(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】屈曲構造体及び通電デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240619BHJP
B25J 18/06 20060101ALI20240619BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A61B18/14
B25J18/06
B25J19/00 E
(21)【出願番号】P 2021029086
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】保戸田 裕樹
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-26019(JP,A)
【文献】特開2017-80142(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2777561(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
B25J 18/06
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性的に屈曲及び伸展が可能な内コイル部及び外コイル部を有し前記外コイル部の隣接巻部間の隙間に前記内コイル部の対応する巻部が嵌合した屈曲部を備え、
前記内外コイル部の少なくとも一方が、導電性を有し通電経路を構成
し、
前記通電経路を構成する内外コイル部の少なくとも一方の端部に接続された導電性の端部部材を備え、
前記端部部材は、前記内外コイル部の少なくとも一方と共に前記通電経路を構成する、
屈曲構造体。
【請求項2】
弾性的に屈曲及び伸展が可能な内コイル部及び外コイル部を有し前記外コイル部の隣接巻部間の隙間に前記内コイル部の対応する巻部が嵌合した屈曲部を備え、
前記内外コイル部の少なくとも一方が、導電性を有し通電経路を構成し、
前記内コイル部の内側に、導電性の可撓部材を備え、
前記可撓部材が、前記通電経路を構成する内外コイル部の少なくとも一方に対して絶縁されて他の通電経路を構成する、
屈曲構造体。
【請求項3】
弾性的に屈曲及び伸展が可能な内コイル部及び外コイル部を有し前記外コイル部の隣接巻部間の隙間に前記内コイル部の対応する巻部が嵌合した屈曲部を備え、
前記内外コイル部の少なくとも一方が、導電性を有し通電経路を構成し、
前記外コイル部の外側に、導電性の索状部材を備え、
前記索状部材は、前記通電経路を構成する内外コイル部の少なくとも一方に対して絶縁されて他の通電経路を構成する、
屈曲構造体。
【請求項4】
請求項
2又は3記載の屈曲構造体であって、
前記通電経路を構成する内外コイル部の少なくとも一方の端部に接続された導電性の端部部材を備え、
前記端部部材は、前記内外コイル部の少なくとも一方と共に前記通電経路を構成する、
屈曲構造体。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の屈曲構造体であって、
前記内外コイル部の双方が、導電性を有し前記通電経路を構成する、
屈曲構造体。
【請求項6】
弾性的に屈曲及び伸展が可能な内コイル部及び外コイル部を有し前記外コイル部の隣接巻部間の隙間に前記内コイル部の対応する巻部が嵌合した屈曲部を備え、
前記内外コイル部の少なくとも一方が、導電性を有し通電経路を構成し、
前記内外コイル部の双方が導電性を有し、
前記内外コイル部間が絶縁されて、前記内外コイル部の一方により前記通電経路を構成し、前記内外コイル部の他方により他の通電経路を構成する、
屈曲構造体。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の屈曲構造体を用いた通電デバイスであって、
前記導電性を有する内外コイル部の少なくとも一方で構成された前記通電経路に接続された導電性の電極部材を有する、
通電デバイス。
【請求項8】
請求項
3又は5記載の屈曲構造体を用いた通電デバイスであって、
前記通電経路の一方に接続された導電性の第1電極部材と、
前記通電経路の他方に接続された導電性の第2電極部材と、
前記第1電極部材及び第2電極部材間に設けられた絶縁部材とを備えた、
通電デバイス。
【請求項9】
請求項8記載の通電デバイスであって、
前記第1電極部材及び第2電極部材は、狭持動作を行う鉗子部材である、
通電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットやマニピュレーター等の関節機能を実現する屈曲構造体及び通電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット、マニピュレーター、或いはアクチュエーター等の関節機能を実現する屈曲構造体には、適用される機器に応じて通電機能が要求されることがある。
【0003】
このような通電機能を有する屈曲構造体としては、例えば、特許文献1に記載の湾曲部がある。この湾曲部は、医療用マニピュレーターに適用された屈曲構造体であり、シャフトに対してエンドエフェクタを支持している。
【0004】
湾曲部の軸心部には、導線が挿通され、導線は、エンドエフェクタを機械的に駆動するためのケーブルとして機能すると共にエンドエフェクタへの通電を可能としている。
【0005】
しかし、かかる構造では、エンドエフェクタまで導線を挿通する必要があり、屈曲構造体の細径化が困難となっていた。
【0006】
こうした問題は、広く通電機能が要求される屈曲構造体に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、通電機能が要求される屈曲構造体の細径化に限界があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、弾性的に屈曲及び伸展が可能な内コイル部及び外コイル部を有し前記外コイル部の隣接巻部間の隙間に前記内コイル部の対応する巻部が嵌合した屈曲部を備え、前記内外コイル部の少なくとも一方が、導電性を有し通電経路を構成し、前記通電経路を構成する内外コイル部の少なくとも一方の端部に接続された導電性の端部部材を備え、前記端部部材は、前記内外コイル部の少なくとも一方と共に前記通電経路を構成する、ことを屈曲構造体の最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、屈曲部により、別途の導線等を設けることなく通電経路を安定して構成することができ、屈曲構造体の細径化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1に係る屈曲構造体を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の屈曲構造体の一部を断面にした斜視断面図である。
【
図3】
図3(A)及び(B)は、
図2の屈曲構造体の内筒を示す断面図であり、
図3(A)は平常時、
図3(B)は屈曲時である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例2に係り、屈曲構造体を適用した通電デバイスを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4の通電デバイスのエンドエフェクタ周辺を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
通電機能が要求される屈曲構造体の細径化を図るという目的を、弾性的に屈曲及び伸展が可能な内コイル部及び外コイル部を有し外コイル部の隣接巻部間の隙間に内コイル部の対応する巻部が嵌合した二重コイルの屈曲部を利用して通電経路を構成することにより実現した。
【0013】
すなわち、屈曲構造体(1)は、内コイル部(13)及び外コイル部(15)を有する屈曲部(9)を備える。内外コイル部(13,15)は、弾性的に屈曲及び伸展が可能であり、外コイル部(15)の隣接巻部(15a)間の隙間(15b)に内コイル部(13)の対応する巻部(13a)が嵌合する。内外コイル部(13、15)の少なくとも一方は、導電性を有し通電経路(P1)を構成する。
【0014】
内外コイル部(13,15)の一方又は双方が、導電性を有し通電経路(P1)を構成してもよい。また、内外コイル部(13,15)の双方が導電性を有している場合、内外コイル部(13,15)間を絶縁して内外コイル部(13,15)の一方のみで通電経路(P1)を構成してもよい。
【0015】
内外コイル部(13,15)の双方が導電性を有し、内外コイル部(13,15)間を絶縁する場合は、内外コイル部(13,15)の一方により通電経路(P1)を構成し、内外コイル部(13,15)の他方により他の通電経路を構成してもよい。
【0016】
屈曲構造体(1)は、通電経路(P1)を構成する内外コイル部(13,15)の少なくとも一方の端部に接続された導電性の端部部材(7)を備え、端部部材(7)は、内外コイル部(13,15)の少なくとも一方と共に通電経路(P1)を構成してもよい。
【0017】
内コイル部(13)の内側に、導電性の可撓部材(11)を備えてもよい。この場合、可撓部材(11)が、通電経路(P1)を構成する内外コイル部(13,15)の少なくとも一方に対して絶縁されて他の通電経路(P2)を構成してもよい。
【0018】
ここで、通電経路(P1)を構成する内外コイル部(13,15)の少なくとも一方とは、内外コイル部(13,15)の何れか一方が導電性を有する場合、その導電性を有する内外コイル部(13,15)の一方を意味する。また、内外コイル部(13,15)の双方が導電性を有する場合、通電経路(P1)を構成する内外コイル部(13,15)の少なくとも一方は、内外コイル部(13,15)の双方が通電経路(P1)を構成していれば、それら内外コイル部(13,15)の双方であり、内外コイル部(13,15)間が絶縁されて内外コイル部(13,15)の一方のみが通電経路(P1)を構成していれば、その内外コイル部(13,15)の一方のみを意味する(以下、同じ。)。
【0019】
外コイル部(15)の外側に、導電性の索状部材(21)を備えてもよい。この場合、索状部材(21)は、通電経路(P1)を構成する内外コイル部(13,15)の少なくとも一方に対して絶縁されて他の通電経路(P2)を構成してもよい。
【0020】
かかる屈曲構造体(1)を用いた通電デバイス(25)は、導電性を有する内外コイル部(13,15)の少なくとも一方で構成された通電経路(P1)に接続された導電性の電極部材(31a,31b)を有する。
【0021】
通電デバイス(25)は、通電経路(P1,P2)の一方に接続された導電性の第1電極部材(31a)と、通電経路(P1,P2)の他方に接続された導電性の第2電極部材(31b)と、第1電極部材(31a)及び第2電極部材(31b)間に設けられた絶縁部材(33)とを備えた構成としてもよい。
【0022】
この通電デバイス(25)では、第1電極部材(31a)及び第2電極部材(31b)を、狭持動作を行う鉗子部材としてもよい。
【実施例1】
【0023】
[屈曲構造体]
図1は、本発明の実施例1に係る屈曲構造体を示す斜視図である。
図2は、屈曲構造体の一部を断面にした斜視断面図である。
図3(A)及び(B)は、屈曲構造体の内筒を示す断面図であり、
図3(A)は平常時、
図3(B)は屈曲時である。
【0024】
屈曲構造体1は、マニピュレーター、ロボット、アクチュエーターのような医療用や産業用等の各種機器の通電機能が要求される関節機能部に適用されるものである。関節機能部は、屈曲・伸展する関節としての機能を有する装置、機構、デバイス等である。
【0025】
この屈曲構造体1は、弾性的に屈曲及び伸展が可能であり、軸方向の一端から他端へ至る通電経路P1を有している。なお、軸方向とは、屈曲構造体1の軸心に沿った方向を意味し、厳密に軸心に平行な方向の他、僅かに傾斜した方向も含まれる。
【0026】
本実施例の屈曲構造体1は、端部部材としての基部5及び可動部7と、屈曲部9と、可撓部材11とを備えている。
【0027】
基部5は、金属や樹脂等で形成された柱状体、例えば円柱状体からなる。この基部5は、マニピュレーターのシャフトの端部等に取り付けられる。なお、基部5は、柱状体に限られず、屈曲構造体1が適用される機器に応じて適宜の形態とする。
【0028】
可動部7は、基部5と同様、柱状体、例えば円柱状体からなる。可動部7には、屈曲構造体1が適用される機器に応じたエンドエフェクタ等が取り付けられる。
【0029】
本実施例の可動部7は導電性を有している。導電性を有する可動部7の材質は、金属、導電性樹脂等のように材料自体が導電性を有するものの他、導電性を有しない樹脂等の材料に導電性コーティングを形成したもの等とすることが可能である。
【0030】
なお、可動部7は、導電性を有しない構成としてもよい。また、可動部7も、屈曲構造体1が適用される機器に応じて適宜の形態とされ、柱状体に限られるものではない。
【0031】
かかる可動部7は、屈曲部9によって軸方向に対して変位可能に基部5に支持されている。
【0032】
屈曲部9は、屈曲構造体1の軸方向に沿って配置された内筒9a及び外筒9bからなる。内筒9aは、軸方向に対して弾性的に屈曲及び伸展が可能な二重コイルであり、内コイル部13及び外コイル部15からなる。従って、屈曲部9(内筒9a)は、屈曲時において、屈曲の内側で外コイル部15の隙間が小さくなり、屈曲の外側で外コイル部15の隙間が大きくなる。これによって、内筒9aは、外コイル部15の軸心における長さが直状時と比較して変化しない。従って、内筒9aは、その内周側に可撓部材11を軸方向で移動可能にガイドするように用いる場合、可撓部材11の移動量を確実に一定に保つことができる。
【0033】
内外コイル部13及び15は、それぞれ軸方向に対して屈曲可能な弾性を有するコイルばねである。内外コイル部13及び15の少なくとも一方は、導電性を有し、通電経路P1を構成する。
【0034】
本実施例では、内外コイル部13及び15の双方が、導電性を有し、通電経路P1を構成している。通電経路P1は、通電が必要なエンドエフェクタ等の機器に対するものである。
【0035】
なお、内外コイル部13及び15の双方が導電性を有する場合は、内外コイル部13及び15間が絶縁され、内外コイル部13及び15の一方により通電経路P1を構成し、内外コイル部13及び15の他方により他の通電経路を構成してもよい。内外コイル部13及び15間の絶縁は、内外コイル部13及び15の何れか一方に絶縁被覆を設けることで行うことが可能である。
【0036】
かかる通電経路P1は、屈曲可能な弾性を有する屈曲部9の内外コイル部13及び15を利用しているため、屈曲構造体1の屈曲部9が屈曲・伸展を繰り返しても、導線のように損傷するおそれはない。
【0037】
本実施例の内外コイル部13及び15は、基部5を軸方向に貫通すると共に先端部が可動部7の凹部7a内に嵌合している。なお、凹部7a内への嵌合は、内外コイル部13及び15の端部が凹部7a内に軸方向で突き当てられると共に外コイル部15の外周が凹部7aの内周に径方向で当接することで行われている。
【0038】
従って、可動部7は、内外コイル部13及び15に電気的に接続され、内外コイル部13及び15と共に通電経路P1を構成している。この通電経路P1は、屈曲構造体1の軸方向の一端から他端に至っている。
【0039】
なお、可動部7が導電性を有さない場合は、可動部7を軸方向に貫通する導電体を設け、この導電体を導電性の内外コイル部13及び15の少なくとも一方に接続すればよい。
【0040】
導電性の内外コイル部13及び15の材質は、可動部7と同様の導電性材質であればよい。なお、内外コイル部13及び15の一方が導電性を有しない場合は、内外コイル部13及び15の一方を樹脂等の非導電性材質で形成すればよい。
【0041】
内外コイル部13及び15の素線の断面形状は、同一の線径を有する円形となっているが、半円や楕円等とすることも可能である。内外コイル部13及び15の断面形状や線径等は相互に異なってもよい。
【0042】
内コイル部13は、外コイル部15よりも小さい中心径を有し、外コイル部15内に螺合されている。内外コイル部13及び15の中心径は、軸方向の一端から他端に至るまで一定となっている。ただし、この外コイル部15の中心径は、軸方向で変化させることも可能である。
【0043】
外コイル部15は、軸方向で隣接する巻部15a(隣接巻部15a)間を軸方向で離間させた複数の隙間であるピッチ15bを有している。この複数のピッチ15bには、内コイル部13の対応する巻部13aが内側から嵌合している。この嵌合により、内コイル部13の巻部13aは、隣接する外コイル部15の巻部15aの双方に接触する。
【0044】
一方、内コイル部13は、軸方向で隣接する巻部13a間(隣接巻部13a間)を軸方向で離間させた複数の隙間としてのピッチ13bを有している。この複数のピッチ13bには、外コイル部15の対応する巻部15aが外側から嵌合している。この嵌合により、外コイル部15の巻部15aは、隣接する内コイル部13の巻部13aの双方に接触する。
【0045】
かかる構成により、内筒9aは、軸方向の圧縮が規制されていると共に内外コイル部13及び15間での通電経路P1を安定させ且つ接触抵抗を減少させている。
【0046】
外筒9bは、内筒9aと同心に配置され、内筒9aの外周を覆う筒体である。本実施例の外筒9bは、複数のウェーブワッシャー17を軸方向で積層して構成されている。軸方向で隣接するウェーブワッシャー17は、相互間が接合されている。この外筒9bは、ウェーブワッシャー17の弾性変形により屈曲可能となっている。
【0047】
各ウェーブワッシャー17は、導電性又は非導電性材質によって閉環状に形成されている。軸方向で隣接するウェーブワッシャー17間では、一方のウェーブワッシャー17の山部17aが他方のウェーブワッシャー17の谷部17bに当接し、これら当接する山部17a及び谷部17b間が溶接や接着等の適宜の手段によって接合されている。
【0048】
外筒9bの軸方向の両端部には、ウェーブワッシャー17よりも変形量が小さい複数の平ワッシャー19が取り付けられている。この平ワッシャー19を介し、外筒9bの両端部には、基部5及び可動部7が結合されている。この結合は、溶接等の適宜の手段によって行われている。なお、平ワッシャー19は省略することも可能である。
【0049】
かかる外筒9bには、各ウェーブワッシャー17の山部17aと谷部17bとの間及びこれに対応する平ワッシャー19の部位において、軸方向に連通する挿通孔17c,19aが設けられている。本実施例の挿通孔17c,19aは、周方向で90度毎に設けられている。なお、挿通孔17c,19aは、周方向で60度毎、120度毎、180度毎等のように数を変更することが可能である。
【0050】
挿通孔17c,19aは、駆動ワイヤー21を軸方向に挿通する。これにより、外筒9bは、駆動ワイヤー21を内筒9aの外コイル部15の外側で所定位置に保持するガイドとして機能する。
【0051】
なお、外筒9bは、ウェーブワッシャー17を積層したものに限られず、他の可撓性部材によって構成することが可能である。例えば、外筒9bは、断面波形状の管体からなるベローズや内筒9aと同様の二重コイルによって構成すること等が可能である。
【0052】
駆動ワイヤー21は、屈曲構造体1の軸方向に沿った索状部材である。なお、索状部材としては、ワイヤーに限られず、撚り線、単線、ピアノ線、多関節ロッド、鎖、紐、糸、縄等とすることが可能である。
【0053】
駆動ワイヤー21の断面形状は、外筒9bの挿通孔17c,19aと同様の円形とする他、楕円形や矩形等の異なる形状としてもよい。
【0054】
この駆動ワイヤー21は、導電性又は非導電性材質で形成することができる。何れにしても、駆動ワイヤー21は、屈曲構造体1の屈曲及び伸展を妨げない程度の柔軟性を有している。
【0055】
駆動ワイヤー21を導電性材質で形成した場合は、導電性を有する内外コイル部13及び15に対して駆動ワイヤー21を絶縁すれば、駆動ワイヤー21により他の通電経路P2を構成することが可能である。
【0056】
内外コイル部13及び15に対する駆動ワイヤー21の絶縁は、例えば、駆動ワイヤー21自体を絶縁体で被覆することや、可動部7を非導電性材質で形成すると共に内筒9aの外コイル部15の外側を絶縁体で被覆し又は外コイル部15を非導電性材質とすること等で実現できる。
【0057】
駆動ワイヤー21の先端部は、可動部7に設けられた接続孔7b内に位置し、端部処理等によって可動部7に係合することで抜け止めされている。駆動ワイヤー21の基端部は、直接又は間接的に図示しない操作機構に接続されている。
【0058】
この駆動ワイヤー21は、軸方向に操作されることで、基部5に対して可動部7を駆動可能とする。具体的には、駆動ワイヤー21が軸方向に引かれることによって、可動部7を駆動して屈曲構造体1を屈曲させる。駆動ワイヤー21の数は、屈曲構造体1の要求される屈曲動作に応じて適宜設定することが可能である。
【0059】
可撓部材11は、屈曲構造体1が適用される機器に応じたプッシュプルケーブルやエアチューブからなる駆動部材、或いはその他の可撓性を有する長尺状の部材である。本実施例において、可撓部材11は、プッシュプルケーブルとなっている。
【0060】
可撓部材11は、内筒9aの内コイル部13の内側に備えられている。この可撓部材11は、導電性又は非導電性材質で形成することができ、屈曲構造体1の屈曲及び伸展を妨げない程度の柔軟性を有している。
【0061】
可撓部材11を導電性材質で形成する場合は、可撓部材11が、導電性を有する内外コイル部13及び15に対して絶縁されて他の通電経路P2を構成することができる。
【0062】
なお、通電経路P2は、可撓部材11又は駆動ワイヤー21の何れか一方で択一的に構成すればよい。また、可撓部材11及び駆動ワイヤー21の双方を通電経路とし、3つ以上の導電経路を設けてもよい。また、通電経路P2は、可撓部材11及び駆動ワイヤー21以外の他の部材によって構成してもよい。さらに、例えば、モノポーラ式の通電が必要なエンドエフェクタ等の場合は、通電経路P2を省略可能である。
【0063】
内外コイル部13及び15に対する可撓部材11の絶縁は、可撓チューブ23により行われる。
【0064】
可撓チューブ23は、絶縁性を有する樹脂等によって形成された筒状部材であり、屈曲構造体1の屈曲及び伸展を妨げない程度の柔軟性を有している。この可撓チューブ23は、内筒9aの内コイル部13内を挿通し、内コイル部13と可撓部材11との間に介在している。
【0065】
なお、内外コイル部13及び15に対する可撓部材11の絶縁は、内コイル部13を絶縁性材質とすることで行ってもよい。また、機器によっては、可撓部材11及び可撓チューブ23の何れか一方又は双方を省略することも可能である。
【0066】
[動作等]
本実施例の屈曲構造体1は、
図3(A)のように、屈曲していない直状時(伸展時)において、内筒9aの外コイル部15の隣接巻部15a間に内コイル部13の対応する巻部13aが嵌合している。
【0067】
このため、屈曲構造体1は、軸方向での圧縮力が作用しても、内筒9aの内外コイル部13及び15が圧縮されないので、中心部の長さを維持することができ、姿勢が安定する。
【0068】
このとき、通電経路P1は、内筒9aの隣接する外コイル部15の巻部15aと内コイル部13の巻部13aが接触することで、内外コイル部13及び15の巻方向並びに軸方向に形成される。
【0069】
形成された導電経路P1は、屈曲構造体1の姿勢に応じて、過度な変形等がなく安定する。また、外コイル部15の巻部15aと内コイル部13の巻部13aとの接触圧力に応じて、通電経路P1は、接触抵抗が減少して、電気的にも安定する。
【0070】
この屈曲構造体1では、操作者が何れか一つ又は複数の駆動ワイヤー21を引き、屈曲構造体1が適用された機器のエンドエフェクタ等を所望の方向に指向させることができる。
【0071】
駆動ワイヤー21が引かれると、
図3(B)のように、屈曲の内側では、内筒9aの外コイル部15の隣接巻部15a間のピッチ15bが小さくなり、屈曲の外側では、内筒9aの外コイル部15の隣接巻部15a間のピッチ15bが大きくなる。一方、内筒9aの中心部の長さは変わらず、つまり外コイル部15の軸心における長さが直状時と比較して変化せず、屈曲構造体1の姿勢が安定する。
【0072】
なお、外筒9bは、ウェーブワッシャー17が弾性変形することで内筒9aと共に屈曲する。
【0073】
内筒9aが屈曲する際は、内筒9aの内コイル部13が屈曲の外側へ向けて押し出される。この内コイル部13の押出しは、屈曲の外側で内筒9aの外コイル部15の隣接巻部15a間の大きくなったピッチ15bにより許容される。このため、円滑に屈曲動作を行わせることができる。
【0074】
しかも、屈曲時には、内筒9aの外コイル部15の隣接巻部15a間に内コイル部13の対応する巻部13aが嵌合し続けている。
【0075】
このため、直状時と同様に、屈曲構造体1は、軸方向の圧縮が抑制され、中心部の長さが変動することを抑制できる。
【0076】
結果として、屈曲時も、内筒9aの隣接する外コイル部15の巻部15aと内コイル部13の巻部13aが接触することで通電経路P1が安定して確実に形成される。
【0077】
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例の屈曲構造体1は、弾性的に屈曲及び伸展が可能な内コイル部13及び外コイル部15を有し、外コイル部15の隣接巻部15a間の隙間に内コイル部13の対応する巻部13aが嵌合した屈曲部9を備え、内外コイル部13及び15の少なくとも一方が、導電性を有し通電経路P1を構成する。
【0078】
従って、屈曲構造体1では、屈曲部9により、別途の導線等を設けることなく通電経路P1を安定して構成することができ、細径化を図ることが可能となる。加えて、屈曲構造体1では、構造の簡素化を図ることができる。
【0079】
また、屈曲部9の内外コイル部13及び15の少なくとも一方で通電経路P1を構成することで、別途の導線等を用いた場合と比較して屈曲・伸展の繰り返しによる通電経路P1の損傷を抑制できる。また、屈曲部9は、屈曲前後及び屈曲中の圧縮が抑制され、過度な変形等がなく、通電経路P1を安定して構成できる。
【0080】
また、本実施例では、内外コイル部13及び15の双方が、導電性を有し通電経路P1を構成する。
【0081】
従って、通電経路P1は、内筒9aの隣接する外コイル部15の巻部15aと内コイル部13の巻部13aが接触することで内外コイル部13及び15の巻方向だけでなく軸方向に形成できる。この通電経路P1は、外コイル部15の巻部15aと内コイル部13の巻部13aとの接触圧力に応じ、電気的に安定させることができる。
【0082】
また、屈曲構造体1は、導電性を有する内外コイル部13及び15の一方の端部に接続された導電性の端部部材である可動部7を備え、可動部7は、内外コイル部13及び15と共に通電経路P1を構成する。
【0083】
従って、可動部7をエンドエフェクタ等に対する屈曲構造体1の端子や電極として用いることができ、構造を簡素化することができる。
【0084】
内コイル部13の内側に、導電性の可撓部材11を備えており、可撓部材11が、通電経路P1を構成する内外コイル部13及び15に対して絶縁されれば他の通電経路P2を構成することができる。
【0085】
従って、プッシュプルケーブル等の可撓部材11を利用して通電経路P2を構成することができる。この場合、他の通電経路P2を屈曲の影響が少ない内コイル部13の内側に形成することができる。
【0086】
さらに、通電経路P2は、内外コイル部13及び15の少なくとも一方からなる通電経路P1とは分離して設けられているため、従来のような分岐の必要がない。
【0087】
結果として、通電経路P1及びP2を有していても、構造の簡素化を図ることができる。さらに、通電経路P2は、単一の通電経路P2を構成すればよいので、内コイル部13の内側での太さが必要以上に太くならず、曲げ半径が大きくなることを抑制できる。
【0088】
本実施例では、外コイル部15の外側に導電性の索状部材である駆動ワイヤー21を備えており、駆動ワイヤー21を通電経路P1を構成する内外コイル部13及び15に対して絶縁すれば他の通電経路P2を構成できる。
【0089】
この場合は、駆動ワイヤー21を利用して他の通電経路P2を形成することができ、従来のような分岐も必要ない。また、駆動ワイヤー21は、プッシュプルケーブル等と比較して大幅に細いため、より確実に曲げ半径が大きくなることが抑制できる。
【実施例2】
【0090】
図4は、本発明の実施例2に係り、屈曲構造体を適用した通電デバイスを示す斜視図である。
図5は、通電デバイスのエンドエフェクタ周辺を示す拡大斜視図、
図6は、
図5の切断面VIでの断面図である。なお、実施例2では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0091】
本実施例では、実施例1の屈曲構造体1を適用して通電デバイス25を構成している。通電デバイス25は、医療用のマニピュレーターであるが、これに限られるものではない。
【0092】
この通電デバイス25は、シャフト27に対してエンドエフェクタ29を屈曲構造体1によって支持している。
【0093】
シャフト27は、金属等によって中空筒状、例えば円筒状に形成されている。シャフト27の先端には、屈曲構造体1が取り付けられている。このシャフト27は、屈曲構造体1を支持するベースとして機能している。なお、屈曲構造体1を支持するベースは、屈曲構造体1が適用される機器に応じ、シャフト27に代えて適宜の部材を用いればよい。
【0094】
エンドエフェクタ29は、本実施例においてバイポーラ式の鉗子である。ただし、エンドエフェクタ29は、鉗子に限られず、バイポーラ式のハサミや電気メス等とすることも可能である。なお、エンドエフェクタ29をモノポーラ式の電気メス等としてもよい。
【0095】
このエンドエフェクタ29は、第1電極部及び第2電極部材としての鉗子部材31a及び31bと、絶縁部材33とを備えて構成されている。
【0096】
鉗子部材31a及び31bは、開閉によって狭持動作を行うものである。これら鉗子部材31a及び31bは、導電性材質からなり、それぞれ通電経路P1及びP2に接続されている。なお、鉗子部材31a及び31bの接続先は、上記とは逆に、それぞれ通電経路P2及びP1としてもよい。なお、本実施例の通電経路P2は、可撓部材11によって構成されている。
【0097】
一方の鉗子部材31aは、屈曲構造体1の可動部7に基端部が支持され、通電経路P1に接続されている。この鉗子部材31aは、固定して用いられる。他方の鉗子部材31bは、可撓部材11の先端に結合され、通電経路P2に接続されている。鉗子部材31bは、鉗子部材31aの基端部に対し絶縁部材33により軸支されており、可撓部材11の進退移動によって鉗子部材31aに対して狭持動作を行うようになっている。
【0098】
絶縁部材33は、絶縁材質の断面扇形の柱状体である。この絶縁部材33は、鉗子部材31aの基端部に取り付けられている。絶縁部材33の内部は、中空状であり、可撓部材11及び可撓チューブ23の先端が収容されている。可撓部材11の先端は、絶縁部材33内で鉗子部材31bに結合されている。
【0099】
かかる実施例2では、バイポーラ式の通電デバイス25の構造の簡素化を実現できる。
【0100】
また、通電デバイス25をモノポーラ式とする場合は、通電経路P1のみで対応でき、通電経路P2を要さず、構造を簡素化できる。
【0101】
その他、実施例2においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 屈曲構造体
9 屈曲部
11 可撓部材
13 内コイル部
13a 巻部
13b ピッチ(隙間)
15 外コイル部
15a 巻部
15b ピッチ(隙間)
21 駆動ワイヤー(索状部材)
P1,P2 通電経路
25 通電デバイス
31a、31b 鉗子部材(電極部材)
33 絶縁部材