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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】肝胆膵組織およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20240619BHJP
   C12N 5/073 20100101ALI20240619BHJP
   A61K 35/413 20150101ALI20240619BHJP
   A61K 35/39 20150101ALI20240619BHJP
   A61K 35/407 20150101ALI20240619BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240619BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240619BHJP
   C07K 14/50 20060101ALN20240619BHJP
   C07K 14/495 20060101ALN20240619BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240619BHJP
【FI】
C12N5/071 ZNA
C12N5/073
A61K35/413
A61K35/39
A61K35/407
A61P1/16
A61P1/18
C07K14/50
C07K14/495
C12M1/00 A
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021503897
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2019041985
(87)【国際公開番号】W WO2020023245
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】62/703,559
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】武部 貴則
(72)【発明者】
【氏名】小池 博之
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0193421(US,A1)
【文献】国際公開第2017/048193(WO,A1)
【文献】Stem Cell Reports,2018年03月13日,Vol. 10,pp. 780-793
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
境界オルガノイドを作製する方法であって、
a)融合スフェロイドを形成するのに十分な第1の期間、前腸スフェロイドを後腸スフェロイドと接触させる工程であって、前記接触させる工程は、ROCK阻害剤を含む腸成長培地で行われる、接触させる工程と、
b)前腸と中腸の境界を有する境界オルガノイドを形成するのに十分な第2の期間前記融合スフェロイドを培養する工程であって、前記融合スフェロイドを培養する工程は、前記融合スフェロイドを基底膜マトリックスに包埋する工程と、ROCK阻害剤を含む腸成長培地中で培養する工程とを含む培養する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ROCK阻害剤が、Y-27632である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の期間は1日である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の期間は1日~3日である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記前腸スフェロイドを形成するために、第1の胚体内胚葉を、Wntシグナル伝達経路活性化剤、FGFシグナル伝達経路活性化剤、およびBMPシグナル伝達経路阻害剤と接触させる工程と、前記後腸スフェロイドを形成するために、第2の胚体内胚葉を、Wntシグナル伝達経路活性化剤およびFGFシグナル伝達経路活性化剤と接触させる工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記前腸スフェロイドが、SRYボックス2(SOX2)を発現する細胞を含み、膵および十二指腸ホメオボックス1(PDX1)発現細胞を実質的に含まず、および前記後腸スフェロイドが、PDX1およびCaudal型ホメオボックス2(CDX2)を発現する細胞を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記境界オルガノイドが、膵および十二指腸ホメオボックス1(PDX1)を発現する細胞、造血的に発現されるホメオボックスタンパク質(HHEX)を発現する細胞、ならびにProspero関連ホメオボックス1(PROX1)を発現する細胞を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
PROX1陽性領域を前記境界オルガノイドから切除し、前記切除された境界オルガノイドを培養して、陥入上皮および分岐構造を形成させることをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記境界オルガノイドが、SOX2、CDX2、HHEX、およびPDX1の発現によって特徴付けられる胆膵原基を含み、前記PDX1発現が、前記境界オルガノイドの境界領域に局在する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
記境界オルガノイドを気液界面における前記腸成長培地で培養して、肝胆膵オルガノイド(「HBPO」)を形成させる工程をさらに含み、前記HBPOが、胆組織および膵組織を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記HBPOが、肝組織、膵組織、胆管組織、および腸組織を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記HBPOが、内胚葉および中胚葉を含む多器官三次元オルガノイドである、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記HBPOを、人工多能性幹細胞から誘導される内皮細胞と培養する工程をさらに含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記HBPOとの前記培養の前に、前記内皮細胞が、内皮細胞(EC)スフェロイドに形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記HBPOを、人工多能性幹細胞から誘導される間葉細胞と培養する工程をさらに含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記HBPOとの前記培養の前に、前記間葉細胞が、間葉細胞(MC)スフェロイドに形成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~のいずれか一項に記載の方法によって生産された境界オルガノイド。
【請求項18】
請求項10~16のいずれか一項に記載の方法によって生産されたHBPO。
【請求項19】
胆炎症性疾患および膵炎症性疾患の1つまたはそれ以上の処のための対象の潜在的な治療剤を同定するin vitroのスクリーニング方法であって、前記対象の潜在的な治療剤を、請求項17に記載の前記境界オルガノイドおよび/または請求項18の前記HBPOと接触させる工程と、器官活性の測定値を検出する工程と、前記対象の潜在的な治療剤が、前記疾患の前記測定値を改善するか否かを決定する工程と、を含む、in vitroのスクリーニング方法。
【請求項20】
疾患を有する個体の治療に使用の請求項17に記載の境界オルガノイドまたは請求項18に記載のHBPO。
【請求項21】
前記疾患が、肝疾患、膵疾患、または胆疾患から選択される、請求項20に記載の使用のための境界オルガノイドまたはHBPO。
【請求項22】
肝疾患、膵疾患、または胆疾患の治療のための薬剤の製造に使用の請求項18に記載のHBPO。
【請求項23】
前記肝疾患が肝不全である、請求項21または22に記載の境界オルガノイドまたはHBPO。
【請求項24】
前記膵疾患が糖尿病である、請求項21または22に記載の境界オルガノイドまたはHBPO。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月26日に出願された「ヒトの前腸と中腸の境界からの肝胆膵器官形成のモデリング」と題する62/703,559の優先権および利益を主張し、その内容はすべての目的のためにその全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
器官形成は複雑で相互に関連したプロセスであり、複数の境界組織の相互作用によって調整される1-7。しかし、今日まで、個々の隣接する成分がどのように協調して統合された多器官構造を確立するかは不明確である。したがって、幹細胞培養における多器官統合は、重大な、満たされていない課題である。具体的には、2つ以上の組織型を有する構造的および機能的に統合されたオルガノイドを取得することは、当技術分野において満たされていないニーズである。より具体的には、肝胆膵(HBP)系のパターン形成、およびバランスの取れた器官形成は、技術的な複雑さのために組織培養でうまくモデル化されておらず、詳細な機構研究を妨げている16,17。本開示は、当技術分野における前述のニーズの1つ以上に対処しようとする。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2008/0193421号明細書
(特許文献2) 国際公開第2017/048193号
(特許文献3) 国際公開第2019/074793号
(特許文献4) 国際公開第2017/136479号
(特許文献5) 米国特許出願公開第2017/0240866号明細書
(特許文献6) 米国特許出願公開第2012/0264209号明細書
(特許文献7) 米国特許出願公開第2016/0312191号明細書
(特許文献8) 国際公開第2018/197544号
(非特許文献)
(非特許文献1) SHERWOOD et al."Transcriptional Dynamics of Endodermal Organ Formation," Developmental Dynamics,18 December 2008 (18.12.2008),Vol.238,Iss.1,Pgs.29-42.entire document
(非特許文献2) LIN et al."Differentiation,Evaluation,and Application of Human Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Endothelial Cells," Arterioscterosis,Thrombosis,and Vascular Biology,12 October 2017(12.10.2017),Vol.37; No.11,Pgs.2014-2025.entire document
【発明の概要】
【0003】
本明細書には、肝胆膵オルガノイド(「HBPO」または「HBPオルガノイド」)組成物、および肝胆膵オルガノイド組成物を作製および使用する方法が開示される。開示される組成物は、肝組織機能、胆組織機能、外分泌膵機能、および内分泌膵組織機能から選択される2つ以上の機能を有し得る。肝胆膵オルガノイド組成物を使用して個体を処置する方法も、開示される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
当業者は、以下に記載される図面が例示のみを目的としていることを理解するであろう。図面は、いかなる方法でも本教示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0005】
図1A-1G】境界オルガノイドは、多内胚葉ドメインを生成する。1A.iPSCから肝胆膵(HBP)オルガノイド(「HBPO」)を確立するための概略図。ヒトPSCを、前腸細胞または後腸細胞に分化させた。細胞を単一の細胞に解離させ、再凝集させて前/後腸スフェロイドを形成させ、前部と後部の境界オルガノイドをMatrigelで生成させた。Matrigel包埋は、多器官スペシフィケーションおよび境界オルガノイドからの陥入を開始させた。1B.SOX2+前部およびCDX2+後腸スフェロイドの融合による境界オルガノイドの生成。SOX2およびCDX2発現を、SOX2について赤で、CDX2について緑で、およびDAPIについて白でホールマウント免疫染色によって、入口数として示される各集団のパーセンテージについてのフローサイトメトリー、およびqPCRによって確認した。データは平均±sd、n=3回の独立した実験である。対応のない両側スチューデントのt検定。1C.8日目から11日目までのヒトiPSC由来の前部および後部オルガノイドミックスの追跡。上段:明視野。中段:赤のSOX2、緑のPDX1、青のCDX2、白のDAPIのホールマウント免疫染色。下段:青のCDX2、緑のHHEX、赤のPDX1、白のDAPIのホールマウント免疫染色。矢印:PDX1およびHHEX陽性領域。1D.PDX1について染色された境界オルガノイド免疫蛍光の各領域で検出されたPDX1陽性細胞の頻度。1E.各境界オルガノイドにおけるPDX1陽性細胞の位置。Y軸は、DAPI染色された全細胞数と比較した各領域のPDX1陽性細胞のパーセンテージを示した。f.11日目における種々の組み合わせである、前部-後部(AP)(n=4)、前部-前部(AA)(n=3)、および後部-後部(PP)(n=3)の融合オルガノイドのHHEXおよびPDX1陽性細胞のパーセンテージ。Y軸は、DAPI染色された全細胞数と比較した陽性細胞のパーセンテージを示した。データは平均±sdである。P<0.05、**P<0.01;一元配置分散分析。g.8日目(D8)~12日目(D12)までの時間経過に伴う境界オルガノイドのトランスクリプトーム特徴付け。前部(A)、境界(B)、および後部(P)ドメインを解剖し、分離し、左の代表的な画像に示すようにRNA配列決定に適用した(前腸スフェロイドをGFPで標識し、後腸スフェロイドをRFPで標識した)。前部、境界、および後部のドメインは、それぞれ報告された31,32、前部前腸、肝/胆/膵原基、および中腸/後腸のマーカーの遺伝子セットの濃縮を示した。スケールバーは、50μm(1B)、100μm(1C)、50μm(1G)。
図2A-2I】誘導因子なしでの境界オルガノイドからの肝胆膵前駆体の自己出現。2A.CRISPR-Cas9遺伝子編集系によるPROX1-tdTomatoレポーター系の生成。2B.9日目~11日目の確立されたPROX1レポーターiPSCにおけるPROX1-tdTomato発現。2C.各オルガノイドのPROX1-tdTomato陽性面積。AP、AA、およびPPの組み合わせを評価した。tdTomato発現を、AP組み合わせの境界オルガノイドの細胞膜で確認した。2D.マウス肝原基外植片(Prox1::GFP)およびヒトiPSC由来境界オルガノイド(PROX1::m-tdTomato)における肝陥入。2E.13日目のE8.75マウス胚および境界オルガノイドにおけるPROX1の免疫染色。2F.境界オルガノイドのトランスクリプトーム特徴付け。前部、境界、および後部ドメインを解剖し、分離し、RNA配列決定に適用した。ヒートマップは、GOタームカテゴリおよびKEGG経路カテゴリから選択されるFGF、BMP、ヘッジホッグ、NOTCH、およびRAシグナル経路に関連する下流の遺伝子発現を示す。ヒートマップは、偏りのない階層的クラスタリングによって8つの詳細な群(C1~C8)に分離した。Bで高度に発現された遺伝子の独特な発現パターンを示したC6は、その他と比較してRA下流遺伝子セットの濃縮を示した。2G.レチノイン酸、BMS493、R-75251、またはWIN18446の3日間培養による11日目のHHEX、PDX1、SOX2、およびCDX2の遺伝子発現。2H.元の前腸または後腸スフェロイドからの上皮または間葉細胞におけるRAシグナル経路関連遺伝子についての遺伝子発現分析。各腸スフェロイドを、RFPまたはGFP標識iPSCを使用して区別し、境界形成後に単一細胞に解離させた。前部/後部の分離を、RFPまたはGFP発現によって実施し、一方、上皮/間葉分離を、EpCAM発現によって実施した。2I.移植された境界オルガノイドのデフォルトの発達能力。中央のパネルは、H&E染色および免疫組織化学分析を示し、一方、右のパネルは免疫蛍光分析を示す。スケールバー、50μm(2B)、200μm(2D)、100μm(2E)、100μm(2I)。
図3A-3O】ヒト肝胆膵器官形成のモデリング。3A.HBPオルガノイドからのPROX1陽性領域の解剖の図および解剖前後の画像。3B.1)浮遊、2)Matrigel内に包埋、3)Matrigel内に包埋、13日目からTranswellで培養、4)解剖、Matrigel内に包埋、13日目からTranswellで培養した、培養系の最適化。左のパネルは、陥入または分岐オルガノイドの分類を示す。3C.13日目から2日間の境界オルガノイドの形態形成。3D.30日間の気液界面培養系による境界オルガノイドからのPROX1解剖組織の形態形成的変化。3E.37日目のオルガノイドの立体顕微鏡画像。3F.境界オルガノイドは、培養マウスE10.5由来の肝胆膵と同様に、推定膵ドメインに分岐したtdTomato発現肝胆組織を有する。左:4日間培養したマウス胚性組織、右:90日目のPROX1-tdTomatoレポーターiPSC。3G.右:腸に結合された陥入肝、胆管、膵の図。左:90日目の境界組織のH&E。3H~3I.CK19、PDX1、PROX1、SOX9およびNGN3、およびアルファ-SMAおよびSOX17(3H)およびAFP、EpCAM、およびアルファ-SMA(3I)の組み合わせについての免疫染色。3J、3K.PDX1、NKX6.1、GATA4、DBA、PDX1、PROX1(3K)のホールマウント染色。3L~3N.NKX6.1およびHNF1B(3L)、アミラーゼおよびGATA4(3M)、ならびにアミラーゼおよびCCKAR(3N)の免疫染色。3O.推定胆構造におけるCCK処理応答。3P.ホルモンは、外分泌膵ドメインの分泌機能を誘導した。CCK3日前後の境界組織におけるアミラーゼの酵素結合免疫吸着検定。スケールバー、100μm(a)、100μm(3B)、100μm(3C)、200μm(3D)、1mm(3E)、200μm(3F)、200μm(3G)、200μm(3H)、200μm(3I)、200μm(3J)、100μm(3K')、200μm(3L)、100μm(3M)、500μm(3N)、50μm(3O)。
図4A-4J】HBPオルガノイドにおけるHES1媒介器官分離誤差のモデル化。4A.CRISPR-Cas9系によるHES1ノックアウト(KO)系の遺伝子標的戦略。4B.WTおよびHES1KOの改変遺伝子配列の確認(Del#11)。4C.HES1-/-iPSC培養の写真。4D.20日目のHES1KOiPSC由来境界オルガノイドにおけるHES1の遺伝子発現。4E.SOX2、CDX2、PDX1およびHHESのホールマウント免疫染色によるHES1-/-iPS系からの境界オルガノイド形成の確認。肝胆膵前駆体スペシフィケーションは、HES1変異の存在下でも保存された。4F.11日目にHES1+/+およびHES1-/-から生成された前部および後部境界スフェロイドにおけるPROX1-tdTomato発現。4G.HES1+/+およびHES1-/-HBPオルガノイドの22日目の膵関連マーカーのRNAseq。4H.HES1+/+、HES1-/-オルガノイド、およびヒト成人膵組織におけるGCG、NEUROG3、INS、およびNKX2-2の遺伝子発現。4I.HES1+/+およびHES1-/-の境界組織の肉眼的観察。4J.DBAおよびPDX1についてのホールマウント免疫染色は、HES1KOオルガノイドにおけるPDX1発現の増強およびDBA染色面積の減少を示す。スケールバー、500μm(4C)、200μm(4E)、100μm(4F)、500μm(4I)、500μm(4J)。
図5】前腸および後腸細胞の特徴付け。TkDAヒトiPSCおよび72_3ヒトiPSCを使用する7日目の前腸および後腸細胞におけるEpCAMのフローサイトメトリー。
図6A-6B】境界オルガノイド形成の再現性。6A.11日目境界オルガノイドの画像。前腸および後腸スフェロイドを、H1ESCまたは1383D6iPSCから分化させ、ミックスし、Matrigel内に移送した。スケールバーは200μmである。6B.H1ESCから誘導された境界スフェロイドにおけるCDX2、上皮マーカーECAD、およびHHEXの免疫蛍光染色。6C.72_3iPSから誘導された境界スフェロイドにおけるPDX1、CDX2、FOXF1、およびHHEXの免疫蛍光染色。
図7A-7B】細胞間接触依存性HBP遺伝子誘導。7A.前腸および後腸スフェロイドを8日目にミックスし、翌日9日目に融合させ、培養し、12日目に定量RT-PCRのために収集した。融合していないスフェロイドも、12日目に比較のために収集した。7B.融合、非融合、後腸スフェロイド(8日目)、およびiPS細胞の条件でのPDX1およびHHEX遺伝子発現。
図8】種々の前腸および後腸の組み合わせの比較。12日目でのAP、AA、およびPPスフェロイドの組み合わせにおけるCDX2、HHEX、およびPDX1の免疫蛍光染色。スケールバーは200μmである。
図9A-9C】HBP前駆体は、後腸細胞から発達する。9A.非標識iPS細胞は、前腸スフェロイドに分化し、一方、AAVS1-GFP標識iPS細胞は、後腸スフェロイドに分化した。上列は、境界オルガノイド形成中の明視野およびGFP蛍光画像を示した。下列は、13日目のHHEXおよびPDX1のホールマウント免疫染色を示した。HHEX発現は、GFP発現と重複した。スケールバーは200μmである。9B.H2B-GFP標識および非標識PROX1-tdTomatoレポーターiPSCは、それぞれ前腸および後腸スフェロイドに分化した。tdTomato発現は、非標識の元の後腸スフェロイドでのみで検出された。スケールバーは200μmである。9C.非標識iPSCおよびPROX1-tdTomatoレポーターiPSCを使用して、前腸および後腸スフェロイドを区別した。レポーター細胞誘導前部および非標識細胞後部(左列)、または非標識細胞由来前部およびレポーター細胞由来後腸スフェロイド(右列)の2つの組み合わせを、tdTomato発現によって調べた。上段:明視野画像、下段:tdTomato蛍光画像。スケールバーは200μmである。
図10】後腸特異的BMS493におけるHHEXおよびPDX1誘導の廃止。BMS493で前処理した前腸または後腸スフェロイドを融合させて、HBPアンレージ形成を誘導した。未処理の対照群と比較して、BMS493で前処理した後腸スフェロイドの群は、境界でHHEXおよびPDX1発現を阻害し、このことは、後部側のレチノイン酸受容体機能がHBP境界オルガノイドを確立するために重要であったことを示唆した。スケールバー:200μm
図11A-11B】E9.0PROX1::GFPレポーターマウス胚外植片培養でのBMS493曝露によるPROX1阻害。胚発生日の9.0Prox1-GFP全胚を、回転型ボトル培養系で24時間培養した。レチノイン酸受容体拮抗薬BMS493処置群を、対照(DMSO添加)群と比較した。11A.培養後の胚の明視野画像およびGFP蛍光画像。11B.GFP発現部分の面積を、(a)のGFP画像から定量した。スケールバー:1mm
図12】インビトロ培養系の最適化。図3A~3Cでは、種々の培養フォーマットを、PROX1陽性HBP前駆体領域の陥入および分岐形態形成などの形態学的変化を増強するために比較した。7日目に、24時間培養した後、前腸および後腸スフェロイドをミックスして結合させた。結合されたスフェロイドを、Matrigelドロップまたは低結合培養プレートに移送し、HBP前駆体の出現中の非浮遊および浮遊条件の間で比較した。Matrigel包埋群のオルガノイドは、11日目にtdTomatoを発現し始めた。tdTomato陽性領域を、蛍光発現に従う顕微鏡下で、手で解剖し、再びMatrigelドロップまたはTranswellに移送し、培地中の種々の作動剤および拮抗剤からの効果を比較した。
図13】オルガノイドのサイズ、PROX1陽性面積、分岐、および陥入の比較。APの組み合わせのみが、オルガノイドおよびPROX1発現領域のサイズを増加させた。さらに、APの組み合わせは、分岐および陥入を有するスフェロイドを示したが、一方、他の2つの組み合わせは示さなかった。スケールバー:500μm
図14】HBPオルガノイドの後部領域からは、分岐および陥入しなかった。HBPオルガノイドはProx1発現分岐構造を形成したが、一方、PDX1発現を含むHBPの後部領域はその構造を形成しなかった。スケールバーは200μmである。
図15A-15C】HBPオルガノイドにおける器官ドメイン特異的マーカーの発現。15A.30日目のAFP、アルブミン、およびHHEXの免疫蛍光染色。AFPおよびアルブミンは同じ領域に発現したが、HHEXは発現しなかった。HHEXは、後の段階で発現が消失する肝細胞前駆体マーカーであった。15B.NKX6.1、NKX6.3およびPDX1の免疫蛍光染色。NKx6.3は、膵マーカーPDX1およびNKX6.1発現の領域で発現した。15C.EpCAM、PROX1、SOX9、およびCLFの免疫蛍光染色。スケールバー:100μm
図16】膵関連遺伝子は、HES-/-オルガノイドで上方調節された。HES1+/+およびHES1-/-HBPオルガノイドの22日目の膵関連マーカーのRNAseq。これは、図4Gに関連する。
図17】長期培養オルガノイドの結合構造。HES1-/-およびHES1+/+オルガノイドにおけるDBAおよびSOX9のホールマウント染色。DBAおよびSOX9は、HES1-/-オルガノイドで消失した。スケールバー:200μm。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
特に断りのない限り、用語は、関連技術の当業者による従来の使用法に従って理解されるべきである。矛盾する場合は、定義を含む本文書が優先される。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用し得るが、好ましい方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、および実施例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0007】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「および」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、複数のそのような方法を含み、「用量」への言及は、当業者などに知られている1つ以上の用量およびその均等物への言及を含む。
【0008】
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味し、これは、値がどのように測定または決定されるか、例えば、測定系の限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野の慣行に従って、1以内または1を超える標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、または最大10%、または最大5%、または最大1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的系またはプロセスに関して、この用語は、ある値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。特定の値が本願および特許請求の範囲に記載される場合、特記しない限り、特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味する「約」という用語を想定すべきである。
【0009】
本明細書で使用される場合、「胚体内胚葉(DE)細胞」という用語は、原腸陥入のプロセスによって生産される3つの主要な胚葉のうちの1つを意味する。
【0010】
本明細書で使用される場合、「wntシグナル伝達経路」という用語は、wnt/ベータカテニン経路を意味し、ベータカテニンタンパク質を介して作用するWntリガンドおよびフリッツルド(frizzled)細胞表面受容体によって媒介されるシグナル伝達経路である。
【0011】
本明細書で使用される場合、「wnt経路」などの経路に関する「活性化剤」という用語は、Wnt/ベータカテニン標的が増加するようにWnt/ベータカテニン経路を活性化する物質を意味する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「FGFシグナル伝達経路活性化剤」という用語は、FGF標的が増加するようにFGF経路を活性化する物質を意味する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「BMPシグナル伝達経路阻害剤」という用語は、BMP経路を干渉し、BMP標的を減少させる物質である。
【0014】
本明細書で使用される場合、「成長因子」という用語は、成長、増殖、形態形成または分化を含むがこれらに限定されない細胞プロセスを刺激することができる物質を意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、マーカーの「安定した発現」という用語は、成長環境の改変時に変化しない発現を意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「全能性(totipotent)幹細胞」(全能性(omnipotent)幹細胞としても知られる)という用語は、胚性および胚外細胞型に分化することができる幹細胞である。そのような細胞は、完全で生存可能な生物を構築することができる。これらの細胞は、卵子および精子細胞の融合から生産される。受精卵の最初の数分割によって生産される細胞も全能性である。
【0017】
本明細書で使用される場合、一般にPS細胞としても知られる「多能性幹細胞(PSC)」という用語は、ほぼすべての細胞、すなわち、内胚葉(胃内壁、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)、および外胚葉(表皮組織および神経系)を含む3つの胚葉(胚上皮)のいずれかから誘導される細胞に分化することができる任意の細胞を包含する。PSCは、胚(胚性生殖細胞を含む)から誘導される、または特定の遺伝子の発現を強制することによって成体体細胞などの非多能性細胞の誘導を通じて取得される全能性細胞の子孫であることができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞(iPSC)」という用語は、一般にiPS細胞とも略され、特定の遺伝子の「強制」発現を誘導することによって、成体体細胞などの、通常は非多能性細胞から人工的に誘導される一種の多能性幹細胞を言及する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「前駆細胞」という用語は、本明細書に記載の方法で使用することができる任意の細胞を包含し、それを通じて、1つ以上の前駆細胞は、それ自体を再生するか、1つ以上の専門化された細胞型に分化する能力を獲得する。いくつかの態様において、前駆細胞は、多能性であるか、または多能性になる能力を有する。いくつかの態様において、前駆細胞は、外部因子(例えば、成長因子)の処理の対象となり、多能性を獲得する。いくつかの態様において、前駆細胞は、全能性幹細胞、多能性(pluripotent)幹細胞(誘導または非誘導性)、多能性(multipotent)幹細胞、および単能性幹細胞であることができる。いくつかの態様において、前駆細胞を、胚、乳児、子供、または成人から形成することができる。いくつかの態様において、前駆細胞は、遺伝子操作またはタンパク質/ペプチド処理を介して多能性が付与されるような処理の対象となる体細胞であることができる。
【0020】
発生生物学では、細胞分化は、より専門化されていない細胞がより専門化された細胞型になるプロセスである。本明細書で使用される場合、「有向分化」という用語は、より専門化されていない細胞が特定の専門化された標的細胞型になるプロセスを記載する。専門化された標的細胞型の特殊性を、最初の細胞の運命を定義または変更するために使用することができる任意の適用可能な方法によって決定することができる。例示的な方法には、遺伝子操作、化学処理、タンパク質処理、および核酸処理が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書には、肝胆膵オルガノイド(「HBPO」または「HBPオルガノイド」)組成物が開示される。開示されるHBPO組成物は、いくつかの態様において、肝組織機能、胆組織機能、外分泌膵機能、および内分泌膵組織機能から選択される2つ以上の機能を有し得る。一態様において、本明細書に開示されるHBPOは、交換可能に「多器官三次元オルガノイド」と言及され得、前部領域、後部領域、および境界領域を含み得る。一態様において、境界領域は、膵および十二指腸ホメオボックス1(PDX1)および造血的に発現されるホメオボックスタンパク質(HHEX)を発現し得る。一態様において、HBPOは、胆管組織および膵組織を含み得る。一態様において、胆管組織および膵組織は、HBPOにおいて結合され得る。一態様において、HBPOは、肝細胞、膵細胞、胆管細胞、および腸(intestinal)細胞を含み得る。
【0022】
一態様において、HBPOは、内皮細胞、間葉細胞、または内皮細胞および間葉細胞の両方を含み得る。HBPOは、特定の態様において、内胚葉および中胚葉を含み得る。
【0023】
開示されるHBPOは、例えば、本明細書の対応する図に示されるように、分岐構造によって特徴付けられ得る。
【0024】
一態様において、本明細書に開示されるHBPOは、機能性外分泌マーカーの発現によって特徴付けられ得る。一態様において、マーカーはアミラーゼであり得る。一態様において、マーカーは、内分泌マーカー、例えば、インスリンであり得る。
【0025】
特定の態様において、本明細書に開示されるHBPOは、外因的に投与される薬剤に対する機能性応答によって特徴付けられ得る。例えば、一態様において、HBPOは、コレシストキニン(CCK)との接触に応答してアミラーゼを分泌し得る。
【0026】
特定の態様において、開示されるHBPOは、HBPOが、粘膜下腺、移行帯、血管系、免疫細胞、または粘膜下層のうちの1つ以上を実質的に含み得ない点によって特徴付けられ得る。このような特徴は、三次元オルガノイド構造を、ヒトまたは他の哺乳動物に内因的に見られる天然組織の構造と区別する。
【0027】
一態様において、HBPOを、上記で定義された1つ以上の前駆細胞、例えば、個体から取得されるiPSCの拡張によって取得する。
【0028】
本明細書には、肝胆膵オルガノイド(「HBPO」または「HBPオルガノイド」)を作製する方法も開示される。この態様において、この方法は、第1の胚体内胚葉を、Wntシグナル伝達経路活性化剤、FGFシグナル伝達経路活性化剤、およびBMPシグナル伝達経路阻害剤と接触させて、前腸スフェロイドを形成させることと、第2の胚体内胚葉をWntシグナル伝達経路活性化剤およびFGFシグナル伝達経路活性化剤と接触させて、後腸スフェロイドを形成させることと、前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドが融合して前腸と中腸の境界を有する境界オルガノイドを形成するまで、前腸スフェロイドを後腸スフェロイドと接触させることと、前腸と中腸の境界を有する境界オルガノイドを培養してHBPOを形成させることとを含み得、HBPOは胆組織および膵組織を含む。(例えば、図12を参照)一態様において、開示される方法は、肝組織、膵組織、胆管組織、および腸(intestinal)組織を含み得るHBPOの生産を可能とし得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、肝胆膵オルガノイド(「HBPO」または「HBPオルガノイド」)という用語は、一般に、多器官ドメイン(肝、胆および膵器官ドメイン)が分離される段階のオルガノイドを言及し、通常30日目頃に発生する。「境界オルガノイド」という用語に関して、これは、まだ組織スペシフィケーションを有しないオルガノイド組成物を含む、7日目の後のオルガノイドを含み得る。
【0030】
一態様において、前腸スフェロイドは、SRYボックス2(SOX2)を発現する細胞を含み得る。一態様において、前腸スフェロイドは、SRYボックス2(SOX2)の発現によって特徴付けられ得る。一態様において、前腸スフェロイドは、膵および十二指腸ホメオボックス1(PDX1)発現細胞を実質的に含み得ない。一態様において、後腸スフェロイドは、膵および十二指腸ホメオボックス1(PDX1)を発現する細胞を含む。一態様において、後腸スフェロイドは、CDX2を発現し得る。一態様において、後腸スフェロイドは、Caudal型ホメオボックス2(CDX2)発現によって特徴付けられ得る。一態様において、後腸スフェロイドは、Caudal型ホメオボックス2(CDX2)を発現する細胞を含み得る。一態様において、HBPOは、膵および十二指腸ホメオボックス1(PDX1)を発現する細胞、造血的に発現されるメオボックスタンパク質(HHEX)を発現する細胞、およびプロスペロ関連ホメオボックス1(PROX1)を発現する細胞を含み得る。一態様において、融合した前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドは、SOX2、CDX2、HHEX、およびPDX1の発現によって特徴付けられる胆膵原基を含み得、PDX1発現は、融合した前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドの境界領域に局在する。
【0031】
一態様において、HBPOを、形態形成因子、好ましくは、例えば、Matrigelなどの基底膜マトリックス内に包埋し得る。この方法は、PROX1陽性領域をHBPOから切除し、切除されたHBPOを培養して、陥入上皮および分岐構造を形成させることをさらに含み得る。
【0032】
一態様において、HBPOを、例えば、本明細書に開示される方法を使用して、回転培養し得る。
【0033】
一態様において、開示される方法を使用して、本明細書に記載のHBPO、特に内胚葉および中胚葉を含むHBPOを取得し得る。
【0034】
一態様において、胚体内胚葉は、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、人工多能性幹細胞、中胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、後部内胚葉細胞、後部内胚葉細胞、および後腸細胞から選択される前駆細胞、好ましくは多能性幹細胞から誘導される胚体内胚葉、より好ましくは胚性幹細胞、成体幹細胞、または人工多能性幹細胞から選択される多能性幹細胞から誘導される胚体内胚葉から誘導し得る。
【0035】
一態様において、胚体内胚葉を、多能性幹細胞を、成長因子のTGF-ベータスーパーファミリーのBMPサブグループであるActivin、Nodal、Activin A、Activin B、BMP4、Wnt3a、およびそれらの組み合わせから選択される1つ以上の分子と接触させることから誘導し得る。
【0036】
一態様において、WNTシグナル伝達経路活性化剤を、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、Wnt16、GSKβ阻害剤(例えば、CHIR99021、すなわち「CHIRON」)、BIO、LY2090314、SB-216763、リチウム、ヤマアラシ阻害剤IWP、LGK974、C59、SFRP阻害剤WAY-316606、ベータカテニン活性化剤DCAからなる群から選択される1つ以上の分子から選択し得る。
【0037】
一態様において、FGFシグナル伝達経路活性化剤を、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、およびそれらの組み合わせ、好ましくはFGF4またはFGF10、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の分子から選択し得る。
【0038】
一態様において、BMPシグナル伝達経路阻害剤を、Noggin、Dorsomorphin、LDN189、DMH-1、およびそれらの組み合わせから選択し得、好ましくは、BMPシグナル伝達経路阻害剤はNogginである。
【0039】
一態様において、開示される方法を、インビトロで実施し得る。特定の態様において、この方法の少なくとも1つの工程を、固体支持体上で実行し得る。例えば、固体支持体を、コラーゲン、基底膜マトリックス(Matrigel)、またはそれらの組み合わせから選択し得る。
【0040】
一態様において、内皮を有するHBPOを作製するための方法が開示される。この態様において、この方法は、HBPOを、人工多能性幹細胞から誘導される内皮細胞と、本明細書に開示される方法に従って培養する工程を含み得る。内皮細胞を、HBPOと培養する前に、内皮細胞(EC)スフェロイドに形成し得る。例えば、内皮細胞(EC)分化のために、ヒトiPSCをAccutase(Thermo Fisher Scientific Inc.,Waltham,MA,USA)を使用して解離させ、Rho関連キナーゼ阻害剤(Y-27632)を使用したStemFit(登録商標)(Ajinomoto Co.,Inc.)で種々の最適密度(細胞株に依存する)でLaminin 511 E8フラグメント(iMatrix-511(商標),Nippi,Inc.によって提供される)にプレートし得る。翌日から、B27培地(DMEM:F12(1:1)と1%Glutamaxの1:1混合物および1%B27(すべてLife Technologies)とWnt活性化剤および骨形態形成タンパク質4(BMP4)を有するプライミング培地を3日間使用して、最初に中胚葉に分化させ得る。次に、プライミング培地を、EC誘導培地である、VEGFおよびフォルスコリンを補充したStemPro-34SFM培地(Life Technologies)に交換し得る。誘導培地を毎日更新し得る。分化の7日目に、ECを解離させ、FACS分析の対象とする。iPSC由来ECは、CD144とCD31の接合部局在化を伴う典型的な内皮形態を示すはずである。ECを、VEGF-Aを補充したStemPro-34SFMからなるEC拡張培地に、50,000細胞cm-2の密度でフィブロネクチンをコーティングした皿に再プレートし得る。EC拡張培地を、1日おきに交換し得る。分化したECを単一細胞に解離させ、本明細書に記載される、前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドのスフェロイド形成プロトコルを使用してスフェロイドに形成し得る。次に、ECを、腸成長培地中96ウェル丸底超低付着プレート上で、融合した前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドと24時間ミックスして、融合されたECスフェロイド、前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドを形成し得る。
【0041】
一態様において、間葉を有するHBPOを作製するための方法が開示される。この態様において、この方法は、HBPOを、人工多能性幹細胞から誘導される間葉細胞と、本明細書に開示される方法に従って培養する工程を含み得る。間葉細胞を、HBPOと培養する前に、間葉細胞(MC)スフェロイドに形成し得る。開示される多器官三次元オルガノイドおよび間葉細胞または間葉スフェロイドを一緒に培養して、多器官三次元オルガノイドの成長および成熟を改善し得る。例えば、間葉(MSC)分化のために、ヒトiPSCを中胚葉に分化させ得る。次に、中胚葉細胞を、3日間追加のActivin AおよびPDGFBBに曝露し得る。次に、分化したMSCを、単一細胞に解離させ、前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドのスフェロイド形成プロトコルを使用してスフェロイドに形成し得る。次に、MSCスフェロイドを、腸成長培地中96ウェル丸底超低付着プレート上で、融合した前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドと24時間ミックスして、融合されたMSCスフェロイド、前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドを形成し得る。
【0042】
一態様において、肝胆膵オルガノイド(「HBPO」)を作製する方法が開示され、この方法は、前腸細胞から前腸スフェロイドを誘導し、後腸細胞から後腸スフェロイドを誘導して、境界オルガノイドを作製することと、境界オルガノイドを腸成長培地で培養してHBPOを作製することとを含み得る。一態様において、肝胆膵オルガノイド(「HBPO」)を作製する方法は、前腸細胞および後腸細胞から、前腸スフェロイドを誘導し、後腸スフェロイドを誘導して、誘導因子の非存在下でHBPOを作製することと、腸成長培地で境界オルガノイドを培養して、HBPOを作製することとを含み得る。
【0043】
「誘導因子」とは、分化を指示するために使用される因子、例えば、レチノイン酸(RA;Sigma,MO,USA)、肝細胞成長因子(HGF;PeproTech,NJ,USA)、0.1μM デキサメタゾン(Dex;Sigma)および20ng/mL 肝細胞分化のためのオンコスタチンM(OSM;R&D Systems)を意味する。他の多くの誘導因子は、膵および胆についても知られており、当業者によって容易に理解されるであろう。
【0044】
一態様において、肝胆膵オルガノイド(「HBPO」)を作製する方法が開示され、この方法は、腸成長培地中で多能性幹細胞(PSC)から分化された胚体内胚葉(DE)を培養して、前腸細胞および後腸細胞を作製することと、前腸細胞から前腸スフェロイドを、後腸細胞から後腸スフェロイドを作製し、誘導因子の非存在下で境界オルガノイドを作製することと、(iii)境界オルガノイドを腸成長培地で培養して、HBPOを作製することとを含み得る。一態様において、腸成長培地は、ROCK阻害剤を含む培地であり得る。一態様において、ROCK阻害剤はY-27632であり得る。一態様において、成長培地は、Advanced DMEM/F-12(Dulbecco's Modified Eagle Medium/Ham's F-12)という、ウシ胎児血清(FBS)の補充を減らした哺乳動物細胞の培養を可能にする広く使用される基本培地であり、https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/12634010で入手可能であり、グルタミン、HEPES、N2、およびB27が添加される。一態様において、この培地は、以下のサイトカイン、すなわちNoggin(BMP阻害剤)、CHIR(WNT活性化剤)、前腸細胞のためのFGF4、後腸細胞のためのCHIRおよびFGF4(Nogginなし)の、Advanced DMEMへの添加を含み得る。
【0045】
一態様において、HBPOを製造するための機械が本明細書に開示される。この機械は、BMPシグナル伝達経路阻害剤の存在下または非存在下での、Wntシグナル伝達経路活性化剤およびFGFシグナル伝達経路活性化剤を含む腸成長培地、およびROCK阻害剤を含む腸成長培地を含み得る。
【0046】
一態様において、HBPOの生産のための複数の培養培地の使用が開示され、複数の培養培地は、Wntシグナル伝達経路活性化剤およびFGFシグナル伝達経路活性化剤、任意選択で、BMPシグナル伝達経路阻害剤を含む腸成長培地と、ROCK阻害剤を含む腸(intestinal)成長培地とを含む。
【0047】
一態様において、HBPOを、HBPOの成長および成熟を増加させるために、ある期間、非ヒト哺乳動物などの哺乳動物に移植し得る。一態様において、HBPOを、器官機能不全を救済するために、例えば、それを必要とする個体に移植し得る。一例において、インビトロで生成されたHBPOを収集し、非肥満糖尿病/重症複合免疫不全症(NOD/SCID)マウスの腎臓または小腸の腸間膜の肩甲下部位に移植し得る。オルガノイドの成長の増加を、移植後8週間で観察し得る。生存率および成長を、ヒト-Alb、ヒト-C-ペプチドレベルなどの血液検査に基づいて監視することができる。
【0048】
一態様において、本明細書に記載のHBPOを移植することを含む、個体を処置する方法が開示される。この態様において、本明細書で使用される方法のいずれかに従って生産されたオルガノイドを、当技術分野で知られている標準的な外科的処置を使用して、それを必要とする個体に移植し得る。一態様において、個体は、肝不全および先天性肝疾患などの肝疾患、糖尿病などの膵疾患、または胆疾患から選択される病状を有し得る。
【0049】
一態様において、胆炎症性疾患および/または膵炎などの膵炎症性疾患から選択される1つ以上の病状の処置を同定する方法が開示される。この態様において、開示されるオルガノイド組成物を、対象の潜在的な治療剤と、本明細書に開示されるオルガノイド組成物と接触し得る。次に、器官活性の測定値を、オルガノイドで検出し得る。この検出の出力に基づいて、対象の潜在的な治療剤が病状の測定値を改善するか否かを決定し得、それによって、HBPOで具体化された組織のいずれかの機能不全に関与する病状を処置することに有用である可能性がある治療剤を同定するために使用し得る。
【0050】
胚性細胞から誘導される多能性幹細胞
いくつかの態様において、1つの工程は、多能性であるか、または多能性になるように誘導されることができる幹細胞を取得することを含み得る。いくつかの態様において、多能性幹細胞は、胚性幹細胞から誘導され、これは次に、初期哺乳動物胚の全能性細胞から誘導され、インビトロで無制限の未分化増殖が可能である。胚性幹細胞は、初期胚である胚盤胞の内部細胞塊から誘導される多能性幹細胞である。胚盤胞から胚性幹細胞を誘導するための方法は、当技術分野でよく知られている。ヒト胚性幹細胞H9(H9-hESC)は、本出願に記載の例示的な実施形態で使用されるが、本明細書に記載の方法および系は、任意の幹細胞に適用可能であることが当業者によって理解される。
【0051】
本発明による実施形態で使用することができる追加の幹細胞には、National Stem Cell Bank(NSCB)、San Francisco(UCSF)のUniversity of Californiaの、Human Embryonic Stem Cell Research Center、Wi Cell Research InstituteのWISC cell Bank、University of Wisconsin Stem Cell and Regenerative Medicine Center(UW-SCRMC)、Novocell,Inc.(San Diego,Calif.)、Cellartis AB(Goteborg,Sweden)、ES Cell International Pte Ltd(Singapore)、Israel Institute of Technology(Haifa,Israel)のTechnion、およびPrinceton UniversityおよびUniversity of Pennsylvaniaによって主宰されるStem Cell Databaseによって主宰されるデータベースによって提供されるか、記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。本発明による実施形態で使用することができる例示的な胚性幹細胞には、SA01(SA001)、SA02(SA002)、ES01(HES-1)、ES02(HES-2)、ES03(HES-3)、ES04(HES-4)、ES05(HES-5)、ES06(HES-6)、BG01(BGN-01)、BG02(BGN-02)、BG03(BGN-03)、TE03(13)、TE04(14)、TE06(16)、UC01(HSF1)、UC06(HSF6)、WA01(H1)、WA07(H7)、WA09(H9)、WA13(H13)、WA14(H14)が含まれるが、これらに限定されない。胚性幹細胞の詳細は、例えば、Thomson et al.,1998,"Embryonic Stem Cell Lines Derived from Human Blastocysts,"Science 282(5391):1145-1147、Andrews et al.,2005,"Embryonic stem(ES)cells and embryonal carcinoma(EC)cells:opposite sides of the same coin,"Biochem Soc Trans 33:1526-1530、Martin 1980,"Teratocarcinomas and mammalian embryogenesis,".Science 209(4458):768-776、Evans and Kaufman,1981,"Establishment in culture of pluripotent cells from mouse embryos,"Nature 292(5819):154-156、Klimanskaya et al.,2005,"Human embryonic stem cells derived without feeder cells,"Lancet 365(9471):1636-1641に見出され、これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
人工多能性幹細胞(iPSC)
いくつかの態様において、iPSCを、特定の幹細胞関連遺伝子の、成体線維芽細胞などの非多能性細胞内へのトランスフェクションによって誘導する。トランスフェクションを、レトロウイルスなどのウイルスベクターを介して達成し得る。トランスフェクトされる遺伝子には、マスター転写調節因子Oct-3/4(Pouf51)およびSox2が含まれるが、他の遺伝子が誘導の効率を高めることは示唆される。3~4週間後、少数のトランスフェクトされた細胞は、形態学的および生化学的に多能性幹細胞と同様になり始め、通常、形態学的選択、倍加時間、またはレポーター遺伝子および抗生物質性選択によって単離される。本明細書で使用される場合、iPSCには、第1世代のiPSC、マウスにおける第2世代のiPSC、およびヒト人工多能性幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、レトロウイルス系を使用して、4つの極めて重要な遺伝子であるOct3/4、Sox2、Klf4、およびc-Mycを使用して、ヒト線維芽細胞を多能性幹細胞に形質転換する。別の態様において、レンチウイルス系を使用して、体細胞をOCT4、SOX2、NANOG、およびLIN28で形質転換する。iPSCで発現が誘導される遺伝子には、Oct-3/4(例えば、Pou5fl)、Sox遺伝子ファミリーの特定のメンバー(例えば、Sox1、Sox2、Sox3、およびSox15)、Klfファミリーの特定のメンバー(例えば、Klf1、Klf2、Klf4、およびKlf5)、Mycファミリーの特定のメンバー(例えば、C-myc、L-myc、およびN-myc)、Nanog、およびLIN28が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
いくつかの態様において、ウイルスに基づかない技術を使用して、iPSCを生成する。いくつかの態様において、アデノウイルスを使用して、必要な4つの遺伝子をマウスの皮膚および肝細胞のDNA内に輸送し、胚性幹細胞と同一の細胞をもたらすことができる。アデノウイルスは、それ自身の遺伝子を標的の宿主と組み合わせないため、腫瘍を創出する危険性が排除される。いくつかの態様において、再プログラミングを、非常に低い効率ではあるが、ウイルストランスフェクション系を全く使用せずにプラスミドを介して達成することができる。他の態様において、タンパク質の直接送達を使用して、iPSCを生成し、したがってウイルスまたは遺伝子修飾の必要性を排除する。いくつかの実施形態において、マウスiPSCの生成は、同様の方法論を使用して可能である。ポリアルギニンアンカーを介して細胞に運ばれる特定のタンパク質による細胞の反復処理は、多能性を誘導するのに十分であった。いくつかの態様において、多能性誘導遺伝子の発現をまた、体細胞を低酸素条件下にFGF2で処理することによって増加させることができる。
【0054】
胚性幹細胞の詳細については、例えば、Kaji et al.,2009,"Virus free induction of pluripotency and subsequent excision of reprogramming factors,"Nature 458:771-775、Woltjen et al.,2009,"piggyBac transposition reprograms fibroblasts to induced pluripotent stem cells,"Nature 458:766-770、Okita et al.,2008,"Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells Without Viral Vectors,"Science 322(5903):949-953、Stadtfeld et al.,2008,"Induced Pluripotent Stem Cells Generated without Viral Integration,"Science 322(5903):945-949、およびZhou et al.,2009,"Generation of Induced Pluripotent Stem Cells Using Recombinant Proteins,"Cell Stem Cell 4(5):381-384に見出すことができ、これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
いくつかの態様において、例示的なiPS細胞株には、iPS-DF19-9、iPS-DF19-9、iPS-DF4-3、iPS-DF6-9、iPS(Foreskin)、iPS(IMR90)、およびiPS(IMR90)が含まれるがこれに限定されない。
【0056】
DE発生に関連するシグナル伝達経路の機能の詳細については、例えば、Zorn and Wells,2009,"Vertebrate endoderm development and organ formation,"Annu Rev Cell Dev Biol 25:221-251、Dessimoz et al.,2006,"FGF signaling is necessary for establishing gut tube domains along the anterior-posterior axis in vivo,"Mech Dev 123:42-55、McLin et al.,2007,"Repression of Wnt/β-catenin signaling in the anterior endoderm is essential for liver and pancreas development.Development,"134:2207-2217、Wells and Melton,2000,Development 127:1563-1572、de Santa Barbara et al.,2003,"Development and differentiation of the intestinal epithelium,"Cell Mol Life Sci 60(7):1322-1332に見出すことができ、これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0057】
多能性細胞(例えば、iPSCまたはESC)から胚体内胚葉を生産するための任意の方法は、本明細書に記載の方法に適用可能である。いくつかの態様において、多能性細胞を桑実胚から誘導する。いくつかの態様において、多能性幹細胞は幹細胞である。これらの方法で使用される幹細胞には、胚性幹細胞が含まれ得るが、これに限定されない。胚性幹細胞を、胚の内部細胞塊または胚の性腺隆起から誘導することができる。胚性幹細胞または生殖細胞を、ヒトを含む種々の哺乳動物種を含むがこれらに限定されない種々の動物種から誘導することができる。いくつかの態様において、ヒト胚性幹細胞を使用して、胚体内胚葉を生産する。いくつかの態様において、ヒト胚性生殖細胞を使用して、胚体内胚葉を生産する。いくつかの態様において、iPSC細胞を使用して、胚体内胚葉を生産する。
【0058】
一態様において、胚体内胚葉を、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、人工多能性幹細胞、中胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、後部内胚葉細胞、後部内胚葉細胞、および後腸細胞から選択される前駆細胞から誘導し得る。一態様において、胚体内胚葉を、多能性幹細胞から誘導し得る。一態様において、胚体内胚葉を、胚性幹細胞、成体幹細胞、または人工多能性幹細胞から選択される多能性幹細胞から誘導し得る。一態様において、DEは、DE単層であり得、DE単層の90%より多い細胞は、FOXA2およびSOX17を共発現する。
【0059】
一態様において、胚体内胚葉を、多能性幹細胞を成長因子のTGF-ベータスーパーファミリーのBMPサブグループであるActivin、Nodal、Activin A、Activin B、BMP4、Wnt3a、およびそれらの組み合わせから選択される1つ以上の分子と接触させることから誘導し得る。
【0060】
一態様において、BMPシグナル伝達経路阻害剤を、Noggin、Dorsomorphin、LDN193189、DMH-1、およびそれらの組み合わせから選択し得る。一態様において、BMPシグナル伝達経路阻害剤は、Nogginである。BMP阻害剤は、約50から約1500ng/mlの間の濃度で存在し得る。
【0061】
一態様において、WNTシグナル伝達経路活性化剤を、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt9a、Wnt9b、Wnt10a、Wnt10b、Wnt11、Wnt16、GSKβ阻害剤(例えば、CHIR99021、すなわち、「CHIRON」)、BIO、LY2090314、SB-216763、リチウム、SFRP阻害剤WAY-316606、ベータカテニン活性化剤DCAからなる群から選択される1つ以上の分子から選択し得る。Wnt経路活性化剤の濃度は、例えば、約50から約1500ng/mlの間の濃度で使用され得る。Wnt/beta-catenin経路を活性化する方法は多くある(http://web.stanford.edu/group/nusselab/cgi-bin/wnt/を参照)。適切ないくつかの既存のwntシグナル伝達経路活性化剤には、タンパク質に基づく活性化剤が含まれるがこれらに限定されず、これらには、Wnt1、Wnt2、Wnt2b、Wnt3、Wnt3a、Wnt8などが含まれるがこれらに限定されないWntリガンド、活性化Wntフリッツルド受容体を含むがこれらに限定されないWntリガンド活性の修飾剤、(LRP)共受容体、R-スポンジンタンパク質、Dkkタンパク質、Wntリガンド分泌およびトラフィッキングの調節因子(Wntless、Porcupine)、阻害性ベータカテニンデグレデーションAPCおよびGSK3ベータ阻害、活性化ベータカテニン、構成的に活性なTCF/Lefタンパク質、および化学活性化剤が含まれるがこれらに限定されず、これらには、Wnt/ベータカテニンシグナル伝達を活性化または阻害する28種を超える既知の化学物質が含まれ得る。いくつかの活性化剤には、GSK3-ベータ阻害剤CHIR99021(CHIRON)、BIO、LY2090314、SB-216763、リチウム、SFRP阻害剤WAY-316606、ベータカテニン活性化剤DCAが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
一態様において、FGFシグナル伝達経路活性化剤は、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、およびそれらの組み合わせ、好ましくはFGF4またはFGF10、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の分子であり得る。一態様において、FGF経路活性化剤の濃度は、約50~約1500ng/mlの間の濃度で使用され得るが、当業者には種々の濃度が使用され得ることが理解されるであろう。FGF受容体およびこの受容体の下流のシグナル伝達成分を刺激するタンパク質および化学物質は、MAPK、MEK、ERKタンパク質、およびそれらの活性を調節する化学物質を含む。FGFシグナル伝達を、Sproutyタンパク質ファミリーメンバーに含まれるがこれらに限定されないFGFシグナル伝達経路の阻害剤を阻害することによって活性化することができる。
【実施例
【0063】
以下の非限定的な例は、本明細書に開示される本発明の実施形態をさらに説明するために提供される。以下の実施例に開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが見出されたアプローチを表し、したがって、その実施のための様式の例を構成すると見なされ得ることを当業者は理解すべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態において多くの変更をなし得、同様または類似の結果をなおも取得することを理解すべきである。
【0064】
器官形成は、複雑で相互に関連したプロセスであり、複数の境界組織の相互作用によって調整される1-7。しかし、現在のところ、個々の隣接する成分がどのように協調して統合された多器官構造を確立するかは不明である。本明細書には、ヒト多能性幹細胞(PSC)の三次元培養から陥入する、肝、胆および膵構造の連続的なパターン形成および動的な形態形成が開示される。
【0065】
出願人は、ヒトPSCから分化した前腸および後腸スフェロイド間の境界相互作用は、外因性因子の供給の非存在下で前腸と中腸の境界オルガノイドで特定される肝胆膵(HBP)器官ドメインの自律的出現を可能にすることを見出した。移植由来組織は、中腸誘導体によって支配された一方、微小解剖されたHBPオルガノイドの長期培養物は、分離された肝膵胆アンレージに発達し、マウスの外植された前腸と中腸の培養から誘導される組織を彷彿させる陥入および3つの異なり結合された組織構造間の分岐を含む初期形態形成事象の要約が続く。HES1の遺伝子変異によって誘導される多器官ドメインの誤分離は、インビボで見られる、培養に潜在する胆スペシフィケーションを廃止する8,9。出願人は、実験的多器官統合モデルが、前腸および中腸組織の並置によって確立されることができ、これがヒトにおける複雑な内胚葉器官形成の研究のための扱いやすく、操作可能で、容易にアクセスし得るモデルとして供し得ることを実証した。
【0066】
HHEX(造血的に発現されるホメオボックスタンパク質)およびPDX1(膵および十二指腸のホメオボックス1)発現によって境界が定められる肝胆膵(HBP)アンレージは、最初に前腸と中腸の間の境界で特定され10、原始腸から腹側に陥入する上皮小胞を形成する11-13。BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体、1A型)、HLX(H2.0様ホメオボックス)、CDX2(Caudal型ホメオボックス2)、NKX3-2(NK3ホメオボックス2)、HHEX、PDX1およびSOX9(SRY-ボックス9)などのこの領域周辺の境界を定義する遺伝子の破壊は、インビボで胃-HBP-腸に沿ったバランスの取れた器官形成を大幅に変化させる1-7。HBP系譜のその後の多様化は、後部肝芽細胞のSOX9を間接的に抑制することによって、それらの境界で隣接する間葉BMPによって媒介される可能性がある14。したがって、隣接し(contiguous)動的な器官形成は複雑な環境で発生し、連続し隣接する(neighboring)組織の相互作用によって駆動される可能性がある5,6,15。しかし、HBP系のパターン形成およびバランスの取れた器官形成は、技術的な複雑さのために組織培養でうまくモデル化されておらず、このことは、詳細な機構研究を妨げる16,17
【0067】
ここで、出願人は、ヒト多能性幹細胞(PSC)を使用する三次元分化アプローチを使用して、内胚葉および中胚葉の両方で構成される決定的な領域的同一性を有する腸スフェロイドを特定した。出願人は、前部と後部の相互作用が、前腸(SOX2、SRY-ボックス2によってマークされる)および中腸(CDX2によってマークされる)の境界をインビトロで再現し、ヒト肝胆膵系の相互調整されたスペシフィケーションおよび陥入をモデル化することを実証した。
【0068】
前腸と中腸の境界モデルを開発するために、出願人は最初に、以前に記載されたように18,19パターン形成された胚体内胚葉細胞を、前腸のためのBMP拮抗剤Noggin存在下で、かつ後腸の同一性ためのNogginの非存在下で、組換えタンパク質FGF4および小分子CHIR99021(WNT経路を調節する)に曝露させた(図1Aおよび図5)。7日目(D7)に、前腸または後腸の細胞を個別に凝集させて、前腸および中腸/後腸の転写因子SOX2およびCDX2をそれぞれ優先的に発現するスフェロイドを形成させた(図1B)。出願人は次に、前腸スフェロイドに隣接する後腸スフェロイドを移送した。9日目に、2つのスフェロイドは、94.8%のウェルで融合し、融合したスフェロイドを、形態形成因子、すなわちMatrigelに包埋した(図1AおよびB)。驚くべきことに、何らの外因性因子を追加することなく、HBP原基は、前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドの界面に出現し、マーカーSOX2、CDX2、未成熟肝マーカーHHEX、および洞、十二指腸、および膵前駆体マーカーPDX1を使用する、9日目、10日目、および11日目のスフェロイドのホールマウント染色によって証明されるとおりであった(図1C)。9日目に、前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドは、HHEXおよびPDX1の発現を何ら示さなかった。10日目に、HHEXおよびPDX1発現が現れ、HHEXは前部および後部(bAP)オルガノイドの境界でのみ検出可能であった。PDX1およびHHEX陽性細胞の両方は、11日目の境界領域で明確に増加した(図1C)。3つの追加の人工多能性幹細胞(iPSC)および胚性幹細胞(ESC)系の使用は、bAPオルガノイドの境界でHHEXおよびPDX1発現細胞を発生させる際の再現性を確認した(図6A-6C)。HBP前駆体の誘導は、前腸および後腸スフェロイドの間の細胞間接触を要する(図3Aおよび図3B)。境界部位で検出されたすべてのPDX1陽性細胞(30個の染色オルガノイドのうち30個)(図1D)のうち、全細胞数あたりのPDX1陽性細胞のパーセンテージは、境界領域で5%、前部および後部領域でそれぞれ0および1%であった(図1E)。PDX1発現細胞は、A-Pオルガノイド、および後腸-後腸(P-P)スフェロイドの組み合わせで観察された。対照的に、HHEX陽性細胞は、A-Pオルガノイドでのみ検出されたが、前部-前部(A-A)にもP-Pの組み合わせにも検出されなかった(図1Fおよび図8)。このことは、HBP前駆体のバランスの取れた誘導がA-P融合に関与することを示す。
【0069】
HHEXおよびPDX1発現細胞の供給源を追跡するために、bAPオルガノイドを、非標識前腸およびGFP標識された後腸スフェロイドを使用して確立した。出願人は、HHEXおよびPDX1発現の両方がGFPと重複することを発見し、このことは、HBP前駆体が後腸に起源することを示唆した(図9A)。8日目、9日目、11日目、および12日目の微小解剖前部、境界、および後部領域のRNA配列決定は、11日目および12日目の境界組織が、HBPスペシフィケーションマーカーのアレイを徐々に発現するのに対し、一方、前部または後部領域が前腸または中/後腸の同一性をそれぞれ獲得したことを示した。(図1G)。注目すべきことに、A-P組換え実験と一致して、後部組織は境界領域により近い同一性を有する(図1G)。まとめると、AP境界戦略は、外因性誘導因子の非存在下に、HHEXおよびPDX1陽性HBP前駆体の自律的パターン形成を調整する。
【0070】
出願人はさらに、CRISPR/Cas9ゲノム編集を使用して、肝、胆管、および膵の共通前駆体マーカーであるプロスペロ関連ホメオボックス1(PROX1)の下でtdTomatoを視覚化することによって、それらの運命を追跡するレポーターヒトiPSCを確立した(図2A)。HHEXおよびPDX1と同様に、PROX1発現は、10日目の境界で始まり、その後増加した(図2B)。PROX1の出現は、A-Pオルガノイドに特異的であったが、A-AにもP-Pの組み合わせにも特異的ではなかった(図2C)。A-P組換え検定は、PROX1陽性細胞もまた後腸細胞から起源したことを示した(図9Bおよび9C)。気-液界面培養は、E8.75Prox1::EGFPマウス胚性肝組織に見られるように、PROX1陽性領域の追加の成長を誘導した(図2D)。PROX1免疫染色は、bAPオルガノイドから誘導された形態学的に陥入した組織がE8.5-8.75のマウスの境界領域と類似したことを確認した(図2E)。
【0071】
HBP前駆体の自己誘導メカニズムを描写するために、出願人は、既知の誘導性シグナル伝達経路の境界特異的発現プロファイルを評価した。FGF、BMP、HH(ヘッジホッグ)、NOTCHおよびRA(レチノイン酸)シグナルの中で、RNAseqは、RAの下流のシグナルが境界領域で顕著に活性化されたが、11日目の前部または後部領域では活性化されなかったことを同定した(図2Fおよび表1)。
【表1-1】
【0072】
補強として、出願人は、9日目のbAPオルガノイドを種々のRAシグナル伝達作動剤または拮抗剤に曝露した。RA受容体拮抗剤BMS493は、HHEXおよびPDX1の両方の遺伝子発現を強く抑制した(図2G)。動物実験は、RAシグナル伝達が肝胆膵系への系譜スペシフィケーションにおいて重要な役割を果有することを示唆する20,21。側板中胚葉集団は、インビボのスペシフィケーションの間にRAシグナル伝達の活性化剤として機能する22-24。モデル系におけるRAの細胞供給源を示唆するために、RAシグナル伝達関連遺伝子を、単離された上皮および非上皮細胞集団で評価した。FACS分析は、前腸細胞に90.3%の上皮細胞接着分子(EpCAM)陽性上皮細胞があったのに対し、一方、後腸細胞には94.8%のEpCAM陽性があったことを示した(図5)。興味深いことに、前部非上皮細胞は、他の集団ではなく、以前のインビボ動物モデル研究と同様に、RA合成遺伝子アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリーメンバーA2(ALDH1A2)を高度に発現した(図2H)。これを補完するために、融合前に、前腸スフェロイドではなく後腸スフェロイドのみをBMS493に曝露すると、HHEXおよびPDX1のタンパク質レベル誘導が抑制された(図10)。BMS493との全胚培養系で培養されたE9.0PROX1::GFPレポーターマウス胚も、2日後にPROX1発現細胞の有意な阻害を示した(図11Aおよび11B)。まとめると、境界オルガノイドモデル系の後部領域から誘導されるHBP前駆体自己スペシフィケーションは、RAシグナルによって調節され、前部の非上皮性、おそらく間葉の系譜を共分化させることによってサポートされ得る。
【0073】
幹細胞由来胚性内胚葉細胞は高度に可塑性であり、通常は腸(intestinal)組織を生成することが注目されてきた18,25。インビボで前駆体からHBP組織を形成する能力があるか否かを調べるために、免疫不全マウス内へのヒトPROX1発現オルガノイドの移植を実施した。1ヶ月の移植由来組織は、小腸組織マーカーケラチン20(CK20)、CDX2、およびEpCAMを示したが、他のHBPマーカーの発現はごくわずかであった(図2I)。さらに、十二指腸メーカー受容体アクセサリータンパク質6(REEP6/DP1L1)およびSOX9発現パターンは、これらのヒト組織が十二指腸組織に最も類似することを示した(図2I)。これらの結果は、HBP前駆体の存在にもかかわらず、異所的に移植されたオルガノイドが、インビボで腸(intestinal)組織を発達させる傾向にあることを示した。
【0074】
HBPオルガノイドは、インビボで十二指腸組織を卓越して生成したため、出願人は次に、PROX1陽性領域を13日目の境界オルガノイドから切除し、それらを種々のフォーマットで培養して、HBP器官形成を効果的にモデル化した(図3AおよびB)。驚くべきことに、種々の試験培養条件(図12)の中で、切除された組織を、特定の成長因子なしで、Transwell上のMatrigelドロップで2週間培養したところ、ほとんどのPROX1組織は、空間的に組織化された陥入上皮に発達し、分岐構造を形成した(図3b)。対照的に、浮遊条件で培養された少数のPROX1陽性上皮または非解剖オルガノイドのみが陥入した(図3B)。時間経過画像化は、解剖されたPROX1陽性組織が2日間の培養中に上皮形態からより複雑な構造に変化したことを示した(図3C)。25日目頃、オルガノイドのPROX1上皮部分は、陥入し始めた。その後、PROX1陽性領域は、複数の方向に外側に成長し始め、進行性の陥入を介して分岐構造を形成した(図3DおよびD)。分岐構造は、A-AおよびP-Pの組み合わせに観察されなかった(図13)。さらに、最初はPDX1を発現したが、bAPオルガノイドから解剖された後腸スフェロイドだけは、陥入構造を成長させることができなかった(図14)。
【0075】
長期培養がより成熟した組織を生産することができるか否かを決定するために、オルガノイドを90日目まで培養した。90日目のオルガノイドは、マウスE14.5外植器官培養物と形態学的に類似した(図3F)。H&E染色は、長期培養オルガノイドが肝、膵、胆管および腸組織を形態学的に含むことを示した(図3G)。さらに、免疫蛍光染色は、オルガノイドにおける膵マーカーPDX1およびNGN3、肝マーカーPROX1、および胆管マーカーCK19およびSOX9の発現を検出した(図3H)。胆嚢組織発達と同様に、Alpha-SMA発現間葉細胞は、胆管SOX17+細胞の周囲を包んだ26図3h)。肝マーカーAFPおよびアルブミン、膵マーカーPDX1、NKX6.1およびGATA4、および胆管マーカーDBAおよびSOX9による免疫蛍光およびホールマウント染色は、組織の各系譜が30日より長い培養後に同じ境界オルガノイドから分離したことを確認した(図3I-Lおよび図15A-15B)。NKX6.1、HNF1BおよびGATA4は、PDX1陽性領域で差次的に発現し、膵間葉マーカーNKX6.3の発現が、インビボで発生する膵で見られるように、PDX1発現細胞とともに観察された(図3I-Lおよび図15A-15C)。注目すべきことに、DBA、SOX9、およびPDX1のホールマウント共染色によって、およびフルオレセイン標識胆汁酸(CLF)を組み込む能力によって証明されるように、胆管および膵組織は分岐オルガノイドで直接に結合する(図3Kおよび3K'および図15C)。さらに、90日目に、外分泌マーカーアミラーゼおよびGATA4を発現する膵領域を、オルガノイドにおいて同定した(図3M)。オルガノイドにおけるコレシストキニンA受容体(CCKAR)発現(図3N)を考慮して、オルガノイドをCCKに曝露し、膵分泌機能をアミラーゼ酵素結合免疫吸着検定(ELISA)で分析した。翌日、管構造は収縮し、CCK処理組織は、未処理の対照と比較して、上清中のアミラーゼ分泌を増加させた(図3Oおよび3P)。これらの結果は、境界オルガノイド戦略が複数の器官(HBP)組織を生成するだけでなく、膵、特に外分泌系譜および胆管の機能的結合を確立することを示す。
【0076】
HES1(HesファミリーbHLH転写因子1)は、後腸前腸系譜を調節する転写因子である15,27。Hes1ノックアウトげっ歯動物では、膵-胆管器官分離の欠如のため、胆系の膵組織への変換が起こる8,9。HBPオルガノイドがHES1を介した発生プロセスを再現するか否かを解明するために、出願人はCRISPR/Cas9系(図4A-4C)によってPROX1レポーターiPSCでHES1KOを確立し、20日目にHES1-/-iPSC由来オルガノイドのHES1遺伝子発現の非存在を確認した。(図4D)。HES1-/-オルガノイドは、11日目にPROX1レポーター活性(図4E)およびbAPでのHHEX/PDX1発現(図4F)を保持した。22日目のHES1-/-およびHES1+/+オルガノイドのRNAseqは、HES1+/+オルガノイドと比較して、HES1-/-オルガノイドにおけるHES1標的としての9,28、内分泌マーカーを含む報告された膵関連マウス遺伝子の有意な上方調節を示した(図4Gおよび図16)。qRT-PCRは、GCG、NEUROG3、INS、およびNKX2-2のすべての膵遺伝子発現レベルが、HES1+/+オルガノイドと比較して、HES1-/-オルガノイドで上方調節されたことを示した(GCG:264倍;NEUROG3:29.8倍;INS:212倍)。しかし、GCG、INSの発現レベルは、HES1+/+およびHES1-/-オルガノイドの両方において、ヒト膵組織よりも依然として低かった(図4H)。さらに、インビボげっ歯動物研究と一致して、HES1-/-ヒトオルガノイドは、HES1+/+オルガノイドと比較して、より少ないDBAおよびSOX9陽性管組織およびより多いPDX1陽性膵構造を生産し(図4IおよびJおよび図17)、このことは、動物モデル研究との表現型関連性を強調した。
【0077】
幹細胞培養における多器官統合は、満たされていない重要な課題である。本開示は、前腸と中腸の境界で発達した構造的および機能的に統合されたHBPオルガノイドにつながるヒトの三次元前部後部境界系の生成を実証する。
【0078】
方法
PSCの維持
ヒトPSC系を、以前に記載したとおり維持した。未分化hPSCを、1/30希釈のMatrigel Growth Factor Reduced(Corning Inc.,New York,NY,USA)または0.25ug/cmのiMatrix-511(Nippi、Japan)のいずれかでコーティングされたプレート上で、mTeSR1培地(StemCell technologies,Vancouver,Canada)またはStem Fit培地(Ajinomoto Co,Japan)におけるフィーダーフリー条件で、37℃の5% CO2/95% 空気のインキュベーター内で維持した。
【0079】
PSCの前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドへの分化
hPSCの胚体内胚葉への分化を、以前に記載された方法18、19を変更して使用して誘導した。簡単に説明すると、hiPSCのコロニーを、Accutase(Thermo Fisher Scientific Inc.,Waltham,MA,USA)で単離し、150,000細胞/mLを、Matrigelでコートされた組織培養プレート(VWR Scientific Products,West Chester,PA))上にプレートした。培地を、1日目に100ng/mL Activin A(R&D Systems,Minneapolis,MN)および50ng/mL 骨形態形成タンパク質4(BMP4;R&D Systems)を含むRPMI 1640培地(Life Technologies,Carlsbad,CA)に、2日目に100ng/mL Activin Aおよび0.2%ウシ胎児血清(FCS;Thermo Fisher Scientific Inc.)に、3日目に100ng/mL Activin Aおよび2% FCSに変更した。4~7日目で細胞を、前腸細胞誘導のために200ng/mL Noggin(NOG;R&D Systems)、500ng/ml 線維芽細胞成長因子4(FGF4;R&D Systems)および2μM CHIR99021(Stemgent,Cambridge,MA,USA)を、腸細胞誘導のために500ng/ml FGF4および3μM CHIR99021を補充した、15mM HEPES、2mM L-グルタミン、ペニシリン-ストレプトマイシン、B27(Life Technologies)およびN2(Gibco,Rockville,MD)を含む腸成長培地(Advanced DMEM/F12(Thermo Fisher Scientific Inc.))で培養した。細胞分化のための培養物を、37℃で5% CO2/95% 空気の雰囲気中で維持し、培地を毎日交換した。
【0080】
前部後部境界スフェロイド形成
7日目に、37℃でTrypLE Express(Life Technologies)でインキュベートすることによって、前腸または後腸細胞を単一細胞に解離させた。細胞を1000rpmで3分間遠心分離し、上清を除去した後、ペレットを10μMのY-27632二塩酸塩(Tocris Bioscience,Bristol,United Kingdom)を含む腸成長培地に再懸濁した。前腸または後腸細胞懸濁液を、96ウェル丸底超低付着プレート(Corning Inc)上に10,000細胞/ウェルの密度でプレートし、37℃で24時間インキュベートしてスフェロイドを形成させた。8日目に、生成された単一の前腸スフェロイドおよび後腸スフェロイドを、腸成長培地における96ウェル丸底超低不着プレート上で24時間ミックスして、融合境界スフェロイド(A-Pスフェロイド)を形成させた。
【0081】
肝胆膵(HBP)オルガノイドの培養および移植
9日目に、A-PスフェロイドをMatrigelドロップに包埋し、腸成長培地で培養して、多器官HBPオルガノイドを生成させた。より長期の培養のために、13日目に、HBPオルガノイドを解剖し、および/または気液界面培養のためのTranswellに移送した。スフェロイドの培養物を、37℃で5% CO2/95% 空気の雰囲気で維持し、腸成長培地を4日ごとに交換した。13日目の単一のHBPオルガノイドを、12週齢の雄の免疫不全NSG(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)マウスの腎臓の被膜下に移植した。すべての実験を、CCHMCの動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の承認の下に実施した(プロトコルIACUC2018-0096)。
【0082】
H&E染色および免疫組織化学
スフェロイドおよびオルガノイドをMatrigelから収集し、4% パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、パラフィンに包埋した。切片をH&Eおよび免疫組織化学的染色の対象とした。一次抗体を表1に示した。免疫組織化学的染色を、ultraView Universal DAB Detection Kit(Roche Diagnostics,Basel,Switzerland)を使用して実施した。標本を顕微鏡下で観察した。
【0083】
ホールマウント免疫組織化学的染色のために、スフェロイドおよびオルガノイドをMatrigelから収集し、4℃で30分間細胞回収溶液で処理することによって、残りのMatrigelを除去した。組織をPBSによって洗浄し、4℃で一晩4% PFAで固定した。固定したサンプルを、室温で15分間、0.5%Triton X100を含む4% PFAで処理し、室温で15分間、0.1%Tween 20(Sigma)で透過処理した。サンプルをブロッキング溶液(1%BSA、0.3%Triton X100)で室温で1時間処理し、ブロッキング溶液で希釈した一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、蛍光色素結合二次抗体を、室温で2時間サンプルに適用した。一次抗体および二次抗体を表1に示す。二次抗体反応後、サンプルを3回洗浄した。核をDAPIマウンティング溶液で染色した。
【0084】
染色した切片およびホールマウントサンプルを、Nikon A1Rsi倒立共焦点顕微鏡で観察した。
【0085】
RNA単離、RT-qPCR
RNeasyミニキット(Qiagen,Hilden,Germany)を使用して、RNAを単離した。逆転写を、RT-PCR用のSuperScript IV First-Strand Synthesis System(Invitrogen,CA,USA)を使用して、製造元のプロトコルに従って実行した。qPCRを、QuantStudio3Real-Time PCR System(Thermo)でTaqMan遺伝子発現マスターミックス(Applied Biosystems)を使用して実行した。各標的遺伝子のすべてのプライマーおよびプローブ情報を、Universal ProbeLibrary Assay Design Center(https://qpcr.probefinder.com/organism.jsp)から取得し、表2に示した。
【0086】
RNA配列決定
RNA配列決定のサンプル準備を、製造元のユーザーマニュアルに従って、SMART-seq v4 Ultra Low Input RNA Kit for Sequencing(Clontech Laboratories)を使用して実施した。
【0087】
簡単に説明すると、第1鎖cDNA合成を、3'SMART-seq CDS Primer II Aによってプライミングした。転写産物の5'末端のテンプレートスイッチングのためにSMART-Seq v4 Oligonucleotideを使用する。PCR Primer II Aは、3'SMART-Seq CDS Primer IIAによって導入されたSMART配列からcDNAを増幅し、SMART-Seqv4 OligonucleotideをPCRによって増幅した。PCR増幅されたcDNAを、AMPureXPビーズに固定することによって精製した。次にビーズを、80%エタノールで洗浄し、cDNAを溶出バッファーで溶出させた。増幅したcDNAを、Agilent2100 BioanalyzerおよびAgilentのHigh Sensitivity DNA Kit(Agilent)を使用して、キットのユーザーマニュアルに従って検証した。SMART-Seq v4 Ultra Low Input RNA Kit for Sequencingの完全長cDNA出力を、Nextera XT DNA Library Preparation Kit(Illumina)でプロセッシングした。
【0088】
RNAプロファイルを、Kallistoソフトウェアでコンパイルし、100万あたりの転写産物(TPM)として表現した。少なくとも1つのサンプルで0より大きい必要があるしきい値でフィルター処理されたデータセットを、最初にFGF、BMP、ヘッジホッグ、NOTCH、およびRAシグナル伝達経路に関連する遺伝子セットに基づく遺伝子機能分類の対象とした。遺伝子セットのリストを、Molecular Signatures Database(ver 6.2)から獲得した。Cluster3.0ソフトウェアを使用することによって実施したフィルター処理されたデータセットについての偏りのないクラスター分析。各クラスターに含まれる遺伝子セットの詳細を表3に示した。
【0089】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーのために、前腸細胞をGFP標識iPSCから分化させ、後腸細胞をmCherry標識iPSCから分化させた。13日目に、A-Pスフェロイドを、TrypLE Expressの37℃10分間処理によって単一細胞に解離させた。PBS洗浄後、単一細胞を、BV421結合EpCAM抗体(BioLegend)と室温で30分間インキュベートした。PBS洗浄後、細胞選別をBD FACS AriaII(BD Biosciences)によって実施した。分析を、BD FACS DIVAソフトウェアおよびFlowJo(FlowJo,LLC)によって実施した。
【0090】
CRISPR編集
Cas9-2A-GFPをコードするプラスミドを、addgene(#44719、doi:10.1016/j.stem.2013.03.006)から獲得した。PROX1またはHES1のN末端を標的とするガイドRNAを、Integrated DNA Technologiesによって合成し、pGL3-U6-sgRNA-PGK-ピューロマイシンベクター(addgene#51133,doi:10.1038/nmeth.2857)にクローン化し、RV3ユニバーサルプライマーを使用して配列決定した。HDRテンプレートを構築するために、PROX1開始コドンに隣接する相同性アームをゲノムDNAから独立して増幅し、高忠実度taqポリメラーゼiProof(Bio-Rad)を使用するオーバーラップエクステンションPCRを介してtdTomatoに融合させた。次に、得られたPCR産物を、pCR-Blunt II-TOPOクローニングベクター(Invitrogen)にクローン化し、サンガー配列決定によって確認した。
【0091】
製造元の指示に従ってLipofectamine3000を使用して、ヒトiPSCに2μgの各プラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞をGFP発現によって選別し、陽性にトランスフェクトされた細胞を選択した。クローン性細胞を2週間拡張させ、挿入されたPROX1-tdTomatoまたは枯渇したHES1エクソン1配列についてスクリーニングし、核型決定した。
【0092】
アミラーゼELISA
オルガノイドのアミラーゼ分泌レベルを測定するために、200μLの培養上清を、Matrigelに包埋されたオルガノイドから収集した。培養後48時間の時点で培養上清を回収し、使用するまで-80℃で保存した。上清を1,500rpmで3分間遠心分離し、破片をペレット化し、得られた上清を製造元の指示に従ってHuman Amylase ELISA Kitで検定した。
【0093】
統計および再現性
統計分析を、対応のない両側スチューデントのt検定、Dunn-Holland-Wolfe検定、またはWelchのt検定を使用して実施した。結果を平均±sdで示した。0.05未満のP値を統計的に有意であると見なした。N値は、特記しない限り、生物学的に独立した反復を指す。対になっていない2つのグループ間の比較のために、2つのサンプルが独立し、かつサンプルの分散が等しくない場合に、ノンパラメトリックBrunner-Munzel検定を実施した。2つより多いサンプル間の比較のために、ノンパラメトリックKruskal-Wallis検定および事後Dunn-Holland-Wolf検定を実施した。
【0094】
マウス全胚培養
多器官三次元オルガノイドの培養を、成長が改善された全胚培養系(Ikemoto Scientific Technology,Tokyo,Japan)を使用して実行し得る。多器官三次元オルガノイドを、培養培地を含む滅菌ガラスローラーボトル内に移送し、フラスコをシリコンプラグによって閉じ得る。移送されるオルガノイドの数は、培養期間に依存する。培養ボトルを、回転子ドラムに取り付け、ガス混合物(主に20% O、5% COおよび75% N2であるが、O濃度をN2とのバランスで変更することができる)を連続的に供給しながら、暗所で20rpmで37℃で回転させ得る。オルガノイドを数週間培養することができる(最長の試験は10週間である)。培養培地を、5~7日ごとに変更し、オルガノイドの長さおよびAlb、Amy、C-ペプチドレベルなどの培地成分に基づいて生存率および成長を監視することができる。
【0095】
全胚培養のために、Rotator-type Bottle Culture System(Ikemoto Scientific Technology Co.,Ltd)を使用した。E9.0Prox1-GFPマウス胚を解剖し、B27およびN2を補充したAdvanced DMEM/F12とともに培養ボトルに移送した。全胚培養系内の温度を37.0℃に維持した。
【表2】
【表3】
【0096】
参考文献
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【0128】
特記しない限り、すべてのパーセンテージおよび比率は重量で計算される。
【0129】
すべてのパーセンテージおよび比率は、特記しない限り、全組成に基づいて計算される。
【0130】
本明細書全体で与えられるすべての最大数値制限は、あたかもそのようなより低い数値制限が本明細書に明示的に書かれているかのように、すべてのより低い数値制限を含むことが理解されるべきである。本明細書全体で与えられるすべての最小数値制限は、あたかもそのようなより高い数値制限が本明細書に明示的に書かれているかのように、すべてのより高い数値制限を含む。本明細書全体で与えられるすべての数値範囲は、あたかもそのようなより狭い数値範囲がすべて本明細書に明示的に書かれているかのように、そのようなより広い数値範囲内にあるすべてのより狭い数値範囲を含む。
【0131】
本明細書に開示される寸法および値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。代わりに、特記しない限り、そのような各寸法は、記載された値およびその値を含む機能的に均等の範囲の両方を意味することが意図される。例えば、「20mm」として開示される寸法は、「約20mm」を意味することが意図される。
【0132】
相互参照または関連する特許または出願を含む、本明細書で引用されるすべての文書は、明示的に除外または他の方法で制限されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。任意の文書の引用は、それが本明細書に開示または請求される任意の発明に関する先行技術であること、またはそれが単独で、または他の参考文献との任意の組み合わせで、そのような発明を教示、示唆、または開示することを認めるものではない。さらに、本文書の用語の意味または定義が、参照により組み込まれる文書の同じ用語の意味または定義と矛盾する限りにおいて、本文書のその用語に割り当てられた意味または定義が優先するものとする。
【0133】
本発明の特定の実施形態が例示および説明されたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の他の変更および修正を行い得ることは、当業者には自明であろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更および修正を包含することが意図される。
図1A
図1B-A】
図1B-B】
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G-A】
図1G-B】
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
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図3I
図3J
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図3K-】
図3L
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図3M-】
図3N
図3O
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図4A
図4B
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図4D
図4E
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図4G
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図4I
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図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
【配列表】
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