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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240619BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240619BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240619BHJP
   H01L 21/322 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/78 652K
H01L29/78 653A
H01L29/78 652S
H01L29/06 301M
H01L29/78 658H
H01L29/78 658A
H01L21/322 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021049759
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148177
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩朗
(72)【発明者】
【氏名】藤農 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】冨田 幸太
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-130002(JP,A)
【文献】特開2021-027229(JP,A)
【文献】特開2012-204395(JP,A)
【文献】特開2011-054813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/322、21/336、
29/06、29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極と、
下部電極と、
前記上部電極と前記下部電極との間に位置し、前記下部電極に接する第1導電型のシリコン基板と、
前記シリコン基板と前記上部電極との間に位置するシリコン層であって、セル領域と、側面と、前記セル領域と前記側面との間に位置する終端領域とを有するシリコン層と、
前記シリコン層の前記セル領域に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極と前記シリコン層との間に設けられたゲート絶縁膜と、
前記シリコン層の前記終端領域に埋め込まれ、前記シリコン層に接し、前記シリコン層よりも結晶グレイン密度が高い多結晶シリコン部であって、重金属を含み、電気的にフローティングである多結晶シリコン部と、を備え、
前記シリコン層は、前記セル領域及び前記終端領域に設けられ、前記シリコン基板よりも第1導電型不純物濃度が低く、前記多結晶シリコン部に含まれる重金属と同じ種類の重金属を含む第1導電型のドリフト層と、前記セル領域の前記ドリフト層上に設けられ、前記上部電極に接する第2導電型のベース層と、前記ベース層上に設けられ、前記上部電極に接し、前記ドリフト層よりも第1導電型不純物濃度が高い第1導電型のソース層とを有し、
前記終端領域は、前記上部電極に接する前記ベース層、前記上部電極に接する前記ソース層、及び前記ゲート電極を含まない半導体装置。
【請求項2】
前記多結晶シリコン部は、前記セル領域を連続して囲んでいる請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁膜は、前記セル領域の前記シリコン層内に埋め込まれた構造部内に設けられ、
前記多結晶シリコン部と前記下部電極との間の距離は、前記構造部と前記下部電極との間の距離よりも短い請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記構造部は、前記上部電極または前記ゲート電極と電気的に接続されたフィールドプレート電極をさらに含み、
前記フィールドプレート電極は、前記ゲート電極と前記シリコン基板との間にある請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記シリコン層は、前記ドリフト層と前記多結晶シリコン部との間に設けられ、前記ドリフト層よりも第1導電型不純物濃度が高い第1導電型のチャネルストッパをさらに有する請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記セル領域の前記ドリフト層内の重金属濃度、及び前記セル領域と前記多結晶シリコン部との間の領域の前記ドリフト層内の重金属濃度は、前記多結晶シリコン部と前記側面との間の領域の前記ドリフト層内の重金属濃度よりも高い請求項1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記重金属は、PtまたはAuである請求項1~6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記多結晶シリコン部は、第1の多結晶シリコン部と、前記第1の多結晶シリコン部と前記側面との間に位置する第2の多結晶シリコン部とを有する請求項1~7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁膜は、前記セル領域の前記シリコン層内に埋め込まれた構造部内に設けられ、
前記第1の多結晶シリコン部と前記下部電極との間の距離は、前記構造部と前記下部電極との間の距離よりも長い請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記多結晶シリコン部は、前記ドリフト層に接する請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)には、ゲート電極の制御による動作部とは別に内蔵ダイオード(ボディダイオード)が存在する。その内蔵ダイオードの逆回復特性を改善することで回路の効率に貢献することができる。内蔵ダイオードの逆回復特性を改善する方法として、ドリフト層中に重金属などを導入し、ドリフト層中のキャリアのライフタイムをコントロールすることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/063342号
【文献】特開2015-65464号公報
【文献】特開2011-216825号公報
【文献】特開2016-213390号公報
【文献】特開2019-161125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、内蔵ダイオードの逆回復特性を向上させることができる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体装置は、上部電極と、下部電極と、前記上部電極と前記下部電極との間に位置し、前記下部電極に接する第1導電型のシリコン基板と、前記シリコン基板と前記上部電極との間に位置するシリコン層であって、セル領域と、側面と、前記セル領域と前記側面との間に位置する終端領域とを有するシリコン層と、前記シリコン層の前記セル領域に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極と前記シリコン層との間に設けられたゲート絶縁膜と、前記シリコン層の前記終端領域に埋め込まれ、前記シリコン層に接し、前記シリコン層よりも結晶グレイン密度が高い多結晶シリコン部であって、重金属を含み、電気的にフローティングである多結晶シリコン部と、を備える。前記シリコン層は、前記セル領域及び前記終端領域に設けられ、前記シリコン基板よりも第1導電型不純物濃度が低く、前記多結晶シリコン部に含まれる重金属と同じ種類の重金属を含む第1導電型のドリフト層と、前記セル領域の前記ドリフト層上に設けられ、前記上部電極に接する第2導電型のベース層と、前記ベース層上に設けられ、前記上部電極に接し、前記ドリフト層よりも第1導電型不純物濃度が高い第1導電型のソース層とを有し、前記終端領域は、前記上部電極に接する前記ベース層、前記上部電極に接する前記ソース層、及び前記ゲート電極を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の半導体装置の模式平面図である。
図2図1におけるA-A線に沿った模式断面図である。
図3】第2実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図4】第3実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図5】第4実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図6】各実施形態の第1変形例による半導体装置の模式平面図である。
図7】各実施形態の第2変形例による半導体装置の模式平面図である。
図8】各実施形態の第3変形例による半導体装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。以下の実施形態では第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。
【0008】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の半導体装置1の模式平面図である。なお、図1では、説明をわかりやすくするために特徴的な部分のみを示している。
図2は、図1におけるA-A線に沿った模式断面図である。
【0009】
図2に示すように、半導体装置1は、上部電極60と、下部電極70と、上部電極60と下部電極70との間に位置するシリコン基板10と、シリコン基板10と上部電極60との間に位置するシリコン層20と、シリコン層20内に埋め込まれた複数の埋め込み構造部30とを備える。上部電極60の「上部」と、下部電極70の「下部」は、説明のために用いた相対的な位置関係であり、重力の方向とは無関係である。埋め込み構造部30は、少なくともゲート電極31とゲート絶縁膜42とを有する。また、本実施形態では、埋め込み構造部30は、さらに、フィールドプレート電極32と、フィールドプレート電極32の上端、下端、及び側面を覆う絶縁膜41とを有する。半導体装置1は、ゲート電極31の制御により、上部電極60と下部電極70とを結ぶ方向(縦方向)に電流が流れる縦型半導体装置である。
【0010】
シリコン基板10上にシリコン層20が設けられている。シリコン基板10の裏面に下部電極70が設けられている。シリコン層20に複数のトレンチが形成され、そのトレンチ内に埋め込み構造部30が設けられる。シリコン層20は、埋め込み構造部30に隣接する複数のメサ部20aを有する。埋め込み構造部30の前述した各構成要素を形成するためのトレンチをシリコン層20に形成することで、同時にトレンチに隣接するメサ部20aも形成される。埋め込み構造部30は、シリコン基板10には達しない。
【0011】
図1に示すように、複数の埋め込み構造部30及び複数のメサ部20aは、例えば、ストライプ状に延びている。ストライプ状の複数の埋め込み構造部30のうち、複数の埋め込み構造部30が並ぶ方向における最も端に位置する埋め込み構造部を最外埋め込み構造部30aとする。また、ストライプ状の複数のメサ部20aのうち、最外埋め込み構造部30aに隣接するメサ部を、最外メサ部20bとする。
【0012】
図1に示すように、シリコン層20の平面形状は、4つの側面300を有する四角形状である。シリコン層20は、セル領域100と終端領域200とを有する。終端領域200は、セル領域100と側面300との間に位置する。埋め込み構造部30及びメサ部20aは、セル領域100に設けられている。
【0013】
4つの側面300を有する四角の形状は、任意である。例えば、図6に示すような長方形でもよい。埋め込み構造30部がストライプ状に延びる場合、ストライプが延びる方向の数は、任意である。例えば、図6に示すような2方向に延びたストライプでもよい。また、4つの側面300で形成される平面形状の垂線方向から見たときの埋め込み構造部30の形状は、ストライプ形状でなくてもよい。例えば、終端領域200より内側に最も密になるように配列された複数の正六角形状や円形の集合体であってもよい。
【0014】
図2に示すように、シリコン層20は、シリコン基板10上に設けられたドリフト層21と、ベース層22と、ソース層23とを有する。シリコン基板10及びドリフト層21の導電型はn型である。ドリフト層21のn型不純物濃度は、シリコン基板10のn型不純物濃度よりも低い。シリコン基板10及びドリフト層21は、セル領域100及び終端領域200に設けられている。終端領域200は、上部電極60に接するベース層22、上部電極60に接するソース層23、及びゲート電極31を含まない。
【0015】
メサ部20aは、ドリフト層21の一部と、このドリフト層21の一部上に設けられたp型のベース層22と、ベース層22の表面に設けられたn型のソース層23とを含む。ソース層23のn型不純物濃度は、ドリフト層21のn型不純物濃度よりも高い。
【0016】
最外埋め込み構造部30aに隣接する最外メサ部20bは、ドリフト層21の一部と、このドリフト層21の一部上に設けられたp型のベース層22を含む。最外メサ部20bにはソース層23が設けられていない。このため、最外メサ部20bでは、ゲート電極31による電流制御(MOS動作)がされない。終端領域200では、電位の変動による空乏層の広がりがセル領域100とは異なる。終端領域200に近いメサ部をMOS動作しない最外メサ部20bにし、最外埋め込み構造部30aを形成することで、セル領域100と終端領域200の間の空乏層の広がりを均一にし、耐圧の低下を抑制できる。
【0017】
最外埋め込み構造部30aには、例えば、ゲート電極31は片側(最外メサ部20b側)に1つだけ形成されていてもよいし、ゲート電極31を全く形成しない構造でもよい。また、耐圧の低下が問題にならない場合は、最外メサ部20b及び最外埋め込み構造部30aを形成しなくてもよい。対して、耐圧の低下が問題になる場合は、最外メサ部20b及び最外埋め込み構造部30aを1つのセットとして、このセットの数を2個以上設けても良い。
【0018】
1つの埋め込み構造部30に例えば2つのゲート電極31が設けられている。1つの埋め込み構造部30において、ゲート電極31は、例えば、図8に示すような一繋ぎになった構造でもよい。ゲート電極31は、ゲート絶縁膜42を介して、ベース層22の側面に対向している。ゲート絶縁膜42は、ベース層22の側面とゲート電極31との間に設けられている。また、ゲート電極31内にシームやボイドが形成されていてもよい。
【0019】
ゲート電極31にしきい値以上の電圧を与えることで、ベース層22におけるゲート電極31に対向する部分にn型のチャネル(反転層)を形成することができる。
【0020】
また、埋め込み構造部30は、フィールドプレート電極32を有する。フィールドプレート電極32は、埋め込み構造部30の幅方向(横方向)のほぼ中央に位置する。フィールドプレート電極32は、埋め込み構造部30内を、ゲート電極31よりも下方まで延びている。フィールドプレート電極32の底部は、ゲート電極31の底部よりも、シリコン基板10に近い位置にある。フィールドプレート電極32は完全に埋め込むことに限らず、フィールドプレート電極32内にシームやボイドが形成されてもよい。
【0021】
フィールドプレート電極32とドリフト層21との間、及びフィールドプレート電極32とゲート電極31との間に絶縁膜41が設けられている。絶縁膜41は、同一材料で形成されていてもよいし、複数の異なる材料で形成されていてもよい。
【0022】
フィールドプレート電極32は、例えば上部電極60と電気的に接続される。または、フィールドプレート電極32は、ゲート電極31と電気的に接続されてもよい。フィールドプレート電極32は、ゲート電極31へのしきい値以上の電圧印加を停止したオフ状態において、ドリフト層21の電界の分布を緩やかにする。
【0023】
上部電極60は、シリコン層20の上及び埋め込み構造部30の上に設けられている。ゲート電極31と上部電極60との間、及びフィールドプレート電極32と上部電極60との間に絶縁膜43が設けられている。
【0024】
メサ部20aの上部を構成するソース層23及びベース層22にコンタクト部26が形成され、そのコンタクト部26内に上部電極60の一部が設けられている。いわゆるトレンチコンタクト構造により、ソース層23及びベース層22は上部電極60と電気的に接続されている。上部電極60と電気的に接続されたソース層23及び上部電極60と電気的に接続されたベース層22は、セル領域100に設けられ、終端領域200には設けられていない。
【0025】
終端領域200のドリフト層21内に多結晶シリコン部50が埋め込まれている。終端領域200のドリフト層21内にトレンチを形成した後、そのトレンチ内に例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により多結晶シリコン部50が埋め込まれる。トレンチ内を多結晶シリコン部50で完全に埋め込むことに限らず、多結晶シリコン部50内にシームやボイドが形成されてもよい。
【0026】
例えば、図7に示すような多結晶シリコン部50に切れ込み50aが設けられたような構造でも良い。切り込み50aの領域では、ドリフト層21内にトレンチが形成されていない。多結晶シリコン部50に設けられる切れ込み50aの数は、任意であるが、図1で示した埋め込み構造部30を一繋ぎで取り囲んでいる構造が望ましい。これにより、後述する終端領域200への重金属(Pt,Auなど)への拡散をより防ぐことができる。
【0027】
図6で示すストライプ状の埋め込み構造部30が複数の方向に延びるような構造の場合、延びる方向が同じ複数の埋め込み構造部30が1つのセットとなる。多結晶シリコン部50で取り囲む埋め込み構造部30のセットの数は、任意である。例えば、図6で示すような埋め込み構造部30を1セットずつ多結晶シリコン部50で取り囲む構造でも良い。例えば、埋め込み構造部30を2セット以上多結晶シリコン部50で取り囲む構造でも良い。このとき、切れ込み50aが設けられてもよい。
【0028】
多結晶シリコン部50は、シリコン酸化膜などの絶縁膜を介さずに、ドリフト層21に形成されたトレンチ内に直接埋め込まれ、多結晶シリコン部50の側面及び底面は、ドリフト層21に接する。多結晶シリコン部50とドリフト層21との間に、シリコン酸化膜などの絶縁膜は設けられていない。多結晶シリコン部50の上面は、絶縁膜43に接する。
【0029】
ドリフト層21を含むシリコン層20は、シリコン基板10上にエピタキシャル成長された単結晶層(または単結晶に近い高い結晶性をもつ層)であるのに対して、多結晶シリコン部50はシリコン層20よりも結晶グレイン密度が高い多結晶シリコンからなる。多結晶シリコン部50の結晶粒界密度は、シリコン層20の結晶粒界密度よりも高い。
【0030】
多結晶シリコン部50は、重金属を含む。この重金属は、例えばPtまたはAuである。ドリフト層21のセル領域100、及び終端領域200におけるセル領域100と多結晶シリコン部50との間の領域は、多結晶シリコン部50に含まれる重金属と同じ種類の重金属を含む。
【0031】
次に、半導体装置1の製造方法について説明する。
【0032】
シリコン基板10上にシリコン層20を形成し、シリコン層20に埋め込み構造部30と多結晶シリコン部50とを形成する。例えば、多結晶シリコン部50は、埋め込み構造部30よりも先に形成する。メサ部20aの上部には、例えばイオン注入法により、ベース層22及びソース層22を形成する。この後、シリコン層20の上、及び埋め込み構造部30の上に絶縁膜43を形成する。絶縁膜43を形成した後、絶縁膜43を貫通してベース層22及びソース層23に達するコンタクト部26を形成する。ドリフト層21には重金属(Pt,Auなど)が拡散している。重金属を拡散する手法として、コンタクト部26内にシリサイド層を形成し熱処理で拡散する方法、またはイオン注入法により重金属をコンタクト部26近傍に打ち込み、熱処理で拡散する手法を用いることができる。コンタクト部26内にシリサイド層を形成し熱処理で拡散する方法の場合、コンタクト部26内に、重金属を含む膜として、例えばPt膜を形成する。Pt膜を形成した後、熱処理を行い、Pt膜とメサ部20aの上部(ベース層22及びソース層23)とが接する部分にPtシリサイドを形成する。Ptシリサイドを形成した後、Ptシリサイドを形成する熱処理よりも高温の熱処理を行い、Ptをドリフト層21中に拡散させる。この後、Ptシリサイド及びPt膜を除去し、コンタクト部26内及び絶縁膜43上に上部電極60を形成する。
【0033】
ドリフト層21中に拡散した重金属(Pt,Auなど)は、電子と正孔の再結合中心となるライフタイムキラーとして機能する。半導体装置1の内蔵ダイオード(ベース層22、ドリフト層21、及びシリコン基板10から構成されるPINダイオード)に対して逆バイアスが印加された逆回復動作時には、ドリフト層21に残ったキャリア(電子及び正孔)の一方は重金属(Pt、Auなど)にトラップされ、それに他方のキャリアが出会って再結合する。これにより、内蔵ダイオードの逆回復電荷量Qrrを低減し、逆回復特性を向上させることができる。
【0034】
セル領域100は終端領域200よりもドリフト層21中のキャリアが多いため、ライフタイムコントロールのためにはセル領域100にライフタイムキラーとしての前述した重金属が存在することが求められる。
【0035】
また、内蔵ダイオードが順方向にバイアスされた状態において、セル領域100のp型ベース層22からドリフト層21に注入された正孔は、終端領域200にも流れる。そして、内蔵ダイオードの逆回復動作時には、セル領域100の正孔がベース層22を通じて上部電極60へ排出されるとともに、終端領域200からもセル領域100側に正孔の戻りがある。
【0036】
終端領域200の上面においてドリフト層21は上部電極60に接していないため、逆回復動作時、終端領域200の正孔は、セル領域100の外周の最外埋め込み構造部30aの下を回り込むようにしてセル領域100まで移動し、上部電極60へ排出される。すなわち、終端領域200の正孔は、セル領域100の正孔よりも排出されにくい。この終端領域200からの戻り電流(いわゆるテール電流)を減らすために、終端領域200にもある程度の重金属が存在することがよい。
【0037】
本実施形態によれば、セル領域100のドリフト層21内に重金属をとどめつつ、終端領域200に形成した多結晶シリコン部50により、終端領域200にもある程度の重金属をとどめることができる。
【0038】
多結晶シリコン部50の粒界はPtやAuなどの重金属のゲッタリングサイトとして機能する。前述したコンタクト部26に形成した金属シリサイド膜を拡散源としてセル領域100のドリフト層21内に導入された重金属のうち終端領域200に拡散した重金属は多結晶シリコン部50にトラップされる。重金属をトラップした多結晶シリコン部50は、新たな重金属の拡散源としても機能する。したがって、元々の重金属の拡散源(コンタクト部26の形成部)と、多結晶シリコン部50との間の領域のドリフト層21内に重金属をとどめることができる。
【0039】
多結晶シリコン部50は、n型でも、p型でも、アンドープでもよい。多結晶シリコン部50は、ゲート電極31、またはフィールドプレート電極32と同様の材質でもよい。
【0040】
セル領域100のドリフト層21内の重金属濃度、及びセル領域100と多結晶シリコン部50との間の領域のドリフト層21内の重金属濃度は、多結晶シリコン部50と側面300との間の領域のドリフト層21内の重金属濃度よりも高い。
【0041】
単結晶シリコン中における重金属(Pt,Auなど)の熱拡散長は比較的長いことから、終端領域200に多結晶シリコン部50を設けない場合には、終端領域200においてセル領域100に隣接する領域に重金属をとどめておくのが難しくなる。
【0042】
本実施形態によれば、終端領域200に多結晶シリコン部50を設けることで、終端領域200においてセル領域100と多結晶シリコン部50との間の領域の重金属濃度も高くできるので、内蔵ダイオードの逆回復動作時における終端領域200からの戻り電流を抑制し、逆回復特性を向上できる。
【0043】
重金属の多結晶シリコン部50よりも外側の領域への拡散を抑制するために、図1に示すように、多結晶シリコン部50はセル領域100を連続して囲むことが望ましい。
【0044】
また、多結晶シリコンは単結晶シリコンよりも欠陥が多く、多結晶シリコン部50自体が再結合中心となるエネルギー準位を含み、終端領域200における逆回復電流を抑制する。
【0045】
また、多結晶シリコン部50は、内蔵ダイオードが順方向にバイアスされた状態でセル領域100のドリフト層21に注入された正孔の終端領域200への広がりを規制する構造物として機能する。正孔の終端領域200への広がりを規制することで、終端領域200からの戻り電流を低減するとともに、正孔の上部電極60までの排出経路を短くでき、逆回復時間を短くできる。正孔の終端領域200への広がりを規制する観点から、多結晶シリコン部50の深さは、埋め込み構造部30の深さよりも深いことが望ましい。すなわち、多結晶シリコン部50と下部電極70との間の距離(最短距離)は、埋め込み構造部30と下部電極70との間の距離(最短距離)よりも短いことが望ましい。多結晶シリコン部50は、シリコン基板10には達していない。
【0046】
PtやAuなどの重金属はシリコン酸化膜を透過しにくい。そのため、多結晶シリコン部50とドリフト層21との間にシリコン酸化膜を設けると、終端領域200まで拡散してきた重金属にとってシリコン酸化膜が障壁となり、セル領域100に戻されてしまう懸念がある。
【0047】
終端領域200に伸展した空乏層が多結晶シリコン部50に達すると、その部分で電界分布が変化し、臨界電界強度を超えると、局所的なアバランシェ降伏が起こる懸念がある。そのため、多結晶シリコン部50は、空乏層が達しない位置に形成することが望ましい。
【0048】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の半導体装置2の模式断面図である。
【0049】
この半導体装置2におけるシリコン層20は、終端領域200のドリフト層21と多結晶シリコン部50との間に設けられ、ドリフト層21よりもn型不純物濃度が高いn型のチャネルストッパ25をさらに有する。終端領域200にトレンチを形成した後、トレンチの側壁及び底面にチャネルストッパ25を形成する。この後、トレンチ内に多結晶シリコン部50を形成する。チャネルストッパ25は、多結晶シリコン部50の側面とドリフト層21との間、及び多結晶シリコン部50の底面とドリフト層21との間に設けられている。
【0050】
チャネルストッパ25により、空乏層が多結晶シリコン部50に達するのを回避でき、局所的なアバランシェ降伏を防ぐことができる。
【0051】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態の半導体装置3の模式断面図である。
【0052】
例えば、比較的低耐圧のデイバスのようにドリフト層21中のn型不純物濃度が高いと、ライフタイムコントロールすべきキャリアが多く、その分、終端領域200にも多くの重金属をとどめることが求められる。
【0053】
図4に示すように、終端領域200に、例えば、第1の多結晶シリコン部51、第2の多結晶シリコン部52、及び第3の多結晶シリコン部53を含む複数の多結晶シリコン部50を設けることで、終端領域200における重金属のゲッタリング量を多くでき、ライフタイムコントロールすべきキャリアの増大に対応することができる。例えば、図4に示す例では、セル領域100に最も近い位置に第1の多結晶シリコン部51が設けられ、第1の多結晶シリコン部51とシリコン層20の側面300(図1に示す)との間に第2の多結晶シリコン部52が設けられ、第2の多結晶シリコン部52と側面300との間に第3の多結晶シリコン部53が設けられている。それら3つの多結晶シリコン部51~53によって3重にセル領域100を囲んでいる。多結晶シリコン部50の数は、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0054】
[第4実施形態]
図5は、第4実施形態の半導体装置4の模式断面図である。
【0055】
図5に示すように、埋め込み構造部30よりも浅い第1の多結晶シリコン部51を設けてもよい。図5に示す例では、互いに深さの異なる第1の多結晶シリコン部51、第2の多結晶シリコン部52、及び第3の多結晶シリコン部53によって3重にセル領域100を囲んでいる。第1の多結晶シリコン部51、第2の多結晶シリコン部52、及び第3の多結晶シリコン部53が、セル領域100と側面300とを結ぶ方向に並んでいる。最もセル領域100に近い位置にある第1の多結晶シリコン部51と下部電極70との間の距離(最短距離)は、埋め込み構造部30と下部電極70との間の距離(最短距離)よりも長い。第2の多結晶シリコン部52と下部電極70との間の距離(最短距離)は、第1の多結晶シリコン部52と下部電極70との間の距離(最短距離)よりも短い。第3の多結晶シリコン部52と下部電極70との間の距離(最短距離)は、第2の多結晶シリコン部52と下部電極70との間の距離(最短距離)よりも短い。この例においても、多結晶シリコン部50の数は、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1~4…半導体装置、10…シリコン基板、20…シリコン層、20a…メサ部、21…ドリフト層、22…ベース層、23…ソース層、25…チャネルストッパ、30…埋め込み構造部、31…ゲート電極、32…フィールドプレート電極、42…ゲート絶縁膜、50…多結晶シリコン部、60…上部電極、70…下部電極、100…セル領域、200…終端領域、300…側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8