(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】目地部形成方法及び型枠構造
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20240619BHJP
【FI】
E21D11/10 B
(21)【出願番号】P 2021062971
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 修治
(72)【発明者】
【氏名】坂田 昇
(72)【発明者】
【氏名】坂井 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】柳井 修司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢三
(72)【発明者】
【氏名】橋本 学
(72)【発明者】
【氏名】青柳 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】手塚 康成
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-278496(JP,A)
【文献】特許第6776603(JP,B2)
【文献】特開昭49-122131(JP,A)
【文献】特開平03-175003(JP,A)
【文献】特開2016-023488(JP,A)
【文献】特開2012-180723(JP,A)
【文献】特開2017-008545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル覆工コンクリートの坑口側の先打ちコンクリートと切羽側の後打ちコンクリートとの境界部に目地部を形成する目地部形成方法であって、
前記切羽側の端部のトンネル内空部側の角に第1面木型枠部による第1面取り部が形成された先打ちコンクリートを施工する先打ち工程と、
前記坑口側の端部のトンネル内空部側の角に第2面木型枠部による第2面取り部が形成された後打ちコンクリートを施工する後打ち工程と、を備え、
前記先打ち工程又は前記後打ち工程の少なくとも一方において、前記先打ちコンクリートの端部と前記後打ちコンクリートの端部との間を縁切りする縁切り部が形成され
、
前記第1面木型枠部と前記第2面木型枠部とのトンネル径方向の寸法が互いに異なっており、
前記第1面取り部と前記第2面取り部との段差部が前記縁切り部として形成される、目地部形成方法。
【請求項2】
前記第1面木型枠部のトンネル径方向の寸法が、前記第2面木型枠部とのトンネル径方向の寸法よりも大きい、請求項1に記載の目地部形成方法。
【請求項3】
トンネル覆工コンクリートの坑口側の先打ちコンクリートと切羽側の後打ちコンクリートとの境界部に目地部を形成する目地部形成方法であって、
前記切羽側の端部のトンネル内空部側の角に第1面木型枠部による第1面取り部が形成された先打ちコンクリートを施工する先打ち工程と、
前記坑口側の端部のトンネル内空部側の角に第2面木型枠部による第2面取り部が形成された後打ちコンクリートを施工する後打ち工程と、を備え、
前記先打ち工程又は前記後打ち工程の少なくとも一方において、前記先打ちコンクリートの端部と前記後打ちコンクリートの端部との間を縁切りする縁切り部が形成され、
前記先打ち工程では、
少なくとも前記第1面木型枠部よりも地山側の一部で褄型枠の型枠内面に非硬化性の物質からなる非硬化性層が設けられた状態で前記先打ちコンクリートが打設され、その後、前記非硬化性層を残置して前記褄型枠が脱型され、
前記後打ち工程では、
前記先打ちコンクリートとの間に前記縁切り部としての前記非硬化性層を挟んで前記後打ちコンクリートが打設され
る、目地部形成方法。
【請求項4】
前記褄型枠は、
前記第1面木型枠部と、前記第1面木型枠部の前記地山側の端部よりも更に前記地山側に延びる平型枠部と、前記地山に支持されるとともに前記平型枠部の前記切羽側の面に当接する木矢板と、を備え、
前記非硬化性層は、前記平型枠部の型枠内面に設けられる、請求項3に記載の目地部形成方法。
【請求項5】
前記非硬化性層は、前記褄型枠の型枠内面に前記非硬化性の物質が塗布されること、又は、前記非硬化性の物質を封入した水溶性袋が前記褄型枠の型枠内面に貼着されること、により設けられる、請求項3又は4に記載の目地部形成方法。
【請求項6】
前記後打ち工程の後、前記先打ちコンクリートと前記後打ちコンクリートとの間に存在する前記非硬化性層を洗い流す洗浄工程を更に備える、請求項3~5の何れか1項に記載の目地部形成方法。
【請求項7】
トンネル覆工コンクリートの坑口側の先打ちコンクリートと切羽側の後打ちコンクリートとの境界部に目地部を形成するために用いられる型枠構造であって、
前記先打ちコンクリート用の褄型枠が、
前記先打ちコンクリートの前記切羽側の端部のトンネル内空部側の角に面取り部を形成するための面木型枠部と、
前記面木型枠部の地山側の端部よりも前記地山側に延びる型枠本体部と、
前記型枠本体部の型枠内面に設けられ非硬化性の物質からなる非硬化性層と、を有する、型枠構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地部形成方法及び型枠構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載のトンネルの覆工コンクリートが知られている。この覆工コンクリートの目地部には、先打ちコンクリート側と後打ちコンクリート側とにそれぞれ円弧状に設けられた面取り部が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トンネルの覆工コンクリートにおいては、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとが目地部において付着しやすい。コンクリートの硬化時の乾燥収縮や温度低下による体積変化に起因して、後打ちコンクリートと先打ちコンクリートは離れる方向に変形するが、目地部における両者の付着が強い場合には、引張力が発生し弱点である目地部の面取り部やその周辺にひび割れや浮きが発生しうる。
【0005】
この問題に鑑み、本発明は、覆工コンクリートにおいて先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとの付着を低減する目地部形成方法及び型枠構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目地部形成方法は、トンネル覆工コンクリートの坑口側の先打ちコンクリートと切羽側の後打ちコンクリートとの境界部に目地部を形成する目地部形成方法であって、切羽側の端部のトンネル内空部側の角に第1面木型枠部による第1面取り部が形成された先打ちコンクリートを施工する先打ち工程と、坑口側の端部のトンネル内空部側の角に第2面木型枠部による第2面取り部が形成された後打ちコンクリートを施工する後打ち工程と、を備え、先打ち工程又は後打ち工程の少なくとも一方において、先打ちコンクリートの端部と後打ちコンクリートの端部との間を縁切りする縁切り部が形成される。
【0007】
この目地部形成方法によれば、先打ちコンクリートの端部と後打ちコンクリートの端部との間を縁切りする縁切り部が存在するので、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとが付着する幅が縁切り部の分だけ狭くなり、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとの付着が低減される。その結果、付着によって先打ちコンクリートと後打ちコンクリートの間に発生しうる引張力が低減される。
【0008】
また、第1面木型枠部と第2面木型枠部とのトンネル径方向の寸法が互いに異なっており、第1面取り部と第2面取り部との段差部が縁切り部として形成される、こととしてもよい。
【0009】
また、先打ち工程では、少なくとも第1面木型枠部よりも地山側の一部で褄型枠の型枠内面に非硬化性の物質からなる非硬化性層が設けられた状態で先打ちコンクリートが打設され、その後、非硬化性層を残置して褄型枠が脱型され、後打ち工程では、先打ちコンクリートとの間に縁切り部としての非硬化性層を挟んで後打ちコンクリートが打設される、こととしてもよい。
【0010】
また、褄型枠は、第1面木型枠部と、第1面木型枠部の地山G側の端部よりも更に地山側に延びる平型枠部と、地山に支持されるとともに平型枠部の切羽側の面に当接する木矢板と、を備え、非硬化性層は、平型枠部の型枠内面に設けられる、こととしてもよい。
【0011】
また、非硬化性層は、褄型枠の型枠内面に非硬化性の物質が塗布されること、又は、非硬化性の物質を封入した水溶性袋が褄型枠の型枠内面に貼着されること、により設けられる、こととしてもよい。
【0012】
また、本発明の目地部形成方法は、後打ち工程の後、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとの間に存在する非硬化性層を洗い流す洗浄工程を更に備える、こととしてもよい。
【0013】
本発明の型枠構造は、トンネル覆工コンクリートの坑口側の先打ちコンクリートと切羽側の後打ちコンクリートとの境界部に目地部を形成するために用いられる型枠構造であって、先打ちコンクリート用の褄型枠が、先打ちコンクリートの切羽側の端部のトンネル内空部側の角に面取り部を形成するための面木型枠部と、面木型枠部の地山側の端部よりも地山側に延びる型枠本体部と、型枠本体部の型枠内面に設けられ非硬化性の物質からなる非硬化性層と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、覆工コンクリートにおいて先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとの付着を低減する目地部形成方法及び型枠構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る目地部形成方向及び型枠構造が適用ざれる施工中のトンネル及びセントルを示す斜視図である。
【
図2】(a)は、第1実施形態の目地部の近傍を拡大して示す断面図であり、(b)~(e)は、その目地部形成方法を順次示す断面図である。
【
図3】(a)は、第2実施形態の目地部の近傍を拡大して示す断面図であり、(b)~(e)は、その目地部形成方法を順次示す断面図である。
【
図4】(a)は、第3実施形態の目地部の近傍を拡大して示す断面図であり、(b)~(e)は、その目地部形成方法を順次示す断面図である。
【
図5】(a)は、第4実施形態の目地部の近傍を拡大して示す断面図であり、(b),(c)は、その目地部形成方法を順次示す断面図である。
【
図6】(a)~(c)は、
図5に続いて第4実施形態の目地部形成方法を順次示す断面図である。
【
図7】(a)~(c)は、目地部形成方法の各変形例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る目地部形成方法及び型枠構造について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の目地部形成方法及び型枠構造が適用される工事中のトンネル1と、トンネル1の覆工コンクリート3の打設に用いられるセントル5とを示す斜視図である。
図2(a)は、完成後の覆工コンクリート3の目地部7Aの近傍をトンネル周方向に直交する面で切断し拡大して示す断面図である。
図2(a)中の符号Gは覆工コンクリート3が施される地山を示し、符号Kはトンネル1の内空部を示す。
【0017】
図1に示されるように、トンネル1の覆工コンクリート3は、トンネル1の軸方向に移動可能なセントル5を用いて施工され、例えば、10.5~12.5mずつ打継ぎながら坑口側から切羽側に向かって繰返し打設される。そして、坑口側の先打ちコンクリート11と、切羽側の後打ちコンクリート12と、の境界に、例えば
図2(a)に示される断面をもつ目地部7Aが形成される。
【0018】
図2(a)に示されるように、本実施形態の目地部7Aでは、先打ちコンクリート11の切羽側の端部の内空部K側の角に第1面取り部11aが形成されている。第1面取り部11aは、先打ちコンクリート11の角をトンネル軸方向に対し45°の角度で除去した形状をなしている。一方、これに対向する後打ちコンクリート12の坑口側の端部の内空部K側の角にも同様に第2面取り部12aが形成されている。第2面取り部12aは、後打ちコンクリート12の角をトンネル軸方向に対し45°よりも大きな角度(例えば約70°)で除去した形状をなしている。すなわち、第1面取り部11aで除去される先打ちコンクリート11の部位の断面は直角二等辺三角形であるが、これに対し、第2面取り部12aで除去される後打ちコンクリート12の部位の断面は上記の直角二等辺三角形よりも高さが高い直角三角形である。これらの面取り部11a,12aが形成された位置においては、先打ちコンクリート11と後打ちコンクリート12とがトンネル軸方向に離間している。第2面取り部12aよりも地山G側では、先打ちコンクリート11と後打ちコンクリート12とが打ち継がれている。
【0019】
上記のような構造の目地部7Aを形成するための目地部形成方法は次の通りである。まず、
図2(b)に示されるように、先打ちコンクリート11用の褄型枠13が、セントル5の切羽側の端部の近傍において、セントル5と地山Gとの間に設置される。この褄型枠13は、第1面木型枠部13aと、木矢板13cと、を備えている。第1面木型枠部13aは、前述の第1面取り部11aを形成するための型枠部であり、トンネル軸方向に対して45°の角度をなす型枠内面13sを有する。木矢板13cは、地山Gに支持され内空部K側に延びるとともに第1面木型枠部13aの切羽側の面に当接する。木矢板13cの坑口側の面のうち第1面木型枠部13aよりも地山G側の面は、平坦な型枠内面13tとして機能する。
【0020】
次に、上記の褄型枠13とセントル5とで仕切られた空間にコンクリートが打設され、セントル5及び褄型枠13が脱型されると、
図2(c)に示されるように、前述したような形状の先打ちコンクリート11が形成される(先打ち工程)。なお、セントル5を用いてトンネル覆工コンクリートを打設する手法については、公知の手法を用いればよいので、詳細な説明を省略する。その後、セントル5が1スパン分(例えば、10.5~12.5m)切羽側に移動した後、
図2(d)に示されるように、後打ちコンクリート12用の褄型枠14が、上記の先打ちコンクリート11の切羽側の端部に近接して、セントル5と地山Gとの間に設置される。褄型枠14は第2面木型枠部14aにより構成される。第2面木型枠部14aは、前述の第2面取り部12aを形成するための型枠部であり、トンネル軸方向に対して例えば70°の角度をなす型枠内面14sを有する。セントル5からの第2面木型枠部14aの高さは、第1面木型枠部13aよりも高い。ここでは、第2面木型枠部14aの坑口側の面の地山G側の一部が先打ちコンクリート11の切羽側の端面に当接するように、第2面木型枠部14aが設置される。
【0021】
その後、
図2(e)に示されるように、上記の褄型枠14(第2面木型枠部14a)とセントル5とで仕切られた空間にコンクリートが打設される(後打ち工程)。このとき、第2面木型枠部14aよりも地山G側の部分においては、打設されたコンクリートが先打ちコンクリート11の端面と接触し、この部分が打継部15となる。また、当該打継部15よりも内空部K側且つ第1面取り部11aよりも地山G側の部分には、第1面取り部11aと第2面取り部12aとの段差部16が形成される。この段差部16が、先打ちコンクリート11と後打ちコンクリート12とを縁切りする縁切り部として機能している。セントル5及び褄型枠14が脱型されると、前述したような形状の後打ちコンクリート12が形成され、
図2(a)に示されるように、目地部7Aが完成する。
【0022】
以上説明した目地部形成方法によれば、第1面取り部11aと第2面取り部12aとの段差部16が、先打ちコンクリート11と後打ちコンクリート12とを縁切りする縁切り部として機能している。従って、先打ちコンクリート11と後打ちコンクリート12とが付着する打継部15の幅が段差部16の分だけ狭くなり、先打ちコンクリート11と後打ちコンクリート12との付着が低減される。その結果、付着によって先打ちコンクリート11と後打ちコンクリート12の間に発生しうる引張力が低減され、目地部7Aの面取り部11a,12aやその周辺に発生しうるひび割れや浮きが抑制される。
【0023】
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態に係る目地部形成方法及び型枠構造ついて詳細に説明する。以下では、第1実施形態と相違する点を主に説明し、第1実施形態と同一又は同等の構成要素に同一符号を付して重複する説明は省略する。
図3(a)は、本実施形態の目地部7Bの近傍を拡大して示す断面図である。
図3(a)に示されるように、本実施形態の目地部7Bでは、第1実施形態の目地部7Aとは対称に、第2面取り部22aで除去される後打ちコンクリート22の部位の断面が直角二等辺三角形であり、これに対し、第1面取り部21aで除去される先打ちコンクリート21の部位の断面は上記の直角二等辺三角形よりも高さが高い直角三角形である。
【0024】
このような構造の目地部7Bを形成するための目地部形成方法は次の通りである。
図3(b)に示されるように、先打ちコンクリート21の打設では、第1実施形態の褄型枠13に代えて、第1面木型枠部23aと木矢板23cとを含む褄型枠23が使用される。第1面木型枠部23aは、トンネル軸方向に対して例えば70°の角度をなす型枠内面23sを有し、後述の第2面木型枠部24aよりも高さが高い。そして、上記の褄型枠23とセントル5とで仕切られた空間にコンクリートが打設され、セントル5及び褄型枠23が脱型されると、
図3(c)に示されるように、前述したような第1面取り部21aを有する先打ちコンクリート21が形成される(先打ち工程)。
【0025】
その後、セントル5が1スパン分(例えば、10.5~12.5m)切羽側に移動した後、
図3(d)に示されるように、後打ちコンクリート22用の褄型枠24が、上記の先打ちコンクリート21の切羽側の端部に近接して、セントル5と地山Gとの間に設置される。褄型枠24は第2面木型枠部24aと、平型枠部24bと、により構成される。第2面木型枠部24aは、トンネル軸方向に対して45°の角度をなす型枠内面24sを有する。また、平型枠部24bは、第2面木型枠部24aの地山G側の端部と、先に形成された第1面取り部21aの地山G側の端部と、の間を塞ぐように設置される平板であり、例えば、第2面木型枠部24aの坑口側の面に固定される。
【0026】
その後、
図3(e)に示されるように、上記の褄型枠24とセントル5とで仕切られた空間にコンクリートが打設される(後打ち工程)。このとき、平型枠部24bよりも地山G側の部分においては、打設されたコンクリートが先打ちコンクリート21の端面と接触し、この部分が打継部25となる。また、当該打継部25よりも内空部K側且つ第1面取り部21aよりも地山G側の部分には、第1面取り部21aと第2面取り部22aとの段差部26が形成される。この段差部26が、先打ちコンクリート21と後打ちコンクリート22とを縁切りする縁切り部として機能している。セントル5及び褄型枠24が脱型されると、前述したような形状の後打ちコンクリート22が形成され、
図3(a)に示されるように、目地部7Bが完成する。
【0027】
このような目地部形成方法によっても、上記段差部26が縁切り部として機能することで、第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0028】
(第3実施形態)
続いて、本発明の第3実施形態に係る目地部形成方法及び型枠構造ついて詳細に説明する。以下では、第1実施形態と相違する点を主に説明し、第1又は第2実施形態と同一又は同等の構成要素に同一符号を付して重複する説明は省略する。
図4(a)は、本実施形態の目地部7Cの近傍を拡大して示す断面図である。
図4(a)に示されるように、本実施形態の目地部7Cでは、第1面取り部31aで除去される先打ちコンクリート31の部位の断面と、第2面取り部32aで除去される後打ちコンクリート32の部位の断面と、が対称の形状をなし、ともに直角二等辺三角形よりも高さが高い直角三角形である。この目地部7Cの方法は、前述した第1実施形態の目地部形成方法において、第1面木型枠部13aに代えて第1面木型枠部23a(
図3(b)参照)を用いればよい。すなわち、
図4(b),(c)に示されるように、第1面木型枠部23aを含む褄型枠23を用いて先打ちコンクリート31を形成し(先打ち工程)、更に、第1実施形態と同様にして、
図4(d),(e)に示されるように、第2面木型枠部14aで構成される褄型枠14を用いて後打ちコンクリート32を形成(後打ち工程)すればよい。
【0029】
従来は、第1面取り部31aで除去される先打ちコンクリート31の部位の断面と、第2面取り部32aで除去される後打ちコンクリート32の部位の断面と、がともに直角二等辺三角形であった。これに対し、本実施形態においては、第1面取り部31aで除去される先打ちコンクリート31の部位の断面と、第2面取り部32aで除去される後打ちコンクリート32の部位の断面と、がともに直角二等辺三角形よりも高さが高い直角三角形である。従って、従来の直角二等辺三角形との高さの差分は、先打ちコンクリート31と後打ちコンクリート32とを縁切りする縁切り部として機能していると言える。従って、この目地部形成方法によっても、上記縁切り部の存在により第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0030】
(第4実施形態)
続いて、本発明の第4実施形態に係る目地部形成方法及び型枠構造ついて詳細に説明する。
図5(a)は、本実施形態の目地部7Dの近傍を拡大して示す断面図である。
図5(a)に示されるように、本実施形態の目地部7Dでは、先打ちコンクリート41の切羽側の端部の内空部K側の角を45°の角度で除去した形状の第1面取り部41aが形成されている。同様に、後打ちコンクリート42の坑口側の端部の内空部K側の角を45°の角度で除去した形状の第2面取り部42aが上記第1面取り部41aと対称に形成されている。そして、先打ちコンクリート41と後打ちコンクリート42との境界部には、面取り部41a,42aの地山G側の端部から地山G側に延びるように、間隙46が形成されている。間隙46は、先打ちコンクリート41の端面と後打ちコンクリート42の端面との間に例えば5mm程度の厚さで形成されている。また、間隙46よりも地山G側においては、先打ちコンクリート41の端面と後打ちコンクリート42の端面とが接触し、この部分が打継部45となっている。
【0031】
上記のような構造の目地部7Dを形成するための目地部形成方法は次の通りである。まず、
図5(b)に示されるように、先打ちコンクリート41用の褄型枠43が、セントル5の切羽側の端部の近傍において、セントル5と地山Gとの間に設置される。この褄型枠43は、第1面木型枠部43aと、型枠本体部43jとを備えている。第1面木型枠部43aは、前述の第1面取り部41aを形成するための型枠部であり、トンネル軸方向に対して45°の角度をなす型枠内面43sを有する。型枠本体部43jは、第1面木型枠部43aの地山G側の端部よりも地山G側に延びている。ここでは、型枠本体部43jは、平型枠部43bと、木矢板43cと、を備えている。平型枠部43bは、第1面木型枠部43aの地山G側の端部よりも更に地山G側に延びる平らな型枠内面43tを有する。木矢板43cは、地山Gに支持されるとともに平型枠部43bの切羽側の面に当接する。
【0032】
更に、平型枠部43bの坑口側の面(型枠内面43t)の面上全体に例えば約5mmの厚さで非硬化性層48が形成される。この非硬化性層48は先打ちコンクリート41及び後打ちコンクリート42が形成される間に硬化しないような非硬化性の物質からなる。非硬化性層48は、例えば、型枠内面43tに対して、非硬化性物質が塗布されて形成されてもよい。ここでは、塗布された非硬化性物質が型枠内面43t上に留まり易いように、型枠内面43tに凹凸が設けられるなど、型枠内面43tが予め粗面化されていてもよい。以上のような第1面木型枠部43a、型枠本体部43j、及び非硬化性層48を有する型枠構造49が先打ちコンクリート41用の褄型枠43に採用される。
【0033】
ここで用いられる非硬化性物質には、前述のとおり、先打ちコンクリート41及び後打ちコンクリート42が形成される間に硬化しないことが求められ、また、先打ちコンクリート41及び後打ちコンクリート42が形成された後、後述するように高圧水で除去可能であることが求められる。このような非硬化性物質としては、例えば、市販のゲル状の打継目処理剤(例えば、ディスパライトDV(商品名:日本ジッコウ株式会社製))や、その他のゲル状物質が採用されてもよい。また、非硬化性物質としては、コースターチ、アクリル系増粘剤等の安価な増粘剤を水で溶いた溶液などが採用されてもよい。
【0034】
次に、上記の褄型枠43とセントル5とで仕切られた空間にコンクリートが打設され、セントル5及び褄型枠43が脱型されると、
図5(c)に示されるように、前述したような形状の先打ちコンクリート41が形成される(先打ち工程)。またこのとき、先打ちコンクリート41の端面には第1面取り部41aよりも地山G側の位置に非硬化性層48が残置される。次に、セントル5が1スパン分(例えば、10.5~12.5m)切羽側に移動した後、
図6(a)に示されるように、後打ちコンクリート42用の褄型枠44が、上記の先打ちコンクリート41の切羽側の端部に近接して、セントル5と地山Gとの間に設置される。褄型枠44は第2面木型枠部44aにより構成され、第2面木型枠部44aは、前述の第2面取り部42aを形成するための型枠部であり、トンネル軸方向に対して45°の角度をなす型枠内面44sを有する。第2面木型枠部44aは、当該第2面木型枠部44aの上端部が非硬化性層48の下端部に位置するように設置される。
【0035】
次に、
図6(b)に示されるように、上記の褄型枠44(第2面木型枠部44a)とセントル5とで仕切られた空間にコンクリートが打設される(後打ち工程)。このとき、非硬化性層48の地山G側の端部よりも地山G側の部分においては、打設されたコンクリートが先打ちコンクリート41の端面と接触し、この部分が打継部45となる。また、非硬化性層48は、先打ちコンクリート41と後打ちコンクリート42とを縁切りする縁切り部として機能している。すなわち、先打ちコンクリート41と後打ちコンクリート42とがトンネル軸方向に非硬化性層48を挟み込んで形成される。そして、非硬化性層48の内空部K側の端部よりも内空部K側においては、面取り部41a,42aを挟んで先打ちコンクリート41と後打ちコンクリート42とが離間している。その後、セントル5及び褄型枠44が脱型されると、先打ちコンクリート41との間に上記非硬化性層48を挟んだ状態で後打ちコンクリート42が形成される。
【0036】
その後、
図6(c)に示されるように、非硬化性層48を洗い流すために、内空部K側から第1面取り部41aと第2面取り部42aとの間を通じて非硬化性層48に高圧水を噴射すると、非硬化性層48は高圧水により吹き飛ばされ除去される(洗浄工程)。これにより、前述の間隙46が形成され、5(a)に示されるように、目地部7Dが完成する。
【0037】
以上説明した目地部形成方法によれば、非硬化性層48が、先打ちコンクリート41と後打ちコンクリート42とを縁切りする縁切り部として機能している。従って、先打ちコンクリート41と後打ちコンクリート42とが付着する打継部45の幅が非硬化性層48の分だけ狭くなり、先打ちコンクリート41と後打ちコンクリート42との付着が低減される。その結果、付着によって先打ちコンクリート41と後打ちコンクリート42の間に発生しうる引張力が低減され、目地部7Dの面取り部41a,42aやその周辺に発生しうるひび割れや浮きが抑制される。
【0038】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、例えば下記の変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0039】
例えば、第1実施形態において、第2面取り部12a(
図2(a)参照)の地山G側の端部が、
図7(a)に示されるように、地山Gに達するように第2面木型枠部14aの高さが設定されてもよい。同様に、第2実施形態において、第1面取り部21a(
図3(a)参照)の地山G側の端部が、
図7(b)に示されるように、地山Gに達するように第1面木型枠部23aの高さが設定されてもよい。
図7(a),(b)の構成によれば、第1面取り部11a又は第2面取り部22aの地山G側の端部から地山Gに到るまで縁切り部が存在することになり、先打ちコンクリートと後打ちコンクリートとが付着しなくなる。
【0040】
また、第4実施形態において、平型枠部43bの型枠内面43t上に非硬化性層48(
図5(b)参照)が設けられているが、
図7(c)に示されるように、非硬化性層48は、平型枠部43bだけでなく木矢板43cの型枠内面にも亘って設けられてもよい。また、型枠本体部43jが平型枠部43bと木矢板43cとを備えているが、
図7(d)に示されるように、型枠本体部43jが木矢板43cからなるものであってもよく、この場合、非硬化性層48が型枠本体部43jの型枠内面全体に設けられてもよい。
図7(c),(d)の構成によれば、第1面木型枠部43aの地山G側の端部から地山Gに到るまで縁切り部が存在することになり、先打ちコンクリート41と後打ちコンクリート42とが付着しなくなる。なお、非硬化性層48が第1面木型枠部43aの型枠内面43s上に存在することは不必要であるが、
図7(e)に示されるように、非硬化性層48が、平型枠部43bの型枠内面43t(型枠本体部43jの型枠内面)から第1面木型枠部43aの型枠内面43sに亘るように設けられてもよい。
【0041】
また、第4実施形態では、型枠内面43t等に非硬化性物質が塗布されて非硬化性層48が形成されているが、
図7(f)に示されるように、非硬化性物質48bを予め封入した水溶性袋48aが型枠内面43t等に貼着されることで非硬化性層48が形成されてもよい。すなわち、非硬化性層48は、型枠内面43t等に対して貼着された水溶性袋48aと、当該水溶性袋48a内に封入された非硬化性物質48bと、を有するものであってもよい。この場合、洗浄工程では、水溶性袋48aは高圧水で溶解され非硬化性物質48bと一緒に除去される。
【符号の説明】
【0042】
1…トンネル、3…覆工コンクリート、7A,7B,7C,7D…目地部、G…地山、K…内空部、11,21,31,41…先打ちコンクリート、12,22,32,42…後打ちコンクリート、11a,21a,31a,41a…第1面取り部、12a,22a,32a,42a…第2面取り部、13a、23a,43a…第1面木型枠部、14a,24a,44a…第2面木型枠部、16,26…段差部(縁切り部)、43…褄型枠、43j…型枠本体部、43b…平型枠部、43c…木矢板、43t…型枠内面、48…非硬化性層(縁切り部)、48a…水溶性袋、48b…非硬化性物質、49…型枠構造。