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特許7506604半導体基板の製造方法、ダマシン配線構造の製造方法、半導体基板、及びダマシン配線構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】半導体基板の製造方法、ダマシン配線構造の製造方法、半導体基板、及びダマシン配線構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20240619BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20240619BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20240619BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240619BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240619BHJP
   H01F 7/20 20060101ALI20240619BHJP
   H01F 7/06 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H01L21/88 B
H01L21/88 J
H01L21/302 105A
H01L21/306 B
H01F7/20 Z
H01F7/06 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020554004
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2019042668
(87)【国際公開番号】W WO2020090930
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2018205351
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019179964
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】井上 直
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 穣
(72)【発明者】
【氏名】田中 豪
(72)【発明者】
【氏名】飯間 敦矢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大幾
(72)【発明者】
【氏名】柴山 勝己
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092238(JP,A)
【文献】特開2007-200980(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150628(WO,A1)
【文献】特表2015-534261(JP,A)
【文献】特開2014-063866(JP,A)
【文献】特開2012-212797(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159077(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
H01L 21/3065
H01L 21/306
H01F 7/20
H01F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
等方性エッチングを含む処理を半導体基板の主面に施すことにより、底面とスキャロップが形成された側面とを有する凹部を形成する第1工程と、
前記凹部の前記側面に対する親水化処理及び前記凹部に対する脱気処理の少なくとも一方を行うことにより、前記凹部の前記側面に対するエッチング液の濡れ性を向上させる第2工程と、
前記凹部の前記底面が存在する状態で、異方性のウェットエッチングを行うことにより、前記凹部の前記側面に形成された前記スキャロップを除去し、前記側面を平坦化する第3工程と、を含む半導体基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程では、前記半導体基板の前記主面に沿って延在する溝部が前記凹部として形成される、請求項1に記載の半導体基板の製造方法における前記第1工程、前記第2工程、及び前記第3工程と、
前記第3工程の後に、前記溝部の内面上に設けられた第1部分と、前記第1部分と一体的に形成され、前記主面上に設けられた第2部分と、を有する絶縁層を形成する第4工程と、
前記絶縁層の前記第1部分及び前記第2部分上に金属層を形成する第5工程と、
前記溝部内に埋め込まれた前記金属層上に配線部を形成する第6工程と、
前記絶縁層の前記第2部分が露出するように、前記第2部分上の前記金属層及び前記配線部を除去する第7工程と、
前記第7工程の後に、前記絶縁層の前記第2部分、前記金属層の端部、及び前記配線部を覆うようにキャップ層を形成する第8工程と、を含む、ダマシン配線構造の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板の前記主面が(100)面に沿っており、
前記第1工程では、(110)面に沿った方向に延在する前記溝部を形成する、請求項2に記載のダマシン配線構造の製造方法。
【請求項4】
導体基板と、絶縁層と、金属層と、配線部と、キャップ層と、を備え、
前記半導体基板は、凹部が設けられた主面を備え、
前記凹部は、底面と、側面と、傾斜面と、を有し、
前記傾斜面は、前記底面及び前記側面の間において前記底面及び前記側面に接続されると共に、前記底面及び前記側面と鈍角を成すように前記底面及び前記側面に対して傾斜しており、
前記底面の面方位と前記側面の面方位と前記傾斜面の面方位とが互いに異なり、
前記凹部は、前記主面に沿って延在する溝部であり、
前記絶縁層は、前記溝部の内面上に設けられた第1部分と、前記第1部分と一体的に形成され、前記主面上に設けられた第2部分と、を有し、
前記金属層は、前記絶縁層の前記第1部分上に設けられており、
前記配線部は、前記溝部内に埋め込まれた前記金属層上に形成されており、
前記キャップ層は、前記絶縁層の前記第2部分、前記金属層の端部、及び前記配線部を覆うように設けられている、ダマシン配線構造。
【請求項5】
前記底面は(100)面に沿った面であり、
前記側面は(110)面に沿った面であり、
前記傾斜面は(111)面に沿った面である、請求項に記載のダマシン配線構造。
【請求項6】
前記凹部は、前記主面に沿った第1方向に延在する第1溝部と、前記第1溝部と前記底面を共有し、前記第1方向に交差する前記主面に沿った第2方向に延在する第2溝部と、を有し、
前記第1溝部は、第1側面と、前記底面及び前記第1側面の間において前記底面及び前記第1側面に接続されると共に前記底面及び前記第1側面に対して傾斜する第1傾斜面と、を有し、
前記第2溝部は、第2側面と、前記底面及び前記第2側面の間において前記底面及び前記第2側面に接続されると共に前記底面及び前記第2側面に対して傾斜する第2傾斜面と、を有し、
前記第1側面と前記第2側面との間、及び前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間には、中間面が形成されており、
前記中間面は、前記第1側面、前記第2側面、前記第1傾斜面、前記第2傾斜面、及び前記底面に接続されており、
前記中間面と前記第1側面及び前記第2側面の各々とが成す角度は、鈍角である、請求項又はに記載のダマシン配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体基板の製造方法、ダマシン配線構造の製造方法、半導体基板、及びダマシン配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凹部が形成されたシリコン基板(半導体基板)を製造する方法として、ボッシュプロセスを用いてシリコン基板に凹部を形成した後、当該凹部の側面に形成されたスキャロップ(微小な凹凸構造)をドライエッチングを用いて除去する方法が知られている(特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-206991号公報
【文献】特開2014-13821号公報
【文献】特開2008-34508号公報
【文献】米国特許出願公開2008/0023846号明細書
【文献】米国特許出願公開2007/0281474号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばMEMS技術を応用した電磁駆動式のミラー(いわゆるMEMSミラー)において、可動部内の限られたスペースに低抵抗の駆動コイルを設けるために、信頼性の高い凹部(例えば、狭ピッチで高アスペクト比を有し、スキャロップが除去された凹部等)を形成したい場合がある。本発明者は、上述したような場合において、凹部の側面に形成されたスキャロップを除去するためにドライエッチングを用いることには、以下のような問題があることを発見した。具体的には、等方性のドライエッチングを用いる場合、凹部の開口側の幅が広がり、狭ピッチの配線(凹部に埋め込まれる配線)を実現できない。さらに、凹部の底部までエッチングガスが到達し難いため、凹部の底部付近にあるスキャロップを除去することが困難である。また、異方性のドライエッチングを用いる場合、凹部の底面のみがエッチングされ易いため、凹部の側面に形成されたスキャロップを適切に除去することが困難である。
【0005】
本開示の一側面は、信頼性の高い凹部を有する半導体基板及びその製造方法、並びに当該半導体基板を用いたダマシン配線構造及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る半導体基板の製造方法は、等方性エッチングを含む処理を半導体基板の主面に施すことにより、底面とスキャロップが形成された側面とを有する凹部を形成する第1工程と、凹部の側面に対する親水化処理及び凹部に対する脱気処理の少なくとも一方を行う第2工程と、凹部の底面が存在する状態で、異方性のウェットエッチングを行うことにより、凹部の側面に形成されたスキャロップを除去し、側面を平坦化する第3工程と、を含む。
【0007】
上記半導体基板の製造方法では、底面とスキャロップが形成された側面とを有する凹部を形成した後に、凹部の側面に対する親水化処理又は凹部に対する脱気処理を行うことにより、凹部の側面に対するエッチング液の濡れ性を向上させることができる。また、凹部の底面が存在する状態で異方性のウェットエッチングを行うことにより、凹部内にエッチング液(エッチャント)を効果的に充填させることができる。これにより、エッチング液で凹部の側面の全体を濡らすことができ、側面に形成されたスキャロップを効果的に除去することができる。さらに、異方性のエッチングが行われることにより、凹部の開口側と底面側との間において、側面のエッチングレートをほぼ均一化することができる。これにより、凹部の開口側の幅がテーパ状に広がってしまうといった不具合の発生を抑制することができる。従って、上記製造方法によれば、信頼性の高い凹部を有する半導体基板を製造することができる。すなわち、半導体基板の主面において、適切な形状が維持されると共にスキャロップが適切に除去された凹部を形成することができる。
【0008】
本開示の一側面に係るダマシン配線構造の製造方法は、第1工程では、半導体基板の主面に沿って延在する溝部が凹部として形成される、上記半導体基板の製造方法における第1工程、第2工程、及び第3工程と、第3工程の後に、溝部の内面上に設けられた第1部分と、第1部分と一体的に形成され、主面上に設けられた第2部分と、を有する絶縁層を形成する第4工程と、絶縁層の第1部分及び第2部分上に金属層を形成する第5工程と、溝部内に埋め込まれた金属層上に配線部を形成する第6工程と、絶縁層の第2部分が露出するように、第2部分上の金属層及び配線部を除去する第7工程と、第7工程の後に、絶縁層の第2部分、金属層の端部、及び配線部を覆うようにキャップ層を形成する第8工程と、を含む。
【0009】
仮に、凹部の側面に形成されたスキャロップの除去が十分でない状態で絶縁層及び金属層を形成した場合、絶縁層と金属層との間にボイド(空隙)が発生したり、絶縁層のクラック(断裂部)が発生したりするおそれがある。上記ボイドは、構造上のウィークポイントとなり得る。また、上記クラックは、配線部を流れる電流が半導体基板へとリークする原因となり得る。すなわち、絶縁層上に形成された金属(金属層及び配線部)が、上記クラックを介して、半導体基板の一部と接触してしまうおそれがある。一方、上記ダマシン配線構造の製造方法によれば、スキャロップが適切に除去された凹部の内面に対して、絶縁層及び金属層が形成される。これにより、上述したボイド又はクラック等の発生を抑制できるため、信頼性の高いダマシン配線構造を得ることができる。
【0010】
半導体基板の主面が(100)面に沿っており、第1工程では、(110)面に沿った方向に延在する溝部を形成してもよい。上記構成によれば、(100)面に沿った底面と(110)面に沿った側面とが形成される。さらに、面方位によるエッチングレートの違いを利用することにより、底面と側面との間に、(111)面に沿うと共に底面及び側面に対して傾斜する傾斜面を形成することが可能となる。そして、傾斜面が形成される場合の底面と側面との間の角部の角度(すなわち、底面と傾斜面とが成す角度又は側面と傾斜面とが成す角度)は、傾斜面が形成されない場合の角部の角度(すなわち、底面と側面とが成す角度)よりも大きくなる。すなわち、傾斜面が形成されることにより、傾斜面が形成されない場合よりも丸みを帯びた角部(すなわち、段階的に緩やかに屈曲する角部)が形成されることになる。このような角部によれば、当該角部において絶縁層のクラックを生じ難くすることができる。従って、上記構成によれば、より信頼性の高いダマシン配線構造を得ることができる。
【0011】
本開示の一側面に係る半導体基板は、凹部が設けられた主面を備え、凹部は、底面と、側面と、傾斜面と、を有し、傾斜面は、底面及び側面の間において底面及び側面に接続されると共に、底面及び側面と鈍角を成すように底面及び側面に対して傾斜しており、底面の面方位と側面の面方位と傾斜面の面方位とが互いに異なる。
【0012】
上記半導体基板では、底面と側面との間の角部の角度(すなわち、底面と傾斜面とが成す角度又は側面と傾斜面とが成す角度)は、傾斜面が設けられない場合の角部の角度(すなわち、底面と側面とが成す角度)よりも大きい。すなわち、傾斜面により、傾斜面が形成されない場合よりも丸みを帯びた角部(すなわち、段階的に緩やかに屈曲する角部)が形成されている。このような角部を有する凹部によれば、例えば当該凹部の内面に所定の材料層を設ける場合等において、当該角部における当該材料層のクラックの発生が抑制される。以上により、上記半導体基板では、上述した凹部により、信頼性が高められている。また、上記半導体基板は、面方位によるエッチングレートの違いを利用することにより、比較的容易に得られる。
【0013】
本開示の一側面に係るダマシン配線構造は、上記半導体基板と、絶縁層と、金属層と、配線部と、キャップ層と、を備え、凹部は、主面に沿って延在する溝部であり、絶縁層は、溝部の内面上に設けられた第1部分と、第1部分と一体的に形成され、主面上に設けられた第2部分と、を有し、金属層は、絶縁層の第1部分上に設けられており、配線部は、溝部内に埋め込まれた金属層上に形成されており、キャップ層は、絶縁層の第2部分、金属層の端部、及び配線部を覆うように設けられている。
【0014】
上記ダマシン配線構造は、上述したような底面、側面、及び傾斜面を有する凹部内に配線部等が埋め込まれることによって形成されている。このため、当該凹部の角部において、絶縁層のクラックが抑制されている。従って、上記ダマシン配線構造では、当該凹部により、信頼性が高められている。
【0015】
底面は(100)面に沿った面であり、側面は(110)面に沿った面であり、傾斜面は(111)面に沿った面であってもよい。上記構成によれば、面方位によるエッチングレートの違いを利用することにより、上述した効果を奏するダマシン配線構造を容易に得ることができる。
【0016】
凹部は、主面に沿った第1方向に延在する第1溝部と、第1溝部と底面を共有し、第1方向に交差する主面に沿った第2方向に延在する第2溝部と、を有し、第1溝部は、第1側面と、底面及び第1側面の間において底面及び第1側面に接続されると共に底面及び第1側面に対して傾斜する第1傾斜面と、を有し、第2溝部は、第2側面と、底面及び第2側面の間において底面及び第2側面に接続されると共に底面及び第2側面に対して傾斜する第2傾斜面と、を有し、第1側面と第2側面との間、及び第1傾斜面と第2傾斜面との間には、中間面が形成されており、中間面は、第1側面、第2側面、第1傾斜面、第2傾斜面、及び底面に接続されており、中間面と第1側面及び第2側面の各々とが成す角度は、鈍角であってもよい。上記構成によれば、第1溝部と第2溝部とが交差する隅部(主面に垂直な方向から見た場合における隅部)の角度(すなわち、中間面と第1側面とが成す角度又は中間面と第2側面とが成す角度)は、中間面が形成されない場合の当該隅部の角度(すなわち、第1側面と第2側面とが成す角度)よりも大きくなる。すなわち、中間面が形成されることにより、中間面が形成されない場合よりも丸みを帯びた隅部(すなわち、段階的に屈曲する隅部)が形成されることになる。このような隅部によれば、半導体基板に対して振動が加わった際等に当該隅部において配線部に作用する応力を効果的に低減することができる。従って、上記構成によれば、より一層信頼性が高められたダマシン配線構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一側面によれば、信頼性の高い凹部を有する半導体基板及びその製造方法、並びに当該半導体基板を用いたダマシン配線構造及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施形態に係るダマシン配線構造を含むミラー装置の平面図である。
図2図2は、図1のII-II線断面図である。
図3図3は、図2の拡大図である。
図4図4は、図3の拡大図である。
図5図5は、ダマシン配線構造の製造に用いられるSOIウェハの平面図である。
図6図6(a)は、溝部が形成される前の基板の構造を模式的に示す図であり、図6(b)は、第1工程により形成される溝部の断面形状を示す図であり、図6(c)は、第2工程により形成される溝部の断面形状を示す図である。
図7図7(a)は、第1工程により形成される溝部の底部のSEM画像であり、図7(b)は、第3工程により形成される溝部の底部のSEM画像である。
図8図8(a)及び図8(b)は、ダマシン配線構造の製造方法を説明するための断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、ダマシン配線構造の製造方法を説明するための断面図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、ダマシン配線構造の製造方法を説明するための断面図である。
図11図11は、ダマシン配線構造の隅部を模式的に示す斜視図である。
図12図12は、第1変形例に係るダマシン配線構造の断面図である。
図13図13は、第2変形例に係るダマシン配線構造の断面図である。
図14図14(a)は、第3変形例に係るダマシン配線構造の断面図であり、図14(b)は、第4変形例に係るダマシン配線構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0020】
[ミラー装置の構成]
図1は、一実施形態に係るダマシン配線構造100(図2参照)を含んで構成されたミラー装置1(アクチュエータ装置)の平面図である。図1に示されるように、ミラー装置1は、支持部2と、第1可動部3と、第2可動部4と、一対の第1連結部5,6と、一対の第2連結部7,8と、磁界発生部9と、を備えている。支持部2、第1可動部3、第2可動部4、第1連結部5,6及び第2連結部7,8は、例えば、半導体基板(基板30)によって一体的に形成されている。つまり、ミラー装置1は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスとして構成されている。
【0021】
ミラー装置1では、互いに直交する第1軸線X1及び第2軸線X2の周りに、ミラー面10を有する第1可動部3が揺動させられる。ミラー装置1は、例えば、光通信用光スイッチ、光スキャナ等に用いられ得る。磁界発生部9は、例えば、ハルバッハ配列がとられた永久磁石等によって構成されている。磁界発生部9は、後述するコイル21,22に作用する磁界を発生させる。
【0022】
支持部2は、例えば、平面視において四角形状の外形を有し、枠状に形成されている。支持部2は、磁界発生部9に対してミラー面10に垂直な方向における一方側に配置されている。第1可動部3は、磁界発生部9から離間した状態で、支持部2の内側に配置されている。なお、「平面視」とは、ミラー面10に垂直な方向から見た場合を意味し、換言すれば、後述する基板30の主面31に垂直な方向から見た場合を意味する。
【0023】
第1可動部3は、配置部3aと、配置部3aを囲む枠部3bと、配置部3aと枠部3bとを互いに連結する複数(この例では4つ)の連結部3cと、を有している。配置部3aは、例えば、平面視において円形状に形成されている。配置部3aにおける磁界発生部9とは反対側の表面には、例えば、円形状のミラー面10が設けられている。ミラー面10は、例えば、アルミニウム、アルミニウム系合金、銀、銀系合金、金、誘電体多層膜等からなる反射膜によって構成されている。
【0024】
枠部3bは、例えば、平面視において四角形状の外形を有し、枠状に形成されている。複数の連結部3cは、第1軸線X1上における配置部3aの両側、及び第2軸線X2上における配置部3aの両側に配置され、第1軸線X1上又は第2軸線X2上において配置部3aと枠部3bとを互いに連結している。
【0025】
第2可動部4は、例えば、平面視において四角形状の外形を有し、枠状に形成されている。第2可動部4は、磁界発生部9から離間した状態で、第1可動部3を囲むように支持部2の内側に配置されている。
【0026】
第1連結部5,6は、第1軸線X1上における第1可動部3の両側に配置されている。各第1連結部5,6は、第1可動部3が第1軸線X1周りに揺動可能となるように、第1軸線X1上において第1可動部3と第2可動部4とを互いに連結している。各第1連結部5,6は、例えば、第1軸線X1に沿って直線状に延在している。
【0027】
第2連結部7,8は、第1軸線X1上における第2可動部4の両側に配置されている。各第2連結部7,8は、第2可動部4が第2軸線X2周りに揺動可能となるように、第2軸線X2上において第2可動部4と支持部2とを互いに連結している。各第2連結部7,8は、例えば、第2軸線X2に沿って直線状に延在している。
【0028】
ミラー装置1は、コイル21,22と、複数の配線12,13,14,15と、複数の電極パッド25,26,27,28と、を更に備えている。コイル21は、例えば、第1可動部3の枠部3bに埋め込まれており、平面視において渦巻き状に延在している。コイル22は、例えば、第2可動部4に埋め込まれており、平面視において渦巻き状に延在している。各コイル21,22は、例えば銅等の金属材料によって構成されている。
【0029】
複数の電極パッド25,26,27,28は、支持部2に設けられている。配線12は、コイル21の一端と電極パッド25とを電気的に接続している。配線12は、コイル21の一端から第1連結部5、第2可動部4及び第2連結部7を介して電極パッド25に延在している。配線13は、コイル21の他端と電極パッド26とを電気的に接続している。配線13は、コイル21の他端から第1連結部6、第2可動部4及び第2連結部8を介して電極パッド26に延在している。
【0030】
配線14は、コイル22の一端と電極パッド27とを電気的に接続している。配線14は、コイル22の一端から第2連結部8を介して電極パッド27に延在している。配線15は、コイル22の他端と電極パッド28とを電気的に接続している。配線15は、コイル22の他端から第2連結部7を介して電極パッド28に延在している。
【0031】
以上のように構成されたミラー装置1では、電極パッド27,28及び配線14,15を介してコイル22にリニア動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によってコイル22にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力と第2連結部7,8の弾性力とのつり合いを利用することで、第2軸線X2周りにミラー面10(第1可動部3)を第2可動部4と共にリニア動作させることができる。
【0032】
一方、電極パッド25,26及び配線12,13を介してコイル21に共振動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部9が発生する磁界との相互作用によってコイル21にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力に加え、共振周波数での第1可動部3の共振を利用することで、第1軸線X1周りにミラー面10(第1可動部3)を共振動作させることができる。
【0033】
[ダマシン配線構造]
図2図4を参照しつつ、コイル21,22が有するダマシン配線構造100について説明する。コイル21,22の構成は互いに同一であるので、以下ではコイル22について説明し、コイル21についての説明を省略する。
【0034】
上述したように、コイル22は、第2可動部4に設けられている。第2可動部4は、例えば、基板30の第1シリコン層81によって構成されている。基板30は、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板等の半導体基板である。基板30は、例えば、第1シリコン層81及び第2シリコン層82と、第1シリコン層81及び第2シリコン層82の間に配置された絶縁層83と、を有している(図6及び図8図10参照)。支持部2は、第1シリコン層81、第2シリコン層82及び絶縁層83によって構成されており、第1可動部3、第2可動部4、第1連結部5,6及び第2連結部7,8は、第1シリコン層81によって構成されている。基板30は、主面31を有している。この例では、主面31は、第1シリコン層81における絶縁層83とは反対側の表面である。
【0035】
主面31には、溝部33(凹部)が設けられている。溝部33は、コイル21に対応した形状を有しており、この例では、平面視において渦巻き状に延在している。溝部33の延在方向に垂直な断面において、溝部33は、例えば矩形状を呈している。溝部33の内面は、底面33aと、側面33bと、底面33a及び側面33bに接続される傾斜面33cと、によって構成されている。傾斜面33cは、底面33a及び側面33bの間において、底面33a及び側面33bと鈍角(本実施形態では略135度)を成すように底面33a及び側面33bに対して傾斜している。なお、図2図4では一の断面のみが示されているが、例えば、ダマシン配線構造100は溝部33の延在方向に関して一様に構成されており、溝部33の延在方向に垂直ないずれの断面においても同様に構成されている。ただし、ダマシン配線構造100は必ずしも溝部33の延在方向に関して一様に構成されていなくてもよい。
【0036】
ダマシン配線構造100は、ベースとしての基板30に加えて、絶縁層40と、金属層50と、配線部60と、キャップ層70と、を備えている。絶縁層40は、主面31及び溝部33の内面(底面33a、側面33b、及び傾斜面33c。以下同じ。)上に設けられている。より具体的には、絶縁層40は、溝部33の内面上に設けられた第1部分41と、第1部分41と一体的に形成され、主面31上に設けられた第2部分42と、を有している。絶縁層40における第1部分41と第2部分42との境界部分43は、基板30における主面31と溝部33との境界部分上に位置している。
【0037】
絶縁層40は、第1層44及び第2層45によって構成されている。第1層44は、酸化膜からなり、主面31及び溝部33の内面上に設けられている。第1層44を構成する酸化膜は、例えば、シリコンを熱酸化することにより形成されたシリコン酸化膜(SiO)である。第2層45は、窒化膜からなり、第1層44上に設けられている。第2層45を構成する窒化膜は、例えば、シリコン窒化膜(SiN)等である。第1部分41及び境界部分43は、第1層44及び第2層45によって構成されており、第2部分42は、第1層44によって構成されている。
【0038】
金属層50は、絶縁層40の第1部分41上に設けられている。すなわち、金属層50は、第1部分41を介して溝部33の内面上に設けられている。金属層50は、例えば、チタン(Ti)等の金属材料によって構成されている。金属層50は、例えば、配線部60を半導体基板上に安定的に形成するためのシード層、及び、配線部60に含まれる金属元素の第1シリコン層81への拡散を防止するためのバリア層として機能し得る。
【0039】
配線部60は、溝部33内に埋め込まれた金属層50上に形成されている。すなわち、配線部60は、絶縁層40の第1部分41及び金属層50を介して溝部33内に設けられている。配線部60は、例えば、銅(Cu)等の金属材料によって構成されている。配線部60の延在方向(換言すれば、溝部33の延在方向)に垂直な断面における金属層50の形状は、溝部33の断面形状に対応しており、この例では、略矩形状を呈している。なお、本実施形態のように、配線部60が平面視において渦巻き状に延在しており、配線部60が、第1軸線X1に平行な方向に延在する第1部分、及び第2軸線X2に平行な方向に延在する第2部分を有している場合、配線部60の延在方向は、第1部分においては第1軸線X1に平行な方向であり、第2部分においては第2軸線X2に平行な方向である。或いは、配線部60が曲線状に又は湾曲して延在している場合には、配線部60の或る部分の延在方向とは、当該部分の接線方向であってもよい。
【0040】
キャップ層70は、絶縁層40の第2部分42、金属層50の端部51、及び配線部60を覆うように設けられている。この例では、キャップ層70は、主面31に平行に平面状に延在している。キャップ層70の厚さT1は、絶縁層40の厚さT2よりも厚い。キャップ層70は、例えば、シリコン窒化膜によって構成されており、絶縁性を有している。つまり、キャップ層70は、絶縁層40の第2層45と同一の材料によって構成されている。
【0041】
図4に示されるように、絶縁層40の第1部分41における基板30とは反対側の表面41aは、例えば、主面31に垂直な平坦面となっている。絶縁層40の第2部分42における基板30とは反対側の表面42aは、例えば、主面31に平行な平坦面となっている。表面42aは、キャップ層70に接触している。本実施形態では一例として、境界部分43における基板30とは反対側の表面43aは、配線部60の延在方向から見た場合に、主面31に垂直な方向A1に対して傾斜した傾斜面43bを含んでいる。より具体的には、傾斜面43bは、第1部分41の表面41aに対して外側に(溝部33の底面33aから離れるほど溝部33の中心から遠ざかるように)傾斜している。この例では、傾斜面43bは、基板30とは反対側に向かって凸状に湾曲している。
【0042】
金属層50の端部51は、キャップ層70と傾斜面43bとの間に入り込んでいる。より具体的には、端部51は、主面31に垂直な方向A1においてキャップ層70と傾斜面43bとの間に形成された空間に配置された部分を有している。
【0043】
端部51は、第1表面51aと、第1表面51aに連続する第2表面51bと、第2表面51bとは反対側において第1表面51aに連続する第3表面51cと、を有している。第1表面51aは、キャップ層70に沿っており、キャップ層70に接合されている。この例では、第1表面51aは、平坦面であり、絶縁層40の第2部分42の表面42a、及び後述する配線部60の表面60aと同一平面上に位置している。
【0044】
第2表面51bは、傾斜面43bに沿っており、傾斜面43bに接合されている。第2表面51bは、傾斜面43bと同様に、主面31に垂直な方向A1に対して外側に傾斜している。第2表面51bは、基板30とは反対側に向かって凹状に湾曲している。第2表面51bは、絶縁層40の境界部分43を構成する第2層45に接触している。すなわち、絶縁層40のうち第2表面51bに接触する部分(この例では、境界部分43を構成する第2層45)は、キャップ層70のうち第1表面51aに接触する部分と同一の材料(シリコン窒化膜)によって構成されている。上述したとおり、この例では、キャップ層70の全体がシリコン窒化膜によって構成されている。これにより、絶縁層40とキャップ層70との間の接合強度を高めることができる。
【0045】
第3表面51cは、端部51における第2表面51bとは反対側の表面である。第3表面51cは、配線部60の延在方向から見た場合に、方向A1に対して外側に傾斜している。第3表面51cの方向A1に対する傾斜の度合いは、第2表面51bの方向A1に対する傾斜の度合いよりも緩やかになっている。これにより、主面31に平行な方向A2における端部51の厚さは、端部51の先端に近づくにつれて漸増している。配線部60のうち金属層50及びキャップ層70との境界部分に位置する一部61は、キャップ層70と第3表面51cとの間に入り込んでいる。より具体的には、配線部60の一部61は、方向A1においてキャップ層70と第3表面51cとの間に形成された空間に配置されている。
【0046】
端部51においては、第1表面51aと第2表面51bとが鋭角を成している。換言すれば、第1表面51a及び第2表面51bにより形成される角度θが、90度よりも小さくなっている。すなわち、主面31に垂直な方向A1における端部51の厚さは、端部51の先端(例えば、第1表面51a及び第2表面51bにより形成される頂点)に近づくにつれて漸減している。角度θは、例えば、15度~88度であってもよい。金属層50の端部51は、絶縁層40の第2部分42上には設けられていない。
【0047】
主面31に平行な方向A2における端部51の厚さ(最小厚さ)は、金属層50のうち端部51以外の部分(例えば、金属層50のうち主面31に垂直な方向A1における中間に位置する部分、或いは、金属層50のうち絶縁層40の第1部分41上に位置する部分)の厚さよりも大きい。方向A1における金属層50の先端部の厚さ(最大厚さ)は、絶縁層40の厚さT2よりも小さい。ここで、「金属層50の先端部」とは、金属層50のうち、主面31に平行な方向A2における厚さが主面31に垂直な方向A1における厚さよりも大きい部分を意味する。
【0048】
この例では、配線部60におけるキャップ層70と接触する表面60aは、絶縁層40の第2部分42の表面42aと同一平面上に位置している。表面42aは、絶縁層40におけるキャップ層70と接触する表面である。キャップ層70の基板30側の表面70aは、平坦面となっている。
【0049】
上述したように、溝部33は、平面視において渦巻き状に延在している。これにより、図2に示されるように、溝部33は、互いに隣り合う複数の部分34を有している。部分34同士の間の間隔Bは、溝部33の幅Wよりも小さい。溝部33の幅Wは、溝部33の深さDよりも小さい。溝部33の深さDとは、例えば、主面31に垂直な方向A1における主面31と底面33aとの間の距離である。主面31に垂直な方向A1における溝部33の底面33aと基板30における主面31とは反対側の反対面との間の距離Lは、溝部33の深さDよりも大きい。この例では、当該反対面は、第1シリコン層81における絶縁層83側(主面31とは反対側)の表面81aである。
【0050】
[ダマシン配線構造の製造方法]
続いて、図5図10を参照しつつ、ダマシン配線構造100の製造方法(第1工程~第8工程)について説明する。ダマシン配線構造100の製造方法は、溝部33を有する半導体基板(基板30)の製造方法(第1工程~第3工程)を含む。なお、図6、及び図8図10では、各部が模式的に示されている。特に、図8(b)、図9(a)、図9(b)、図10(a)、及び図10(b)では、傾斜面33cの図示が省略されており、溝部33が簡略化されている。
【0051】
本実施形態では一例として、図5に示されるようなSOIウェハSWから、溝部33を有する基板30が製造される。すなわち、SOIウェハSWが適切な形状に切断されることにより、複数の基板30が得られる。図6(a)に示されるように、SOIウェハSWに含まれる基板30は、第1シリコン層81、第2シリコン層82及び絶縁層83を有している。第1シリコン層81の厚さは、例えば30~150μm程度であり、第2シリコン層82の厚さは、例えば625μm程度である。
【0052】
SOIウェハSWは、(110)面であるオリエンテーションフラットOFと、(100)面である主面31と、を有している。図5において、Z軸方向は主面31に垂直な方向であり、X軸方向はZ軸方向から見てオリエンテーションフラットOFに沿った方向であり、Y軸方向はZ軸方向及びX軸方向の両方に垂直な方向である。ここで、SOIウェハSWに含まれるシリコン結晶は立方晶系である。このため、図5の例では、Y軸方向に直交する面(XZ平面)に平行な面、及びX軸方向に直交する面(YZ平面)は、いずれも等価な結晶面(すなわち、(110)面)を構成する。また、Z軸方向から見て(100)面に対して45度傾斜する面は、いずれも等価な結晶面(すなわち、(100)面)を構成する。また、X軸方向は、図1に示した第1軸線X1及び第2軸線X2のうちの一方に平行な方向に相当し、Y軸方向は、第1軸線X1及び第2軸線X2のうちの他方に平行な方向に相当する。なお、SOIウェハSWを作製する際の加工精度によっては、オリエンテーションフラットOFの結晶方位が厳密に(110)と一致しない場合もあり得る。すなわち、上述した各面の結晶方位は、必ずしも完璧に一致していなくてもよく、多少のずれを含んでいてもよい。
【0053】
(第1工程)
まず、基板30の主面31に対して、等方性エッチングを含む処理が施される。「等方性エッチングを含む処理」は、例えばボッシュプロセスである。ボッシュプロセスでは、等方性のドライエッチングによって溝部が形成され、当該溝部の内壁に保護膜が形成される。そして、当該溝部の底部の保護膜のみが異方性のドライエッチングによって除去された後、再度、等方性のドライエッチングによって溝部が形成される。ボッシュプロセスでは、このような処理が繰り返されることにより、溝部が掘り進められる。これにより、図6(b)及び図7(a)に示されるように、底面32aとスキャロップSが形成された側面32bとを有する溝部32が形成される。図6(b)は、溝部32の延在方向に垂直な一の断面を示している。図7(a)は、溝部32の底部(底面32aを含む部分)のSEM画像である。溝部32は、X軸方向又はY軸方向に平行な方向に延在するように形成される。スキャロップSは、側面32bに形成される微小な凹凸構造である。
【0054】
図7(b)に示されるように、底面33a、側面33b、及び傾斜面33cは、一体的に(連続的)に形成されている。また、溝部33の延在方向に垂直な断面において、底面33aの長さは、傾斜面33cの長さよりも長い。また、側面33bと傾斜面33cとの間には、側面33bと傾斜面33cとを分ける境界線が形成されている。すなわち、側面33bと傾斜面33cとの境界がはっきりとしており、側面33bと傾斜面33cとの間の角部は、緩やかなカーブ(曲面状)にはなっていない。また、底面33a及び傾斜面33cが成す第1角度と側面33b及び傾斜面33cが成す第2角度との差は、30度以下となっている。本実施形態では、第1角度は、(100)面と(111)面とが成す角度であり、略125.3である。また、第2角度は、(110)面と(111)面とが成す角度であり、略144.7度である。このため、第1角度と第2角度とが成す角度は、略19.4度である。また、傾斜面33cは、平坦面となっている。これにより、所定の高さ位置において、傾斜面33cが形成されていることによって増す基板30の厚みt1は、仮に傾斜面が湾曲面C(溝部内の空間に対して凹となる湾曲面)である場合に当該傾斜面が形成されていることによって増す基板30の厚みt2よりも大きくなる。従って、平坦面である傾斜面33cによれば、溝部33の底面33a付近における基板30の厚みを好適に増すことができるため、溝部33を構造的に安定させることができる。また、底面33aは、溝部33の開口側とは反対側に凸となるように、少なくとも傾斜面33cよりも湾曲した形状をなしている。底面33aがこのような湾曲形状を有することにより、底面33aと傾斜面33cとが緩やかに接続される。その結果、底面33aと傾斜面33cとの間の角部に応力が集中することを、好適に抑制することができる。
【0055】
スキャロップSは、上述した等方性のドライエッチング、保護膜の形成、及び異方性のドライエッチングが交互に繰り返されることによって溝部が形成される性質上、必然的に生じる。そして、スキャロップSが残存した状態で、第4工程以降の処理を実施した場合、絶縁層40(第2層45)と金属層50との間にボイド(空隙)が発生したり、絶縁層40のクラック(断裂部)が発生したりするおそれがある。上記ボイドは、ダマシン配線構造100における構造上のウィークポイントとなり得る。また、上記クラックは、配線部60を流れる電流が基板30へとリークする原因となり得る。すなわち、絶縁層40上に形成された金属(金属層50及び配線部60)が、上記クラックを介して、基板30の一部と接触してしまうおそれがある。
【0056】
(第2工程及び第3工程)
上述したようなスキャロップSに起因する不具合(すなわち、ボイド又はクラック等の発生)を回避するために、第2工程及び第3工程が実施される。まず、溝部32の側面32bに対して親水化処理が行われる(第2工程)。親水化処理は、例えば、側面32bに対してO2アッシングを行う処理、又は側面32bを界面活性剤、アルコール等に浸す処理等である。なお、上記の親水化処理に代えて(或いは上記の親水化処理と併用して)、溝部32に対する脱気処理を行ってもよい。例えば、溝部32内に存在する溶液を脱気する脱気処理が行われてもよい。当該脱気処理は、溝部32内にエッチング液を充填され易くするための処理であり、親水化処理の一種でもある。
【0057】
続いて、スキャロップSを含む溝部32に対して、溝部32の底面32aが存在する状態で、異方性のウェットエッチングが行われる(第3工程)。エッチング液(エッチャント)としては、例えば、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、KOH(水酸化カリウム)等が用いられる。ここで、「溝部32の底面32aが存在する状態」とは、溝部32が非貫通孔(溝)である状態を意味する。すなわち、「溝部32の底面32aが存在する状態」とは、溝部32の底部が除去された状態(すなわち、溝部32が主面31から第2シリコン層82の絶縁層83とは反対側の面にかけて貫通した貫通孔とされた状態)以外の状態である。
【0058】
上記ウェットエッチングが実施されることにより、溝部32の側面32bに形成されたスキャロップSが除去され、側面32bが平坦化される。その結果、図6(c)及び図7(b)に示されるように、スキャロップSが除去された平坦な側面33bを有する溝部33が得られる。図6(c)は、溝部33の延在方向に垂直な一の断面を示している。また、図7(b)は、溝部33の底部(底面33aを含む部分)のSEM画像である。本実施形態では、図5に示されるように、Y軸方向(第1方向)に沿って延在する第1溝部133とX軸方向(第2方向)に沿って延在する第2溝部233とが、溝部33として得られる。また、図5に示した面方位の関係から、第1溝部133及び第2溝部233のいずれにおいても、(100)面に沿った面(すなわち、(100)面に略平行な面)によって底面33aが形成され、(110)面に沿った面(すなわち、(110)面に略平行な面)によって側面33bが形成される。また、(100)面及び(110)面の各々に対して54.7度傾斜する(111)面に沿った面(すなわち、(111)面に略平行な面)によって傾斜面33cが形成される。すなわち、底面33aの面方位と側面33bの面方位と傾斜面33cの面方位とは、互いに異なっている。このように、溝部33は、スキャロップSが除去されている点だけでなく、底部の角部(すなわち、底面と側面とが接続される領域)の形状に関しても、溝部32と異なっている。
【0059】
上述したような溝部33の内面の形状は、面方位によるエッチングレートの違いによって形成される。具体的には、溝部33の底部の角部において、(111)面に垂直な方向のエッチングレートが、(100)面に垂直な方向(すなわち、溝部33の深さ方向)のエッチングレート及び(110)面に垂直な方向(すなわち、溝部33の幅方向)のエッチングレートよりも遅くなる。これにより、(111)面に沿った傾斜面33cが形成される。
【0060】
なお、上述した親水化処理又は脱気処理(第2工程)は、異方性のウェットエッチングを行う第3工程の前に実施されたが、当該親水化処理又は脱気処理に代えて(或いは、当該親水化処理又は脱気処理と併用して)、第3工程におけるウェットエッチングと同時に溝部32に対する脱気処理(第2工程)が実施されてもよい。溝部32に対する脱気処理は、例えば、超音波を用いて、ウェットエッチング中に基板30とエッチング液とが反応することにより溝部32内に発生する反応性ガス(例えば水素)、又は溝部32内のエッチング液に溶存する気体(例えば二酸化炭素、酸素、窒素等)を除去する処理である。
【0061】
また、上述した面方位間のエッチングレートの差を適切に調整するために、第2工程では、エッチング液に対して、エッチングレートの異方性に影響を与える薬液(例えば、界面活性剤NCW、IPA(イソプロピルアルコール)等)が添加されてもよい。これにより、溝部33(傾斜面33c)の形状を適切に調整することができる。
【0062】
上述した半導体装置の製造方法(第3工程までの処理)により、図8(a)に示されるように、主面31に溝部33が形成された基板30が得られる。溝部33の深さは、例えば5~30μm程度である。
【0063】
(第4工程)
続いて、図8(b)に示されるように、基板30の主面31上に、溝部33の内面上に設けられた第1部分41と、第1部分41と一体的に形成され、主面31上に設けられた第2部分42と、を有する絶縁層40が形成される。より具体的には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなる第1層44を主面31及び溝部33の内面上に形成した後に、シリコン窒化膜(LP-SiN)からなる第2層45を第1層44上に形成する。第1層44及び第2層45の厚さは、例えば100~1000nm程度である。
【0064】
より具体的には、第4工程では、絶縁層40における第1部分41と第2部分42との境界部分43の基板30とは反対側の表面43aが、配線部60の延在方向から見た場合に、主面31に垂直な方向A1に対して傾斜した傾斜面43bを含む絶縁層40が形成される(図4参照)。例えば、シリコン酸化膜からなる第1層44、及びシリコン窒化膜からなる第2層45を主面31及び溝部33の内面上に形成することにより、境界部分43の表面43aに傾斜面43bが形成される。これは、シリコン酸化膜からなる第1層44には傾斜形状が容易に形成されるためである。
【0065】
(第5工程)
続いて、図9(a)に示されるように、絶縁層40の第1部分41及び第2部分42上に金属層50が形成される。第5工程では、金属層50上に金属層55が形成される。金属層55は、例えば、銅等の金属材料によって構成されている。金属層55は、金属層50と共にシード層として機能する。金属層50及び金属層55は、例えば、スパッタリングにより形成されるが、原子層堆積法(ALD)、化学成長法(CVD)、イオンプレーティング又は無電解メッキにより形成されてもよい。金属層50及び金属層55の総厚は、例えば10nm~3000nm程度である。
【0066】
(第6工程)
続いて、図9(b)に示されるように、溝部33内に埋め込まれた金属層50上に、配線部60が形成される。配線部60は、例えば、メッキにより形成される。配線部60は、例えば、主面31上における配線部60の厚さの平均が1μm以上となるように形成される。なお、この例では金属層55が配線部60と同一の材料により構成されているため、配線部60の形成時に配線部60と金属層55とが一体化され、配線部60と金属層55の間の界面が無くなる場合がある。この場合、金属層55は配線部60を構成するとみなすことができる。
【0067】
(第7工程)
続いて、図10(a)に示されるように、絶縁層40の第2部分42が露出するように、例えば化学機械研磨(CMP)により、第2部分42上の金属層50、金属層55及び配線部60が除去される。第7工程では、絶縁層40、金属層50、金属層55及び配線部60に対して、基板30とは反対側から化学機械研磨が実施される。絶縁層40、金属層50、金属層55及び配線部60の各々について、主面31に垂直な方向A1における主面31又は底面33aとは反対側の一部が除去されることにより、絶縁層40、金属層50、金属層55及び配線部60が平坦化される。このとき、この例では、絶縁層40の第2層45のうち第2部分42を構成する部分が除去される。
【0068】
(第8工程)
続いて、図10(b)に示されるように、絶縁層40の第2部分42、金属層50の端部51、及び配線部60を覆うように、キャップ層70が形成される。キャップ層70は、例えばシリコン窒化膜(PE-SiN)からなり、200~3000nm程度の厚さに形成される。続いて、第2シリコン層82及び絶縁層83が、エッチング等により除去される。以上の工程により、上述したダマシン配線構造100が得られる。
【0069】
[作用効果]
上述した半導体基板の製造方法(第1工程~第3工程)では、第1工程において底面33aとスキャロップSが形成された側面33bとを有する溝部32を形成した後に、第2工程において溝部32の側面32bに対する親水化処理又は溝部32に対する脱気処理を行うことにより、溝部32の側面32bに対するエッチング液の濡れ性を向上させることができる。また、溝部32の底面32aが存在する状態で異方性のウェットエッチングを行うことにより、溝部32内にエッチング液を効果的に充填させることができる。これにより、エッチング液で溝部32の側面32bの全体を濡らすことができ、側面32bに形成されたスキャロップSを効果的に除去することができる。すなわち、スキャロップSが除去された溝部33が得られる。スキャロップSが除去されることにより、溝部における構造上のウィークポイントを解消することができる。
【0070】
さらに、第3工程において異方性のエッチングが行われることにより、溝部32の開口側と底面側との間において、側面32bのエッチングレートをほぼ均一化することができる。これにより、溝部32の開口側の幅がテーパ状に広がってしまうといった不具合の発生を抑制することができる。従って、上記半導体基板の製造方法によれば、信頼性の高い溝部33を有する基板30を製造することができる。すなわち、基板30の主面31において、適切な形状が維持されると共にスキャロップSが適切に除去された溝部33を形成することができる。
【0071】
上述したダマシン配線構造の製造方法(第1工程~第8工程)によれば、スキャロップSが適切に除去された溝部33の内面に対して、絶縁層40及び金属層50が形成される。これにより、上述したボイド又はクラック等の発生を抑制できるため、信頼性の高いダマシン配線構造100を得ることができる。すなわち、信頼性の高い溝部33が形成される結果、溝部33に形成されるダマシン配線構造100の信頼性を向上させることができる。
【0072】
また、上記ダマシン配線構造の製造方法では、図5に示されるように、基板30の主面31が(100)面に沿っており、第1工程では、(110)面に沿った方向(本実施形態では、X軸方向又はY軸方向)に延在する溝部33(第1溝部133又は第2溝部233)が形成される。上記構成によれば、(100)面に沿った底面33aと(110)面に沿った側面33bとが形成される。さらに、面方位によるエッチングレートの違いを利用することにより、底面33aと側面33bとの間に、(111)面に沿うと共に底面33a及び側面33bに対して傾斜する傾斜面33cを形成することが可能となる。そして、傾斜面33cが形成される場合の底面33aと側面33bとの間の角部の角度(すなわち、底面33aと傾斜面33cとが成す角度又は側面33bと傾斜面33cとが成す角度)は、傾斜面33cが形成されない場合の角部の角度(すなわち、底面33aと側面33bとが成す角度)よりも大きくなる。本実施形態では、底面33aと傾斜面33cとが成す角度は、略125.3度であり、側面33bと傾斜面33cとが成す角度は、略144.7度である。一方、傾斜面33cが形成されない場合の角部の角度(すなわち、底面と側面とがなす角度)は略90度である。すなわち、傾斜面33cが形成されることにより、傾斜面33cが形成されない場合よりも丸みを帯びた角部(すなわち、段階的に緩やかに屈曲する角部)が形成されることになる。このような角部によれば、当該角部において絶縁層40のクラックを生じ難くすることができる。従って、上記構成によれば、より信頼性の高いダマシン配線構造100を得ることができる。すなわち、より一層信頼性の高い溝部33が形成される結果、溝部33内に形成されるダマシン配線構造100の信頼性をより一層向上させることができる。
【0073】
上述した基板30(すなわち、第1工程~第3工程により製造される半導体基板)では、上述したように、底面33aと側面33bとの間の角部の角度は、傾斜面33cが設けられない場合の角部の角度よりも大きい。すなわち、傾斜面33cにより、傾斜面33cが形成されない場合よりも丸みを帯びた角部(すなわち、段階的に緩やかに屈曲する角部)が形成されている。このような角部を有する溝部33によれば、例えば溝部33の内面に所定の材料層(本実施形態では、絶縁層40)を設ける場合等において、当該角部における当該材料層のクラックの発生が抑制される。以上により、基板30では、上述した溝部33により、信頼性が高められている。また、基板30は、面方位によるエッチングレートの違いを利用することにより、比較的容易に得られる。
【0074】
上述したダマシン配線構造100は、上述したような底面33a、側面33b、及び傾斜面33cを有する溝部33内に配線部60等が埋め込まれることによって形成されている。このため、溝部33の角部において、絶縁層40のクラックが抑制されている。従って、ダマシン配線構造100では、溝部33により、信頼性が高められている。
【0075】
また、ダマシン配線構造100では、底面33aは(100)面に沿った面であり、側面33bは(110)面に沿った面であり、傾斜面33cは(111)面に沿った面である。上記構成によれば、面方位によるエッチングレートの違いを利用することにより、上述した効果を奏するダマシン配線構造100を容易に得ることができる。
【0076】
図11は、ダマシン配線構造100の隅部(すなわち、第1溝部133と第2溝部233とが交わる外側のコーナー部分)を模式的に示す斜視図である。図11では、ダマシン配線構造100が形成される前の状態(すなわち、第1溝部133及び第2溝部233内に配線部60等が埋め込まれる前の状態)が図示されている。図11に示されるように、第1溝部133と第2溝部233とが合流する隅部では、第1溝部133と第2溝部233とは、底面33aを共有する。すなわち、第1溝部133の底面33aと第2溝部233の底面33aとは、隅部において連続している。
【0077】
第1溝部133は、第1側面133bと、第1傾斜面133cと、を有している。第1傾斜面133cは、底面33a及び第1側面133bの間において、底面33a及び第1側面133bに接続されると共に、底面33a及び第1側面133bに対して傾斜している。上述したように、本実施形態では、底面33aは(100)面に沿っており、第1側面133bは(110)面に沿っており、第1傾斜面133cは(111)面に沿っている。よって、底面33aと第1傾斜面133cとが成す角度は、略125.3度であり、第1側面133bと第1傾斜面133cとが成す角度は、略144.7度である。
【0078】
第2溝部233は、第2側面233bと、第2傾斜面233cと、を有している。第2傾斜面233cは、底面33a及び第2側面233bの間において、底面33a及び第2側面233bに接続されると共に、底面33a及び第2側面233bに対して傾斜している。上述したように、本実施形態では、底面33aは(100)面に沿っており、第2側面233bは(110)面に沿っており、第2傾斜面233cは(111)面に沿っている。よって、底面33aと第2傾斜面233cとが成す角度は、略125.3度であり、第2側面233bと第2傾斜面233cとが成す角度は、略144.7度である。
【0079】
第1側面133bと第2側面233bとの間、及び第1傾斜面133cと第2傾斜面233cとの間には、中間面35が形成されている。中間面35は、第1側面133b、第2側面233b、第1傾斜面133c、第2傾斜面233c、及び底面33aに接続されている。中間面35は、主面31に垂直な方向(X軸方向)に平行な(100)面に沿っている(図5参照)。中間面35は、面方位によるエッチングレートの違いによって形成される。具体的には、(110)面よりも(100)面の方がエッチングレートが遅いため、(100)面である中間面35が露出する形状が得られる。また、中間面35と第1側面133bとが成す角度、及び中間面35と第2側面233bとが成す角度は、いずれも鈍角である。具体的には、上記角度はいずれも略135度となっている。なお、中間面35は、図11に示されるような平坦面であってもよいし、中間面35における第1側面133bと第2側面233bとの間の部分は、中間面35における第1傾斜面133cと第2傾斜面233cとの間の部分に対して傾斜していてもよい。また、中間面35は、必ずしも底面33aに対して直角に形成されていなくてもよく、中間面35は、底面33aに対して傾斜していてもよい。
【0080】
上記構成によれば、第1溝部133と第2溝部233とが交差する隅部(主面31に垂直な方向(図5のX軸方向)から見た場合における隅部)の角度(すなわち、中間面35と第1側面133bとが成す角度又は中間面35と第2側面233bとが成す角度)は、中間面35が形成されない場合の当該隅部の角度(すなわち、第1側面133bと第2側面233bとが成す角度)よりも大きくなる。本実施形態では、中間面35が形成されている場合の隅部の角度(すなわち、中間面35と第1側面133bとが成す角度、又は中間面35と第2側面233bとが成す角度)は、略135度であり、中間面35が形成されない場合の隅部の角度は略90度である。すなわち、中間面35が形成されることにより、中間面35が形成されない場合よりも丸みを帯びた隅部(すなわち、段階的に屈曲する隅部)が形成されることになる。このような隅部によれば、基板30に対して振動が加わった際等に当該隅部において配線部60に作用する応力を効果的に低減することができる。従って、上記構成によれば、より一層信頼性が高められたダマシン配線構造100を得ることができる。特に、本実施形態のようにダマシン配線構造100がミラー装置1に適用される場合、第1可動部3又は第2可動部4が揺動することによって基板30には頻繁に振動が加わることになるため、上述した隅部の構成(すなわち、中間面35が形成される構成)は特に有効である。
【0081】
ダマシン配線構造100では、絶縁層40が、溝部33の内面上に設けられた第1部分41、及び、第1部分41と一体的に形成され、主面31上に設けられた第2部分42を有しており、キャップ層70が、絶縁層40の第2部分42、金属層50の端部51、及び配線部60を覆うように設けられている。これにより、例えば絶縁層40が第1部分41のみを有している場合と比べて、応力が集中し易い箇所を少なくすることができる。すなわち、絶縁層40が第1部分41のみを有している場合、絶縁層40の端部が主面31と溝部33との境界部分の近傍に位置し、主面31とキャップ層70とが接触する。この場合、基板30、絶縁層40の当該端部、金属層50の端部51、配線部60及びキャップ層70が、互いに近い箇所において接触することとなる。このような箇所には応力が集中し易い。これに対し、ダマシン配線構造100では、主面31と溝部33との境界部分の近傍に絶縁層40の端部が存在しないため、応力が集中する箇所を少なくすることができる。更に、金属層50の端部51がキャップ層70に接触するように延在している。仮に、端部51がキャップ層70に到達しておらず、配線部60の表面60aよりも低い位置に留まっていると、配線部60のうち金属層50から露出した部分にボイドが発生するおそれがある。これに対し、ダマシン配線構造100では、そのようなボイドの発生を抑制することができ、ボイドに起因するキャップ層70の剥離等を抑制することができる。更に、絶縁層40における第1部分41と第2部分42との境界部分43の基板30とは反対側の表面43aが傾斜面43bを含んでおり、金属層50の端部51が、キャップ層70と傾斜面43bとの間に入り込んでいる。そして、端部51においては、キャップ層70に沿った第1表面51aと傾斜面43bに沿った第2表面51bとが鋭角を成している。これにより、キャップ層70に応力が集中的に作用するのを抑制することができる。以上により、ダマシン配線構造100では、信頼性が高められている。
【0082】
ダマシン配線構造100では、キャップ層70の厚さT1が、絶縁層40の厚さT2よりも厚い。これにより、キャップ層70の強度を高めることができ、信頼性を一層高めることができる。
【0083】
ダマシン配線構造100では、キャップ層70のうち端部51の第1表面51aに接触する部分と、絶縁層40のうち端部51の第2表面51bに接触する部分(境界部分43を構成する第2層45)とが、互いに同一の材料によって構成されている。これにより、キャップ層70と金属層50の端部51との接触部分の近傍においてキャップ層70と絶縁層40との間の接合強度を高めることができ、信頼性をより一層高めることができる。
【0084】
ダマシン配線構造100では、絶縁層40が、酸化膜からなる第1層44と、窒化膜からなり、第1層44上に設けられた第2層45と、を有している。これにより、酸化膜からなる第1層44に傾斜形状を容易に形成し得るため、傾斜面43bの形成を容易化することができる。
【0085】
ダマシン配線構造100では、傾斜面43bが凸状に湾曲している。これにより、キャップ層70に応力が集中的に作用するのをより確実に抑制することができる。
【0086】
ダマシン配線構造100では、金属層50の端部51における第2表面51bとは反対側の第3表面51cが傾斜しており、配線部60の一部61が、キャップ層70と第3表面51cとの間に入り込んでいる。これにより、配線部60により金属層50の端部51を押さえることができ、金属層50からキャップ層70に作用する応力を低減することができる。更に、配線部60の一部61の主面31に垂直な方向A1における厚さが薄くなるため、配線部60からキャップ層70に作用する応力を低減することができる。
【0087】
ダマシン配線構造100では、金属層50の端部51の主面31に平行な方向A2における厚さが、金属層50における端部51以外の部分の厚さよりも厚い。これにより、金属層50の端部51とキャップ層70との接触面積を大きくすることができ、金属層50からキャップ層70に作用する応力をより好適に分散させることができる。
【0088】
ダマシン配線構造100では、金属層50の端部51の主面31に平行な方向A2における厚さが、端部51の先端に近づくにつれて漸増している。これにより、金属層50の端部51とキャップ層70との接触面積を一層大きくすることができ、金属層50からキャップ層70に作用する応力をより一層好適に分散させることができる。
【0089】
ダマシン配線構造100では、溝部33が渦巻き状に延在している。このように溝部33が渦巻き状に延在している場合でも、高い信頼性を得ることができる。
【0090】
ダマシン配線構造100では、溝部33における互いに隣り合う部分34の間の間隔Bは、溝部33の幅Wよりも小さくてもよい。これにより、配線のピッチ(間隔)を狭くすることができ、省スペース化を図ることができる。
【0091】
ダマシン配線構造100では、溝部33の幅Wが溝部33の深さDよりも小さい。これにより、省スペース化、及び配線の低抵抗化を図ることができる。
【0092】
ダマシン配線構造100では、主面31に垂直な方向A1における溝部33の底面33aと基板30における主面31とは反対側の反対面(第1シリコン層81の表面81a)との間の距離Lが、溝部33の深さDよりも大きい。これにより、基板30の強度を高めることができ、信頼性をより一層高めることができる。
【0093】
[変形例]
以上、本開示の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本開示は上記実施形態に限定されない。各構成の材料及び形状は、上述した例に限られない。上記実施形態では、ミラー装置1に適用されるダマシン配線構造100について説明したが、ダマシン配線構造100は、ミラー装置1以外の装置に適用されてもよい。また、上記実施形態では、二軸(第1軸線X1及び第2軸線X2)の周りに回動可能な二軸タイプのミラー装置1を例示したが、ダマシン配線構造100は、一軸の周りに回動可能な一軸タイプのミラー装置に適用されてもよい。
【0094】
上記半導体基板の製造方法(第1工程~第3工程)では、ダマシン配線構造100を製造する目的で主面31に沿った方向に延在するトレンチ形状の溝部32,33が形成されたが、第1工程~第3工程では、例えば断面円形等のビア形状の凹部が形成されてもよい。この場合にも、第1工程で凹部の側面に形成されたスキャロップを第3工程におけるウェットエッチングによって適切に除去することができる。また、第3工程が実施された後に、凹部の底面は除去されてもよい。例えば、第2シリコン層82の絶縁層83とは反対側の面から研磨等を行うことにより、凹部の底面を除去し、貫通孔を形成してもよい。このような貫通孔は、例えば貫通電極(金属)を埋め込むために用いられ得る。なお、このような貫通孔を形成する場合、第3工程により形成された傾斜面を研磨により除去することができ、等幅でストレートに延在し、且つスキャロップが存在しない貫通孔を得ることができる。
【0095】
上記実施形態では、オリエンテーションフラットOFが(110)面であるSOIウェハSWが使用された。このため、溝部33の側面33bを(110)面に沿わせるために、オリエンテーションフラットOFに沿ったX軸方向又はオリエンテーションフラットOFに垂直なY軸方向に沿って溝部33が形成された。ただし、基板30の製造に用いられるSOIウェハは、上記SOIウェハSWに限られない。例えば、オリエンテーションフラットOFが(100)面であるSOIウェハが使用される場合、当該SOIウェハにおける面方位は、図5に示した面方位とは逆となる。すなわち、図5に示した(100)面が(110)面となり、図5に示した(110)面が(100)面となる。この場合、X軸方向及びY軸方向に対して45度傾斜する方向に沿って溝部を形成することにより、(110)面に沿った側面を有する溝部を形成することができる。すなわち、面方位が上記SOIウェハSWと異なるSOIウェハを用いる場合であっても、溝部のデザイン(延在方向)を調整することにより、上述した溝部33と同様の構造を有する溝部を形成することができる。また、SOIウェハSWにおいて、第1シリコン層81の結晶方位と第2シリコン層82の結晶方位とは、必ずしも一致していなくてもよい。
【0096】
また、ダマシン配線構造100は、図12に示される第1変形例のように構成されてもよい。第1変形例では、基板30における主面31と溝部33との境界部分には、配線部60の延在方向から見た場合に、主面31に垂直な方向A1に対して外側に傾斜した境界面36が設けられている。境界面36は、例えば平坦面である。絶縁層40の境界部分43は、境界面36上に設けられているため、境界面36に沿って延在し、主面31に垂直な方向A1に対して外側に傾斜している。境界部分43の傾斜面43b、及び金属層50の端部51の第2表面51bは、境界面36に平行な平坦面となっている。端部51の第3表面51cも、方向A1に対して外側に傾斜した平坦面となっている。第3表面51cの方向A1に対する傾斜角度は、第2表面51bの方向A1に対する傾斜角度よりも緩やかになっている。これにより、主面31に平行な方向A2における端部51の厚さは、端部51の先端に近づくにつれて漸増している。
【0097】
第1変形例のダマシン配線構造100の製造に際しては、例えば、ノンボッシュプロセス及びボッシュプロセスを用いた反応性イオンエッチングにより溝部33が形成される。これにより、溝部33の形成時に、基板30における主面31と溝部33との境界部分に境界面36が形成される。ノンボッシュプロセス及びボッシュプロセスを組み合わせることにより、信頼性の向上を図ることができる。
【0098】
第1変形例によっても、上記実施形態と同様に、信頼性を高めることができる。更に、基板30における主面31と溝部33との境界部分に境界面36が設けられているため、傾斜面43bの形成を容易化することができる。第1変形例においても、溝部33が有する複数の部分34同士の間の間隔Bは、溝部33の幅Wよりも小さくてもよい。第1変形例の場合、間隔Bは、複数の部分34における境界面36以外の内面間の距離(換言すれば、溝部33の内面のうち主面31に垂直な方向A1に沿って延在する部分の間の距離)である。
【0099】
ダマシン配線構造100は、図13に示される第2変形例のように構成されてもよい。第2変形例では、配線部60の表面60aが、絶縁層40の第2部分42の表面42aに対して、溝部33の底面33a側に位置している。金属層50の端部51の第3表面51cが、キャップ層70における表面60a上の部分と表面42a上の部分との境界部分71によって覆われている。境界部分71は、第3表面51cに沿って延在しており、主面31に垂直な方向A1に対して外側に傾斜している。第2変形例のダマシン配線構造100の製造に際しては、例えば、第7工程の化学機械研磨におけるスラリーを調整することにより配線部60のディッシング量(配線部60が除去される量)を増加させる。これにより、図13に示されるような形状の配線部60を形成することができる。
【0100】
第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、信頼性を高めることができる。更に、表面60aが表面42aに対して溝部33の底面33a側に位置している。これにより、応力が集中し易い箇所を一層少なくすることができる。更に、境界部分71によって端部51の第3表面51cが覆われるため、金属層50の端部51とキャップ層70との接触面積を一層大きくすることができ、金属層50からキャップ層70に作用する応力を一層好適に分散させることができる。
【0101】
ダマシン配線構造100は、図14(a)に示される第3変形例のように構成されてもよい。第3変形例では、第2変形例と同様に、配線部60の表面60aが、絶縁層40の第2部分42の表面42aに対して、溝部33の底面33a側に位置している。また、金属層50の端部51の第3表面51cが、キャップ層70の境界部分71によって覆われている。第3変形例では、キャップ層70の厚さT1が、主面31に垂直な方向A1における表面60aと表面42aとの間の距離Hよりも大きい。第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、信頼性を高めることができる。更に、キャップ層70の厚さT1が、主面31に垂直な方向A1における表面60aと表面42aとの間の距離Hよりも大きいため、キャップ層70の強度を一層高めることができる。
【0102】
ダマシン配線構造100は、図14(b)に示される第4変形例のように構成されてもよい。第4変形例では、第2変形例と同様に、配線部60の表面60aが、絶縁層40の第2部分42の表面42aに対して、溝部33の底面33a側に位置している。また、金属層50の端部51の第3表面51cが、キャップ層70の境界部分71によって覆われている。第4変形例では、キャップ層70の厚さT1が、主面31に垂直な方向A1における表面60aと表面42aとの間の距離Hよりも小さい。第4変形例によっても、上記実施形態と同様に、信頼性を高めることができる。更に、キャップ層70の厚さT1が、主面31に垂直な方向A1における表面60aと表面42aとの間の距離Hよりも小さいため、方向A1における配線部60の厚さを薄くすることができ、その結果、配線部60からキャップ層に作用する応力を一層低減することができる。
【0103】
金属層50の端部51の第3表面51cは、第2表面51bに沿って延在していてもよい。例えば、第3表面51cの傾斜の度合い(傾斜角度)が第2表面51bの傾斜の度合い(傾斜角度)と同一であってもよい。第3表面51cと第2表面51bとが互いに平行に延在していてもよい。第2部分42は、第1層44及び第2層45によって構成されていてもよい。この場合、応力が集中し易い箇所を一層少なくすることができる。キャップ層70が絶縁層40の第2層45と同一の材料によって構成されている場合、同一の材料同士が接合されている部分の面積が大きくなるため、密着性を高めることができる。絶縁層40は、単一の層によって構成されていてもよい。絶縁層40は、例えば、酸化膜からなる単一の層によって構成されてもよい。この場合、キャップ層70は、酸化膜によって構成されてもよい。配線部60の延在方向から見た場合に、第1表面51aと第2表面51bとは、互いの曲率が連続するように接続されていてもよい。ダマシン配線構造100は、アクチュエータ装置以外の構成に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0104】
30…基板(半導体基板)、31…主面、32,33…溝部、32a,33a…底面、32b,33b…側面、33…溝部(凹部)、33c…傾斜面、35…中間面、40…絶縁層、41…第1部分、42…第2部分、50…金属層、51…端部、60…配線部、70…キャップ層、100…ダマシン配線構造、133…第1溝部、133b…第1側面、133c…第1傾斜面、233…第2溝部、233b…第2側面、233c…第2傾斜面、S…スキャロップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14