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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】染毛用または毛髪脱色用第1剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20240619BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240619BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20240619BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/55
A61K8/34
A61K8/86
A61Q5/08
A61Q5/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021098772
(22)【出願日】2021-06-14
(65)【公開番号】P2022190445
(43)【公開日】2022-12-26
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】松谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】町田 昌治
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0056297(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0169286(US,A1)
【文献】特表2013-503109(JP,A)
【文献】特表2013-508264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤を含有する第2剤組成物と混合して使用する染毛用または毛髪脱色用の第1剤組成物であって、
(A)カオリン、マイカおよびタルクからなる群から選択される少なくとも1種、
(B)少なくとも1種の界面活性剤、並びに、
(C)油性成分
を含んでなり、
前記(B)少なくとも1種の界面活性剤が非イオン性界面活性剤(B1)およびアニオン性界面活性剤(B2)を含み、
前記非イオン性界面活性剤(B1)が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類を含み、前記アニオン性界面活性剤(B2)がリン酸系アニオン性界面活性剤を含み、
前記(A)と前記アニオン性界面活性剤(B2)との質量比が0.5以上であり、
前記(C)油性成分が25℃で固体の高級アルコールおよび25℃で液体の油剤を含み、
20℃における粘度が5,000mPa・s以上70,000mPa・s以下である、第1剤組成物。
【請求項2】
前記(A)と前記非イオン性界面活性剤(B1)との質量比が0.1以上である、請求項1に記載の第1剤組成物。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤(B1)と前記アニオン性界面活性剤(B2)との質量比が0.2以上である、請求項1または2に記載の第1剤組成物。
【請求項4】
(A)の含有量が、第1剤組成物の総質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の第1剤組成物。
【請求項5】
(A)としてカオリンを含む、請求項1~4のいずれかに記載の第1剤組成物。
【請求項6】
(D)アンモニアをさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の第1剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤を含有する第2剤組成物と混合して使用する染毛用または毛髪脱色用の第1剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の染色および脱色には、アルカリ剤と酸化剤の共存下における酸化反応によって毛髪を染色ないし脱色する、酸化性の染毛剤または脱色剤が広く使用されている。染毛剤や脱色剤には、毛髪全体に均一な仕上がりをもたらすことが求められる一方、塗布後の毛髪上での放置時間中の垂れ落ちを防ぐことが従来から課題となってきた。このような課題を解決するための染毛剤として、例えば、特許文献1には、毛髪への塗布後頭皮への付着を抑えるために非水溶性鉱物と水溶性高分子とを配合するヘアカラーリング剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-229106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載されるヘアカラーリング剤は、非水溶性鉱物および水溶性高分子を配合して剤の粘度を高くすることによって毛髪への定着性の向上をはかっており、剤の使用性や取扱性、特に2剤式染毛剤として用いる場合の混合性や毛髪への塗布性において劣ることがある。その結果、剤が毛髪全体に均一に付着し難く、染め上がりにムラが生じるなど、その染毛効果は必ずしも満足いくものではなかった。
【0005】
本発明は、2剤と混合して使用する際の使用性(混合および塗布のしやすさ)に優れ、毛髪に均一に塗布することができるとともに、根元まで均一な染毛が可能な染毛用または毛髪脱色用の第1剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために詳細に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
[1]酸化剤を含有する第2剤組成物と混合して使用する染毛用または毛髪脱色用の第1剤組成物であって、
(A)カオリン、マイカおよびタルクからなる群から選択される少なくとも1種、
(B)少なくとも1種の界面活性剤、並びに、
(C)油性成分
を含んでなり、
前記(B)少なくとも1種の界面活性剤が非イオン性界面活性剤を含み、
前記(C)油性成分が25℃で固体の高級アルコールおよび25℃で液体の油剤を含み、
20℃における粘度が5,000mPa・s以上70,000mPa・s以下である、第1剤組成物。
[2](B)少なくとも1種の界面活性剤はアニオン性界面活性剤をさらに含む、[1]に記載の第1剤組成物。
[3](B)少なくとも1種の界面活性剤はリン酸系アニオン界面活性剤を含む、[1]または[2]に記載の第1剤組成物。
[4](A)の含有量が、第1剤組成物の総質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の第1剤組成物。
[5](A)としてカオリンを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の第1剤組成物。
[6](D)アンモニアをさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の第1剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2剤と混合して使用する際の使用性(混合および塗布のしやすさ)に優れ、毛髪に均一に塗布することができるとともに、根元まで均一な染毛が可能な染毛用または毛髪脱色用の第1剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0009】
本発明の第1剤組成物は、酸化剤を含有する第2剤組成物と混合して使用する染毛用または毛髪脱色用の第1剤組成物である。本発明の第1剤組成物は、(A)カオリン、マイカおよびタルクからなる群から選択される少なくとも1種(以下、「成分(A)」ともいう)を含む。成分(A)を含むことにより、本発明の第1剤組成物を用いて、毛髪に対して均一な染毛効果をもたらす染毛剤または毛髪脱色剤を調製し得る。特に、白髪染め用などの染毛剤を毛髪の根元部分に塗布して所定時間放置する際に、根元部分が浮き上がると白髪の染残しが生じて仕上がりがムラになりやすい。成分(A)を含む本発明の第1剤組成物は、毛髪の、特に根元部分の浮き上がりを抑える効果が高く、これを用いる染毛剤を毛髪へ塗布して所定時間放置する間、根元部分まで染毛剤を均一に付着させた状態を保持し得る。これにより、根元部分等に染残しが生じ難く、よりムラの少ない均一な仕上がりをもたらすことができる。また、成分(A)を含む本発明の第1剤組成物は、優れた染毛効果に加え、染毛処理後の毛髪全体や毛先に良好なまとまり感をもたらすことができる。
【0010】
成分(A)としては、カオリン、マイカおよびタルクからなる群から選択される1種のみを含んでもよく、これらから選択される2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。塗布時の根元部分の浮き上がりに対する抑制効果がより向上しやすく、また、特に、第1剤組成物が乳化組成物である場合の乳化状態や保存安定性に優れる点から、成分(A)として、カオリンを含むことが好ましい。
【0011】
成分(A)の含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。成分(A)の含有量が前記範囲内であると、剤の良好な使用性および塗布性と高い染毛効果とを両立しやすい。成分(A)の含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上であり、本発明の一実施態様においては4質量%を超えてもよく、また、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは12質量%以下である。成分(A)の含有量が前記下限値以上であると、塗布時の根元部分の浮き上がりをより抑制しやすい。また、成分(A)の含有量が前記上限値以下であると、安定性に優れ、かつ、第2剤組成物と混合する際の良好な混合性や使用性を有する第1剤組成物が得られやすい。
【0012】
本発明の第1剤組成物は、(B)少なくとも1種の界面活性剤(以下、「成分(B)」ともいう)を含む。本発明の第1剤組成物は、成分(B)として、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤(B1)を含む。成分(A)を配合することによって剤に堅さが出る傾向にあり、成分(A)を乳化組成物に用いる場合には良好な乳化状態や保存安定性を確保し難く、また、2剤式染毛剤または脱色剤の第1剤組成物に用いる場合には、第2剤組成物との混合性が低下しやすく、得られる染毛剤や脱色剤の塗布性にも影響を及ぼしやすい。本発明の第1剤組成物は、成分(B)の界面活性剤として非イオン性界面活性剤(B1)を含むことにより、良好な乳化状態を確保することができる。良好な乳化状態を有する第1剤組成物は、成分(A)に起因する優れた染毛効果(特に、根元の浮き上がり抑制効果やまとまり感)を十分に発揮しやすく、また、第2剤組成物との関係において有利となる特性を確保しやすい。特に、成分(A)を比較的多く配合する場合であっても、第2剤組成物との良好な混合性を確保でき、使用性や塗布性に優れる染毛剤を得るのに適した第1剤組成物となる。これにより、毛髪に対して均一に塗布しやすく、その後の根元部分の浮き上がりをより効果的に抑制することができ、剤の良好な使用性および塗布性と高い染毛効果とを両立する染毛剤および毛髪脱色剤が得られる。
【0013】
非イオン性界面活性剤(B1)は、公知の非イオン性界面活性剤から適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレン(以下、「POE」ともいう)アルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン(以下、「POP」ともいう)アルキルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、酸やアルカリ剤に対する耐性に優れることから、非イオン性界面活性剤(B1)として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類を含むことがより好ましい。
【0014】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレン基と炭素数12~22の脂肪酸残基とを有するものが挙げられ、その具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等が挙げられる。ポリオキシエチレンの繰り返し単位数は、例えば2~200であり、好ましくは10~100である。
【0015】
本発明の第1剤組成物における非イオン性界面活性剤(B1)の含有量は、用いる非イオン性界面活性剤の種類やその組み合わせ等に応じて適宜決定し得るが、第1剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1質量%以上8質量%以下である。非イオン性界面活性剤(B1)の含有量が前記範囲内であると、組成物の乳化特性を制御しやすく、第2剤組成物との混合性に優れる第1剤組成物を得やすい。かかる効果がより向上しやすく、良好な使用性および塗布性と高い染毛効果とを両立しやすい観点から、非イオン性界面活性剤(B1)の含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、また、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
【0016】
第1剤組成物における成分(A)と非イオン性界面活性剤(B1)との質量比〔成分(A)/非イオン性界面活性剤(B1)〕は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。成分(A)と非イオン性界面活性剤(B1)との質量比が前記上限下限の範囲内であると、成分(A)を配合することによる均一な染毛効果やまとまり感を確保したまま、剤の粘度や乳化特性を制御しやすく、第2剤との関係において優れた使用性や塗布性を示す第1剤組成物を調製しやすい。
【0017】
本発明の第1剤組成物は、成分(B)として、少なくとも1種のイオン性界面活性剤を含むことが好ましく、少なくとも1種のアニオン性界面活性剤(B2)を含むことがより好ましい。成分(B)の界面活性剤として非イオン性界面活性剤(B1)に加えてイオン性界面活性剤、特にアニオン性界面活性剤(B2)を含むと、乳化状態がより安定しやすく、成分(A)の配合による利点を十分に確保しながら、第2剤組成物との混合性により優れる第1剤組成物を得やすくなる。特に、成分(A)を比較的多く配合する場合であっても、第2剤組成物との良好な混合性を確保しやすく、剤の良好な使用性や塗布性と高い染毛効果とを両立する染毛剤および毛髪脱色剤が得られる。
【0018】
アニオン性界面活性剤(B2)は、公知のアニオン性界面活性剤から適宜選択することができ、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル型アニオン性界面活性剤;アルキルリン酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩等のリン酸エステル型アニオン性界面活性剤;N-アシルメチルタウリン塩、アルキルスルホコハク酸等のスルホン酸型アニオン性界面活性剤;高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル乳酸塩、N-アシルサルコシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルメチルアラニン塩等のカルボン酸型アニオン性界面活性剤等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明の第1剤組成物におけるアニオン性界面活性剤(B2)の含有量は、用いるアニオン性界面活性剤の種類やその組み合わせ等に応じて適宜決定し得るが、第1剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1質量%以上8質量%以下である。アニオン性界面活性剤(B2)の含有量が前記範囲内であると、組成物の乳化特性を制御しやすく、第2剤組成物との混合性に優れる第1剤組成物を得やすい。かかる効果がより向上しやすく、良好な使用性および塗布性と高い染毛効果とを両立しやすい観点から、アニオン性界面活性剤(B2)の含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、また、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
【0020】
本発明の一実施態様において、第1剤組成物はリン酸系アニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。リン酸系アニオン性界面活性剤を含むことにより、成分(A)を配合することにより得られる毛髪のまとまり感が向上しやすい。リン酸系アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸を含むことが好ましく、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸等が挙げられる。ポリオキシエチレンの繰り返し単位数は、例えば2~100であり、好ましくは3~30である。
【0021】
第1剤組成物が、アニオン性界面活性剤(B2)としてリン酸系アニオン性界面活性剤を含む場合、その含有量は、アニオン性界面活性剤(B2)の総質量に対して好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、第1剤組成物に含まれる全てのアニオン性界面活性剤(B2)がリン酸系アニオン性界面活性剤であってもよい。
【0022】
第1剤組成物における非イオン性界面活性剤(B1)とアニオン性界面活性剤(B2)との質量比〔非イオン性界面活性剤(B1)/アニオン性界面活性剤(B2)〕は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。非イオン性界面活性剤(B1)とアニオン性界面活性剤(B2)との質量比が前記上限下限の範囲内であると、粘度や乳化特性を制御しやすく、第2剤との関係における使用性や塗布性が向上しやすくなる。
【0023】
第1剤組成物における成分(A)とアニオン性界面活性剤(B2)との質量比〔成分(A)/アニオン性界面活性剤(B2)〕は、好ましくは0.5以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4.5以上であり、また、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。成分(A)とアニオン性界面活性剤(B2)との質量比が前記上限下限の範囲内であると、成分(A)を配合することによる均一な染毛効果やまとまり感を確保したまま、粘度や乳化特性を制御しやすく、第2剤組成物との関係において優れた使用性や塗布性を示す第1剤組成物を調製しやすい。
【0024】
本発明において、界面活性剤(B)は、非イオン性界面活性剤(B1)およびアニオン性界面活性剤(B2)以外の界面活性剤(B3)を含んでもよい。界面活性剤(B3)としては、例えば、アニオン性界面活性剤(B2)以外のイオン性界面活性剤であるカチオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウム塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミドプロピルベタイン等が挙げられる。これらはそれぞれ、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1剤組成物が界面活性剤(B3)を含む場合、その含有量は、第1剤組成物に含まれる全界面活性剤(B)の総質量に対して、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0025】
主に剤の安定性の観点から、第1剤組成物における界面活性剤(B)の総含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。
【0026】
本発明の第1剤組成物は、(C)油性成分(以下、「成分(C)」ともいう)を含む。成分(C)は、25℃で固体の高級アルコールおよび25℃で液体の油剤を含む。25℃において固体である油性成分と液体である油性成分とを含んで構成される成分(C)を含むことにより、剤の安定性(乳化安定性、保存安定性)が向上し得る。また、染毛若しくは脱色後の毛髪に対して潤いを与えることができ、成分(A)の配合により得られるまとまり感が相乗的に向上し得る。
なお、本明細書において、「25℃で固体」とは、1気圧下、25℃の環境下において、流動性を有していない状態をいい、すなわち、融点未満の温度条件の下にある状態(融点を有さない非晶性物質においては溶融点未満の温度条件の下にある状態)をいう。また、「25℃で液体」とは、1気圧下、25℃の環境下において、流動性を有している状態をいい、すなわち、融点以上の温度条件の下にある状態(融点を有さない非晶性物質においては溶融点以上の温度条件の下にある状態)をいう。
【0027】
25℃で固体の高級アルコール(以下、「成分(C1)」ともいう)は、例えば、炭素数12~22を有する25℃で固体の高級アルコールが挙げられ、具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明の第1剤組成物における成分(C1)の含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。成分(C1)の含有量が上記範囲内であると、使用性や塗布性が良好でありながら、安定性に優れる第1剤組成物を調製しやすい。
【0029】
25℃で液体の油剤(以下、「成分(C2)」ともいう)としては、
α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ポリブテン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等の炭化水素油;
オリーブ油、ツバキ油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アルモンド油、アボカド油、カロット油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油、ホホバ油等の動植物油;
イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール等の高級アルコール;
イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の高級脂肪酸;
アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ-2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジオクタン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリル酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル等のエステル油;
メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン等のシリコーン油、
などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の第1剤組成物における成分(C2)の含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。成分(C2)の含有量が上記範囲内であると、使用性や塗布性が良好でありながら、安定性に優れる第1剤組成物を調製しやすい。
【0031】
成分(C)の油性成分として、成分(C1)および(C2)に加えて、成分(C1)以外の25℃で固体または半固体である油性成分(すなわち、25℃で固体の高級アルコール以外の25℃で固体である油性成分、以下、「成分(C3)」ともいう)を含んでもよい。なお、本明細書において、「半固体」とは固体と液体の中間の状態を意味し、その一態様はペースト状である。
【0032】
成分(C3)としては、例えば、
オゾケライト、セレシン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等の炭化水素;
牛脂、カカオ脂等の動物脂;
ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、リシノレイン酸等の高級脂肪酸;
ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル等のエステル類、
などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
第1剤組成物が成分(C3)を含む場合、その含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0034】
本発明の第1剤組成物における成分(C)の総含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、総量で好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。成分(C)の総含有量が上記範囲内であると、粘度や乳化特性を制御しやすく、使用性や塗布性が良好でありながら、安定性に優れる第1剤組成物を調製しやすい。
【0035】
本発明の一実施態様において、成分(C)中の成分(C1)の割合(質量比、(C)/(C1))は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。また、成分(C)中の成分(C2)の割合(質量比、(C)/(C2))は、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3以下である。成分(C)中の成分(C1)および成分(C2)の割合がそれぞれ上記範囲内であると、粘度や乳化特性を制御しやすく、使用性や塗布性が良好でありながら、安定性に優れる第1剤組成物を調製しやすい。
【0036】
また、本発明の一実施態様において、成分(C)における成分(C1)および成分(C2)の量は、成分(C)の総質量に対して、総量で好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、成分(C)が全て成分(C1)および成分(C2)であってもよい。
【0037】
第1剤組成物における成分(A)と成分(C)との質量比〔成分(A)/成分(C)〕は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。成分(A)と成分(C)との質量比が前記上限下限の範囲内であると、成分(A)を配合することによる均一な染毛効果や優れたまとまり感を確保したまま、粘度や乳化特性を制御しやすく、第2剤との関係において優れた使用性や塗布性を示す第1剤組成物を調製しやすい。
【0038】
第1剤組成物は、カチオン性ポリマーを含むことが好ましい。カチオン性ポリマーを含むことにより、染毛または脱色後の仕上がりの質感が向上しやすい。本明細書において、カチオン性ポリマーは、カチオン基またはカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーを意味し、全体としてカチオン性となる両性ポリマーも含まれる。カチオン性ポリマーとしては、具体的に、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基若しくはアンモニウム基を含むか、またはジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む水溶液のもの、例えばカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体若しくは共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
【0039】
第1剤組成物がカチオン性ポリマーを含む場合、その含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0040】
本発明の第1剤組成物は、通常、アルカリ剤を含む。アルカリ剤は、毛髪を膨潤させて、染料や第2剤に含まれる酸化剤の浸透を促進する作用を有する。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア;モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等のアルカノールアミン;1,3-プロパンジアミン等のアルカンジアミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
油性成分(C)および成分(B)と、成分(A)とを組み合わせて含む本発明の第1剤組成物においては、これらの成分に起因する相互作用により、アンモニア臭に対する高い低減効果が期待できる。したがって、本発明の第1剤組成物はアルカリ剤としてアンモニアを含む場合、特に比較的高濃度のアンモニアを含む場合においても有利である。
【0042】
染毛および脱色効果の観点、ならびに毛髪損傷や頭皮刺激の低減の観点から、第1剤組成物におけるアルカリ剤の含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0043】
第1剤組成物が染毛用第1剤組成物である場合、該第1剤組成物は、酸化染料中間体または直接染料を含む。一方、第1剤組成物が毛髪脱色用第1剤組成物である場合、該第1剤組成物は、通常、染料を含まない。
【0044】
酸化染料中間体としては、染毛剤の分野において従来公知のプレカーサーおよびカプラーを用いることができる。プレカーサーとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、2-クロロ-パラフェニレンジアミン、N-メトキシエチル-パラフェニレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2-(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2,6-ジメチル-パラフェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、1,3-ビス(N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(4-アミノフェニル)アミノ)-2-プロパノール、PEG-3,3,2’-パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、2-アミノメチル-4-アミノフェノール、2-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)-4-アミノフェノール、オルトアミノフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、2-アミノ-6-メチルフェノール、2-アミノ-5-アセタミドフェノール、3,4-ジアミノ安息香酸、5-アミノサリチル酸、2,4,5,6-テトラアミノピリミジン、2,5,6-トリアミノ-4-ヒドロキシピリミジン、4,5-ジアミノ-1-(4’-クロロベンジル)ピラゾール、4,5-ジアミノ-1-ヒドロキシエチルピラゾール、およびこれらの塩等が挙げられる。
【0045】
カプラーとしては、例えば、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)アニソール、2,4-ジアミノ-5-メチルフェネトール、2,4-ジアミノ-5-(2-ヒドロキシエトキシ)トルエン、2,4-ジメトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、2,6-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、2,4-ジアミノ-5-フルオロトルエン、1,3-ビス(2,4-ジアミノフェノキシ)プロパン、メタアミノフェノール、2-メチル-5-アミノフェノール、2-メチル-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2,4-ジクロロ-3-アミノフェノール、2-クロロ-3-アミノ-6-メチルフェノール、2-メチル-4-クロロ-5-アミノフェノール、N-シクロペンチル-メタアミノフェノール、2-メチル-4-メトキシ-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2-メチル-4-フルオロ-5-アミノフェノール、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、4-クロロレゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、4-ヒドロキシインドール、5-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシインドール、7-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシベンゾモルホリン、3,4-メチレンジオキシフェノール、2-ブロモ-4,5-メチレンジオキシフェノール、3,4-メチレンジオキシアニリン、1-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、2,6-ジヒドロキシ-3,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメトキシ-3,5-ジアミノピリジン、2,3-ジアミノ-6-メトキシピリジン、2-メチルアミノ-3-アミノ-6-メトキシピリジン、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、2,6-ジアミノピリジン、およびこれらの塩等が挙げられる。
【0046】
酸化染料中間体は、それぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、それぞれ、好ましくは0.01~8質量%、より好ましくは0.1~5質量%である。
【0047】
直接染料としては、例えば、ニトロ染料、分散染料、塩基性染料等が挙げられる。ニトロ染料としては、具体的に、2-ニトロ-パラフェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、3-ニトロ-パラヒドロキシエチルアミノフェノール、4-ニトロ-オルトフェニレンジアミン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、HCブルーNo.2、HCオレンジNo.1、HCレッドNo.1、HCイエローNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.5、HCレッドNo.3、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-パラフェニレンジアミン等が挙げられる。分散染料としては、例えば、ディスパーズバイオレット1、ディスパーズブルー1、ディスパーズブラック9等が挙げられる。また、塩基性染料としては、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ベーシックレッド76、ベーシックレッド51、ベーシックイエロー57、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31等が挙げられる。
【0048】
直接染料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その含有量は、第1剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.001~5質量%、より好ましくは0.01~3質量%である。
【0049】
本発明の第1剤組成物は、上述した必須成分(A)~(C)および任意成分に加えて、染毛用、脱色用第1剤組成物に通常配合され得る他の成分を、本発明の効果を奏する範囲内の量で含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、溶剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、香料、増粘剤、有機酸、湿潤剤、紫外線吸収剤、保湿剤等が挙げられる。
【0050】
溶剤としては、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0051】
酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸およびその誘導体、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0052】
pH調整剤としては、先に記載のアルカリ剤のほか、塩酸、リン酸等の無機酸;クエン酸、グリコール酸、乳酸等の有機酸;リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の無機酸塩若しくは有機酸塩;炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩類等が挙げられる。
【0053】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム等が挙げられる。
【0054】
第1剤組成物の剤型は、例えば、乳液等の液状、クリーム状、フォーム状、ゲル状等であってよいが、クリーム状の乳化組成物として調製されることが好ましい。特に、成分(A)を油相成分として乳化することにより、成分(A)の均一な分散が容易であり、剤の良好な使用性や塗布性と高い染毛効果とのバランスに優れる第1剤組成物が得られる。具体的には、例えば、通常の乳化方法に従い、成分(A)~(C)および必要に応じて他の油性成分を混合した油相と、水等の水性成分を混合した水相とを撹拌しながら混合、乳化することにより、本発明の第1剤組成物が得られる。
【0055】
本発明において、第1剤組成物の20℃における粘度は、5,000mPa・s以上70,000mPa・s以下である。第1剤組成物の粘度が前記範囲内であることにより、毛髪に対して均一に塗布しやすく、その後の根元部分の浮き上がりをより効果的に抑制することができ、剤の良好な使用性および塗布性と高い染毛効果とを両立する染毛または毛髪脱色用第1剤組成物となる。特に、20℃における粘度が70,000mPa・sを超えると、第2剤組成物との混合性が劣り、根元部分の浮き上がりに対する高い抑制効果を有しながら優れた塗布性を両立する染毛剤または毛髪脱色剤を得ることが困難となる。前記効果をより一層高めやすいことから、第1剤組成物の20℃における粘度は、好ましくは8,000mPa・s以上、より好ましくは10,000mPa・s以上であり、また、好ましくは60,000mPa・s以下、より好ましくは50,000mPa・s以下である。
第1剤組成物の粘度は、回転式粘度計により測定できる。回転式粘度計としては、例えばハーケ(HAAKE)VT-550レオメーター(Thermo Fisher Scientific社製)等を用いることができ、例えば、SV1センサー、温度20℃、剪断速度7.2s-1の測定条件下にて測定することができる。
【0056】
第1剤組成物の粘度は、成分(A)の含有量、非イオン性界面活性剤(B1)および/またはアニオン性界面活性剤(B2)の種類、それらの組合せおよびそれらの含有量、成分(C1)および/または成分(C2)の種類、それらの組合せおよびそれらの含有量、溶剤や塩等の成分の種類や含有量を調整することにより制御できる。
【0057】
本発明の第1剤組成物のpH(25℃)は、染毛効果および剤の安定性の観点から、好ましくは8~12であり、より好ましくは9~11である。
【0058】
本発明の第1剤組成物は、酸化剤を含有する第2剤組成物と混合することにより、染毛剤または毛髪用脱色剤を得ることができる。本発明の第1剤組成物は、酸化剤を含む一般的な第2剤組成物として従来公知の種々の組成物との組み合わせにおいて用いることができる。
【0059】
第2剤組成物が含む酸化剤としては、過酸化水素、臭素酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム 等を用いることができる。第2剤組成物における酸化剤の含有量は特に限定されるものでないが、染毛および脱色効果の観点、ならびに毛髪損傷や頭皮刺激の低減の観点から、第2剤組成物の総質量に対して、通常、0.1質量%以上12質量%以下であり、好ましくは1質量%以上6質量%以下である。
【0060】
第2剤組成物は、酸化剤に加えて、界面活性剤、油剤、溶剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、香料、増粘剤、安定剤等を配合することができる。
【0061】
第2剤組成物を構成する成分は、本発明の第1剤組成物の組成や第2剤組成物の剤型等にあわせて適宜選択し得るが、本発明の第1剤組成物は、特に、油性成分を含む第2剤組成物と組み合わせる場合に、本発明における効果をより顕著に得られやすい。したがって、本発明の一実施態様において、本発明の第1剤組成物と組み合わせて用いる第2剤組成物が、第2剤組成物の総質量に対して1質量%以上の油性成分を含むことが好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上の油性成分を含む。第2剤組成物に含まれ得る油性成分としては、第1剤組成物に用い得る油性成分(C)として先に例示したような成分が挙げられる。これらは、1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
油性成分を含む場合には、第2剤組成物の安定性等の観点から、第2剤組成物が界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、第1剤組成物に用い得る界面活性剤(B)として先に例示したような各界面活性剤が挙げられ、第2剤組成物の剤型や所望する粘度等にあわせて適宜選択し得る。界面活性剤として、1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
第2剤組成物の剤型は、例えば、乳液等の液状、クリーム状、フォーム状、ゲル状等であってよい。
【0064】
上述した第1剤組成物が有する本発明の効果を十分に発揮させ得る観点から、本発明の第1剤組成物との組み合わせにおいて用いる第2剤組成物は、第1剤組成物の20℃での粘度との差(絶対値)が、好ましくは50,000mPa・s以下、より好ましくは30,000mPa・s以下の粘度(20℃)を有することが好ましい。本発明の一実施態様において、本発明の第1剤組成物との組み合わせにおいて用いる第2剤組成物の20℃の粘度は、好ましくは1,000mPa・s以上50,000mPa・s以下、より好ましくは5,000mPa・s以上20,000mPa・s以下である。第2剤組成物の上記粘度は、第1剤組成物の粘度の測定方法と同様の方法により測定し得る。
【0065】
第2剤組成物の粘度は、油剤や界面活性剤の種類や含有量により制御し得る。
【0066】
第2剤組成物のpH(25℃)は、染毛効果および剤の安定性の観点から、好ましくは2~4であり、より好ましくは2.5~3.5である。
【0067】
本発明の第1剤組成物を第2剤組成物と混合する際の混合比(質量比、第1剤組成物:第2剤組成物)は、得られる染毛剤または脱色剤(混合物)中の各成分の濃度、混合性、塗布方法、染色性等を考慮して適宜決定し得るが、好ましくは1:0.5~5、より好ましくは1:1~3である。
【0068】
本発明の第1剤組成物と第2剤組成物とを混合して得られる染毛剤または脱色剤の20℃での粘度が、5,000mPa・s以上50,000mPa・s以下となることが好ましく、10,000mPa・s以上30,000mPa・s以下となることがより好ましい。前記粘度は、例えば、回転式粘度計により測定できる。回転式粘度計としては、例えば、ハーケ(HAAKE)VT-550レオメーター(Thermo Fisher Scientific社製)等を用いることができ、例えば、MV2センサー、温度20℃、剪断速度7.2s-1の測定条件下にて測定し得る。
【0069】
混合後の剤型は、毛髪に適用できる剤型であれば特に限定されず、例えば、水溶液、乳液等の液状、クリーム状、フォーム状、ゲル状等であってよい。
【実施例
【0070】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は以下の実施例の内容に限定されるものではない。また、例中の「%」および「部」は、特記ない限り、それぞれ質量%および質量部を意味する。
【0071】
1.第1剤組成物の調製
表1~3に示す組成に従い、以下の手順により、実施例1~13および比較例1~6の比較例の第1剤組成物を調製した。
油相成分として、成分(A)、(B)および(C)等を混合し、80℃で加熱溶解して油相を調製した。これとは別に、水、染料、安定剤等を混合して80℃で加熱溶解して水相を調製した。得られた油相に水相を加えて乳化した後、室温まで冷却した。得られた乳化物にアンモニアおよび/またはモノエタノールアミンを加えて均一に混合することにより第1剤組成物を得た。
【0072】
得られた第1剤組成物の粘度を、ハーケ(HAAKE)VT-550レオメーター(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、SV1センサー、温度20℃、剪断速度7.2s-1の測定条件で測定した。結果を表1~3に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
2.第2剤組成物の調製
表4に示す各成分を混合し、第2剤組成物(乳化組成物)を調製した。
【0077】
得られた第2剤組成物の粘度を、ハーケ(HAAKE)VT-550レオメーター(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、SV1センサー、温度20℃、剪断速度7.2s-1の測定条件で測定した。結果を表4に示す。
【0078】
【表4】
【0079】
3.各種物性/特性および染毛効果の評価
実施例1~13および比較例1~6の第1剤組成物について、安定性、第2剤組成物との混合性、使用性および染毛効果等について、それぞれ、以下の方法に従い評価した。結果を表5に示す。
【0080】
(1)乳化状態(乳化安定性)
第1剤組成物の混合状態を目視にて観察し、下記基準に従って乳化状態を評価した。
<評価基準>
◎:均一な乳化物が得られた
〇:わずかに粗い乳化物が得られた
△:不均一な乳化物となった
×:乳化物が得られなかった
なお、乳化状態の評価が×または△であった比較例2~4については、以降の評価は行わなかった。
【0081】
(2)保存安定性
第1剤組成物をガラス容器に入れて40℃で6ヶ月間保存した後、外観の変化を観察し、下記基準に従って保存安定性を評価した。
<評価基準>
◎:ほぼ変化がなかった
〇:わずかに粘度の低下がみられた
△:著しい粘度の低下がみられた
×:分離した
【0082】
(3)第2剤組成物との混合性
第1剤組成物と第2剤組成物とを等量ずつカップにとり、ハケを用いて混合した際の混合しやすさや混合状態について官能評価した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
◎:混合しやすく、ムラなく均一に混合することが可能
〇:やや混合しにくいが、均一に混合することが可能
△:かなり混合しにくい
×:混合しにくく、均一にならない
【0083】
また、得られた混合物の粘度を、ハーケ(HAAKE)VT-550レオメーター(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、MV2センサー、温度20℃、剪断速度7.2s-1の測定条件にて測定した。
【0084】
(4)根元の浮き上がり抑制効果
前記(3)の評価で混合した第1剤組成物と第2剤組成物とからなる染毛剤組成物を、ハケを用いて人頭の毛髪に塗布し、根元部分における浮き上がり抑制効果について目視にて観察した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
◎:染毛剤組成物が粘りのあるクリーム状で、根元立ち上がり部分の押さえが良好
〇:◎より粘りは少ないが、根元部分を押さえることができる
△:クリームの粘りが不十分で根元部分を十分に押さえることができない
×:根元部分が浮き上がり、クリームが付着しない
【0085】
(5)塗布操作性
前記(3)の評価で混合した第1剤組成物と第2剤組成物とからなる染毛剤組成物を、ハケを用いて人頭の毛髪に塗布した際の、液だれや伸びのよさ、塗布ムラ等の操作性について官能評価した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
◎:伸びがよく、たれ落ちがなく、ムラなく塗布できた
〇:◎よりやや操作性はよくないがほぼムラなく塗布できた
△:伸びがあまりよくなく、ムラになりやすい
×:たれ落ちが生じる
【0086】
(6)塗布中のアンモニア臭
前記(5)の評価に際して、塗布中のアンモニア臭を以下の評価基準に従い評価した。
<評価基準>
◎:アンモニア臭が気にならない
〇:わずかにアンモニア臭を感じる
△:アンモニアの刺激臭を感じる
×:アンモニアの強い刺激臭を感じる
【0087】
(7)毛先のおさまり感
下記手順に従って染毛処理をした後の毛先のおさまり感を官能評価した。
<染毛処理手順>
前記(4)および(5)の評価にて塗布した染毛剤を30分間放置した後、水洗し、シャンプーによる洗浄およびコンディショナーによる処理の後洗い流し、ヘアドライヤーにて乾燥させた。
<評価基準>
◎:毛先のおさまりがよい仕上がりとなった
〇:ほぼ毛先のおさまりがよい仕上がりとなった
△:やや毛先のおさまりが悪い仕上がりとなった
×:毛先のおさまりが悪い仕上がりとなった
【0088】
(8)毛髪全体のまとまり感
前記(7)において染毛処理後の毛髪全体のまとまり感を官能評価した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
◎:毛髪全体にまとまり感のある仕上がりとなった
〇:ほぼ毛髪全体にまとまり感のある仕上がりとなった
△:やや毛髪全体にまとまり感がない仕上がりとなった
×:毛髪全体にまとまり感がない仕上がりとなった
【0089】
(9)染毛力および均染性
前記(7)において染毛処理後の毛髪の染色の程度および色ムラの程度を目視にて観察し、以下の基準に従い染毛力および均染性を評価した。
<評価基準>
◎:ムラがなく均一に毛髪全体がしっかりと染色された
〇:ほぼムラがなく均一に毛髪全体がしっかりと染色された
△:ややムラがあり均一な染め上がりがえられなかった
×:ムラがあり均一な染め上がりがえられなかった
【0090】
【表5】