(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】物体認識装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/89 20060101AFI20240619BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240619BHJP
【FI】
G01S13/89
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2021137975
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽平
(72)【発明者】
【氏名】古賀 友一朗
(72)【発明者】
【氏名】大林 幹生
(72)【発明者】
【氏名】中川 拓也
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/024220(WO,A1)
【文献】特開2006-189393(JP,A)
【文献】特開2007-114057(JP,A)
【文献】国際公開第2021/065371(WO,A1)
【文献】特開2011-197963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0310651(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109398232(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
30/418
40/16
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検出する物体検出装置(22)を備える車両に適用され、車両走行時において、前記物体検出装置により時系列で検出された複数の検出点のうち1物体につき所定点数の検出点を抽出し、その所定点数の検出点に基づいて物体形状を認識する物体認識装置(10)であって、
車両走行時において、前記物体検出装置により時系列で検出された前記複数の検出点
のうち、曲線状に並ぶ各検出点を検出点群(DA)とし、その検出点群に含まれる各検出点に基づいて物体の被検出面の曲率半径を算出する算出部と、
前記算出部により算出された前記曲率半径が所定の閾値よりも小さいことに基づいて、
前記被検出面が曲面状であることを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記所定点数の検出点により行われる物体認識の実施態様を変更する態様変更部と、
を備え
、
前記態様変更部は、前記判定部により前記被検出面が曲面状であると判定された場合に物体認識の実施態様を変更するものであり、前記検出点群を複数の検出点群に分割し、該分割された検出点群ごとに、前記所定点数の検出点に基づいて物体形状を認識させる、物体認識装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記複数の検出点のうち所定の2点を通る直線を引き、その所定の2点間の距離と、その2点間に存在する他の検出点から前記直線までの距離とに基づいて、前記曲率半径を算出する、請求項
1に記載の物体認識装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記複数の検出点について複数の組み合わせで2点を通る直線をそれぞれ引き、それら各直線に対応する複数の前記曲率半径を算出し、算出された複数の前記曲率半径のうち最も小さい前記曲率半径を、前記被検出面の曲率半径として選択する、請求項
2に記載の物体認識装置。
【請求項4】
他車両(60)の近傍を通過する際に、当該他車両の前後の隅部付近を前記被検出面とする物体認識装置であり、
前記算出部は、前記隅部付近における前記複数の検出点について複数の組み合わせで2点を通る直線をそれぞれ引き、それら各直線に対応する複数の前記曲率半径を算出し、算出された複数の前記曲率半径のうち最も小さい前記曲率半径を、前記隅部付近の曲率半径として選択する、請求項
2に記載の物体認識装置。
【請求項5】
物体を検出する物体検出装置(22)を備える車両に適用され、車両走行時において、前記物体検出装置により時系列で検出された複数の検出点のうち1物体につき所定点数の検出点を抽出し、その所定点数の検出点に基づいて物体形状を認識するプログラムであって、
コンピュータに、
車両走行時において、前記物体検出装置により時系列で検出された前記複数の検出点のうち、曲線状に並ぶ各検出点を検出点群(DA)とし、その検出点群に含まれる各検出点に基づいて物体の被検出面の曲率半径を算出する算出処理と、
前記算出処理により算出された前記曲率半径が所定の閾値よりも小さいことに基づいて、前記被検出面が曲面状であることを判定する判定処理と、
前記判定処理の判定結果に基づいて、前記所定点数の検出点により行われる物体認識の実施態様を変更する態様変更処理と、
を実行させ、
前記態様変更処理は、前記判定処理により前記被検出面が曲面状であると判定された場合に物体認識の実施態様を変更するものであり、前記検出点群を複数の検出点群に分割し、該分割された検出点群ごとに、前記所定点数の検出点に基づいて物体形状を認識させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両周辺の物体を認識する物体認識装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電磁波又は音波を用いて自車両周辺の物体を検出し、その検出結果に基づいて物体を認識する装置が知られている。例えば特許文献1の装置は、自車両の走行中に自車両周辺の物体における複数の検出点を時系列で検出し、検出された順番が前後する検出点を連結した複数の線分(ベクトル)に基づいて平面状物体の形状を認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行中においては、時系列で複数の検出点が検出され、その検出点を全てメモリに記憶する構成であると使用メモリ量が嵩むことになる。そのため、複数の検出点の間引きにより1物体につき所定点数の検出点を抽出し、その所定点数の検出点により物体の形状を認識することが考えられる。これにより、物体認識に要する使用メモリ量の削減が可能となる。
【0005】
しかしながら、物体の被検出面が自車両側に凸となる曲面状である場合には、検出点に点数制限があることに起因して、検出点により認識される物体の形状と物体の実形状との間に差異が生じる。これにより、物体の形状の認識精度が低下することが懸念される。なお、物体における凸状の曲面を正しく認識できないと、物体付近を自車両が通過する際に、その物体に対して自車両が近づき過ぎてもそれを把握できないことが懸念される。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、使用メモリ量の削減を図りつつ、物体の形状を適正に認識することができる物体認識装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段は、物体を検出する物体検出装置を備える車両に適用され、車両走行時において、前記物体検出装置により時系列で検出された複数の検出点のうち1物体につき所定点数の検出点を抽出し、その所定点数の検出点に基づいて物体形状を認識する物体認識装置であって、車両走行時において、前記物体検出装置により時系列で検出された前記複数の検出点に基づいて、物体の被検出面が曲面状であることを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記所定点数の検出点により行われる物体認識の実施態様を変更する態様変更部と、を備える。
【0008】
車両の走行時には、車両周囲に様々な物体が存在し、その物体が物体検出装置により検出される。この場合、使用メモリ量の削減を図るべく、物体検出装置により時系列で検出された複数の検出点のうち1物体につき所定点数の検出点を抽出し、その所定点数の検出点に基づいて物体形状を認識することが考えられる。ただしこの場合、物体の被検出面が車両側に凸となる曲面状であると、物体の認識精度が低下することが懸念される。
【0009】
上記構成では、車両走行時において、物体検出装置により時系列で検出された複数の検出点に基づいて、物体の被検出面が曲面状であることを判定し、その判定結果に基づいて、所定点数の検出点により行われる物体認識の実施態様を変更するようにした。この場合、物体の被検出面が曲面状でない状況と曲面状である状況とで互いに異なる態様で物体認識を行うことができ、物体の形状を適正に認識することができる。その結果、使用メモリ量の削減を図りつつ、物体の形状を適正に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】平面状物体から取得される検出点群を示す図。
【
図3】曲面状物体から取得される検出点群を示す図。
【
図4】運転支援処理の処理手順を示すフローチャート。
【
図5】曲率半径算出処理の処理手順を示すフローチャート。
【
図7】検出点間距離、離間距離、及び曲率半径を示す図。
【
図9】運転支援制御を駐車支援制御に適用した一例を示す図。
【
図10】運転支援制御を駐車支援制御に適用した一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る物体認識装置を、車載の走行制御システム100に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。走行制御システム100は、自車両周辺に存在する物体を認識するとともに、その認識結果に基づいて、自車両50が物体に対して近づき過ぎないようにしつつ運転支援制御(運転アシスト)を実施する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る走行制御システム100は、物体認識装置としてのECU10と、センサ類20と、被制御装置30とを備えている。センサ類20としては、例えば、カメラセンサ21、レーダセンサ22、ヨーレートセンサ23、車速センサ24等が備えられている。
【0013】
カメラセンサ21は、例えば単眼カメラであり、自車両周辺を撮像する。本実施形態では、自車両50は、カメラセンサ21として、フロントカメラ、リアカメラ、右サイドカメラ、左サイドカメラを有している。フロントカメラは、自車両50のフロントガラスの上端付近等に設置されており、自車両前方の所定領域を撮像する。リアカメラは、自車両50の後部(例えばトランク付近)に取り付けられており、自車両後方の所定領域を撮像する。右サイドカメラは、自車両50の右側面(例えばドアミラー付近)に取り付けられており、自車両右側方の所定領域を撮像する。左サイドカメラは、自車両50の左側面(例えばドアミラー付近)に取り付けられており、自車両左側方の所定領域を撮像する。各カメラにより撮像された画像はECU10へ出力される。
【0014】
レーダセンサ22は、自車両周辺に探査波を送信し、その探査波の反射波を受信することで自車両周辺に存在する物体の距離情報を取得する測距センサである。本実施形態では、自車両50は、レーダセンサ22として、フロントレーダ、リアレーダ、右サイドレーダ、左サイドレーダを有している。フロントレーダは、自車両50の前面においてその光軸が自車両前方を向くように取り付けられている。リアレーダは、自車両50の後面においてその光軸が自車両後方を向くように取り付けられている。右サイドレーダは、自車両50の右側面においてその光軸が自車両右側方を向くように取り付けられている。左サイドレーダは、自車両50の左側面においてその光軸が自車両左側方を向くように取り付けられている。
【0015】
各レーダは、規定時間ごとに探査波であるミリ波帯の指向性のある送信波を走査するとともに、物体の表面で反射された反射波を複数のアンテナにより受信することで物体までの距離、物体の方位、及び物体の自車両50に対する相対速度等を距離情報として取得する。各レーダは、探査波の送信時刻と反射波の受信時刻とにより、物体までの距離を算出して取得する。また、各レーダは、複数のアンテナが受信した反射波の位相差により、物体の方位を算出して取得する。さらに、各レーダは、物体の表面で反射された反射波の、ドップラー効果により変化した周波数により、物体の相対速度を算出して取得する。各レーダにより撮像された距離情報はECU10へ出力される。なお、本実施形態において、レーダセンサ22が「物体検出装置」に相当する。
【0016】
ヨーレートセンサ23は、自車両50の旋回角速度を検出する周知のヨーレートセンサとして構成される。車速センサ24は、車輪の回転速度、つまりは自車両50の走行速度を検出する。これらのセンサ23,24による検出結果は、ECU10に出力される。
【0017】
ECU10は、CPU,ROM,RAM,フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えた制御装置である。ECU10は、自車両周辺の物体を検出する。ECU10は、カメラセンサ21から取得される画像に基づいて物体を検出するとともに、レーダセンサ22から取得される距離情報に基づいて物体を検出する。
【0018】
詳細には、ECU10は、カメラセンサ21から取得される画像に対して、テンプレートマッチング(パターン認識)等の周知の画像処理を行うことにより、画像内に存在する物体を検出する。本実施形態では、物体を特定するためのテンプレートとして、物体ごとの特徴をパターン化した全身辞書が記憶されている。ECU10は、辞書に記憶された物体の実寸法と、画像上の物体の大きさである画像寸法との比に基づいて物体までの距離を算出する。また、ECU10は、画像の下端部中央を原点として、原点に対する画像上の物体の方位を算出する。ECU10は、画像から算出した物体までの距離及び物体の方位により物体の相対位置及び存在領域等を算出し、これらの情報を検出点の情報として取得する。
【0019】
また、ECU10は、レーダセンサ22から取得される距離情報に含まれる物体までの距離及び物体の方位により物体の相対位置及び存在領域等を算出し、これらの情報を検出点の情報として取得する。
【0020】
ECU10は、検出された複数の検出点に基づいて、自車両周辺に存在する物体の形状を認識し、被制御装置30を用いて自車両50の駆動力及び制動力を調整する。被制御装置30は、加速装置であるアクセル装置31と減速装置であるブレーキ装置32と操舵装置33とを有する。アクセル装置31は、ドライバのアクセル操作又はECU10からの制御指令により、自車両50に駆動力を付与する。ブレーキ装置32は、ドライバのブレーキ操作又はECU10からの制御指令により、自車両50に制動力を付与する。操舵装置33は、ドライバのハンドル操作又はECU10からの制御指令により、自車両50の操舵を制御する。
【0021】
ところで、
図2に示すように、自車両周辺に存在する物体として、自車両50側の外表面である被検出面が平面で構成されている平面状物体B1が存在する場合、ECU10は、平面状物体B1に対する複数の検出点に基づいて自車両50の運転支援制御を実施する。ECU10は、自車両50が平面状物体B1の左側方を走行する際に、レーダセンサ22(右サイドレーダ)により平面状物体B1の左側面を検出し、複数の検出点(黒丸、白丸)を取得する。ECU10は、時系列で検出された複数の検出点のうち1物体につき所定点数の検出点(黒丸)を抽出するように間引きし、その所定点数の検出点の情報をメモリ11に記憶する。本実施形態では、1物体につき3点の検出点が抽出され、
図2に示す例では、複数の検出点D1~D11のうち、最初に検出された検出点D1、最後に検出された検出点D11、及び検出点D1と検出点D2との間に検出された検出点D6が抽出される。検出点D6は、検出点D1の検出タイミングと検出点D2の検出タイミングとの中央のタイミングに検出された検出点である。
【0022】
ECU10は、メモリ11に記憶された検出点に基づいて、平面状物体B1の形状を認識する。
図2に示す例では、メモリ11に記憶された検出点D1,D6,D11のうち、取得された順番が前後する検出点D1と検出点D6とが線分SE1で連結され、検出点D6と検出点D11とが線分SE2で連結される。そして、線分SE1,SE2により平面状物体B1の形状が認識される。そして、ECU10は、認識した平面状物体B1の形状に基づいて運転支援制御を行うことにより、自車両50が平面状物体B1に対して近づき過ぎないようにしつつ自車両50を走行させる。例えば、ECU10は、アクセル装置31及びブレーキ装置32を用いて加減速制御を行いつつ、操舵装置33を用いて操舵支援を行う。
【0023】
メモリ11に記憶される検出点が所定点数に制限されることで、物体認識に要する使用メモリ量が削減される。
図2に示すように、自車両周辺に存在する物体が平面状物体B1である場合、メモリ11に記憶されている検出点の数が所定点数であっても、検出点により認識される平面状物体B1の形状と平面状物体B1の実形状に差異が生じることがない。
【0024】
しかしながら、
図3に示すように、自車両周辺に存在する物体が、自車両50側に凸となる曲面状の被検出面を有している曲面状物体B2である場合、検出点により認識される曲面状物体B2の形状と曲面状物体B2の実形状に差異が生じ、曲面状物体B2の形状の認識精度が低下する。具体的には、自車両50を基準として、線分SE1,SE2が、曲面状物体B2の被検出面よりも奥側に位置することにより、曲面状物体B2の自車両50側の一部に、ECU10により認識されない部分(以下、欠け部分)KBが生じる。例えば、車両では、前後の隅部が凸状の曲面となっているため、自車両50が他車両の前後の隅部付近を通過する際に、他車両の前後の隅部付近を被検出面とすると、この隅部付近に欠け部分KBが生じる。この場合、認識した曲面状物体B2の形状に基づいて運転支援制御を行っても、自車両50が曲面状物体B2に対して近づき過ぎることが懸念される。
【0025】
そこで、本実施形態では、自車両50の走行時に時系列で検出された複数の検出点に基づいて、曲面状物体B2の被検出面が曲面状であることを判定し、その判定結果に基づいて、所定点数の検出点により行われる物体認識の実施態様を変更するようにした。具体的には、曲面状物体B2の被検出面が曲面状であると判定された場合に、所定点数である検出点の数、つまり物体認識に用いる検出点の数を多くするようにした。これにより、使用メモリ量の削減を図りつつ、曲面状物体B2の形状を適正に認識することができる。
【0026】
図4に、本実施形態の運転支援処理のフローチャートを示す。ECU10は、所定周期ごとに運転支援処理を繰り返し実施する。
【0027】
運転支援処理を開始すると、ステップS11では、レーダセンサ22により物体の検出点を検出する。運転支援処理が繰り返し実施されることで、ステップS11の処理が繰り返し実施される。その結果、自車両50の走行中において、検出対象の物体が曲面状物体B2である場合に、その複数の検出点が時系列で検出される。
【0028】
ステップS13では、曲率半径算出処理を実施する。曲率半径算出処理では、ステップS11で検出された複数の検出点に基づいて、曲面状物体B2の被検出面の曲率半径Rを算出する。なお、本実施形態において、ステップS13の処理が「算出部」に相当する。
【0029】
図5に、曲率半径算出処理のフローチャートを示す。曲率半径算出処理を開始すると、ステップS21では、曲率半径Rの算出に用いる複数の検出点である検出点群DAを設定する。
【0030】
図6に示すように、曲面状物体B2が、互いに直交する2つの平面の隅部(角部)に曲面を有しており、
図6に矢印YAで示すように、自車両50が隅部付近を走行しながら曲面状物体B2を検出する場合、検出された複数の検出点には、曲面を検出した検出点(黒丸、白丸)とともに平面を検出した検出点(×)が含まれる。ステップS21では、検出された複数の検出点のうち、曲面を検出した検出点を検出点群DAとして設定する。メモリ11に記憶される検出点の情報には、各検出点とその検出点が検出された際のレーダセンサ22の位置との結ぶベクトルの角度を示す角度情報JBが含まれている。
図6に示すように、平面を検出した検出点の角度情報JBは略一定であるのに対して、曲面を検出した検出点の角度情報JBは互いに異なる。ステップS21では、角度情報JBのばらつき度合に基づいて、検出点群DAを設定する。
図6に示す例では、検出点D1~D11が検出点群DAとして設定される。
【0031】
ステップS22では、ステップS21で設定した検出点群DAから、始点及び終点を設定する。始点及び終点のそれぞれは、検出点群DAに含まれる複数の検出点の1点であり、以下の2つの条件を満たすように設定される。(1)始点は、終点よりも先に検出された検出点である。(2)始点及び終点の間には、少なくとも1つの他の検出点が含まれる。なお、本実施形態において、始点及び終点は「所定の2点」に相当する。
【0032】
ステップS23では、始点及び終点の間の線分距離Wを算出する。
図7には、始点が検出点D2に設定され、終点が検出点D10に設定された場合の線分距離Wが記載されている。
【0033】
ステップS24では、離間距離Hを算出する。
図7に示すように、始点及び終点を通る直線LAを引き、始点及び終点の間の検出点から直線LAまでの距離が、離間距離Hとなる。なお、始点及び終点の間に複数の検出点が含まれる場合には、それらの検出点から直線LAまでの距離のうち最も長いものを、離間距離Hとして選択する。
図7に示す例では、検出点D6から直線LAまでの距離が、離間距離Hとして選択されている。
【0034】
ステップS25では、ステップS24で算出した離間距離Hがゼロであるか否かを判定する。離間距離Hの算出に用いた検出点が直線LA上に位置しており、離間距離Hがゼロである場合には、ステップS29に進む。一方、離間距離Hの算出に用いた検出点が直線LA上に位置していない場合には、ステップS26に進む。
【0035】
ステップS26では、曲率半径Rを算出する。
図7に示すように、離間距離Hがゼロでない場合、始点、終点、及び離間距離Hの算出に用いた検出点の3点の検出点を通る円CAが定まり、この円CAの半径が曲率半径Rとなる。円CAにおいて、線分距離Wは、始点及び終点の間の円弧に対する弦の長さを示し、離間距離Hは、該弦から対応する円弧までの距離を示す。この場合、曲率半径Rは、線分距離W及び離間距離Hを用いて、以下の数式(1)のように表すことができる。
【数1】
【0036】
ステップS27では、ステップS26で算出した曲率半径Rが最小であるか否かを判定する。このとき、今回算出した曲率半径Rが前回までの曲率半径Rの最小値よりも小さければ、今回の曲率半径Rが最小であるとする。曲率半径Rが最小である場合、ステップS28において、今回算出した曲率半径Rをメモリ11に記憶して、メモリ11に記憶される曲率半径Rを更新し、ステップS29に進む。一方、曲率半径Rが最小でない場合、今回算出した曲率半径Rを記憶することなくステップS29に進む。
【0037】
ステップS29では、始点及び終点の全ての組合せで曲率半径Rを算出したか否かを判定する。全ての組合せで曲率半径Rを算出していない場合、ステップS22に戻る。一方、全ての組合せで曲率半径Rを算出した場合、曲率半径算出処理を終了する。
【0038】
図4に戻り、曲率半径算出処理が終了すると、ステップS14に進む。ステップS14では、ステップS11で検出された複数の検出点に基づいて、曲面状物体B2の被検出面が曲面状であることを判定する。具体的には、ステップS28で最後に更新された曲率半径Rが所定の閾値Rthよりも小さいか否かを判定する。曲率半径Rが閾値Rthよりも小さい場合、曲面状物体B2の被検出面が曲面状であると判定し、ステップS15に進む。
【0039】
ステップS15では、曲面状物体B2を2つの物体とみなして分割し、ステップS16に進む。具体的には、曲面状物体B2の被検出面のうち、検出点群DAが検出された曲面を2つの曲面とに分割する。これにより、検出点群DAは、分割後の第1の曲面に対応する第1検出点群DA1と、第2の曲面に対応する第2検出点群DA2に分割される。なお、本実施形態において、ステップS15の処理が「態様変更部」に相当する。
【0040】
一方、ステップS14において、曲率半径Rが閾値Rthよりも大きい場合、曲面状物体B2が曲面を有していないと判定し、検出点群DAを分割することなくステップS16に進む。なお、本実施形態において、ステップS14の処理が「判定部」に相当する。
【0041】
ステップS16では、物体ごとに、所定点数の検出点の情報をメモリ11に記憶する。続くステップS17では、メモリ11に記憶された所定点数の検出点に基づいて物体の形状を認識する。そのため、ステップS15で曲面状物体B2が2つの物体とみなされて分割された場合には、分割後の物体ごとに、所定点数の検出点に基づいて物体の形状が認識される。
【0042】
ステップS18では、ステップS17で認識した曲面状物体B2の形状に基づいて、自車両50の運転支援制御を実施し、本処理を一旦終了する。
【0043】
続いて、
図8に、物体が分割される効果について説明する。
図8(A)に示すように、曲面状物体B2の被検出面が曲面状であるにも関わらず曲面状物体B2が分割されないと、検出点群DAから抽出された3点の検出点D1,D6,D11により曲面状物体B2の形状が認識される。そのため、欠け部分KBが比較的大きくなる。
【0044】
本実施形態では、
図8(B)に分割線LBで示すように、曲面状物体B2の被検出面が曲面状であると判定され、曲面状物体B2が2つの物体とみなされて分割された場合には、検出点群DAが第1検出点群DA1及び第2検出点群DA2に分割される。
図8(B)に示す例では、検出点D1~D11を含む検出点群DAが、検出点D1~D6を含む第1検出点群DA1と、検出点D7~D11を含む第2検出点群DA2に分割される。そして、第1検出点群DA1から抽出された3点の検出点D1,D3,D6、及び第2検出点群DA2から抽出された3点の検出点D7,D9,D11により曲面状物体B2の形状が認識される。そのため、物体が分割されない場合に比べて多くの検出点により曲面状物体B2の形状を認識することができ、欠け部分KBを小さくすることができる。これにより、認識した曲面状物体B2の形状に基づいて運転支援制御が行われた場合でも、自車両50が曲面状物体B2に対して近づき過ぎることを適正に抑制することができる。
【0045】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0046】
自車両50の走行時において、時系列で検出された複数の検出点に基づいて、物体の被検出面が曲面状であることを判定し、その判定結果に基づいて、所定点数の検出点により行われる物体認識の実施態様を変更するようにした。この場合、物体の被検出面が曲面状でない状況と曲面状である状況とで互いに異なる態様で物体認識を行うことができ、物体の形状を適正に認識することができる。その結果、使用メモリ量の削減を図りつつ、物体の形状を適正に認識することができる。
【0047】
検出された複数の検出点に基づいて、物体の被検出面の曲率半径Rを算出し、算出された曲率半径Rが閾値Rthよりも小さい場合に、被検出面が曲面状であることを判定するようにした。曲面状である物体の曲率半径Rは、曲面状でない物体の曲率半径Rよりも小さくなる。そのため、算出された曲率半径Rが閾値Rthよりも小さいか否かを判定することにより、物体が曲面状であることを適正に判定することができる。
【0048】
線分距離W及び離間距離Hを用いて曲率半径Rを算出するようにした。線分距離Wの算出に用いた始点及び終点と、離間距離Hの算出に用いた検出点とにより、これら3点の検出点を通る円CAが定まる。円CAにおいて、線分距離Wは、始点及び終点の間の円弧に対する弦の長さを示しており、離間距離Hは、上記弦から円弧までの距離を示している。そのため、線分距離W及び離間距離Hを用いて、円CAの半径に相当する曲率半径Rを算出することができる。
【0049】
物体の被検出面が曲面状である場合において、その被検出面での曲率半径Rが一律でないことがある。この場合、曲率半径Rが小さい部分ほど、物体の形状を適正に認識することが難しい。その点、算出された複数の曲率半径Rのうち最も小さい曲率半径Rを物体の被検出面の曲率半径Rとして選択するようにした。そのため、物体の被検出面のうち最も曲率半径が小さい部分においても、物体の形状を適切に認識することができる。
【0050】
物体の被検出面が曲面状であると判定された場合に、被検出面が曲面状でないと判定された場合に比べて、所定点数である検出点の数を多くするようにした。これにより、被検出面が曲面状である物体についての物体認識に要する検出点の数を多くすることができ、物体の形状を適正に認識することができる。
【0051】
物体の被検出面が曲面状であると判定された場合に、検出対象となっている物体を複数の物体とみなして分割し、分割後の物体ごとに、所定点数の検出点に基づいて物体形状を認識させるようにした。これにより、物体がN個(Nは2以上の自然数)に分割された場合には、所定点数のN倍の検出点により分割前の物体形状が認識され、被検出面が曲面状である物体の形状を適正に認識することができる。
【0052】
本実施形態の運転支援制御は、以下に示すように、駐車車両(他車両)60の近傍の駐車エリアPAに自車両50を駐車する場合において有用である。車両においては、前面又は後面と側面との間の隅部が曲面状になっていることが考えられる。つまり、車両の隅部付近では車両外周面が平面、曲面、平面で切り替わり、それに伴い曲率半径Rが変化していることが考えられる。曲率半径Rが変化している場合、曲率半径Rが小さい部分ほど、物体の形状を適正に認識することが難しい。
【0053】
その点、本実施形態の運転支援制御によれば、隅部付近で算出された複数の曲率半径Rのうち最も小さい曲率半径Rを、隅部付近の曲率半径Rとして選択することにより、駐車車両60の隅部形状を正しく認識できる。これにより、駐車エリアPAに自車両50を駐車する場合において、駐車車両60に対する接触の可能性を低減することができる。
【0054】
具体的には、
図9に示すように、自車両50が駐車車両60の側方を通過した後に、駐車車両60の前方に位置する駐車エリアPAに駐車する場合がある。この場合、ECU10は、
図9に矢印YBに示すように、自車両50の前面が駐車車両60の右前部60A付近を通過する際に、駐車車両60の右前部60Aを検出し、右前部60Aが曲面状であることを判定する。これにより、自車両50の後面が駐車車両60の右前部60Aの近傍を通過する際に、又は、その後、
図9に矢印YCに示すように、自車両50が駐車車両60側に後進する際に、ECU10は、自車両50が駐車車両60の右前部60Aに対して近づき過ぎることを適正に抑制することができる。
【0055】
また、
図10に示すように、自車両50が駐車車両60の前方を通過した後に、駐車車両60の側方に位置する駐車エリアPAに駐車する場合がある。この場合、ECU10は、
図10に矢印YDに示すように、自車両50が駐車車両60の前方を通過する際に、駐車車両60の左前部60Bを検出し、左前部60Bが曲面状であることを判定する。これにより、その後、
図10に矢印YEに示すように、自車両50が後進しながら右折して駐車車両60の左前部60Bの近傍を通過する際に、ECU10は、自車両50が駐車車両60の左前部60Bに対して近づき過ぎることを適正に抑制することができる。
【0056】
(その他の実施形態)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、物体の被検出面が曲面状であると判定されたことに基づいて、物体を2つに分割する例を示したが、分割数は3以上であってもよい。この場合、物体の被検出面の曲率半径Rに応じて分割数を可変に設定するようにしてもよく、例えば、曲率半径Rが小さいほど、分割数を多くするようにしてもよい。
【0058】
・ECU10は、物体が分割された場合には、分割後の物体ごとに曲率半径Rを再度算出するようにしてもよい。そして、再度算出された曲率半径Rが閾値Rthよりも小さい場合には、分割後の物体を再度分割するようにしてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、曲率半径Rの算出に数式(1)を用いたが、マップ等で曲率半径Rを算出してもよい。
【0060】
・上記実施形態では、物体の被検出面で算出された複数の曲率半径Rのうち最小の曲率半径Rを選択するようにしたが、これに限られない。例えば、最小の曲率半径Rを含む複数の曲率半径Rの平均値を選択するようにしてもよい。例えば、始点が検出点D2に設定され、終点が検出点D10に設定された場合の曲率半径Rが最小であった場合に、当該曲率半径R、始点が検出点D1に設定され、終点が検出点D9に設定された場合の曲率半径R、及び始点が検出点D3に設定され、終点が検出点D11に設定された場合の曲率半径Rの平均値を算出し、この平均値を選択するようにしてもよい。
【0061】
・撮像装置は、単眼カメラに限られず、ステレオカメラであってもよい。送信波及び反射波を用いる装置は、レーダセンサ22に限られず、レーザセンサであってもよい。
【0062】
・本開示に記載の物体認識装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の物体認識装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の物体認識装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…ECU、22…レーダセンサ。