にて800℃で2時間焼成する。焼成後の試料を、さらに空気中にて1100℃で4時間エイジングさせる。
【0027】
エイジングさせたOSMのレドックス活性を、従来の昇温還元反応(TPR-H)法を使用して試験する。酸素貯蔵能(OSC)の理論値は1.75mMol H/gである。したがって、利用可能なOSCが1.75mMol H/gであれば、Ceをすべてレドックス反応に利用できることになる。TPR-Hプロファイルには、図2に示すように、Tmax=370℃とTmax=480℃の2つのピークが認められる。
【0028】
実施例2
【0029】
ZrOCl*8HO 58.1gと、27.9%硝酸セリウム(III)溶液96.8gと、19.3%硝酸イットリウム溶液15.55gと、18.3%硝酸ランタン溶液11.85gと、Cu(NO*3HO 14.46gとを、脱イオン(DI)水200gと混合することによって、Zr塩、Ce塩、La塩、Y塩およびCu塩を含有する溶液を調製する。この多価金属を含む溶液を、10%NaOH溶液700gの入った1リットルのビーカーに滴下する。形成された沈殿物を、ブフナーフィルターを用いて濾過し、脱イオン水で洗浄して、過剰な塩化物、硝酸塩およびナトリウムイオンを除去する。
【0030】
回収した湿った沈殿物を、130℃の電気オーブンで12時間乾燥させた後、窒素中にて800℃で2時間焼成する。焼成後の試料を、さらに空気中にて1100℃で4時間エイジングさせる。
【0031】
エイジングさせたOSMのレドックス活性を、従来のTPR-H2法を使用して試験する。理論上のOSCは2.15mMol H/gである。利用可能なOSCが2.15mMol H/gであれば、Ceを100%レドックス反応に利用できることになる。TPR-H2プロファイルには、図3に示すように、Tmax=190℃とTmax=350℃の2つのピークが認められる。
【0032】
実施例3
【0033】
ZrOCl*8HO 50.25gと、27.9%硝酸セリウム(III)溶液107.5gと、19.3%硝酸イットリウム溶液15.55gと、18.3%硝酸ランタン溶液11.85gと、Cu(NO*3HO 0.9gと、Fe(NO*6HO 22.7gとを、脱イオン(DI)水200gと混合することによって、Zr塩、Ce塩、La塩、Y塩、Cu塩およびFe塩を含有する溶液を調製する。この多価金属を含む溶液を、10%NaOH溶液700gの入った1リットルのビーカーに滴下する。形成された沈殿物を、ブフナーフィルターを用いて濾過し、脱イオン水で洗浄して、過剰な塩化物、硝酸塩およびナトリウムイオンを除去する。
【0034】
回収した湿った沈殿物を、130℃の電気オーブンで12時間乾燥させた後、5重量%CO中にて800℃で2時間焼成する。焼成後の試料を、さらに空気中にて1100℃で4時間エイジングさせる。
【0035】
エイジングさせたOSMのレドックス活性を、従来のTPR-H法を使用して試験する。理論上のOSCは2.50mMol H/gである。利用可能なOSCが2.5mMol H/gであれば、Ceを100%レドックス反応に利用できることになる。TPR-Hプロファイルには、図3に示すように、Tmax=225℃とTmax=440℃の2つのピークが認められる。
【0036】
本明細書では、明確かつ簡潔な明細書を記載できるように実施形態を説明してきたが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分離したりしてもよいことが意図されており、その旨が理解されるであろう。例えば、本明細書に記載のすべての好ましい特徴は、本明細書に記載の本発明のすべての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0037】
本発明の様々な形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示したものである。網羅的であることを意図したものではなく、開示された正確な形態に本発明を限定することを意図したものでもない。上記の教示内容に照らして、多くの改変例または変形例が可能である。ここで論じた形態は、本発明の原理およびその実用的な用途を最も良く示すことで、当業者が考える特定の用途に適した様々な形態および様々な改変を施した形で本発明を利用できるようにするために選択して説明したものである。そのような改変例および変形例はいずれも、公正かつ合法的、正当に権利が与えられる外延に従って解釈されるとき、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内である。
図1
図2
図3
図4