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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】脊髄性筋萎縮症を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7125 20060101AFI20240619BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240619BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240619BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240619BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240619BHJP
【FI】
A61K31/7125
A61P21/00
A61P43/00 121
G01N33/68 ZNA
C12N15/12
【請求項の数】 52
(21)【出願番号】P 2020561604
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 US2019015185
(87)【国際公開番号】W WO2019147960
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】62/622,027
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/684,507
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/738,134
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514198367
【氏名又は名称】バイオジェン・エムエイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biogen MA Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】フェアウェル, ウィルドン
(72)【発明者】
【氏名】スタロポリ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, グオリン
(72)【発明者】
【氏名】マッキャンベル, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ステビンス, クリストファー コーディー
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/207600(WO,A1)
【文献】特表2009-545617(JP,A)
【文献】特表2012-526046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0267073(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0285822(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0363643(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0280733(US,A1)
【文献】「スピンラザ髄注12mg」添付文書,バイオジェン・ジャパン株式会社,2017年09月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とするヒト対象において脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療するための、ヌシネルセンまたはヌシネルセン塩を含む組成物であって、前記ヒト対象が前もって、前記ヒト対象から得られた生体試料中で、前記治療の開始前にニューロフィラメントレベルが対照よりも高いと判定されており、前記ニューロフィラメントが、ニューロフィラメント軽鎖またはリン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、前記生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液である、前記組成物。
【請求項2】
脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療することを、それを必要とするヒト対象において行う方法において使用するための、ヌシネルセンまたはヌシネルセン塩を含む組成物であって、前記方法は、
治療の開始前に前記ヒト対象から得られた生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することであって、前記生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントが、ニューロフィラメント軽鎖またはリン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、前記生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液である、前記測定することと、
前記ヒト対象に前記組成物を投与することであって、前記ヒト対象が、対照より高い、治療の開始前の前記ヒト対象から得られた生体試料中のニューロフィラメントレベルを有する、前記投与すること
を含む、前記組成物。
【請求項3】
前記生体試料中の前記ニューロフィラメントレベルが400pg/mLを上回る、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
それを必要とするヒト対象において脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療する方法において使用するためのSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物であって、前記方法は、
治療の開始前に前記ヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することであって、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントが、ニューロフィラメント軽鎖またはリン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、前記第1の生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液である、前記測定することと、
前記ヒト対象に前記SMA治療剤または前記SMA治療剤の組み合わせ物を投与することであって、前記ヒト対象が、対照より高い、治療の開始前の前記ヒト対象から得られた生体試料中のニューロフィラメントレベルを有する、前記投与することと、
前記治療の開始後に前記ヒト対象から得られた第2の生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することであって、前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメント軽鎖または前記リン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、前記第2の生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液である、前記測定することと
を含み、
前記SMA治療剤が、ヌシネルセン、ヌシネルセン塩、オレソキシム、AVX-101、CK-2127107、RG7916、RG7800、RO7034067、LMI070、SRK-015、AAV9-SMN1、AVXS-101、バルプロ酸、酪酸ナトリウム、フェニル酪酸、またはトリコスタチンAである、前記SMA治療剤または前記SMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項5】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルよりも低い、請求項4に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項6】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルの10%~95%である、請求項5に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項7】
前記第2の生体試料が、前記治療の開始から40~90日後に前記ヒト対象から得られる、請求項4~6のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項8】
前記第2の生体試料が、前記治療の開始から50~80日後に前記ヒト対象から得られる、請求項4~6のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項9】
前記第2の生体試料が、前記治療の開始から60~70日後に前記ヒト対象から得られる、請求項4~6のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項10】
前記第2の生体試料が、前記治療の開始から約64日後に前記ヒト対象から得られる、請求項4~6のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項11】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも50%減少する、請求項7~10のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項12】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも60%減少する、請求項7~10のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項13】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも70%減少する、請求項7~10のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項14】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて50%未満減少する、請求項7~10のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項15】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて40%未満減少する、請求項7~10のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項16】
前記第1の生体試料で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べての、前記第2の生体試料で測定されたニューロフィラメントレベルの前記減少パーセントに基づいて、前記ヒト対象に次に投与するための前記SMA治療剤または前記SMA治療剤の組み合わせ物の用量が変更される、請求項7~15のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項17】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルよりも高い、請求項4に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項18】
前記SMA治療剤または前記SMA治療剤の組み合わせ物の投与が継続される、請求項4~17のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項19】
前記SMA治療剤または前記SMA治療剤の組み合わせ物の投与が中止される、請求項17に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項20】
異なるSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物が、前記治療の中止後に前記ヒト対象に投与されることを特徴とする、請求項19に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項21】
前記異なるSMA治療剤が、ヌシネルセンまたはヌシネルセン塩である、請求項20に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項22】
前記第1の生体試料中の前記ニューロフィラメントレベルが300pg/mLを上回る、請求項4~21のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項23】
前記第1の生体試料中の前記ニューロフィラメントレベルが5,000pg/mLを上回る、請求項4~21のいずれか1項に記載のSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項24】
それを必要とするヒト対象において脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療する方法において使用するためのSMA治療剤またはSMA治療剤の組み合わせ物であって、前記方法は、
前記SMA治療剤または前記SMA治療剤の組み合わせ物の候補量の投与前に前記ヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することであって、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントが、ニューロフィラメント軽鎖またはリン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、前記第1の生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液である、前記測定することと、
前記SMA治療剤または前記SMA治療剤の組み合わせ物の前記候補量の投与後に前記ヒト対象から得られた第2の生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することであって、前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメント軽鎖または前記リン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、前記第2の生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液であり、前記第2の生体試料中の前記ニューロフィラメントレベルが前記第1の生体試料中の前記ニューロフィラメントレベルよりも低いことにより、前記SMA治療剤または前記SMA治療剤の組み合わせ物の前記候補量が治療有効量であることが示される、前記測定することと、
前記第2の生体試料中の前記ニューロフィラメントレベル低下を測定した後に、前記ヒト対象に前記SMA治療剤または前記SMA治療剤の組み合わせ物の前記治療有効量を投与することと
を含み、
前記SMA治療剤が、ヌシネルセン、ヌシネルセン塩、オレソキシム、AVX-101、CK-2127107、RG7916、RG7800、RO7034067、LMI070、SRK-015、AAV9-SMN1、AVXS-101、バルプロ酸、酪酸ナトリウム、フェニル酪酸、またはトリコスタチンAである、前記治療剤または前記SMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項25】
生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルを、脊髄性筋萎縮症(SMA)の予後の指標とする方法であって、前記ニューロフィラメントが、ニューロフィラメント軽鎖またはリン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、
両方のコピーのSMN1遺伝子において機能的SMNタンパク質の欠乏をもたらす変異を有するヒト対象から得られた前記生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することであって、前記生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントが、ニューロフィラメント軽鎖またはリン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、前記生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液である、前記測定することと、
前記生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルを対照と比較することとを含み、
前記対照と比べての前記生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記対象が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる、前記方法。
【請求項26】
前記生体試料が、ヌシネルセンまたはヌシネルセン塩による治療の開始前に前記ヒト対象から得られ、前記対照と比べての前記生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、治療の不在下で前記ヒト対象が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記生体試料が、ヌシネルセンまたはヌシネルセン塩による治療の開始後に前記ヒト対象から得られ、前記対照と比べての前記生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記治療を受けている間に前記対象が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記生体試料が、前記治療の開始から少なくとも2週間後に前記ヒト対象から得られる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記生体試料が、前記治療の開始から少なくとも2ヵ月後に前記ヒト対象から得られる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ヌシネルセンまたはヌシネルセン塩による治療の開始前および開始後の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルを、脊髄性筋萎縮症(SMA)の予後の指標とする方法であって、前記ニューロフィラメントが、ニューロフィラメント軽鎖またはリン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、
治療の開始前に、両方のコピーのSMN1遺伝子において機能的SMNタンパク質の欠乏をもたらす変異を有するヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することであって、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントが、ニューロフィラメント軽鎖またはリン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、前記第1の生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液である、前記測定することと、
ヌシネルセンまたはヌシネルセン塩による治療の開始後に前記ヒト対象から得られた第2の生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することであって、前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントが、前記第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメント軽鎖またはリン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、前記第2の生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液である、前記測定することと、
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルを、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比較することとを含み、
前記第1の生体試料で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べての前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記対象が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる、前記方法。
【請求項31】
前記第2の生体試料が、前記治療の開始から40~90日後に前記ヒト対象から得られる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の生体試料が、前記治療の開始から50~80日後に前記ヒト対象から得られる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の生体試料が、前記治療の開始から60~70日後に前記ヒト対象から得られる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の生体試料が、前記治療の開始から約64日後に前記ヒト対象から得られる、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも50%減少する、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも60%減少する、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも70%減少する、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて50%未満減少する、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて40%未満減少する、請求項30~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記対照が、予め確立されたニューロフィラメントのカットオフ値である、請求項1に記載の組成物。
【請求項41】
前記対照が、予め確立されたニューロフィラメントのカットオフ値である、請求項25~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記対照が、SMAを有しないヒト対象1例以上から得られた生体試料(1つまたは複数)中の前記ニューロフィラメントレベルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項43】
前記対照が、SMAを有しないヒト対象1例以上から得られた生体試料(1つまたは複数)中の前記ニューロフィラメントレベルである、請求項25~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
ニューロフィラメントレベルを測定するための方法であって、前記ニューロフィラメントが、ニューロフィラメント軽鎖またはリン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、
両方のコピーのSMN1遺伝子において機能的SMNタンパク質の欠乏をもたらす変異を有するヒト対象から得られた生体試料を準備することと、
前記生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することであって、前記生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントが、ニューロフィラメント軽鎖またはリン酸化ニューロフィラメント重鎖であり、前記生体試料が、血液、血清、血漿、または脳脊髄液である、前記測定することとを含む、前記方法。
【請求項45】
前記ニューロフィラメントがリン酸化ニューロフィラメント重鎖である、請求項1~3、40もしくは42のいずれか1項に記載の組成物、または請求項4~27のいずれか1項に記載のSMA治療剤もしくはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項46】
前記ニューロフィラメントがリン酸化ニューロフィラメント重鎖である、請求項25~39、41、43または44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ニューロフィラメントがニューロフィラメント軽鎖である、請求項1~3、40もしくは42のいずれか1項に記載の組成物、または請求項4~18、19~24のいずれか1項に記載のSMA治療剤もしくはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項48】
前記ニューロフィラメントがニューロフィラメント軽鎖である、請求項25~39、41、43または44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記ヒト対象が乳幼児である、請求項1~3、40、42、45もしくは47のいずれか1項に記載の組成物、または請求項4~24のいずれか1項に記載のSMA治療剤もしくはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項50】
前記ヒト対象が18歳未満である、請求項1~3、40、42、45もしくは47のいずれか1項に記載の組成物、または請求項4~24のいずれか1項に記載のSMA治療剤もしくはSMA治療剤の組み合わせ物。
【請求項51】
前記ヒト対象が乳幼児である、請求項25~39、41、43、44、46もしくは48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記ヒト対象が18歳未満である、請求項25~39、41、43、44、46もしくは48のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/622,027号(2018年1月25日出願)、米国仮特許出願第62/684,507号(2018年6月13日出願)、及び米国仮特許出願第62/738,134号(2018年9月28日出願)の優先権を主張する。前述の出願の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本開示は概して、脊髄性筋萎縮症のバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0003】
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、SMNタンパク質の欠乏をもたらす常染色体劣性遺伝性障害であり、SMNタンパク質の欠乏は、ひいては前角運動ニューロンの喪失、軸索の劣化、ならびに進行性筋消耗、運動障害、及び呼吸不全の表現型をもたらす。疾患の重症度は5つのタイプ(0~4)に分類され、0型の患者は、最も重度の(新生児致死)表現型を有し、4型の患者は、最も軽度の症状を有するにとどまり、寿命は正常である。
【0004】
SMAを有する対象をタイムリーかつ適切に治療するには、SMAを治療するための療法を用いた治療を必要とする症状発現前の対象を選択し、そのSMA療法が有効であるかを判定する能力が求められる。したがって、SMAのバイオマーカーが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ニューロフィラメントは神経細胞骨格の主要な構成要素であり、特にニューロフィラメントが成長及び維持に必須な軸索においては主要な構成要素である。構造的には、ニューロフィラメントは3つの絡み合ったコアサブユニット:ニューロフィラメント重(NF-H)、中/中間(NF-M)、及び軽(NF-L)ポリペプチドからなり、これらのサブユニットが「ニューロフィラメントトリプレット」を形成する。本開示は、少なくとも部分的には、ニューロフィラメントレベルが脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する有効なバイオマーカーとして働くという知見に基づく。
【0006】
1つの態様において、本開示はSMAを治療することを、それを必要とするヒト対象において行う方法を特徴とする。当該方法は、ヒト対象にSMA療法の治療有効量を投与することを含み、このときヒト対象は前もって、ヒト対象から得られた生体試料中で、SMA療法の開始前にニューロフィラメントレベルが対照よりも高いと判定されている。当該方法は、例えば、症状発現前の対象の治療に使用することができる。
【0007】
別の態様において、本開示は、ヒト対象におけるSMAを治療することを、それを必要とするヒト対象において行う方法を提供する。当該方法は、SMA療法を開始する前のヒト対象から得られた生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することと、ヒト対象にSMA療法の治療有効量を投与することとを含む。
【0008】
上記の2つの態様におけるいくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、リン酸化ニューロフィラメント重(PNF-H)レベル)は対照レベルを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は300pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は400pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は500pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は600pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は700pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は800pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は900pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は1,000pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は1,100pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は1,200pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は1,300pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は1,400pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は1,500pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は2,000pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は3,000pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は4,000pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は5,000pg/mLを上回る。これらのニューロフィラメントレベルは、本出願の実施例セクションに記載のアッセイを用いて得ることができる。異なる読出し(例えば、O.D.または国際単位)をもたらす異なるニューロフィラメントアッセイが使用される場合、ニューロフィラメントレベルの値が異なり得ることを理解されたい。
【0009】
別の態様において、本開示は、SMAを治療することを、それを必要とするヒト対象において行う方法を特徴とする。当該方法は、SMA療法の開始前にヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)を測定することと、ヒト対象にSMA療法(例えば、SMA療法の治療有効量)を投与することと、SMA療法の開始後にヒト対象から得られた第2の生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)を測定することとを含む。
【0010】
別の態様において、本開示は、SMAを治療することを、それを必要とするヒト対象において行う方法を特徴とする。当該方法は、SMA療法の候補量の投与前にヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)を測定することと、SMA療法の候補量の投与後にヒト対象から得られた第2の生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)を測定することとであって、第2の生体試料中のニューロフィラメントレベルが第1の生体試料中のニューロフィラメントレベルよりも低いことにより、SMA療法の候補量が治療有効量であることが示される、測定することと、第2の生体試料中のニューロフィラメントレベル低下を測定した後に、ヒト対象にSMA療法の治療有効量を投与することとを含む。
【0011】
ある特定の実施形態において、第1の生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、300pg/mL超、400pg/mL超、500pg/mL超、600pg/mL超、700pg/mL超、800pg/mL超、900pg/mL超、1,000pg/mL超、1,500pg/mL超、2,000pg/mL超、3,000pg/mL超、4,000pg/mL超、または5,000pg/mL超である。ある特定の実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルよりも低い。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルに対する30%超の低下を示す。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの10%~80%である。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの20%~95%である。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの30%~90%である。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの30%~95%である。このような場合には、SMA療法の投与が継続される。ある特定の実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルよりも高い。このような場合には、SMA療法の投与が中止される。
【0012】
いくつかの実施形態において、第2の生体試料は、SMA療法の開始から40~90日後にヒト対象から得られる。いくつかの実施形態において、第2の生体試料は、SMA療法の開始から50~80日後にヒト対象から得られる。いくつかの実施形態において、第2の生体試料は、SMA療法の開始から60~70日後にヒト対象から得られる。いくつかの実施形態において、第2の生体試料は、SMA療法の開始から約64日後にヒト対象から得られる。
【0013】
第2の生体試料がSMA療法の開始から40~90日後、50~80日後、60~70日後、または約64日後にヒト対象から得られるいくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも50%減少する。第2の生体試料がSMA療法の開始から40~90日後、50~80日後、60~70日後、または約64日後にヒト対象から得られるいくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも60%減少する。第2の生体試料がSMA療法の開始から40~90日後、50~80日後、60~70日後、または約64日後にヒト対象から得られるいくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも70%減少する。
【0014】
第2の生体試料がSMA療法の開始から40~90日後、50~80日後、60~70日後、または約64日後にヒト対象から得られるいくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルと比べて50%未満減少する。第2の生体試料がSMA療法の開始から40~90日後、50~80日後、60~70日後、または約64日後にヒト対象から得られるいくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルと比べて40%未満減少する。
【0015】
第2の生体試料がSMA療法の開始から40~90日後、50~80日後、60~70日後、または約64日後にヒト対象から得られるいくつかの実施形態において、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルと比べての第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの減少パーセントに基づいて、ヒト対象に次に投与するためのSMA療法の用量が変更される。
【0016】
別の態様において、本開示は、SMAの予後を予測する方法に関する。当該方法は、両方のコピーのSMN1遺伝子において機能的SMNタンパク質の欠乏をもたらす変異(変異はホモ接合性であってもヘテロ接合性であってもよい)を有するヒト対象から得られた生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)を測定することを含む。当該方法はさらに、生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)を対照と比較することを含む。対照と比べての生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、対照が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる。
【0017】
ある特定の実施形態において、生体試料は、SMA療法の開始前にヒト対象から得られ、対象と比べての生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、治療の不在下でヒト対象が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる。
【0018】
いくつかの実施形態において、生体試料は、SMA療法の開始後にヒト対象から得られ、対象と比べての生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、SMA療法を受けている間に対象が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる。ある特定の場合において、生体試料は、SMA療法の開始から少なくとも2週間後にヒト対象から得られる。ある特定の場合において、生体試料は、SMA療法の開始から少なくとも4週間後にヒト対象から得られる。ある特定の場合において、生体試料は、SMA療法の開始から少なくとも6週間後にヒト対象から得られる。ある特定の場合において、生体試料は、SMA療法の開始から少なくとも8週間後にヒト対象から得られる。ある特定の場合において、生体試料は、SMA療法の開始から少なくとも10週間後にヒト対象から得られる。ある特定の場合において、生体試料は、SMA療法の開始から少なくとも12週間後にヒト対象から得られる。ある特定の場合において、生体試料は、SMA療法の開始から少なくとも2ヵ月後にヒト対象から得られる。ある特定の場合において、生体試料は、SMA療法の開始から少なくとも3ヵ月後にヒト対象から得られる。ある特定の場合において、生体試料は、SMA療法の開始から少なくとも4ヵ月後にヒト対象から得られる。ある特定の場合において、生体試料は、SMA療法の開始から少なくとも5ヵ月後にヒト対象から得られる。ある特定の場合において、生体試料は、SMA療法の開始から少なくとも6ヵ月後にヒト対象から得られる。
【0019】
別の態様において、本開示は、SMAの予後を予測する方法に関する。当該方法は、SMA療法の開始前の、両方のコピーのSMN1遺伝子において機能的SMNタンパク質の欠乏をもたらす変異(変異はホモ接合性であってもヘテロ接合性であってもよい)を有するヒト対象から得られた生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)を測定することを含む。当該方法はさらに、SMA療法の開始後にヒト対象から得られた第2の生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)を測定することを含む。当該方法はさらに、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)を、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)と比較することを含む。第1の生体試料で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)と比べての第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)は、対象が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる。概して、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)と比べての第2の試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)の減少パーセントが大きいほど、ヒト対象の将来的な運動機能の予後判定は良好である。
【0020】
いくつかの実施形態において、第2の生体試料は、SMA療法の開始から40~90日後にヒト対象から得られる。いくつかの実施形態において、第2の生体試料は、SMA療法の開始から50~80日後にヒト対象から得られる。いくつかの実施形態において、第2の生体試料は、SMA療法の開始から60~70日後にヒト対象から得られる。いくつかの実施形態において、第2の生体試料は、SMA療法の開始から約64日後にヒト対象から得られる。
【0021】
第2の生体試料がSMA療法の開始から40~90日後、50~80日後、60~70日後、または約64日後にヒト対象から得られるいくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも50%減少する。第2の生体試料がSMA療法の開始から40~90日後、50~80日後、60~70日後、または約64日後にヒト対象から得られるいくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも60%減少する。第2の生体試料がSMA療法の開始から40~90日後、50~80日後、60~70日後、または約64日後にヒト対象から得られるいくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも70%減少する。
【0022】
第2の生体試料がSMA療法の開始から40~90日後、50~80日後、60~70日後、または約64日後にヒト対象から得られるいくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルと比べて50%未満減少する。第2の生体試料がSMA療法の開始から40~90日後、50~80日後、60~70日後、または約64日後にヒト対象から得られるいくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルと比べて40%未満減少する。
【0023】
以下の実施形態は、上記の態様のいずれにも適用される。ある特定の場合において、SMA療法はヌシネルセンまたはヌシネルセン塩を含む。いくつかの場合において、SMA療法はヌシネルセンナトリウムを含む。ある特定の場合において、ヌシネルセンナトリウムは、5mLの2.4mg/mL溶液の髄腔内注入によって投与される。ある特定の場合において、SMA療法は、SPINRAZA(登録商標)、オレソキシム、AVX-101、CK-2127107、RG7916、RG7800、RO7034067、LMI070、またはSRK-015の1つ以上を含む。ある特定の場合において、SMA療法は小分子を含む。ある特定の場合において、SMA療法は遺伝子療法を含む。ある特定の場合において、SMA療法はp38aDMAPK阻害剤を含む。ある特定の場合において、SMA療法はDcpS阻害剤を含む。ある特定の場合において、SMA療法はJNK阻害剤を含む。ある特定の場合において、対照は、予め確立されたニューロフィラメントのカットオフ値である。いくつかの場合において、対照は、SMAを有しないヒト対象1例以上から得られた生体試料(1つまたは複数)中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)である。
【0024】
別の態様において、本開示は、ニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)を測定するための方法を特徴とする。当該方法は、両方のコピーのSMN1遺伝子において機能的SMNタンパク質の欠乏をもたらす変異を有するヒト対象から得られた生体試料を準備することと、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-Hレベル)を測定することとを含む。
【0025】
これらの実施形態は、上記の態様のいずれにも適用される。ある特定の場合において、ニューロフィラメントはニューロフィラメント重鎖(例えば、リン酸化NF-H)である。ある特定の場合において、ニューロフィラメントはニューロフィラメント中鎖/中間鎖である。ある特定の場合において、ニューロフィラメントはニューロフィラメント軽鎖である。ある特定の場合において、ニューロフィラメントはインターネキシンである。ある特定の場合において、ニューロフィラメントはペリフェリンである。ある特定の場合において、生体試料は血液、血清、血漿、または脳脊髄液である。ある特定の場合において、NF-Hは、ポリクローナル抗NF-H抗体を用いて検出される。ある特定の場合において、NF-Hは、高リン酸化形態のNF-Hを特異的に検出するポリクローナル抗NF-H抗体(例えば、Encor Biotechnologyカタログ番号RPCA-NF-H及び/またはカタログ番号CPCA-NF-H)を用いて検出される。いくつかの事例において、NF-Hは、モノクローナル抗NF-H抗体を用いて検出される。ある特定の実施形態において、ヒト対象は胎児である。ある特定の実施形態において、ヒト対象は乳幼児である。ある特定の実施形態において、ヒト対象は生後6ヵ月未満である。ある特定の実施形態において、ヒト対象は生後6ヵ月超である。ある特定の実施形態において、ヒト対象は12歳未満である。ある特定の実施形態において、ヒト対象は18歳未満である。ある特定の実施形態において、ヒト対象は18歳以上の成人である。
【0026】
別途定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験においては、本明細書に記載されたものに類似するまたは同等の方法及び材料を使用してもよいが、例示的な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されている全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により援用される。矛盾が生じる場合は、定義を含めて本出願が優先される。材料、方法、及び実施例は、例示的なものに過ぎず、限定的であるようには意図されていない。
【0027】
本発明におけるその他の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態及び特許請求の範囲から明らかとなる。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療することを、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記ヒト対象に、SMA療法の治療有効量を投与することを含み、前記ヒト対象が前もって、前記ヒト対象から得られた生体試料中で、前記SMA療法の開始前にニューロフィラメントレベルが対照よりも高いと判定されている、前記方法。
(項目2)
脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療することを、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、
SMA療法の開始前に前記ヒト対象から得られた生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することと、
前記ヒト対象に前記SMA療法の治療有効量を投与することとを含む、前記方法。
(項目3)
前記生体試料中の前記ニューロフィラメントレベルが400pg/mLを上回る、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療することを、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、
SMA療法の開始前に前記ヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することと、
前記ヒト対象にSMA療法を投与することと、
前記SMA療法の開始後に前記ヒト対象から得られた第2の生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することとを含む、前記方法。
(項目5)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルよりも低い、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルの10%~95%である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記第2の生体試料が、前記SMA療法の開始から40~90日後に前記ヒト対象から得られる、項目4~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目8)
前記第2の生体試料が、前記SMA療法の開始から50~80日後に前記ヒト対象から得られる、項目4~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記第2の生体試料が、前記SMA療法の開始から60~70日後に前記ヒト対象から得られる、項目4~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記第2の生体試料が、前記SMA療法の開始から約64日後に前記ヒト対象から得られる、項目4~6のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも50%減少する、項目7~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも60%減少する、項目7~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも70%減少する、項目7~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目14)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて50%未満減少する、項目7~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて40%未満減少する、項目7~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
前記第1の生体試料で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べての、前記第2の生体試料で測定されたニューロフィラメントレベルの前記減少パーセントに基づいて、前記ヒト対象に次に投与するための前記SMA療法の用量が変更される、項目7~15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルよりも高い、項目4に記載の方法。
(項目18)
前記SMA療法の投与が継続される、項目4~17のいずれか1項に記載の方法。
(項目19)
前記SMA療法の投与が中止される、項目17に記載の方法。
(項目20)
脊髄性筋萎縮症(SMA)を治療することを、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、
SMA療法の候補量の投与前に前記ヒト対象から得られた第1の生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することと、
前記SMA療法の前記候補量の投与後に前記ヒト対象から得られた第2の生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することであって、前記第2の生体試料中の前記ニューロフィラメントレベルが前記第1の生体試料中の前記ニューロフィラメントレベルよりも低いことにより、前記SMA療法の前記候補量が治療有効量であることが示される、前記測定することと、
前記第2の生体試料中の前記ニューロフィラメントレベル低下を測定した後に、前記ヒト対象に前記SMA療法の前記治療有効量を投与することとを含む、前記方法。
(項目21)
脊髄性筋萎縮症(SMA)の予後を予測する方法であって、
両方のコピーのSMN1遺伝子において機能的SMNタンパク質の欠乏をもたらす変異を有するヒト対象から得られた生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することと、
前記生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルを対照と比較することとを含み、
前記対照と比べての前記生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記対象が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる、前記方法。
(項目22)
前記生体試料が、SMA療法の開始前に前記ヒト対象から得られ、前記対照と比べての前記生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、治療の不在下で前記ヒト対象が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記生体試料が、SMA療法の開始後に前記ヒト対象から得られ、前記対照と比べての前記生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記SMA療法を受けている間に前記対象が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記生体試料が、前記SMA療法の開始から少なくとも2週間後に前記ヒト対象から得られる、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記生体試料が、前記SMA療法の開始から少なくとも2ヵ月後に前記ヒト対象から得られる、項目23に記載の方法。
(項目26)
脊髄性筋萎縮症(SMA)の予後を予測する方法であって、
SMA療法の開始前に、両方のコピーのSMN1遺伝子において機能的SMNタンパク質の欠乏をもたらす変異を有するヒト対象から得られた生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することと、
前記SMA療法の開始後に前記ヒト対象から得られた第2の生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することと、
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルを、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比較することとを含み、
前記第1の生体試料で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べての前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記対象が罹患するSMAの重症度またはタイプを予測できる、前記方法。
(項目27)
前記第2の生体試料が、前記SMA療法の開始から40~90日後に前記ヒト対象から得られる、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記第2の生体試料が、前記SMA療法の開始から50~80日後に前記ヒト対象から得られる、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記第2の生体試料が、前記SMA療法の開始から60~70日後に前記ヒト対象から得られる、項目26に記載の方法。
(項目30)
前記第2の生体試料が、前記SMA療法の開始から約64日後に前記ヒト対象から得られる、項目26に記載の方法。
(項目31)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも50%減少する、項目26~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも60%減少する、項目26~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて少なくとも70%減少する、項目26~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて50%未満減少する、項目26~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記第2の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルが、前記第1の生体試料中で測定された前記ニューロフィラメントレベルと比べて40%未満減少する、項目26~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記SMA療法がヌシネルセンまたはヌシネルセン塩である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記SMA療法がヌシネルセンナトリウムである、項目1~35のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記SMA療法が、オレソキシム、AVX-101、CK-2127107、RG7916、RG7800、RO7034067、LMI070、またはSRK-015である、項目1~35のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記対照が、予め確立されたニューロフィラメントのカットオフ値である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記対照が、SMAを有しないヒト対象1例以上から得られた生体試料(1つまたは複数)中の前記ニューロフィラメントレベルである、項目1~38のいずれか1項に記載の方法。
(項目41)
ニューロフィラメントレベルを測定するための方法であって、
両方のコピーのSMN1遺伝子において機能的SMNタンパク質の欠乏をもたらす変異を有するヒト対象から得られた生体試料を準備することと、
前記生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することとを含む、前記方法。
(項目42)
前記ニューロフィラメントがニューロフィラメント重鎖である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
前記ニューロフィラメントがリン酸化ニューロフィラメント重鎖である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記ニューロフィラメントがニューロフィラメント中鎖/中間鎖である、項目1~41のいずれか1項に記載の方法。
(項目45)
前記ニューロフィラメントがニューロフィラメント軽鎖である、項目1~41のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
前記生体試料が血液、血清、血漿、または脳脊髄液である、先行項目のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】EMBRACE及びNURTURE臨床試験からの同じ対象における同じ時点の血漿及びCSF試料中のリン酸化ニューロフィラメント重鎖(pNF-H)レベルを示している。
図2】2コピー、3コピー、または4コピーのSMN2を有する、NURTURE、ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISH臨床試験からの対象における血漿試料中のpNF-Hレベルを示している。
図3】2コピーのSMN2を有する対象における、年齢増加に伴うpNF-Hレベルを示す図である。
図4】3コピーのSMN2を有する対象における、年齢増加に伴うpNF-Hレベルを示す図である。
図5】2、3、または4コピーのSMN2を有する対象におけるpNF-Hレベル及び症状発症年齢を示す図である。
図6】ベースラインのpNF-Hレベル別にベースラインの特徴及びSMA既往歴を示す表である。
図7】ベースラインのpNF-Hレベル別にベースラインの特徴及びSMA既往歴を示す表である。
図8】ベースラインのpNF-Hレベル別にベースラインの特徴及びSMA既往歴を示す表である。
図9】ベースライン対数(pNF-H)レベルとベースラインCHOP INTENDスコアとの相関を示している。
図10】ENDEARにおけるpNF-Hレベルによってベースラインの表現型を関連づける能力を示す表である。
図11】ENDEARにおけるpNF-Hレベルを示すグラフである。
図12】ENDEARにおけるNF-Hレベルの変化パーセントを示すグラフである。
図13】ENDEARにおけるpNF-Hレベルに対するSMA薬物療法を示すグラフである。
図14】ENDEARにおけるNF-Hレベルの変化パーセントに対するSMA薬物療法を示すグラフである。
図15】様々な時点におけるpNF-Hレベルの変化を示す図である。
図16】183日目のHINE-2スコアと64日目のpNF-Hレベルとの関連性を示すグラフである。
図17】183日目のHINE-2スコアと64日目のpNF-Hレベルとの関連性(共変数を伴う)を示している。
図18】183日目のCHOP INTENDスコアと64日目のpNF-Hレベルとの関連性を示すグラフである。
図19】183日目のCHOP INTENDスコアと64日目のpNF-Hレベルとの関連性(共変数を伴う)を示している。
図20】HINE-2(レスポンダー/ノンレスポンダー)カテゴリーに対する183日目のpNF-Hレベルを示す図である。
図21】HINE-2(レスポンダー/ノンレスポンダー)カテゴリーに対する183日目のpNF-Hレベルの変化パーセントを示すグラフである。
図22】CHOP INTEND(レスポンダー/ノンレスポンダー)カテゴリーに対する183日目のpNF-Hレベルを示すグラフである。
図23】CHOP INTEND(レスポンダー/ノンレスポンダー)カテゴリーに対する183日目のpNF-Hレベルの変化パーセントを示すグラフである。
図24】NURTUREにおけるpNF-H(pg/mL)レベルに基づく薬物効果の維持を示すグラフである。
図25】EMBRACEにおけるpNF-H(pg/mL)レベルに基づく薬物効果の維持を示すグラフである。
図26】NURTUREにおけるpNF-H(pg/mL)レベルの変化パーセントに対する薬物効果を示すグラフである。
図27】EMBRACEにおけるpNF-H(pg/mL)レベルの変化パーセントに対する薬物効果を示すグラフである。
図28】183日目のHINE-2スコアと64日目のpNF-Hレベルとの関連性を示すグラフである。上のグラフ:ルートMSE:2.87069;R2乗:0.0184;調整済みR2乗:0.0002。下のグラフ:ルートMSE:1.70576;;R2乗:0.224;調整済みR2乗:0.1831。DF=自由度;MSE=平均2乗誤差。
図29】183日目のCHOP INTENDスコアと64日目のpNF-Hレベルとの関連性を示すグラフである。上のグラフ:ルートMSE:10.09399;R2乗:0.0754;調整済みR2乗:0.0583。下のグラフ:ルートMSE:9.41166;;R2乗:0.2176;調整済みR2乗:0.1764。DF=自由度;MSE=平均2乗誤差。
図30】302日目の欠損値を伴わない生存乳児における経時的なpNF-Hレベルを示すグラフである。
図31】302日目の欠損値を伴わない生存乳児における経時的なpNF-Hレベルの変化パーセントを示すグラフである。
図32】183日目の腓骨CMAP振幅と64日目のpNF-Hレベルとの関連性を示すグラフである。
図33】183日目の腓骨CMAP振幅と64日目のpNF-Hレベルとの関連性を示すグラフである。上のグラフ:ルートMSE:0.56401;R2乗:0.0164;調整済みR2乗:-0.0029。下のグラフ:ルートMSE:0.18933;;R2乗:0.2906;調整済みR2乗:0.2512。DF=自由度;MSE=平均2乗誤差。
図34】183日目の尺骨CMAP(複合筋活動電位)振幅と64日目のpNF-Hレベルとの関連性を示すグラフである。ルートMSE:0.24904;;R2乗:0.1746;調整済みR2乗:0.1633。DF=自由度;MSE=平均2乗誤差。
図35】183日目の尺骨CMAP振幅と64日目のpNF-Hレベルとの関連性を示すグラフである。上のグラフ:ルートMSE:0.2824;R2乗:0.0517;調整済みR2乗:0.0338。下のグラフ:ルートMSE:0.11118;;R2乗:0.2406;調整済みR2乗:0.1984。DF=自由度;MSE=平均2乗誤差。
図36A】29日目のpNF-Hレベルの変化パーセントの測定が302日目の運動機能の予測に有効であることを示す受信者動作特性(ROC)グラフである。
図36B】64日目のpNF-Hレベルの変化パーセントの測定が302日目の運動機能の予測に有効であることを示す受信者動作特性(ROC)グラフである。
図36C】183日目のpNF-Hレベルの変化パーセントの測定が302日目の運動機能の予測に有効であることを示す受信者動作特性(ROC)グラフである。
図37】pNF-Hレベルの変化パーセントの測定がENDEARにおけるCHOP INTENDレスポンダー(A)及び運動マイルストーンレスポンダー(B)の予測因子として有効であることを示すグラフである。
図38A】pNF-Hレベルの変化パーセントの測定がCHERISHにおけるHFMSEレスポンダーの予測因子として有効であることを示すグラフである。
図38B】pNF-Hレベルの変化パーセントの測定がCHERISHにおけるRULMレスポンダーの予測因子として有効であることを示すグラフである。
図38C】pNF-Hレベルの変化パーセントの測定がCHERISHにおけるWHOレスポンダーの予測因子として有効であることを示すグラフである。
図39A】患者集団別の初回用量時年齢(A)及びSMN2コピー数(B)に対するベースラインの脳脊髄液中pNF-Hレベルを示すグラフである。
図39B】同上。
図40】ヌシネルセンを用いた治療後の脳脊髄液中pNF-Hレベルの低下を示すグラフである。
図41A】ヌシネルセンを用いた治療後の、症状発現前の対象のCSF中におけるpNF-H及びNF-Lのレベルの変化パーセントを示すグラフである。
図41B】ヌシネルセンを用いた治療後の、乳児発症型の対象のCSF中におけるpNF-H及びNF-Lのレベルの変化パーセントを示すグラフである。
図41C】ヌシネルセンを用いた治療後の、乳児発症型の対象の血漿中におけるpNF-H及びNF-Lのレベルの変化パーセントを示すグラフである。
図41D】ヌシネルセンを用いた治療後の、遅発型の対象の血漿中におけるpNF-H及びNF-Lのレベルの変化パーセントを示すグラフである。
図41E】ヌシネルセンを用いた治療後の、乳児発症型の対象の血漿中におけるpNF-H及びNF-Lのレベルの絶対値変化を示すグラフである。
図41F】ヌシネルセンを用いた治療後の、遅発型の対象の血漿中におけるpNF-H及びNF-Lのレベルの絶対値変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、部分的には、ニューロフィラメント(NF)レベルがSMAの有効なバイオマーカーとして機能し得るという驚くべき知見に基づいている。
【0030】
1.脊髄性筋萎縮症
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、コーカサス人においては嚢胞性線維症に次いで2番目に多い致死性の常染色体劣性障害である。この疾患は、脊髄前角におけるアルファ運動ニューロンの進行性変性を特徴とし、筋萎縮、麻痺、そして場合によっては死をも引き起こす。SMAの最も一般的な形態は、5q13運動ニューロン生存(SMN1)遺伝子における変異によって引き起こされる。この障害は、6,000~10,000例に1例の乳児が発症し、保因者の頻度は40例に1例である。SMAについてはいくつかの臨床型が説明されており、当該障害を発症年齢及び症状の進行に応じて分類している。
【0031】
上記分類によれば、SMAには5つの型:0型(胚形態)、I型(ウェルドニッヒ・ホフマン型)、II型(中間型)、III型(クーゲルベルク・ウェランダー型)、及びIV型(成人形態)が存在する。最も重症の0型は、妊娠30~36週における胎児の運動減少及び非常に短い余命を特徴とする。I型はその次に重症の形態であり、生後6ヵ月より前に発症し、およそ2年の余命である。II型及びIII型は慢性形態として知られており、重症度はより低く、それぞれ生後6~18ヵ月(II型)及び生後18ヵ月以後(III型)に発症する。多くの事例において、IV型はIII型の症状によく似ているが、発症時期は18歳以後(典型的にはおよそ30歳)である。余命が正常であることは、この成人形態に特徴的である。
【0032】
SMA決定遺伝子SMN1は、5q11.2-13.3領域にマッピングされた。SMN1 エクソン7のホモ接合性欠失はSMA患者に最も一般的に見られる変異であるが、欠失及び異なる点変異が検出された複合ヘテロ接合型患者の症例もいくつか存在する。ヒトにおいては、各アレルにSMN遺伝子の2つの形態:テロメア形態(SMN1)及びセントロメア形態(SMN2)が存在する。SMN1遺伝子の転写により、SMNタンパク質をコードする全長メッセンジャーRNA(mRNA)転写物が産生される。SMN2遺伝子は、840位におけるCからTの置換を除いてSMN1遺伝子と同一であり、この置換は転写中のエクソン7の排除をもたらす。得られた切断タンパク質は機能せず、急速に分解される。重要なことには、SMN2 mRNAからのエクソン7の排除が完全ではないため、SMN2から生じる全mRNA転写物のうちのごく一部(およそ10%~15%)はエクソン7を含み、正常なSMNタンパク質をコードする。ただし、全長SMNタンパク質が合成される量は、運動ニューロン生存を維持することができないほど少量である。
【0033】
SMAを有する全ての患者は、機能的なSMN1遺伝子が欠如しているため、生存に必要なSMNタンパク質の産生をSMN2遺伝子に依存する。したがって、SMAは、SMNタンパク質の欠乏によって引き起こされる。いくつかの遺伝型/表現型解析により、SMN2コピー数とより軽度のSMA表現型との間に正の相関があることが示されている。SMN2コピー数はSMAの重症性における主要な決定因子であるが、唯一の表現型修飾因子でないことは明らかである。当技術分野は、軽度の3b表現型及び2コピーのみのSMN2を有する成人患者少なくとも3例について説明している。この一見矛盾した知見は、これらの個体がc.859G>Cエクソン7変異を有し、この変異によって、全長SMNタンパク質の増加及びより軽度の表現型をもたらすエクソンスプライス強化エレメントが作成されるという事実によって説明された。他の修飾因子についても説明されており、SMAの分子的病因の理解が緻密化するに伴い、さらなる修飾因子が予想されている。これらの知見は、SMA表現型が必ずしもSMN2コピー数の決定のみから推測できるとは限らないことを示している。
【0034】
2.SMAの療法
SMA治療のための1つの療法は、ヌシネルセンを含む化合物SPINRAZA(登録商標)(別名ASO-10-27/ISIS 396443/ISIS SMNRx/ISIS-396443/ISIS-SMNRx)である。ヌシネルセンは、エクソン7のイントロン下流におけるSMN2転写物の特定の配列に結合する修飾アンチセンスヌクレオチド化合物(2’-ヒドロキシ基がリボフラノシル環の2’-O-2-メトキシエチル基で置き換えられ、リン酸結合がホスホロチオエート結合で置き換えられていることによる修飾)である。ヌシネルセンのナトリウム塩(ヌシネルセンナトリウム)は、SPINRAZA(登録商標)という商品名で販売されている。ヌシネルセンは、SMNタンパク質欠乏をもたらす染色体5q変異によって引き起こされるSMAを治療するように設計されている。ヌシネルセンは、in vitroアッセイ及びSMAのトランスジェニック動物の試験を用いることで、SMN2メッセンジャーリボ核酸(mRNA)転写物内にエクソン7を含めることと全長SMNタンパク質の産生とを高めることが示された。ヌシネルセンは、SMN2プレmRNAのスプライシング効率を高めることにより、SMAの原因となるSMNタンパク質欠乏を抑えるように作用する。
【0035】
ヌシネルセンは、18merの2’-MOEホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドである。ヌシネルセンは、エクソン7と8との間のイントロン性スプライシングサイレンシング部位1(ISS-1)におけるヘテロリボヌクレオタンパク質(hnRNP)を置き換えるようにSMN2プレmRNA上の特定の標的配列と対合して、パラロガス遺伝子SMN2からより完全なSMNタンパク質の翻訳が可能になるように設計された。ヌシネルセンは、脳脊髄液(CSF)内に髄腔内注入することで、CSFから標的の中枢神経系(CNS)組織に分配させることができる。ヌシネルセンの全配列は、[2’-O-(2-メトキシエチル)](3’-5’)(P-チオ)(T-5mC-A-5mC-T-T-T-5mC-A-T-A-A-T-G-5mC-T-G-G)(配列番号4)である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼの分解を減少させ、相補的RNAへの結合親和性を強化するための2’-O-(2-メトキシエチル)(2’-MOE)-オリゴリボヌクレオチドを含む。
【0036】
SMAの治療には、他にもいくつかの療法が存在する。このような療法としては、SMNレベルを増加させる化合物、例えば、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、アミノグリコシド、及びキナゾリン誘導体が挙げられる。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、例えば、バルプロ酸、酪酸ナトリウム、フェニル酪酸、トリコスタチンAは、SMN2プロモーターを活性化して全長SMNタンパク質の増加をもたらす。その他の療法としては、CK-2127107(速筋骨格筋トロポニン活性化剤)、LMI070(ブラナプラン(旧称NVS-SM1))、オレソキシム(コレステロールオキシムファミリーメンバー)、RG7916(スプライシング修飾剤)、SMN遺伝子療法(AAV9-SMN1;AVXS-101(AAVヒトSMN導入遺伝子))、及びSRK-015(ミオスタチンの潜在的形態の選択的かつ局在的な阻害剤抗体)が挙げられる。いくつかの場合において、これらの薬剤のうちの1つ以上は、SMAの治療のために併用して使用される。本発明の方法は、SMAのあらゆる治療を網羅するように意図されている。
【0037】
3.SMAのバイオマーカー
SMA療法(例えば、上述のSMA療法のうちの1つ以上)を用いた治療から利益を受けると考えられる対象を同定するには、または療法が機能しているかを判定するには、バイオマーカーがあると有用である。バイオマーカーは、正常な生物学的プロセス、病理学的プロセス、または治療介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定及び評価することができる特性値である。バイオマーカーは、生物学的尺度(例えば、小分子、代謝産物、ペプチド、タンパク質、RNA、DNA)、生理学的尺度(例えば、血圧、筋電図検査、呼吸機能)、または構造的尺度(例えば、超音波、磁気共鳴イメージング、または組織学的評価)であり得る。バイオマーカーは、将来の臨床的転帰を予測する予後バイオマーカー、疾患の影響の重症度を示す疾患進行バイオマーカー、療法に対する将来の臨床的応答を予測し療法の分類の一助となる予測的バイオマーカー、治療効果をモニターまたは定量化する薬力学バイオマーカー、及びエンドポイントの変化が将来の臨床的応答に結びつく、療法に対する将来の臨床的応答を予測する代理エンドポイントバイオマーカーであり得る。
【0038】
SMAにはいくつかの既知のバイオマーカーが存在する。このようなバイオマーカーとしては、予後バイオマーカー、例えば、疾患重症度の指標としてのSMN2コピー数;疾患進行バイオマーカー、例えば、運動ニューロン喪失の指標として機能する複合筋活動電位(CMAP)振幅;予測バイオマーカー、例えば、SMN修復療法に対する応答が小さいことを示すCMAP振幅の減少;薬力学バイオマーカー、例えば、SMN2遺伝子の有効な誘導の指標としての全長SMN転写物の増加及び/またはSMNタンパク質の増加;ならびに代理エンドポイントバイオマーカー、例えば、身体機能改善の指標としての運動単位数推定(MUNE)の増加が挙げられる。
【0039】
本開示は、SMAの新規バイオマーカーとしてのニューロフィラメントレベルの使用を示す。ニューロフィラメント(NF)は、神経細胞における主要な細胞骨格要素であり、機械的安定性の付与だけでなく軸索内径の決定においても役割を果たしている。ヒトNFは、3つのタンパク質サブユニット、NF-L、NF-M、及びNF-Hから構成されている。これらのタンパク質は、他の中間径フィラメントサブユニットタンパク質と同じ基本構造を共有する。哺乳類神経系のニューロフィラメントはタンパク質インターネキシンも含み、末梢神経系のニューロフィラメントはタンパク質ペリフェリンも含み得る。したがって、本明細書で使用する場合、「ニューロフィラメントタンパク質」とは、ニューロフィラメント重鎖(NF-H)、ニューロフィラメント中鎖/中間鎖(NF-M)、ニューロフィラメント軽鎖(NF-L)、インターネキシン、またはペリフェリンを意味する。SMAバイオマーカーは、NF-H、NF-M、NF-L、インターネキシン、及びペリフェリンのうちの1つ以上であり得る。ある特定の場合において、SMAバイオマーカーはリン酸化NF-H(pNF-H)である。ある特定の場合において、SMAバイオマーカーはリン酸化NF-Lである。ニューロフィラメントバイオマーカーのレベルは、RNA(例えば、mRNA)またはタンパク質を用いて評価することができる。
【0040】
ヒトNF-Hのアミノ酸配列は、配列番号1及び配列番号5ならびにLees et al.,EMBO J,7(7);1947-1955(1988)、UniProtKB-P12036、NCBI参照配列:NG_008404.1、NCBI参照配列:NP_066554.2に示されている。
配列番号1
MMSFGGADALLGAPFAPLHGGGSLHYALARKGGAGGTRSAAGSSSGFHSWTRTSVSSVSASPSRFRGAGAASSTDSLDTLSNGPEGCMVAVATSRSEKEQLQALNDRFAGYIDKVRQLEAHNRSLEGEAAALRQQQAGRSAMGELYEREVREMRGAVLRLGAARGQLRLEQEHLLEDIAHVRQRLDDEARQREEAEAAARALARFAQEAEAARVDLQKKAQALQEECGYLRRHHQEEVGELLGQIQGSGAAQAQMQAETRDALKCDVTSALREIRAQLEGHAVQSTLQSEEWFRVRLDRLSEAAKVNTDAMRSAQEEITEYRRQLQARTTELEALKSTKDSLERQRSELEDRHQADIASYQEAIQQLDAELRNTKWEMAAQLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEGEECRIGFGPIPFSLPEGLPKIPSVSTHIKVKSEEKIKVVEKSEKETVIVEEQTEETQVTEEVTEEEEKEAKEEEGKEEEGGEEEEAEGGEEETKSPPAEEAASPEKEAKSPVKEEAKSPAEAKSPEKEEAKSPAEVKSPEKAKSPAKEEAKSPPEAKSPEKEEAKSPAEVKSPEKAKSPAKEEAKSPAEAKSPEKAKSPVKEEAKSPAEAKSPVKEEAKSPAEVKSPEKAKSPTKEEAKSPEKAKSPEKAKSPEKEEAKSPEKAKSPVKAEAKSPEKAKSPVKAEAKSPEKAKSPVKEEAKSPEKAKSPVKEEAKSPEKAKSPVKEEAKTPEKAKSPVKEEAKSPEKAKSPEKAKTLDVKSPEAKTPAKEEARSPADKFPEKAKSPVKEEVKSPEKAKSPLKEDAKAPEKEIPKKEEVKSPVKEEEKPQEVKVKEPPKKAEEEKAPATPKTEEKKDSKKEEAPKKEAPKPKVEEKKEPAVEKPKESKVEAKKEEAEDKKKVPTPEKEAPAKVEVKEDAKPKEKTEVAKKEPDDAKAKEPSKPAEKKEAAPEKKDTKEEKAKKPEEKPKTEAKAKEDDKTLSKEPSKPKAEKAEKSSSTDQKDSKPPEKATEDKAAKGK
配列番号5
MMSFGGADALLGAPFAPLHGGGSLHYALARKGGAGGTRSAAGSSSGFHSWTRTSVSSVSASPSRFRGAGAASSTDSLDTLSNGPEGCMVAVATSRSEKEQLQALNDRFAGYIDKVRQLEAHNRSLEGEAAALRQQQAGRSAMGELYEREVREMRGAVLRLGAARGQLRLEQEHLLEDIAHVRQRLDDEARQREEAEAAARALARFAQEAEAARVDLQKKAQALQEECGYLRRHHQEEVGELLGQIQGSGAAQAQMQAETRDALKCDVTSALREIRAQLEGHAVQSTLQSEEWFRVRLDRLSEAAKVNTDAMRSAQEEITEYRRQLQARTTELEALKSTKDSLERQRSELEDRHQADIASYQEAIQQLDAELRNTKWEMAAQLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEGEECRIGFGPIPFSLPEGLPKIPSVSTHIKVKSEEKIKVVEKSEKETVIVEEQTEETQVTEEVTEEEEKEAKEEEGKEEEGGEEEEAEGGEEETKSPPAEEAASPEKEAKSPVKEEAKSPAEAKSPEKEEAKSPAEVKSPEKAKSPAKEEAKSPPEAKSPEKEEAKSPAEVKSPEKAKSPAKEEAKSPAEAKSPEKAKSPVKEEAKSPAEAKSPVKEEAKSPAEVKSPEKAKSPTKEEAKSPEKAKSPEKEEAKSPEKAKSPVKAEAKSPEKAKSPVKAEAKSPEKAKSPVKEEAKSPEKAKSPVKEEAKSPEKAKSPVKEEAKTPEKAKSPVKEEAKSPEKAKSPEKAKTLDVKSPEAKTPAKEEARSPADKFPEKAKSPVKEEVKSPEKAKSPLKEDAKAPEKEIPKKEEVKSPVKEEEKPQEVKVKEPPKKAEEEKAPATPKTEEKKDSKKEEAPKKEAPKPKVEEKKEPAVEKPKESKVEAKKEEAEDKKKVPTPEKEAPAKVEVKEDAKPKEKTEVAKKEPDDAKAKEPSKPAEKKEAAPEKKDTKEEKAKKPEEKPKTEAKAKEDDKTLSKEPSKPKAEKAEKSSSTDQKDSKPPEKATEDKAAKGK
【0041】
ヒトNF-Lのアミノ酸配列は、配列番号2ならびにJulien et al.,Biochimica et Biohysica Acta,909:10-20(1987)、UniProtKB-P07196、NCBI参照配列:NP_006149.2、及びNCBI参照配列:NG_008492.1に示されている。
配列番号2
MSSFSYEPYYSTSYKRRYVETPRVHISSVRSGYSTARSAYSSYSAPVSSSLSVRRSYSSSSGSLMPSLENLDLSQVAAISNDLKSIRTQEKAQLQDLNDRFASFIERVHELEQQNKVLEAELLVLRQKHSEPSRFRALYEQEIRDLRLAAEDATNEKQALQGEREGLEETLRNLQARYEEEVLSREDAEGRLMEARKGADEAALARAELEKRIDSLMDEISFLKKVHEEEIAELQAQIQYAQISVEMDVTKPDLSAALKDIRAQYEKLAAKNMQNAEEWFKSRFTVLTESAAKNTDAVRAAKDEVSESRRLLKAKTLEIEACRGMNEALEKQLQELEDKQNADISAMQDTINKLENELRTTKSEMARYLKEYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEGEETRLSFTSVGSITSGYSQSSQVFGRSAYGGLQTSSYLMSTRSFPSYYTSHVQEEQIEVEETIEAAKAEEAKDEPPSEGEAEEEEKDKEEAEEEEAAEEEEAAKEESEEAKEEEEGGEGEEGEETKEAEEEEKKVEGAGEEQAAKKKD
【0042】
ヒトNF-Mのアミノ酸配列は、配列番号3及び配列番号6ならびにMyers et al.,EMBO J.,6(6):1617-1626(1987)及びUniProtKB-P07197に示されている。
配列番号3
MSYTLDSLGNPSAYRRVTETRSSFSRVSGSPSSGFRSQSWSRGSPSTVSSSYKRSMLAPRLAYSSAMLSSAESSLDFSQSSSLLNGGSGPGGDYKLSRSNEKEQLQGLNDRFAGYIEKVHYLEQQNKEIEAEIQALRQKQASHAQLGDAYDQEIRELRATLEMVNHEKAQVQLDSDHLEEDIHRLKERFEEEARLRDDTEAAIRALRKDIEEASLVKVELDKKVQSLQDEVAFLRSNHEEEVADLLAQIQASHITVERKDYLKTDISTALKEIRSQLESHSDQNMHQAEEWFKCRYAKLTEAAEQNKEAIRSAKEEIAEYRRQLQSKSIELESVRGTKESLERQLSDIEERHNHDLSSYQDTIQQLENELRGTKWEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEGEETRFSTFAGSITGPLYTHRPPITISSKIQKPKVEAPKLKVQHKFVEEIIEETKVEDEKSEMEEALTAITEELAVSMKEEKKEAAEEKEEEPEAEEEEVAAKKSPVKATAPEVKEEEGEKEEEEGQEEEEEEDEGAKSDQAEEGGSEKEGSSEKEEGEQEEGETEAEAEGEEAEAKEEKKVEEKSEEVATKEELVADAKVEKPEKAKSPVPKSPVEEKGKSPVPKSPVEEKGKSPVPKSPVEEKGKSPVPKSPVEEKGKSPVSKSPVEEKAKSPVPKSPVEEAKSKAEVGKGEQKEEEEKEVKEAPKEEKVEKKEEKPKDVPEKKKAESPVKEEAVAEVVTITKSVKVHLEKETKEEGKPLQQEKEKEKAGGEGGSEEEGSDKGAKGSRKEDIAVNGEVEGKEEVEQETKEKGSGREEEKGVVTNGLDLSPADEKKGGDKSEEKVVVTKTVEKITSEGGDGATKYITKSVTVTQKVEEHEETFEEKLVSTKKVEKVTSHAIVKEVTQSD
配列番号6
MARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEGEETRFSTFAGSITGPLYTHRPPITISSKIQKPKVEAPKL
KVQHKFVEEIIEETKVEDEKSEMEEALTAITEELAVSMKEEKKEAAEEKEEEPEAEEEEVAAKKSPVKAT
APEVKEEEGEKEEEEGQEEEEEEDEGAKSDQAEEGGSEKEGSSEKEEGEQEEGETEAEAEGEEAEAKEEK
KVEEKSEEVATKEELVADAKVEKPEKAKSPVPKSPVEEKGKSPVPKSPVEEKGKSPVPKSPVEEKGKSPV
PKSPVEEKGKSPVSKSPVEEKAKSPVPKSPVEEAKSKAEVGKGEQKEEEEKEVKEAPKEEKVEKKEEKPK
DVPEKKKAESPVKEEAVAEVVTITKSVKVHLEKETKEEGKPLQQEKEKEKAGGEGGSEEEGSDKGAKGSR
KEDIAVNGEVEGKEEVEQETKEKGSGREEEKGVVTNGLDLSPADEKKGGDKSEEKVVVTKTVEKITSEGG
DGATKYITKSVTVTQKVEEHEETFEEKLVSTKKVEKVTSHAIVKEVTQSD
【0043】
ヒトインターネキシンのアミノ酸配列は、配列番号7に示されている。
配列番号7
MSFGSEHYLCSSSSYRKVFGDGSRLSARLSGAGGAGGFRSQSLSRSNVASSAACSSASSLGLGLAYRRPPASDGLDLSQAAARTNEYKIIRTNEKEQLQGLNDRFAVFIEKVHQLETQNRALEAELAALRQRHAEPSRVGELFQRELRDLRAQLEEASSARSQALLERDGLAEEVQRLRARCEEESRGREGAERALKAQQRDVDGATLARLDLEKKVESLLDELAFVRQVHDEEVAELLATLQASSQAAAEVDVTVAKPDLTSALREIRAQYESLAAKNLQSAEEWYKSKFANLNEQAARSTEAIRASREEIHEYRRQLQARTIEIEGLRGANESLERQILELEERHSAEVAGYQDSIGQLENDLRNTKSEMARHLREYQDLLNVKMALDIEIAAYRKLLEGEETRFSTSGLSISGLNPLPNPSYLLPPRILSATTSKVSSTGLSLKKEEEEEEASKVASKKTSQIGESFEEILEETVISTKKTEKSNIEETTISSQKI
【0044】
ヒトペリフェリンのアミノ酸配列は、配列番号8に示されている。
配列番号8
MSHHPSGLRAGFSSTSYRRTFGPPPSLSPGAFSYSSSSRFSSSRLLGSASPSSSVRLGSFRSPRAGAGALLRLPSERLDFSMAEALNQEFLATRSNEKQELQELNDRFANFIEKVRFLEQQNAALRGELSQARGQEPARADQLCQQELRELRRELELLGRERDRVQVERDGLAEDLAALKQRLEEETRKREDAEHNLVLFRKDVDDATLSRLELERKIESLMDEIEFLKKLHEEELRDLQVSVESQQVQQVEVEATVKPELTAALRDIRAQYESIAAKNLQEAEEWYKSKYADLSDAANRNHEALRQAKQEMNESRRQIQSLTCEVDGLRGTNEALLRQLRELEEQFALEAGGYQAGAARLEEELRQLKEEMARHLREYQELLNVKMALDIEIATYRKLLEGEESRISVPVHSFASLNIKTTVPEVEPPQDSHSRKTVLIKTIETRNGEVVTESQKEQRSELDKSSAHSY
【0045】
ある特定の場合において、NFレベル(例えば、pNF-H)は、1つ以上の他のSMAバイオマーカーとの併用で使用される。
【0046】
4.SMAの診断
本開示は、対象(例えば、症状発現前の対象)が生物学的に活性の疾患を有するか(例えば、SMAが活性であるか、及びその重症度)を診断する方法を特徴とする。当該方法は、対象から得られた生体試料中のニューロフィラメントレベルを測定することを含む。SMAは、対象のニューロフィラメントレベルが対照レベルよりも高い場合に診断される。ニューロフィラメントレベルは疾患の重症度も予測し、NFレベルが対照との対比で高いほどSMAは重症である。
【0047】
いくつかの場合において、当該方法は、対象から得られた生体試料中のNF-Hレベルを測定することを含む。いくつかの場合において、当該方法は、対象から得られた生体試料中のpNF-Hレベルを測定することを含む。いくつかの場合において、当該方法は、対象から得られた生体試料中のNF-Mレベルを測定することを含む。いくつかの場合において、当該方法は、対象から得られた生体試料中のNF-Lレベルを測定することを含む。
【0048】
生体試料は、例えば、血液、血清、血漿、または脳脊髄液であり得る。いくつかの場合において、生体試料は血漿である。
【0049】
ある特定の場合において、対象はヒト胎児である。ある特定の場合において、対象は新生児のヒトである。ある特定の場合において、対象は、生後6ヵ月以下(例えば、生後2日、生後3日、生後4日、生後5日、生後6日、生後1週間、生後2週間、生後3週間、生後1ヵ月、生後2ヵ月、生後3ヵ月、生後4ヵ月、生後5ヵ月、または生後6ヵ月)である。ある特定の場合において、対象は、生後6ヵ月超生後18ヵ月以下(例えば、生後7ヵ月、生後8ヵ月、生後9ヵ月、生後10ヵ月、生後11ヵ月、生後12ヵ月、生後13ヵ月、生後14ヵ月、生後15ヵ月、生後16ヵ月、生後17ヵ月、または生後18ヵ月)である。いくつかの場合において、対象は生後18ヵ月超のヒトである。いくつかの場合において、対象は18歳超のヒトである。
【0050】
いくつかの場合において、NFレベルは、生体試料中のNF RNA(例えば、mRNA)のレベルを評価することによって測定される。
【0051】
いくつかの場合において、NFレベルは、生体試料中のNFタンパク質(NF-H、NF-M、またはNF-Lタンパク質)のレベルを評価することによって測定される。ある特定の場合において、NFタンパク質はpNF-Hである。目的タンパク質(1つまたは複数)の濃度は、免疫学的アッセイなどの当技術分野で知られている任意の方法を用いて測定することができる。このような方法の非限定的な例としては、酵素免疫測定法、放射性免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光免疫測定法、ラテックス比濁免疫測定法、ラテックス測光免疫測定法、免疫クロマトグラフィー測定法、及びウェスタンブロッティングが挙げられる。ある特定の実施形態において、目的タンパク質(1つまたは複数)の濃度は、質量分析法によって測定される。
【0052】
いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-H)は対照レベルを超える。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは300pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは400pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは500pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは600pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは700pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは800pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは900pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは1,000pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは1,100pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは1,200pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは1,300pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは1,400pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは1,500pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは2,000pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは3,000pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは4,000pg/mLを上回る。いくつかの実施形態において、生体試料中のニューロフィラメントレベルは5,000pg/mLを上回る。
【0053】
SMAを有すると診断されたヒト対象には、任意のSMA療法を投与することができる。ある特定の事例において、(例えば、対象からの生体試料中のNFレベルを測定することによって)SMAを有すると前もって判定されているヒト対象は、SMA療法を投与される。いくつかの場合において、療法はSPINRAZA(登録商標)である。いくつかの事例において、SPINRAZA(登録商標)は、投与当たり12mgの用量で髄腔内投与される。いくつかの場合において、SMA療法は併用療法である。
【0054】
SMAを有する対象における例示的なpNF-Hレベルを下記の表に示す。
【表1】
【0055】
5.治療への応答性
NFレベルは、SMA療法を受けている対象が治療に応答しているかを判定するために使用することもできる。これは、SMA療法を対象に投与する前の対象からの第1の生体試料と、SMA療法を対象に投与した後の第2の生体試料とを得、このような試料中のNF(例えば、NF-H、NF-M、またはNF-L)レベルを測定することにより、評価することができる。1つの場合において、NFレベルはpNF-Hレベルである。いくつかの場合において、療法はSPINRAZA(登録商標)である。いくつかの事例において、SPINRAZA(登録商標)は、投与当たり12mgの用量で髄腔内投与される。いくつかの場合において、SMA療法は併用療法である。
【0056】
ある特定の場合において、第1の生体試料(1つまたは複数)は、治療前の任意時に、例えば、SMA療法を投与する1週間前、数日前、1日前、数時間前、1時間前、または1時間未満前に、対象から収集することができる。同様に、第2の生体試料(1つまたは複数)は、SMA治療投与後の任意時に、例えば、SMA療法を投与してから1時間未満後、1時間後、数時間後、1日後、数日後、1週間後、数週間後、1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後、4ヵ月後、5ヵ月後、6ヵ月後、7ヵ月後、または8ヵ月後に、対象から収集することができる。SMA療法開始後にNFレベルが減少すれば、SMA療法の有効性が示される。このような場合には、SMA療法の継続が必要である。SMA療法の開始後にNFレベルが減少しなければ、SMA療法の用量を変更する(例えば、用量を増加させる)必要があること、またはその特定のSMA療法の有効性が欠如していることが示される。後者の場合には、その特定のSMA療法の中止が示唆され得、異なるSMA療法(1つまたは複数)の使用を検討する必要がある。
【0057】
NFレベルは、RNAまたはタンパク質のレベルの測定によって評価することができる。いくつかの場合において、pNF-Hレベルが決定される。目的のNFタンパク質(1つまたは複数)の濃度は、免疫学的アッセイなどの当技術分野で知られている任意の方法を用いて測定することができる。このような方法の非限定的な例としては、酵素免疫測定法、放射性免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光免疫測定法、ラテックス比濁免疫測定法、ラテックス測光免疫測定法、免疫クロマトグラフィー測定法、及びウェスタンブロッティングが挙げられる。ある特定の実施形態において、目的タンパク質(1つまたは複数)の濃度は、質量分析法によって測定される。
【0058】
ある特定の場合において、第1の生体試料中のニューロフィラメントレベル(例えば、pNF-H)は、300pg/mL超、400pg/mL超、500pg/mL超、600pg/mL超、700pg/mL超、800pg/mL超、900pg/mL超、1,000pg/mL超、1,500pg/mL超、2,000pg/mL超、3,000pg/mL超、4,000pg/mL超、または5,000pg/mL超である。ある特定の実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルよりも低い。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルに対する30%超(例えば、31%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、85%、90%、または95%)の低下を示す。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの10%~80%である。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの20%~80%である。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの20%~85%である。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの20%~90%である。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの20%~95%である。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの30%~80%である。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの30%~85%である。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの30%~90%である。いくつかの実施形態において、第2の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルは、第1の生体試料中で測定されたニューロフィラメントレベルの30%~95%である。
【0059】
ある特定の場合において、対象は症状発現前のヒトである。ある特定の場合において、対象は新生児のヒトである。ある特定の場合において、対象は、生後6ヵ月以下(例えば、生後2日、生後3日、生後4日、生後5日、生後6日、生後1週間、生後2週間、生後3週間、生後1ヵ月、生後2ヵ月、生後3ヵ月、生後4ヵ月、生後5ヵ月、または生後6ヵ月)である。ある特定の場合において、対象は、生後6ヵ月超生後18ヵ月以下(例えば、生後7ヵ月、生後8ヵ月、生後9ヵ月、生後10ヵ月、生後11ヵ月、生後12ヵ月、生後13ヵ月、生後14ヵ月、生後15ヵ月、生後16ヵ月、生後17ヵ月、または生後18ヵ月)である。いくつかの場合において、対象は生後18ヵ月超のヒトである。いくつかの場合において、対象は18歳超のヒトである。
【0060】
6.疾患進行の予測
対象からの生体試料中のNFのレベルも、将来の表現型を予測するように機能し得る。例えば、NFのレベルは、将来の運動機能を予測し得る。一例として、治療開始から1~2ヵ月後のpNF-Hレベルは治療開始から10ヵ月後の運動機能を予測し得る。療法開始から1~2ヵ月後のpNF-Hレベルが対照との対比で低いほど、対象は、療法の開始から1~2ヵ月後のpNF-Hレベルがより高い対象に比べて運動機能を改善する可能性が高くなる。この予測可能性により、医療従事者は対象の投薬及び治療を修正または調整することができる。
【0061】
7.対照
上記で説明されているように、本開示の方法は、対象(例えば、症状発現前のヒト対象)からの生体試料中の1つ以上のNF遺伝子またはタンパク質の発現レベル(例えば、mRNAまたはタンパク質濃度)を測定することを含み得、このとき、対照と比べての1つ以上のNF遺伝子またはタンパク質の発現レベルは、対象がSMAを有するか、SMAの重症度、将来の表現型、及び対象がSMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))を含む治療に対するレスポンダーであるかそうでないかを予測する。
【0062】
ある特定の実施形態において、対象がSMAを有するか診断するときに、生体試料中のNFタンパク質(例えば、pNF-H)の濃度が対照より高い場合、対象はSMAを有する可能性があると同定される。この文脈において、「対照」という用語は、SMAを有しないことが分かっている同じまたは類似の年齢の対象から得られた試料(同じ供給源(例えば、血液、血漿、血清、CSF)からのもの)を含む。例えば、新生児の対象に試験を行っている場合は、対照も、SMAを有しない新生児からのものであり、6~18歳の対象に試験を行っている場合は、対照も、SMAを有しない6~18歳の対象からのものである。また、「対照」という用語は、SMAを有しないことが分かっている対象から過去に得られ、SMAが予測される対象から採取された試料を試験するために将来の比較用の基準として使用される、(同じ組織からの)試料も含む。また、特定のNFタンパク質における「対照」発現レベル/濃度は、SMAを有しない類似の年齢のヒト対象1例以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、もしくは40例またはそれ以上)におけるタンパク質発現を解析することによって、事前確立することもできる。そして、この事前確立された基準値(SMAを有しない複数の対象から得られた発現レベル/濃度の平均または中央値であり得る)は、試験試料との比較におけるタンパク質または核酸の「対照」濃度/発現レベルとして使用することができる。このような比較において、解析されているNFの発現レベルが事前確立された基準よりも高い場合、対象はSMAを有することが予測される。
【0063】
本開示の方法は、SMAを有するか、または有することが疑われる対象からの生体試料中の1つ以上の遺伝子(例えば、1つ以上のNF遺伝子)の発現レベル(例えば、mRNAまたはタンパク質濃度)を測定することを含み得、このとき、対照と比べての1つ以上のNF遺伝子の発現レベルは、SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))を含む治療に対する対象の応答性を予測する。ある特定の実施形態において、SMAを有するか、または有することが疑われる対象からの生体試料中のNFタンパク質(例えば、pNF-H)の濃度が対照より低い場合、対象はSMAを含む療法に応答する可能性があると同定される。この文脈において、「対照」という用語は、SMAに応答しないことが分かっている同じまたは類似の年齢の対象から得られた試料(同じ供給源(例えば、プラズマ、血液、血清、CSF)からのもの)を含む。また、「対照」という用語は、そのSMA療法に応答しないことが分かっている対象から過去に得られ、治療応答性が予測される対象から採取された試料を試験するために将来の比較用の基準として使用される、(同じ組織からの)試料も含む。特定の細胞タイプまたは組織中の特定のNFタンパク質における「対照」発現レベル/濃度は、SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))を用いた治療に応答しなかった同じまたは類似の年齢のヒト対象1例以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、もしくは40例またはそれ以上)におけるタンパク質発現を解析することによって、事前確立させることができる。そして、この事前確立された基準値(療法に応答しなかった複数の対象から得られた発現レベル/濃度の平均または中央値であり得る)は、試験試料との比較におけるタンパク質または核酸の「対照」濃度/発現レベルとして使用することができる。このような比較において、解析されているNF遺伝子の発現レベルが事前確立された基準よりも低い場合、対象はSMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))を含む療法に応答することが予測される。
【0064】
特定の生体液、細胞タイプ、または組織中の特定のタンパク質(例えば、NF-H)の「対照」濃度は、代替的に、SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))を用いた治療に応答した対象1例以上における遺伝子発現を解析することによって事前確立させることができる。そして、この事前確立された基準値(療法に応答した複数の対象から得られた発現レベルの平均または中央値であり得る)は、試験試料との比較における「対照」発現レベルとして使用することができる。このような比較において、解析されているタンパク質の濃度が事前確立された基準と同じであるまたはそれに匹敵する(基準の85%以上100%未満)場合は、対象はSMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))に応答することが予測される。
【0065】
ある特定の実施形態において、「対照」は所定のカットオフ値である。
【0066】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、目的のNFタンパク質(複数可)の濃度が所定のカットオフ値を上回るか下回るかを決定することを含む。
【0067】
カットオフ値とは、典型的には、それを上回るか下回るかで何か(例えば、SMAに罹患する可能性、または目的療法に対する対象の応答性)を予測できると考えられるタンパク質の濃度である。したがって、本明細書に記載の方法によれば、NFタンパク質(例えば、pNF-H)の基準濃度はカットオフ値として同定され、カットオフ値を上回るか下回るかでSMAを有する対象、またはSMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))に対する応答性を示す対象を予測できる。カットオフ値の中には、臨床的相関がそのカットオフのいずれかの側の値範囲にわたり依然として有意にとどまる可能性がある点で絶対的ではないものもあるが、特定の試料タイプに対しNFタンパク質濃度の最適なカットオフ値(例えば、変動するHスコア)を選択することは可能である。本明細書に記載の方法で使用するために決定されたカットオフ値は、例えば、公表されたNF濃度範囲と比較してもよいが、使用された方法論及び患者集団に個別化してもよい。最適なカットオフ値の改善は、使用する統計的手法の精巧性や、異なるタンパク質、遺伝子、及び試料タイプに対する基準レベル値の決定に使用する試料の数及び供給源に応じて決定され得ることを理解されたい。そのため、確立されたカットオフ値は、定期的な再評価または方法論もしくは集団分布の変化に基づき、上下に調整することができる。
【0068】
1つ以上のNFタンパク質の基準濃度は、様々な方法によって決定することができる。基準レベルは、例えば、SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))に応答するまたはSMA療法に応答しない対象(例えば、患者)の集団において、目的NFタンパク質の濃度を比較することによって決定することができる。これは、例えば、ヒストグラム解析によって遂行することができ、ヒストグラム解析では患者のコホート全体が図式的に提示され、第1の軸は目的タンパク質の濃度を表し、第2の軸はコホート内の対象の数を表し、当該対象の試料は1つ以上の濃度を含む。次いで、タンパク質の基準濃度の決定は、これらの別々のグループを最もよく区別する量または濃度に基づいて行うことができる。基準レベルはあらゆる対象に一様に適用可能な1つの数字であってもよく、または基準レベルは対象の特定のサブ集団に応じて変動してもよい。例えば、高年齢の対象は低年齢の対象とは異なる基準レベルを有してもよい。加えて、より重症の疾患を有する対象は、より軽度の疾患形態を有する対象とは異なる基準値を有してもよい(例えば、I型対IV型SMA、I型対III型SMA、I型対II型SMA)。
【0069】
事前確立されたカットオフ値は、受診者動作特性(ROC)解析に基づいて決定するNFタンパク質濃度(例えば、pNF-H)であり得る。ROC曲線は、臨床試験のカットオフ値を決定するために使用される。2つの患者群が存在し、確立された標準的な技法を使用することにより、一方の群はSMA療法に応答することが分かっており、他方の群はSMA療法に応答しないことが分かっている状況を検討する。2つの群の全てのメンバーからの生体試料を用いた測定は、SMA療法に対する応答性を試験するために使用される。試験によって、SMA療法に応答するレスポンダーが、全てではないが何例か見出される。この試験で見出されたレスポンダーの、(確立された標準的な技法によって分かっている)レスポンダーの総数に対する比率が、真陽性率(感度としても知られている)である。試験によって、SMA療法に応答しないノンレスポンダーが、全てではないが何例か見出される。この試験で見出されたノンレスポンダーの、(確立された標準的な技法によって分かっている)ノンレスポンダーの総数に対する比率が、真陰性率(特異度としても知られている)である。期待されるのは、SMA療法応答性試験のROC曲線解析によって、疑陽性及び偽陰性の数を最小限に抑えるカットオフ値が見出されることである。ROCは、識別閾値が変化したときの2元クラス層別化システムの性能を示す図式的プロットである。ROCは、様々な閾値設定で、陰性における偽陽性の割合に対し陽性における真陽性の割合をプロットすることによって作成される。
【0070】
1つの実施形態において、NFタンパク質濃度は、陽性予測値によりSMA療法に対する応答を予測するROC解析に基づいて決定され、このとき、事前確立されたカットオフ値以下の目的タンパク質(例えば、pNF-H)の濃度は目的タンパク質の低い濃度とし、事前確立されたカットオフ値より高い値は目的タンパク質の高い濃度とする。陽性予測値は真陽性である陽性試験結果の割合である。陽性予測値は、陽性試験が試験されている基礎的条件を反映する確率を反映する。ROC曲線を構築し、陽性予測値を決定する方法は、当技術分野で周知されている。
【0071】
別の実施形態において、事前確立されたカットオフ値は、SMA療法に対する応答を予測するシミュレーションモデルに基づいて決定されるNFタンパク質濃度であり得、このとき、事前確立されたカットオフ値以下の目的タンパク質(例えば、pNF-H)の濃度は目的タンパク質の低い濃度とし、事前確立されたカットオフ値より高い値は目的タンパク質の高い濃度とする。
【0072】
8.生体試料
本明細書に記載の方法に好適な生体試料としては、NFタンパク質または核酸(例えば、RNA(mRNA))などの目的アナライト生体分子を含む任意の生体液、細胞、組織、またはこれらの画分が挙げられる。生体試料は、例えば、ヒト対象から得られた試験片であってもよく、このような対象に由来するものであってもよい。例えば、試料は、生検で得られた組織切片、保管された生体液、または組織培養に入れたもしくは適合させた細胞であり得る。いくつかの場合において、生体試料は、血液、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)、尿などの生体液、または基質(例えば、ガラス、ポリマー、紙)に吸収させたこのような試料である。生体試料は、所望の場合はさらに分画して特定の細胞タイプを含む画分にしてもよい。例えば、血液試料を分画して血清にしてもよく、または赤血球もしくは白血球(white blood cell)(白血球(leukocyte))などの特定のタイプの血球を含む画分にしてもよい。所望の場合は、試料は、対象からの試料の組合せ、例えば、組織及び液体試料の組合せであってもよい。
【0073】
生体試料は、SMAを有するか、有する疑いがあるか、罹患するリスクがある対象から得ることができる。ある特定の実施形態において、対象はヒト胎児である。ある特定の実施形態において、対象は症状発現前のヒト乳児である。ある特定の実施形態において、対象は症状発現前のヒト小児である。ある特定の実施形態において、対象は症状発現前のヒト成人である。
【0074】
生体試料を得るための任意の好適な方法を用いることができるが、例示的な方法としては、例えば、静脈切開術、穿刺吸引生検手順が挙げられる。また、試料は、例えば、マイクロダイセクション(例えば、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)またはレーザーマクロダイセクション(LMD))によって収集することもできる。
【0075】
試料中の分子(例えば、核酸またはタンパク質)の活性または完全性を保持する試料を得る及び/または保管するための方法は、当業者に周知されている。例えば、生体試料はさらに、試料中の分子(例えば、核酸もしくはタンパク質)を保持するまたは分子の変化を最小限に抑える1つ以上のさらなる薬剤、例えば、緩衝液及び/または阻害剤(ヌクレアーゼ、プロテアーゼ、及びホスファターゼ阻害剤のうちの1つ以上を含む)に接触させることができる。このような阻害剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(P-アミノエチルエーテル)N,N,N1,N1-四酢酸(EGTA)などのキレート剤、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、アプロチニン、ロイペプチン、アンチパインなどのプロテアーゼ阻害剤、リン酸塩、フッ化ナトリウム、バナジン酸塩などのホスファターゼ阻害剤が挙げられる。分子を単離するための好適な緩衝液及び条件は当業者に周知されており、例えば、キャラクタリゼーションを行う試料中の分子のタイプに応じて変動し得る(例えば、Ausubel et al.Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 47),John Wiley & Sons,New York(1999);Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988);Harlow and Lane,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1999);Tietz Textbook of Clinical Chemistry,3rd ed.Burtis and Ashwood,eds.W.B.Saunders,Philadelphia(1999)を参照)。また、試料を処理して、妨害物質の存在を排除するまたは最小限に抑えることもできる。例えば、生体試料を分画または精製して、1つ以上の目的外の物質を除去することができる。生体試料を分画または精製する方法としては、限定されるものではないが、クロマトグラフィー法、例えば、液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、または親和性クロマトグラフィーが挙げられる。本明細書に記載の方法での使用に関し、試料は様々な物理的状態であり得る。例えば、試料は、液体であっても固体であってもよく、液体に溶解させても懸濁させてもよく、エマルジョンまたはゲル中にあってもよく、材料に吸収させてもよい。
【0076】
9.バイオマーカーの発現レベル/濃度の決定
遺伝子発現は、例えば、標的遺伝子のタンパク質またはRNAの発現として検出することができる。すなわち、遺伝子の存在または発現レベル(量)は、遺伝子のmRNAまたはタンパク質の発現レベルを検出及び/または測定することによって決定することができる。いくつかの実施形態において、遺伝子発現は、NF遺伝子によってコードされるタンパク質の活性として検出することができる。
【0077】
1つの実施形態において、遺伝子の発現は、遺伝子によってコードされるタンパク質の発現または濃度を検出及び/または測定することによって決定することができる。タンパク質の発現/濃度を決定する方法は当技術分野で周知されている。一般的に使用されている方法は、目的の標的タンパク質に特異的な抗体の使用を含む。例えば、タンパク質発現を決定する方法としては、限定されるものではないが、ウェスタンブロットまたはドットブロット解析、免疫組織化学検査(例えば、定量的免疫組織化学検査)、免疫細胞化学検査、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOT;Coligan,J.E.,et al.,eds.(1995)Current Protocols in Immunology. Wiley,New York)、放射性免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光免疫測定法、ラテックス比濁免疫測定法、ラテックス測光免疫測定法、免疫クロマトグラフィー測定法、及び抗体アレイ解析(例えば、米国特許出願公開第2003/0013208号及び第2004/171068号を参照(これらの各々が参照によりその全体が本明細書に援用される))が挙げられる。上記の方法及びタンパク質発現を検出するためのさらなる方法についてのさらなる説明は、例えば、Sambrook et al.(前掲)に見出すことができる。
【0078】
1つの例では、NF遺伝子(例えば、NF-H)のNFタンパク質発現の存在または量は、ウェスタンブロッティング技法を用いて決定することができる。例えば、ライセートは生体試料から調製することができ、または生体試料自体をレムリー緩衝液と接触させ、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に供してもよい。次に、サイズによって分離したSDS-PAGE分解タンパク質を濾過膜(例えば、ニトロセルロース)に移し、検出可能に標識された、目的タンパク質に特異的な抗体を用いてイムノブロッティング技法に供することができる。結合している検出可能に標識された抗体の存在または量は、生体試料中のタンパク質の存在または量を示す。
【0079】
1つの実施形態において、SimplePlexプラットフォームは、NF-H(例えば、リン酸化NF-H)のレベルを測定するために使用される。SimplePlexは、Protein Simple(San Jose,CA,USA)から市販されている(Dysinger M,et al.J.Immunol. Methods.451:1-10,2017を参照)。
【0080】
1つの実施形態において、NF-L(例えば、リン酸化NF-L)を測定するためのアッセイが用いられる。血清中のNF-Lを測定するためのアッセイが説明されている(例えば、Gaiottino et al.,PLoS ONE 8:e75091,2013;Kuhle et al.,J.Neurol. Neurosurg. Psychiatry 86(3):273-279,2014を参照)。1つの例では、対象からの血清を1000gで10分間室温で遠心分離し、収集から2時間以内に-80℃で保管する。血清中NF-L濃度は、すぐに使用可能な酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)(Mabtech AB,Nacka Strand,Sweden)、またはGaiottino et al.,PLoS ONE 8:e75091,2013に記載の電気化学発光(ECL)免疫測定法、またはDisanto et al.,Ann.Neurol.81(6):857-870,2017に記載の単一分子アレイ(SIMOA)法を用いて、(例えば、2連で)測定することができる。アッセイ法は、Kuhl et al.,Clinical Chemistry and Laboratory Medicine 54(10):1655-1661,2016で比較されている。SIMOAアッセイ(詳細にはSimoa NF-light Advantageキットと呼ばれる)は、Quanterix Corp. (Lexington,MA,USA)から市販されている。
【0081】
別の例では、免疫測定法が、遺伝子(例えば、NF-H遺伝子)のタンパク質発現を検出及び/または測定するために使用され得る。上記のように、検出の目的で、免疫測定法は、検出部分(例えば、蛍光剤または酵素)を有する抗体を用いて実施することができる。生体試料からのタンパク質は、固相マトリックス(例えば、マルチウェルアッセイプレート、ニトロセルロース、アガロース、セファロース、コードされた粒子、もしくは磁気ビーズ)と直接結合体化させてもよく、または特定の結合対(例えば、ストレプトアビジンまたはビオチン)の第2のメンバーと結合したときに固相マトリックスに付着する特定の結合対(例えば、ビオチンもしくはストレプトアビジン)の第1のメンバーと結合体化させてもよい。固相マトリックスにこのように付着させることにより、タンパク質は、検出抗体と接触させる前に、生体試料の他の妨害的または無関係な成分を取り除いて精製することができ、またその後に、結合していない抗体を洗浄することもできる。ここでも上記のように、結合している検出可能に標識された抗体の存在または量は、生体試料中のタンパク質の存在または量を示す。
【0082】
抗体の形態については特定の制約は存在せず、本開示はポリクローナル抗体に加えてモノクローナル抗体も含む。また、免疫動物によって、例えば、本発明のタンパク質またはそのフラグメント(すなわち、NFタンパク質のタンパク質またはその免疫学的フラグメント)を有するウサギによって得られる抗血清、ならびに全てのクラスのポリクローナル及びモノクローナル抗体、ヒト抗体、ならびに遺伝子組換えによって産生されたヒト化抗体も含まれる。
【0083】
インタクトなタンパク質またはその部分ペプチドを免疫化のための抗原として使用してもよい。タンパク質の部分ペプチドとしては、例えば、タンパク質のアミノ(N)末端側フラグメント及びカルボキシ(C)末端側フラグメントを挙げることができる。
【0084】
目的タンパク質またはそのフラグメント(例えば、免疫学的フラグメント)をコードする遺伝子を既知の発現ベクターに挿入し、本明細書に記載のベクターで宿主細胞を形質転換することにより、宿主細胞の内部または外部から所望のタンパク質またはそのフラグメントが標準的な方法を用いて回収される。このタンパク質は、感作抗原として使用することができる。また、本発明のタンパク質を発現する細胞、細胞ライセート、または化学合成タンパク質も感作抗原として使用することができる。
【0085】
感作抗原によって免疫化する哺乳類に制約はないが、細胞融合で使用する親細胞との適合性を考慮して動物を選択することが好ましい。概して、げっ歯目、ウサギ目、または霊長目に属する動物が使用される。使用され得るげっ歯目に属する動物の例としては、例えば、マウス、ラット、及びハムスターが挙げられる。使用され得るウサギ目に属する動物の例としては、例えば、ウサギが挙げられる。使用され得る霊長目に属する動物の例としては、例えば、サルが挙げられる。使用するサルの例としては、狭鼻下目(旧世界ザル)、例えば、Macaca fascicularis、アカゲザル、マントヒヒ、及びチンパンジーが挙げられる。
【0086】
周知されている方法を使用して、動物を感作抗原で免疫化することができる。例えば、感作抗原は、哺乳類の腹腔内または皮下に注入される。具体的には、感作抗原を生理食塩水、リン酸緩衝食塩液(PBS)などで好適に希釈及び懸濁し、所望に応じて好適な量の一般的アジュバント(例えば、フロイント完全アジュバント)と混合する。次いで、溶液を乳化し、哺乳類に注入する。その後、フロイント不完全アジュバントと好適に混合した感作抗原を、好ましくは4~21日ごとに数回投与する。感作抗原で動物を免疫化するときに、好適な担体を使用してもよい。免疫化の後、通常の方法によって血清抗体レベルの上昇が検出される。
【0087】
本開示のタンパク質に対するポリクローナル抗体は、以下のように調製することができる。所望の血清抗体レベルに達したことを確認した後、抗原で感作した哺乳類から血液を採取する。従来の方法を用いて、この血液から血清を単離する。ポリクローナル抗体を含む血清をポリクローナル抗体として用いてもよく、または必要に応じて、血清からポリクローナル抗体を含む画分をさらに単離してもよい。例えば、本発明のタンパク質を特異的に認識する抗体の画分は、タンパク質が結合するアフィニティーカラムを使用することによって調製することができる。次いで、免疫グロブリンGまたはMを調製するために、プロテインAまたはプロテインGカラムを使用することによって画分をさらに精製してもよい。
【0088】
モノクローナル抗体を得るには、上記の抗原で感作した哺乳類において所望の血清抗体レベルに達したことを確認した後、その哺乳類から免疫細胞を採取し、細胞融合に使用する。この目的において、脾細胞は好ましい免疫細胞として挙げることができる。上記免疫細胞と融合した親細胞としては、哺乳類の骨髄腫細胞を使用することが好ましい。より好ましくは、薬剤による融合細胞の区別に使用され得る特徴を獲得した骨髄腫細胞を、親細胞として使用する。
【0089】
上記免疫細胞と骨髄腫細胞との間の細胞融合は、既知の方法、例えば、Milstein et al.(Galfre et al.,Methods Enzymol.73:3-46,1981)による方法に従って、行うことができる。
【0090】
細胞融合から得られたハイブリドーマは、標準的な選択培地、例えば、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含む培地)中で細胞を培養することによって選択される。このHAT培地での培養は、目的ハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な期間(通常は数日から数週間)継続される。次いで、通常の限界希釈法を行い、目的抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングしクローニングする。
【0091】
上記の、ヒト以外の動物を抗原で免疫化することによってハイブリドーマを得る方法以外において、タンパク質に結合する活性を有する、目的ヒト抗体を産生するハイブリドーマは、ヒトリンパ球(例えば、EBウイルスに感染したヒトリンパ球)をタンパク質、タンパク質発現細胞、またはそのライセートによりin vitroで感作し、感作リンパ球を、恒久的な細胞分裂能力を有するヒト由来の骨髄腫細胞(例えば、U266)と融合する方法によって、得ることができる。
【0092】
得られたハイブリドーマをマウスの腹腔に移植し、腹水を抽出することによって得られるモノクローナル抗体は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿法、プロテインAまたはプロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、本開示のタンパク質が結合するアフィニティーカラムなどによって精製することができる。
【0093】
また、モノクローナル抗体は、遺伝子操作技法を使用することによって産生される組換え抗体として得ることもできる(例えば、Borrebaeck C.A.K.and Larrick,J.W.,THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES(MACMILLAN PUBLISHERS LTDにより英国で発行)(1990)を参照)。組換え抗体は、免疫細胞(例えば、ハイブリドーマまたは抗体を産生する感作リンパ球)からコードDNAをクローニングし、好適なベクターに組み込み、抗体を産生させるためにこのベクターを宿主に導入することにより、産生される。本開示は、このような組換え抗体も包含する。
【0094】
1つ以上のバイオマーカーによってコードされたタンパク質に対し特異的な抗体または抗体フラグメントは、ファージディスプレイなどのin vitroの方法によって生成することもできる。
【0095】
さらに、本開示の抗体は、本発明のバイオマーカーによってコードされるタンパク質に結合する限りにおいて、抗体フラグメントであっても修飾抗体であってもよい。例えば、H鎖Fv及びL鎖Fvがリンカーによって好適に結合しているFab、F(ab’)2、Fv、または1本鎖Fv(scFv)(Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5879-5883,(1988))は、抗体フラグメントとして挙げることができる。具体的には、抗体フラグメントは、抗体を酵素(例えば、パパインまたはペプシン)で処理することによって生成される。代替的に、抗体フラグメントは、抗体フラグメントをコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入し、このベクターを好適な宿主細胞内で発現させることにより、生成することができる(例えば、Co et al.,J.Immunol.,152:2968-2976,1994;Better et al.,Methods Enzymol.,178:476-496,1989;Pluckthun et al.,Methods Enzymol.,178:497-515,1989;Lamoyi,Methods Enzymol.,121:652-663,1986;Rousseaux et al.,Methods Enzymol.,121:663-669,1986;Bird et al.,Trends Biotechnol.,9:132-137,1991を参照)。
【0096】
抗体は、蛍光物質、放射性物質、及び発光物質などの様々な分子と結合体化させることができる。このような部分を抗体に付着させる方法は、当技術分野では既に確立し、一般に行われている(例えば、US5,057,313及び5,156,840を参照)。
【0097】
抗体の抗原結合活性をアッセイする方法の例としては、例えば、吸光度の測定、酵素結合性免疫吸着検定法(ELISA)、酵素免疫測定法(EIA)、放射性免疫測定法(RIA)、及び/または免疫蛍光法が挙げられる。例えば、ELISAを使用する場合、本発明のバイオマーカーによってコードされるタンパク質を、本開示の抗体でコーティングされたプレートに添加し、次いで抗体試料(例えば、抗体産生細胞の培養上清、または精製抗体)を添加する。次いで、アルカリホスファターゼ及びこのような酵素で標識した、一次抗体を認識する二次抗体を添加し、プレートをインキュベートし、洗浄し、吸光度を測定して、p-ニトロフェニルリン酸などの酵素基質を添加した後の抗原結合活性を評価する。タンパク質としては、タンパク質フラグメント、例えば、C末端を含むフラグメントまたはN末端を含むフラグメントを使用することができる。本発明の抗体の活性を評価するために、BIAcore(Pharmacia)を使用することができる。
【0098】
これらの方法を使用することにより、本発明の抗体及び本発明のタンパク質を含むと推定される試料を接触させ、上述の抗体とタンパク質との間で形成された免疫複合体を検出またはアッセイすることにより、本発明のバイオマーカーによってコードされたタンパク質を検出またはアッセイする。
【0099】
質量分析に基づく定量的アッセイ法、例えば、限定されるものではないが、安定同位体で標識された内部標準物質を併用した多重反応モニタリング(MRM)に基づくアプローチは、タンパク質の定量的測定を行う上で免疫測定法の代替となる手段である。このようなアプローチは抗体の使用が求められないため、コスト効率及び時間効率の高い方法で解析を実施することができる(例えば、Addona et al.,Nat.Biotechnol.,27:633-641,2009;Kuzyk et al.,Mol.Cell Proteomics,8:1860-1877,2009;Paulovich et al.,Proteomics Clin.Appl.,2:1386-1402,2008を参照)。加えて、MRMは優れた多重化能力を提供し、多数のタンパク質を並行して同時に定量化することができる。これらの方法の基本理論は確立されており、小分子の薬物代謝及び薬物動態解析に広く利用されている。
【0100】
別の実施形態において、目的NF遺伝子の発現レベルは、RNAレベルを測定することによって決定される。様々な好適な方法を用いて、遺伝子のmRNA発現レベルを検出及び/または測定することができる。例えば、mRNA発現は、ノーザンブロットもしくはドットブロット解析、逆転写酵素PCR(RT-PCR、例えば、定量的RT-PCR)、in situハイブリダイゼーション(例えば、定量的in situハイブリダイゼーション)、または核酸アレイ(例えば、オリゴヌクレオチドアレイまたは遺伝子チップ)解析を用いて決定することができる。このような方法の詳細は、下記及び例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual Second Edition vol.1,2 and 3.Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor,New York,USA,Nov.1989;Gibson et al.(1999)Genome Res.,6(10):995-1001;及びZhang et al.(2005)Environ. Sci.Technol.,39(8):2777-2785;米国特許出願公開第2004086915号;欧州特許第0543942号;及び米国特許第7,101,663号で説明されており、これらの各々の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0101】
1つの例では、生体試料中の1つ以上の別々のmRNA集団の存在または量は、生体試料から総mRNAを単離し(例えば、Sambrook et al.(前掲)及び米国特許第6,812,341号を参照)、単離したmRNAをアガロースゲル電気泳動に供してサイズごとにmRNAを分離することにより、決定することができる。次いで、サイズで分離したmRNAを(例えば、拡散によって)ニトロセルロース膜などの固体支持体に移す。次いで、生体試料中の1つ以上のmRNA集団の存在または量は、1つ以上の検出可能に標識されたポリヌクレオチドプローブを用いて決定することができる。このプローブは目的mRNA配列に相補的であり、対応するmRNA集団に結合することでそのmRNA集団を検出可能にする。検出可能な標識としては、例えば、蛍光標識(例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、アロフィコシアニン(APC)、またはフィコエリトリン)、発光標識(例えば、ユーロピウム、テルビウム、Quantum Dot Corporation(Palo Alto,CA)が供給するQdot(商標)ナノ粒子)、放射線標識(例えば、125I、131I、35S、32P、33P、またはH)、及び酵素標識(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼ)が挙げられる。
【0102】
別の例において、生体試料中の別々のmRNA(例えば、1つ以上のNF遺伝子によってコードされたmRNA)集団の存在または量は、核酸(またはオリゴヌクレオチド)アレイを用いて決定することができる。例えば、生体試料からの単離mRNAは、例えば、ランダムヘキサマーまたはオリゴ(dT)プライマー媒介の第1の鎖合成を伴って、RT-PCRを用いて増幅することができる。アンプリコンは、より短いセグメントにフラグメント化することができる。RT-PCRステップは、アンプリコンを検出可能に標識するのに使用することができ、または任意選択で、アンプリコンはRT-PCRステップの後で検出可能に標識することができる。例えば、検出可能な標識は、任意の様々な好適な技法(例えば、Sambrook et al.(前掲)を参照)を用いて、酵素的に(例えば、ニックトランスレーションまたはキナーゼ(例えば、T4ポリヌクレオチドキナーゼ)により)、または化学的にアンプリコンと結合体化させることができる。次いで、検出可能に標識されたアンプリコンを複数のポリヌクレオチドプローブセットに接触させる。このセットの各々は、対応するアンプリコンに特異的(かつ結合可能)な1つ以上のポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド)プローブを含み、複数が、異なるアンプリコンに各々対応する多くのプローブセットを含む。概して、プローブセットは固体支持体に結合しており、各プローブセットは固体支持体上で所定の位置にある。検出可能に標識されたアンプリコンがプローブセットの対応プローブに結合することで、生体試料中の標的mRNAの存在または量が示される。核酸アレイを用いてmRNA発現を検出するためのさらなる方法は、例えば、米国特許第5,445,934号、第号、第6,027,880号、第6,057,100号、第6,156,501号、第6,261,776号、及び第6,576,424号に記載されており、これらの各々の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0103】
検出可能な標識を検出及び/または定量化する方法は、標識の性質に依存する。適切な酵素によって触媒された反応の産物(検出可能な標識が酵素である場合(上記参照))は、限定されるものではないが、蛍光、発光、もしくは放射性であり得、またはこのような産物は可視光もしくは紫外光を吸収し得る。このような検出可能な標識を検出するのに好適な検出器の例としては、限定されるものではないが、X線フィルム、放射能カウンター、シンチレーションカウンター、分光光度計、比色計、蛍光光度計、照度計、及び濃度計が挙げられる。
【0104】
遺伝子発現(例えば、タンパク質またはmRNA発現)を検出または測定するための方法は、任意選択で、複数の試料の迅速な調製、処理、及び解析を可能にする形式で実施することができる。これは、例えば、マルチウェルアッセイプレート(例えば、96ウェルもしくは386ウェル)またはアレイ(例えば、核酸チップもしくはタンパク質チップ)であり得る。様々な試薬のためのストック溶液は、手動または自動で提供することができ、その後の試料調製(例えば、RT-PCR、標識、もしくは細胞固定)、ピペット操作、希釈、混合、分配、洗浄、インキュベート(例えば、ハイブリダイゼーション)、試料読取り、データ収集(光学データ)、及び/または解析(コンピューター援用画像解析)は、市販の解析ソフトウェア、ロボット工学、及びアッセイから生成されたシグナルを検出可能な検出装置を用いて自動で行うことができる。そのような検出器の例としては、限定されるものではないが、分光光度計、照度計、蛍光光度計、及び放射性同位体減衰を測定するデバイスが挙げられる。例示的な高スループットの細胞ベースアッセイ(例えば、細胞内の標的タンパク質の存在またはレベルの検出)は、ArrayScan(登録商標)VTI HCSリーダーまたはKineticScan(登録商標)HCSリーダー技術(Cellomics Inc.,Pittsburg,PA)を利用することができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、1つのNF遺伝子、2つのNF遺伝子、または3つのNF遺伝子の発現レベルを評価及び/または測定することができる。
【0106】
NF遺伝子のうちの1つ以上の存在または発現レベルの検出を支援するため、遺伝子の核酸配列の任意の部分を、例えば、ハイブリダイゼーションポリヌクレオチドプローブまたはプライマー(例えば、増幅または逆転写用に)として使用することができる。プローブ及びプライマーは、生体試料から単離されたRNA、DNA、cDNA、またはこれらのフラグメントに対する特異的ハイブリダイゼーションをもたらすのに十分な長さのオリゴヌクレオチドであり得る。特定の用途に応じて、様々なハイブリダイゼーション条件を用いて、標的配列に対する様々な程度のプローブまたはプライマーの選択性を実現することができる。プライマー及びプローブは、検出を容易にする試薬(例えば、蛍光標識、化学標識(例えば、米国特許第4,582,789号及び第4,563,417号を参照)、または修飾塩基)を用いて、検出可能に標識することができる。
【0107】
標準的なストリンジェンシー条件は、Sambrook et al.(前掲)及びHaymes, et al.Nucleic Acid Hybridization,A Practical Approach,IRL Press,Washington,D.C.(1985)によって説明されている。核酸分子がプライマーまたはプローブとして機能するためには、核酸分子は、用いられる特定のハイブリダイゼーション条件下(例えば、溶媒及び塩の濃度)で安定した2本鎖構造を形成することができるように、配列が十分に相補的であればよい。
【0108】
ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列間の相同性の評価に使用することができる。本明細書に記載の核酸配列またはそのフラグメントは、標準的なハイブリダイゼーション技法に従ってハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。目的プローブ(例えば、本明細書に記載のヌクレオチド配列またはその補体の一部を含むプローブ)における、試験供給源からのDNA、RNA、cDNA、またはこれらのフラグメントに対するハイブリダイゼーションは、試験供給源中にプローブに対応するDNAまたはRNAが存在することを示す。ハイブリダイゼーション条件は当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.,6.3.1-6.3.6,1991で見出すことができる。中程度のハイブリダイゼーション条件は、30℃における2×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション、及びその後の50℃における1×SSC、0.1% SDS中での洗浄として定義される。高度にストリンジェントな条件は、45℃における6×SSC中でのハイブリダイゼーション、及びその後の65℃における0.2×SSC、0.1% SDS中での洗浄である。
【0109】
プライマーは、様々なPCRタイプの方法で使用することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法を使用して、全ゲノムDNAまたは全細胞RNAからの配列を含めたDNA及びRNAからの特定の配列を増幅することができる。PCRプライマーは、増幅の関心対象となる領域に隣接するように設計されている。プライマーは、増幅対象となるヌクレオチド配列内の5’末端付近、3’末端付近、または任意の位置に配置することができる。アンプリコン長は、実験の目標によって規定される。qPCRの場合、標的長は100塩基対に近く、標準的なPCRの場合、標的長は500塩基対前後である。概して、目的領域の末端以降からの配列情報は、増幅対象の鋳型の対向鎖と配列が同一であるかまたは類似するオリゴヌクレオチドプライマーを設計するために用いられる。PCRプライマーは、単一核酸分子として(例えば、ホスホロアミダイト技術を用いた3’→5’方向の自動化DNA合成を用いて)、または一連のオリゴヌクレオチドとして、化学合成することができる。例えば、所望の配列を含む長いオリゴヌクレオチド(例えば、>100ヌクレオチド)の1つ以上の対は、各対が相補性を有する短いセグメント(例えば、約15ヌクレオチド)を含み、オリゴヌクレオチド対がアニーリングされたときにデュプレックスが形成されるように、合成することができる。DNAポリメラーゼはオリゴヌクレオチドを伸長するために使用され、オリゴヌクレオチド対ごとに単一の2本鎖核酸分子をもたらす。
【0110】
加えて、核酸配列またはそのフラグメント(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ)は、遺伝子発現の検出及び/または定量化のために核酸アレイで使用することができる。
【0111】
10. 治療方法
本明細書で開示する方法は、SMAを有するか、または有することが疑われる対象がSMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))に応答する可能性があるかそうでないかの評価を可能にする。SMA療法に応答する可能性がある、SMAを有するか、または有することが疑われる対象には、SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))を投与することができる。逆に、SMA療法に応答する可能性が低い、SMAを有するか、または有することが疑われる対象には、SMAの治療に好適な別のSMA療法を投与することができる。
【0112】
また、本開示の方法は、SMAを有するか、または有することが疑われる対象を、SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))を含む治療から利益を受ける可能性がより高い対象の群と、利益を受ける可能性がより低い対象の群とに層別化することも可能にする。SMA療法を用いた治療が検討されているSMA対象のプールからこのような対象を選択する能力は、対象に有効な治療を投与するために有益である。
【0113】
SMA療法を含む治療が検討される対象としては、限定されるものではないが、SMAを有する対象、SMAを有することが疑われる対象、またはSMAに罹患する可能性がある対象が挙げられる。1つの実施形態において、SMA療法を用いて治療される対象は、0型SMAを有するか、有することが疑われるか、またはこれに罹患する可能性がある。1つの実施形態において、SMA療法を用いて治療される対象は、I型SMAを有するか、有することが疑われるか、またはこれに罹患する可能性がある。1つの実施形態において、SMA療法を用いて治療される対象は、II型SMAを有するか、有することが疑われるか、またはこれに罹患する可能性がある。1つの実施形態において、SMA療法を用いて治療される対象は、III型SMAを有するか、有することが疑われるか、またはこれに罹患する可能性がある。1つの実施形態において、SMA療法を用いて治療される対象は、IV型SMAを有するか、有することが疑われるか、またはこれに罹患する可能性がある。
【0114】
SMAを有する対象が、SMA療法に応答する可能性がより高い(上記のバイオマーカー(例えば、pNF-Hタンパク質)のうちの1つ以上の濃度に基づく)場合、対象にSMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))の有効量を投与することができる。化合物の有効量は、例えば、患者の特性(年齢、性別、体重、人種など)、疾患の進行、及び薬物に対する事前暴露を考慮して、医療従事者が適切に決定することができる。対象が、あるSMA療法に応答する可能性がより低い場合、対象には任意選択で別のSMA療法を投与することができる。
【0115】
全ての年齢の対象がSMAを発症し得る。そのため、本明細書に記載の方法で使用する生体試料は、胎児、乳児、小児、青年、または成人を含めたあらゆる年齢のヒト対象から、例えば、SMAを有するか、または有することが疑われる成人から得ることができる。
【0116】
当該方法は、SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))によって治療可能なSMAに罹患するリスクがある個体にも適用することができる。このような個体には、(i)このような障害の家族歴(もしくは遺伝的素因)、または(ii)このような障害に罹患する1つ以上のリスク因子を有する個体が含まれる。
【0117】
SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))に応答する可能性が高いまたは低いかに基づいて対象を層別化または選択した後、医療従事者(例えば、医師)は、対象に適切な治療モダリティーを投与することができる。SMA療法を投与する方法は、当技術分野において公知である。
【0118】
本明細書に記載の任意の療法(例えば、SPINRAZA(登録商標)を含む療法またはSPINRAZA(登録商標)を含まない療法)は、1つ以上の追加の治療剤を含んでもよいことを理解されたい。すなわち、本明細書に記載の任意の療法は、1つ以上の追加の治療剤(例えば、限定されるものではないが、本明細書に記載の他のSMA療法)と共に同時投与(併用投与)されてもよい。さらに、本明細書に記載の任意の療法は、治療のための1つ以上の薬剤、またはSMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))を含む療法における1つ以上の副作用を含む場合がある。
【0119】
併用療法(例えば、SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))と、1つ以上の追加のSMA療法または追加の治療剤との同時投与)は、例えば、同時でも連続的であってもよい。例えば、SMA療法及び追加の治療剤(複数可)は、同時に投与しても異なる時間に投与してもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療剤を時間内で最初に投与し、SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))を時間内で2番目に投与することができる。
【0120】
SMAを有し、SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))に応答すると予測される対象が、以前SMA療法を投与されたことがある場合、療法は、以前投与されたまたは現在投与されている療法を置き換えるかまたは増強することができる。例えば、SPINRAZA(登録商標)を用いて治療する際に、非SPINRAZA(登録商標)療法の投与を中止または縮小(例えば、低レベルで投与)することができる。以前の療法の投与は、SPINRAZA(登録商標)を含む療法が投与されている間、維持することができる。いくつかの実施形態において、以前の療法は、SPINRAZA(登録商標)のレベルが治療効果をもたらすのに十分なレベルに達するまで、維持することができる。
【0121】
いくつかの事例において、治療方法は、胎児を子宮内で治療することを含む。治療対象となる胎児は、対照との対比で高いNFレベル(例えば、pNF-HまたはNF-L)に基づき、SMA療法を用いた治療が必要であると判定される。例えば、胎児が、遺伝子検査に基づいてSMAを有すると同定され、かつNFレベルが上昇していると同定された場合、胎児はSMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))を用いて治療することができる。いくつかの場合において、治療方法は0型患者に関連する。胎児が、非常に高いNFレベル及び1コピーのSMN2を有すると同定される場合、胎児が0型SMAを有する可能性が高い。このような胎児を出生前にSMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))を用いて治療すれば、その胎児を有効に治療することができる。
【0122】
11. キット
本開示はキットも提供する。ある特定の実施形態において、キットは、本明細書で開示するバイオマーカーのうちの1つ以上またはそれらの濃度もしくは発現レベルの検出に使用することができる抗体(1つまたは複数)を含むことができる。例えば、キットは、NF-H(例えば、pNF-H)と特異的に結合する抗体を含むことができる。キット内の抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得、さらに、検出可能な標識と結合体化させることができる。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書で開示する任意のバイオマーカーの同定または検出に使用することができるプローブを含む。いくつかの実施形態において、キットは任意の核酸アレイを含む。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書で開示する任意のバイオマーカーまたはそれらの発現もしくは発現レベルの同定または検出に使用することができる、プローブまたは抗体を含む。キットは、任意選択で、生体試料中の1つ以上のタンパク質の濃度またはmRNAのレベルを検出及び/または測定するための説明書を含むことができる。
【0123】
キットは、任意選択で、例えば、対照(例えば、評価対象のタンパク質に対する濃度標準物質)、またはアレイの核酸プローブによって認識される既知の濃度の1つ以上のアンプリコンを含む対照標識アンプリコンセットを含むことができる。いくつかの場合において、対照は、SMA、またはSMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))に対する応答性を予測できる1つ以上のタンパク質(例えば、pNF-H)またはRNAの発現レベルまたは発現レベル範囲を含む添付文書(例えば、紙の添付文書、またはCD、DVD、もしくはフロッピー(登録商標)ディスクなどの電子媒体)であり得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、キットは、生体試料を処理するための1つ以上の試薬(例えば、較正試薬、緩衝液、希釈剤、呈色試薬、反応を停止するための試薬)を含むことができる。例えば、キットは、生体試料からタンパク質を単離するための試薬及び/または生体試料中のタンパク質の存在及び/または量を検出するための試薬(例えば、検出アッセイの対象であるタンパク質に結合する抗体及び/またはタンパク質に結合する抗体に結合する抗体)を含むことができる。
【0125】
ある特定の実施形態において、キットは、少なくとも1つのマイクロプレート(例えば、96ウェルプレート、すなわち8ウェルの12ストリップ)を含む。マイクロプレートは、対応するプレートカバーを備えることができる。マイクロプレートは、ポリスチレンまたは他の任意の好適な材料であり得る。マイクロプレートは、各ウェル内にコーティングされた特定のバイオマーカーの存在を同定するのに使用される抗体を有することができる。抗体は、検出可能な標識と結合体化させることができる。また、キットは、少なくとも1つの接着ストリップを含んでもよい。
【0126】
いくつかの実施形態において、キットは、例えば、発現プロファイルまたはマイクロアレイ解析の結果を解析するための、ソフトウェアパッケージを含むことができる。
【0127】
また、キットは、本明細書に記載の任意の遺伝子(例えば、NF-H)のタンパク質発現を検出するための1つ以上の抗体を含んでもよい。例えば、キットは、本明細書に記載の任意の遺伝子によってコードされる1つ以上のタンパク質と特異的に結合可能な1つまたは複数の抗体、任意選択で、1つ以上のタンパク質の濃度を検出及び/または測定するための説明書、及び/または複数のうちの少なくとも1つの抗体に結合可能な検出可能に標識された抗体を含む検出抗体を含む(または場合によってはそれからなる)ことができる。いくつかの実施形態において、キットは、NF-H、NF-L、及び/またはNF-Mを認識する抗体を含むことができる。いくつかの実施形態において、キットは、pNF-Hを認識する抗体を含むことができる。
【0128】
ある特定の実施形態において、キットは、任意選択で、SMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))の1つ以上の単位用量を含んでもよい。
【0129】
また、本明細書に記載のキットは、1つ以上のタンパク質の濃度または1つ以上のRNAの発現レベルが、SMAを有するか、または有することが疑われる対象がSMA療法(例えば、SPINRAZA(登録商標))に応答することを予測する場合に、任意選択で、SMA療法を投与するための説明書を含んでもよい。
【0130】
特定の実施形態において、キットは以下のうちの1つ以上を含む。
(i)マイクロプレート(例えば、96ウェルプレート)。マイクロプレートは、検出可能な標識と結合体化した抗NF-H抗体でコーティングすることができる。抗NF-H抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体は、例えば、マウス、ウサギ、ラット、またはモルモットからのものであり得る。検出可能な標識は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ビオチン、蛍光部分、放射性部分、ヒスチジンタグ、またはペプチドタグであり得る。マイクロプレートは、カバーと、任意選択で、1つ以上の接着ストリップとを備えることができる。
(ii)検出可能な標識と結合体化した抗NF-Hを含むバイアル。検出可能な標識は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ビオチン、蛍光部分、ヒスチジンタグ、ペプチドタグであり得る。バイアルは防腐剤を含んでもよい。
(iii)既知の濃度のNF-H標準物質を含むバイアル。NF-Hは、組換えヒトNF-Hであり得る。
(iv)アッセイ希釈剤を含むバイアル。
(v)較正物質希釈剤を含むバイアル。
(vi)洗浄緩衝液を含むバイアル。緩衝液は濃縮物として提供されてもよい。
(vii)呈色試薬を含む1つ以上のバイアル。
(viii)比色反応を停止するための停止液を含むバイアル。
【0131】
以下の実施例は、特許請求対象の発明をより十分に例示するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。特定の材料が言及されている範囲内において、それは単なる例示目的のものであり、本発明を限定する意図はない。当業者は、発明の範囲から逸脱することなく、発明能力の行使を伴わずに同等の手段又は反応物を開発することができる。
【実施例
【0132】
以下の実施例では、NURTURE、ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISHという名称のいくつかの臨床試験について言及する。
【0133】
ENDEARは、症候性の乳児発症型SMAを有する対象における、ISIS 396443の第3相多施設ランダム化二重盲検シャム手順対照試験であった。本試験の最終解析の結果は、髄腔内(IT)ISIS 396443を用いて治療した対象が、シャム手順を投与した対照群の対象に比べて、運動マイルストーンの獲得における統計的に有意かつ臨床的に意味のある改善を達成し、さらに、無イベント生存期間、全生存期間、運動機能、及び運動ニューロン健康状態における持続的かつ臨床的に意味のある改善を達成したという明らかなエビデンスをもたらした。対照と対比しての改善は、治療開始から早くも2ヵ月後(負荷用量期間終了時)に認められ、治療開始から6ヵ月後には対照との明らかな分離が認められた。
【0134】
最終解析の時点では、対象121例に対し、腰椎穿刺(LP)によるIT注入として投与されたISIS 396443[n=80]またはシャム手順(n=41)を少なくとも1回用量投与した。これらの対象のうち、89例の対象(ISIS 396443群の65例、対照群の24例)が試験を完了した。試験終了時点では、合計42例の対象(ISIS 396443群の対象32例及び対照群の対象10例)が試験にとどまり、早期試験終了による治療中止として記録した。ISIS 396443群の対象2例、対照群の対象1例は、非盲検治療への移行前に自由意志により中止し、対象29例(ISIS 396443群の13例及び対照群の16例)が死亡した。
【0135】
本研究における対象121例の人口統計学的特徴及びSMA既往歴は、I型SMA集団と一致するものであった。
・対象のうち男性が45%、女性が55%で、86%が白人であった。
・ほとんどの対象(86%)は、12週齢未満で症状を発症した。年齢中央値は、SMA症状発症が8.0週(範囲:1~20週)、SMA診断が12.0週(範囲:0~30週)、スクリーニングが166日(範囲:20~211日)であった。登録時の疾患期間中央値は、13.1週(範囲:0.0~25.86週)であった。
・ほとんどの対象(99%)は、試験組入れ時の現地での臨床検査によれば、2コピーのSMN2遺伝子を有していた。
・ISIS 396443群の対象80例のうち、73例(91%)に少なくとも4回用量のISIS 396443を投与(すなわち、負荷用量段階を完了)し、対象32例(40%)に計画された6回用量全てを投与した。対照群の対象41例のうち、対象34例(83%)に少なくとも4回のシャム手順を実施し、対象14例(34%)に6回全ての手順を実施した。
【0136】
CHERISHは、遅発型SMAを有する対象における、ISIS 396443の第3相二重盲検ランダム化シャム手順対照試験であった。およそ117人の対象を試験に登録し、ISIS 396443を用いた治療またはシャム対照に2:1の比で割り付けた。ISIS 396443は、負荷レジメンを用いてIT投与し(1日目、29日目、及び85日目に投薬)、その6ヵ月後に維持用量を投与した(274日目に投薬)。
【0137】
中間解析の結果は、IT ISIS 396443を用いて治療した対象が、シャム手順を投与した対照群の対象に比べて、運動機能における統計的に有意な増加を達成し、さらに、運動マイルストーンにおける持続的かつ臨床的に意味のある改善を達成したという明らかなエビデンスをもたらした。運動機能の改善は全ての時点で認められたが、対照群からの分離は、治療開始から6ヵ月後、明らかに生じた。ISIS 396443のリスクベネフィットの評価に基づいて、治験依頼者は試験の早期終了を決定し、対象には非盲検継続試験に登録する機会を与えた。
【0138】
中間解析の時点では、対象126例に対し、ISIS 396443(n=84)またはシャム手順(n=42)を少なくとも1回用量投与した。治療を中止した対象も、試験を中止した対象もいなかった。データカットオフ日時点では、ISIS 396443群の対象84例のうち49例(58%)、対照群の対象42例のうち23例(55%)が試験を継続していた。15ヵ月時におけるHFMSEスコアのベースラインからの変化に対する一次解析は、対象126例(84例がISIS 396443を用いた治療、42例がシャム手順を受けた)から構成されたITTセットに基づくものであった。WHO運動マイルストーンの主要な解析は、中間有効性セットを用いて実施した。このセットは、456日目(すなわち、15ヵ月目)の来院時に評価の機会を有する対象54例(対象35例がISIS 396443を用いた治療を受け、対象19例がシャム手順を受けた)から構成された。その他の全ての二次及び三次エンドポイント解析はITTセットで実施した。
【0139】
本試験における対象126例の人口統計学的特徴及びベースライン疾患特性(SMA及び病歴を含む)は、II型またはIII型SMAに罹患する可能性が高い集団と一致するものであった。
・男性が47%、女性が53%で、75%が白人であった。
・年齢中央値は、SMA症状発症が11ヵ月(範囲:6~20)、SMA診断が18ヵ月(範囲:0~48)、スクリーニングが3.0年(範囲:2~9年)であった。登録時の疾患期間中央値は、35.7ヵ月(範囲:8~94ヵ月)であった。
・ほとんどの対象(88%)は、試験組入れ時の臨床検査によれば、3コピーのSMN2遺伝子を有し、対象の8%は2コピーを有した。
・ISIS 396443群の対象84例のうち、全例に少なくとも3回用量のISIS 396443を投与(すなわち、負荷用量を完了)し、対象76例(90%)に4回用量全てを投与した。対照群の対象42例のうち、全例に少なくとも3回のシャム手順を実施し、対象40例(95%)に4回全ての手順を実施した。
・試験期間中央値は、2つの治療群間でほぼ同じ(すなわち、ISIS 396443群で412.5日、対照群で419.5日)であった。試験における人年の総数は134.06(ISIS 396443群で88.84人年、対照群で45.22人年)であった。
【0140】
ISIS 396443を用いて治療した対象は、シャム手順を行った対象に比べて臨床的に意味のある利益が実現した。このような利益には、HFMSEによる測定における統計的に有意に大きな運動機能の増加と、上肢の機能的能力の改善とが含まれた。
【0141】
NURTUREは、症状発現前のSMAにおけるISIS 396443の有効性、安全性、忍容性、及びPKを評価するための、進行中の第2相非盲検多施設単一群試験である。本試験は、5q SMAの遺伝子文書管理、2コピーまたは3コピーのSMN2遺伝子、CMAP≧1mV、及びSMAの徴候または症状の不在を伴った、登録時点で生後6週以下の対象において行われている。最大25例の対象が計画されている。現時点で利用可能な有効性データからは、ほとんどの対象における運動マイルストーンの発達及び達成が、I型SMAの自然経過よりも正常な発達との一致性が高いことが示されている。
【0142】
NURTUREのデータカットオフ時点では、対象20例が登録されており、少なくとも1回用量のISIS 396443を投与していた。全ての対象が試験を継続している。4回全ての負荷用量の投与を受けた、または64日目の来院を完了する機会を有した対象18例が、有効性セットを構成する。
・ほとんどの対象は男性(55%)及び白人(50%)である。
・初回用量時の年齢は生後3~42日の範囲であり、中央値は19日であった。
・対象18例のうち、対象13例(72%)が2コピーのSMN2遺伝子を有し、対象5例(28%)が3コピーを有する。
【0143】
有効性データは、64日目時点で対象18例、183日目時点で対象16例、302日目時点で対象11例、365日目時点で対象9例、及び421日目時点で対象5例で利用可能であった。これらの来院の後半の結果は、I型SMA及び対象のきょうだい患者の経験とは一致せず、健康な乳幼児の同齢の期待値と一致する発達を示している。
【0144】
EMBRACEは、ENDEARにもCHERISHにも参加資格がないSMAを有する対象における、ISIS 396443の第2相ランダム化シャム手順対照多施設試験である。本試験は、CHERISHに適格となるには低すぎる年齢で乳児発症型SMAの症状を示した対象、またはENDEARに適格となるには高すぎる年齢でSMAの遅発型症状を示し、ENDEARに適格となるには高すぎる年齢でスクリーニングされたもしくはSMN2のコピー数が多すぎた対象、の独自のセットを評価した。したがって、本試験の集団は、最大3コピーのSMN2を有する対象における乳児発症型及び遅発型両方のSMAの文脈でISIS 396443の安全性、忍容性、及び有効性を探索する機会をもたらした。
【0145】
本試験は、当初は二重盲検試験として設計されたが、ISIS 396443臨床開発プログラムにおけるピボタル試験から肯定的かつロバストな結果が観察された後に、二重盲検段階(パート1)及び非盲検継続段階(パート2)を含む2パートの試験に発展した。パート1は、ランダム化二重盲検シャム手順対照試験であった。米国及びドイツの7施設からの対象21例を試験に登録した。対象のランダム化は、SMAの年齢に基づいて層別化した(乳児発症型[≦6ヵ月]vs遅発型[>6ヵ月])。対象は、およそ10ヵ月の投薬期間にわたり、合計6回の髄腔内(IT)注入または6回のシャム手順の投与が予定された。ただし、ISIS 396443臨床開発プログラムのピボタル試験の1つについての中間解析で、肯定的かつロバストな有効性結果が観察されたため、本試験のパート1は早期終了した。試験依頼者がISIS 396443のリスクベネフィット評価に基づいて本試験のパート1を早期終了することを決定した結果、全ての対象に、パート1終了評価を早期に完了し本試験のパート2に参加することを依頼した。パート1に対象が参加した合計期間はおよそ15ヵ月となるように計画されていたが、本試験のパート1が早期終了したため、適格な対象には、パート1終了評価の直後に本試験のパート2に登録する機会を与えた。
【0146】
合計21例の対象を本試験に登録した。対象を、ISIS 396443または対照(シャム手順)に2:1の比でランダム化した。ランダム化は、SMAと一致する臨床徴候及び症状が発生した年齢に基づいて層別化した(≦6ヵ月[乳児発症型]vs>6ヵ月[遅発型])。本試験のパート1では対象14例にISIS 396443を投与し、対象7例にシャム手順を投与した。
【0147】
合計21例の対象をスクリーニングし、本試験のパート1に登録した。全ての対象を2:1の比でランダム化して、対象14例にISIS 396443を投与し、対象7例に対照治療(シャム手順)を投与した。加えて、ランダム化は、乳児型発症(≦6ヵ月)及び遅発型(>6ヵ月)SMAと一致する臨床徴候及び症状が発生した年齢に基づいて層別化した。最初の対象は2015年8月19日に治療し、試験終了(パート1)は2016年12月20日であった。ランダム化割付けに従って全ての対象に試験治療を投与した。
【0148】
ITTセットを構成したランダム化及び投薬を行う対象21例を2ヵ国の7試験施設で登録した。対象16例(76%)は米国の6施設で登録し、対象5例(24%)はドイツの1施設で登録した。施設を横断して対象をランダム化した。ランダム化した対象21例のうち、13例が≦6ヵ月でSMAを発症し、残りの8例が>6ヵ月でSMAを発症した。
【0149】
対象21例に治療を投与し、このうち対象14例は試験の早期終了により完了した(対照群の対象6例[86%]及びISIS 396443群の対象8例[57%])。対象9例(43%)が302日目までに治療を完了した(対照群の対象2例[29%]及びISIS 396443群の対象7例[50%])。対象6例(29%)(全てISIS 396443群)がパート1最終追跡調査評価(422日目)を完了した。対照群に割り付けた対象1例(5%)は、試験289日目に脳死により死亡した。
【0150】
人口統計学的特徴及びベースライン疾患特性:
試験における対象21例のうち、11例(52%)が男性、10例(48%)が女性であった。初回用量時の年齢は7ヵ月~53ヵ月の範囲であった(中央値:17ヵ月)。対象11例(52%)が生後7~18ヵ月であり、対象10例(48%)が生後18ヵ月超であった。対象9例(43%)が白人、対象5例(24%)がアジア人、対象2例(10%)がその他であった。
【0151】
有効性及び薬物動態
・ISIS 396443群の対象は、対照群の対象よりも人工呼吸器の使用が少なかった。
・HINE運動マイルストーンレスポンダーの割合は、ISIS 396443群の方が対照群よりも高く、各HINE運動マイルストーンカテゴリーにおいて少なくとも1例のISIS 396443群からのレスポンダーが認められ、最多数の対象が首の座り、寝返り、及び座位の改善を示した。
【0152】
安全性
本試験では、複数回のIT注入(負荷用量4回の後に4ヵ月ごとの維持用量)として投与した場合におけるISIS 396443の忍容性は良好であった。ISIS 396443の全体的な安全プロファイルにおいて、新たな安全性上の懸念は確認されなかった。
【0153】
このISIS 396443の第2相ランダム化シャム手順対照試験のパート1からの結果からは、ISIS 396443の髄腔内投与が乳児発症型または遅発型SMAを有する対象の集団に有効であるという明らかなエビデンスが示された。シャム投与のみを受けた試験対象の対照群と比較すると、ISIS 396443を用いて治療した対象は運動マイルストーンの増加を達成及び持続しており、また、治験責任医師及び介護者の評価に基づけば、概して成長及び成功しているように思われた。CSF ISIS 396443濃度とHINE運動マイルストーン合計スコアとの間には正の相関が観察され、これは経時的に増加した。新たな安全性上の懸念が確認されず、また安全性の結果がISIS 396443臨床開発プログラムの他の試験結果と一致していたことから、ISIS 396443の投薬レジメンは安全かつ忍容性良好であった。全ての主要な安全性及び探索的有効性のパラメーターにわたって観察された結果に基づけば、また未治療対照群で観察された結果とは対照的に、ISIS 396443は乳児発症型及び遅発型SMAを有する対象の運動機能を改善する。
【0154】
方法
選択した時点の血漿をアッセイして、pNF-H濃度を検出した。全ての血漿試料を、使用するまで-70℃で凍結した。選択したスケジュール時間時の血漿試料を、アッセイ希釈緩衝液を用いて最小希釈倍率(MRD)で希釈した。
【0155】
Encor Biotechnology(カタログ番号RPCA-NF-H及び/またはカタログ番号CPCA-NF-H)製のポリクローナル抗NF-H抗体を用いてNF-Hをアッセイした。このような抗体は、NF-Hの高リン酸化形態を特異的に検出する。
【0156】
任意の患者試料をアッセイする前に、適格性実験を行った。このような実験は、ProteinSimple(登録商標)によって開発されたElla技術プラットフォームによって生成されたpNF-H濃度の再現性及び変動性を評価することを目的とした。Ella技術は、予め装填された試薬を含むマイクロ流体カートリッジを利用して、試料及び洗浄緩衝液のみがカートリッジに装填されるようにしている。カートリッジが装填されると、当該プラットフォームは、その内蔵された工場較正標準曲線を用いて自動的にpNF-H濃度を計算する。
【0157】
各カートリッジの品質及びリアルタイムでの任意の予期しない潜在的交絡効果を評価するため、4つの品質管理(QC)試料を各カートリッジに含め、3つの緩衝液添加QC(高濃度、中濃度、及び低濃度)、ならびに市販されている多発性硬化症(MS)患者からの内因性品質管理(EQC)試料(Bioreclamation)を実行する。これら4つのQCを使用して、生体解析法の性能をモニターし、個別バッチで解析された未知の試料の結果の完全性及び妥当性を評価する。
【0158】
同じ対象からの試料を同じカートリッジで解析した。各試料の2つのアリコートをランダムな順序で同じカートリッジ上に配置して、可能性が考えられる配置効果が試料解析で確実に考慮されるようにした。
【0159】
実施例1:CSFと血漿とのpNF-Hレベルの相関
臨床試験NURTURE及びEMBRACEからの血漿及びCSF試料を、同じ時点及び同じ対象において解析して、pNF-Hレベルの相関を決定した。CSFと血漿との間でpNF-Hレベルの高い相関(R=0.88)が同定された(図1)。この結果は、pNF-H及び他のニューロフィラメントサブユニットの血漿中レベルが、これらの同じタンパク質のCSFレベルを十分に予測できることを示唆するものである。
【0160】
実施例2:疾患及び重症度の予測因子としてのpNF-Hの血漿中レベル
臨床試験NURTURE、ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISHからの血漿試料について、ベースライン時(ISIS 396443(NUTURE、ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISH)またはシャム手順(ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISH)を用いた治療の前)のpNF-Hレベルを解析した。健康なボランティア(4~18歳)からの血漿試料についてもpNF-Hレベルを解析した。
【0161】
健康なボランティアからの結果は、全年齢でpNF-H<300pg/mLを示した。NURTURE、ENDEAR、EMBRACE、CHERISHからの結果は、臨床試験のSMAを有する対象におけるpNF-Hの血漿中レベルがほぼ全て>300pg/mLであることを示している。一部の対象は最大でおよそ50,000pg/mLのレベルである。概して、2コピーのSMN2を有する対象は、3コピーのSMN2を有する対象よりも高いレベルを有する。さらに、症状発症が≦生後6ヵ月の対象(ENDEAR)は、症状発症が>生後6ヵ月の対象(CHERISH)よりも高いレベルを有する。図2を参照。
【0162】
ただし、重要な例外が観察されている。NURTURE内の対象1例は2コピーのSMN2を有し、3コピーのSMN2を有する対象との一致性がより高いpNF-Hレベルを有する。この対象には、同様に2コピーのSMN2を有するきょうだいが存在し、このきょうだいはII型SMAに罹患している。したがって、この対象は、I型SMAに罹患することが示唆されるSMN2コピー数を有するものの、II型SMAに罹患することを示唆する家族歴を有する。pNF-Hレベルは、SMN1欠失及びSMN2コピー数以外でのさらなる診断的洞察をもたらす可能性がある。ENDEAR内の対象1例は3コピーのSMN2を有し、2コピーのSMN2を有する対象との一致性がより高いpNF-Hレベルを有する。この対象は症状発症が≦生後6ヵ月であり、そのためII型SMA(多くの場合3コピーのSMN2)よりもI型SMA(多くの場合2コピーのSMN2)との一致性が高かった。
【0163】
全体的に見ると、結果からは、SMAを有する対象の中でpNF-Hの血漿中レベルが健康なボランティアに比べて著しく高いことが示されている。また、SMAを有する対象の中で、重症度がより高い表現型を有する対象は重症度がより低い表現型を有する対象よりも高い血漿中pNF-Hレベルを有する。
【0164】
実施例3:pNF-Hと年齢との相関(SMN2コピー数=2)
臨床試験NURTURE、ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISHからの血漿試料について、ベースライン時(ISIS 396443(NUTURE、ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISH)またはシャム手順(ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISH)を用いた治療の前)のpNF-Hレベルを解析した。この解析では、対象を2コピーのSMN2を有する者に限定した。ベースラインの対数変換したpNF-Hレベルを、初回用量(またはシャム手順)時の年齢に対しプロットした。概して、低年齢の対象は高年齢の対象よりも高いpNF-Hレベルを有した。図3を参照。
【0165】
この結果は、2コピーのSMN2を有する対象の中で、pNF-Hレベルが年齢の増加と共に低下することを示唆するものである。
【0166】
実施例4:pNF-Hと年齢との相関(SMN2コピー数=3)
臨床試験NURTURE、ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISHからの血漿試料について、ベースライン時(ISIS 396443(NUTURE、ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISH)またはシャム手順(ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISH)を用いた治療の前)のpNF-Hレベルを解析した。この解析では、対象を3コピーのSMN2を有する者に限定した。ベースラインの対数変換したpNF-Hレベルを、初回用量(またはシャム手順)時の年齢に対しプロットした。概して、低年齢の対象は高年齢の対象よりも高いpNF-Hレベルを有した。図4を参照。
【0167】
この結果は、3コピーのSMN2を有する対象の中で、pNF-Hレベルが年齢の増加と共に低下することを示唆するものである。
【0168】
実施例5:pNF-Hと年齢との相関
臨床試験NURTURE、ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISHからの血漿試料について、ベースライン時(ISIS 396443(NUTURE、ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISH)またはシャム手順(ENDEAR、EMBRACE、及びCHERISH)を用いた治療の前)のpNF-Hレベルを解析した。この解析では、対象を、症状発症年齢(症状発現前(NURTURE)、<6ヵ月、≧6ヵ月)及びSMN2コピー数(2、3、4、または該当なし)によって層別化した。概して、症状発症年齢及びSMN2コピー数の各層内において、低年齢の対象は高年齢の対象よりも高いpNF-Hレベルを有した。図5を参照。
【0169】
この結果は、症状発症年齢またはSMN2コピー数とは無関係に、pNF-Hレベルが年齢の増加と共に低下することを示唆するものである。
【0170】
実施例6:pNF-Hと年齢との相関
臨床試験ENDEARからの血漿試料について、ベースライン時(ISIS 396443またはシャム手順を用いた治療の前)のpNF-Hレベルを解析した。この解析では、全体の試験集団内におけるpNF-Hの四分位数が同定された。四分位数は、2390~10,900pg/mL、10,900~15,400pg/mL、15,400~21,600pg/mL、及び21,600~50,100pg/mLとして定義された。概して、ベースライン時のpNF-Hレベルがより高い対象は、初回用量時により低年齢であり、症状発症時により低年齢であり、SMA診断時により低年齢であるように思われた。さらに、ベースライン時のpNF-Hレベルがより高い対象は、ベースライン時の平均CHOP INTEND(フィラデルフィア小児病院乳児神経筋障害検査(Children’s Hospital of Philadelphia Infant Test of Neuromuscular Disorders))スコア及び腓骨CMAP振幅がより低いように思われた。図6~8を参照。
【0171】
これらの結果は、初回用量時にpNF-Hレベルがより高いことが、症状発症時により低年齢であること、運動機能がより低いこと(CHOP INTEND)、及び運動ニューロン健康状態がより不良であること(CMAP振幅)として示されているように、より重症度の高い表現型に関連することを示唆するものである。
【0172】
実施例7:pNF-Hレベル及び運動機能
臨床試験ENDEARからの血漿試料について、ベースライン時(ISIS 396443またはシャム手順を用いた治療の前)のpNF-Hレベルを解析した。この解析では、対数変換したpNF-Hレベルを、ベースラインCHOP INTENDに対しプロットした。概して、pNF-Hレベルがより高い対象はCHOP INTENDがより低く、pNF-Hレベルがより低い対象はCHOP INTENDがより高く、-0.3の相関が見られた。図9を参照。
【0173】
この結果は、pNF-Hレベルが運動機能と反比例的関係にあることを示唆するものである。この関係は線形であると思われる。
【0174】
実施例8:pNF-Hレベルに基づく運動機能の予測
臨床試験ENDEARからの血漿試料について、ベースライン時(ISIS 396443またはシャム手順を用いた治療の前)のpNF-Hレベルを解析した。この解析では、線形回帰モデルを構築して、ベースラインCHOP INTENDにおける様々な潜在的予測因子間の関係を調べた。統計的有意性を保った変数のみを含む最終モデルを同定した(ベースラインNF-H;治療群、疾患期間(週);性別;初回用量時の年齢(日);SMA症状発症時の年齢(週);SMA診断時の年齢(週);在胎期間(週);ベースライン体重(kg);(在胎期間+初回用量時の年齢)×(在胎期間+SMA症状発症時の年齢);(在胎期間+SMA診断時の年齢)。この最終モデルでは、ベースラインのログ変換したpNF-Hレベルは統計的に有意であった。図10を参照。
【0175】
この結果は、pNF-Hレベルがベースライン運動機能の重要な予測因子であることを示唆するものである。
【0176】
実施例9:ENDEARにおけるpNF-H(pg/mL)レベル
臨床試験ENDEARからの血漿試料について、試験の1、2、29、64、183、及び302日目のpNF-Hレベルを解析した(シャム手順)。この解析では、pNF-Hの絶対値を対数変換し、試験日別にプロットした。経時的に、平均pNF-Hレベルは、試験1日目のおよそ18,000pg/mLから試験302日目のおよそ5,000pg/mLへとほぼ線形的に低下している。図11を参照。
【0177】
実施例10:ENDEARにおけるpNF-H(pg/mL)レベルの変化パーセント
臨床試験ENDEARからの血漿試料について、試験の1、2、29、64、183、及び302日目のpNF-Hレベルを解析した(シャム手順)。この解析では、pNF-Hの絶対値に対するベースラインからの変化パーセントを試験日別にプロットした。経時的に、pNF-Hレベルの平均変化パーセントは、試験1日目のおよそ0%から試験302日目のおよそ-60%へとほぼ線形的に低下している。図12を参照。
【0178】
実施例11:ENDEARにおけるpNF-H(pg/mL)レベルに及ぼす薬物効果
臨床試験ENDEARからの血漿試料について、試験の1、2、29、64、183、及び302日目のpNF-Hレベルを解析した(ISIS 396443)。この解析では、pNF-Hの絶対値を対数変換し、試験日別にプロットした。経時的に、平均pNF-Hレベルは、試験1日目の18,000pg/mLから試験64日目のおよそ5,000pg/mL、そして試験302日目のおよそ1,000pg/mLへと低下している。図13を参照。
【0179】
この結果は、ISIS 396443を用いて治療した対象が、pNF-Hレベルの低下において、シャム対照を投与した対象に比べて異なるパターンを有することを示唆するものである。
【0180】
実施例12:ENDEARにおけるpNF-H(pg/mL)レベルの変化パーセントに及ぼす薬物効果
臨床試験ENDEARからの血漿試料について、試験の1、2、29、64、183、及び302日目のpNF-Hレベルを解析した(ISIS 396443)。この解析では、pNF-Hの絶対値に対するベースラインからの変化パーセントを試験日別にプロットした。経時的に、pNF-Hレベルの平均変化パーセントは、試験1日目のおよそ0%から試験64日目のおよそ-70%、及び試験302日目の-90%へとほぼ線形的に低下している。図14を参照。
【0181】
この結果は、ISIS 396443を用いて治療した対象が、pNF-Hレベルの低下において、シャム対照を投与した対象に比べて異なるパターンを有することを示唆するものである。
【0182】
実施例13:様々な時点におけるpNF-Hレベルの変化
臨床試験ENDEARからの血漿試料について、試験の1、2、29、64、183、及び302日目のpNF-Hレベルを解析した(ISIS 396443及びシャム対照)。この解析では、各試験日において、ISIS 396443を投与した対象の中でpNF-Hの絶対値に対しベースラインから特定のレベルの変化パーセントに達した対象のパーセントを、シャム対照を投与した対象と比較した。統計的有意性(p<0.05)は、まず64日目に2つの試験群間で同定された。pNF-Hの特定の変化を達成した各群のパーセンテージ間の最大の差は試験183日目に発生し、-80%の変化となった。図15を参照。
【0183】
この結果は、群の差は早くも試験64日目に同定することができ、変化の閾値として-80%を用いて群間の最も良好な分離が生じることを示唆するものである。
【0184】
実施例14:183日目のHINE-2スコアと64日目のpNF-Hレベルとの関連性
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験64日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目に合計運動マイルストーンスコア(HINE-2(Hammersmith Infant Neurological Examination Section 2))を評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。この解析では、線形回帰モデルを構築して、試験64日目のpNF-Hレベルが試験183日目の合計HINE-2スコアと関連するかどうかを判定した。試験64日目のpNF-Hレベルは、試験183日目の合計HINE-2スコアと有意に関連していた(p=0.0006)。図16を参照。
【0185】
この結果は、現在のpNF-Hレベルが、乳児発症型SMAを有する乳児における将来の運動マイルストーンを予測し得ることを示唆するものである。
【0186】
実施例15:183日目のHINE-2スコアと64日目のpNF-Hレベルとの関連性(共変数を伴う)
試験CS3B(ENDEAR)からの血漿試料について試験64日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目の合計運動マイルストーンスコア(HINE-2(Hammersmith Infant Neurological Examination Section 2))を評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。この解析では、線形回帰モデルを構築して、複数の潜在的交絡因子を考慮した後に、試験64日目のpNF-Hレベルが試験183日目の合計HINE-2スコアと関連するかどうかを判定した。複数の交絡因子を制御した後、最終モデルには64日目の対数変換したpNF-H(p<0.0001)及び疾患期間(p=0.0029)が含まれた。図17を参照。
【0187】
この結果は、現在のpNF-Hレベルが、治療及びその他の潜在的交絡因子を制御した後に、乳児発症型SMAを有する乳児における将来の運動マイルストーンを予測し得ることを示唆するものである。
【0188】
実施例16:183日目のCHOP INTENDと64日目のpNF-Hレベルとの関連性
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験64日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目のCHOP INTENDを評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。この解析では、線形回帰モデルを構築して、試験64日目のpNF-Hレベルが試験183日目のCHOP INTENDスコアと関連するかどうかを判定した。試験64日目のpNF-Hレベルは、試験183日目のCHOP INTENDスコアと有意に関連していた(p<0.0001)。図18を参照。
【0189】
この結果は、現在のpNF-Hレベルが、乳児発症型SMAを有する乳児における将来の全般的運動機能を予測し得ることを示唆するものである。
【0190】
実施例17:183日目のCHOP INTENDスコアと64日目のpNF-Hレベルとの関連性(共変数を伴う)
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験64日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目のCHOP INTENDスコアを評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。この解析では、線形回帰モデルを構築して、複数の潜在的交絡因子を考慮した後に、試験64日目のpNF-Hレベルが試験183日目のCHOP INTENDスコアと関連するかどうかを判定した。複数の交絡因子を制御した後、最終モデルには64日目の対数変換したpNF-H(p=0.0001)、治療群(p=0.005)、及び疾患期間(p=0.0003)が含まれた。図19を参照。
【0191】
この結果は、現在のpNF-Hレベルが、治療及びその他の潜在的交絡因子を制御した後に、乳児発症型SMAを有する乳児における将来の全般的運動機能を予測し得ることを示唆するものである。
【0192】
実施例18:HINE-2(レスポンダー/ノンレスポンダー)カテゴリー及び183日目のpNF-Hレベル
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験183日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目、試験183日目から試験302日目の間、試験302日目以降のHINE-2(Hammersmith Infant Neurological Examination Section 2)レスポンダー状態を評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。対象がHINE-2レスポンダーのプロトコル定義に基づくレスポンダーとなった場合、これが達成された時期を記録した。対象が試験CS3B内でレスポンダーにならなかった場合、そのことを記録した。シャム対照群の対象で試験CS3Bの間にHINE-2レスポンダーになった者はいなかった。ISIS 396443の投与を受けレスポンダーとなった対象は、ほとんどが試験183日目までにレスポンダーとなった。シャム対照対象の中では、ほとんど全ての対象のpNF-Hレベルが全体の中央値(2130pg/mL)を上回った。ISIS 396443の投与を受け試験183日目までにレスポンダーとなった対象の中では、ほとんどの対象のpNF-Hレベルが試験183日目の試験中央値を下回った。ISIS 396443の投与を受け試験183日目から302日目の間にレスポンダーとなった対象の中では、ほとんどの対象のpNF-Hレベルが試験183日目の試験中央値を下回った。ISIS 396443の投与を受け試験302日目から試験終了の間にレスポンダーとなった対象の中では、ほとんどの対象のpNF-Hレベルが試験183日目の試験中央値を下回った。ENDEAR内でISIS 396443の投与を受けレスポンダーとならなかった対象の中では、およそ半数の対象のpNF-Hレベルが試験183日目の試験中央値(2130pg/mL)を下回った。図20を参照。
【0193】
これらの結果は、治療開始から183日後までにpNF-Hのある特定の閾値に達することが、治療をシャム対照から区別し、治療における最終的なレスポンダーを予測し得ることを示唆するものである。
【0194】
実施例19:HINE-2(レスポンダー/ノンレスポンダー)カテゴリー及び183日目のpNF-Hレベルの変化パーセントにおけるpNF-Hレベル
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験183日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目、試験183日目から試験302日目の間、試験302日目以降のHINE-2レスポンダー状態を評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。pNF-Hの変化パーセントは、ベースラインと試験183日目との間で計算した。対象がHINE-2レスポンダーのプロトコル定義に基づくレスポンダーとなった場合、これが達成された時期を記録した。対象が試験CS3B内でレスポンダーにならなかった場合、そのことを記録した。シャム対照群の対象で試験CS3Bの間にHINE-2レスポンダーになった者はいなかった。ISIS 396443の投与を受けレスポンダーとなった対象は、ほとんどが試験183日目までにレスポンダーとなった。シャム対照対象の中では、全ての対象でpNF-Hレベルの低下が<80%であった。ISIS 396443の投与を受け試験183日目までにレスポンダーとなった対象の中では、ほぼ半数の対象で試験183日目のpNF-Hレベルの低下が>80%であった。ISIS 396443の投与を受け試験183日目から302日目の間にレスポンダーとなった対象の中では、ほとんどの対象で試験183日目のpNF-Hレベルの変化が>80%であった。ISIS 396443の投与を受け試験302日目から試験終了の間にレスポンダーとなった対象の中では、ほとんどの対象で試験183日目のpNF-Hレベルの変化が>80%であった。ENDEAR内でISIS 396443の投与を受けレスポンダーとならなかった対象の中では、およそ半数の対象で試験183日目のpNF-Hレベルの変化が>80%であった。図21を参照。
【0195】
これらの結果は、治療開始から183日後までにpNF-Hのある特定の低下の閾値に達することが、治療をシャム対照から区別し、治療における最終的なレスポンダーを予測し得ることを示唆するものである。
【0196】
実施例20:CHOP INTEND(レスポンダー/ノンレスポンダー)カテゴリー及び183日目のpNF-Hレベル
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験183日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目、試験183日目から試験302日目の間、試験302日目以降のCHOP INTENDレスポンダー状態を評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。対象がCHOP INTENDレスポンダーのプロトコル定義に基づくレスポンダーとなった場合、これが達成された時期を記録した。対象が試験CS3B内でレスポンダーにならなかった場合、そのことを記録した。シャム対照群の対象1例が、試験CS3Bの間にCHOP INTENDレスポンダーとなった。ISIS 396443の投与を受けレスポンダーとなった対象は、ほとんどが試験183日目までにレスポンダーとなった。シャム対照対象の中では、ほとんど全ての対象のpNF-Hレベルが全体の中央値を上回った。ISIS 396443の投与を受け試験183日目までにレスポンダーとなった対象の中では、ほとんどの対象のpNF-Hレベルが試験183日目の試験中央値を下回った。ISIS 396443の投与を受け試験183日目から302日目の間にレスポンダーとなった対象の中では、ほとんどの対象のpNF-Hレベルが試験183日目の試験中央値を下回った。ISIS 396443の投与を受け試験302日目から試験終了の間にレスポンダーとなった対象の中では、ほとんどの対象のpNF-Hレベルが試験183日目の試験中央値を下回った。ENDEAR内でISIS 396443の投与を受けレスポンダーとならなかった対象の中では、およそ半数の対象のpNF-Hレベルが試験183日目の試験中央値を下回った。図22を参照。
【0197】
これらの結果は、治療開始から183日後pNF-Hのある特定の閾値に達することが、治療をシャム対照から区別し、治療における最終的なレスポンダーを予測し得ることを示唆するものである。
【0198】
実施例21:CHOP INTEND(レスポンダー/ノンレスポンダー)カテゴリー及び183日目のpNF-Hレベルの変化パーセントにおけるpNF-Hレベル
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験183日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目、試験183日目から試験302日目の間、試験302日目以降のCHOP INTENDレスポンダー状態を評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。pNF-Hの変化パーセントは、ベースラインと試験183日目との間で計算した。対象がHINE-2レスポンダーのプロトコル定義に基づくレスポンダーとなった場合、これが達成された時期を記録した。対象が試験CS3B内でレスポンダーにならなかった場合、そのことを記録した。シャム対照群の対象1例が、試験CS3Bの間にCHOP INTENDレスポンダーとなった。ISIS 396443の投与を受けレスポンダーとなった対象は、ほとんどが試験183日目までにレスポンダーとなった。シャム対照対象の中では、1例を除く全ての対象でpNF-Hレベルの低下が<80%であった。ISIS 396443の投与を受け試験183日目までにレスポンダーとなった対象の中では、ほぼ半数の対象で試験183日目のpNF-Hレベルの低下が>80%であった。ISIS 396443の投与を受け試験183日目から302日目の間にレスポンダーとなった対象の中では、ほとんどの対象で試験183日目のpNF-Hレベルの変化が>80%であった。ISIS 396443の投与を受け試験302日目から試験終了の間にレスポンダーとなった対象の中では、ほとんどの対象で試験183日目のpNF-Hレベルの変化が>80%であった。ENDEAR内でISIS 396443の投与を受けレスポンダーとならなかった対象の中では、およそ半数の対象で試験183日目のpNF-Hレベルの変化が>80%であった。図23を参照。
【0199】
これらの結果は、治療開始から183日後までにpNF-Hのある特定の低下の閾値に達することが、治療をシャム対照から区別し、治療における最終的なレスポンダーを予測し得ることを示唆するものである。
【0200】
実施例22:薬物効果の維持:NURTUREにおけるpNF-H(pg/mL)レベル
臨床試験NURTUREからの血漿試料について、試験の1、64、183、302、及び421日目のpNF-Hレベルを解析した(ISIS 396443)。この解析では、pNF-Hの絶対レベルを試験日別にプロットした。図24を参照。
【0201】
この解析の結果は、顕著な低下が試験64日目までに発生し、この新たなレベルが試験421日目まで安定していると思われることを示唆するものである。
【0202】
実施例23:薬物効果の維持:EMBRACEにおけるpNF-H(pg/mL)レベル
臨床試験EMBRACEからの血漿試料について、試験の1、64、及び183日目のpNF-Hレベルを解析した(ISIS 396443)。この解析では、pNF-Hの絶対レベルを試験日別にプロットした。図25を参照。
【0203】
この解析の結果は、顕著な低下が試験64日目までに発生し、この新たなレベルが試験183日目まで安定していると思われることを示唆するものである。
【0204】
実施例24:薬物効果の維持:NURTUREにおけるpNF-H(pg/mL)レベルの変化パーセント
試験232SM201(NURTURE)からの血漿試料について、試験の1、64、183、302、及び421日目のpNF-Hレベルを解析した(ISIS 396443)。この解析では、pNF-Hのベースラインからの変化パーセントレベルを試験日別にプロットした。図26を参照。
【0205】
この解析の結果は、顕著な低下(-80%)が試験64日目までに発生し、この新たなレベルが試験421日目まで安定しているようであることを示唆するものである。
【0206】
実施例25:薬物効果の維持:EMBRACEにおけるpNF-H(pg/mL)レベル
臨床試験EMBRACEからの血漿試料について、試験の1、64、及び183日目のpNF-Hレベルを解析した(ISIS 396443)。この解析では、pNF-Hの絶対レベルを試験日別にプロットした。図27を参照。
【0207】
この解析の結果は、顕著な低下(-50%)が試験64日目までに発生し、この新たなレベルが試験183日目まで安定しているようであることを示唆するものである。
【0208】
実施例26:183日目のHINE-2スコアと64日目のpNF-Hレベルとの関連性
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験64日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目の合計運動マイルストーンスコア(HINE-2)を評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。この解析では、線形回帰モデルを構築して、試験64日目のpNF-Hレベルが試験183日目の合計HINE-2スコアと関連するかどうかを判定した。ISIS 396443及びシャム対照の投与を受けた対象の間で別々の解析を行った。ISIS 396443の投与を受けた対象の中で、試験64日目の対数変換したpNF-Hレベルは、試験183日目の合計HINE-2スコアと統計的に有意に関連していなかった(p=0.3186)が、より高いpNF-Hレベルがより低い合計HINE-2スコアと関連する傾向は見られた。シャム対照の投与を受けた対象の中で、試験64日目の対数変換したpNF-Hレベルは、試験183日目の合計HINE-2スコアと統計的に有意に関連しており(p=0.0302)、より高いpNF-Hレベルがより低い合計HINE-2スコアと関連していた。図28を参照。
【0209】
この結果は、現在のpNF-Hレベルが、乳児発症型SMAを有する乳児における将来の運動マイルストーンを予測し得ることを示唆するものである。
【0210】
実施例27:183日目のCHOP INTENDスコアと64日目のpNF-Hレベルとの関連性
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験64日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目のCHOP INTENDスコアを評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。この解析では、線形回帰モデルを構築して、試験64日目のpNF-Hレベルが試験183日目のCHOP INTENDスコアと関連するかどうかを判定した。ISIS 396443及びシャム対照の投与を受けた対象の間で別々の解析を行った。ISIS 396443の投与を受けた対象の中で、試験64日目の対数変換したpNF-Hレベルは、試験183日目のCHOP INTENDスコアと統計的に有意に関連しており(p=0.0406)、より高いpNF-Hレベルがより低い合計CHOP INTENDスコアと関連していた。シャム対照の投与を受けた対象の中で、試験64日目の対数変換したpNF-Hレベルは、試験183日目のCHOP INTENDスコアと統計的に有意に関連しており(p=0.0330)、より高いpNF-Hレベルがより低いCHOP INTENDスコアと関連していた。図29を参照。
【0211】
この結果は、現在のpNF-Hレベルが、乳児発症型SMAを有する乳児における将来の運動機能を予測し得ることを示唆するものである。
【0212】
実施例28:302日目に欠損値を伴わない生存乳児における経時的なpNF-Hレベル
臨床試験ENDEARからの血漿試料について、試験の1、2、29、64、183、及び302日目のpNF-Hレベルを解析した(ISIS 396443及びシャム手順)。この解析では、集団を、試験302日目まで生存し、かつ試験302日目にpNF-Hレベルを測定した対象に限定した。pNF-Hの絶対値を試験日別にプロットした。経時的に、シャム手順の投与を受けた対象の中で、平均pNF-Hレベルは、試験1日目のおよそ16,000pg/mLから試験302日目のおよそ7,000pg/mLへとほぼ線形的に低下している。経時的に、ISIS 396443の投与を受けた対象の中で、平均pNF-Hは、試験1日目の18,000pg/mLから試験64日目のおよそ4,000に低下し、その後試験302日目ではおよそ1,000pg/MLで安定性を保っている。図30を参照。
【0213】
この解析結果は、両方のコホートの低下が真であり生存バイアスではないことを示唆するものである。
【0214】
実施例29:302日目に欠損値を伴わない生存乳児における経時的なpNF-Hレベルの変化パーセント
臨床試験ENDEARからの血漿試料について、試験の1、2、29、64、183、及び302日目のpNF-Hレベルを解析した(ISIS 396443及びシャム手順)。この解析では、集団を、試験302日目まで生存し、かつ試験302日目にpNF-Hレベルを測定した対象に限定した。ベースラインからの変化を試験日別にプロットした。経時的に、シャム手順の投与を受けた対象の中で、pNF-Hレベルの変化は、試験302日のおよそ-50%へとほぼ線形的に低下している。経時的に、ISIS 396443の投与を受けた対象の中で、pNF-Hの変化は、試験64日目におよそ-70%に低下し、その後試験302日目ではおよそ-90%で安定性を保っている。図31を参照。
【0215】
この解析結果は、両方のコホートの低下が真であり生存バイアスではないことを示唆するものである。
【0216】
実施例30:183日目の腓骨CMAP振幅と64日目のpNF-Hレベルとの関連性
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験64日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目の腓骨CMAP振幅を評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。この解析では、線形回帰モデルを構築して、試験64日目のpNF-Hレベルが試験183日目の腓骨CMAP振幅と関連するかどうかを判定した。試験64日目のpNF-Hレベルは、試験183日目の腓骨CMAP振幅と有意に関連していた(p=0.0021)。図32を参照。
【0217】
この結果は、現在のpNF-Hレベルが、乳児発症型SMAを有する乳児における将来の全般的な運動神経健康状態を予測し得ることを示唆するものである。
【0218】
実施例31:183日目の腓骨CMAP振幅と64日目のpNF-Hレベルとの関連性
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験64日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目の腓骨CMAP振幅を評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。この解析では、線形回帰モデルを構築して、試験64日目のpNF-Hレベルが試験183日目の腓骨CMAP振幅と関連するかどうかを判定した。ISIS 396443及びシャム対照の投与を受けた対象の間で別々の解析を行った。ISIS 396443の投与を受けた対象の中で、試験64日目の対数変換したpNF-Hレベルは、試験183日目の腓骨CMAP振幅と統計的に有意に関連しておらず(p=0.3612)、より高いpNF-Hレベルがより低い腓骨CMAP振幅に対するある傾向を伴って関連していた。シャム対照の投与を受けた対象の中で、試験64日目の対数変換したpNF-Hレベルは、試験183日目の腓骨CMAP振幅と統計的に有意に関連しており(p=0.0142)、より高いpNF-Hレベルがより低い腓骨CMAP振幅と関連していた。図33を参照。
【0219】
この結果は、現在のpNF-Hレベルが、乳児発症型SMAを有する乳児における将来の全般的な運動ニューロン健康状態を予測し得ることを示唆するものである。
【0220】
実施例32:183日目の尺骨CMAP振幅と64日目のpNF-Hレベルとの関連性
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験64日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目の腓骨CMAP振幅を評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。この解析では、線形回帰モデルを構築して、試験64日目のpNF-Hレベルが試験183日目の尺骨CMAP振幅と関連するかどうかを判定した。試験64日目のpNF-Hレベルは、試験183日目の尺骨CMAP振幅と有意に関連していた(p=0.0002)。図34を参照。
【0221】
この結果は、現在のpNF-Hレベルが、乳児発症型SMAを有する乳児における将来の全般的な運動神経健康状態を予測し得ることを示唆するものである。
【0222】
実施例33:183日目の尺骨CMAP振幅と64日目のpNF-Hレベルとの関連性
臨床試験ENDEARからの血漿試料について試験64日目のpNF-Hレベルを解析し、試験183日目の尺骨CMAP振幅を評価した(ISIS 396443及びシャム対照)。この解析では、線形回帰モデルを構築して、試験64日目のpNF-Hレベルが試験183日目の尺骨CMAP振幅と関連するかどうかを判定した。ISIS 396443及びシャム対照の投与を受けた対象の間で別々の解析を行った。ISIS 396443の投与を受けた対象の中で、試験64日目の対数変換したpNF-Hレベルは、試験183日目の腓骨CMAP振幅と統計的に有意に関連しておらず(p=0.0952)、より高いpNF-Hレベルがより低い尺骨CMAP振幅に対するある傾向を伴って関連していた。シャム対照の投与を受けた対象の中で、試験64日目の対数変換したpNF-Hレベルと試験183日目の尺骨CMAP振幅との関連は統計的に有意であり(p=0.0281)、より高いpNF-Hレベルがより低い尺骨CMAP振幅と関連していた。図35を参照。
【0223】
この結果は、現在のpNF-Hレベルが、乳児発症型SMAを有する乳児における将来の全般的な運動ニューロン健康状態を予測し得ることを示唆するものである。
【0224】
実施例34:pNF-Hレベル中央値によって二分したENDEARベースライン特性
以下は、ENDEAR試験からのpNF-Hレベル中央値によって二分した(<15,400及び≧15,400pg/mL)ベースライン特性を示す表である。
【表2-1】
【表2-2】
CHOP INTEND=フィラデルフィア小児病院乳児神経筋障害検査(Children’s Hospital of Philadelphia Infant Test of Neuromuscular Disorders);
CMAP=複合筋活動電位;
HINE-2=ハマースミス乳児神経学的検査セクション2(Hammersmith Infant Neurological Examination Section 2)。
ベースラインpNF-Hの中央値。
連続変数の結果はスチューデントの2標本t検定からのものであり、割合の結果はフィッシャーの正確確率検定からのものである。
表の参加者数は、いずれかのカテゴリーでもベースラインpNF-Hが欠損していない参加者を示す。
【0225】
実施例35:ENDEARにおけるベースライン特性とlog(pNF-H)レベルとの相関
以下の表は、ENDEAR試験におけるベースライン特性とlog(pNF-H)レベルとの相関を示している。
【表3】
【0226】
実施例36:pNF-Hレベル中央値によって二分したCHERISHベースライン特性
以下は、CHERISH試験からのpNF-Hレベル中央値によって二分した(<1,200及び≧1,200pg/mL)ベースライン特性を示す表である。
【表4】
HFMSE=拡大ハマースミス運動機能評価スケール(Hammersmith Functional Motor Scale - Expanded)。
ベースラインpNF-Hの中央値。
連続変数の結果はスチューデントの2標本t検定からのものであり、割合の結果はフィッシャーの正確確率検定からのものである。
表の参加者数は、いずれかのカテゴリーでもベースラインpNF-Hが欠損していない参加者を示す。
【0227】
実施例37:CHERISHにおけるベースライン特性とlog(pNF-H)レベルとの相関
以下の表は、CHERISH試験におけるベースライン特性とlog(pNF-H)レベルとの相関を示している。
【表5-1】
【表5-2】
HFMSE=拡大ハマースミス運動機能評価スケール(Hammersmith Functional Motor Scale - Expanded)。
WHO=世界保健機関
【0228】
実施例38:治療後のpNF-Hレベルの変化パーセントを測定することによる将来の運動機能の予測
受診者動作特性(ROC)曲線を使用して、治療した個体における将来の運動機能を最も良好に予測するニューロフィラメントレベルの変化パーセントを測定するための期間の選択を試みた。ENDEARでは、29日目、64日目、及び183日目の各々でpNF-Hレベルの変化パーセントを測定し、治療した対象の302日目の運動機能と比較した。ROC曲線により、64日目のpNF-Hレベルの変化パーセントが29日目または183日目のpNF-Hレベルの変化パーセントよりも良好に302日目の運動機能を予測することが明らかになった。図36A~36Cを参照。ENDEARでは、初回用量時の年齢を制御した後であっても、64日目のpNF-Hレベルの変化パーセントは、302日目のCHOP INTEND(≧4ポイントの改善)及び運動マイルストーン(改善を伴うHINE-2運動マイルストーンの方が悪化よりも多い)のレスポンダーを予測した。図37A~Bを参照。CHERISHでは、疾患期間を制御した後であっても、85日目のpNF-Hレベルの変化パーセントは、456日目のHFMSE(拡大ハマースミス運動機能評価スケール;≧3ポイントの改善)、RULM(上肢モジュール改訂版;≧2ポイントの改善)、及びWHO(世界保健機関;≧1つの運動マイルストーンの達成)のレスポンダーを予測した。図38A~38Cを参照。
【0229】
実施例39:ベースライン時及びヌシネルセンを用いた治療後の脳脊髄液pNF-Hレベル
症状発現前、乳児発症型、及び遅発型の患者、ならびに2または3コピーのSMN2を有する患者において、ベースライン脳脊髄液(CSF)pNF-Hレベルを測定した。CSF中のベースラインpNF-Hレベルは、症状発現前の乳児と、2コピーのSMN2を有する最も低年齢の乳児とにおいて最も高かった。図39A~39Bを参照。NURTURE試験では、ヌシネルセンを用いた治療は、CSF中のpNF-Hレベルの迅速な低下及びその後の安定化と関連していた。図40を参照。
【0230】
実施例40:複数の脊髄性筋萎縮症集団間での異なるマトリックスにおけるリン酸化ニューロフィラメント重鎖(pNF-H)及びニューロフィラメント軽鎖(NF-L)の比較
症状発現前SMA(I/II型に罹患する可能性が最も高い)、乳児発症型SMA(I/II型を有する、もしくはそれに罹患する可能性が最も高い)、または遅発型SMA(II/III型を有する、もしくはそれに罹患する可能性が最も高い)を有するヌシネルセン臨床試験からの個体において、血漿及び脳脊髄液(CSF)中のpNF-H及びNF-Lの濃度を比較した。ProteinSimple(商標)SimplePlex ELLA免疫測定法を用いて血漿及びCSF中のpNF-H濃度を評価した。NF-L濃度は、SIMOAアッセイ(Quanterix(商標))を用いて評価した。以下に報告する結果は、pg/mLの単位である。
【0231】
各SMA集団について、CSF中のpNF-H及びNF-Lの濃度は同様であったが、血漿中のNF-L濃度はpNF-Hの濃度よりも低かった。血漿中のNF-L濃度とpNF-H濃度との間の差は、乳児発症型SMAを有する乳児よりも症状発現前の乳児の方が著明であった。CSF中のpNF-H及びNF-Lの濃度は、ヌシネルセン治療により、症状発現前SMAコホート(183日目の減少パーセンテージ:図41A)及び乳児発症型SMAコホート(302日目の減少パーセンテージ:図41B)において、同様の速度で経時的に低下した。同等の結果は、乳児発症型SMAコホート(64日目の減少パーセンテージ:図41C)及び遅発型SMAコホート(169日目における減少パーセンテージ:図41D)における血漿中のpNF-H及びNF-Lの濃度でも示された。図41Cに示されているデータの絶対値は図41Eに提示されており、図41Dに示されているデータの絶対値は図41Fに提示されている。加えて、血漿及びCSF中のpNF-H濃度の変化速度は、症状発現前及び乳児発症型の両方のSMAコホートで類似していた。NF-Lの場合、血漿及びCSF中の濃度は、乳児発症型コホートでは同様の軌跡をたどって低下した。
【0232】
全体的には、ベースラインのpNF-H及びNF-Lの幾何平均(95% CI)濃度は、2コピーのSMN2を有する症状発現前乳児の中ではそれぞれ20139(10075~40257)及び7272(3287~16090)pg/mLであり、3コピーのSMN2を有する者の中ではそれぞれ952(367~2470)及び519(231~1164)pg/mLであった。乳児発症型SMAの参加者においては、ベースラインのpNF-H及びNF-Lの幾何平均(95% CI)濃度は、それぞれ3791(2980~4823)及び3718(2832~4882)pg/mLであった。遅発型SMAの参加者においては、ベースラインのpNF-H及びNF-Lの幾何平均(95% CI)濃度は、それぞれ381(331~438)及び185(154~222)pg/mLであった。
【0233】
したがって、血漿中pNF-Hレベルと同様に、CSF中のpNF-H及びNF-Lのレベルは、2コピーのSMN2を有する症状発現前のSMA参加者で最も高く、遅発型SMAを有する参加者で最も低いように思われる。
【0234】
その他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、以上の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示することを意図しており、限定することは意図していない。その他の態様、利点、及び変更は以下の特許請求の範囲内にある。
図1
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図38A
図38B
図38C
図39A
図39B
図40
図41A
図41B
図41C
図41D
図41E
図41F
【配列表】
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