IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローレンス・リバモア・ナショナル・セキュリティー・エルエルシーの特許一覧

特許7506609光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法
<>
  • 特許-光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法 図1
  • 特許-光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法 図2
  • 特許-光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法 図3
  • 特許-光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法 図4
  • 特許-光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法 図4A
  • 特許-光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法 図5
  • 特許-光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法 図6A
  • 特許-光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法 図6B
  • 特許-光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法 図7
  • 特許-光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法 図8
  • 特許-光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】光学系のグレーデッドインデックス表面のアブレーションにより支援されるナノ構造形成のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20240619BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240619BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
B23K26/00 N
G02B3/00 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020571475
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019034328
(87)【国際公開番号】W WO2019245715
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】16/016,105
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520222092
【氏名又は名称】ローレンス・リバモア・ナショナル・セキュリティー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジェ,ヒュック
(72)【発明者】
【氏名】ファイゲンバウム,エヤル
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0202712(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0093490(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0072720(US,A1)
【文献】特表2020-514075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0363148(US,A1)
【文献】N. Haustrup, et al.,"Impact of wavelength dependent thermo-elastic laser ablation mechanism on the generation of nanoparticles from thin gold films",Applied Physics Letters,2012年12月28日,Vol.101, No.26,p.263107-1 ~ 263107-5,https://doi.org/10.1063/1.4773301
【文献】Myungjoon Kim, et al.,"Synthesis of Nanoparticles by Laser Ablation: A Review",KONA Powder and Particle Journal,2017年02月28日,Vol.34,p. 80-90,https://www.jstage.jst.go.jp/article/kona/34/0/34_2017009/_html/-char/en/,https://doi.org/10.14356/kona.2017009
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10
G02B 3/00
G02B 5/00
G02B 6/028
B23K26/00
B23K26/352
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にグレーデッドインデックス(GRIN)を形成するための方法であって、
基板に金属層を適用することと、
金属層をアブレーションして、気化した金属層を作成するように、金属層に適用される光エネルギーのフルエンスプロファイルを制御することとを備え、
光エネルギーのフルエンスプロファイルを制御することが、気化した金属層が凝縮して金属ナノ粒子の雲を形成する際に気化した金属層から作成される金属ナノ粒子のサイズおよび分布を制御するように、光エネルギーのフルエンスプロファイルを制御することであって、金属ナノ粒子の雲は基板上に戻って堆積されて基板上にGRIN表面を形成することを含み、形成されたGRIN表面は、基板上に、金属ナノ粒子の空間的に変わる制御されたパターンを含む、方法。
【請求項2】
光エネルギーのフルエンスプロファイルを制御することは、レーザーのレーザービームによって適用される光エネルギーのフルエンスプロファイルを制御することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属ナノ粒子は、自由形状光学系上にGRIN表面を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
レーザーは、所定の持続時間を有するパルスを適用するように制御される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
パルスの所定の持続時間はナノ秒の範囲内である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
パルスの所定の持続時間はピコ秒の範囲内である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
パルスの所定の持続時間はフェムト秒の範囲内である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
フルエンスプロファイルは、0.2J/cmから0.4J/cmの範囲内で制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
金属層を適用することは、20nmの厚さを有する金属層を適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
金属層を有する基板上にグレーデッドインデックス(GRIN)を形成するための方法であって、
金属層をアブレーションして、気化した金属層を作成するように、レーザーによって生成されるレーザービームのフルエンスプロファイルを制御することを備え、
レーザービームのフルエンスプロファイルを制御することが、気化した金属層が凝縮して金属ナノ粒子の雲を形成する際に気化した金属層から作成される金属ナノ粒子のサイズおよび分布を制御することを含み、
レーザービームのフルエンスプロファイルを制御することが、金属ナノ粒子が異なるサイズで作成されるようにフルエンスプロファイルを制御することを含み、
レーザービームのフルエンスプロファイルを制御することが、金属ナノ粒子が基板上に戻って堆積されて基板上にGRIN表面を形成する際に基板上に所定の分布で金属ナノ粒子が空間的にパターニングされるようにフルエンスプロファイルを制御することを含む、方法。
【請求項11】
レーザービームのフルエンスプロファイルを制御することは、ナノ秒の範囲内のパルスを有するパルスレーザービームのフルエンスプロファイルを制御することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
レーザービームのフルエンスプロファイルを制御することは、ピコ秒の範囲内のパルスを有するパルスレーザービームのフルエンスプロファイルを制御することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
レーザービームのフルエンスプロファイルを制御することは、フェムト秒の範囲内のパルスを有するパルスレーザービームのフルエンスプロファイルを制御することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
レーザービームのフルエンスプロファイルを制御することは、0.20J/cmから0.40J/cmの間でフルエンスプロファイルを制御することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
レーザーフルエンスプロファイルを制御することは、20nm厚の金属層をアブレーションするのに十分なエネルギーを適用するようにレーザーフルエンスプロファイルを制御することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
基板上にグレーデッドインデックス(GRIN)を形成するためのシステムであって、
制御されたフルエンスプロファイルを有するビームの形状の光エネルギーを生成する、光エネルギー生成システムを備え、
光エネルギー生成システムは、
金属層をアブレーションし、気化した金属層を作成するために、金属層の融解を開始し、
気化した金属層が凝縮して金属ナノ粒子を形成する際に気化した金属層から作成される金属ナノ粒子のサイズおよび分布を制御するように、
ビームのフルエンスプロファイルを制御し、金属ナノ粒子は、空間的に制御されたパターンにおいて基板上に戻って堆積されて基板上にGRIN表面を形成する、
ように制御されるように構成されている、システム。
【請求項17】
光エネルギー生成システムはレーザーを含み、ビームはレーザービームを含む、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月22日に出願された米国特許出願第16/016,105号明細書のPCT国際出願である。上記出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の権利に関する声明
米国政府は、米国エネルギー省と、ローレンスリバモア国立研究所の運営のためのローレンスリバモアナショナルセキュリティLLCとの間の契約番号DE-AC52-07NA27344にしたがって、本発明の権利を有する。
【0003】
本開示は、基板上に空間的に変わる屈折率を形成するためのシステムおよび方法に関し、より具体的には、金属層をアブレーションするように、および制御されたパターンの金属層からナノ粒子を再堆積してグレーデッドインデックス(graded index)(GRIN)表面を形成するように、光エネルギーのフルエンスプロファイルを空間的に制御することによって、基板上にGRIN屈折面を形成するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
このセクションは、必ずしも従来技術ではない、本開示に関する背景情報を提供する。
【0005】
大型光学系製造技法は、軽量宇宙用途および高パワーレーザーシステム用途の鍵となる実現要因である。これらの用途の両方で、パワーは通常、強度を低下させるために、大口径ビームによって搬送される。どちらの分野でも、自由形状光学系および格子などの複雑な交互の光学系を可能にする柔軟性を有する技術が望ましい。有用な自由形状動作のいくつかの例は、一般的な収差補正(たとえば、伝統的に作り上げられたレンズの高次収差を補正するための光学系)のための光学系、慣性核融合(ICF)レーザーシステムのための輪郭位相板(contour phase plate)(CPP)、および光波システムのための光学機能の組み合わせである。
【0006】
自由形状の柔軟性を有する大規模光学系の既存の技術は、ダイヤモンド回転研磨および磁気レオロジー仕上げ(MRF)である。ダイヤモンド回転研磨技法は、光学グレードに関して限られた表面品質を提供する。加えて、そのレーザー損傷のレジリエンスは比較的低い。したがって、さらなる表面処理を伴わずに、この技法は表面の表面形態を変更することができる。
【0007】
MRFは、高品質表面を作り出せるが、実行するのに時間がかかる。さらに、光学機能の結果的な最大変調は、その小さな除去機能のために限られている。
【0008】
ダイヤモンド回転研磨法およびMRF法は両方とも、表面の形へアクセスできるが、表面層の屈折率を修正するためではない。屈折率の修正が、より一層の光学機能性を可能にする。たとえば、高パワーレーザーシステムの従来の反射防止(AR)コーティング層を実績のある高レーザー誘起損傷閾値で置き換えるために、均一なランダムナノ構造基板が使用され得る。このナノ構造AR層は、メタ表面として機能する、実質的に同じ屈折率を導入することによって、従来のARコーティングに取って代わる。光波は、それらのサブ波長の横方向スケールのため、特定の特徴に対して鈍感であるが、代わりに正味の平均屈折率に反応する。これらのナノ構造AR層は、ランダムな粗さを有する表面をもたらす反応性イオンエッチング(RIE)を使用して、ならびにマサチューセッツ州バーリントンのTelAztec LLCが実証したようなサブ波長の特徴を用いて、製造され得る。しかしながら、マスクレスアプローチは空間的成形へアクセスできず、これは真の自由形状の柔軟性を有するために重要である。しかし、ナノサイズの特徴を有するマスクを大規模に生産することは、困難だがやりがいがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
このセクションは、本開示の一般的な概要を提供するものであり、その全ての範囲またはその特徴の全ての包括的な開示ではない。
【0010】
一態様では、本開示は、基板上にグレーデッドインデックス(GRIN)を形成するための方法に関する。方法は、金属層を基板に適用することと、金属層を実質的にアブレーションして、気化した金属層を作成するように、金属層に適用される光エネルギーのフルエンスプロファイルを制御することとを備え得る。方法はまた、気化した金属層が凝縮して金属ナノ粒子を形成する際に気化した金属層から作成される金属ナノ粒子のサイズを制御するように、光エネルギーのフルエンスプロファイルをさらに制御することであって、金属ナノ粒子は基板上に戻って堆積されて基板上にGRIN表面を形成する、ことも含むことができる。
【0011】
別の態様では、本開示は、金属層を有する基板上にグレーデッドインデックス(GRIN)を形成するための方法に関する。方法は、気化した金属層を作成するために金属層を実質的にアブレーションするように、レーザーによって生成されるレーザービームのフルエンスプロファイルを制御することを備え得る。方法は、気化した金属層が凝縮して金属ナノ粒子を形成する際に気化した金属層から作成される金属ナノ粒子のサイズを制御するように、レーザービームのフルエンスプロファイルを制御することをさらに含み得る。方法は、金属ナノ粒子が異なるサイズで作成されるようにレーザービームのフルエンスプロファイルを制御することと、金属ナノ粒子が基板上に戻って堆積されて基板上にGRIN表面を形成する際に、基板上に所定の方法で金属ナノ粒子がパターニングされるように、レーザービームのフルエンスプロファイルをさらに制御することとを、さらに含み得る。
【0012】
さらに別の態様では、本開示は、基板上にグレーデッドインデックス(GRIN)を形成するためのシステムに関する。システムは、制御されたフルエンスプロファイルを有するビームの形態の光エネルギーを生成する、光エネルギー生成システムを備え得る。光エネルギー生成システムは、金属層を実質的にアブレーションするために、および気化した金属層を作成するために、金属層の融解を開始するようにビームのフルエンスプロファイルを制御するように、制御されるように構成され得る。ビームのフルエンスプロファイルは、気化した金属層が凝縮して金属ナノ粒子を形成する際に気化した金属層から作成される金属ナノ粒子のサイズを制御し、金属ナノ粒子は基板上に戻って堆積されて基板上にGRIN表面を形成するように、さらに制御されてもよい。
【0013】
さらなる適用範囲は、本明細書に提供される説明から明らかになるであろう。この概要における説明および具体例は、例示のみを目的として意図されており、本開示の範囲を限定することを意図されていない。
【0014】
本明細書で説明される図面は、全ての可能な実装ではなく、選択された実施形態の例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示によるシステムを形成する際に使用され得る主要な構成要素の高レベルブロック図である。
図2】超短持続時間レーザーパルスを使用して図1の基板上の金属層が加熱される際に、金属層がどのようにして実質的にまたは完全にアブレーションされ、膨張する高温の金属蒸気雲を作り出すかを示す、簡略図である。
図3図2の蒸気雲が凝縮する際に、それがどのようにして金属ナノ粒子を作成するかを示す簡略図である。
図4】基板の上表面に定着する際に、金属ナノ粒子がどのようにして制御可能に空間的にパターニングされたかを示す図である。
図4A】レーザービームのフルエンスがどのようにして基板上に形成されたナノ粒子の粒径および空間分布に影響を及ぼすように制御され得るかに関する別の簡略図である。
図5】基板上にGRIN表面を作り出すために金属層のアブレーションを使用する際に方法によって実行され得る様々な動作を明らかにする、本開示による方法の高レベルフローチャートである。
図6A】0.3J/cm2のピークレーザーフルエンスでの単一パルス照射後の結果的な形態を示す、50umスケールバーを有する透過顕微鏡写真の例示であり、ここで、可視透過色はサブ波長金属構造の形成を示す。
図6B】0.4J/cm2のピークレーザーフルエンスでの単一パルス照射後の結果的な形態を示す、50umスケールバーを有する透過顕微鏡写真の例示であり、ここで、可視透過色はサブ波長金属構造の形成を示す。
図7】中央の差し込み図と共に表面の2つの領域の、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して得られた顕微鏡写真画像であり、挿入図は、適用されたレーザービームの局所フルエンスの変化に応じて異なる領域内でナノ粒子サイズがどのように変化するかを示すために、異なる色のドットでマークされている。
図8図7の2つのSEM画像のナノ粒子サイズ統計を示すグラフである;中心から30umの領域は、中心のピークフルエンスよりも比較的低いフルエンスに曝露される;直径16nmの粒子が中心で観察され、より小さい粒子が30um領域で形成された。
図9】成形されたレーザービームの単一パルス曝露後の結果的な形態の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
対応する参照番号は、図面のいくつかの図にわたって対応する部分を示す。
【0017】
ここで、添付図面を参照して、例示的な実施形態がより完全に説明される。
【0018】
本開示は、ナノサイズの特徴を有するマスクを効率的に作り出すためのシステムおよび方法に関し、これらは上述の用途向けに自由形状光学系およびマスクを形成するのに非常に適している。基板をエッチングするためのマスクとして金属ナノ構造を利用することにより、ナノ構造は、基板に直接投影されることが可能である。アブレーションプロセスによってマスクを効率的に製造することを伴う本開示は、グレーデッドインデックス光学系のコスト効率のよい製造が限定要因であった新しい用途への可能性を提供する。
【0019】
図1を参照すると、本開示によるシステム10の高レベルブロック図が示されている。システム10は、光エネルギー供給デバイスまたはサブシステム14の動作を制御するために電子コントローラ12を使用し得る。この例では、光エネルギー供給サブシステムはレーザーであり、便宜上、この構成要素は、以下のテキスト全体で「レーザー」14と呼ばれる。レーザー14は、たとえば、パルスレーザーであってもよく、短光パルスによるものであってもよい。レーザー14の使用が好ましいが、フラッシュランプによる短光パルスもまた金属膜アブレーションを開始できる(すなわち、適切な光学系および/またはビーム送達を用いて)ことが、理解されるだろう。これが、金属蒸気を作成し、レーザー14を使用したときに、以下の段落で説明されるのと同じ方法でナノ粒子をもたらす。しかしながら、簡単にするために、以下の議論は、金属表面をアブレーションするために必要とされる光エネルギーを作り出すためにレーザー14を使用することに焦点を当てる。
【0020】
レーザー14は、基板20上の薄い金属層18に向けて方向付けられた、制御されたフルエンスプロファイルを有するレーザービーム16を生成する。用語「フルエンスプロファイル」は、レーザービーム16のパワーおよび空間形状の両方を含む。薄い金属層は、たとえば、金(Au)、白金(Pt)、クロム(Cr)、またはチタン(Ti)であってもよく、システム10は、金属の唯一つの特定の種類との使用に限定されない。薄い金属層18の厚さは、たとえば10nmから200nm程度であってもよく、システム10のテスト中に、20nm厚の膜層を使用した。さらに、厚さは、使用される金属の特定の種類に応じて変わってもよく、システム10は、いずれか特定の厚さの金属層での使用に限定されない。システム10のテスト中、基板20は溶融シリカ基板であった。レーザービーム16の波長および照射フルエンスもまた著しく変わり得るが、一例では、波長は1064nmであり得、照射フルエンスは典型的には約0.1J/cmから1.0J/cmの間である。金属膜は、UV-VIR-NIR波長全体にわたって吸収性であり、それらに対する典型的な金属のアブレーション閾値フルエンスは~0.1J/cmであることが理解されるだろう。したがって、選択されたフルエンス範囲は、好ましくは約0.1J/cmよりも大きくなる。より厚い膜は、通常、完全なアブレーションを開始するためにより高いフルエンスを必要とする。レーザー14は、ナノ秒、ピコ秒、またはフェムト秒範囲の超短持続時間パルスを生成し得る。システム10のテスト中、0.28J/cmから約0.3J/cmのレーザーフルエンスで、7ナノ秒のパルスを使用した。
【0021】
図2に示されるように、レーザービーム16が金属層18を照射すると、金属層は、蒸気雲22を形成するために気化される。図3では、蒸気雲が凝縮すると、それは金属ナノ粒子26の雲24を形成する。以下でさらに説明されるように、金属ナノ粒子の正確なサイズおよびそれらの分布/濃度は、レーザービーム16のフルエンスプロファイルを制御することによって制御される。図4および図4Aに示されるように、金属ナノ粒子26は、基板20の上表面に堆積されており、集合的にグレーデッドインデックス(GRIN)表面28を形成する。一緒に、基板20およびその新しく形成されたGRIN表面28は、自由形状光学系、非球面光学系、または反射/屈折素子を備え得る。サイズおよび位置が制御された金属ナノ粒子は、プラズモンセンサまたはディスプレイにも使用され得る。
【0022】
システム10およびその動作方法は、「設計者の意のまま(designer-at-will)」の自由形状光学素子が構築されることを可能にするGRIN位相板を設計するために使用されることが可能である。加えて、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、製造されている特定の構成要素に合わせて調整され得るスケーラブルな技法に基づくので、大型光学系を形成するのに非常に適している。
【0023】
図5を参照すると、本開示による構成要素上にGRIN表面を形成する方法の一例のフローチャート100が示されている。最初に、動作102で、金属層、たとえば、図1の層18などの約数十ナノメートル程度の極薄の金属層または金属膜が、基板(たとえば、図1の基板20)上に堆積または適用され得る。金属層18は、たとえばe-ビーム、熱蒸発器、またはスパッタなどの物理蒸着(「PVD」)システムによって、任意の適切な方法で適用され得る。次いでレーザー14は、動作104で示されるように、極薄の金属層に短持続時間レーザーパルス16(すなわち、ナノ秒、ピコ秒、フェムト秒範囲内)を適用するために使用され得る。動作106で、レーザーパルス16のフルエンスプロファイルは、ビーム16を成形するように、および極薄の金属層18のアブレーションを開始するように、制御される。選択されたフルエンス範囲および波長でのパルスレーザー照射後に、金属層18全体が完全にアブレーションされ得る。しかしながら、いくつかの非常に限られた例では、金属ナノ粒子が基板20以外の異なる構成要素上に堆積されている場合など、金属層18の一部のみをアブレーションすることが好ましい場合がある。本開示では、両方の実装が想定される。金属層18(たとえば、膜)厚をレーザー吸収深さプラス熱拡散長程度に維持することで、レーザーパルス16による初期照射の間に金属層18全体が除去されることを保証する。
【0024】
このアブレーションにより支援されるナノ粒子形成は、金属層18に吸収されたレーザーパルス16の局所フルエンスによって推進される。金属層18は、アブレーションされる際に気化される。結果的な気化した雲が凝縮すると、金属ナノ粒子26が形成される。動作108で、レーザーパルス16によって提供されたレーザーフルエンス分布は、基板20上に作成および堆積された金属ナノ粒子16のサイズおよびパターニングを空間的に変えるように、制御され続ける。ナノ粒子26のパターニングされた堆積は、構成要素の基板20上にGRIN表面28を形成する。動作108についての上記の説明が、ビームラスタリングまたはサンプル平行移動のいずれかによって大エリアのGRIN表面を作るための単に1つの方法を表すことも、理解されるだろう。あるいは、大エリアのGRIN表面はまた、空間的に変調された大径ビームのフルエンスの単一のショットによって作られることも可能である。
【0025】
したがって、本明細書に説明されるシステム10および方法の様々な実施形態は、必要に応じて基板上に直接堆積され、エッチングマスクとして使用されることが可能な、パターニングおよびサイズ制御された金属ナノ構造を実現するために、レーザーフルエンス分布を空間的に制御する(すなわち、レーザービーム成形)ように動作する。これが、たとえば、自由形状光学系デバイス、ならびに従来の光学系(たとえば、レンズ)を作成するために、非常に様々な構成要素上でのGRIN表面の製造を可能にする。加えて、基板を「エッチング」するためのエッチングマスクとして本質的に働くためのナノ構造として金属ナノ粒子を利用することにより、ナノ構造は、基板(たとえば、溶融シリカ)に直接投影されることが可能である。基板エッチング条件下で、金属は無傷であり、ナノ構造によって覆われていない曝露された基板エリアは、選択的にエッチングされる。
【0026】
この方法によるナノ粒子形成は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して微細構造を捕捉することによって確認されている。1064nm波長のビームでは、金属層は、~20nmの厚さを有する金(Au)の薄膜であり得る。実験目的のため、溶融シリカ基板上のe-ビームで蒸着された20nmのAu膜が、周囲(ambient)条件下で1064nmの7nsレーザーパルスで照射された。0.3J/cmを超えるフルエンスでナノ秒パルス照射の後、金属層が完全にアブレーションされたが、アブレーションされた金属蒸気は基板上に再堆積された。これは、50umスケールバーを有する図6Aおよび図1Bの透過顕微鏡写真に示されている。図6Aは、0.3J/cm2のピークレーザーフルエンスでの単一パルス照射後の結果的な形態を示し、図6Bは、0.4J/cmのレーザーフルエンスでのものを示している。0.3J/cm図6A)では、中心エリア202に青みがかった透過色200が観察される。この可視透過色は、サブ波長金属構造の形成を示す。図6Bに示されるように、フルエンスを0.4J/cmまで増加することにより、中心208に赤みがかった透過色206が追加され、これは異なるサイズのナノ粒子が形成されたことを示している。
【0027】
図7を参照すると、ナノ粒子サイズ分布の統計データは、レーザービームの局所フルエンスによって粒子サイズが制御され得ることを示している。差し込み画像308の異なる部分に対応する、2つの領域300および302の大きく拡大されたSEM画像が示されている。領域300は、差し込み画像308のドット304で表されるエリアの拡大である。領域302は、差し込み画像308のドット306で表されるエリアの拡大である。これらのSEM画像から、ナノ粒子サイズ統計を得た。局所フルエンスが0.3J/cmである、差し込み画像308の310でラベル付けされた中心内で、およそ15nmのナノ粒子が形成された。局所フルエンスが0.28J/cmである、中心から30um離れた領域では、およそ5nmのナノ粒子が形成された。
【0028】
図8は、ナノ粒子の数、ならびにナノ粒子の直径が、中心領域(図7の0.3J/cmでの)と中心から30umの領域(0.28J/cmのビームフルエンスが使用された場所)とでどのように異なるかを示すグラフを示す。
【0029】
図9は、成形ビームの単一パルス曝露後の結果的な形態の顕微鏡写真を示す。成形ビームの形状(またはフルエンスプロファイル)は、ナノ粒子の結果的な形態に直接投影される。これは、ナノ粒子形成が局所フルエンスによって推進されることを示している。
【0030】
実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的のために提供されてきた。包括的であること、または本開示を限定することは意図されていない。特定の実施形態の個別の要素または特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されるものではなく、特別に図示または説明されていなくても、適用可能であれば、置き換え可能であり、選択された実施形態で使用されることが可能である。同じことが、多くの方法で変えられ得る。このような変形例は、本開示からの逸脱と見なされるべきではなく、このような全ての修正は、本開示の範囲に含まれることが意図される。
【0031】
例示的な実施形態は、本開示が徹底的になり、その範囲を当業者に完全に伝えるように、提供される。本開示の実施形態の徹底的な理解を提供するために、特定の構成要素、デバイス、および方法の例など、多数の特定の詳細が明記されている。特定の詳細が採用される必要はないこと、例示的な実施形態が多くの異なる形態で具現化され得ること、およびどちらも本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことは、当業者にとって明らかとなるだろう。いくつかの例示的な実施形態では、周知のプロセス、周知のデバイス構造、および周知の技術は、詳細に説明されていない。
【0032】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明することのみを目的としており、限定的であることを意図するものではない。本明細書で使用される際に、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数形も含むように意図され得る。用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」、および「有している(having)」は、包括的であり、したがって、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。本明細書に説明される方法ステップ、プロセス、および動作は、実行の順序として具体的に識別されない限り、必ずしも議論または図示された特定の順序でのこれらの実行を必要とするように解釈されるべきではない。追加または代替のステップが採用され得ることもまた、理解されるべきである。
【0033】
要素または層が別の要素または層に対して「上に(on)」、「係合されて(engaged to)」、「接続されて(connected to)」、または「結合されて(coupled to)」いると呼ばれるとき、これは直接その別の要素または層の上に、係合されて、接続されて、結合されていてもよく、または介在する要素または層が存在してもよい。対照的に、要素が別の要素または層に対して「直接的に上に(directly on)」、「直接的に係合されて(directly engaged to)」、「直接的に接続されて(directly connected to)」、または「直接的に結合されて(directly coupled to)」いると呼ばれるとき、介在する要素または層が存在してはならない。要素間の関係を説明するために使用される他の単語も、同様に解釈されるべきである(たとえば、「間(between)」に対して「直接的に間(directly between)」、「隣接(adjacent)」に対して「直接的に隣接(directly adjacent)」など)。本明細書で使用される際に、用語「および/または(and/or)」は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0034】
本明細書では、様々な要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを説明するために第1、第2、第3などの用語が使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層、またはセクションを別の領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用され得る。「第1(first)」、「第2(second)」、およびその他の数値の用語などの用語は、本明細書で使用される際に、文脈によって明確に示されない限り、シーケンスまたは順序を意味するものではない。したがって、以下で論じられる第1の要素、構成要素、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、またはセクションと呼ばれることが可能である。
【0035】
「内側(inner)」、「外側(outer)」、「下方(beneath)」、「下(below)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」などのような空間的に相対的な用語は、本明細書では、図に示されるように、別の要素または特徴に対する1つの要素または特徴の関係を説明するための説明の簡素化のために使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に示される配向に加えて、使用中または動作中のデバイスの異なる配向を包含するように意図され得る。たとえば、図中のデバイスがひっくり返された場合、他の要素または特徴の「下」または「下方」として説明された要素は、他の要素または特徴の「上」に配向されることになる。したがって、例示的な用語「下」は、上と下の両方の配向を包含することができる。デバイスは、別途配向されてもよく(90度回転またはその他の配向)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語は相応に解釈され得る。
図1
図2
図3
図4
図4A
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9