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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/44 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
A61N1/44
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021010506
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2021119978
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】20154694
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ゼンカー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン・ブルネッカー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ノイゲバウアー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ヴァイス
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-290334(JP,A)
【文献】WEISS, Martin and STOPE, Matthias B.,“Physical plasma: a new treatment option in gynecological oncology”,Archives of Gynecology and Obstetrics,(独),Springer-Verlag GmbH,2018年09月11日,volume 298,p. 853-855
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00―18/28
A61N 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トパピローマウイルスに対する抗ウイルス療法による上皮内新生物の予防のため、上皮内癌腫の病変の治療のため、および/または上皮的に到達可能な浸潤癌腫の治療のためのプラズマ(19)を生成するためのシステム(10)であって
前記システム(10)、少なくとも1つの電極(15)を備えた医療器具(14)と、前記器具(14)への電力の供給のために交流電圧を提供するためのRFデバイス(11)と、ガスを前記器具(14)に供給するために調整されるガス供給デバイス(13)と、前記RFデバイス(11)の出力有効電力を所望の値にフィードバック制御するためのデバイス(42)と、を有
電流が前記電極(15)から前記プラズマ(19)を通って患者の体(18)に流れるように、前記電極(15)が前記プラズマ(19)とガルバニック接触し、
前記RFデバイス(11)が、前記電極(15)に交流電圧を印加するように調整され、
前記交流電圧は、少なくとも100kHzのRF周波数を有し、
交流電流は、中周波数(MF)によってパルス化され、前記中周波数は、5kHzを含む数値から100kHzを含む数値の間の量を有し、前記中周波数パルスのパルス持続時間は、1つまたは複数のRF周期の量を有し、および/または前記交流電流は、0.5Hzを含む数値から200Hzを含む数値の間の量を有する低周波数(NF)によってパルス化され、
前記低周波数パルスのパルス持続時間は、少なくとも1つの中周波数周期の量を有し、
前記デバイス(42)は、前記出力有効電力を、前記中周波数および/または前記低周波数の変調の適応によってフィードバック制御するように構成される、システム
【請求項2】
前記プラズマ(19)は、子宮頸部、子宮口、食道、胃、結腸、直腸および腹膜である、哺乳動物の器官系の少なくとも1つの上皮内新生物の治療のためのプラズマである、請求項1に記載のシステム
【請求項3】
前記プラズマ(19)は、グレードIからIIIの子宮頸部上皮内新生物の治療のためのプラズマである、請求項1または2に記載のシステム
【請求項4】
前記システム(10)が中性電極(12)を備え、
前記中性電極(12)が、前記RFデバイス(11)から前記器具(14)の前記電極(15)を介して、前記プラズマ(19)および患者の体(18)を通る回路を閉じるために前記患者の前記体(18)上に配置され、
前記器具(14)の遠位端部にある前記電極(15)と前記患者の組織(21)との間の前記プラズマ(19)が点火される、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム
【請求項5】
前記ガス供給デバイス(13)が、最小ガス流量を含む流量から前記最小ガス流量の3倍であるガス流量を含む流量の範囲内の流量を前記器具(14)に供給するように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム
【請求項6】
前記システム(10)は、抗ウイルス療法による上皮内新生物の防止のために、上皮内癌腫の病変の治療のために、および/または上皮的に到達可能な浸潤癌腫の治療のために、前記プラズマ(19)によって、種(25)を培地(21)の内部に生成および/または導入する、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム
【請求項7】
前記システム(10)は、抗ウイルス療法による上皮内新生物の防止のために、上皮内癌腫の病変の治療のために、および/または上皮的に到達可能な浸潤癌腫の治療のために、前記プラズマ(19)によって種(25)を生成する、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム
【請求項8】
前記RFデバイスの前記出力有効電力の前記所望の値が、最大で3.5ワットの量を有する、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病気を治療するための物理プラズマ、培地、種、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物理プラズマによる疾患の治療のための多くの方法は、プラズマ医学という用語によって要約される。
【0003】
YANらの、Oncotarget、2017年、vol.8(No.9)、pp:15977~15995からの「Cold atmospheric plasma,a novel promising anti-cancer treatment modality(低温大気圧プラズマ、新規の有望な抗癌治療療法)」およびDubucらの、Ther Adv Med Oncol、2018年、Vol.10:1~12の「Use of cold atmospheric plasma in oncology:a concise systematic review(腫瘍学における低温大気圧プラズマの使用:簡潔な系統的レビュー)」の記事は、癌治療のために大気圧下で低温プラズマ(低温大気圧プラズマ、CAP)を適用することに関する研究について説明している。
【0004】
Weissらの、Journal of Medical Virology 89:952~959(2017年)の「Virucide properties of cold atmospheric plasma for future clinical applications(将来の臨床応用のための低温大気圧プラズマの殺ウイルス特性)」の記事は、大気圧下での低温プラズマの適用によるウイルスの不活化について説明している。
【0005】
Weissらの、Archives of gynecology and obstetrics、2018年9月の「Physical plasma:a new treatment option in gynecological oncology(物理プラズマ:婦人科腫瘍学における新しい治療オプション)」の記事は、婦人科癌タイプの治療および予防のために大気圧下で低温物理プラズマを使用することについて概説している。
【0006】
「Cold atmospheric plasma(CAP)for anti-cancer applications:Epigenetic effects on DNA integrity and functionality of cervical cancer cells(抗癌用途の低温大気圧プラズマ(CAP):子宮頸癌細胞のDNAの完全性および機能性に対するエピジェネティックな効果)」の記事は、子宮頸部の癌細胞に対する大気圧下での低温プラズマに関する現状を説明している。
【0007】
Frankらの、Endo heute 2006年;19:15~22の、「Modified argon-plasma coagulation mode and first university center clinical experiences in gastroenterological endoscopy(変更されたアルゴンプラズマ凝固モードおよび胃腸内視鏡検査における最初の大学センター臨床経験)」の記事は、腫瘍および病変の治療中のアルゴンプラズマ凝固モードの適用について説明している。
【0008】
コイズミらの、Molecular And Clinical Oncology、5:310~316、2016年の「Clinical investigation of the safety and efficacy of a cervical intraepithelial neoplasia treatment using a hyperthermia device that uses heat induced by alternating magnetic fields(交番磁場によって誘発される熱を使用する温熱療法デバイスを使用した子宮頸部上皮内新生物治療の安全性および有効性の臨床調査)」の記事は、治療のために加熱された針によるグレードIII(CIN III)の子宮頸部上皮内新生物の患者の治療について説明している。
【0009】
国際公開第02/11634号は、調整可能な電力制限を備えた無線周波数手術用の無線周波数発生器を説明している。発生器は、無線周波数出力電圧のピーク値または電灯アークの強度が一定に保たれるように、変調信号のパルス持続時間および/または変調信号間の休止持続時間を調整することを可能にする。
【0010】
Weissらの、62.DGGG-Kongress,Berlin,2018年10月31日 ~11月3日向けのポスター寄稿「Cold atmospheric plasma(CAP)for anti-cancer applications:Epigenetic effects on DNA integrity and functionality of cervical cancer cells(抗癌用途の低温大気圧プラズマ(CAP):子宮頸癌細胞のDNAの完全性および機能性に対するエピジェネティックな効果)」は、CAP適用が子宮頸部SiHa細胞に及ぼす細胞増殖制限効果を示している。
【0011】
2019年10月28日、ACS Appl.Mater.Interfaceで公開の、Wenzelらの「Molecular Effects and Tissue Penetration Depth of Physical Plasma in Human Mucosa Analyzed by Contact-and Marker-Independent Raman Microspectroscopy(接触およびマーカーに依存しないラマン分光法によって分析されたヒト粘膜における物理プラズマの分子効果および組織侵入深さ)」の記事において、ヒト粘膜の前癌病変および腫瘍性疾患、例えば子宮頸部新生物における有望な治療法としてのCAPによる非侵襲的治療が、言及されている。この記事では、ラマン分光法を使用してヒト組織へのプラズマの効果を評価することを目的とした研究の結果について説明しており、この研究は、子宮頸部組織サンプルでエクスビボで調べられた。研究の一部において記載されているように、子宮頸部の癌細胞の細胞株を有する細胞培養物上での細胞複製を妨げるCAPの効果が、確認されている。子宮頸部組織サンプルおよび細胞株のCAP治療は、ジェット原理に従って作動するアルゴンプラズマ生成用の器具を使用して実施された。この研究の文脈では、熱による組織損傷を排除するために、器具をサンプル上で動的に動かした。
【0012】
ウェブサイトhttps://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03218436?term=argon+plasma&cond=CIN&rank=1は、低温の物理プラズマによる子宮頸部上皮内新生物の治療に関する研究について説明している。組織学的に検証されたグレードI/IIのCINは、プラズマ治療の試験対象患者基準として言及されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この背景を考慮して、疾患の治療のための改良されたプラズマ、ならびにそのようなプラズマを生成するためのシステムおよび方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を解決するために、本発明は、特に、請求項1に記載のプラズマ、請求項8に記載の培地、請求項9に記載の種、請求項10または11に記載のシステム、ならびに請求項14に記載の方法を作成する。
【0015】
本発明によれば、および本発明の第1の態様によれば、プラズマは、上皮内新生物の予防のために、特に、例えばヒトパピローマウイルスのプラズマベースの不活化による抗ウイルス療法のために、あらゆるグレードの重症度の上皮内新生物、例えば上皮内癌腫の病変の治療のために、および/または上皮的に到達可能な浸潤癌腫の治療のために生成される。プラズマは、好ましくはアルゴンプラズマであり、他の場合、例えばヘリウムプラズマである。プラズマを生成するためのシステムは、少なくとも1つの電極を備えた医療器具と、器具への電力の供給のために交流電圧を提供するためのRFデバイスと、器具にガス、特にアルゴンを供給するように調整されたガス供給デバイスとを備える。好ましくは、システムの少なくとも1つの電極は、プラズマにガルバニック接触している。システムは、好ましくは電流伝導プラズマとしてプラズマを生成する。
【0016】
本発明の第2の態様は、プラズマによって活性化される培地に関する。活性化とは、治療上有効な種、特にラジカルがプラズマによって培地中に生成され、および/または治療上有効な種、特にラジカルがプラズマによって培地に導入されることを意味する。例えば、培地は、液体、特に懸濁液、乳濁液、特に組織液、ヒトもしくは動物の組織、特に新生物組織、または例えばペースト状または硬い材料であることができる。培地、特に材料は、上皮内新生物の治療に使用することができる。内因性組織を含む活性化された培地、例えば、体液は、活性化された標的培地として参照することもできる。活性化された外因性培地、例えば治療のために患者の組織上または組織内に塗布されるか、または別の方法で患者に供給される液体、特に溶液、懸濁液もしくは乳濁液、ゲルまたはペーストは、名前が挙げられた疾患の予防治療のための薬として理解することができる。第1の態様によるプラズマが、活性化された内因性または外因性培地の生成に使用される場合、プラズマは、この意味で、特に第1の態様の文脈で言及する1つまたは複数の疾患の治療に間接的に使用され得る。ラジカルは、例えば、活性酸素種(ROS)および/または活性窒素種(RNS)であることができる。すべての活性酸素種およびすべての活性窒素種の全体は、RONSと呼ばれる。
【0017】
本発明の第3の態様は、プラズマによって生成された種、特に上記で言及した培地に導入された種および/または上記で言及した培地内に生成された種、特にラジカルに関する。
【0018】
本発明の第4の態様では、第1の態様によるプラズマ、好ましくは電流伝導プラズマ、好ましくはアルゴンプラズマを生成するためのシステムが、提供される。このシステムは、プラズマに好ましくはガルバニック接触する少なくとも1つの電極を有する医療器具と、器具への電力の供給のために交流電圧を提供するためのRFデバイスとを備える。加えて、システムは、ガス、特にアルゴンを器具に供給するためにプラズマの生成のために調整することができるガス供給デバイスを備える。諸実施形態では、システムは、特有のシステム調整、例えば無線周波数(RF)電圧、無線周波数(RF)電力、無線周波数の変調、ガス流量などを選択することによって、プラズマを生成するように、したがって言及した疾患の予防および/または治療を行うように構成され得る。
【0019】
システムの少なくとも1つの電極は、電極の導電性の、特に金属表面がプラズマと接触しているという点で、プラズマとガルバニック接触することができる。電流伝導プラズマとは、電極からの電子がプラズマ内を通過するように電極が接触するプラズマを意味する。プラズマが電極接触を有さないように、電極の誘電体層を通るバリア放電とは異なり、電子は、例えば予防によるなどの言及した疾患の治療のための本発明のシステムの好ましい実施形態において電極からプラズマに逃げる。本発明のシステムの好ましい実施形態によって、放電は、治療される場所の近くに近づくことができ、それによって、高密度の中性で帯電した、また短命でもある種、例えば、特にラジカルを含む活性酸素種および/または活性窒素種を、組織場所のプラズマ中および/または治療される組織場所内にもたらす。
【0020】
諸実施形態では、温かいプラズマは、治療される場所上を移動することによってプラズマの非熱的適用を可能にするシステムによって生成することができるが、その結果、熱的影響、特に、具体的には一箇所に留まっている間のタンパク質の変性による機能的組織構造の損傷をもたらす。例えば、温かいプラズマは、温度、特に45℃を超える、55℃を超える、またはさらには65℃を超えるイオン温度を有することができる。特に、器具の先端を、これを組織上で動かすことなく配置する隣の場所では、組織場所の表面の温度は、少なくとも45℃、少なくとも55℃、またはさらには少なくとも65℃まで上昇し得る。例えば、プラズマは、これが組織上を移動する速度の限界値、例えば10mm/sを含むか、またはそれを上回る適用速度でのみ、組織温度は、治療されるヒトまたは動物患者の組織場所において制限温度以下、例えば40℃以下、特に好ましくは37℃以下のままであるような温度を有することができる。プラズマがその上を移動する組織場所における組織温度が制限温度以下、例えば40℃以下、特に好ましくは37℃以下のままであるように、または熱による組織損傷、特に凝固がプラズマ治療によって発生しないように、好ましくは最大で50mm/sまたはそれ以下の手動で達成可能および制御可能な適用速度で作動することができるように、プラズマは、好ましくは制限温度以下の温度を有し、この制限温度は、例えば150℃または120℃であることができる。
【0021】
本発明の第5の態様によれば、方法であって、特に、例えばヒトパピローマウイルスに対する抗ウイルス療法による上皮内新生物の防止のために、あらゆるグレードの重症度の上皮内新生物、例えば上皮内癌腫の治療のために、または上皮的に到達可能な浸潤癌腫の治療のために、プラズマ、例えば第1の態様によるプラズマを使用することを含む、方法が提供される。第1の態様によるプラズマの使用と同様であり、したがってこれもまた本発明に属するのは、言及された治療の1つまたは複数のために、第2の態様から第4の態様による培地(例えば、培地の生成)、種またはシステムを使用することである。
【0022】
特に、本方法は、温かいプラズマの非熱的使用、例えば第1の態様によるプラズマの実施形態を含む。このために、器具、例えば例として上記で説明したような第4の態様によるシステムの器具、したがってプラズマは、好ましくは治療される組織上でこれに接触することなくすばやく案内されるため、このようにしてスワイプされた組織の温度は、制限温度、好ましくは37℃または40℃を下回ったままであり、それにより、組織の熱的損傷は確実に回避される。
【0023】
プラズマの非熱的適用中に組織の破壊がないため、レーザ治療(出血、感染)および円錐切除(出血、感染、CK短縮、妊娠および出産の合併症の10倍のリスク)の典型的なリスクおよび合併症が、回避される。非熱的治療は、痛みがないか、わずかな痛みしか伴わないため、したがって、外来で行うことができると共に、通常の手術状況における全身的鎮静をおよび局所麻酔を使用せずに行うことができる。多くの場合、すでに10秒から10分の治療時間で十分となり得る。治療に必要なのは1人(医療資格のある人員または医師)のみでよい。スポーツ、性交、入浴、水泳、プロの活動は、治療直後に再度可能になる。
【0024】
本発明の第6の態様によれば、プラズマ、好ましくは電流伝導プラズマ、好ましくはアルゴンプラズマを生成するためのシステムであって、少なくとも1つの電極を備えた医療器具を有し、器具への電力の供給のために交流電圧を提供するためのRFデバイスを有する、システムが、提供される。電極は、好ましくは、プラズマとのガルバニック接触を有する。好ましくは、システムは、プラズマを生成するために、ガス、特にアルゴンを器具に供給するように構成されたガス供給デバイスを含む。システムは、所望の値に従って、出力電力、例えば出力有効電力もしくは出力皮相電力、またはRFデバイスの出力実際電力の平均値をフィードバック制御するためのデバイスを備える。システムは、好ましくは、次の治療の1つでの使用を意図している。諸実施形態では、これは、特に、例えばヒトパピローマウイルスに対する抗ウイルス療法による上皮内新生物の予防のために、あらゆるグレードの重症度の上皮内新生物、例えば上皮内癌腫の病変の治療のために、および/または上皮的に到達可能な浸潤癌腫の治療のために、例えば電圧、電力、RF周波数の変調、ガス流量などの特定のシステム調整を選択することによって行うことができる。
【0025】
本発明の第7の態様によれば、プラズマは、特に、例えばヒトパピローマウイルスに対する抗ウイルス療法による上皮内新生物の防止のために、あらゆるグレードの重症度の上皮内新生物、例えば上皮内癌腫の病変の治療のために、および/または上皮的に到達可能な浸潤癌腫の治療のために使用するために提供され、プラズマは、第6の態様によるシステムによって生成される。本発明の第8の態様は、言及した療法的治療のための第7の態様によるプラズマによって活性化される培地に関する。本発明の第9の態様は、第7の態様によるプラズマによって生成された種に関する。第10の態様は、第6の態様によるシステム、第7の態様によるプラズマ、第8の態様による培地、および/または第9の態様による種による、特に、例えばヒトパピローマウイルスに対する抗ウイルス療法による上皮内新生物の防止のため、あらゆるグレードの重症度の上皮内新生物、例えば上皮内癌腫の病変の治療のため、および/または上皮的に到達可能な浸潤癌腫の治療のための方法に関する。第10の態様による方法の実施形態は、特に、第7の態様によるプラズマの非熱的使用に関する。諸実施形態における同等のものは、本発明の一部である、第6の態様によるシステム、第8の態様による培地、および第9の態様による種の使用である。
【0026】
本明細書において示す本発明の第1から第5の態様によるプラズマ、システム、培地、種または方法の特徴は、本発明の第6から第10の態様によるプラズマ、システム、培地、種または方法の任意選択の特徴となって、またはその逆の形で、これらの利点を提供することができる。第6の態様によるシステム、第7の態様によるプラズマ、第8の態様による培地、および第9の態様による種は、本発明の第1から第4の態様によるプラズマ、システム、培地または種に対応し、それにより、特にこれらの実施形態の説明をするために、第1から第5の態様に関する説明を考慮しなければならない。
【0027】
第1から第10の態様による本発明によるプラズマ、培地、種、システムおよび方法の追加の有利な実施形態および特徴は、以下の説明から明らかである。また、プラズマ、培地、システム、方法が後に単数形で言及される場合、文脈が別途示さない限り、本発明のすべての態様、すなわち第1から第10の態様の任意選択の特徴および利点を常に意味する。
【0028】
本発明によるプラズマを用いて、特に哺乳動物の以下の器官系のうちの少なくとも1つの上皮内新生物を治療することができる:子宮頸部、子宮口、食道、胃、結腸、直腸、腹膜。
【0029】
プラズマは、ヒトのグレードIまたはIIの上皮内新生物、特に子宮頸部上皮内新生物の治療に特に使用され得る。
【0030】
予防およびタイムリーな根治的治療への最大限の努力により世界のこの分野での発生率が減少しているにもかかわらず、毎年50万人の女性が浸潤性子宮頸癌腫(CC)に罹患している。年間約27万人の患者がこの病気で亡くなり、すべての患者の大多数は、時に疾患および治療の深刻な身体的および生理学的結果を伴いながら、生涯をかけて戦っている。
【0031】
子宮頸部上皮内癌腫(CIS)およびCCは、たいていは数年をかけて持続する前駆病変から発生する。そのほかに、そのような子宮頸部上皮内新生物(CIN)の発症の主な危険因子は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の高リスク変異体による局所感染である。
【0032】
CINの主な治療法は、レーザ蒸発(熱硬化療法)または円錐切除術(組織除去)からなる。これらの方法は、主に全身麻酔下で行われ、比較的高い侵襲性および莫大な臨床的および財政的努力を伴う。年間1000人あたり約4.2人が新しく罹患するCINの高い発生率の結果、莫大な量の高価な手術サービスが生じている。その上、CINの治療のためのそのような外科的介入は、重度の出血、生殖能力の低下、および妊娠合併症のリスクの複数倍の増加と関連している場合がある。過剰治療と侵襲性CCの兆候に対する懸念との間でバランスを取る行為は、医療経済上の課題である。CINはまた、ドイツおよび世界中でHPVワクチン接種の範囲が不十分であることおよび他のリスク要因により、深刻な問題を継続的に引き起こしている。治療、特にCINだけでなく、他の粘膜前癌性変化の治療のための、麻酔をかけない効果的で最小の侵襲性方法は、臨床の日常業務で緊急に必要とされており、現在ほとんど欠けている。
【0033】
本発明は、これらのプラズマ、システム、培地、種、および特にCINの特に穏やかであるが効果的な治療のための方法が提供されるという点で、本明細書において治療法を提供する。好ましくは、プラズマ、システム、培地、種は、組織内に延びる組織表面の非熱的治療に使用される。これは、治療される組織場所の温度が、特に好ましくは常に、熱による組織損傷の臨界温度よりも低いままであり、例えば、40℃以下または37℃以下のままであることを意味する。
【0034】
ガス(プラズマガス)、例えばアルゴンのガス流量は、プラズマの点火が可能であるように、遠位器具先端と組織との間に、適切で可能な限り規定された、適切な混合雰囲気を生成する役割を果たす。ガス流量が少なすぎると、電極と組織との間に存在するプラズマガスは少なすぎる。最小ガス流量は、少なくともプラズマが発火するために器具を流れ抜ける必要があるガス流量である。ガス流量が多すぎると、乱流によって付加される、空気もしくはその他のガス、または環境の媒体が多すぎる。最大ガス流量は、プラズマが発火するために最大で器具を流れることができるガス流量である。純粋なプラズマガス雰囲気は、おそらく、治療上有効な種の生成を困難にする可能性がある。したがって、ガス(プラズマガス)、例えばアルゴンの所望のガス流量は、好ましくは、プラズマを生成するための最小ガス流量に近い範囲内または最大ガス流量に近い範囲内にある。器具を流れ抜ける選択されたガス流量は、例えば、少なくとも最小ガス流量と同じくらいの高さであるが、最大ガス流量より少なくなり得る。プラズマガスのガス流量は、好ましくは、最小ガス流量を含むものから、例えば最小ガス流より3倍多いガス流量を含むものまでの範囲内で選択される。最小ガス流量および最大ガス流量もまた、複数のパラメータおよび/または調整に依存し得る。最小ガス流量は、特に、器具先端と組織表面との間の所望の治療距離に依存し得る。例えば、器具の先端と治療のための組織表面との間の治療距離を規定することができ(例えば、7mm)、規定された治療距離に基づいて、器具を流れ抜けなければならないガス流量を選択することができる。遠位端のガスチャネルの内径が2.4mmであるとすると、ガス流量は、好ましくは1l/分を含む数値から3l/分を含む数値の範囲、特に好ましくは1.3l/分を含む数値から2.5lを含む数値の範囲、例として、例えば1.6l/分±20%であることができる。これらの表示は、通常の状態だけでなく、この用途でのガス流量に関するさらなる表示を示す。通常の状態は、0℃の温度および1気圧の大気圧で存在する。内径をより小さくし、それ以外では等しいパラメータおよび調整によってガス流量をより小さくすることが有利となり得、内径をより大きくし、それ以外では等しいパラメータおよび調整を有して、ガス流量をより大きくすることが有利となり得る。器具のガス供給(例えば、ガスチャネル)の内径は、例えば、ガスの遠位端に、例えば0.5mmを含む数値から10mmを含む数値、好ましくは0.8mmを含む数値から3mmを含む数値、特に2.4mmの量を有することができる。
【0035】
1つの実施形態では、例えばアルゴンまたは別のプラズマガスのガス流量は、好ましくは3l/分未満、特に好ましくは2l/分以下であることが有利であることができ、その結果、一方では低電圧でもプラズマの確実な点火をもたらすことができ、他方では、電極と組織との間にアルゴンと空気の混合物をもたらすことができ、それにより、高い密度の活性種、特に活性酸素種および/または活性窒素種が、プラズマによって生成され、ガス流によって組織に運ばれ、および/または組織内に浸透する。
【0036】
効果的なプラズマを生成するには、電流の流れの方向が組織に向かうプラズマの流れの方向に対応する器具が好ましい。
【0037】
特に効果的なプラズマは、システムが中性電極を備える場合、そのシステムによって生成することができ、中性電極は、RFデバイスから電極を介してプラズマおよび患者の体を通る電流回路を閉じるために、患者の体に配置される。プラズマは、器具の遠位端上の電極と患者の組織との間で点火される。プラズマによって活性化された培地を生成するためのシステムが患者の体の外側または体から分離して使用される場合、培地は、中性電極の役割を果たすキャリア上または容器内に配置され得る。例えば、システムの中性電極ユニットは、培地用の導電性キャリアまたは容器と導電的に接続され得る。
【0038】
RFデバイスが、最大で3.5ワット、特に好ましくは最大で2.5ワット、最も特に好ましくは最大で2ワット、さらに好ましくは最大で1ワットまたはそれ以下の制限された電気出力有効電力を出力するように調整される場合、特に穏やかな治療が可能である。出力有効電力を最大値に制限すると、実際の電力は、2ワット、またはそれより低い値、例えば1ワットの最大値を有することができる。
【0039】
好ましい実施形態では、RFデバイスは、少なくとも100kHz、好ましくは200kHzを含む数値から16MHzを含む数値まで、特に好ましくは300kHzから500kHzの間、例えば350kHzの無線周波数(RF)を有する交流電圧を電極に供給するように調整される。RF周波数は、キャリア周波数とも呼ばれ得る。
【0040】
交流電圧は、固定または可変の中周波数(中周波数による変調)でパルス化することができ、中周波数は、例えば、5kHzを含む数値から100kHzを含む数値の間、特に好ましくは10kHzを含む数値から50kHzを含む数値、例えば20kHzの量を有する。各中周波数パルスのパルス持続時間は、好ましくは1つまたは複数のRF周期の量を有する。中周波数による脈動により、ピーク電圧を点火の臨界値以下に下げる必要なしに、RFデバイスの電力を連続波と比較して下げることができる。
【0041】
加えて、交流電圧は、好ましくは、例えば、0.5Hzを含む数値から200Hzを含む数値の間、好ましくは20Hzを含む数値から150Hzを含む数値の間、特に100Hzの量を有する固定または可変の低周波数(低周波数による変調)でパルス化される。各低周波数パルスのパルス持続時間は、好ましくは少なくとも1中周波数周期、好ましくは1中周数周期を含む周期から50中周波数周期を含む周期の間、例えば20中周波数周期を含む周期の量を有する。低周波数パルスのパルス持続時間が複数の中周波数パルスを含む場合、これは、低周波数パルスパケットと呼ばれることもある。中周波数の脈動に加えて、または代替としての低周波数の脈動の結果、RFデバイスの連続波作動と比較して出力有効電力の減少をもたらす。RFデバイスは、連続波作動を可能にしてもしなくてもよい。しかし、これに加えて、低周波数での脈動の結果、低周波数パルス間のパルス休止においてプラズマの消滅をもたらし、その結果、組織表面からのプラズマの放出をもたらす。したがって、プラズマは、組織表面に付着することなく、組織表面上で移動され得る。そうすることで、特に均一な治療結果の達成が容易になる。それにより、組織場所の集中的な治療を同時に行う場所でのプラズマの「付着」によって組織場所が高温になること、例えば組織場所が37℃また40℃の臨界温度を上回る治療関連温度を有することを回避することが、容易になる。
【0042】
システムは、上限に達しているか、またはプラズマが点火されている限り、特に中周波数の複数のパルスのパッケージであることができる低周波数パルスの開始時に、RFデバイスのピーク出力電圧を上昇させるように構成され得る。上限は、例えば、2kVを含む数値から6kVを含む数値の間、好ましくは4kVを含む数値から5kVを含む数値の間、例えば、4.7kVの量を有する。システムは、好ましくは、点火が決定された場合、RFデバイスの電源の電圧が低下するようにさらに構成される。そうすることで、RFデバイスのピーク出力電圧の低下が達成され、それにより、次の低周波数パルスの開始時に、ピーク電圧は、前の低周波数パルスパケットのプラズマ点火の時点よりも低くなる。そうすることで、強すぎる熱効果、特に熱による組織損傷を結果としてもたらし得る、強すぎるプラズマの生成を回避することができる。
【0043】
システムは、好ましくは、所望の値に対する、RFデバイスの出力電力、例えば出力有効電力または出力皮相電力のフィードバック制御のためのデバイスを備え、本発明のプラズマは、好ましくは、活性化される出力電力のフィードバック制御で生成される。
【0044】
出力電力のフィードバック制御のためのデバイスは、例えば、RFデバイスの出力電力の所望の値に到達するように電圧振幅を適応させるように構成され得る。
【0045】
中周波数および低周波数での変調中、低周波数のパルスパケットは、好ましくは、中周波数の1つまたは複数のパルスを含み、パルスパケットの後にパルス休止が続く。中周波数のパルスパケットは、好ましくは、高周波数の1つまたは複数の発振周期とそれに続く休止とを含む。特に中小出力電力では、低周波数のパルスパケットが非常に短いため、既知の制御戦略(電圧フィードバック制御)では電力のフィードバック制御は不可能である。対策がない場合、組織に導入される電力は、プラズマが発火する電圧に依存する。この点火電圧は、外部条件、例えば組織までの距離、電極の状態、または使用するプラズマガス(ヘリウムやアルゴンなど)に依存する。この関係の効果は、多くの用途の組織効果に臨床関連の違いをもたらさない。しかし、距離に依存する組織効果は、特にCIN病変の治療中に特に有利なものとなる。したがって、好ましくは、ピーク電圧の適応の代替として、またはそれに加えて、出力電圧の脈動(変調)が適応される。出力電圧は、例えば、出力電力をフィードバック制御するために、中周波数および/または低周波数の変調の変動によって、および/または低周波数パルスパケットの持続時間の変動によって影響を受け得る。
【0046】
したがって、デバイスは、ピーク電圧の調整によって、または変調の調整によって、あるいは両方の手段によって、プラズマの生成中に出力電力をフィードバック制御するように構成され得る。
【0047】
好ましくは、出力電力を適応させるようにピーク電圧を適応させる代わりに、本発明によって提供される変調変動は、低周波数および/または中周波数に影響を及ぼすことができる。出力電力は、連続的に、または均一または不均一な間隔で検出され得る。この出力電圧は、好ましくは、低周波数のパルスパケットの終了後に検出され、所望の値と比較される。所望の値からの偏差に応じて、中周波数および/または低周波数のパルス持続時間および/または周期を、出力電力が所望の値に近づくように変更することができる。
【0048】
平均出力有効電力の所望の値は、例えば、最大で3.5ワット、特に好ましくは最大で2.5ワット、より特に好ましくは最大で2ワット、さらに好ましくは1ワットまたはそれ以下の量を有することができる。平均出力有効電力の所望の値が、例えば、最大で2ワットの量を有する場合、実際に選択された所望の値は、例えば、2ワット以下、例えば1ワットの量を有し得る。電力出力は、例えば、低周波数の1周期にわたる平均値に関連付けられ得る。あるいは、電力出力は、例えば、低周波数のパルス持続時間にわたる平均値に関連付けられ得る。または、電力出力は、例えば、少なくとも1つまたは複数の中周波数パルスまたは周期にわたる平均値に関連付けられ得る。所望の値は、好ましくは、RFデバイスから出力することができる最大RF出力有効電力よりも小さい。
【0049】
本発明のプラズマ、本発明のシステム、培地、種および方法の追加の利点および特徴は、以下の説明および図から明らかである。また、プラズマ、培地、システム、方法が以下において単数形で言及される場合、文脈が別途示さない限り、本発明のすべての態様、すなわち第1から第10の態様の任意選択の特徴および利点を常に意味する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1a】単極器具および中性電極を備えたシステムの概略図である。
図1b】ジェット原理に従って本発明のプラズマを生成するための器具を備えた代替システムの図である。
図2】単極器具および中性電極を備えたシステムによる、またはジェット原理に従って作動する器具を有するシステムによる治療によって達成されたスピン密度を示す図である。
図3】本発明のシステムによって生成されたプラズマの使用の概略図である。
図4】本発明のシステムによって生成されたプラズマの使用の別の概略図である。
図5】さまざまな適用速度での大気圧アルゴンプラズマの適用中のヒドロゲルサンプルの組織表面温度の図である。
図6】0秒から120秒までのさまざまな投与量でインビトロで子宮頸癌細胞株に大気圧アルゴンプラズマを非熱的に適用する間の、24時間、72時間、120時間後の平均絶対細胞数の図である。
図7】本発明のシステム、例えば、好ましくはRF発生器の出力電力のフィードバック制御のためのデバイスを備えた図1aまたは図1bによるシステムのRF発生器を説明するための概略図である。
図8a図7によるRF発生器のRF出力電圧のパルスシーケンスの概略図である。
図8b図7によるRF発生器のRF出力電圧のパルスシーケンスの別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1aは、本発明のシステム10の実施形態の例を示している。システム10は、RFデバイス11と、中性電極12と、ガス供給デバイス13と、電極15、特に金属電極を有する医療器具14とを備える。電極15は、例えば、ステンレス鋼、タングステン、または別の導電性材料からなることができる。電極15が非金属コア上に少なくとも金属表面を含む実施形態が可能である。電極15は、ワイヤ、プレートレットまたはスパチュラの形状を有することができる。電極15の遠位端17aは、一例として、丸みを帯びる、円筒形状である、または先端を備えることができる。電極は、特に、遠位端に先端を有するステンレス鋼プレートレットであることができる。器具14の電極15は、好ましくは、誘電性コーティングを含まない。しかし、いずれの場合でも、電極15の遠位端17aは、誘電性コーティングを含まない。加えて、電極15の遠位端17a、ならびにそれに隣接する電極シャンク17b、すなわち少なくとも、電極15の遠位端17aに隣接する電極シャンク17bのセクションは、好ましくは、誘電性コーティングを含まない。好ましくは、電極15の遠位端17aだけでなく、それに隣接する電極シャンク17bのセクションも、誘電性コーティングを含まない。システム10は、誘電体バリア放電(DBD)の原理に従って作動しない。RFデバイス11は、電極15に電力を供給するために器具14に接続されている。器具14は、電極15が内部で長手方向に延びるガスチャネル16を備える。電極15の遠位端17aは、(図示するように)ガスチャネル16内に配置することができ、電極15は、ガスチャネル16で終了することができ、または電極15は、ガスチャネル16から突出することができる。ガスチャネル16の遠位端の内径は、好ましくは0.5mmを含む数値から10mmを含む数値の間、特に好ましくは0.8mmを含む数値から3mmを含む数値の間、例えば2.4mmである。ガス供給デバイス13は、ガスチャネル16にガス、好ましくは不活性ガス、特に好ましくは希ガス、例えば、アルゴンを適用するために、ガスチャネル16と流体的に接続されている。二次元中性電極12は、システム10の一部であり、広い領域にわたって患者の体18と導電的に接続されており、これは、ここでは非常に概略的に示されている。器具14は、アルゴンプラズマ凝固にも使用できる器具14であることができる。
【0052】
RFデバイス11によってRF電圧を器具14に印可することにより、物理プラズマ19が、電極15と患者の体18との間で点火される。電極15の表面は、プラズマ19とのガルバニック接触を有する。電気回路は、電極15によって、プラズマ19を通り、患者の体18を通って中性電極12に、そしてRFデバイス11に戻ることによって閉じられる。それにより、器具14の電極15からの電子は、電流伝導プラズマ19に入るか、またはその逆の形となる。プラズマ19は、患者の体18とのガルバニック接触を有する。したがって、患者の導電性の体18は、治療される組織場所21においてプラズマ19とのガルバニック接触を有するシステム10の第2の電極と考えることができる。図1aによるシステム10では、2つの電極15、21は、使用中、ガルバニックプラズマ接触を有する。第1の電極15から組織21までの距離は、追加の手段なしで可変であり、ユーザによる器具14の案内に依存する。プラズマ19は、電極15から患者の体18への電流の「導体片」としての役割を果たす。患者の体18は、プラズマ19と中性電極12との間の電流のための別の導体部を形成する。少なくとも部分的にプラズマ状態に遷移する、ガス供給デバイス13によって供給されるガスストリーム20は、空気もしくは別のガス(例えば、純粋な窒素)またはガス混合物を少なくとも部分的に置換し、電極15と組織場所との間に雰囲気を形成する。図1aによるシステム10は、電流の流れの方向が組織21に向かうプラズマ流れ方向に対応するシステム10の例である。
【0053】
本発明のシステム10の別の実施形態の例が、図1bに示されている。また、システム10のこの実施形態は、誘電体放電の原理に従って作動しない。システム10は、ジェット原理に従って作動する。システム10は、RFデバイス11と、ガス供給デバイス13と、第1の電極15およびリング形状の第2の電極22を有する医療器具14とを備える。RFデバイス11は、第1の電極15に第1の電圧を供給するために器具14に接続されている。器具14は、第1の電極15が長手方向に内部に延びる電気絶縁材料の毛細管23を備える。第2の電極22は、毛細管23の端部を取り囲んでいる。第1の電極15の電極先端17aは、毛細管23内に配置されている。第1の電極15および第2の電極22は、互いに向かって一定の距離に配置されている。第1の電極15および第2の電極22は、互いに直接対向していないが、毛細管23の絶縁材料は、第1の電極15と第2の電極22との間に配置されている。ガス供給デバイス13は、毛細管23にガス、好ましくは不活性ガス、特に好ましくは希ガス、例えばアルゴンを供給するために、毛細管23と流体的に接続されている。中性電極12は、図1bによるシステム10の実施形態には存在しない。プラズマ19が点火されると、回路は、むしろ、第1の電極15と第2の電極22との間のプラズマ19を介して閉じられる。第1の電極15とプラズマ19との間のガルバニック接触により、電子は、第1の電極15からプラズマ19に入るか、またはその逆の形となることができる。第2の電極22は、第1の電極15と第2の電極22との間の電気絶縁毛細管23により、プラズマ19とのガルバニック接触を有さない。プラズマ19は、連続的に供給されるガス流量20により、治療される組織場所21に向かって毛細管23から吹き出される。加えて、ガス流量またはプラズマ流量は、空気もしくは別のガス(例えば、純粋な窒素)またはガス混合物を少なくとも部分的に置換し、電極と組織場所との間の場所において雰囲気を形成する。
【0054】
第1の実施形態によるシステム10によって生成されたプラズマ19(図1a)により、および第2の実施形態によるシステム10によって生成されたプラズマ19(図1b)により、治療上有効な種25(原子、分子、イオン)、特に中性または荷電ラジカルが、組織場所21内に生成され、および/または組織場所21内に導入される。特に、第1の実施形態(図1a)によるシステム10で生成されたプラズマ19の結果、プラズマ19および/また治療される組織場所21内に、特に高密度の中性および荷電種25、例えば活性酸素種および/または活性窒素種が生じる。このように活性化された組織場所21は、プラズマによって活性化された培地を形成し、活性化の結果、例えば、新生物の退行をもたらす。
【0055】
図1および図2に関連して説明する器具14の実施形態は、誘電体バリア放電の原理に従って作用する器具14と比較して、よりスリムな構成を有することができる。これは、図1aに関連して説明する実施形態に特に当てはまる。なぜなら、器具14には電極15を1つだけ設けるだけでよいからである。また、図1および図2に関連して説明するように、器具14はまた、組織21上で遠位器具端部28をより長い距離で移動することができ、これは、取り扱いを容易にする。図1aに関連して説明する実施形態は、第1の電極15と中性電極12に接続された体の組織場所21との間の少なくとも1つのプラズマチャネル19により、ラジカルが組織の隣に継続的に新しく生成されるという点において、図1bに関連して説明する実施形態とは区別される。これはまた、特に短期間のラジカル種が組織21に到達することを可能にする。しかし、器具14では、図1bに関連して説明するように、プラズマ生成は、組織場所21からさらに離れて起こり、プラズマ19は、最初に器具14から吹き出されなければならない。図1bに関連して説明する実施形態によるシステム10と比較して、ヒトまたは動物組織、特に上皮、または他の内因性または外因性培地にプラズマ19を同じ時間適用した後により多くのラジカルが形成されることは、本明細書に説明する疾患の治療中、または本明細書に説明する疾患の治療のための活性化された培地の生成中に、図1aに関連して説明する実施形態によるシステム10によって生成されたプラズマ19の利点として考えられる。プラズマ19を同じ持続時間で、それぞれの遠位器具端部28と治療される表面21との間を同じ距離にして適用した後で形成されるラジカルの数の増加は、例えば、サンプル内のラジカルの数の尺度を得ることができる電子スピン共鳴(ESR)測定による同量の治療されたサンプル内のスピン密度を決定することによって証明することができる。ヒトまたは動物の組織のサンプル、またはスピントラップとして知られている材料を含む溶液は、例えばサンプルとして適格である。例えば、脱気したDPBS(成分は以下を参照)中のスピントラップの例である0.1モルDMPO(5,5-ジメチル-1-ピロリジン-N-オキシド)から、溶液を形成することができる。組織サンプルおよび/または溶液は、例えば、中性電極12上の図1によるシステム10の実施形態の単極器具14による治療中に配置することができ、または中性電極12は、サンプル容器と導電的に接続されている。図2は、(100Hzの低周波数および20kHzの中周波数に対応する、繰り返し率が10msのパルスモードの)デバイスパラメータ「preciseAPC」、エフェクトステージ1、1.6l/分のアルゴンを使用して、組織サンプル内で10秒(実線のブロック)および30秒(水平線が重なり合ったブロック)の治療時間で包皮組織サンプルを治療した後に決定されたスピン密度を示す。エフェクトステージ1は、1000オームの基準抵抗が器具電極15の電位および中性電極12の電位と接続されている場合に印可される平均有効電力が、最大で2ワットの量を有することを意味する。治療時間をより長くすると(30秒の治療時間と10秒の治療期間との比較)、達成されたスピン密度は再び減少する。エラーバーは、標準偏差を示している。使用されるシステムAPC3/VIO3は、図1aに関連して説明するようなシステム10の実施形態の一例である。使用されるシステムkINPen MEDは、図1bに関連して説明するようなシステム10の実施形態の一例である。このデバイスでのプラズマ生成の機能スキームは、ハンド器具の内側にある内径1.6mmを有する石英毛細管であり、この器具には、中央に外径1mmのピン型無線周波数電極が導入されており、無線周波数電圧(1.1MHz、2~6kVpp)が連続的に印加されて比較実験に使用された4.1l/minのガス流量で通過ガスをイオン化する。試験培地までの距離は、常に7mmであった。図2から明らかなように、システムkINPen MEDを使用した同様の組織プローブの治療と比較して、システムAPC3/VIO3を使用した治療後では、組織サンプル内のスピン密度がより高くなっていることが分かる。本明細書に説明する1つまたは複数の疾患の治療中のプラズマ19の有効性は、プラズマによって組織内に生成されるか、または組織に挿入されるラジカル種にまでさかのぼる。
【0056】
図3は、特に、第1の実施形態によるシステム10によって、または第2の実施形態によるシステム10によって(図1図2)生成されたプラズマ19によって、特に、例えばヒトパピローマウイルスに対する、抗ウイルス療法による上皮内新生物の予防のために、あらゆるグレードの重症度の子宮頸部上皮内新生物、例えば上皮内癌腫の病変の治療のために、および/またはヒトの子宮頸部浸潤癌腫の治療のために本発明のプラズマ19の使用を示す。中性電極12(図3には示さない)は、図1aによるシステムによる治療中、適切な場所において患者の体18と大面積で接触していなければならない。器具14は、膣26を介して子宮頸部27までまたは子宮頸部27内に導入され、プラズマ19が点火される。図4に示すように、プラズマ19は、好ましくは、例えば10mm/秒の最小適用速度で器具の先端28(器具の遠位端)を手動で動かす(矢印29で示す)ことにより、治療される組織場所21上をスワイプする。適用速度は、組織場所21の表面に平行な器具先端28の速度成分である。温かいプラズマの生成にもかかわらず、運動により、好ましくは組織場所21の表面の熱的損傷がなく、特に凝固が生じなくなる。したがって、プラズマ19の好ましい使用は、非熱的用途と呼ばれる。プラズマ19が移動する組織場所21の組織温度が制限温度、好ましくは40℃以下、特に好ましくは37℃のままであり、それによってプラズマ治療による熱的組織損傷、特に凝固が回避されるように、最大で50mm/s以下の手動で達成可能であり、制御可能な適用速度で作用できるように、プラズマ19は、好ましくは、限界温度以下の温度を含み、この限界温度は、例えば150℃または120℃であることができる。
【0057】
ガス(プラズマガス)、例えばアルゴンのガス流量は、プラズマ19の点火が可能であるように、遠位器具の先端と組織との間に、可能な限り規定された、適切な混合雰囲気を作り出す役割を果たす。ガス流量が少なすぎると、電極15と組織21との間に存在するプラズマガスが少なすぎる。最小ガス流量は、プラズマ19が発火するために器具14を少なくとも流れ抜ける必要があるガス流量である。ガス流量が多すぎると、乱流に起因してプラズマ19が発火するには多すぎる、空気もしくはその他のガス、または環境の媒体が付加される。最大ガス流は、プラズマ19が発火するように、最大で器具14を通って流れることを可能にするガス流量である。おそらく、純粋なプラズマガス雰囲気は、治療効果のある種の生成を困難にする可能性がある。したがって、プラズマ19を生成するためのガス(プラズマガス)、例えばアルゴンの選択されたガス流量は、好ましくは、最小ガス流量に近い範囲内、または最大ガス流量に近い範囲にある。器具14を流れ抜ける選択されたガス流量は、例えば、少なくとも最小ガス流量と同じくらいの大きさであるが、最大ガス流量より小さくなり得る。プラズマガスのガス流量は、好ましくは、最小ガス流量を含むものから、例えば、最小ガス流より3倍大きいガス流を含むものの範囲内で選択される。最小ガス流量および最大ガス流量もまた、複数のパラメータおよび/または調整に依存し得る。最小ガス流量は、特に、器具先端と組織表面との間の所望の治療距離に依存し得る。治療のために、例えば、器具の先端と組織表面との間の治療距離(例えば、7mm)を規定することができ、器具を流れ抜けるガス流量は、規定された治療距離に基づいて選択され得る。遠位端のガスチャネルの内径が2.4mmであり、治療距離が、例えば、7mmである場合、好ましくは、ガス流量は、1l/分を含む数値から3l/分を含む数値の範囲、特に好ましくは、1.3l/分を含む数値から2.5l/分を含む数値の範囲内、例えば1.6l/分±20%の範囲であることができる。内径をより小さくし、それとは別に同一のパラメータおよび調整によって、ガス流量をより小さくすることが有利となり得、内径をより大きくし、それとは別に同一のパラメータおよび調整によって、ガス流量をより大きくすることが有利となり得る。
【0058】
本発明は、経膣経路を介した患者の子宮頸部上皮内新生物の治療に基づいて図3に示されている。一般に、哺乳動物の種々の臓器系の子宮頸部上皮内新生物の治療への適用は、経膣、経口、非経口、腹腔鏡、鼻腔内、気管支内および直腸経路を介して、または本発明のプラズマ19によって活性化された培地または材料(薬品)によって実施され得る。したがって、プラズマ19が、活性化された外因性または内因性培地21の生成に使用される場合、プラズマ19は、特にこの説明において言及する1つまたは複数の疾患の治療に間接的に使用され得る。特に活性化された外因性培地の生成中、図1aに基づいて説明する実施形態によるシステム10で生成が実施される場合、中性電極12は、培地のキャリアまたは容器(図示せず)によって形成され得る。大気圧アルゴンプラズマ19の非熱的適用は、種々の病因の子宮頸部上皮内新生物の治療および浸潤癌腫の予防に適している。上皮内新生物は、ここでは、哺乳動物の種々の器官系、それだけに限定されないが、例えば子宮頸部、子宮口、食道、胃、結腸、直腸および腹膜の上皮内新生物も含む。本発明のプラズマ19の使用範囲はまた、子宮頸部および他の上皮内新生物、上皮内癌腫(CIS病変)、およびそれぞれの疾患の素因を有する哺乳動物における種々の病因の浸潤癌腫の予防的予防措置を含む。治療は、子宮頸部および他の上皮内新生物のCIS病変、ならびにそれぞれの疾患の素因のある哺乳動物における種々の病因の浸潤癌腫の、疾患の軽減、進行の停止または遅延、寛解の誘導を含む。子宮頸部および他の上皮内新生物、CIS病変ならびに種々の病因の浸潤癌腫の予防または治療に有用な他の方法との組み合わせが可能である。
【0059】
上皮内新生物の治療のための大気圧プラズマ19、特にアルゴンプラズマの非熱的適用の効果の証明は、標準化および制御されたエクスビボ、インビトロおよびインビボ研究に基づいて見出されており、その手順および達成された結果を以下に説明する。研究の文脈における大気圧アルゴンプラズマ19の非熱的適用のために、それぞれ1つのVIO3/APC3発生器(ERBE Elektromedizin、テュービンゲン)が、RFデバイス11およびガス供給デバイス13の例として使用した。RFデバイス11は、350kHzの周波数で交流電圧を生成する。器具14の一例として、外径3.2mmおよびガスチャネル16の遠位端の内径2.4mmのFiAPC-プローブ(ERBE Elektromedizin、テュービンゲン)を使用した。プローブは、遠位端に先端を有する電極としてステンレス鋼プレートレットを備える。次のパラメータを使用している:preciseAPC(100Hzの低周波数および20kHzの中周波数に対応する10msの繰り返し率を有するパルスモード)、エフェクトステージ1、1.6リットル/分のアルゴン。エフェクトステージ1は、1000オームの基準抵抗が器具電極15の電位および中性電極12の電位に接続されている場合に、この基準抵抗にかけられる平均有効電力が最大で2ワットの量であることを意味する。
【0060】
大気圧アルゴンプラズマ19の適用中の温度変化の検査をエクスビボで実施した。子宮頸癌細胞株に基づく新生物細胞への効果の検査をインビトロで実施した。グレードIおよびIIの子宮頸部上皮内新生物への効果の検査をインビボで実施した。
【0061】
大気圧アルゴンプラズマ19の非熱的適用の可能性は、標準化された赤外線サーモグラフィによるエクスビボ組織検査に基づく。それにより、ヒドロゲルサンプルは、大気圧アルゴンプラズマを用いて異なる適用速度で治療している。それにより、10mm/sを超える適用速度が、37℃未満の、平均の安定的な非臨界組織温度となることを示した。図5は、エクスビボで異なる適用速度で大気圧アルゴンプラズマ19を適用している間のヒドロゲルの組織表面温度を示す。結果は、個々の測定ポイント(小さいポイント)および平均絶対温度(大きいポイント)として示される。器具の先端と組織サンプルの表面との間の7mmの距離は、一定に保たれている。測定中、器具の先端をヒドロゲルサンプルの表面に直交するように向けた。ヒトまたは動物の組織の表面を治療するための有意義なサーモグラフィーテスト測定を実施できるようにするために、ヒドロゲルサンプルをゼラチンタイプBおよびダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)の12.5%ストック溶液から生成した。DPBSは、水ベースの生理食塩水である。これは、イオン濃度が人体のものに対応するように等張性である。これは、7.0から7.3のpH値を有する。ヒドロゲルサンプルを生成するために、ストック溶液を1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)で化学的に硬化させ、ポリアクチド(70×20×5mm)に37℃で2時間、そして100rpmでシェーカ内に置いた。純粋なDPBSでの洗浄プロセスの後、ヒドロゲルサンプルをテスト測定に使用する準備を整えた。
【0062】
標準化された赤外線サーモグラフィの結果は、説明した装置および10mm/以上の適用速度で始まる調整を使用することにより、組織温度を37℃未満にして本発明の大気圧アルゴンプラズマ19を非熱的に適用する可能性を示している。
【0063】
本発明の大気圧アルゴンプラズマ19の非熱的適用が子宮頸部癌細胞株(SiHa)に及ぼす効果をインビトロで検査した。結果は、本発明の大気圧アルゴンプラズマ19を適用速度が10mm/s以上で、0秒から120秒までの異なる投与量で非熱的に適用した後および24時間から120時間の複数のインキュベーション期間の後に、CASYセルカウンターおよびアナライザー(Roche)を使用して標準化されたセル数測定によって達成された。プラズマ治療を、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを有する通常のDebulko改変イーグル培地(DMEM)で実施した。インキュベーションは、加湿雰囲気(37℃、5%CO、pH7.4)下で実施した。
【0064】
図6は、インビトロで子宮頸癌細胞株に大気圧アルゴンプラズマ19を非熱的に適用した結果を示す。独立して実施した24時間、72時間、および120時間後のN=6測定からの平均絶対細胞数を示している。エラーバーは、+/-標準偏差を示す。
【0065】
10mm/s以上の適用速度、および0秒から120秒までの異なる投与量で、本発明の大気圧アルゴンプラズマ19を非熱的に適用した後の、CASYセルカウンターおよびアナライザー(Roche)による標準化された細胞数測定のインビトロ結果は、24時間から120時間のインキュベーション期間内の投与量および投与量に対する比率に応じた、子宮頸癌細胞株(SiHa細胞)の増殖の阻害を示す。
【0066】
大気圧アルゴンプラズマ19の非熱的適用がCINグレードIおよびIIに及ぼす効果をインビボで検査した。本発明の大気圧アルゴンプラズマ19の非熱的適用によって組織学的に確信されたCINグレードI/グレードIIに寛解をもたらす能力を、2週間後、3ヶ月後および6ヶ月後の標準化された細胞学的検査(パパニコロウ細胞学)および3ヶ月後および6ヶ月後の組織学的検査(病理学研究所(テュービンゲン)による外部所見)によって分析した。以下に手順の概要を示す。組織学的に確信されたCINグレードIまたはグレードIIを有する患者に、病変を提示するために、酢-ヨウ素サンプルを用いた臨床コルポスコピー検査を行った。続いて、コルポスコピー観察下で、大気圧アルゴンプラズマ19の単回の非熱的適用を、いずれの場合も適用速度10mm/s以上で、病変のサイズに応じて最小投与量4以上で、直後の30秒の適用サイクルで実施した。次のパラメータをデバイス調整として選択した:preciseAPC、エフェクトステージ1、1.6リットル/分のアルゴン。局所および全身の鎮静および鎮痛は使用しなかった。
【0067】
テュービンゲン大学の女性病院で18歳を超え、確信されたCINグレードIまたはグレードIIを有する患者が含まれており、発見および可能な治療戦略について事前にアドバイスされている。患者は見込み数で募集されており、無作為化されていない。プラズマ治療を含めるための適用基準:年齢>18歳を超える、組織学的に確信されたCINグレードIまたはグレードII、確実に評価可能な部分の形質転換ゾーンおよび病変の境界限界、アドバイス後の研究への参加に関する書面による合意。プラズマ治療の除外に適用される基準:組織学的に確信されたCINグレードIII、完全には見えない形質転換ゾーン、侵襲性疾患のわずかな兆候、患者のコンプライアンスの欠如が予想される、または患者が臨床試験の意味および目的を理解できないこと、深刻な心臓-血管疾患、古典的な治療法への欲求、患者の同意の欠如。主要な最終点として、CINグレードIまたはグレードIIの組織学的に完全な寛解が、規定されている。二次最終点として、CINグレードIまたはグレードIIの部分的な組織学的寛解、HPV負荷の低下、痛みおよび生活の質、組織耐性、およびプラズマ治療の適合性が規定されている。
【0068】
次の表は、達成された組織病理学的結果を示す。
【0069】
【表1】
【0070】
これらの結果は、大気圧アルゴンプラズマ19をいずれの場合も適用速度が10mm/s以上、4以上の投与量で、直後の30秒の適用サイクルで非熱的に適用することが、3ヶ月以内で82%のCIN IおよびII病変の寛解率に適合することを示している。6か後、治癒した病変の93%は安定しており、依然として目立たない状態である。例えば、文献では、CIN IIの平均自然寛解率は、40~50%の間と記載されている。これと比較して、大気圧アルゴンプラズマ19の非熱的適用後の寛解率は、著しく高い。
【0071】
次の表は、上記で言及したシステムおよび調整で達成されたウイルス学的結果を示している。
【0072】
【表2】
【0073】
これらの結果は、大気圧アルゴンプラズマ19をいずれの場合も適用速度が10mm/s以上、4以上の投与量で、直後の30秒の適用サイクルで非熱的に適用することが、6ヶ月内の60%の高リスクHPV陽性の寛解率を伴うことを示している。
【0074】
標準化されたインビトロおよびインビボ検査の結果は、大気圧アルゴンプラズマ19の非熱的適用が、特にCIN病変の治療において有用な方法であることを示している。
【0075】
図7は、図1aおよび1bによる本発明のシステム10で使用することができるRFデバイス11を示している。RFデバイス11は、RF発生器30と、制御デバイス31と、変調デバイス32と、電源33とを備える。システム10は、電圧を決定するための第1の検出デバイス34と、電流を決定するための第2の検出デバイス35と、信号評価デバイス36と、比較デバイス37とを備えることができる。負荷インピーダンス38も示されており、これは、図1aによるシステム10の場合はプラズマ19、およびプラズマ19と中性電極12との間の体18のインピーダンス、ならびに図1bによるシステム10の場合はプラズマ19のインピーダンスを含む。
【0076】
RF発生器30は、少なくとも100kHz、好ましくは200kHzを含む数値から16MHzを含む数値の間、特に好ましくは300kHzを含む数値から500kHzを含む数値の間、例えば、350kHzのRF周波数を有することができるRF電圧を発生させるように構成される。
【0077】
図8aは、時間の経過におけるRF発生器30の変調された無線周波数出力交流電圧Uを概略的にそして例として示している。図8bは、図8aの一セクションを示している。
【0078】
交流電圧Uは、変調デバイス32によって、好ましくは中周波数(MF)および/または低周波数(NF)で変調される。中周波数は、例えば、5kHzを含む数値から100kHzを含む数値の間、特に好ましくは10kHzを含む数値から50kHzを含む数値の間、例えば、20kHzの量を有することができる。中周波数パルス40のパルス持続時間TPulsMFは、好ましくは少なくとも1つまたは複数のRF周期の量を有する。
【0079】
低周波数は、例えば、0.5Hzを含む数値から200Hzを含む数値の間、好ましくは、20Hzを含む数値から150Hzを含む数値の間、特に100Hzの量を有する。低周波数パッケージ41のパルス持続時間TPulsNFは、好ましくは少なくとも1中周波数周期MFP、好ましくは1中周波数周期を含む周期から50中周波数周期を含む周期の間、例えば20中周波数周期の量を有する。
【0080】
中周波数および/または低周波数による変調を使用して、パルス化されていない交流電圧、例えば事前定義された最小ピーク電圧と比較して出力電力を低減することができる。低周波数による変調または脈動は、低周波数のパルス休止PPNFにおいてプラズマ19の消滅をもたらし、したがって、組織場所21からのプラズマ19の放出をもたらす。そうすることで、プラズマ19は、長手方向に組織場所21までの距離と平行な器具14の先端28の動きにもかかわらず、1つの組織場所21に付着しない。そうではなく、治療される組織場所21は、プラズマ19で均一にスワイプすることができる。
【0081】
例えば、患者の治療に使用された上記で言及した(例えば図1aによるシステム用の)RFデバイスAPC3/VIO3のモードpreciseAPC、エフェクトステージ1では、中周波数MFおよび低周波数NFが、不変に事前定義されており(MF=20kHzおよびNF=100Hz)、それにより、プラズマ経路のない不変の基準抵抗での作動中、それぞれのエフェクトステージに対して事前定義された平均電力が得られる。エフェクトステージ(1から10)の選択は、各低周波数パルスの不変持続時間TPulsNFに影響を与える。ユーザが組織場所21に隣接する器具先端28を保持し、プラズマ生成を活性化する場合、RFデバイス11は、プラズマ19が点火されるほどの高さの出力電圧をエフェクトステージから独立して選択する。上記で言及したモードpreciseAPC、例えばエフェクトステージ1では、システム10用の例とするシステムVIO3は、上限に達するか、またはプラズマが点火されない限り、中周波数の複数のパルスのパケットである低周波数パルスの開始時にRFデバイス11のピーク出力電圧を増加させるように構成される。上限は、例えば、VIO3 4.7kVを有するシステムにおいて、2kVを含む数値から6kVの間、好ましくは4kVから5kVの間の量を有する。システム10は、システム10が点火を認識した場合に、RFデバイス11の電源33の出力電圧が低下するようにさらに構成される。特に、電源33の出力電圧は、点火に必要な値よりも小さい所望の値にフィードバック制御される。そうすることで、RF発生器30のピーク出力電圧の低減が達成され、それにより、後続の低周波数パルスの開始時に、ピーク電圧は、先行する低周波数パルスパケットにおけるプラズマ点火の時点よりも小さくなる。そうすることで、システムVIO3を使用して、過度に強い熱効果、特に熱による組織損傷につながり得る、過度に強いプラズマの生成を回避することができる。
【0082】
しかし、点火電圧は、組織21までの距離に依存し、それとは別に、例えば、電極15の特性(例えば、形状および/または材料)、使用ガス、組織の特性、および環境にも依存する。距離依存性は、RFデバイス11の平均出力電圧が、同じエフェクトステージ1における組織21からの電極先端17aの距離に依存することを意味する。例えば、RFデバイス11の平均出力有効電力は、3mmの距離で約1.5ワット、12mmの距離で約5ワットである、別個のエフェクトステージ、例えばエフェクトステージ1の量を有することができる。これは、均一な組織効果を達成するために、ユーザが器具先端28を組織21上で可能な限り常に同じ距離で一定の速度で誘導することに関して特定の要件を課す。その理由は、組織21上を移動する間、低周波数による変調により、電極先端17aから組織21までの潜在的に異なる距離において低周波数の各パルスパケット41の開始時に繰り返し点火されることになるためである。
【0083】
したがって、本発明によれば、出力電力、例えばRFデバイスの出力有効電力または出力皮相電力のフィードバック制御のためのデバイス42を備えるシステム10が提案されている(これは、図7によっても示されている)。システム10は、システムVIO3の説明に関連して上記で示すように、ピーク出力電圧の低減のための制御を有することができる。
【0084】
このために、デバイス42は、出力有効電力を決定するためのユニットを備える。例えば、デバイスは、電源33の出力電力を決定し、かつRF発生器30の既知の効率に基づいてRF発生器30の出力有効電力を決定するように構成され得る。代替として、または加えて、デバイス42は、図7に示すように、第1の検出デバイス34によってRF発生器30の出力電圧を決定し、第2の検出デバイス35によってRF発生器30の出力電流を決定するように構成され得る。信号評価デバイス36によって、デバイス42は、第1の検出デバイス34および第2の検出デバイス35の測定値からRF発生器30の出力電力を決定するように構成され得る。
【0085】
出力電力の決定および変調の調整は、連続的に、または均一もしくは不均一な周期で実施され得る。出力電力は、1つまたは複数の周期、例えば1つまたは複数の中周波数周期および/または低周波数周期にわたって互いに位相関係にある電圧および電流の積を平均することによって決定され得る。次に、出力電力の決定は、好ましくは、次のパルス休止、特に低周波数のパルス休止PPNFまたは中周波数のパルス休止PPMFで実施される。決定は、例えば、低周波数のパルス休止PPNFにおいて定期的に実施され得る。特に、出力電力は、低周波数パルスパケットが終了するまでの1つまたは複数の中周波数周期にわたって平均化することができ、したがって、出力電力の平均値は、低周波数パルスパケットの終了後の出力電力の実際の値として決定され得る。
【0086】
デバイス42は、比較デバイス37によって、決定された出力電力(実際の値)、例えば出力有効電力を、例えば出力有効電力のための出力電力の所望の値と比較するように構成することができ、実際の値が所望の値からの偏差を有する場合、実際の値を所望の値に近づけるために制御デバイス31によって1つまたは複数の変更を実施するように構成され得る。
【0087】
加えて、または代替として、制御目的で、所望の値から実際の値の決定された偏差に応じてRF発生器30の出力電圧のピーク値を変更することが基本的に可能である。しかし、これは、実現するのが難しいだけである低周波数の非常に短いパルスパッケージ41の場合、高い制御速度を必要とする。さらに、ピーク電圧が低下すると、点火挙動は著しく低下し得る。したがって、制御のために出力電圧のピーク値を変更することは好ましくなく、出力電力、特に出力有効電力の所望の値からの実際の値の偏差に依存するRF周波数の変調が、その代わりに変更される。基本的に、出力電圧のピーク値が最小値を超えるように変更され、それに加えてまたは代替として、変調が変更される制御が、代替として可能である。
【0088】
諸実施形態では、低周波数のパルスパケットにおける出力電力の実際の値の検出および変調の適応は、変調の適応による電力フィードバック制御によって非常に迅速に可能であり、それにより、出力電力の所望の値は、低周波数の同じパルスパケット内、または最初の後続のパルスパケット内またはその開始時に達成される。変調の変更は、特に、低周波数変調および/または中周波数変調を含むことができる。例えば、低周波数パルスパッケージ41のパルス休止比は、パルス持続時間TPulsNFの変更、休止持続時間TPauseNFの変更、および/または低周波数周期の変更によって変更され得る。代替として、または加えて、中周波数パルス40のパルス休止比は、パルス持続時間TPulsMFの変更、休止持続時間TPauseMFの変更、および/または中周波数周期の変更によって変更され得る。
【0089】
システム10が出力電力、例えば出力有効電力のフィードバック制御のためのデバイス42を有すると、RF発生器の一定の出力電力を有するプラズマ19を点火条件、特に組織21までの距離とは無関係に生成することができ、それによって、例えば、図3および4に示すように、効果的な非熱治療のための器具14の誘導を著しく単純化する。出力電力のフィードバック制御のためのデバイス42またはそれによって生成されたプラズマ19を備えたシステム10は、有利には、上記で言及した疾患の1つまたは複数の治療に特に有利に使用され得る。一般に、デバイス42に関連して説明するような電力フィードバック制御を備えたシステム10は、距離に依存しない再現可能な組織効果が望まれるあらゆる場所で有利に使用され得る。電力フィードバック制御により、組織の効果を特に敏感に調節することができる。使用分野は、例えば、創傷組織の熱的損傷を回避しなければならない非熱的創傷治療であることができる。
【0090】
本発明によれば、特にプラズマ19は、例えばヒトパピローマウイルスに対する、抗ウイルス療法による上皮内新生物の予防のために、あらゆるグレードの重症度の上皮内新生物、例えば上皮内癌腫の病変の治療のために、および/または上皮的に到達可能な浸潤癌腫の治療のために生成され、プラズマは、プラズマ19、好ましくはアルゴンプラズマの生成のためのシステム10によって生成され、このシステムは、プラズマ19とガルバニック接触する少なくとも1つの電極15を備えた医療器具14と、器具14への電力の供給のために交流電圧を提供するためのRFデバイス11と、ガス、特にアルゴンを器具14に供給するように調整されるガス供給デバイス13とを有する。
【符号の説明】
【0091】
10 システム
11 RFデバイス
12 中性電極
13 ガス供給デバイス
14 医療器具
15 電極、第1の電極
16 ガスチャネル
17a 電極の遠位端
17b 電極シャンク
18 体
19 プラズマ
20 ガス流量
21 組織の場所/培地
22 第2の電極
23 毛細管
25 種
26 膣
27 子宮頸部
28 器具先端
29 矢印
30 RF発生器
31 制御デバイス
32 変調デバイス
33 電源
34 第1の検出デバイス
35 第2の検出デバイス
36 信号評価デバイス
37 比較デバイス
38 負荷インピーダンス
40 中周波数パルス
41 低周波数パルスパッケージ
42 デバイス
TPulsMF 中周波数パルス持続時間
TPulsNF 低周波数パルス持続時間
MFP 中周波数周期
PPNF 低周波数パルス休止
PPMF 中周波数パルス休止
TPauseNF 低周波数休止持続時間
TPauseMF 中周波数休止持続時間
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b