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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】脂質ナノ粒子製剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/88 20060101AFI20240619BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240619BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240619BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240619BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240619BHJP
   C07D 319/06 20060101ALI20240619BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240619BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240619BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
C12N15/88 Z
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z
C12N5/10
A61K31/7088
A61K9/127
A61K47/28
A61K47/24
A61K47/18
A61K31/713
A61K31/7105
A61K48/00
C07D319/06
A61P7/06
A61K47/34
A61K47/22
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021525113
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 US2019060595
(87)【国際公開番号】W WO2020097548
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】62/758,055
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513146871
【氏名又は名称】アルブータス・バイオファーマー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】ラム,キェウ モン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,アラン ディー
(72)【発明者】
【氏名】シュライナー,ペトラ
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509505(JP,A)
【文献】特表2016-525146(JP,A)
【文献】特表2017-536092(JP,A)
【文献】国際公開第2018/119115(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0064894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
C07D 319/06
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1つ以上の核酸分子;
(b)コレステロール;
(c)DSPC;
(d)PEG-C-DMA;及び
(e)式CLもしくはCL
【化1】
【化2】
のカチオン性脂質またはその塩;
を含む脂質ナノ粒子であって、総脂質中のPEG-C-DMA、カチオン性脂質、コレステロール、及びDSPCのモル百分率が以下のいずれか:
である、前記脂質ナノ粒子。
【請求項2】
総脂質中のPEG-C-DMA、CL1、コレステロール、及びDSPCのモル百分率が、2.5:35.1:46.3:16.1である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項3】
総脂質中のPEG-C-DMA、CL1、コレステロール、及びDSPCのモル百分率が、1.7:47.5:40.9:10.0である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項4】
総脂質中のPEG-C-DMA、CL2、コレステロール、及びDSPCのモル百分率が、1.5:50.0:38.5:10.0である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項5】
総脂質中のPEG-C-DMA、CL2、コレステロール、及びDSPCのモル百分率が、1.6:54.6:32.8:10.9である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項6】
前記1つ以上の核酸分子がsiRNAを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項7】
前記1つ以上の核酸分子がmRNAを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項8】
総脂質の核酸に対する重量比が17超である、請求項1~7のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項9】
総脂質の核酸に対する重量比が18超である、請求項1~7のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項10】
総脂質の核酸に対する重量比が19超である、請求項1~7のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項11】
総脂質の核酸に対する重量比が22~25である、請求項1~7のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項12】
1つ以上の核酸分子が前記脂質ナノ粒子内に封入されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項14】
in vitroで核酸を細胞に送達するための方法であって、請求項1~12のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子と細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項15】
核酸を細胞に送達するための組成物であって、請求項1~12のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子を含み、前記脂質ナノ粒子と細胞を接触させる、前記組成物。
【請求項16】
機能性タンパク質の欠損を生じさせる遺伝的欠陥を特徴とする疾患を治療するための組成物であって、請求項1~12のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子を含み、前記核酸分子が、前記機能性タンパク質または前記機能性タンパク質と同じ生物学的活性を有するタンパク質をコードするmRNAである、前記組成物。
【請求項17】
ポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患を治療するための組成物であって、請求項1~12のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子を含み、前記核酸分子が、過剰発現されたポリペプチドの発現を標的とするsiRNAである、前記組成物。
【請求項18】
機能性タンパク質の欠損を生じさせる遺伝的欠陥を特徴とする疾患の治療的または予防的処置で使用するためのものである、請求項1~12のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項19】
ポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患の治療的または予防的処置で使用するためのものである、請求項1~12のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項20】
以下の化合物:
【化3】
またはその塩。
【請求項21】
以下の化合物:
【化4】
またはその塩を含む、脂質ナノ粒子。
【請求項22】
薬学的に許容可能な担体と、以下の化合物:
【化5】
またはその塩を含む脂質ナノ粒子とを含む、医薬組成物。
【請求項23】
化合物8:
【化6】
を調製する方法であって、
化合物7:
【化7】
を式:
【化8】
のアセタールと、前記化合物8をもたらす条件下で反応させることを含む、前記方法。
【請求項24】
化合物6:
【化9】
を還元して化合物7を得ることにより前記化合物7を調製することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
化合物5:
【化10】
を化合物10:
【化11】
と、化合物6をもたらす条件下で反応させることにより前記化合物6を調製することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
化合物4:
【化12】
を酸化させて化合物5を得ることにより化合物5を調製することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
式1:
【化13】
のアルコールを保護して化合物2:
【化14】
を得ること、
前記化合物2を臭化物3:
【化15】
に変換させること、及び
前記臭化物3を化合物4に変換させることにより前記化合物4を調製すること
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2018年11月9日に出願された米国特許出願第62/758,055号に対する優先権の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
脂質ナノ粒子(LNP)は、通常であれば細胞不透過性である生物学的に活性な化合物、例えば、治療用核酸、タンパク質、及びペプチドのための効果的な薬物送達系である。例えば、in vitroで転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)などの大型核酸分子及びメッセンジャーRNAまたは遺伝子と相互作用するより小さなポリヌクレオチドを含む、核酸ベースの薬物は、効果的であるためには適切な細胞区画へと送達されなければならない。例えば、二本鎖RNA分子(dsRNA)(例えばsiRNAを含む)などの二本鎖核酸には、それらを細胞に対して不浸透性にするそれらの物理化学的性質の問題がある。適切な区画に送達されると、siRNAはRNA干渉(RNAi)として知られる高度に保存された調節機構を通じて遺伝子発現を遮断する。通常、siRNAは、分子量が12~17kDaの範囲で大型のサイズであり、最大50の負電荷を有するそれらのリン酸骨格によって高度にアニオン性である。さらに、2本の相補的RNA鎖が強固ならせんをもたらす。これらの特徴は、siRNAの「薬物様」特性の乏しさの一因となっている。静脈内投与された場合、siRNAは、わずか10分の範囲の典型的な半減期で急速に身体から排出される。加えて、siRNAは、血液及び他の体液または組織に存在するヌクレアーゼによって急速に分解され、in vitro及びin vivoで強力な免疫応答を刺激することが示されている。例えば、非特許文献1を参照されたい。mRNA分子には、不透過性、脆弱性、及び免疫原性という同様の問題がある(特許文献1)。
【0003】
脂質ナノ粒子製剤により、in vivoでの核酸送達が改善された。例えば、そのような製剤により、in vivoでの標的ノックダウンを行うのに必要なsiRNAの用量が大幅に低減した。非特許文献2を参照されたい。通常、そのような脂質ナノ粒子薬物送達系は、カチオン性脂質と、ヘルパー脂質と、ポリエチレングリコールを含有する脂質とを含む多成分製剤である。正に荷電したカチオン性脂質がアニオン性核酸に結合し、その一方で他の成分が脂質ナノ粒子の安定的な自己集合を補助する。
【0004】
脂質ナノ粒子製剤の送達有効性の改善に向けた取り組みがなされている。多くのそのような取り組みは、より適切なカチオン性脂質を開発することに向けられている。例えば、非特許文献3~6を参照されたい。これらの取り組みにもかかわらず、投与後に高い薬効をもたらし、低用量の核酸の投与が可能となる製剤を含有する脂質ナノ粒子が、依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/118697号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Robbins et al.,Oligonucleotides 19:89-102,2009
【文献】Zimmermann et al.,Nature 441:111-114,2006
【文献】Akinc et al.,Nature Biotechnology 26:561-569,2008
【文献】Love et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 107:1864-1869,2010
【文献】Baigude et al.,Journal of Controlled Release 107:276-287,2005
【文献】Semple et al.,Nature Biotechnology 28:172-176,2010
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ある特定の脂質ナノ粒子、及びその脂質ナノ粒子を含む医薬組成物を提供する。この脂質ナノ粒子及び医薬組成物は、核酸を患者(例えば、ヒト)または細胞に送達するのに特に有用である。
【0008】
したがって、一実施形態では、本発明は、本発明の脂質ナノ粒子であって、
(a)1つ以上の核酸分子;
(b)コレステロール;
(c)DSPC;
(d)PEG-C-DMA;及び
(e)式CLまたはCL2:
【化1】
【化2】
のカチオン性脂質またはその塩を含む脂質ナノ粒子を提供し、ここで、PEG-C-DMA、カチオン性脂質、コレステロール、及びDSPCの総脂質中のモル百分率はおよそ以下の通りである:
【0009】
本発明はまた、化合物:
【化3】
またはその塩を提供する。
【0010】
本発明はまた、本発明の脂質ナノ粒子であって、化合物:
【化4】
またはその塩を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0011】
本発明はまた、本発明の脂質ナノ粒子と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明はまた、核酸を細胞に送達するための方法であって、本発明のナノ粒子に細胞を接触させることを含む方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、機能性タンパク質の欠損を生じさせる遺伝的欠陥を特徴とする疾患を治療するための方法であって、本発明の脂質ナノ粒子をその疾患を有する対象に投与することを含み、ここで、核酸分子は機能性タンパク質または機能性タンパク質と同じ生物学的活性を有するタンパク質をコードするmRNAである方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、ポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患を治療するための方法であって、本発明の脂質ナノ粒子をその疾患を有する対象に投与することを含み、ここで、核酸分子は過剰発現されたポリペプチドの発現を標的とするsiRNAである方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、機能性タンパク質の欠損を生じさせる遺伝的欠陥を特徴とする疾患の治療的または予防的処置のための本発明の脂質ナノ粒子を提供する。
【0016】
本発明はまた、ポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患の治療的または予防的処置のための本発明の脂質ナノ粒子を提供する。
【0017】
本発明はまた、動物における疾患または障害を治療するための方法であって、治療有効量の本発明の脂質ナノ粒子を動物に投与することを含む方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、本発明の脂質ナノ粒子を作製するために有用である、本明細書に開示されるプロセス及び中間体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書で使用される場合、以下の用語は特に明記しない限り以下に帰する意味を有する。
【0020】
「約」という用語は、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%を意味する。
【0021】
「干渉RNA」または「RNAi」または「干渉RNA配列」という用語は、干渉RNAが標的遺伝子または配列と同じ細胞内に存在する場合に、(例えば干渉RNA配列に相補的なmRNAの分解を媒介することにより、またはその翻訳を阻害することにより)標的遺伝子または配列の発現を低減させるかまたは阻害することができる、一本鎖RNA(例えば、成熟miRNA)または二本鎖RNA(すなわち、siRNA、aiRNAもしくはpre-miRNAなどの二重鎖RNA)を指す。したがって、干渉RNAは、標的mRNA配列に相補的な一本鎖RNA、または2本の相補鎖によって、もしくは1本の自己相補鎖によって形成された二本鎖RNAを指す。干渉RNAは、標的遺伝子もしくは配列に実質的もしくは完全な同一性を有してもよく、またはミスマッチ領域(すなわちミスマッチモチーフ)を含んでもよい。干渉RNAの配列は、完全長標的遺伝子またはその部分配列に対応し得る。
【0022】
干渉RNAには、「低分子干渉RNA」または「siRNA」、例えば、約15~60、15~50、または15~40(二重鎖)ヌクレオチド長、より典型的には約15~30、15~25または19~25(二重鎖)ヌクレオチド長、好ましくは約20~24、21~22、または21~23(二重鎖)ヌクレオチド長である干渉RNAが含まれる(例えば、二本鎖siRNAの各相補配列は、15~60、15~50、15~40、15~30、15~25、または19~25ヌクレオチド長、好ましくは約20~24、21~22、または21~23ヌクレオチド長であり、二本鎖siRNAは、約15~60、15~50、15~40、15~30、15~25、または19~25塩基対長、好ましくは約18~22、19~20、または19~21塩基対長である)。siRNA二重鎖は、約1~約4つのヌクレオチドまたは約2~約3つのヌクレオチドの3’オーバーハング及び5’リン酸末端を含み得る。siRNAの例には、2つの別々の鎖分子からアセンブルした二本鎖ポリヌクレオチド分子(ここで、一方の鎖はセンス鎖であり、他方は相補的アンチセンス鎖である);一本鎖分子からアセンブルした二本鎖ポリヌクレオチド分子(ここで、センス領域及びアンチセンス領域は、核酸ベースまたは非核酸ベースのリンカーにより連結している);自己相補的センス領域及びアンチセンス領域を有するヘアピン二次構造を有する、二本鎖ポリヌクレオチド分子;ならびに2つ以上のループ構造ならびに自己相補的センス領域及びアンチセンス領域を有するステムを有する環状一本鎖ポリヌクレオチド分子(ここで、この環状ポリヌクレオチドは、in vivoまたはin vitroでプロセシングされ活性二本鎖siRNA分子を産生することができる)が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
好ましくは、siRNAは化学合成される。siRNAはまた、より長いdsRNA(例えば、約25ヌクレオチド長を超えるdsRNA)をE.coli RNase IIIまたはダイサーにより切断することによって産生させることができる。これらの酵素は、dsRNAをプロセシングして生物学的に活性なsiRNAにする(例えば、Yang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:9942-9947(2002)、Calegari et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:14236(2002)、Byrom et al.,Ambion TechNotes,10(1):4-6(2003)、Kawasaki et al.,Nucleic Acids Res.,31:981-987(2003)、Knight et al.,Science,293:2269-2271(2001)、及びRobertson et al.,J.Biol.Chem.,243:82(1968)を参照されたい)。好ましくは、dsRNAは、少なくとも50ヌクレオチド長~約100、200、300、400または500ヌクレオチド長である。dsRNAは、1000、1500、2000、5000ヌクレオチド長またはそれ以上の長さであり得る。dsRNAは、遺伝子転写物全体または遺伝子転写物の一部をコードし得る。特定の場合では、siRNAは、プラスミドによってコードされ得る(例えば、ヘアピンループを有する二重鎖に自発的にフォールディングする配列として転写される)。
【0024】
本明細書で使用される場合、「ミスマッチモチーフ」または「ミスマッチ領域」という用語は、干渉RNA(例えば、siRNA、aiRNA、miRNA)配列の、その標的配列に対して100%の相補性を有さない部分を指す。干渉RNAは、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上のミスマッチ領域を有し得る。ミスマッチ領域は、連続的であっても、または1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個もしくはそれ以上のヌクレオチドで分離されていてもよい。ミスマッチモチーフまたはミスマッチ領域は、1つのヌクレオチドを含んでもよく、または2つ、3つ、4つ、5つもしくはそれ以上のヌクレオチドを含んでもよい。
【0025】
核酸(例えば、干渉RNAまたはmRNA)などの核酸の「有効量」または「治療有効量」とは、所望の効果、例えば、干渉RNAの非存在下で検出された正常発現レベルと比較した標的配列の発現の阻害、または生体内で発現しそこで望ましい生物学的効果を生じさせるタンパク質の量のmRNA特異的発現を生じさせるのに十分な量である。標的遺伝子または標的配列の発現阻害は、干渉RNAを用いて得られた値が対照の約90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または0%となる場合に達成される。他の実施形態では、発現タンパク質は、体内の細胞タイプに通常発現するタンパク質の活性形態であり、治療有効量のmRNAは、健常個体のその細胞タイプで通常発現するタンパク質の量の少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%)のコードされたタンパク質の量を産生させる量である。標的遺伝子または標的配列の発現を測定するのに適したアッセイには、例えば、当業者に公知の技術、例えば、ドットブロット、ノーザンブロット、in situハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、及び当業者に公知の表現型アッセイを使用する、タンパク質またはRNAレベルの検査が含まれる。
【0026】
干渉RNAによる免疫応答を「低下させる」、「低下させること」、「低減させる」、または「低減させること」とは、所与の干渉RNA(例えば、修飾干渉RNA)に対する免疫応答の検出可能な低下を意味することが意図される。修飾干渉RNAによる免疫応答の低下量は、非修飾干渉RNAの存在下での免疫応答のレベルと比較して測定することができる。検出可能な低下は、非修飾干渉RNAの存在下で検出された免疫応答よりも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、またはそれ以上に低くなり得る。干渉RNAに対する免疫応答の低下は、通常、in vitroでのレスポンダー細胞によるサイトカイン生成(例えば、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-6もしくはIL-12)の低下、または干渉RNA投与後の哺乳動物対象の血清中のサイトカイン生成の低下により測定される。
【0027】
mRNAによる免疫応答を「低下させる」、「低下させること」、「低減させる」、または「低減させること」とは、所与のmRNA(例えば、修飾mRNA)に対する免疫応答の検出可能な低下を意味することが意図される。修飾mRNAによる免疫応答の低下量は、非修飾mRNAの存在下での免疫応答のレベルと比較して測定することができる。検出可能な低下は、非修飾mRNAの存在下で検出された免疫応答よりも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、またはそれ以上に低くなり得る。mRNAに対する免疫応答の低下は、通常、in vitroでのレスポンダー細胞によるサイトカイン生成(例えば、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-6もしくはIL-12)の低下、またはmRNA投与後の哺乳動物対象の血清中のサイトカイン生成の低下により測定される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「レスポンダー細胞」という用語は、非修飾siRNAなどの免疫刺激性干渉RNAと接触した場合に、検出可能な免疫応答を生じる細胞、好ましくは哺乳動物細胞を指す。例示的なレスポンダー細胞には、例えば、樹状細胞、マクロファージ、末梢血単核細胞(PBMC)、脾細胞などが含まれる。検出可能な免疫応答には、例えば、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12、IL-13、TGF、及びこれらの組み合わせなどの、サイトカインまたは増殖因子の生成が含まれる。
【0029】
「実質的同一性」は、ストリンジェントな条件下で参照配列にハイブリダイズする配列、または参照配列の特定の領域にわたって特定の同一性パーセントを有する配列を指す。
【0030】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、核酸が、典型的には核酸の複合混合物中で、その標的配列にハイブリダイズするが他の配列にはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、異なる状況では異なることになる。より長い配列は、特により高い温度でハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範な手引きは、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見出される。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHでの特定の配列の熱融点(thermal melting point)(T)よりも約5~10℃低くなるように選択される。Tは、標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列とハイブリダイズする(規定のイオン強度、pH及び核濃度(nucleic concentration)での)温度である(標的配列が過剰に存在する場合、Tにおいてプローブの50%が平衡状態で占められる)。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの脱安定化剤の添加によって達成することもできる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションの場合、陽性シグナルはバックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドハイブリダイゼーションの10倍である。
【0031】
例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下の通りであり得る:50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%SDS、42℃でインキュベート、または5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベートし、65℃の0.2×SSC、及び0.1%SDS中で洗浄。PCRの場合、低ストリンジェンシー増幅は通常約36℃の温度であるが、アニーリング温度はプライマー長に応じて約32℃~48℃で変動し得る。高ストリンジェンシーのPCR増幅の場合、通常約62℃の温度であるが、高ストリンジェンシーのアニーリング温度は、プライマー長及び特異性に応じて、約50℃~約65℃の範囲であり得る。高ストリンジェンシー増幅及び低ストリンジェンシー増幅の両方の典型的なサイクル条件には、90℃~95℃で30秒~2分の変性段階、30秒~2分続くアニーリング段階、及び約72℃で1~2分間の伸長段階が含まれる。低ストリンジェンシー増幅反応及び高ストリンジェンシーの増幅反応のプロトコル及びガイドラインは、例えば、Innis et al.,PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.N.Y.(1990)に示されている。
【0032】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それでもなお、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であれば実質的に同一である。これは、例えば、遺伝暗号によって許容される最大のコドン縮重を使用して核酸のコピーが生成される場合に生じる。そのような場合、核酸は通常、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」には、37℃での40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝液でのハイブリダイゼーション、及び45℃の1×SSCでの洗浄が含まれる。陽性ハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、代替的なハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件を利用して、類似のストリンジェンシー条件を得ることができることを容易に理解するであろう。ハイブリダイゼーションパラメータを決定するためのさらなるガイドラインは、多数の参照文献、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.に示されている。
【0033】
2つ以上の核酸との関連における「実質的に同一」または「実質的同一性」という用語は、比較ウィンドウにわたって、または以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、もしくは手動アラインメント及び目視検査により測定される指定領域にわたって、最大限一致するように比較及びアラインメントされるとき、同じであるかまたは同じであるヌクレオチドの特定のパーセンテージ(すなわち、特定の領域にわたる少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の同一性)を有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。この定義はまた、文脈が示す場合、配列の相補体も同様に指す。好ましくは、実質的同一性は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60ヌクレオチド長の領域にわたり存在する。
【0034】
配列比較のために、通常、1つの配列が、試験配列と比較する参照配列としての役割を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定して、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。初期設定のプログラムパラメータを使用してもよく、または代替的パラメータを指定してもよい。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「比較ウィンドウ」は、ある配列を、同じ連続的位置数の参照配列と、2つの配列を最適にアラインメントした後に比較することができる、約5~約60、一般的には約10~約45、より一般的には約15~約30からなる群から選択されるいくつかの連続的位置のうちのいずれか1つの区分に対する参照を含む。比較のための配列アラインメントの方法は、当該技術分野において周知である。比較のための最適な配列アラインメントは、例えば、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.,2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.,48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444(1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WisにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、または手動アラインメント及び目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.(1995 supplement)を参照されたい)により実施することができる。
【0036】
配列同一性パーセント及び配列類似性の決定に適したアルゴリズムの好ましい例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、それらはそれぞれ、Altschul et al.,Nuc.Acids Res.,25:3389-3402(1977)及びAltschul et al.,J.Mol.Biol.,215:403-410(1990)に記載されている。本発明の核酸の配列同一性パーセントを決定するために、BLAST及びBLAST 2.0が本明細書に記載のパラメータとともに使用される。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に利用可能である。
【0037】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は最小和確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸と参照核酸との比較における最小和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は参照配列と類似していると見なされる。
【0038】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態の、少なくとも2つのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含有するポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。DNAは、例えば、アンチセンス分子、プラスミドDNA、予め凝縮したDNA、PCR産物、ベクター(P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、またはこれらの群の誘導体及び組み合わせの形態であり得る。RNAは、siRNA、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、tRNA、rRNA、ウイルスRNA(vRNA)、自己増幅RNA、及びこれらの組み合わせの形態であり得る。核酸には、合成、天然、及び非天然であり参照核酸と類似した結合特性を有する、公知のヌクレオチド類似体または修飾骨格残基もしくは結合を含有する核酸が含まれる。そのような類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2’-O-メチルリボヌクレオチド、及びペプチド-核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。明確に限定されない限り、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有する、天然ヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。特に示さない限り、特定の核酸配列はまた、明示された配列に加えて、保存的に修飾されたその変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補配列を暗黙的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの第3の位置が混合塩基及び/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することによって実現することができる(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.,19:5081(1991)、Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.,260:2605-2608(1985)、Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes,8:91-98(1994))。「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)またはリボース(RNA)、塩基、及びリン酸基を含有する。ヌクレオチドは、リン酸基を介して互いに連結している。「塩基」には、プリン及びピリミジンが含まれ、それにはさらに、天然化合物であるアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、及び天然類似体、ならびにプリン及びピリミジンの合成誘導体が含まれ、それらには、限定されないが、アミン、アルコール、チオール、カルボキシレート、及びハロゲン化アルキルなどの新たな反応性基を配置する修飾が非限定的に含まれる。
【0039】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドまたは前駆体ポリペプチドの生成に必要な、部分長または完全長のコード配列を含む核酸(例えばDNAまたはRNA)配列を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「遺伝子産物」は、RNA転写物またはポリペプチドなどの遺伝子の産物を指す。
【0041】
「脂質」という用語は、非限定的に脂肪酸のエステルを含み、水に不溶であるが多くの有機溶媒に可溶であることを特徴とする有機化合物の群を指す。それらは、通常、(1)脂肪及び油ならびにロウが含まれる「単純脂質」、(2)リン脂質及び糖脂質が含まれる「複合脂質」、ならびに(3)ステロイドなどの「誘導脂質」の少なくとも3つのクラスに分類される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「LNP」という用語は、脂質-核酸粒子または核酸-脂質粒子(例えば、安定核酸-脂質粒子)を指す。LNPは、脂質(例えば、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び粒子の凝集を防ぐコンジュゲート脂質)と核酸から作製された粒子であって、核酸(例えば、siRNA、aiRNA、miRNA、ssDNA、dsDNA、ssRNA、ショートヘアピンRNA(shRNA)、dsRNA、mRNA、自己増幅RNA、またはプラスミド(干渉RNAもしくはmRNAが転写されるプラスミドを含む))が脂質内に封入されている粒子を表す。一実施形態では、核酸は脂質に少なくとも50%封入されており、一実施形態では、核酸は脂質に少なくとも75%封入されており、一実施形態では、核酸は脂質に少なくとも90%封入されており、一実施形態では、核酸は脂質に完全に封入されている。LNPは通常、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び脂質コンジュゲート(例えば、PEG-脂質コンジュゲート)を含有する。LNPは、静脈内(i.v.)注射後に循環寿命の延長を示すことができ、遠位部位(例えば、投与部位から物理的に隔てられた部位)に蓄積することができ、これらの遠位部位でのトランスフェクトされた遺伝子の発現または標的遺伝子発現のサイレンシングを媒介できることから、全身適用に極めて有用である。
【0043】
本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、典型的には、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、または約70nm~約90nmの平均直径を有し、実質的に無毒性である。さらに、核酸は、本発明の脂質粒子中に存在する場合、水溶液中でヌクレアーゼによる分解に耐性である。核酸-脂質粒子及びそれらの調製方法は、例えば、米国特許出願公開第20040142025号及び同第20070042031号に開示されており、これらの開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「脂質封入された」とは、完全に封入されたか、部分的に封入されたかまたはその両方である核酸(例えば、干渉RNAまたはmRNA)などの核酸を提供する脂質粒子を指し得る。好ましい実施形態では、核酸は、(例えば、LNPまたは他の核酸-脂質粒子を形成するために)脂質粒子に完全に封入される。
【0045】
「カチオン性脂質」という用語は、式CLもしくはCLの化合物:
【化5】
【化6】
またはその塩を指す。
【0046】
「疎水性脂質」という用語は、長鎖の飽和及び不飽和脂肪族炭化水素基、ならびに任意選択で1つ以上の芳香族基(複数可)、脂環式基(複数可)、または複素環式基(複数可)により置換されているそのような基を含むがこれらに限定されない、無極性基を有する化合物を指す。好適な例には、ジアシルグリセロール、ジアルキルグリセロール、N-N-ジアルキルアミノ、1,2-ジアシルオキシ-3-アミノプロパン、及び1,2-ジアルキル-3-アミノプロパンが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
「膜融合性」という用語は、LNPなどの脂質粒子が細胞の膜と融合する能力を指す。膜は、形質膜または細胞小器官、例えばエンドソーム、核などを取り囲む膜のいずれかであり得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「水溶液」という用語は、水を全体的または部分的に含む組成物を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「有機脂質溶液」という用語は、脂質を有する有機溶媒を全体的または部分的に含む組成物を指す。
【0050】
本明細書で使用される「遠位部位」とは、隣接する毛細血管床に限らず生体全体に広く分布する部位を含む、物理的に隔てられた部位を指す。
【0051】
LNPなどの核酸-脂質粒子に関連する「血清安定性」とは、遊離DNAまたはRNAを著しく分解する血清またはヌクレアーゼアッセイへの曝露後に、粒子が著しく分解されないことを意味する。好適なアッセイには、例えば、標準的な血清アッセイ、DNAseアッセイ、またはRNAseアッセイが含まれる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「全身送達」とは、生体内での干渉RNAまたはmRNAなどの核酸の広範な生体内分布をもたらす、脂質粒子の送達を指す。ある特定の薬剤の全身送達をもたらすことができる投与技術もあれば、そうではない投与技術もある。全身送達とは、有用な量、好ましくは治療量の薬剤が身体の大部分に曝露されることを意味する。広範な生体内分布を得るために、薬剤が投与部位から遠位の疾患部位に到達する前に、(初回通過器官(肝臓、肺など)または迅速な非特異的細胞結合などにより)迅速な分解またはクリアランスを受けないような血中寿命が一般に必要とされる。脂質粒子の全身送達は、例えば、静脈内、皮下、及び腹腔内を含む当該技術分野で公知の任意の手段によるものであり得る。好ましい実施形態では、脂質粒子の全身送達は、静脈内送達によるものである。
【0053】
本明細書で使用される場合、「局所送達」とは、干渉RNAまたはmRNAなどの核酸を生体内の標的部位に直接送達することを指す。例えば、薬剤は、腫瘍などの疾患部位、または炎症部位などの他の標的部位、または標的器官、例えば肝臓、心臓、膵臓、腎臓などに直接注射により局所送達することができる。
【0054】
「哺乳動物」という用語は、例えば、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ハムスター、モルモット、ウサギ、家畜などの任意の哺乳動物種を指す。
【0055】
「がん」という用語は、異常細胞の制御不能な増殖を特徴とする疾患クラスの任意のメンバーを指す。この用語には、悪性、良性、軟部組織または固形のいずれとして特徴付けられるかを問わないすべての公知のがん及び腫瘍状態、ならびに転移前及び転移後のがんを含むすべての病期及びグレードのがんが含まれる。異なるタイプのがんの例には、肺癌、結腸癌、直腸癌、肛門癌、胆管癌、小腸癌、胃癌(stomach(gastric)cancer)、食道癌;胆嚢癌、肝癌、膵癌、虫垂癌、乳癌、卵巣癌;子宮頸癌、前立腺癌、腎癌(例えば腎細胞癌)、中枢神経系の癌、神経膠芽腫、皮膚癌、リンパ腫、絨毛癌、頭頸部癌、骨原性肉腫、及び血液癌が含まれるが、これらに限定されない。特定のタイプの肝癌の非限定的な例には、肝細胞癌(HCC)、続発性肝癌(例えば、他のいくつかの非肝癌細胞タイプの転移に起因するもの)、及び肝芽腫が含まれる。本明細書で使用される場合、「腫瘍」は、1つ以上のがん細胞を含む。
【0056】
実施形態の説明
一実施形態では、1つ以上の核酸分子は、siRNAを含む。
【0057】
一実施形態では、1つ以上の核酸分子は、mRNAを含む。
【0058】
一実施形態では、脂質ナノ粒子は、約17を超える(総脂質):(核酸)重量比を有する。
【0059】
一実施形態では、脂質ナノ粒子は、約18を超える(総脂質):(核酸)重量比を有する。
【0060】
一実施形態では、脂質ナノ粒子は、約19を超える(総脂質):(核酸)重量比を有する。
【0061】
一実施形態では、脂質ナノ粒子は、約22~約25である(総脂質):(核酸)重量比を有する。
【0062】
一実施形態では、PEG-C-DMAは、PEG2000-C-DMAである。
【0063】
一実施形態では、医薬組成物は、皮下投与用に製剤化される。
【0064】
特定の実施形態では、核酸は、脂質粒子中の核酸が水溶液中で例えばヌクレアーゼまたはプロテアーゼによる酵素的分解に耐性であるように、脂質粒子の脂質部分内に完全に封入される。特定の他の実施形態では、脂質粒子は、ヒトなどの哺乳動物に対して実質的に無毒性である。
【0065】
特定の場合では、核酸は、例えば、siRNA、aiRNA、miRNA、またはこれらの混合物などの干渉RNA分子を含む。特定の他の場合では、核酸は、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、プラスミド、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、またはこれらの混合物などの、一本鎖もしくは二本鎖DNA、RNA、またはDNA/RNAハイブリッドを含む。特定の他の場合では、核酸は、1つ以上のmRNA分子(例えば、カクテル)を含む。
【0066】
一実施形態では、核酸は、siRNAを含む。一実施形態では、siRNA分子は、約15~約60ヌクレオチド長(例えば、約15~60、15~50、15~40、15~30、15~25、もしくは19~25ヌクレオチド長、または15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチド長)の二本鎖領域を含む。本発明のsiRNA分子は、in vitro及び/またはin vivoで標的配列の発現をサイレンシングすることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、siRNA分子は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。特定の好ましい実施形態では、siRNA分子は、二本鎖領域に1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、またはそれ以上の修飾ヌクレオチドを含む。特定の場合では、siRNAは、二本鎖領域に約1%~約100%(例えば、約1%、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)の修飾ヌクレオチドを含む。好ましい実施形態では、二本鎖領域のヌクレオチドの約25%未満(例えば、約25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、もしくは5%未満)または約1%~約25%(例えば、約1%~25%、5%~25%、10%~25%、15%~25%、20%~25%、もしくは10%~20%)は、修飾ヌクレオチドを含む。
【0068】
他の実施形態では、siRNA分子は、2’-O-メチル(2’OMe)ヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’F)ヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチド、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)ヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド、及びこれらの混合物を含むがこれらに限定されない、修飾ヌクレオチドを含む。好ましい実施形態では、siRNAは、例えば、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、2’OMe-アデノシンヌクレオチド、2’OMe-シトシンヌクレオチドなどの2’OMeヌクレオチド(例えば、2’OMeプリン及び/またはピリミジンヌクレオチド)、ならびにこれらの混合物を含む。特定の場合では、siRNAは、2’OMe-シトシンヌクレオチドを含まない。他の実施形態では、siRNAは、ヘアピンループ構造を含む。
【0069】
siRNAは、siRNA分子の二本鎖領域の一方の鎖(すなわち、センスもしくはアンチセンス)または両方の鎖に修飾ヌクレオチドを含み得る。好ましくは、ウリジン及び/またはグアノシンヌクレオチドは、siRNA二重鎖の二本鎖領域の選択的位置で修飾される。ウリジンヌクレオチド修飾に関して、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖のウリジンヌクレオチドのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上は、2’OMe-ウリジンヌクレオチドなどの修飾ウリジンヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖のすべてのウリジンヌクレオチドは、2’OMe-ウリジンヌクレオチドである。グアノシン修飾に関して、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖のグアノシンヌクレオチドのうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上は、2’OMe-グアノシンヌクレオチドなどの修飾グアノシンヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖のすべてのグアノシンヌクレオチドは、2’OMe-グアノシンヌクレオチドである。
【0070】
特定の実施形態では、siRNA配列の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはそれ以上の5’-GU-3’モチーフは、例えば、ミスマッチを導入して5’-GU-3’モチーフを除去することによって、及び/または2’OMeヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドを導入することによって、修飾され得る。5’-GU-3’モチーフは、siRNA配列のセンス鎖、アンチセンス鎖、または両方の鎖に存在し得る。5’-GU-3’モチーフは、互いに隣接していても、またはその代わりに1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個もしくはそれ以上のヌクレオチドで分離されていてもよい。
【0071】
いくつかの好ましい実施形態では、修飾siRNA分子は、対応する非修飾siRNA配列よりも免疫刺激性が低い。そのような実施形態では、免疫刺激特性が低減した修飾siRNA分子は、標的配列に対するRNAi活性を好都合に保持している。別の実施形態では、修飾siRNA分子の免疫刺激特性及び標的遺伝子発現をサイレンシングするその能力を、例えばsiRNA二重鎖の二本鎖領域内などのsiRNA配列内に最小かつ選択的な2’OMe修飾を導入することにより、バランスさせるかまたは最適化することができる。特定の場合では、修飾siRNAは、対応する非修飾siRNAよりも、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%、免疫刺激性が低い。修飾siRNA分子及び対応する非修飾siRNA分子の免疫刺激特性を、例えば、適切な脂質ベースの送達系(本明細書に開示されるLNP送達系など)を使用した、哺乳動物における全身投与または哺乳動物のレスポンダー細胞のトランスフェクションの約2時間~約12時間後のINF-α及び/またはIL-6レベルを測定することによって決定できることは、当業者には容易に明らかであろう。
【0072】
特定の実施形態では、修飾siRNA分子は、対応する非修飾siRNAのIC50(すなわち、最大半量阻害濃度)の10倍以下のIC50を有する(すなわち、修飾siRNAは、対応する非修飾siRNAのIC50の10倍以下のIC50を有する)。他の実施形態では、修飾siRNAは、対応する非修飾siRNA配列のIC50の3倍以下のIC50を有する。さらに他の実施形態では、修飾siRNAは、対応する非修飾siRNAのIC50の2倍以下のIC50を有する。当業者に周知の方法を使用して、用量反応曲線を生成することができ、修飾siRNA及び対応する非修飾siRNAのIC50値を容易に測定できることが当業者には容易に明らかであろう。
【0073】
さらに別の実施形態では、修飾siRNA分子は、対応する非修飾siRNAと比較して、標的配列の発現の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%をサイレンシングすることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、siRNA分子は、例えば、二本鎖領域のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖に、リン酸骨格修飾を含まない。他の実施形態では、siRNAは、例えば、二本鎖領域のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖に、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のリン酸骨格修飾を含む。好ましい実施形態では、siRNAは、リン酸骨格修飾を含まない。
【0075】
さらなる実施形態では、siRNAは、例えば、二本鎖領域のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖に、2’-デオキシヌクレオチドを含まない。なおさらなる実施形態では、siRNAは、例えば、二本鎖領域のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖に、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の2’-デオキシヌクレオチドを含む。好ましい実施形態では、siRNAは、2’-デオキシヌクレオチドを含まない。
【0076】
特定の場合では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖の二本鎖領域の3’末端のヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドではない。特定の他の場合では、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖の二本鎖領域の3’末端近傍のヌクレオチド(例えば、3’末端の1、2、3または4ヌクレオチド以内)は、修飾ヌクレオチドではない。
【0077】
本明細書に記載のsiRNA分子は、二本鎖領域の片側もしくは両側に1つ、2つ、3つ、4つもしくはそれ以上のヌクレオチドの3’オーバーハングを有していてもよく、または二本鎖領域の片側もしくは両側にオーバーハングを欠いていても(すなわち、平滑末端を有していても)よい。好ましくは、siRNAは、二本鎖領域の両側に2ヌクレオチドの3’オーバーハングを有する。特定の場合では、アンチセンス鎖上の3’オーバーハングは、標的配列に対して相補性を有し、センス鎖上の3’オーバーハングは、標的配列の相補鎖に対して相補性を有する。あるいは、3’オーバーハングは、標的配列またはその相補鎖に対して相補性を有さない。いくつかの実施形態では、3’オーバーハングは、2’-デオキシ(2’H)ヌクレオチドなどの1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のヌクレオチドを含む。特定の好ましい実施形態では、3’オーバーハングは、デオキシチミジン(dT)及び/またはウリジンヌクレオチドを含む。他の実施形態では、二本鎖領域の片側または両側の3’オーバーハング中のヌクレオチドのうちの1つ以上は、修飾ヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドの非限定的な例は前述されており、2’OMeヌクレオチド、2’-デオキシ-2’Fヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチド、2’-O-2-MOEヌクレオチド、LNAヌクレオチド、及びこれらの混合物が含まれる。好ましい実施形態では、siRNAのセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖上に存在する3’オーバーハング中の1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のヌクレオチドは、例えば、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、2’OMe-アデノシンヌクレオチド、2’OMe-シトシンヌクレオチドなどの2’OMeヌクレオチド(例えば、2’OMeプリン及び/またはピリミジンヌクレオチド)、ならびにこれらの混合物を含む。
【0078】
siRNAは、標的遺伝子の発現をサイレンシングする非修飾及び/または修飾siRNA配列の少なくとも1つまたはそれらのカクテル(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、またはそれ以上)を含み得る。siRNAのカクテルは、1つ以上の標的遺伝子の同じ領域もしくはドメイン(例えば、「ホットスポット」)及び/または異なる領域もしくはドメインを対象とする配列を含み得る。特定の場合では、1つ以上(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、またはそれ以上)の標的遺伝子発現をサイレンシングする修飾siRNAが、カクテル中に存在する。特定の他の場合では、1つ以上(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、またはそれ以上)の標的遺伝子発現をサイレンシングする非修飾siRNA配列が、カクテル中に存在する。
【0079】
いくつかの実施形態では、siRNA分子のアンチセンス鎖は、標的配列またはその一部に少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相補的である配列を含むか、またはそれからなる。他の実施形態では、siRNA分子のアンチセンス鎖は、標的配列またはその一部に100%相補的である配列を含むか、またはそれからなる。さらなる実施形態では、siRNA分子のアンチセンス鎖は、標的配列またはその一部に特異的にハイブリダイズする配列を含むか、またはそれからなる。
【0080】
さらなる実施形態では、siRNA分子のセンス鎖は、標的配列またはその一部に少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含むか、またはそれからなる。追加の実施形態では、siRNA分子のセンス鎖は、標的配列またはその一部に100%同一である配列を含むか、またはそれからなる。
【0081】
コレステロール誘導体の例には、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテルの合成は、本明細書に記載されている。
【0082】
本明細書で使用される場合、DSPCは、ジステアロイルホスファチジルコリンを意味する。
【0083】
本発明の脂質粒子において、核酸は、粒子の脂質部分内に完全に封入されており、このことにより、核酸を酵素的分解から保護することができる。好ましい実施形態では、干渉RNA(例えば、siRNA)またはmRNAなどの核酸を含むLNPは、粒子の脂質部分内に完全に封入されており、このことにより、核酸をヌクレアーゼ分解から保護する。特定の場合では、LNP中の核酸は、37℃で少なくとも約20、30、45、または60分間粒子をヌクレアーゼに曝露させた後に、実質的に分解されない。特定の他の場合では、LNP中の核酸は、血清中で粒子を37℃で少なくとも約30、45、もしくは60分間または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、もしくは36時間インキュベートした後に実質的に分解されない。他の実施形態では、核酸(例えば、siRNAまたはmRNAなどの核酸)は、粒子の脂質部分と複合体を形成している。本発明の製剤の利点の1つは、脂質粒子組成物が、ヒトなどの哺乳動物に対して実質的に無毒性であることである。
【0084】
「完全に封入された」という用語は、脂質粒子中の核酸が、遊離のDNA、RNAまたはタンパク質を著しく分解し得る血清またはヌクレアーゼもしくはプロテアーゼアッセイへの曝露後に著しく分解されないことを示す。完全に封入された系では、遊離核酸の100%を通常分解する処理において、好ましくは粒子中の核酸の約25%未満が分解され、より好ましくは粒子中の核酸の約10%未満、最も好ましくは約5%未満が分解される。核酸治療剤との関連において、完全な封入は、Oligreen(登録商標)アッセイにより判定することができる。Oligreen(登録商標)は、溶液中のオリゴヌクレオチド及び一本鎖DNAまたはRNAを定量化するための超高感度蛍光核酸染色剤である(Invitrogen Corporation;Carlsbad,Calif.から入手可能)。「完全に封入された」とはまた、脂質粒子が血清安定性であること、すなわち、in vivo投与時にそれらがその構成成分に迅速に分解されないことも示す。
【0085】
別の態様では、本発明は、複数の脂質粒子を含む脂質粒子(例えば、LNP)組成物を提供する。好ましい実施形態では、核酸(例えば、核酸)は、脂質粒子(例えば、LNP)の約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約30%~約95%、約40%~約95%、約50%~約95%、約60%~約95%、約70%~約95%、約80%~約95%、約85%~約95%、約90%~約95%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、または少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%(あるいは任意のその端数またはその中の範囲)がその中に封入された核酸を有するように、脂質粒子(例えば、LNP)の脂質部分内に完全に封入される。
【0086】
典型的には、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、約1~約100の脂質:活性剤(例えば、脂質:核酸)比(質量/質量比)を有する。場合によっては、脂質:活性剤(例えば、脂質:核酸)比(質量/質量比)は、約1~約50、約2~約25、約3~約20、約4~約15、または約5~約10の範囲である。
【0087】
典型的には、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、約40nm~約150nmの平均直径を有する。好ましい実施形態では、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、約40nm~約130nm、約40nm~約120nm、約40nm~約100nm、約50nm~約120nm、約50nm~約100nm、約60nm~約120nm、約60nm~約110nm、約60nm~約100nm、約60nm~約90nm、約60nm~約80nm、約70nm~約120nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約70nm~約90nm、約70nm~約80nm、または約120nm未満、約110nm未満、約100nm未満、約90nm未満、もしくは約80nm未満(あるいは任意のその端数またはその中の範囲)の平均直径を有する。
【0088】
本発明はまた、本明細書に記載の脂質粒子(例えば、LNP)と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0089】
さらなる態様では、本発明は、1つ以上の活性剤または治療剤(例えば、核酸)を細胞に導入するための方法であって、本明細書に記載の脂質粒子(例えば、LNP)に細胞を接触させることを含む方法を提供する。一実施形態では、細胞は哺乳動物中に存在し、哺乳動物はヒトである。別の実施形態では、本発明は、1つ以上の活性剤または治療剤(例えば、核酸)をin vivo送達するための方法であって、本明細書に記載の脂質粒子(例えば、LNP)を哺乳動物対象に投与することを含む方法を提供する。好ましい実施形態では、投与様式には、経口、鼻腔内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、病巣内、気管内、皮下、及び皮内が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、哺乳動物対象はヒトである。
【0090】
一実施形態では、脂質粒子(例えば、LNP)の総注射用量の少なくとも約5%、10%、15%、20%、または25%が、注射の約8、12、24、36、または48時間後の血漿中に存在する。他の実施形態では、脂質粒子(例えば、LNP)の総注射用量の約20%超、30%超、40%超、及び約60%、70%または80%までもが、注射の約8、12、24、36、または48時間後に血漿中に存在する。特定の場合では、複数の粒子の約10%超が、投与の約1時間後に哺乳動物の血漿中に存在する。特定の他の場合では、脂質粒子(例えば、LNP)の存在は、粒子の投与の少なくとも約1時間後に検出可能である。特定の実施形態では、干渉RNA(例えば、siRNA)またはmRNAなどの核酸の存在は、投与の約8、12、24、36、48、60、72または96時間後に細胞内で検出可能である(例えば、肺、肝臓、腫瘍、または炎症部位)。他の実施形態では、干渉RNA(例えば、siRNA)などの核酸による標的配列の発現の下方制御は、投与の約8、12、24、36、48、60、72または96時間後に検出可能である。さらに他の実施形態では、干渉RNA(例えば、siRNA)などの核酸による標的配列の発現の下方制御は、腫瘍細胞内で、または炎症部位の細胞内で優先的に生じる。さらなる実施形態では、投与部位から近位もしくは遠位の部位の細胞内または肺、肝臓、もしくは腫瘍の細胞内の干渉RNA(例えば、siRNA)などの核酸の存在または作用は、投与の約12、24、48、72、もしくは96時間後、または約6、8、10、12、14、16、18、19、20、22、24、26、もしくは28日後に検出可能である。他の実施形態では、mRNAまたは自己増幅RNAなどの核酸による標的配列の発現の上方制御は、投与の約8、12、24、36、48、60、72または96時間後に検出可能である。さらに他の実施形態では、mRNAまたは自己増幅RNAなどの核酸による標的配列の発現の上方制御は、腫瘍細胞内で、または炎症部位の細胞内で優先的に生じる。さらなる実施形態では、投与部位から近位もしくは遠位の部位の細胞内または肺、肝臓、もしくは腫瘍の細胞内のmRNAまたは自己増幅RNAなどの核酸の存在または作用は、投与の約12、24、48、72、もしくは96時間後、または約6、8、10、12、14、16、18、19、20、22、24、26、もしくは28日後に検出可能である。追加の実施形態では、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、非経口投与または腹腔内投与される。実施形態では、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、筋肉内投与される。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、干渉RNA配列(例えばsiRNA)を含む1つ以上の核酸の治療的送達のための方法に有用である。特に、1つ以上の標的核酸配列または目的遺伝子の転写及び/または翻訳を下方制御またはサイレンシングすることによって、哺乳動物(例えば、マウスなどのげっ歯類またはヒト、チンパンジー、もしくはサルなどの霊長類)における疾患または障害を治療するためのin vitro法及びin vivo法を提供することは、本発明の1つの目的である。非限定的な例として、本発明の方法は、哺乳動物対象の肝臓及び/または腫瘍への干渉RNA(例えば、siRNA)のin vivo送達に有用である。特定の実施形態では、疾患または障害は、遺伝子の発現及び/または過剰発現と関連しており、遺伝子の発現または過剰発現は、干渉RNA(例えば、siRNA)によって低減される。特定の他の実施形態では、治療有効量の脂質粒子(例えば、LNP)を、哺乳動物に投与することができる。場合によっては、干渉RNA(例えば、siRNA)をLNPに製剤化して、この粒子を、そのような治療を必要とする患者に投与する。他の場合では、細胞を患者から取り出し、干渉RNA(例えば、siRNA)をin vitroで(例えば、本明細書に記載のLNPを使用して)送達し、その細胞を患者に再注入する。
【0092】
追加の態様では、本発明は、標的遺伝子の発現をサイレンシングする非対称干渉RNA(aiRNA)分子を含む脂質粒子(例えば、LNP)、及びそのような粒子を使用して標的遺伝子の発現をサイレンシングする方法を提供する。
【0093】
一実施形態では、aiRNA分子は、約10~約25(塩基対形成)ヌクレオチド長の二本鎖(二重鎖)領域を含み、aiRNA分子は5’及び3’オーバーハングを含むアンチセンス鎖を含み、aiRNA分子は標的遺伝子発現をサイレンシングすることができる。
【0094】
一実施形態では、aiRNA分子は、約12~20、12~19、12~18、13~17、または14~17(塩基対形成)ヌクレオチド長、より典型的には、12、13、14、15、16、17、18、19、または20(塩基対形成)ヌクレオチド長の二本鎖(二重鎖)領域を含む。特定の他の場合では、アンチセンス鎖上の5’及び3’オーバーハングは標的RNA配列に相補的である配列を含み、任意選択で、非標的配列をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖上の5’及び3’オーバーハングの各々は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、またはそれ以上のヌクレオチドを含むか、またはそれらからなる。
【0095】
他の実施形態では、aiRNA分子は、2’OMeヌクレオチド、2’Fヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチド、2’-O-MOEヌクレオチド、LNAヌクレオチド、及びこれらの混合物からなる群から選択される修飾ヌクレオチドを含む。好ましい実施形態では、aiRNA分子は、2’OMeヌクレオチドを含む。非限定的な例として、2’OMeヌクレオチドは、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0096】
関連する態様では、本発明は、標的遺伝子の発現をサイレンシングするマイクロRNA(miRNA)分子を含む脂質粒子(例えば、LNP)、及びそのような組成物を使用して標的遺伝子発現をサイレンシングする方法を提供する。
【0097】
一実施形態では、miRNA分子は、約15~約60ヌクレオチド長で構成され、miRNA分子は標的遺伝子の発現をサイレンシングすることができる。
【0098】
特定の場合では、miRNA分子は、約15~50、15~40、または15~30ヌクレオチド長、より典型的には約15~25または19~25ヌクレオチド長、好ましくは約20~24、21~22、または21~23ヌクレオチド長で構成される。好ましい実施形態では、miRNA分子は、目的RNA配列を標的とする成熟miRNA分子である。
【0099】
いくつかの実施形態では、miRNA分子は、2’OMeヌクレオチド、2’Fヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチド、2’-O-MOEヌクレオチド、LNAヌクレオチド、及びこれらの混合物からなる群から選択される修飾ヌクレオチドを含む。好ましい実施形態では、miRNA分子は、2’OMeヌクレオチドを含む。非限定的な例として、2’OMeヌクレオチドは、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、1つ以上のmRNA分子の治療的送達のための方法に有用である。特に、1つ以上の標的タンパク質の発現を介して哺乳動物(例えば、マウスなどのげっ歯類またはヒト、チンパンジー、もしくはサルなどの霊長類)における疾患または障害を治療するためのin vitro法及びin vivo法を提供することは、本発明の1つの目的である。非限定的な例として、本発明の方法は、哺乳動物対象への1つ以上のmRNA分子のin vivo送達に有用である。特定の他の実施形態では、治療有効量の脂質粒子(例えば、LNP)を、哺乳動物に投与することができる。場合によっては、1つ以上のmRNA分子をLNPに製剤化して、この粒子を、そのような治療を必要とする患者に投与する。他の場合では、細胞を患者から取り出し、1つ以上のmRNA分子をin vitroで(例えば、本明細書に記載のLNPを使用して)送達し、その細胞を患者に再注入する。
【0101】
他の実施形態では、mRNA分子は、2’OMeヌクレオチド、2’Fヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチド、2’-O-MOEヌクレオチド、LNAヌクレオチド、及びこれらの混合物からなる群から選択される修飾ヌクレオチドを含む。関連する態様では、本発明は、標的遺伝子の発現をサイレンシングするマイクロRNA(miRNA)分子を含む脂質粒子(例えば、LNP)、及びそのような組成物を使用して標的遺伝子発現をサイレンシングする方法を提供する。
【0102】
したがって、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、これらが循環中に安定しており、血管外部位へのアクセスをもたらす薬力学的挙動に必要とされるサイズであり、標的細胞集団に到達することができることから、核酸(例えば、siRNA、aiRNA、及び/またはmiRNAなどの干渉RNA、あるいはmRNA)などの活性剤または治療剤の対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)への投与に使用するために好都合であり適している。
【0103】
本発明の文脈において、「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然の塩基、糖及び糖間(骨格)結合からなるヌクレオチドまたはヌクレオシドモノマーのポリマーまたはオリゴマーを指す。「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」という用語はまた、同様に機能する非天然モノマーまたはその一部を含むポリマーまたはオリゴマーを含む。そのような修飾または置換オリゴヌクレオチドは、例えば、細胞取り込みの向上、免疫原性の低減、及びヌクレアーゼ存在下での安定性の増加などの特性故に、天然型よりも好ましいことが多い。
【0104】
オリゴヌクレオチドは一般に、デオキシリボオリゴヌクレオチドまたはリボオリゴヌクレオチドに分類される。デオキシリボオリゴヌクレオチドは、デオキシリボースと称される5炭糖からなり、この糖の5’炭素及び3’炭素でリン酸に共有結合して、交互の非分枝ポリマーを形成する。リボオリゴヌクレオチドは、5炭糖がリボースである類似の繰り返し構造からなる。
【0105】
本発明による脂質-核酸粒子中に存在する核酸は、公知の任意の形態の核酸を含む。本明細書で使用される核酸は、一本鎖DNAもしくはRNA、または二本鎖DNAもしくはRNA、またはDNA-RNAハイブリッドであり得る。二本鎖DNAの例は本明細書に記載されており、例えば、構造遺伝子、制御及び終止領域を含む遺伝子、ならびにウイルスDNAまたはプラスミドDNAなどの自己複製系が含まれる。二本鎖RNAの例は本明細書に記載されており、例えば、siRNA、ならびにaiRNA及びpre-miRNAなどの他のRNAi剤が含まれる。一本鎖核酸には、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、成熟miRNA、及び三重鎖形成性オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0106】
核酸は、一般に核酸の特定の形態に応じて、様々な長さのものであり得る。例えば、特定の実施形態では、プラスミドまたは遺伝子は、約1,000~約100,000ヌクレオチド残基長であり得る。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、約10~約100ヌクレオチド長の範囲であり得る。関連する様々な実施形態では、一本鎖、二本鎖、及び三本鎖のいずれかのオリゴヌクレオチドは、約10~約60ヌクレオチド長、約15~約60ヌクレオチド長、約20~約50ヌクレオチド長、約15~約30ヌクレオチド長、または約20~約30ヌクレオチド長の長さの範囲であり得る。
【0107】
特定の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチド(またはその鎖)は、標的ポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするか、またはそれに相補的である。本明細書で使用される「特異的にハイブリダイズ可能」及び「相補的」という用語は、DNAまたはRNA標的とオリゴヌクレオチドとの間で安定かつ特異的な結合が生じるような十分な程度の相補性を示す。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸配列に対して100%相補的である必要はないことを理解されたい。好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドの標的配列への結合が標的配列の正常機能を妨害して標的配列からの有用性または発現の喪失を引き起こす場合、オリゴヌクレオチドは特異的にハイブリダイズ可能であり、特異的結合が望まれる条件下で、すなわち、in vivoアッセイもしくは治療的処置の場合には生理学的条件下で、またはin vitroアッセイの場合にはそのアッセイが行われる条件下で、オリゴヌクレオチドの非標的配列への非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性がある。したがって、オリゴヌクレオチドは、それが標的とするかまたはそれが特異的にハイブリダイズする遺伝子またはmRNA配列の領域と比較して、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の塩基置換を含み得る。
【0108】
siRNA
本発明の核酸-脂質粒子のsiRNA成分は、目的の標的遺伝子の発現をサイレンシングすることができる。siRNA二重鎖の各鎖は、通常、約15~約60ヌクレオチド長、好ましくは、約15~約30ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、siRNAは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。修飾siRNAは、一般に、対応する非修飾siRNA配列よりも免疫刺激性が低く、かつ目的の標的遺伝子に対するRNAi活性を保持している。いくつかの実施形態では、修飾siRNAは、少なくとも1つの2’OMeプリンヌクレオチドまたは2’OMeピリミジンヌクレオチド、例えば、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、2’OMe-アデノシンヌクレオチド、及び/または2’OMe-シトシンヌクレオチドを含有する。好ましい実施形態では、ウリジン及び/またはグアノシンヌクレオチドのうちの1つ以上は、修飾されている。修飾ヌクレオチドは、siRNAの一方の鎖(すなわち、センスもしくはアンチセンス)または両方の鎖に存在し得る。siRNA配列は、オーバーハング(例えば、Elbashir et al.,Genes Dev.,15:188(2001)またはNykanen et al.,Cell,107:309(2001)に記載されている3’もしくは5’オーバーハング)を有していてもよく、またはオーバーハングを欠いていてもよい(すなわち、平滑末端を有する)。
【0109】
修飾siRNAは、一般に、siRNA二重鎖の二本鎖領域に約1%~約100%(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)の修飾ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、siRNAの二本鎖領域内のヌクレオチドのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、またはそれ以上は、修飾ヌクレオチドを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、siRNAの二本鎖領域内のヌクレオチドの約25%未満(例えば、約25%未満、約24%未満、約23%未満、約22%未満、約21%未満、約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満)は、修飾ヌクレオチドを含む。
【0111】
他の実施形態では、siRNAの二本鎖領域内のヌクレオチドの約1%~約25%(例えば、約1%~25%、2%~25%、3%~25%、4%~25%、5%~25%、6%~25%、7%~25%、8%~25%、9%~25%、10%~25%、11%~25%、12%~25%、13%~25%、14%~25%、15%~25%、16%~25%、17%~25%、18%~25%、19%~25%、20%~25%、21%~25%、22%~25%、23%~25%、24%~25%など)または約1%~約20%(例えば、約1%~20%、2%~20%、3%~20%、4%~20%、5%~20%、6%~20%、7%~20%、8%~20%、9%~20%、10%~20%、11%~20%、12%~20%、13%~20%、14%~20%、15%~20%、16%~20%、17%~20%、18%~20%、19%~20%、1%~19%、2%~19%、3%~19%、4%~19%、5%~19%、6%~19%、7%~19%、8%~19%、9%~19%、10%~19%、11%~19%、12%~19%、13%~19%、14%~19%、15%~19%、16%~19%、17%~19%、18%~19%、1%~18%、2%~18%、3%~18%、4%~18%、5%~18%、6%~18%、7%~18%、8%~18%、9%~18%、10%~18%、11%~18%、12%~18%、13%~18%、14%~18%、15%~18%、16%~18%、17%~18%、1%~17%、2%~17%、3%~17%、4%~17%、5%~17%、6%~17%、7%~17%、8%~17%、9%~17%、10%~17%、11%~17%、12%~17%、13%~17%、14%~17%、15%~17%、16%~17%、1%~16%、2%~16%、3%~16%、4%~16%、5%~16%、6%~16%、7%~16%、8%~16%、9%~16%、10%~16%、11%~16%、12%~16%、13%~16%、14%~16%、15%~16%、1%~15%、2%~15%、3%~15%、4%~15%、5%~15%、6%~15%、7%~15%、8%~15%、9%~15%、10%~15%、11%~15%、12%~15%、13%~15%、14%~15%など)は、修飾ヌクレオチドを含む。
【0112】
さらなる実施形態では、例えば、siRNAの一方または両方の鎖がウリジン及び/またはグアノシンヌクレオチドにおいて選択的に修飾される場合、生じる修飾siRNAは、約30%未満の修飾ヌクレオチド(例えば、約30%未満、約29%未満、約28%未満、約27%未満、約26%未満、約25%未満、約24%未満、約23%未満、約22%未満、約21%未満、約20%未満、約19%未満、約18%未満、約17%未満、約16%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、もしくは約1%未満の修飾ヌクレオチド)、または約1%~約30%の修飾ヌクレオチド(例えば、約1%~30%、2%~30%、3%~30%、4%~30%、5%~30%、6%~30%、7%~30%、8%~30%、9%~30%、10%~30%、11%~30%、12%~30%、13%~30%、14%~30%、15%~30%、16%~30%、17%~30%、18%~30%、19%~30%、20%~30%、21%~30%、22%~30%、23%~30%、24%~30%、25%~30%、26%~30%、27%~30%、28%~30%、もしくは29%~30%の修飾ヌクレオチド)を含み得る。
【0113】
siRNA配列の選択
好適なsiRNA配列は、当該技術分野で公知の任意の手段を使用して同定することができる。通常、Elbashir et al.,Nature,411:494-498(2001)及びElbashir et al.,EMBO J.,20:6877-6888(2001)に記載されている方法を、Reynolds et al.,Nature Biotech.,22(3):326-330(2004)に記載の合理的設計規則と組み合わせる。
【0114】
一般に、目的の標的遺伝子からの転写物のAUG開始コドンのヌクレオチド配列3’を、ジヌクレオチド配列(例えば、AA、NA、CC、GG、またはUU(N=C、GもしくはU))についてスキャンする(例えば、Elbashir et al.,EMBO J.,20:6877-6888(2001)を参照されたい)。ジヌクレオチド配列のすぐ3’側のヌクレオチドを、潜在的なsiRNA配列(すなわち、標的配列またはセンス鎖配列)として同定する。通常、ジヌクレオチド配列のすぐ3’側の19個、21個、23個、25個、27個、29個、31個、33個、35個、またはそれ以上のヌクレオチドを、潜在的なsiRNA配列として同定する。いくつかの実施形態では、ジヌクレオチド配列はAAまたはNA配列であり、AAまたはNAジヌクレオチドのすぐ3’側の19個のヌクレオチドを潜在的なsiRNA配列として同定する。siRNA配列を、一般に、標的遺伝子の長さに沿って異なる位置で間隔を空けて配置する。siRNA配列のサイレンシング効率をさらに高めるために、潜在的なsiRNA配列を分析して、例えば標的細胞または生物における、他のコード配列との相同領域を含まない部位を同定することができる。例えば、約21塩基対の好適なsiRNA配列は、通常、標的細胞または生物におけるコード配列に対して相同である16~17を超える連続塩基対を有さない。siRNA配列をRNA PolIIIプロモーターから発現させる場合、4つを超えて連続するAまたはTを欠くsiRNA配列を選択する。
【0115】
潜在的なsiRNA配列を同定した後、相補配列(すなわち、アンチセンス鎖配列)を設計することができる。潜在的なsiRNA配列はまた、当該技術分野で公知の様々な基準を使用して分析することができる。例えば、それらのサイレンシング効率を高めるために、合理的設計アルゴリズムによってsiRNA配列を分析し、以下の特徴、すなわち、(1)約25%~約60%G/CであるG/C含有量、(2)センス鎖の15~19位に少なくとも3つのA/U、(3)内部リピートなし、(4)センス鎖の19位がA、(5)センス鎖の3位がA、(6)センス鎖の10位がU、(7)センス鎖の19位がG/Cではない、及び(8)センス鎖の13位がGではない、の1つ以上を有する配列を同定することができる。これらの各特性の適切な値を割り当て、siRNAの選択に有用なアルゴリズムを組み込んだsiRNA設計ツールは、例えば、http://boz094.ust.hk/RNAi/siRNAに見出すことができる。当業者は、前述の特徴のうちの1つ以上を有する配列を、潜在的なsiRNA配列としてさらなる分析及び試験のために選択することができることを理解するであろう。
【0116】
さらに、以下の基準、すなわち、(1)連続して4つ以上並んだ同じ塩基を含む配列、(2)Gのホモポリマーを含む配列(すなわち、これらのポリマーの構造的特性に起因する起こり得る非特異的作用を低減させるため)、(3)三重塩基モチーフ(例えば、GGG、CCC、AAA、またはTTT)を含む配列、(4)連続して7つ以上並んだG/Cを含む配列、及び(5)候補内に4つ以上の塩基のダイレクトリピートを含み内部フォールドバック構造をもたらす配列、の1つ以上を有する潜在的なsiRNA配列は、多くの場合siRNAとしては除外される。しかしながら、当業者は、前述の特徴のうちの1つ以上を有する配列を、潜在的なsiRNA配列としてさらなる分析及び試験のために依然として選択することができることを理解するであろう。
【0117】
いくつかの実施形態では、潜在的なsiRNA配列を、例えば、Khvorova et al.,Cell,115:209-216(2003)、及びSchwarz et al.,Cell,115:199-208(2003)に記載されているように、siRNA二重鎖非対称に基づいてさらに分析することができる。他の実施形態では、潜在的なsiRNA配列を、例えば、Luo et al.,Biophys.Res.Commun.,318:303-310(2004)に記載されているように、標的部位での二次構造に基づいてさらに分析することができる。例えば、標的部位での二次構造を、Mfoldアルゴリズム(http://www.bioinfo.rpi.edu/applications/mfold/rna/form1.cgiで入手可能)を使用してモデル化し、塩基対合の形態で二次構造が少なくステムループが存在する、標的部位での到達性に有利なsiRNA配列を選択することができる。
【0118】
潜在的なsiRNA配列を同定した後、例えば、in vitroサイトカインアッセイまたはin vivo動物モデルを使用して、任意の免疫刺激特性の存在について配列を分析することができる。siRNA配列のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖内のモチーフ、例えばGUリッチモチーフ(例えば、5’-GU-3’、5’-UGU-3’、5’-GUGU-3’、5’-UGUGU-3’など)もまた、配列が免疫刺激性であり得るか否かの指標を提供し得る。siRNA分子が免疫刺激性であることが判明すると、次に、本明細書に記載の通りに、免疫刺激性を低下させるようにsiRNA分子を修飾することができる。非限定的な例として、siRNAが免疫刺激性siRNAまたは非免疫刺激性siRNAのいずれであるかを判定するために、検出可能な免疫応答を細胞が生じるような条件下で、siRNA配列を哺乳動物のレスポンダー細胞と接触させることができる。哺乳動物のレスポンダー細胞は、ナイーブ哺乳動物(すなわち、これまでsiRNA配列の遺伝子産物と接触したことのない哺乳動物)に由来し得る。哺乳動物のレスポンダー細胞は、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)、マクロファージなどであり得る。検出可能な免疫応答は、例えば、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IL-6、IL-12、及びこれらの組み合わせなどの、サイトカインまたは増殖因子の生成を含み得る。次に、免疫刺激性であると同定されたsiRNA分子を、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖のヌクレオチドのうちの少なくとも1つを修飾ヌクレオチドで置換することにより修飾して、その免疫刺激特性を低下させることができる。例えば、siRNA二重鎖の二本鎖領域内のヌクレオチドの約30%未満(例えば、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満)を、2’OMeヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドで置換することができる。次に、修飾siRNAを前述の通りに哺乳動物のレスポンダー細胞と接触させて、その免疫刺激特性が低減または抑制されていることを確認することができる。
【0119】
免疫応答を検出するための好適なin vitroアッセイには、David et al.の二重モノクローナル抗体サンドイッチイムノアッセイ法(米国特許第4,376,110号);モノクローナル-ポリクローナル抗体サンドイッチアッセイ(Wide et al.,in Kirkham and Hunter,eds.,Radioimmunoassay Methods,E.and S.Livingstone,Edinburgh(1970));Gordon et al.の「ウエスタンブロット」法(米国特許第4,452,901号);標識リガンドの免疫沈降(Brown et al.,J.Biol.Chem.,255:4980-4983(1980));例えば、Raines et al.,J.Biol.Chem.,257:5154-5160(1982)により記載されている酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);蛍光色素の使用を含む免疫細胞化学法(Brooks et al.,Clin.Exp.Immunol.,39:477(1980));及び活性の中和(Bowen-Pope et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:2396-2400(1984))が含まれるが、これらに限定されない。前述のイムノアッセイに加えて、米国特許第3,817,827号、同第3,850,752号、同第3,901,654号、同第3,935,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号、及び同第4,098,876号に記載されているものを含む、他の多数のイムノアッセイが利用可能である。これらの参照文献の開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0120】
免疫応答を検出するためのin vivoモデルの非限定的な例には、例えば、Judge et al.,Mol.Ther.,13:494-505(2006)に記載されているin vivoマウスサイトカイン誘導アッセイが含まれる。特定の実施形態では、以下の通り実施することができるアッセイ:(1)siRNAを、標準的な静脈内注射により外側尾静脈に投与することができる、(2)血液を、投与の約6時間後に心臓穿刺により採取して、サイトカイン分析用の血漿として処理することができる、及び(3)サイトカインを、サンドイッチELISAキットを製造業者の指示に従って使用して定量化することができる(例えば、マウス及びヒトIFN-α(PBL Biomedical;Piscataway,N.J.)、ヒトIL-6及びTNF-α(eBioscience;San Diego,Calif.)、ならびにマウスIL-6、TNF-α、及びIFN-γ(BD Biosciences;San Diego,Calif.))。
【0121】
サイトカイン及び増殖因子に特異的に結合するモノクローナル抗体は、複数の供給源から市販されており、当該技術分野で公知の方法を使用して作製することができる(例えば、Kohler et al.,Nature,256:495-497(1975)及びHarlow and Lane,ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Publication,New York(1999)を参照されたい)。モノクローナル抗体の作製は以前に記載されており、当該技術分野で公知の任意の手段により行うことができる(Buhring et al.,in Hybridoma,Vol.10,No.1,pp.77-78(1991))。いくつかの方法では、モノクローナル抗体は、検出を容易にするために(例えば、分光学的、光化学的、生化学的、電気的、光学的、または化学的手段によって検出可能な任意の組成物で)標識される。
【0122】
siRNA分子の作製
siRNAは、例えば、1つ以上の単離された低分子干渉RNA(siRNA)二重鎖として、より長い二本鎖RNA(dsRNA)として、またはDNAプラスミド中の転写カセットから転写されたsiRNAもしくはdsRNAとして、を含むいくつかの形態で提供され得る。siRNA配列は、オーバーハング(例えば、Elbashir et al.,Genes Dev.,15:188(2001)またはNykanen et al.,Cell,107:309(2001)に記載されている3’もしくは5’オーバーハング)を有していてもよく、またはオーバーハングを(すなわち、平滑末端を有するように)欠いていてもよい。
【0123】
RNA集団を使用して長い前駆体RNAを得ることができ、または選択した標的配列に対して実質的もしくは完全な同一性を有する長い前駆体RNAを使用してsiRNAを作製することができる。RNAは、当業者に周知の方法に従って細胞または組織から単離し、合成し、及び/またはクローン化することができる。RNAは、(細胞もしくは組織から得られる、cDNAから転写される、サブトラクトされる、選択されるなどの)混合集団であり得、または単一の標的配列を表し得る。RNAは、天然(例えば、組織または細胞試料から単離される)であり得るか、in vitroで(例えば、T7もしくはSP6ポリメラーゼ及びPCR産物またはクローン化cDNAを使用して)合成され得るか、あるいは化学合成され得る。
【0124】
長いdsRNAを形成するために、合成RNAの場合、相補体もin vitroで転写しハイブリダイズしてdsRNAを形成する。天然RNA集団を使用する場合、例えば、RNA集団に対応するcDNAを転写することによって、またはRNAポリメラーゼを使用することによって、(例えば、E.coli RNAseIIIまたはダイサーによる消化用のdsRNAを形成するために)RNA相補体もまた、提供される。次に、前駆体RNAをハイブリダイズさせて、消化用の二本鎖RNAを形成する。dsRNAは、対象に直接投与することも、または投与前にin vitroで消化することもできる。
【0125】
RNAの単離、RNAの合成、核酸のハイブリダイズ、cDNAライブラリーの作成及びスクリーニング、ならびにPCRの実施のための方法は、PCR法(米国特許第4,683,195号及び同第4,683,202号、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis et al.,eds,1990)を参照されたい)と同様に、当該技術分野において周知である(例えば、Gubler and Hoffman,Gene,25:263-269(1983)、Sambrook et al.,上掲、Ausubel et al.,上掲を参照されたい)。発現ライブラリーもまた、当業者に周知である。本発明における一般的な使用方法を開示するさらなる基本的な文書には、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd ed.1989)、Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990)、及びCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,1994)が含まれる。これらの参照文献の開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0126】
好ましくは、siRNAは化学合成される。本発明のsiRNA分子を含むオリゴヌクレオチドは、Usman et al.,J.Am.Chem.Soc.,109:7845(1987)、Scaringe et al.,Nucl.Acids Res.,18:5433(1990)、Wincott et al.,Nucl.Acids Res.,23:2677-2684(1995)、及びWincott et al.,Methods Mol.Bio.,74:59(1997)に記載されているものなどの当該技術分野で公知の任意の様々な技術を使用して合成することができる。オリゴヌクレオチドの合成は、5’末端のジメトキシトリチル及び3’末端のホスホラミダイトなどの一般的な核酸保護基及びカップリング基を使用する。非限定的な例として、スモールスケールの合成は、0.2μmolスケールのプロトコルを使用してApplied Biosystems合成装置で実施することができる。あるいは、0.2μmolスケールでの合成は、Protogene(Palo Alto,Calif.)の96ウェルプレート合成装置で実施することができる。しかしながら、より大きなまたはより小さなスケールの合成もまた、本発明の範囲内である。オリゴヌクレオチド合成に適した試薬、RNA脱保護の方法、及びRNA精製の方法は、当業者に公知である。
【0127】
siRNA分子はまた、タンデム合成技術を介して合成することもでき、ここで、両方の鎖を、切断可能なリンカーによって分離した単一の連続するオリゴヌクレオチド断片または鎖として合成し、これらはその後切断されて別個の断片または鎖をもたらし、これらがハイブリダイズしてsiRNA二重鎖を形成する。リンカーは、ポリヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーであり得る。siRNAのタンデム合成は、マルチウェル/マルチプレート合成プラットフォーム、及びバッチ反応器、合成カラムなどを用いるラージスケール合成プラットフォームの両方に容易に適応させることができる。あるいは、siRNA分子を、一方のオリゴヌクレオチドがsiRNAのセンス鎖を含み他方がアンチセンス鎖を含む、2つの別個のオリゴヌクレオチドからアセンブルすることができる。例えば、各鎖を別々に合成し、合成及び/または脱保護の後にハイブリダイゼーションまたはライゲーションによって互いに連結させることができる。特定の他の場合では、siRNA分子を単一の連続するオリゴヌクレオチド断片として合成することができ、ここで、自己相補的センス領域とアンチセンス領域がハイブリダイズして、ヘアピン二次構造を有するsiRNA二重鎖を形成する。
【0128】
siRNA配列の修飾
特定の態様では、siRNA分子は、2本の鎖と、二本鎖領域に少なくとも1つの修飾ヌクレオチドとを有する二重鎖を含み、ここで、各鎖は、約15~約60ヌクレオチド長である。有利なことに、修飾siRNAは、対応する非修飾siRNA配列よりも免疫刺激性が低いが、標的配列の発現をサイレンシングする能力を保持している。好ましい実施形態では、siRNA分子に導入される化学修飾の程度は、siRNAの免疫刺激特性の低減または抑制と、RNAi活性の保持との間のバランスをとる。非限定的な例として、目的遺伝子を標的とするsiRNA分子は、標的遺伝子発現をサイレンシングするその能力を保持しながらsiRNAによって生じる免疫応答を排除するように、siRNA二重鎖内の選択的なウリジン及び/またはグアノシンヌクレオチドにおいて最小限に修飾され得る(例えば、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満修飾される)。
【0129】
本発明での使用に適した修飾ヌクレオチドの例には、2’-O-メチル(2’OMe)、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’F)、2’-デオキシ、5-C-メチル、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)、4’-チオ、2’-アミノ、または2’-C-アリル基を有するリボヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。例えば、Saenger,Principles of Nucleic Acid Structure,Springer-Verlag Ed.(1984)に記載されているものなどのノーザンコンフォメーション(Northern conformation)を有する修飾ヌクレオチドもまた、siRNA分子における使用に適している。そのような修飾ヌクレオチドには、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド(例えば、2’-O,4’-C-メチレン-(D-リボフラノシル)ヌクレオチド)、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)ヌクレオチド、2’-メチル-チオ-エチルヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’F)ヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-クロロ(2’Cl)ヌクレオチド、及び2’-アジドヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。特定の場合では、本明細書に記載のsiRNA分子は、1つ以上のG-クランプヌクレオチドを含む。G-クランプヌクレオチドは、修飾シトシン類似体であって、その修飾が、二重鎖内の相補的なグアニンヌクレオチドのワトソン-クリック面及びフーグスティーン面の両方に水素結合する能力を付与する類似体を指す(例えば、Lin et al.,J.Am.Chem.Soc.,120:8531-8532(1998)を参照されたい)。さらに、ヌクレオチド塩基類似体、例えば、C-フェニル、C-ナフチルなど、他の芳香族誘導体、イノシン、アゾールカルボキサミド、ならびにニトロアゾール誘導体、例えば、3-ニトロピロール、4-ニトロインドール、5-ニトロインドール、及び6-ニトロインドールを有するヌクレオチド(例えば、Loakes,Nucl.Acids Res.,29:2437-2447(2001)を参照されたい)を、siRNA分子に組み込むことができる。
【0130】
特定の実施形態では、siRNA分子は、1つ以上の化学修飾、例えば、末端キャップ部分、リン酸骨格修飾などをさらに含み得る。末端キャップ部分の例には、逆位デオキシ脱塩基残基、グリセリル修飾、4’,5’-メチレンヌクレオチド、1-(β-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4’-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、L-ヌクレオチド、α-ヌクレオチド、修飾塩基ヌクレオチド、スレオ-ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3’,4’-セコヌクレオチド、非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド、非環式3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’-3’-逆位ヌクレオチド部分、3’-3’-逆位脱塩基部分、3’-2’-逆位ヌクレオチド部分、3’-2’-逆位脱塩基部分、5’-5’-逆位ヌクレオチド部分、5’-5’-逆位脱塩基部分、3’-5’-逆位デオキシ脱塩基部分、5’-アミノ-アルキルホスフェート、1,3-ジアミノ-2-プロピルホスフェート、3-アミノプロピルホスフェート、6-アミノヘキシルホスフェート、1,2-アミノドデシルホスフェート、ヒドロキシプロピルホスフェート、1,4-ブタンジオールホスフェート、3’-ホスホロアミデート、5’-ホスホロアミデート、ヘキシルホスフェート、アミノヘキシルホスフェート、3’-ホスフェート、5’-アミノ、3’-ホスホロチオエート、5’-ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、及び架橋もしくは非架橋メチルホスホネートまたは5’-メルカプト部分が含まれるが、これらに限定されない(例えば、米国特許第5,998,203号、Beaucage et al.,Tetrahedron 49:1925(1993)を参照されたい)。リン酸骨格修飾(すなわち、修飾されたヌクレオチド間結合をもたらす)の非限定的な例には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、モルホリノ、アミデート、カルバメート、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、及びアルキルシリル置換が含まれる(例えば、Hunziker et al.,Nucleic Acid Analogues:Synthesis and Properties,in Modern Synthetic Methods,VCH,331-417(1995)、Mesmaeker et al.,Novel Backbone Replacements for Oligonucleotides,in Carbohydrate Modifications in Antisense Research,ACS,24-39(1994)を参照されたい)。このような化学修飾は、siRNAのセンス鎖、アンチセンス鎖、または両方の鎖の5’末端及び/または3’末端で生じ得る。これらの参照文献の開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0131】
いくつかの実施形態では、siRNA分子のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖は、約1つ~約4つ(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)の2’-デオキシリボヌクレオチド及び/または修飾及び非修飾ヌクレオチドの任意の組み合わせを有する3’末端オーバーハングをさらに含み得る。siRNA分子に導入することができる修飾ヌクレオチド及び化学修飾のタイプのさらなる例は、例えば、英国特許第GB2,397,818B号ならびに米国特許出願公開第20040192626号、同第20050282188号、及び同第20070135372号に記載されており、これらの開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0132】
本明細書に記載のsiRNA分子は、任意選択で、siRNAの一方または両方の鎖に1つ以上の非ヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用される場合、「非ヌクレオチド」という用語は、糖及び/またはリン酸置換を含む1つ以上のヌクレオチド単位の代わりに核酸鎖に組み込むことができ、残りの塩基がそれらの活性を示すことを可能にする、任意の基または化合物を指す。この基または化合物は、アデノシン、グアニン、シトシン、ウラシル、またはチミンなどの一般的に認識されているヌクレオチド塩基を含まず、したがって、1’位に塩基を欠いているという点で脱塩基性である。
【0133】
他の実施形態では、siRNAの化学修飾は、コンジュゲートをsiRNA分子に結合させることを含む。コンジュゲートは、例えば、生分解性リンカーなどの共有結合を介して、siRNAのセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖の5’末端及び/または3’末端に結合させることができる。コンジュゲートはまた、例えば、カルバメート基または他の連結基を介して、siRNAに結合させることができる(例えば、米国特許出願公開第20050074771号、同第20050043219号、及び同第20050158727号を参照されたい)。特定の場合では、コンジュゲートは、細胞へのsiRNAの送達を容易にする分子である。siRNAへの結合に適したコンジュゲート分子の例には、コレステロールなどのステロイド、ポリエチレングリコール(PEG)などのグリコール、ヒト血清アルブミン(HSA)、脂肪酸、カロテノイド、テルペン、胆汁酸、葉酸塩(例えば、葉酸、葉酸塩類似体及びこれらの誘導体)、糖類(例えば、ガラクトース、ガラクトサミン、N-アセチルガラクトサミン、グルコース、マンノース、フルクトース、フコースなど)、リン脂質、ペプチド、細胞取り込みを媒介することが可能な細胞受容体のリガンド、ならびにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない(例えば、米国特許出願公開第20030130186号、同第20040110296号、及び同第20040249178号、米国特許第6,753,423号を参照されたい)。他の例には、米国特許出願公開第20050119470号及び同第20050107325号に記載されている、親油性部分、ビタミン、ポリマー、ペプチド、タンパク質、核酸、低分子、オリゴ糖、炭水化物クラスター、インターカレーター、副溝結合剤、切断剤、及び架橋剤コンジュゲート分子が含まれる。さらに他の例には、米国特許出願公開第20050153337号に記載されている、2’-O-アルキルアミン、2’-β-アルコキシアルキルアミン、ポリアミン、C5-カチオン性修飾ピリミジン、カチオン性ペプチド、グアニジウム基、アミジニニウム(amidininium)基、カチオン性アミノ酸コンジュゲート分子が含まれる。追加の例には、米国特許出願公開第20040167090号に記載されている、疎水性基、膜活性化合物、細胞透過性化合物、細胞標的化シグナル、相互作用修飾因子、及び立体安定剤コンジュゲート分子が含まれる。さらなる例には、米国特許出願公開第20050239739号に記載されているコンジュゲート分子が含まれる。使用するコンジュゲートのタイプ及びsiRNA分子とのコンジュゲーションの程度を、RNAi活性を保持しながら改善されたsiRNAの薬物動態プロファイル、バイオアベイラビリティ、及び/または安定性について、評価することができる。したがって、当業者は、様々な周知のin vitro細胞培養物またはin vivo動物モデルのいずれかを使用して、種々のコンジュゲートが結合しているsiRNA分子をスクリーニングし、改善された特性及び完全なRNAi活性を有するものを同定することができる。前述の特許文書の開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0134】
標的遺伝子
特定の実施形態では、本明細書に記載の核酸-脂質粒子の核酸成分(例えば、siRNA)を使用して、目的遺伝子の翻訳(すなわち、発現)を下方制御またはサイレンシングすることができる。目的遺伝子には、ウイルスの感染及び生存に関連する遺伝子、代謝性疾患及び障害(例えば、肝疾患及び肝障害)に関連する遺伝子、腫瘍形成及び細胞形質転換(例えば、がん)に関連する遺伝子、血管新生遺伝子、炎症応答及び自己免疫応答に関連するものなどの免疫調節遺伝子、リガンド受容体遺伝子、ならびに神経変性障害に関連する遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、目的遺伝子は、肝細胞で発現される。
【0135】
ウイルスの感染及び生存に関連する遺伝子には、細胞内で結合し、細胞内に侵入し、細胞内で複製するためにウイルスによって発現される遺伝子が含まれる。特に対象となるものは、慢性ウイルス疾患に関連するウイルス配列である。特に対象となるウイルス配列には、エボラウイルス及びマールブルグウイルスなどのフィロウイルス(例えば、Geisbert et al.,J.Infect.Dis.,193:1650-1657(2006)を参照されたい)、ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルス、及びサビアウイルスなどのアレナウイルス(Buchmeier et al.,Arenaviridae:the viruses and their replication,In:FIELDS VIROLOGY,Knipe et al.(eds.),4th ed.,Lippincott-Raven,Philadelphia,(2001))、インフルエンザA、B、及びCウイルスなどのインフルエンザウイルス(例えば、Steinhauer et al.,Annu Rev Genet.,36:305-332(2002)、及びNeumann et al.,J Gen Virol.,83:2635-2662(2002)を参照されたい)、肝炎ウイルス(例えば、Hamasaki et al.,FEBS Lett.,543:51(2003)、Yokota et al.,EMBO Rep.,4:602(2003)、Schlomai et al.,Hepatology,37:764(2003)、Wilson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:2783(2003)、Kapadia et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:2014(2003)、及びFIELDS VIROLOGY,Knipe et al.(eds.),4th ed.,Lippincott-Raven,Philadelphia(2001)を参照されたい)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Banerjea et al.,Mol.Ther.,8:62(2003)、Song et al.,J.Virol.,77:7174(2003)、Stephenson,JAMA,289:1494(2003)、Qin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:183(2003))、ヘルペスウイルス(Jia et al.,J.Virol.,77:3301(2003))、ならびにヒトパピローマウイルス(HPV)(Hall et al.,J.Virol.,77:6066(2003)、Jiang et al.,Oncogene,21:6041(2002))の配列が含まれる。
【0136】
サイレンシングすることができる例示的なフィロウイルス核酸配列には、構造タンパク質(例えば、VP30、VP35、核タンパク質(NP)、ポリメラーゼタンパク質(L-pol))、及び膜結合タンパク質(例えば、VP40、糖タンパク質(GP)、VP24)をコードする核酸配列が含まれるが、これらに限定されない。エボラウイルスの完全なゲノム配列は、例えば、Genbankアクセッション番号NC_002549、AY769362、NC_006432、NC_004161、AY729654、AY354458、AY142960、AB050936、AF522874、AF499101、AF272001、及びAF086833に記載されている。エボラウイルスVP24の配列は、例えば、Genbankアクセッション番号U77385及びAY058897に記載されている。エボラウイルスL-polの配列は、例えば、Genbankアクセッション番号X67110に記載されている。エボラウイルスVP40の配列は、例えば、Genbankアクセッション番号AY058896に記載されている。エボラウイルスNPの配列は、例えば、Genbankアクセッション番号AY058895に記載されている。エボラウイルスGPの配列は、例えば、Genbankアクセッション番号AY058898、Sanchez et al.,Virus Res.,29:215-240(1993)、Will et al.,J.Virol.,67:1203-1210(1993)、Volchkov et al.,FEBS Lett.,305:181-184(1992)、及び米国特許第6,713,069号に記載されている。さらなるエボラウイルス配列は、例えば、Genbankアクセッション番号L11365及びX61274に記載されている。マールブルグウイルスの完全なゲノム配列は、例えば、Genbankアクセッション番号NC_001608、AY430365、AY430366、及びAY358025に記載されている。マールブルグウイルスGPの配列は、例えば、Genbankアクセッション番号AF005734、AF005733、及びAF005732に記載されている。マールブルグウイルスVP35の配列は、例えば、Genbankアクセッション番号AF005731及びAF005730に記載されている。さらなるマールブルグウイルス配列は、例えば、Genbankアクセッション番号X64406、Z29337、AF005735、及びZ12132に記載されている。エボラウイルス及びマールブルグウイルスの核酸配列を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第20070135370号に記載されているものが含まれ、この開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0137】
サイレンシングすることができる例示的なインフルエンザウイルス核酸配列には、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質(M1及びM2)、非構造タンパク質(NS1及びNS2)、RNAポリメラーゼ(PA、PB1、PB2)、ノイラミニダーゼ(NA)、ならびにヘマグルチニン(HA)をコードする核酸配列が含まれるが、これらに限定されない。インフルエンザAのNP配列は、例えば、Genbankアクセッション番号NC_004522、AY818138、AB166863、AB188817、AB189046、AB189054、AB189062、AY646169、AY646177、AY651486、AY651493、AY651494、AY651495、AY651496、AY651497、AY651498、AY651499、AY651500、AY651501、AY651502、AY651503、AY651504、AY651505、AY651506、AY651507、AY651509、AY651528、AY770996、AY790308、AY818138、及びAY818140に記載されている。インフルエンザAのPA配列は、例えば、Genbankアクセッション番号AY818132、AY790280、AY646171、AY818132、AY818133、AY646179、AY818134、AY551934、AY651613、AY651610、AY651620、AY651617、AY651600、AY651611、AY651606、AY651618、AY651608、AY651607、AY651605、AY651609、AY651615、AY651616、AY651640、AY651614、AY651612、AY651621、AY651619、AY770995、及びAY724786に記載されている。インフルエンザウイルスの核酸配列を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第20070218122号に記載されているものが含まれ、この開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0138】
サイレンシングすることができる例示的な肝炎ウイルスの核酸配列には、転写及び翻訳に関与する核酸配列(例えば、En1、En2、X、P)、ならびに構造タンパク質(例えば、Cタンパク質及びC関連タンパク質を含むコアタンパク質、S、M、及び/またはLタンパク質を含むカプシド及びエンベロープタンパク質、またはそれらの断片)をコードする核酸配列が含まれるが、これらに限定されない(例えば、FIELDS VIROLOGY,上掲を参照されたい)。サイレンシングすることができる例示的なC型肝炎ウイルス(HCV)の核酸配列には、5’非翻訳領域(5’UTR)、3’非翻訳領域(3’UTR)、ポリタンパク質翻訳開始コドン領域、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列、及び/またはコアタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3プロテアーゼ/ヘリカーゼ、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質、及び/またはNS5B RNA依存性RNAポリメラーゼをコードする核酸配列が含まれるが、これらに限定されない。HCVのゲノム配列は、例えば、Genbankアクセッション番号NC_004102(HCV遺伝子型1a)、AJ238799(HCV遺伝子型1b)、NC_009823(HCV遺伝子型2)、NC_009824(HCV遺伝子型3)、NC_009825(HCV遺伝子型4)、NC_009826(HCV遺伝子型5)、及びNC_009827(HCV遺伝子型6)に記載されている。A型肝炎のウイルス核酸配列は、例えば、Genbankアクセッション番号NC_001489に記載されており、B型肝炎ウイルスの核酸配列は、例えば、Genbankアクセッション番号NC_003977に記載されており、D型肝炎ウイルスの核酸配列は、例えば、Genbankアクセッション番号NC_001653に記載されており、E型肝炎ウイルスの核酸配列は、例えば、Genbankアクセッション番号NC_001434に記載されており、G型肝炎ウイルスの核酸配列は、例えば、Genbankアクセッション番号NC_001710に記載されている。ウイルスの感染及び生存に関連する遺伝子をコードする配列のサイレンシングは、ウイルス状態を治療するために使用される従来の薬剤の投与と組み合わせて好都合に使用することができる。肝炎ウイルス核酸配列を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第20060281175号、同第20050058982号、及び同第20070149470号、米国特許第7,348,314号、ならびに2009年3月20日に出願された米国仮特許出願第61/162,127号に記載されているものが含まれ、これらの開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0139】
代謝性疾患及び障害(例えば、肝臓が標的である障害、ならびに肝疾患及び肝障害)に関連する遺伝子には、例えば、脂質異常症において発現する遺伝子(例えば、LXRα及びLXRβなどの肝臓X受容体(Genbankアクセッション番号NM_007121)、ファルネソイドX受容体(FXR)(Genbankアクセッション番号NM_005123)、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)、部位-1プロテアーゼ(S1P)、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素-Aレダクターゼ(HMG補酵素-Aレダクターゼ)、アポリポタンパク質B(ApoB)(Genbankアクセッション番号NM_000384)、アポリポタンパク質CIII(ApoC3)(Genbankアクセッション番号NM_000040及びNG_008949 REGION:5001.8164)、及びアポリポタンパク質E(ApoE)(Genbankアクセッション番号NM_000041及びNG_007084 REGION:5001.8612))、ならびに糖尿病(例えば、グルコース6-ホスファターゼ)が含まれる(例えば、Forman et al.,Cell,81:687(1995)、Seol et al.,Mol.Endocrinol.,9:72(1995)、Zavacki et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:7909(1997)、Sakai et al.,Cell,85:1037-1046(1996)、Duncan et al.,J.Biol.Chem.,272:12778-12785(1997)、Willy et al.,Genes Dev.,9:1033-1045(1995)、Lehmann et al.,J.Biol.Chem.,272:3137-3140(1997)、Janowski et al.,Nature,383:728-731(1996)、及びPeet et al.,Cell,93:693-704(1998)を参照されたい)。当業者は、代謝性疾患及び障害(例えば、肝臓が標的である障害、ならびに肝疾患及び肝障害)に関連する遺伝子には、肝臓自体で発現する遺伝子ならびに他の器官及び組織で発現する遺伝子が含まれることを理解するであろう。代謝性疾患及び障害に関連する遺伝子をコードする配列のサイレンシングは、その疾患または障害を治療するために使用される従来の薬剤の投与と組み合わせて好都合に使用することができる。ApoB遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第20060134189号に記載されているものが含まれ、この開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。ApoC3遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、2009年1月26日に出願された米国仮特許出願第61/147,235号に記載されているものが含まれ、この開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0140】
腫瘍形成及び細胞形質転換(例えば、がんまたは他の新生物形成)に関連する遺伝子配列の例には、Eg5(KSP、KIF11;Genbankアクセッション番号NM_004523)などの有糸分裂キネシン;ポロ様キナーゼ1(PLK-1)(Genbankアクセッション番号NM_005030、Barr et al.,Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.,5:429-440(2004))などのセリン/スレオニンキナーゼ;WEE1(Genbankアクセッション番号NM_003390及びNM_001143976)などのチロシンキナーゼ;XIAP(Genbankアクセッション番号NM_001167)などのアポトーシス阻害因子;CSN1、CSN2、CSN3、CSN4、CSN5(JAB1;Genbankアクセッション番号NM_006837)、CSN6、CSN7A、CSN7B及びCSN8などのCOP9シグナロソームサブユニット;COP1(RFWD2;Genbankアクセッション番号NM_022457及びNM_001001740)などのユビキチンリガーゼ;ならびにHDAC1、HDAC2(Genbankアクセッション番号NM_001527)、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC8、HDAC9などのヒストンデアセチラーゼなどが含まれる。Eg5及びXIAP遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、2007年5月29日に出願された米国特許出願第11/807,872号に記載されているものが含まれ、この開示はすべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。PLK-1遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第20050107316号及び同第20070265438号、ならびに2008年12月23日に出願された米国特許出願第12/343,342号に記載されているものが含まれ、これらの開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。CSN5遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、2008年4月15日に出願された米国仮特許出願第61/045,251号に記載されているものが含まれ、この開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0141】
腫瘍形成及び細胞形質転換に関連する遺伝子配列のさらなる例には、転座配列、例えば、MLL融合遺伝子、BCR-ABL(Wilda et al.,Oncogene,21:5716(2002)、Scherr et al.,Blood,101:1566(2003))、TEL-AML1、EWS-FLI1、TLS-FUS、PAX3-FKHR、BCL-2、AML1-ETO、及びAML1-MTG8(Heidenreich et al.,Blood,101:3157(2003));過剰発現配列、例えば、多剤耐性遺伝子(Nieth et al.,FEBS Lett.,545:144(2003)、Wu et al,Cancer Res.63:1515(2003))、サイクリン(Li et al.,Cancer Res.,63:3593(2003)、Zou et al.,Genes Dev.,16:2923(2002))、ベータ-カテニン(Verma et al.,Clin Cancer Res.,9:1291(2003))、テロメラーゼ遺伝子(Kosciolek et al.,Mol Cancer Ther.,2:209(2003))、c-MYC、N-MYC、BCL-2、増殖因子受容体(例えば、EGFR/ErbB1(Genbankアクセッション番号NM_005228、NM_201282、NM_201283、及びNM_201284、またNagy et al.Exp.Cell Res.,285:39-49(2003)も参照されたい)、ErbB2/HER-2(Genbankアクセッション番号NM_004448及びNM_001005862)、ErbB3(Genbankアクセッション番号NM_001982及びNM_001005915)、ならびにErbB4(Genbankアクセッション番号NM_005235及びNM_001042599));ならびにRAS(Tuschl and Borkhardt,Mol.Interventions,2:158(2002)に概説されている)などの突然変異配列が含まれる。EGFR遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、2007年5月29日に出願された米国特許出願第11/807,872号に記載されているものが含まれ、この開示はすべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0142】
DNA修復酵素をコードする配列のサイレンシングは、化学療法剤の投与と組み合わせて使用される(Collis et al.,Cancer Res.,63:1550(2003))。腫瘍遊走に関連するタンパク質をコードする遺伝子はまた、目的標的配列、例えば、インテグリン、セレクチン、及びメタロプロテイナーゼである。前述の例は排他的なものではない。当業者は、腫瘍形成もしくは細胞形質転換、腫瘍増殖、または腫瘍遊走を促進するかまたは推進する、いかなる全体的または部分的な遺伝子配列も、鋳型配列として含まれ得ることを理解するであろう。
【0143】
血管新生遺伝子は、新たな血管の形成を促進することができる。特に対象となるのは血管内皮増殖因子(VEGF)(Reich et al.,Mol.Vis.,9:210(2003))またはVEGFRである。VEGFRを標的とするsiRNA配列は、例えば、GB2396864、米国特許出願公開第20040142895号、及びCA2456444に記載されており、これらの開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0144】
抗血管新生遺伝子は、新血管新生を阻害することができる。これらの遺伝子は、血管新生が疾患の病理学的発生における役割を担うがんの治療に特に有用である。抗血管新生遺伝子の例には、限定されないが、エンドスタチン(例えば、米国特許第6,174,861号を参照されたい)、アンジオスタチン(例えば、米国特許第5,639,725号を参照されたい)、及びVEGFR2(例えば、Decaussin et al.,J.Pathol.,188:369-377(1999)を参照されたい)が含まれ、これらの開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0145】
免疫調節遺伝子は、1つ以上の免疫応答を調節する遺伝子である。免疫調節遺伝子の例には、増殖因子(例えば、TGF-α、TGF-β、EGF、FGF、IGF、NGF、PDGF、CGF、GM-CSF、SCFなど)、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-4、IL-12(Hill et al.,J.Immunol.,171:691(2003))、IL-15、IL-18、IL-20など)、インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β、IFN-γなど)及びTNFなどのサイトカインが含まれるが、これらに限定されない。Fas及びFasリガンド遺伝子もまた、目的の免疫調節標的配列である(Song et al.,Nat.Med.,9:347(2003))。造血細胞及びリンパ系細胞において二次シグナル伝達分子をコードする遺伝子、例えば、ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)(Heinonen et al.,FEBS Lett.,527:274(2002))などのTecファミリーキナーゼもまた、本発明に含まれる。
【0146】
細胞受容体リガンドには、細胞表面受容体(例えば、インスリン受容体、EPO受容体、Gタンパク質共役型受容体、チロシンキナーゼ活性を有する受容体、サイトカイン受容体、増殖因子受容体など)に結合して、その受容体が関与する生理学的経路(例えば、グルコースレベルの調節、血球発生、有糸分裂生起など)を調節(例えば、阻害、活性化など)することができるリガンドが含まれる。細胞受容体リガンドの例には、サイトカイン、増殖因子、インターロイキン、インターフェロン、エリスロポエチン(EPO)、インスリン、グルカゴン、Gタンパク質共役型受容体リガンドなどが含まれるが、これらに限定されない。トリヌクレオチドリピート(例えば、CAGリピート)の伸長をコードする鋳型は、球脊髄性筋萎縮症及びハンチントン病(Caplen et al.,Hum.Mol.Genet.,11:175(2002))などのトリヌクレオチドリピートの伸長に起因する神経変性障害における病原性配列のサイレンシングに使用される。
【0147】
遺伝子の発現を下方制御またはサイレンシングするために核酸によって(例えば、siRNAによって)標的化され得る他の特定の標的遺伝子には、大動脈平滑筋アルファ2アクチン(ACTA2)、アルコール脱水素酵素1A(ADH1A)、アルコール脱水素酵素4(ADH4)、アルコール脱水素酵素6(ADH6)、アファミン(Afamin)(AFM)、アンジオテンシノーゲン(AGT)、セリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT)、アルファ-2-HS-糖タンパク質(AHSG)、アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC4(AKR1C4)、血清アルブミン(ALB)、アルファ-1-ミクログロブリン/ビクニン前駆体(AMBP)、アンジオポエチン関連タンパク質3(ANGPTL3)、血清アミロイドP成分(APCS)、アポリポタンパク質A-II(APOA2)、アポリポタンパク質B-100(APOB)、アポリポタンパク質C3(APOC3)、アポリポタンパク質C-IV(APOC4)、アポリポタンパク質F(APOF)、ベータ-2-糖タンパク質1(APOH)、アクアポリン-9(AQP9)、胆汁酸-CoA:アミノ酸N-アシルトランスフェラーゼ(BAAT)、C4b結合タンパク質ベータ鎖(C4BPB)、LINC01554(C5orf27)によりコードされる性質不明の推定タンパク質、補体第3因子(C3)、補数第5因子(C5)、補体成分C6(C6)、補体成分C8アルファ鎖(C8A)、補体成分C8ベータ鎖(C8B)、補体成分C8ガンマ鎖(C8G)、補体成分C9(C9)、カルモジュリン結合転写活性化因子1(CAMTA1)、CD38(CD38)、補体因子B(CFB)、補体因子H関連タンパク質1(CFHR1)、補体因子H関連タンパク質2(CFHR2)、補体因子H関連タンパク質3(CFHR3)、カンナビノイド受容体1(CNR1)、セルロプラスミン(CP)、カルボキシペプチダーゼB2(CPB2)、結合組織増殖因子(CTGF)、C-X-Cモチーフケモカイン2(CXCL2)、シトクロムP450 1A2(CYP1A2)、シトクロムP450 2A6(CYP2A6)、シトクロムP450 2C8(CYP2C8)、シトクロムP450 2C9(CYP2C9)、シトクロムP450ファミリー2サブファミリーDメンバー6(CYP2D6)、シトクロムP450 2E1(CYP2E1)、フィロキノンオメガ-ヒドロキシラーゼCYP4F2(CYP4F2)、7-アルファ-ヒドロキシコレスト-4-エン-3-オン12-アルファ-ヒドロキシラーゼ(CYP8B1)、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)、凝固第12因子(F12)、凝固第II因子(トロンビン)(F2)、凝固第IX因子(F9)、フィブリノーゲンアルファ鎖(FGA)、フィブリノーゲンベータ鎖(FGB)、フィブリノーゲンガンマ鎖(FGG)、フィブリノーゲン様1(FGL1)、フラビン含有モノオキシゲナーゼ3(FMO3)、フラビン含有モノオキシゲナーゼ5(FMO5)、グループスペシフィックコンポーネント(ビタミンD結合タンパク質)(GC)、成長ホルモン受容体(GHR)、グリシンN-メチルトランスフェラーゼ(GNMT)、ヒアルロナン結合タンパク質2(HABP2)、ヘプシジン抗菌ペプチド(HAMP)、ヒドロキシ酸オキシダーゼ(グリコール酸オキシダーゼ)1(HAO1)、HGF活性化因子(HGFAC)、ハプトグロビン関連タンパク質;ハプトグロビン(HPR)、ヘモペキシン(HPX)、ヒスチジンリッチ糖タンパク質(HRG)、ヒドロキシステロイド(11-ベータ)デヒドロゲナーゼ1(HSD11B1)、ヒドロキシステロイド(17-ベータ)デヒドロゲナーゼ13(HSD17B13)、インターアルファ-トリプシンインヒビター重鎖H1(ITIH1)、インターアルファ-トリプシンインヒビター重鎖H2(ITIH2)、インターアルファ-トリプシンインヒビター重鎖H3(ITIH3)、インターアルファ-トリプシンインヒビター重鎖H4(ITIH4)、プレカリクレイン(KLKB1)、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)、肝臓発現抗菌ペプチド2(LEAP2)、白血球細胞由来ケモタキシン2(LECT2)、リポタンパク質(a)(LPA)、マンナン結合レクチンセリンペプチダーゼ2(MASP2)、S-アデノシルメチオニン合成酵素アイソフォーム1型(MAT1A)、NADPHオキシダーゼ4(NOX4)、ポリ[ADP-リボース]ポリメラーゼ1(PARP1)、パラオキソナーゼ1(PON1)、パラオキソナーゼ3(PON3)、ビタミンK依存性プロテインC(PROC)、レチノールデヒドロゲナーゼ16(RDH16)、構成的血清アミロイドA4(SAA4)、セリンデヒドラターゼ(SDS)、セルピンファミリーAメンバー1(SERPINA1),セルピンA11(SERPINA11),カリスタチン(SERPINA4)、コルチコステロイド結合グロブリン(SERPINA6)、アンチトロンビンIII(SERPINC1)、ヘパリン補因子2(SERPIND1)、セルピンファミリーHメンバー1(SERPINH1),溶質キャリアファミリー5メンバー2(SLC5A2)、ナトリウム/胆汁酸共輸送体(SLC10A1)、溶質キャリアファミリー13メンバー5(SLC13A5)、溶質キャリアファミリー22メンバー1(SLC22A1)、溶質キャリアファミリー25メンバー47(SLC25A47)、溶質キャリアファミリー2促進性グルコース輸送体メンバー2(SLC2A2)、ナトリウム共役型中性アミノ酸輸送体4(SLC38A4)、溶質キャリア有機アニオン輸送体ファミリーメンバー1B1(SLCO1B1)、スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ1(SMPD1)、胆汁酸塩スルホトランスフェラーゼ(SULT2A1)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB10(UGT2B10)、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB15(UGT2B15)、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB4(UGT2B4)、及びビトロネクチン(VTN)が含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
治療目的で前述の遺伝子のいずれかの発現をサイレンシングするその有用性に加えて、本明細書に記載の特定の核酸(例えば、siRNA)はまた、研究及び開発用途、ならびに診断的、予防的、予後診断的、臨床的、及び他の健康管理用途においても有用である。非限定的な例として、特定の核酸(例えば、siRNA)を、目的遺伝子が治療標的である可能性があるか否かを試験することを目的とした標的検証試験において使用することができる。特定の核酸(例えば、siRNA)はまた、潜在的な治療標的としての遺伝子を見出すことを目的とした標的同定試験にも使用することができる。
【0149】
CRISPR
標的化ゲノム編集は、ニッチ技術から多くの生物学研究者が使用する方法へと進化した。この進化は、クラスター化され規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)技術の出現により大いに促進された(例えば、Supplementary Information(2014)を含むSander et al.,Nature Biotechnology,32(4),347-355、国際公開第WO2016/197132号及び同第2016/197133号を参照されたい)。したがって、本明細書で提供されるのは、HBVなどの疾患を治療するためにCRISPR技術と組み合わせて使用することができる改善物(例えば、脂質ナノ粒子及びその製剤)である。CRISPRを使用するための標的に関して、CRISPR技術で利用されるガイドRNA(gRNA)を、特異的に同定された配列、例えば、標的遺伝子(例えばHBVゲノムの標的遺伝子)を標的とするように設計することができる。そのような標的配列の例は、国際公開第WO2016/197132号に示されている。さらに、国際公開第WO2013/151665号(例えば、表6を参照されたい。この文書は、表6及び付随する配列表を特に含めて、具体的に参照により組み込まれる)は、mRNA発現コンストラクトに関連して特許請求された約35,000のmRNA配列を記載している。本発明の特定の実施形態は、これらの配列のいずれかの発現を標的とするためにCRISPR技術を利用する。本発明の特定の実施形態はまた、本明細書で論じられる標的遺伝子の発現を標的とするためにCRISPR技術を利用することができる。
【0150】
aiRNA
siRNAと同様に、非対称干渉RNA(aiRNA)は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を動員し、アンチセンス鎖の5’末端に対するヌクレオチド10と11の間で標的配列の配列特異的切断を媒介することによって、哺乳動物細胞における種々の遺伝子の効果的なサイレンシングをもたらすことができる(Sun et al.,Nat.Biotech.,26:1379-1382(2008))。通常、aiRNA分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する短いRNA二重鎖を含み、この二重鎖は、アンチセンス鎖の3’末端及び5’末端にオーバーハングを含有する。aiRNAは一般に、センス鎖が、相補的アンチセンス鎖と比較して両末端で短いため、非対称である。いくつかの態様では、aiRNA分子は、siRNA分子に使用されるものと類似の条件下で、設計、合成、及びアニーリングすることができる。非限定的な例として、aiRNA配列は、siRNA配列を選択するための前述の方法を使用して、選択及び作製することができる。
【0151】
別の実施形態では、種々の長さ(例えば、約10~25、12~20、12~19、12~18、13~17、または14~17塩基対、より典型的には12、13、14、15、16、17、18、19、または20塩基対)のaiRNA二重鎖を、目的のmRNAを標的とするためにアンチセンス鎖の3’末端及び5’末端にオーバーハングを含めて設計することができる。特定の場合では、aiRNA分子のセンス鎖は、約10~25、12~20、12~19、12~18、13~17、または14~17ヌクレオチド長、より典型的には、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチド長である。特定の他の場合では、aiRNA分子のアンチセンス鎖は、約15~60、15~50、または15~40ヌクレオチド長、より典型的には約15~30、15~25または19~25ヌクレオチド長、好ましくは約20~24、21~22、または21~23ヌクレオチド長である。
【0152】
いくつかの実施形態では、5’アンチセンスオーバーハングは、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の非標的ヌクレオチド(例えば、「AA」、「UU」、「dTdT」など)を含有する。他の実施形態では、3’アンチセンスオーバーハングは、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の非標的ヌクレオチド(例えば、「AA」、「UU」、「dTdT」など)を含有する。特定の態様では、本明細書に記載のaiRNA分子は、例えば、二本鎖(二重鎖)領域に、及び/またはアンチセンスオーバーハングに、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。非限定的な例として、aiRNA配列は、siRNA配列について前述した修飾ヌクレオチドのうちの1つ以上を含み得る。好ましい実施形態では、aiRNA分子は、例えば、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチドなどの2’OMeヌクレオチド、またはこれらの混合物を含む。
【0153】
特定の実施形態では、aiRNA分子は、siRNA分子のアンチセンス鎖に対応するアンチセンス鎖、例えば、本明細書に記載のsiRNA分子のうちの1つを含み得る。他の実施形態では、aiRNA分子を使用して前述の標的遺伝子のいずれか、例えば、ウイルスの感染及び生存に関連する遺伝子、代謝性疾患及び障害に関連する遺伝子、腫瘍形成及び細胞形質転換に関連する遺伝子、血管新生遺伝子、炎症応答及び自己免疫応答に関連するものなどの免疫調節遺伝子、リガンド受容体遺伝子、ならびに神経変性障害に関連する遺伝子などの発現をサイレンシングすることができる。
【0154】
miRNA
一般に、マイクロRNA(miRNA)は、遺伝子発現を制御する約21~23ヌクレオチドの長の一本鎖RNA分子である。miRNAは遺伝子によってコードされ、その遺伝子のDNAからmiRNAが転写されるが、miRNAはタンパク質に翻訳されず(非コードRNA)、代わりに、各一次転写物(pri-miRNA)が、pre-miRNAと称される短いステムループ構造にプロセシングされ、最終的に機能的な成熟miRNAにプロセシングされる。成熟miRNA分子は、1つ以上のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に部分的に相補的であるかまたは完全に相補的であるかのいずれかであり、それらの主要な機能は、遺伝子発現を下方制御することである。miRNA分子の同定は、例えば、Lagos-Quintana et al.,Science,294:853-858、Lau et al.,Science,294:858-862、及びLee et al.,Science,294:862-864に記載されている。
【0155】
miRNAをコードする遺伝子は、プロセシングされた成熟miRNA分子よりもはるかに長い。miRNAは、まず、キャップ及びポリAテールを有する一次転写産物またはpri-miRNAとして転写され、細胞核において、pre-miRNAとして知られる約70ヌクレオチドの短いステムループ構造にプロセシングされる。このプロセシングは、動物において、ヌクレアーゼドローシャ及び二本鎖RNA結合タンパク質パーシャ(Pasha)からなるマイクロプロセッサー複合体として知られるタンパク質複合体によって行われる(Denli et al.,Nature,432:231-235(2004))。次に、これらのpre-miRNAは、エンドヌクレアーゼダイサーとの相互作用により細胞質内で成熟miRNAにプロセシングされ、このことはまた、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)の形成を開始させる(Bernstein et al.,Nature,409:363-366(2001)。DNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかが、miRNAを生じさせるための鋳型として機能し得る。
【0156】
ダイサーがpre-miRNAステムループを切断すると、2つの相補的な短いRNA分子が形成されるが、その1つのみがRISC複合体に組み込まれる。この鎖は、ガイド鎖として知られており、5’末端の安定性に基づいて、RISC複合体中の触媒的に活性なRNaseであるアルゴノートタンパク質によって選択される(Preall et al.,Curr.Biol.,16:530-535(2006))。アンチガイドまたはパッセンジャー鎖として知られる残りの鎖は、RISC複合体基質として分解される(Gregory et al.,Cell,123:631-640(2005))。活性RISC複合体に組み込まれた後、miRNAは、それらの相補的mRNA分子と塩基対合し、標的mRNAの分解及び/または翻訳のサイレンシングを誘導する。
【0157】
哺乳動物のmiRNA分子は通常、標的mRNA配列の3’UTR内の部位に相補的である。特定の場合では、miRNAの標的mRNAへのアニーリングは、タンパク質の翻訳機序を遮断することによりタンパク質の翻訳を阻害する。特定の他の場合では、miRNAの標的mRNAへのアニーリングは、RNA干渉(RNAi)と類似のプロセスを通じて、標的mRNAの切断及び分解を促進する。miRNAはまた、標的化mRNAに対応するゲノム部位のメチル化を標的とし得る。一般に、miRNAは、miRNPと総称されるタンパク質の補体と関連して機能する。
【0158】
特定の態様では、本明細書に記載のmiRNA分子は、約15~100、15~90、15~80、15~75、15~70、15~60、15~50、または15~40ヌクレオチド長、より典型的には約15~30、15~25または19~25ヌクレオチド長、好ましくは約20~24、21~22、または21~23ヌクレオチド長である。特定の他の態様では、miRNA分子は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。非限定的な例として、miRNA配列は、siRNA配列について前述した修飾ヌクレオチドのうちの1つ以上を含み得る。好ましい実施形態では、miRNA分子は、例えば、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチドなどの2’OMeヌクレオチド、またはこれらの混合物を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、miRNA分子を使用して前述の標的遺伝子のいずれか、例えば、ウイルスの感染及び生存に関連する遺伝子、代謝性疾患及び障害に関連する遺伝子、腫瘍形成及び細胞形質転換に関連する遺伝子、血管新生遺伝子、炎症応答及び自己免疫応答に関連するものなどの免疫調節遺伝子、リガンド受容体遺伝子、ならびに神経変性障害に関連する遺伝子などの発現をサイレンシングすることができる。
【0160】
他の実施形態では、目的のmRNAを標的とするmiRNAの活性を遮断する1つ以上の薬剤は、本発明の脂質粒子(例えば、核酸-脂質粒子)を使用して投与される。遮断剤の例には、立体遮断オリゴヌクレオチド、ロックド核酸オリゴヌクレオチド、及びモルフォリノオリゴヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。このような遮断剤は、miRNAまたは標的mRNA上のmiRNA結合部位に直接結合し得る。
【0161】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
一実施形態では、核酸は、目的の標的遺伝子または配列を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドである。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」または「アンチセンス」という用語は、標的とするポリヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドを含む。アンチセンスヌクレオチドは、選択された配列に相補的であるDNAまたはRNAの一本鎖である。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、相補的RNA鎖の翻訳を、そのRNAに結合することによって阻止する。アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドを使用して、特定の相補的(コードまたは非コード)RNAを標的とすることができる。結合が生じると、このDNA/RNAハイブリッドは、酵素RNase Hによって分解され得る。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10~約60個のヌクレオチド、より好ましくは約15~約30個のヌクレオチドを含む。この用語はまた、所望の標的遺伝子に厳密に相補的ではない可能性のあるアンチセンスオリゴヌクレオチドを包含する。したがって、本発明は、非標的特異的活性がアンチセンスに見られる場合、または標的配列との1つ以上のミスマッチを含有するアンチセンス配列が特定の使用に最も好ましい場合に、利用可能である。
【0162】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、タンパク質合成の有効でありかつ標的化された阻害因子であることが示されており、したがって、標的とする遺伝子によるタンパク質合成を特異的に阻害するために使用することができる。タンパク質合成を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性は、十分に確立されている。例えば、ポリガラクツロナーゼ(polygalactauronase)及びムスカリン2型アセチルコリン受容体の合成は、それらのそれぞれのmRNA配列を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドによって阻害される(米国特許第5,739,119号及び同第5,759,829号を参照されたい)。さらに、アンチセンス阻害の例は、核タンパク質サイクリン、多剤耐性遺伝子(MDR1)、ICAM-1、E-セレクチン、STK-1、線条体GABAA受容体、及びヒトEGFで示されている(Jaskulski et al.,Science,240:1544-6(1988)、Vasanthakumar et al.,Cancer Commun.,1:225-32(1989)、Penis et al.,Brain Res Mol Brain Res.,15;57:310-20(1998)、ならびに米国特許第5,801,154号、同第5,789,573号、同第5,718,709号、及び同第5,610,288号を参照されたい)。さらに、様々な異常細胞増殖、例えばがんを阻害し、それを治療するために使用することができるアンチセンスコンストラクトも記載されている(米国特許第5,747,470号、同第5,591,317号、及び同第5,783,683号を参照されたい)。これらの参照文献の開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0163】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを生成する方法は当該技術分野で公知であり、任意のポリヌクレオチド配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを生成するように容易に適合させることができる。所与の標的配列に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列の選択は、選択された標的配列の分析、ならびに二次構造、T、結合エネルギー、及び相対的安定性の判定に基づく。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、宿主細胞内で標的mRNAへの特異的結合を低減させるかまたは阻止する、それらの二量体、ヘアピン、または他の二次構造の形成の相対的不能性に基づいて選択することができる。mRNAの極めて好ましい標的領域には、AUG翻訳開始コドンの領域またはその近傍の領域、及びmRNAの5’領域に実質的に相補的な配列が含まれる。これらの二次構造分析及び標的部位選択の考察は、例えば、OLIGOプライマー分析ソフトウェアのv.4(Molecular Biology Insights)及び/またはBLASTN 2.0.5アルゴリズムソフトウェア(Altschul et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389-402(1997))を使用して実施することができる。
【0164】
リボザイム
本発明の別の実施形態によれば、核酸-脂質粒子はリボザイムと会合している。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を有する特定の触媒ドメインを有するRNA-タンパク質複合体である(Kim et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,84:8788-92(1987)、及びForster et al.,Cell,49:211-20(1987)を参照されたい)。例えば、多くのリボザイムは、高度な特異性でリン酸エステル転移反応を促進させ、多くの場合、オリゴヌクレオチド基質内のいくつかのリン酸エステルのうちの1つのみを切断する(Cech et al.,Cell,27:487-96(1981)、Michel et al.,J.Mol.Biol.,216:585-610(1990)、Reinhold-Hurek et al.,Nature,357:173-6(1992)を参照されたい)。この特異性は、基質が、化学反応の前にリボザイムの内部ガイド配列(「IGS」)に特異的な塩基対相互作用を介して結合するという要件に起因している。
【0165】
現在、天然の酵素RNA分子の少なくとも6つの基本的な種類が知られている。それぞれが、生理学的条件下でRNAホスホジエステル結合の加水分解をトランスで触媒することができる(したがって、他のRNA分子を切断することができる)。一般に、酵素的核酸は、まず標的RNAに結合することによって作用する。このような結合は、標的RNAを切断するように作用する分子の酵素的部分に密接に近接して保持される、酵素的核酸の標的結合部分を介して生じる。したがって、酵素的核酸はまず、標的RNAを認識し、次に相補的塩基対合を介してそれに結合し、正しい部位に結合すると、標的RNAを切断するように酵素的に作用する。そのような標的RNAの戦略的切断は、コードされたタンパク質の合成を指示するその能力を消失させる。酵素的核酸がそのRNA標的に結合してそれを切断した後、その酵素的核酸は、そのRNAから放出されて別の標的を探し、そして新しい標的に繰り返し結合し、それを切断することができる。
【0166】
酵素的核酸分子は、例えば、ハンマーヘッド、ヘアピン、肝炎δウイルス、I群イントロンもしくはRNaseP RNA(RNAガイド配列と会合)またはNeurospora VS RNAモチーフで形成され得る。ハンマーヘッドモチーフの具体的な例は、例えば、Rossi et al.,Nucleic Acids Res.,20:4559-65(1992)に記載されている。ヘアピンモチーフの例は、例えば、EP0360257、Hampel et al.,Biochemistry,28:4929-33(1989)、Hampel et al.,Nucleic Acids Res.,18:299-304(1990)、及び米国特許第5,631,359号に記載されている。δ型肝炎ウイルスモチーフの例は、例えば、Perrotta et al.,Biochemistry,31:11843-52(1992)に記載されている。RNasePモチーフの例は、例えば、Guerrier-Takada et al.,Cell,35:849-57(1983)に記載されている。Neurospora VS RNAリボザイムモチーフの例は、例えば、Saville et al.,Cell,61:685-96(1990)、Saville et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8826-30(1991)、Collins et al.,Biochemistry,32:2795-9(1993)に記載されている。I群イントロンの例は、例えば、米国特許第4,987,071号に記載されている。本発明に従って使用される酵素的核酸分子の重要な特徴は、それらが標的遺伝子のDNAまたはRNA領域のうちの1つ以上に相補的な特異的基質結合部位を有すること、及びそれらが、その基質結合部位内またはその周囲に、RNA切断活性を分子に付与するヌクレオチド配列を有することである。したがって、リボザイムコンストラクトは、必ずしも本明細書において言及される特定のモチーフに限定されない。これらの参照文献の開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0167】
任意のポリヌクレオチド配列を標的とするリボザイムの生成方法は、当該技術分野で公知である。リボザイムを、例えば、PCT公開第WO93/23569号及び同第WO94/02595号に記載されているように設計し、それらに記載されているようにin vitro及び/またはin vivoで試験するために合成することができる。これらのPCT公開の開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0168】
リボザイム活性は、リボザイム結合アームの長さを変化させることによって、または血清リボヌクレアーゼによるそれらの分解を阻止する修飾(例えば、PCT公開第WO92/07065号、同第WO93/15187号、同第WO91/03162号、及び同第WO94/13688号、EP92110298.4号、ならびに米国特許第5,334,711号を参照されたい。これらは、酵素RNA分子の糖部分に行うことができる種々の化学修飾について記載しており、これらの開示は、それぞれ、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる)、細胞内でのそれらの有効性を高める修飾、ならびにRNA合成時間の短縮及び化学的要件の低減のためのステムII塩基の除去、を有するリボザイムを化学合成することによって、最適化することができる。
【0169】
免疫刺激性オリゴヌクレオチド
本発明の脂質粒子に会合する核酸は、ヒトなどの哺乳動物であり得る対象に投与されたときに免疫応答を誘導することができる免疫刺激性オリゴヌクレオチド(ISS;一本鎖または二本鎖)を含む、免疫刺激性であり得る。ISSには、例えば、ヘアピン二次構造をもたらす特定の回文構造(Yamamoto et al.,J.Immunol.,148:4072-6(1992)を参照されたい)、またはCpGモチーフ、及び他の公知のISSの特徴(例えば、多重Gドメイン。PCT公開第WO96/11266号を参照されたく、この開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる)が含まれる。
【0170】
免疫刺激性核酸は、それらが、免疫応答を誘発するために、標的配列に特異的に結合してその発現を低減させる必要がない場合、非配列特異的と見なされる。したがって、特定の免疫刺激性核酸は、天然の遺伝子またはmRNAの領域に対応する配列を含み得るが、それらは依然として非配列特異的免疫刺激性核酸と見なされ得る。
【0171】
一実施形態では、免疫刺激性核酸またはオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドまたはCpGジヌクレオチドは、メチル化されていなくても、またはメチル化されていてもよい。別の実施形態では、免疫刺激性核酸は、メチル化シトシンを有する少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。一実施形態では、核酸は、単一のCpGジヌクレオチドを含み、このCpGジヌクレオチド中のシトシンは、メチル化されている。代替的実施形態では、核酸は、少なくとも2つのCpGジヌクレオチドを含み、このCpGジヌクレオチド中の少なくとも1つのシトシンは、メチル化されている。さらなる実施形態では、配列内に存在するCpGジヌクレオチド中の各シトシンは、メチル化されている。別の実施形態では、核酸は、複数のCpGジヌクレオチドを含み、このCpGジヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、メチル化シトシンを含む。本発明の組成物及び方法における使用に適した免疫刺激性オリゴヌクレオチドの例は、2008年12月31日に出願されたPCT出願第PCT/US08/88676号、PCT公開第WO02/069369号、及び同第WO01/15726号、米国特許第6,406,705号、ならびにRaney et al.,J.Pharm.Exper.Ther.,298:1185-92(2001)に記載されており、これらの開示はそれぞれ、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。特定の実施形態では、本発明の組成物及び方法に使用されるオリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル(「PO」)骨格もしくはホスホロチオエート(「PS」)骨格、及び/またはCpGモチーフ内の少なくとも1つのメチル化シトシン残基を有する。
【0172】
mRNA
本発明の特定の実施形態は、生体細胞(例えば、人体内の細胞)内で1つ以上のmRNA分子を発現させるために使用することができる組成物及び方法を提供する。このmRNA分子は、生体細胞内で発現する1つ以上のポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、このポリペプチドは、罹患生物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)内で発現し、このポリペプチドの発現は、疾患の1つ以上の症状を改善する。本発明の組成物及び方法は、人体内の機能的ポリペプチドの欠如またはレベルの低減によって引き起こされるヒトの疾患の治療に特に有用である。したがって、特定の実施形態では、LNPは、1つ以上のmRNA分子(例えば、mRNA分子のカクテル)などの1つ以上の核酸分子を含み得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、mRNA(複数可)は、核酸-脂質粒子(例えば、LNP)に完全に封入される。mRNAカクテルを含む製剤に関して、カクテル中に存在する異なるタイプのmRNA種(例えば、異なる配列を有するmRNA)は、同じ粒子に共封入されていてもよく、またはカクテル中に存在する各タイプのmRNA種は、別個の粒子に封入されていてもよい。mRNAカクテルを、2種以上の個々のmRNA(それぞれユニークな配列を有する)の混合物を使用して、同一の、類似の、または異なる濃度またはモル比で、本明細書に記載の粒子中に製剤化することができる。一実施形態では、mRNAのカクテル(異なる配列を有する複数のmRNAに対応する)を各mRNA種の同一の、類似の、または異なる濃度またはモル比を使用して製剤化し、異なるタイプのmRNAを同じ粒子に共封入する。別の実施形態では、カクテル中に存在する各タイプのmRNA種を、同一の、類似の、または異なるmRNA濃度またはモル比で異なる粒子に封入し、このように形成した粒子(それぞれ異なるmRNAペイロードを含有する)を別々に(例えば、治療レジメンに従って異なる時点で)投与するか、または(例えば、薬学的に許容可能な担体とともに)単一単位用量として組み合わせて、一緒に投与する。本明細書に記載の粒子は、血清安定性であり、ヌクレアーゼ分解に対して耐性であり、ヒトなどの哺乳動物に対して実質的に無毒性である。
【0174】
mRNAに対する修飾
本発明の実施において使用されるmRNAは、1つ、2つ、または2つより多いヌクレオシド修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、修飾mRNAは、対応する非修飾mRNAと比較して、mRNAが導入される細胞において分解の低減を示す。
【0175】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドには、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオウリジン、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、及び4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジンが含まれる。
【0176】
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドには、5-アザ-シチジン、シュードイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-シュードイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-シュードイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-シュードイソシチジン、4-チオ-1-メチル-シュードイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-シュードイソシチジン、及び4-メトキシ-1-メチル-シュードイソシチジンが含まれる。
【0177】
他の実施形態では、修飾ヌクレオシドには、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン、及び2-メトキシ-アデニンが含まれる。
【0178】
特定の実施形態では、修飾ヌクレオシドは、5’-O-(1-チオホスフェート)-アデノシン、5’-O-(1-チオホスフェート)-シチジン、5’-O-(1-チオホスフェート)-グアノシン、5’-O-(1-チオホスフェート)-ウリジンまたは5’-O-(1-チオホスフェート)-シュードウリジンである。α-チオ置換されたリン酸部分は、非天然ホスホロチオエート骨格結合を介してRNAポリマーに安定性を付与するために提供される。ホスホロチオエートRNAは、ヌクレアーゼ耐性が増加し、次いで細胞環境における半減期が長くなる。ホスホロチオエート結合核酸は、細胞の自然免疫分子の比較的弱い結合/活性化を通じて、自然免疫応答を低減させることも予期される。
【0179】
特定の実施形態では、例えば、タンパク質産生の正確なタイミングが望まれる場合、細胞に導入された修飾核酸を細胞内で分解することが望ましい。したがって、本発明は、細胞内で指示された方法で作用することができる分解ドメインを含有する修飾核酸を提供する。
【0180】
他の実施形態では、修飾ヌクレオシドには、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、及びN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシンが含まれる。
【0181】
修飾核酸の任意成分
さらなる実施形態では、修飾核酸は、いくつかの実施形態において有益であり得る、他の任意成分を含み得る。これらの任意成分には、非翻訳領域、コザック配列、イントロンヌクレオチド配列、内部リボソーム侵入部位(IRES)、キャップ、及びポリAテールが含まれるが、これらに限定されない。例えば、5’非翻訳領域(UTR)及び/または3’UTRを提供することができ、これらのいずれかまたは両方は独立して1つ以上の異なるヌクレオシド修飾を含み得る。このような実施形態では、ヌクレオシド修飾はまた、翻訳可能領域にも存在し得る。コザック配列を含有する核酸も提供される。
【0182】
さらに、核酸から切り取ることができる1つ以上のイントロンヌクレオチド配列を含有する核酸が提供される。
【0183】
非翻訳領域(UTR)
遺伝子の非翻訳領域(UTR)は、転写されるが翻訳はされない。5’UTRは、転写開始部位から始まり開始コドンまで続くが、開始コドンは含まない。一方、3’UTRは終止コドンの直後から始まり、転写終結シグナルまで続く。核酸分子の安定性及び翻訳に関してUTRが果たす調節的役割についてのエビデンスが増えつつある。分子の安定性を増加させるために、UTRの調節機能を本発明で使用されるmRNAに組み込むことができる。特定の機能を組み込んで、望ましくない器官部位に誤って誘導された場合に、転写物の下方制御を確実に制御することもできる。
【0184】
5’キャッピング
mRNAの5’キャップ構造は、核外輸送に関与し、mRNAの安定性を増加させ、mRNAキャップ結合タンパク質(CBP)に結合し、これは、CBPとポリ(A)結合タンパク質との会合を通じて細胞内のmRNAの安定性及び翻訳能力に関与して、成熟環状mRNA種を形成する。キャップはさらに、mRNAスプライシングの際に5’近位イントロンの除去を補助する。
【0185】
内因性mRNA分子は5’末端がキャッピングされ、末端グアノシンキャップ残基とmRNA分子の5’末端の転写されたセンスヌクレオチドとの間に5’-ppp-5’-三リン酸結合を生じ得る。次に、この5’-グアニル酸キャップはメチル化され、N7-メチル-グアニル酸残基を生じ得る。mRNAの5’末端及び/または末端前の転写されたヌクレオチドのリボース糖もまた、任意選択で2’-O-メチル化され得る。グアニル酸キャップ構造の加水分解及び切断による5’-キャップ除去は、分解のために、mRNA分子などの核酸分子を標的にし得る。
【0186】
IRES配列
内部リボソーム侵入部位(IRES)を含有するmRNAもまた、本発明の実施に有用である。IRESは、唯一のリボソーム結合部位として機能する場合もあれば、mRNAの複数のリボソーム結合部位の1つとして機能する場合もある。複数の機能的なリボソーム結合部位を含有するmRNAは、リボソームによって独立して翻訳されるいくつかのペプチドまたはポリペプチドをコードし得る(「マルチシストロン性mRNA」)。mRNAがIRESとともに提供される場合、さらに任意選択で、第2の翻訳可能領域が提供される。本発明に従って使用できるIRES配列の例には、ピコルナウイルス(例えば、FMDV)、ペストウイルス(pest virus)(CFFV)、ポリオウイルス(PV)、脳心筋炎ウイルス(ECMV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ブタコレラウイルス(CSFV)、ネズミ白血病ウイルス(MLV)、サル免疫不全ウイルス(S1V)またはコオロギ麻痺ウイルス(CrPV)由来のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0187】
ポリAテール
RNAプロセシング中に、安定性を増加させるために、アデニンヌクレオチドの長鎖(ポリAテール)がmRNA分子などのポリヌクレオチドに付加され得る。転写直後に、転写物の3’末端が切断され、3’ヒドロキシルが遊離し得る。次に、ポリAポリメラーゼがRNAにアデニンヌクレオチドの鎖を付加する。ポリアデニル化と呼ばれるこのプロセスでは、100~250残基長であり得るポリAテールが付加される。
【0188】
一般に、ポリAテールの長さは30ヌクレオチド長を超える。別の実施形態では、ポリAテールは、35ヌクレオチド長を超える(例えば、少なくとも約35以上、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、120以上、140以上、160以上、180以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上、1000以上、1100以上、1200以上、1300以上、1400以上、1500以上、1600以上、1700以上、1800以上、1900以上、2,000以上、2,500以上、及び3,000以上のヌクレオチド)。
【0189】
この状況において、ポリAテールは、修飾mRNAよりも長さが10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100%長くなり得る。ポリAテールはまた、それが属する修飾核酸の部分として設計され得る。この状況において、ポリAテールは、修飾mRNAの全長または修飾mRNAの全長からポリAテールを引いたものの10、20、30、40、50、60、70、80、90%、またはそれ以上であり得る。
【0190】
mRNA分子の作製
RNAの単離、RNAの合成、核酸のハイブリダイズ、cDNAライブラリーの作成及びスクリーニング、ならびにPCRの実施のための方法は、PCR法(米国特許第4,683,195号及び同第4,683,202号、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis et al.,eds,1990)を参照されたい)と同様に、当該技術分野において周知である(例えば、Gubler and Hoffman,Gene,25:263-269(1983)、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd ed.1989)を参照されたい)。発現ライブラリーもまた、当業者に周知である。本発明における一般的な使用方法を開示するさらなる基本的な文書には、Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990)、及びCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,1994)が含まれる。これらの参照文献の開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0191】
コードされるポリペプチド
本明細書に記載の核酸-脂質粒子のmRNA成分を使用して、目的ポリペプチドを発現させることができる。ヒトにおける特定の疾患は、機能性タンパク質の、そのタンパク質が通常存在しかつ活性である細胞タイプにおける欠如または障害によって引き起こされる。機能性タンパク質は、例えば、コード化遺伝子の転写不活性に起因して、またはタンパク質を完全にもしくは部分的に非機能的にする突然変異がコード化遺伝子に存在していることに起因して、完全にまたは部分的に欠如する可能性がある。タンパク質の完全または部分的な不活性化によって引き起こされるヒトの疾患の例には、X連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)及び副腎白質ジストロフィー(X-ALD)が含まれる。X-SCIDは、免疫系内のB細胞及びT細胞の発生及び成熟に関与するいくつかのインターロイキンの受容体の成分である、共通ガンマ鎖タンパク質をコードする遺伝子の1つ以上の突然変異によって引き起こされる。X-ALDは、ABCD1と呼ばれるペルオキシソーム膜輸送体タンパク質遺伝子の1つ以上の突然変異によって引き起こされる。X-ALDに罹患している個体は、全身の組織に極めて高レベルの長鎖脂肪酸を有し、これが、精神障害または死に至るおそれのある様々な症状を引き起こす。
【0192】
機能性タンパク質の、そのタンパク質が通常存在しかつ活性である細胞タイプにおける欠如または障害によって引き起こされるいくつかの疾患を治療するために、遺伝子療法を用いる試みがなされてきた。遺伝子療法は、通常、罹患タンパク質の機能的形態をコードする遺伝子を含むベクターの罹患者への導入、及び疾患を治療するための機能的タンパク質の発現を伴う。これまでのところ、遺伝子療法における成功は限られている。さらに、LNPを使用してmRNAを送達する特定の態様が、例えば、国際公開第WO2018/006052号及び同第2015/011633号で説明されてきた。
【0193】
このため、機能性タンパク質の完全または部分的な欠如によって引き起こされる疾患に罹患しているヒト内でタンパク質の機能的形態を発現するための改善が引き続き必要とされており、かつ、例えば、療法に対する免疫応答の誘発をより低減させることができる方法及び組成物を介した核酸(例えば、mRNA)送達の改善が必要とされている。本発明の特定の実施形態は、この文脈において有用である。したがって、特定の実施形態では、ポリペプチドの発現は、疾患または障害の1つ以上の症状を改善する。本発明の特定の組成物及び方法は、人体内の機能的ポリペプチドの欠如またはレベルの低減によって引き起こされるヒトの疾患の治療に有用であり得る。他の実施形態では、本発明の特定の組成物及び方法は、がんを治療するためのワクチン抗原の発現に有用であり得る。
【0194】
自己増幅RNA
特定の実施形態では、核酸は、1つ以上の自己増幅RNA分子である。自己増幅RNA(sa-RNA)はまた、自己複製RNA、複製可能RNA、レプリコン、またはRepRNAと称されることもある。自己増幅mRNAと称されるRepRNAは、プラス鎖ウイルスに由来する場合、少なくとも1つの構造遺伝子を欠くウイルスゲノムから生成され、RepRNAは、感染性の子孫ウイルスを生成することなく、翻訳及び複製(したがって「自己増幅」)することができる。特定の実施形態では、RepRNA技術を使用して、所望の目的抗原をコードする遺伝子カセットを挿入することができる。例えば、アルファウイルスゲノムは2つのオープンリーディングフレーム(ORF)に分割されており、第1のORFはRNA依存性RNAポリメラーゼ(レプリカーゼ)のタンパク質をコードし、第2のORFは構造タンパク質をコードする。sa-RNAワクチンコンストラクトでは、ウイルス構造タンパク質をコードするORFを任意の選択した抗原に置き換えることができるが、一方、ウイルスレプリカーゼは依然としてワクチンの不可欠な部分であり、免疫化後のRNAの細胞内増幅を促進する。
【0195】
PEG-C-DMA
特定の実施形態では、PEG-C-DMAは以下の構造を有する:
【化7】
(式中、nは、得られるポリマー鎖が約1000~約3000の分子量を有するように選択される)。別の実施形態では、nは、得られるポリマー鎖が約2000の分子量を有するように選択される。PEG-C-DMAは、Heyes et al,Synthesis and Characterization of Novel Poly(Ethylene Glycol)-lipid Conjugates Suitable for use in Drug Delivery,”Journal of Controlled Release,2006、及び米国特許第8,936,942号に記載の通りに調製することができる。
【0196】
脂質粒子の調製
特定の実施形態では、本発明は、連続混合方法、例えば、第1のリザーバに核酸を含む水溶液を供給すること、第2のリザーバに有機脂質溶液を供給すること、及び核酸(例えば、干渉RNAまたはmRNA)を封入するリポソームを実質的に瞬時に生成するように有機脂質溶液が水溶液と混合するように、水溶液を有機脂質溶液と混合することを含むプロセスにより生成されるLNPを提供する。このプロセス及びこのプロセスを実施するための装置は、米国特許出願公開第20040142025号に詳細に記載されており、この開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0197】
脂質及び緩衝溶液を混合チャンバ内などの混合環境に連続的に導入する操作により、緩衝溶液による脂質溶液の連続希釈が生じ、これにより、混合すると実質的に瞬時にリポソームが生成される。本明細書で使用される場合、「脂質溶液を緩衝溶液で連続的に希釈する」という語句(及び変形)は、一般に、脂質溶液が水和プロセスにおいて小胞の生成をもたらすのに十分な力で十分に迅速に希釈されることを意味する。核酸を含む水溶液を有機脂質溶液と混合することにより、有機脂質溶液は、緩衝溶液(すなわち水溶液)の存在下で連続的な段階希釈を受けて、核酸-脂質粒子を生成する。
【0198】
連続混合法を使用して形成されたLNPは、通常、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、または約70nm~約90nmのサイズを有する。このように形成された粒子は凝集せず、均一な粒子径を得るために任意選択でサイジングされる。
【0199】
別の実施形態では、本発明は、リポソーム溶液を形成すること、及び制御された量の希釈緩衝液が入っている収集容器にリポソーム溶液を直ちに直接導入することを含む、直接希釈プロセスにより生成されるLNPを提供する。好ましい態様では、収集容器は、希釈を促進するために収集容器の内容物を撹拌するように構成された1つ以上の構成要素を含む。一態様では、収集容器中に存在する希釈緩衝液の量は、その中に導入されるリポソーム溶液の体積に実質的に等しい。非限定的な例として、45%エタノール中のリポソーム溶液は、等体積の希釈緩衝液が入っている収集容器中に導入される場合、有利なことに、より小さな粒子をもたらすであろう。
【0200】
さらに別の実施形態では、本発明は、希釈緩衝液が入っている第3のリザーバを第2の混合領域に流体連結する、直接希釈プロセスにより生成されるLNPを提供する。本実施形態では、第1の混合領域中で形成されたリポソーム溶液が、第2の混合領域中で希釈緩衝液と直ちに直接混合される。好ましい態様では、第2の混合領域は、リポソーム溶液及び希釈緩衝液の流れが、180°対向する流れとして合流するように配置されたT-コネクタを含むが、より浅い角度、例えば約27°~約180°をもたらすコネクタを使用することができる。ポンプ機構は、第2の混合領域に制御可能な緩衝液流を送達する。一態様では、第2の混合領域に供給される希釈緩衝液の流速は、第1の混合領域からそこに導入されるリポソーム溶液の流速と実質的に等しくなるように制御される。この実施形態は、有利なことに、第2の混合領域中でリポソーム溶液と混合している希釈緩衝液の流れ、したがってまた、第2の混合プロセス全体にわたる緩衝液中のリポソーム溶液の濃度の、さらなる制御を可能にする。このような希釈緩衝液の流速の制御により、有利なことに、低減された濃度での小粒子径の形成が可能となる。
【0201】
これらのプロセス及びこれらの直接希釈プロセスを実施するための装置は、米国特許出願公開第20070042031号に詳細に記載されており、この開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0202】
直接希釈プロセスを使用して形成されたLNPは、通常、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、または約70nm~約90nmのサイズを有する。このように形成された粒子は凝集せず、均一な粒子径を得るために任意選択でサイジングされる。
【0203】
必要であれば、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)を、リポソームをサイジングするために利用可能な任意の方法によりサイジングすることができる。サイジングは、所望のサイズ範囲及び比較的狭い粒子径分布を得るために実施することができる。
【0204】
所望のサイズに粒子をサイジングするためのいくつかの技術が利用可能である。リポソームのために使用され、本発明の粒子に等しく適用可能な1つのサイジング方法は、米国特許第4,737,323号に記載されており、この開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。槽内超音波処理またはプローブ超音波処理のいずれかにより粒子懸濁液を超音波処理することで、約50nm未満のサイズの粒子までサイズを漸減させる。ホモジナイゼーションは、より大きな粒子をより小さな粒子に断片化するための剪断エネルギーに依存する、別の方法である。典型的なホモジナイゼーション手順では、選択された粒子径(典型的には約60~約80nm)が観察されるまで、標準的なエマルションホモジナイザーを通じて粒子を再循環させる。両方の方法において、従来のレーザー光粒子径識別またはQELSにより、粒子径分布をモニタリングすることができる。
【0205】
細孔ポリカーボネート膜または非対称セラミック膜を通した粒子の押出しもまた、比較的明確なサイズ分布へと粒子径を低減させるための有効な方法である。通常、所望の粒子径分布が得られるまで、懸濁液を膜を通して1回以上循環させる。粒子をより小さな孔の膜に順次通過させて押出し、サイズを徐々に低減させることができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、LNP中の核酸は、例えば、米国特許出願第09/744,103号(この開示はすべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる)に記載されているように予め濃縮される。
【0207】
他の実施形態では、方法は、本発明の組成物を使用して細胞のリポフェクションを行うために有用な非脂質性ポリカチオンを添加することをさらに含む。好適な非脂質性ポリカチオンの例には、臭化ヘキサジメトリン(POLYBRENE(登録商標)の商品名でAldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wis.,USAから販売されている)またはヘキサジメトリンの他の塩が含まれる。他の好適なポリカチオンには、例えば、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ポリアリルアミン、及びポリエチレンイミンの塩が含まれる。これらの塩を添加するのは、好ましくは粒子が形成された後である。
【0208】
脂質粒子の投与
本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、形成された後、核酸の細胞への導入に有用である。したがって、本発明はまた、核酸(例えば、干渉RNAまたはmRNA)などの核酸を細胞に導入するための方法も提供する。この方法は、まず前述のように粒子を形成し、次に、核酸の細胞への送達が生じるのに十分な一定時間、その粒子を細胞に接触させることにより、in vitroまたはin vivoで実施される。
【0209】
本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、それらと混合させるかまたは接触させるほぼすべての細胞タイプに吸着させることができる。粒子は、一旦吸着させると細胞の一部によりエンドサイトーシスされるか、脂質を細胞膜と交換するか、または細胞と融合するかのいずれかであり得る。粒子の核酸(例えば、核酸)部分の導入または組み込みは、これらの経路のいずれか1つを介して生じ得る。特に、融合が生じると、粒子膜は細胞膜に組み込まれ、粒子の内容物は細胞内液と混ざる。
【0210】
本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、単独で、または投与経路及び標準的な薬務に従って選択される薬学的に許容可能な担体(例えば、生理食塩水またはリン酸緩衝液)との混合物のいずれかで、投与することができる。一般に、緩衝生理食塩水(例えば135~150mM NaCl)が薬学的に許容可能な担体として用いられるであろう。他の好適な担体には、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどの安定性増強のための糖タンパク質を含む、例えば、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシンなどが含まれる。さらなる好適な担体は、例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.(1985)に記載されている。本明細書で使用される場合、「担体」には、あらゆるすべての溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング剤、希釈剤、抗細菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどが含まれる。「薬学的に許容可能」という語句は、ヒトに投与したときにアレルギー性または類似の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
【0211】
薬学的に許容可能な担体は、一般に、脂質粒子の形成後に添加される。したがって、粒子の形成後に、生理緩衝食塩水などの薬学的に許容可能な担体中に粒子を希釈することができる。
【0212】
医薬製剤中の粒子の濃度は大幅に、すなわち約0.05重量%未満、通常は約2~5重量%または少なくとも約2~5重量%から、約10~90重量%もの高さまで変動し得、選択された特定の投与様式に従って、主として流体体積、粘度などにより選択されることになる。例えば、治療に伴う流体負荷を低下させるために、濃度を増加させることができる。これは、アテローム性動脈硬化症に関連するうっ血性心不全または重度の高血圧症を有する患者に特に望ましい場合がある。あるいは、投与部位の炎症を軽減するために、刺激性脂質から構成される粒子を低濃度に希釈してもよい。
【0213】
本発明の医薬組成物を、従来の周知の滅菌技術により滅菌してもよい。水溶液は、使用のためにパッケージ化してもよく、または無菌条件下で濾過して凍結乾燥し、その凍結乾燥調製物を投与前に無菌水溶液と混合してもよい。組成物は、生理学的条件に近似させるために必要とされる、pH調整剤及び緩衝剤、浸透圧調整剤などの薬学的に許容可能な補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化カルシウムを含有してもよい。さらに、粒子懸濁液は、貯蔵時のフリーラジカル及び脂質過酸化による損傷から脂質を保護する脂質保護剤を含んでもよい。アルファトコフェロールなどの親油性フリーラジカルクエンチャー及びフェリオキサミンなどの水溶性鉄特異的キレート剤が好適である。
【0214】
in vivo投与
in vivo療法のための全身送達、例えば、循環などの身体系を介した遠位標的細胞への治療用核酸の送達は、PCT公開第WO05/007196号、同第WO05/121348号、同第WO05/120152号、及び同第WO04/002453号(これらの開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる)に記載されているものなどの核酸-脂質粒子を使用して実現されている。本発明はまた、血清中でヌクレアーゼ分解から核酸を保護し、非免疫原性でありサイズが小さく反復投薬に好適である、完全に封入された脂質粒子を提供する。
【0215】
in vivo投与の場合、投与は、当該技術分野で公知の任意の方法、例えば、注射、経口投与、吸入(例えば、鼻腔内または気管内)、経皮適用、または直腸投与によるものであり得る。投与は、単回用量または分割用量により行うことができる。医薬組成物は、非経口的、すなわち、関節内に、静脈内に、腹腔内に、皮下に、または筋肉内に投与することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ボーラス注射により静脈内または腹腔内投与される(例えば、米国特許第5,286,634号を参照されたい)。細胞内核酸送達はまた、Straubringer et al.,Methods Enzymol.,101:512(1983)、Mannino et al.,Biotechniques,6:682(1988)、Nicolau et al.,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.,6:239(1989)、及びBehr,Acc.Chem.Res.,26:274(1993)で論じられている。脂質ベースの治療薬を投与するさらなる他の方法は、例えば、米国特許第3,993,754号、同第4,145,410号、同第4,235,871号、同第4,224,179号、同第4,522,803号、及び同第4,588,578号に記載されている。脂質粒子は、疾患部位での直接注射により、または疾患部位から遠位の部位での注射により投与することができる(例えば、Culver,HUMAN GENE THERAPY,MaryAnn Liebert,Inc.,Publishers,New York.pp.70-71(1994)を参照されたい)。前述の参照文献の開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0216】
本発明の組成物は、吸入(例えば、鼻腔内または気管内)を介して投与するために、単独で、または他の適切な成分と組み合わせてのいずれかで、エアロゾル製剤に作製することができる(すなわち、それらを「噴霧する」ことができる)(Brigham et al.,Am.J.Sci.,298:278(1989)を参照されたい)。エアロゾル製剤を、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容可能な噴射剤中に入れることができる。
【0217】
特定の実施形態では、医薬組成物は、鼻腔内スプレー、吸入、及び/または他のエアロゾル送達ビヒクルにより送達することができる。核酸組成物を経鼻エアロゾルスプレーにより肺に直接送達するための方法は、例えば米国特許第5,756,353号及び同第5,804,212号に記載されている。同様に、鼻腔内微粒子樹脂及びリゾホスファチジル-グリセロール化合物を使用した薬物送達(米国特許第5,725,871号)もまた、薬学的分野において周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達は、米国特許第5,780,045号に記載されている。前述の特許の開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0218】
例えば、関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、及び皮下経路などによる非経口投与に適した製剤には、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張無菌注射溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含み得る水性及び非水性無菌懸濁液が含まれる。本発明の実施において、組成物は、好ましくは例えば、静脈内注入によって、経口で、局所的に、腹腔内に、膀胱内に、または髄腔内に投与される。
【0219】
一般に、静脈内投与する場合、脂質粒子製剤を適切な医薬担体を用いて製剤化する。多くの薬学的に許容可能な担体を、本発明の組成物及び方法に用いることができる。本発明における使用に適した製剤は、例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.(1985)に見出される。様々な水性担体、例えば、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシンなどを使用することができ、それらの水性担体は、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどの安定性増強のための糖タンパク質を含み得る。一般に、薬学的に許容可能な担体として緩衝生理食塩水(135~150mM NaCl)が用いられるが、他の適切な担体でも十分であろう。これらの組成物は、濾過などの従来のリポソーム滅菌技術により滅菌することができる。組成物は、生理学的条件に近似させるために必要とされる、pH調整剤及び緩衝剤、浸透圧調整剤、湿潤剤などの薬学的に許容可能な補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなどを含有してもよい。これらの組成物を、前述の技術を使用して滅菌してもよく、またはその代わりに、滅菌条件下で生成してもよい。得られた水溶液は、使用のためにパッケージ化してもよく、または無菌条件下で濾過して凍結乾燥し、その凍結乾燥調製物を投与前に無菌水溶液と混合してもよい。
【0220】
ある特定の用途では、本明細書に開示される脂質粒子は、経口投与により個体に送達することができる。粒子を賦形剤に組み込み、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、丸剤、ロゼンジ、エリキシル剤、洗口剤、懸濁液、口腔スプレー剤、シロップ剤、オブラートなどの形態で使用することができる(例えば、米国特許第5,641,515号、同第5,580,579号、及び同第5,792,451を参照されたい。これらの開示はすべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる)。これらの経口剤形はまた、以下、すなわち結合剤、ゼラチン;賦形剤、滑沢剤、及び/または香味剤を含有し得る。単位剤形がカプセルの場合、その剤形は、前述の物質に加えて液体担体を含有してもよい。様々な他の物質が、コーティング剤として、またはその他の方法で投薬単位の物理的形態を変更するために、存在してもよい。当然ながら、任意の単位剤形の調製に使用される任意の物質は、薬学的に純粋であり、用いられる量で実質的に無毒性であるべきである。
【0221】
通常、これらの経口製剤は、少なくとも約0.1%またはそれよりも多い脂質粒子を含有し得るが、粒子のパーセンテージは当然ながら変動してもよく、好都合には製剤の総重量または総体積の約1%もしくは2%~約60%もしくは70%またはそれより多くてもよい。必然的に、治療的に有用な各組成物中の粒子の量は、好適な投薬量が化合物の任意の所与の単位用量で得られるような方式で調製することができる。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、生成物の有効期間、及び他の薬理学的考慮事項などの要因が、そのような医薬製剤を調製する当業者によって企図され、したがって、様々な投薬量及び治療レジメンが望ましい場合がある。
【0222】
経口投与に適した製剤は以下、すなわち、(a)液体溶液、例えば、水、食塩水、またはPEG400などの希釈剤中に懸濁した、核酸(例えば、干渉RNAまたはmRNA)などの有効量のパッケージ化された治療剤、(b)所定量の核酸(例えば干渉RNAまたはmRNA)などの治療剤を液体、固体、顆粒、またはゼラチンとしてそれぞれ含有する、カプセル剤、サシェ、または錠剤、(c)適切な液体中の懸濁液、及び(d)好適なエマルションから構成され得る。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、色素、崩壊剤、ならびに薬学的に適合可能な担体のうちの1つ以上を含み得る。ロゼンジ形態は、香料、例えば、スクロース中の核酸(例えば、干渉RNAまたはmRNA)などの治療剤、ならびに治療剤に加えて当該技術分野で公知の担体を含有するゼラチン及びグリセリン、またはスクロース及びアラビアゴムエマルション、ゲルなどの不活性基剤中に治療剤を含む香錠を含み得る。
【0223】
それらの別の使用例では、脂質粒子を広範な局所剤形に組み込むことができる。例えば、LNPなどの核酸-脂質粒子を含有する懸濁液は、ゲル、油、エマルション、局所クリーム、ペースト、軟膏、ローション、泡、ムースなどとして製剤化及び投与することができる。
【0224】
本発明の脂質粒子の医薬調製物を調製する場合、空の粒子または核酸などの治療剤が外表面と会合した粒子を低減または除去するために精製された、多量の粒子を使用することが好ましい。
【0225】
本発明の方法は、様々な宿主において実施することができる。好ましい宿主には、霊長類(例えば、ヒト及びチンパンジーならびに他の非ヒト霊長類)、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、げっ歯類(例えば、ラット及びマウス)、ウサギ、ならびにブタなどの哺乳動物種が含まれる。
【0226】
投与される粒子の量は、治療剤(例えば、核酸)対脂質の比、使用される特定の治療剤(例えば、核酸)、治療される疾患または障害、患者の年齢、体重、及び状態、ならびに臨床医の判断に依存するが、一般に、約0.01~約50mg/kg体重、好ましくは約0.1~約5mg/kg体重、または投与(例えば、注射)1回あたり約10~1010粒子であろう。
【0227】
in vitro投与
in vitro用途の場合、核酸(例えば、干渉RNAまたはmRNA)などの治療剤の送達は、植物起源であるか動物起源であるか、脊椎動物であるか無脊椎動物であるか、及びいずれの組織またはタイプであるかを問わず、培養で増殖させた任意の細胞に対して行うことができる。好ましい実施形態では、細胞は、動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞である。
【0228】
in vitroで実施する場合、細胞と脂質粒子との間の接触は、生物学的に適合可能な培地中で行われる。粒子の濃度は、特定の用途に応じて広く変動するが、一般的には約1μmol~約10mmolである。脂質粒子を用いた細胞の処置は、一般に、生理学的温度(約37℃)で、約1~48時間、好ましくは約2~4時間の期間にわたって実施される。
【0229】
好ましい実施形態の一群では、脂質粒子懸濁液を、約10~約10細胞/ml、より好ましくは約2×10細胞/mlの細胞密度を有する、60~80%コンフルエントでプレーティングした細胞に添加する。細胞に添加される懸濁液の濃度は、好ましくは約0.01~0.2μg/ml、より好ましくは約0.1μg/mlである。
【0230】
エンドソーム放出パラメータ(Endosomal Release Parameter)(ERP)アッセイを使用して、本発明のLNPまたは他の脂質粒子の送達効率を最適化することができる。ERPアッセイは、米国特許出願公開第20030077829号に詳細に記載されており、この開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。より詳細には、ERPアッセイの目的は、LNPの様々なカチオン性脂質及びヘルパー脂質成分の作用を、エンドソーム膜の結合/取り込みまたはエンドソーム膜との融合/その不安定化に対するそれらの相対的作用に基づいて判別することである。このアッセイにより、LNPまたは他の脂質粒子の各成分が送達効率にどのように影響を及ぼすかを定量的に判定し、それにより、LNPまたは他の脂質粒子を最適化することが可能となる。通常、ERPアッセイは、レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)など)の発現を測定する。場合によっては、発現プラスミドに対して最適化されたLNP製剤はまた、干渉RNAまたはmRNAを封入するのに適している。他の場合では、ERPアッセイを、干渉RNA(例えば、siRNA)の存在下または非存在下で標的配列の転写または翻訳の下方制御を測定するために適合させることができる。他の場合では、ERPアッセイを、mRNAの存在下または非存在下で標的タンパク質の発現を測定するために適合させることができる。様々なLNPまたは他の脂質粒子の各々についてのERPを比較することにより、最適化された系、例えば、細胞内に最も多く取り込まれるLNPまたは他の脂質粒子を容易に決定することができる。
【0231】
脂質粒子の送達のための細胞
本発明の組成物及び方法は、多種多様な細胞タイプをin vivo及びin vitroで治療するために使用される。好適な細胞には、例えば、造血前駆(幹)細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、肝細胞、内皮細胞、骨格筋及び平滑筋細胞、骨芽細胞、神経細胞、静止リンパ球、最終分化細胞、周期が遅いまたは周期が停止した(noncycling)初代細胞、実質細胞、リンパ系細胞、上皮細胞、骨細胞などが含まれる。一実施形態では、1つ以上の核酸分子(例えば、干渉RNA(例えば、siRNA)またはmRNA)などの核酸は、例えば、肺癌細胞、結腸癌細胞、直腸癌細胞、肛門癌細胞、胆管癌細胞、小腸癌細胞、胃癌(stomach(gastric))細胞、食道癌細胞、胆嚢癌細胞、肝癌細胞、膵癌細胞、虫垂癌細胞、乳癌細胞、卵巣癌細胞、子宮頸癌細胞、前立腺癌細胞、腎癌細胞、中枢神経系の癌細胞、神経膠芽腫腫瘍細胞、皮膚癌細胞、リンパ腫細胞、絨毛癌腫瘍細胞、頭頸部癌細胞、骨原性肉腫腫瘍細胞、及び血液癌細胞などのがん細胞に送達される。
【0232】
1つ以上の核酸分子(例えば、干渉RNA(例えば、siRNA)またはmRNA)を封入しているLNPなどの脂質粒子のin vivo送達は、任意の細胞タイプの細胞を標的とするのに適している。本方法及び組成物は、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、及びモルモット)、ウサギ、ブタ、ならびに霊長類(例えば、サル、チンパンジー、及びヒト)などの哺乳動物を含む、多種多様な脊椎動物の細胞で用いることができる。
【0233】
必要とされ得る範囲内で、細胞の組織培養は当該技術分野において周知である。例えば、Freshney,Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique,3rd Ed.,Wiley-Liss,New York(1994)、Kuchler et al.,Biochemical Methods in Cell Culture and Virology,Dowden,Hutchinson and Ross,Inc.(1977)及びこれらに引用された参照文献は、細胞培養への一般的な手引きを提供する。培養細胞系は、多くの場合単層細胞の形態であるが、細胞懸濁液も使用される。
【0234】
脂質粒子の検出
いくつかの実施形態では、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、約1、2、3、4、5、6、7、8時間またはそれ以上の時点で、対象において検出可能である。他の実施形態では、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、粒子の投与から約8、12、24、48、60、72、もしくは96時間後、または約6、8、10、12、14、16、18、19、22、24、25、もしくは28日後に対象において検出可能である。粒子の存在は、対象由来の細胞、組織、または他の生体試料から検出することができる。粒子は、例えば、粒子の直接検出により、干渉RNA(例えば、siRNA)もしくはmRNA配列などの治療用核酸の検出により、目的標的配列の検出により(すなわち目的配列の発現における変化を検出することにより)、またはこれらの組み合わせにより、検出することができる。
【0235】
粒子の検出
LNPなどの本発明の脂質粒子は、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して検出することができる。例えば、当該技術分野で周知の方法を使用して、脂質粒子の成分に標識を直接または間接的にカップリングさせることができる。必要とされる感度、脂質粒子成分とのコンジュゲーションの容易さ、安定性要件、ならびに利用可能な計測手段及び使い捨て設備(disposal provision)に応じて標識を選択して、多種多様な標識を使用することができる。適切な標識には、蛍光色素(例えば、フルオレセインならびにフルオレセインイソチオシアネート(FITC)及びOregon Green(商標)などの誘導体;ローダミン及びテキサスレッド、テトラローダミンイソチオシアネート(TRITC)などの誘導体、ジゴキシゲニン、ビオチン、フィコエリトリン、AMCA、CyDye(商標)など)などの分光標識;H、125I、35S、14C、32P、33Pなどの放射標識;西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素;コロイド状金または着色ガラスまたはポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなどのプラスチックビーズなどの分光比色標識が含まれるが、これらに限定されない。標識は、当該技術分野で公知の任意の手段を使用して検出することができる。
【0236】
核酸の検出
核酸(例えば、干渉RNAまたはmRNA)は、本明細書において当業者に周知の任意のいくつかの手段により検出及び定量される。核酸の検出は、サザン分析、ノーザン分析、ゲル電気泳動、PCR、放射標識、シンチレーション計数、及びアフィニティークロマトグラフィーなどの周知の方法により行うことができる。分光光度法、X線撮影法、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、及び高拡散(hyperdiffusion)クロマトグラフィーなどのさらなる分析的な生化学的方法もまた、用いることができる。
【0237】
核酸ハイブリダイゼーション形式の選択は、重要ではない。様々な核酸ハイブリダイゼーション形式が、当業者に公知である。例えば、一般的な形式には、サンドイッチアッセイ及び競合または置換アッセイが含まれる。ハイブリダイゼーション技術は、概して、例えば“Nucleic Acid Hybridization,A Practical Approach,”Eds.Hames and Higgins,IRL Press(1985)に記載されている。
【0238】
ハイブリダイゼーションアッセイの感度は、検出される標的核酸を増加させる核酸増幅系の使用を通じて向上させることができる。分子プローブとして使用するための配列の増幅、または後続のサブクローニングのための核酸断片の作製に適したin vitro増幅技術が、公知である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβ-レプリカーゼ増幅、及び他のRNAポリメラーゼ媒介性技術(例えば、NASBA(商標))を含む、そのようなin vitro増幅法を介して当事者を導くのに十分な技術の例は、Sambrook et al.,In Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2000)、及びAusubel et al.,SHORT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,eds.,Current Protocols,Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.(2002)、ならびに米国特許第4,683,202号、PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications(Innis et al.eds.)Academic Press Inc.San Diego,Calif.(1990)、Arnheim & Levinson(Oct.1,1990),C&EN 36;The Journal Of NIH Research,3:81(1991)、Kwoh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:1173(1989)、Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:1874(1990)、Lomell et al.,J.Clin.Chem.,35:1826(1989)、Landegren et al.,Science,241:1077(1988)、Van Brunt,Biotechnology,8:291(1990)、Wu and Wallace,Gene,4:560(1989);Barringer et al.,Gene,89:117(1990)、及びSooknanan and Malek,Biotechnology,13:563(1995)に見出される。in vitroで増幅した核酸をクローニングする改善された方法は、米国特許第5,426,039号に記載されている。当該技術分野で説明されている他の方法は、核酸配列ベース増幅(NASBA(商標)、Cangene,Mississauga,Ontario)及びQβ-レプリカーゼ系である。これらの系は、選択した配列が存在する場合のみPCRまたはLCRプライマーが伸長またはライゲートするように設計した場合、突然変異体を直接同定するために使用することができる。あるいは、選択した配列を、一般に、例えば非特異的PCRプライマーを使用して増幅することができ、その後、突然変異を示す特定の配列について、増幅された標的領域を探索することができる。前述の参照文献の開示は、すべての目的のためにその全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0239】
例えば、in vitro増幅法におけるプローブとしての使用のための、遺伝子プローブとしての使用のための、または阻害物質成分としての核酸は、通常、Beaucage et al.,Tetrahedron Letts.,22:1859 1862(1981)により記載されている固相ホスホラミダイトトリエステル法に従って、例えば、Needham VanDevanter et al.,Nucleic Acids Res.,12:6159(1984)に記載されている自動合成装置を使用して化学合成される。必要な場合、ポリヌクレオチドの精製は通常、未変性アクリルアミドゲル電気泳動、またはPearson et al.,J.Chrom.,255:137 149(1983)に記載されているアニオン交換HPLCのいずれかにより実施される。合成ポリヌクレオチドの配列は、Maxam and Gilbert(1980)in Grossman and Moldave(eds.)Academic Press,New York,Methods in Enzymology,65:499の化学分解法を使用して検証することができる。
【0240】
転写レベルを測定するための代替的手段は、in situハイブリダイゼーションである。in situハイブリダイゼーションアッセイは周知であり、概して、Angerer et al.,Methods Enzymol.,152:649(1987)に記載されている。in situハイブリダイゼーションアッセイでは、細胞を固体支持体、通常はスライドガラスに固定する。DNAを探索する場合、熱またはアルカリで細胞を変性させる。次に、細胞を中程度の温度でハイブリダイゼーション溶液と接触させ、標識した特異的プローブをアニーリングさせる。プローブを、好ましくは放射性同位体または蛍光レポーターで標識する。
【0241】
実施例
本発明を、具体的な実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は例示目的のみに提供され、いかなる方法によっても本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、本質的に同じ結果をもたらすように変更または修正することができる、様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。
【実施例
【0242】
実施例1~5
本発明の例示的な脂質製剤を以下の表に示す(式中、CL及びCLは以下に示されている)。
【化8】
またはその塩
【化9】
またはその塩。
【0243】
例示的な脂質製剤
【0244】
以下の手順を用いてこれらの製剤を調製した。
【0245】
記載されている脂質の特性(identity)及びモル比を使用して、100%エタノール中で脂質原液を調製した(総脂質含有量約7mg/mL)。mRNAを、pH5の酢酸及びヌクレアーゼ不含水で、pH5の100mM酢酸中0.366mg/mL mRNAの濃度に達するまで希釈した。等量の各溶液をT-コネクタ中で400mL/分で混合し、米国特許第9,404,127号に記載されている直接希釈法を使用して約4容量のPBS(pH7.4)で希釈した。次に、配合物をSlide-A-Lyzer透析ユニット(MWCO 10,000)に入れ、10mMトリス、500mM NaCl(pH8)(トリス/NaCl緩衝液)で一晩透析した。透析後、配合物をVivaSpinコンセントレータユニット(MWCO 100,000)を使用して約0.6mg/mLに濃縮し、次いで0.2umシリンジフィルターに通して濾過した。
【0246】
実施例6 in vivoアッセイ
全体として、LNPを5~8週齢の雌Balb/Cマウスに0.5mg/kgで静脈内注射し、投与後4~6時間で採血した。血液をK2EDTAに採取し、血漿に処理後、分析まで-80℃で凍結保存する。
【0247】
製造業者の指示に従って、StemCell(カタログ番号01630)またはR&D Systems(カタログDEP00)のいずれかのヒトEPO ELISAキットを使用してヒトEPOの発現について血漿を試験することにより、活性をアッセイした。データを以下の表に示す。
【表1】
【0248】
実施例7 化合物8:
【化10】
の調製
以下のスキームに図示するように化合物8を調製した。
【化11】
【0249】
a.(Z)-デカ-4-エン-1-イルメタンスルホネート 2の調製
【化12】
ジクロロメタン(3.5L)中のシス-4-デセン-1-オール 1(500g、3.2mol)の溶液に、トリエチルアミン(558mL、4mol)を添加した。溶液を0℃に冷却し、塩化メタンスルホニル(272.4mL、3.5mol)を、溶液温度が20℃を超えない速度で添加した。溶液を室温で1.5時間撹拌後、飽和NaHCO(2L)で洗浄し、次いで水層をジクロロメタン(500mL)で逆抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥させ(MgSO)、濾過し、減圧下で乾燥するまで濃縮した。残留物をシリカパッド(100% DCM)に通して濾過し、(Z)-デカ-4-エン-1-イルメタンスルホネート 2を淡黄色の粗製油状物(750g)として得た。Rf0.7(CHCl)。
【0250】
b.(Z)-1-ブロモデカ-4-エン 3の調製
【化13】
【0251】
MeTHF(600mL)中のメシラート2(100g、427mmol)の溶液を加熱(80℃)してTBAB(178.9g、555mmol)で処理した。撹拌(2.5時間)後、反応混合物を冷却(約40℃)して氷水中に注いだ。水層をヘキサンで逆抽出し、合わせた有機層を水:ブライン(1:1)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過して濃縮した。粗物質を短いシリカベッドに通し、ヘキサンですすいだ後、濃縮して臭化物3(92g、99%)を淡黄色の油状物として得た。Rf0.85(100%ヘキサン)。
【0252】
c.(Z)-ウンデカ-5-エンニトリル 9の調製
【化14】
DMF(100mL)中のメシラート2(15g、64mmol)の溶液を、NaCN(7.8g、160mmol)で処理して加熱(80℃)した。撹拌(18時間)後、混合物を冷却(室温)し、EtOAc(300mL)で希釈してブライン(3×)で抽出し、次に乾燥させ(MgSO)、濾過して濃縮した。粗物質をクロマトグラフィー(0~10% EtOAc-ヘキサン)に供し、ニトリル9(7.53g、71%)を淡黄色の油状物として得た。Rf0.6 10%EtOAc-ヘキサン。
【0253】
d.(Z)-ウンデカ-5-エナール 10の調製
【化15】
CHCl(100mL)中のニトリル9(7.33g、45.6mmol)の溶液を冷却(0℃)し、DIBAL(CHCl中の1M溶液として54.7mL、54.7mmol)を滴下して処理した。撹拌(20分)後、アセトン(15mL)、ロッシェル塩(100mL、半飽和)を添加することにより反応をクエンチした。一晩激しく撹拌後、層を分離し、有機層を濃縮して粗物質をクロマトグラフィー(0~10% EtOAc-ヘキサン)に供し、アルデヒド10(1.8g、23%)を無色の油状物として得た。Rf0.6 10%EtOAc-ヘキサン。
【0254】
e.(6Z,15Z)-ヘンイコサ-6,15-ジエン-11-オールの調製
【化16】
THF(160mL)中の臭化物3(110.9g、506mmol)の溶液を、THF(200mL)中のMg(13.2g、542mmol)とDIBAL(CHCl中1mL、1M)の撹拌中の混合物に添加した。45℃で撹拌(1時間)後、混合物を冷却(約10℃)し、THF(80mL)中のギ酸エチル(41.9mL、521mmol)溶液で最初の半分を滴下によって、次いで残りの半分を急速に処理した。撹拌(1時間)後、溶液を冷却(0℃)し、水(120mL)、次いでHCl(6M、160mL)をゆっくりと添加することによりクエンチした。二相性溶液を水及びヘキサンで希釈後に分離させ、有機層を水:ブライン(1:1)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過して濃縮した。残留物をEtOH(400mL)に取り、水(40mL)中のKOH(25.6g、456mmol)の溶液で処理した。撹拌(5分)後、EtOHを除去して部分的に濃縮した混合物を水及びヘキサンで希釈し、次に、HCl(6M)、水及びブラインで洗浄した。次に、有機層を乾燥させ(MgSO)、濾過して濃縮した。粗物質をクロマトグラフィー(0~7% EtOAc-ヘキサン)に供し、アルコール4(46.5g、60%)を淡黄色の油状物として得た。Rf0.5 10%EtOAc-ヘキサン。
【0255】
f.(6Z,15Z)-ヘンイコサ-6,15-ジエン-11-オン 5の調製
【化17】
CHCl(150mL)中のアルコール4(5g、16.2mmol)の溶液を、シリカ中のPCCの1:1分散液(10.48g、48.6mmol、したがってシリカ中の1:1混合物としては20.96g)で処理した。撹拌(75分)後、不均質混合物を短いシリカベッドに通して濾過し、25%EtOAc-ヘキサンですすいで、ケトン5(4.53g、91%)を淡黄色の油状物として得た。Rf0.9 10%EtOAc-ヘキサン。
【0256】
g.(6Z,17Z)-13-ヒドロキシ-12-((Z)-ノン-3-エン-1-イル)トリコサ-6,17-ジエン-11-オン 6の調製
【化18】
THF(5mL)中のケトン5(2g、6.5mmol)の溶液をLDAの冷(-78℃)溶液(THF中の1.5M溶液として4.99mL、7.48mmol)に滴加した。撹拌(40分)後、新たに生じた伸長物を、THF(5mL)中のアルデヒド10(1.15g、6.83mmol)の冷(-78℃)溶液にゆっくりと添加した。撹拌(1時間)後、反応をNHCl(飽和水溶液)を添加することによりクエンチし、EtOAcで抽出し、次に乾燥させ(MgSO)、濾過して濃縮した。粗物質をクロマトグラフィー(0~10% EtOAc-ヘキサン)により精製し、ベータ-ヒドロキシケトン6(2.27g、73%)を無色油状物として得た。Rf0.6 10%EtOAc-ヘキサン。
【0257】
h.(6Z,17Z)-12-((Z)-ノン-3-エン-1-イル)トリコサ-6,17-ジエン-11,13-ジオール 7の調製
【化19】
MeOH(20mL)中のケトン6(2.27g、4.78mmol)の溶液を、NaBH(362mg、9.56mmol)で処理した。撹拌(90分)後、HCl(5%水溶液)を添加することにより反応を注意深くクエンチし、CHClで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過して濃縮した。粗物質をクロマトグラフィー(0~15% EtOAc-ヘキサン)に供し、ジオール7(1.4、61%)を無色油状物として得た。Rf0.3 10%EtOAc-ヘキサン。
【0258】
i.3-(4,6-ジ((Z)-デカ-4-エン-1-イル)-5-((Z)-ノン-3-エン-1-イル)-1,3-ジオキサン-2-イル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン 8の調製
【化20】
トルエン(30mL)中のジオール7(1.4g、2.94mmol)と4-(ジメチルアミノ)-ブチルアルデヒドジメチルアセタール(1.06mL、5.88mL)との溶液をPPTS(1.85g、7.35mmol)で処理し、加熱(80℃)した。撹拌(2時間)後、反応混合物を冷却(室温)し、NaHCO(飽和水溶液)中に注ぎ、次にブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過して濃縮した。粗物質をクロマトグラフィー(100% EtOAc)に供し、化合物8を淡黄色の油状物(600mg、36%)として得た。Rf0.6 10%MeOH-CHCl