(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】カプセルに加圧下で供給される流体を用いてカプセルから飲料を調製するシステム、及びこのようなシステムに用いるカプセル
(51)【国際特許分類】
A47J 31/06 20060101AFI20240619BHJP
A47J 31/36 20060101ALI20240619BHJP
A47J 31/40 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A47J31/06 323
A47J31/36 120
A47J31/40 107
(21)【出願番号】P 2021535262
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 NL2019050853
(87)【国際公開番号】W WO2020130819
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-08
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512164779
【氏名又は名称】コーニンクラケ ダウ エグバート ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】カマービーク,ラルフ
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520720(JP,A)
【文献】特表2016-526960(JP,A)
【文献】特表2018-502782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/06
A47J 31/36
A47J 31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセルに加圧下で供給される流体を用いて前記カプセルから飲料を調製するシステムであって、
飲料調製装置とカプセルとを備えており、
前記飲料調製装置は、前記カプセルを受容する囲み部材を備え、前記囲み部材は、前記カプセルに加圧下で流体を供給する流体注入手段を含み、前記飲料調製装置は、抽出プレートなどのカプセルホルダを更に備え、前記囲み部材と前記カプセルホルダとは、前記カプセルホルダによって前記飲料調製装置の前記囲み部材を閉鎖するために相対的に移動可能であり、前記飲料調製装置の前記囲み部材は、幅広の環状要素と、中央環状要素軸と、自由接触端とを更に含んでおり、
前記カプセルは、前記飲料調製装置の前記流体注入手段を用いて前記カプセルに加圧下で供給される前記流体により物質を抽出かつ/又は溶解することによる飲料の前記調製のための前記物質を収容し、前記カプセルは、アルミニウム又はアルミニウム合金から作製されて、中央カプセル本体軸を有するカプセル本体を備え、前記カプセル本体は、底部と、側壁と、外向きに延びるフランジとを含み、前記カプセルは、更に、前記外向きに延びるフランジに取り付けられた蓋、好ましくはアルミニウム蓋を備え、前記蓋は前記カプセルを密閉し、前記カプセルは前記飲料調製装置に挿入されるように設計されており、前記カプセルは、前記カプセルが前記飲料調製装置の前記囲み部材内に位置して、前記囲み部材が前記飲料調製装置の前記カプセルホルダによって閉じられると、前記飲料調製装置の前記囲み部材との流体密封接触を提供するための、前記外向きに延びるフランジによって形成された封止部材を更に備え、それによって、前記カプセルの前記封止部材の少なくとも一部分を含む、前記カプセルの前記外向きに延びるフランジが、前記飲料調製装置の前記囲み部材と前記カプセルホルダとの間に封止係合され、挿入前は、前記封止部材は段差形状、すなわち前記カプセルの前記側壁の直径が急に増加する形状を有し、前記封止部材は、実質的に係合距離にわたって前記中央カプセル本体軸に対して横方向に延びるフロア部分と、前記フロア部分から離れる方向に延びる側壁部とを含み、前記底部と、側壁と、フランジと、封止部材とを含む前記カプセル本体は、アルミニウム又はアルミニウム合金から作製されたシート状材料から製造されており、
前記フロア部分の前記係合距離は、前記カプセルが前記飲料調製装置の前記囲み部材内に位置して、前記囲み部材が前記飲料調製装置の前記カプセルホルダに向かって相対的に移動されると、前記フロア部分は、前記環状要素の前記自由接触端にその幅にわたって係合するための距離であり、前記飲料調製装置の前記囲み部材が前記飲料調製装置の前記カプセルホルダによって閉じられると、前記フロア部分は、前記環状要素の前記自由接触端上で塑性延伸されるように構成されて
おり、
前記フロア部分は、弱化部を、好ましくはその中央部分に、含むことを特徴とする、
前記システム。
【請求項2】
前記カプセルは、前記飲料調製装置の前記囲み部材内に位置して、前記飲料調製装置の囲み部材が前記飲料調製装置の前記カプセルホルダによって閉じられると、前記フロア部分が、前記自由接触端の幅の少なくとも半分の距離にわたって、前記環状要素の前記自由接触端の上で半径方向外側に突出することを特徴とする、請求項1
に記載のシステム。
【請求項3】
前記底部と、前記側壁と、前記フランジと、前記封止部材とが、一体的に形成されていることを特徴とする、請求項1
又は2
に記載のシステム。
【請求項4】
前記底部を含む前記カプセル本体と、前記側壁と、前記フランジと、前記封止部材とが、前記シート状材料を深絞り加工することによって形成されることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のシステムで用いるためのカプセルであって、前記カプセルは、前記カプセルに加圧下で供給される前記流体により物質を抽出かつ/又は溶解することによる飲料の前記調製のための前記物質を収容し、前記カプセルは、アルミニウム又はアルミニウム合金から作製され中央カプセル本体軸を有するアルミニウムカプセル本体を含み、前記アルミニウムカプセル本体は、底部と、側壁と、外向きに延びるフランジとを備えており、前記カプセルは、更に、前記外向きに延びるフランジに取り付けられた蓋、好ましくはアルミニウム蓋を備え、前記蓋は前記カプセルを密閉し、前記カプセルは、外向きに延びるフランジによって形成された封止部材を更に備え、前記封止部材は段差形状、すなわち前記カプセルの前記側壁の直径が急に増加する形状を有し、前記封止部材は、実質的に係合距離にわたって前記中央カプセル本体軸に対して横方向に延びるフロア部分と前記フロア部分から離れる方向に延びる側壁部とを含み、前記底部を含む前記カプセル本体と、前記側壁と、前記フランジと、前記封止部材とは、アルミニウム又はアルミニウム合金から作製されたシート状材料から製造され
、前記フロア部分は、弱化部を、好ましくは前記フロア部分の中央部分に、含む、
前記カプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部による、カプセルに加圧下で供給される流体を用いてカプセルから飲料を調製するシステムに関する。本発明はまた、このようなシステムで用いるためのカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなカプセル及びシステムは、欧州特許第1654966号に基づくものが知られている。公知のシステムにおいて、カプセルは、段差形状、すなわちカプセルの側壁の直径の急な増加を有する封止部材を備え、そしてこの公知のシステムの囲み部材は、封止部材にたわみを与えるように封止部材に作用する封止表面を有し、この封止表面は、この封止部材のたわみが段状の内側及び下側への変形となるように傾けられている。公知のシステムにおいて更に、囲み部材は、カプセルホルダと、囲み部材及びカプセルホルダの相対移動のための手動操作機構又は自動機構と、を備えている。手動操作機構又は自動機構は、囲み部材がカプセルホルダに接近すると、カプセルの封止部材上に力を印加する。この力は、囲み部材とカプセルとの間の流体密封を確実にするであろう。手動操作機構又は自動機構は、基部に対して相対的に移動するように構成されているため、システムの封止能力は、流体注入手段によって注入される流体の圧力に依存し得る。流体の圧力が増加すると、カプセルの封止部材と囲み部材の自由端との間の力も増大し、それによりカプセルの封止部材と囲み部材の自由端との間の力もまた、増大する。係るシステムは後で説明される。カプセルの封止部材は、囲み部材内において最大流体圧に到達するときに、封止部材は、囲み部材とカプセルとの間に流体封止接触をやはりもたらすべきであるように構成されていなければならない。しかしながら、封止部材はまた、淹出する前又は淹出開始時の、カプセルの外の囲み部材内の流体の圧力が比較的低いときに、封止部材がまた、囲み部材とカプセルとの間に流体封止接触をもたらすように構成されていなければならない。淹出開始時に、カプセルと囲み部材との間に流体封止接触が存在しない場合、漏れが生じる。しかしながら、もし漏れが生じると、手動操作機構又は自動機構が囲み部材をカプセルホルダに向かって移動させたときに、囲み部材の自由端による封止部材への力を増加させる囲み部材内及びカプセルの外側の圧力が、十分に上昇しないことが現実に生じる。十分な初期封止があるときにのみ、囲み部材内の圧力は増加し、それによりカプセルの封止部材上で作用する囲み部材の自由端の力は、増加した流体圧でもまた十分な流体封止接触をもたらすように増加する。更に、こうして増大したカプセル外側の流体圧力はまた、カプセル内側の流体圧力も増大させる。これは、カプセル内の流体圧力の影響下で、飲料調製装置のカプセルホルダの逃し部材(抽出プレートとも呼ぶ)上に裂開するように配置された蓋が、カプセルに設けられている場合に重要である。
【0003】
上記のことから、封止部材は、設計上極めて重要な部材であるということになる。囲み部材の自由端によって比較的小さな力しか封止部材に加えられないときには、比較的低い流体圧で囲み部材とカプセルとの間に流体封止接触をもたらすことができるべきである。しかし、囲み部材の自由端によってカプセルの封止部材により強い力が加えられるときには、カプセルの外の囲み部材内に、遥かに高い流体圧で流体封止接触がもたらされるべきである。特に、囲み部材とカプセルホルダとの間の力が解放されると空気流入路として働き、それにより、使用者がより容易にカプセルを取り出せるようになる、半径方向に延びる開放溝を、囲み部材の自由接触端が備える場合、封止部材はまた、効果的な封止をもたらすために半径方向に延びる開放溝を「閉じる」ことができなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、製造が比較的容易で、カプセルが使用後に廃棄される場合に環境に優しく、かつ/又は、自由接触端が半径方向に延びる開放溝を備えた囲み部材の場合であっても十分な封止を提供する代替的な封止部材を提供することである。
【0005】
本発明はまた、飲料調製装置においてカプセルから飲料を調製するための代替のシステムを提供するという目的も有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、第1の態様として提供されるシステムは、カプセルに加圧下で供給される流体を用いてカプセルから飲料を調製するシステムであって、飲料調製装置とカプセルとを備えており、
飲料調製装置は、カプセルを受容する囲み部材を備え、囲み部材は、カプセルに加圧下で流体を供給する流体注入手段を含み、飲料調製装置は、抽出プレートなどのカプセルホルダを更に備え、囲み部材とカプセルホルダとは、カプセルホルダによって飲料調製装置の囲み部材を閉鎖するために相対的に移動可能であり、飲料調製装置の囲み部材は、幅広の環状要素と、中央環状要素軸と、自由接触端とを更に含み、環状要素の自由接触端は、任意選択で複数の半径方向に延びる開放溝を備えており、
カプセルは、飲料調製装置の流体注入手段を用いてカプセルに加圧下で供給される流体により物質を抽出かつ/又は溶解することによる飲料の調製のための物質を収容し、カプセルは、アルミニウム又はアルミニウム合金から作製されて、中央カプセル本体軸を有するカプセル本体を備え、カプセル本体は、底部と、側壁と、外向きに延びるフランジとを含み、カプセルは、更に、外向きに延びるフランジに取り付けられた蓋、好ましくはアルミニウム蓋を備え、蓋はカプセルを密閉し、カプセルは飲料調製装置に挿入されるように設計されており、カプセルは、カプセルが飲料調製装置の囲み部材内に位置して、囲み部材が飲料調製装置のカプセルホルダによって閉じられると、飲料調製装置の囲み部材との流体密封接触を提供するための、外向きに延びるフランジによって形成された封止部材を更に備え、それによって、カプセルの封止部材の少なくとも一部分を含む、カプセルの外向きに延びるフランジが、飲料調製装置の囲み部材とカプセルホルダとの間に封止係合され、挿入前は、封止部材は段差形状を有し、すなわちカプセルの側壁の直径が急に増加する形状を有し、封止部材は、実質的に係合距離にわたって中央カプセル本体軸に対して横方向に延びるフロア部分と、フロア部分から離れる方向に延びる側壁部とを含み、底部と、側壁と、フランジと、封止部材とを含むカプセル本体は、アルミニウム又はアルミニウム合金から作製されたシート状材料から製造されており、フロア部分の係合距離は、カプセルが飲料調製装置の囲み部材内に位置して囲み部材が飲料調製装置のカプセルホルダに向かって相対的に移動されると、フロア部分は、環状要素の自由接触端にその幅にわたって係合するための距離であり、飲料調製装置の囲み部材が飲料調製装置のカプセルホルダによって閉じられると、フロア部分は、環状要素の自由接触端上で塑性延伸されるように構成されていることを特徴とする、システムである。
【0007】
フロア部分の係合距離は、カプセルが飲料調製装置の囲み部材内に位置して、囲み部材が飲料調製装置のカプセルホルダに向かって相対的に移動されると、フロア部分は、環状要素の自由接触端にその幅にわたって係合するようにするための距離であり、フロア部分は、飲料調製装置の囲み部材が飲料調製装置のカプセルホルダによって閉じられると、環状要素の自由接触端上で塑性延伸されるように構成されている。このため、囲み部材をカプセルホルダに対して閉じる工程の間に、カプセルのフロア部分は、囲み部材によって接触され、フロア部分側壁が変形される。具体的には、自由接触端が入り込み、フロア部分を圧迫する。フロア部分は、最終的にフロア部分をカプセルホルダとの間で強く挟む囲み部材の作用によって下方に押される。この下方への移動により、フロア部分は塑性延伸され、又は折りたたまれて、環状要素の自由接触端と密封係合し、フロア部分の材料が自由接触端に、特に自由接触端の溝がある場合に、ぴったり適合することが促される。したがって、フロア部分は、封止部材の形状、すなわち、水平に延び、囲み部材の自由接触端と比較して幅が広く、囲み部材の自由接触端の幅を超えて延びていることの結果として、塑性延伸され、又は折りたたまれて、環状要素の自由接触端と密封係合する。囲み部材を閉じると、フロア部分が環状要素の自由接触端上で塑性延伸されることにより、カプセルと囲み部材との間の優れた密封係合が得られる。
【0008】
本発明によるシステムの一実施形態では、フロア部分は、折り目、刻み目、減肉などの弱化部を、好ましくはその中央部分に備えており、これによってフロア部分が塑性変形される又は折りたたまれる様式をより明確なものとできる。したがって、フロア部分は、封止部材の形状、すなわち、フロア部分が水平に延び、囲み部材の自由接触端と比較して幅が広く、すなわち、フロア部分が囲み部材の自由接触端の幅を超えて延びていることと、フロア部分に弱化部を設けたこととの組み合わせの結果として、塑性延伸され、又は折りたたまれて環状要素の自由接触端と密封係合する。
【0009】
本発明によるシステムの更なる実施形態では、カプセルが飲料調製装置の囲み部材内に位置して、飲料調製装置の囲み部材が飲料調製装置のカプセルホルダによって閉じられると、フロア部分は、自由接触端の幅の少なくとも半分の距離にわたって、環状要素の自由接触端の上で半径方向外側に突出する。このようにして、囲み部材を閉じたときに、フロア部分は、環状要素の自由接触端の全幅にわたって塑性延伸され、カプセルと囲み部材との間の優れた密封係合が得られることが確実になる。
【0010】
本発明によるシステムの更なる実施形態では、底部、側壁、フランジ及び封止部材は一体的に形成される。好ましくは、底部、側壁、フランジ、及び封止部材を含むカプセル本体が、シート状材料を深絞り加工することによって形成される。
【0011】
本発明では、第2の態様として、このようなシステムで用いる、請求項6に記載のカプセルが提供される。カプセルの好ましい実施形態では、フロア部分は、好ましくはその中央部分にある弱化部を含む。
【0012】
本発明は、添付の図面を参照して、いくつかの特定の実施形態を説明することによって更に説明される。この詳細な説明は、本発明の可能性のある実施態様の例を提供するが、範囲に該当する実施形態のみを説明するものと見なされるべきではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に規定されており、説明は、本発明を制限するものでなく、例示的なものとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】カプセルに加圧下で供給される流体を用いてカプセルから飲料を調製するための、本発明によるシステムの第1の実施形態の概略断面図であって、カプセルの封止部材は均一な厚さを有するフロア部分を含み、囲み部材がカプセルホルダから離間している状態(
図1A)、及び囲み部材がカプセルホルダと接触している状態(
図1B)を示す。
【
図1B】カプセルに加圧下で供給される流体を用いてカプセルから飲料を調製するための、本発明によるシステムの第1の実施形態の概略断面図であって、カプセルの封止部材は均一な厚さを有するフロア部分を含み、囲み部材がカプセルホルダから離間している状態(
図1A)、及び囲み部材がカプセルホルダと接触している状態(
図1B)を示す。
【
図2A】カプセルに加圧下で供給される流体を用いてカプセルから飲料を調製するための、本発明によるシステムの第2の実施形態の拡大部分の概略図であって、カプセルの封止部材は、弱化部を有するフロア部分を含み、囲み部材がカプセルホルダから離間している状態(
図2A)、及び囲み部材がカプセルホルダと接触している状態(
図2B)を示す。
【
図2B】カプセルに加圧下で供給される流体を用いてカプセルから飲料を調製するための、本発明によるシステムの第2の実施形態の拡大部分の概略図であって、カプセルの封止部材は、弱化部を有するフロア部分を含み、囲み部材がカプセルホルダから離間している状態(
図2A)、及び囲み部材がカプセルホルダと接触している状態(
図2B)を示す。
【
図3A】カプセルに加圧下で供給される流体を用いてカプセルから飲料を調製するための、本発明によるシステムの第3の実施形態の拡大部分の概略図であって、カプセルの封止部材は、弱化部を有するフロア部分を含み、囲み部材の環状要素の自由端部が
図2A、
図2Bに示される実施形態とは異なる構造を有しており、囲み部材がカプセルホルダから離間している状態(
図3A)、及び囲み部材がカプセルホルダと接触している状態(
図3B)を示す。
【
図3B】カプセルに加圧下で供給される流体を用いてカプセルから飲料を調製するための、本発明によるシステムの第3の実施形態の拡大部分の概略図であって、カプセルの封止部材は、弱化部を有するフロア部分を含み、囲み部材の環状要素の自由端部が
図2A、
図2Bに示される実施形態とは異なる構造を有しており、囲み部材がカプセルホルダから離間している状態(
図3A)、及び囲み部材がカプセルホルダと接触している状態(
図3B)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1Aは、加圧下でカプセル1内に供給される流体を用いてカプセル2から飲料を調製するためのシステム1の一実施形態の概略断面図である。カプセル2に加えて、システム1は飲料調製装置4を備える。飲料調製装置4は、カプセル2を受容し保持する囲み部材6を含む。飲料調製装置4は、カプセル2を支持するためのカプセルホルダ、例えば抽出プレート8を更に備えている。
【0015】
図1Aでは、明瞭にするために、カプセル2、囲み部材6、及び抽出プレート8の間に間隙が描かれている。使用中、カプセル2は、囲み部材6及び抽出プレート部材8と接触するように位置決めされていてもよいことが理解されよう。一般的には、囲み部材6は、カプセル2の形状に補完的な形状を有する。飲料調製装置4は、ある量の水などの流体を、6~20バール、好ましくは12~18バールの範囲内の圧力下で、交換可能なカプセル2に供給するための流体注入手段10を更に備えている。
【0016】
囲み部材6及びカプセルホルダ8は、相対的に移動可能であり、飲料調製装置の囲み部材6をカプセルホルダ8によって閉じることができる。飲料調製装置4の囲み部材6は、幅B、中央環状要素軸12A、及び自由接触端9を有する環状要素7を更に備える。
【0017】
図1Aに示される実施例では、交換可能なカプセル2は、アルミニウム又はアルミニウム合金から作製され、アルミニウムカプセル本体とも呼ばれる、カプセル本体12を含み、アルミニウムカプセル本体は、中央カプセル本体軸12Aと、蓋の壁厚を有するアルミニウム蓋14とを有する。本例では、アルミニウムカプセル本体12は、側壁16、第1の端部で側壁16を閉じる底部18、及び底部18とは反対側の第2の端部で周囲壁16から外向きに延びる外向きに延びるフランジ20を備えている。底部18と、側壁16と、フランジ30と、封止部材28(以下で論じられる)とを含むカプセル本体12は、アルミニウム又はアルミニウム合金から作製されたシート状材料から製造される。好ましくは、底部、側壁、フランジ及び封止部は、特にシート状材料を深絞り加工することによって一体的に形成される。側壁16、底部18、及び蓋14は内部空間22を取り囲み、内部空間22は、物質を抽出及び/又は溶解することによって飲料を調製するための物質を含んでいる。好ましくは、物質は、抽出可能な物質で、好ましくは5~20グラム、好ましくは5~10グラム、より好ましくは5~7グラムの、一杯の飲料の調製のための焙煎され挽かれたコーヒーである。カプセルは、最初に封止されている、すなわち使用前は密封して閉じられている。
【0018】
図1Aのシステム1の流体注入手段10は、底部18に少なくとも1つの入口開口部25を作るためにカプセル2の底部18を穿孔し、入口開口部25を介して流体を抽出可能製品に供給するための底部穿孔手段24を更に備えている。
【0019】
図1Aのシステム1のカプセルホルダ8は、カプセル2の蓋14を穿孔するために、ここではカプセルホルダ8の突起部として具現化されている、蓋穿孔手段26を更に備えている。蓋穿孔手段26は、内部空間22内部の(流体)圧力が閾値圧を超えると、蓋14が蓋穿孔手段26に対して十分な力で押圧されることで蓋14が裂開するように構成され得る。こうして、アルミニウム蓋14は、カプセル2内の流体圧の影響下で、飲料調製装置4のカプセルホルダ8上で裂開するように構成されている。
【0020】
カプセル2は、カプセル2が飲料調製装置4の囲み部材6内に位置して、囲み部材6が飲料調製装置4(
図1Bを参照)のカプセルホルダ8によって閉じられると、飲料調製装置4の囲み部材6との流体密封接触を提供するための、外向きに延びるフランジ20によって形成された封止部材28を更に備え、それによって、カプセルの封止部材28の少なくとも一部分を含む、カプセル2の外向きに延びるフランジ20が、飲料調製装置4の囲み部材6とカプセルホルダ8との間に封止係合される。挿入前は、封止部材28は段差形状、すなわちカプセル2の側壁16の直径が急に増加する形状を有し、封止部材28は、実質的に係合距離EDにわたって中央カプセル本体軸12Aに対して横方向に延びるフロア部分30を含む。封止部材28は、フロア部分30から離れる方向に延びる側壁部31を更に含む。
図1Aに示される実施形態では、フロア部分30は、実質的に均一な厚さを有し、側壁部31は、中央本体軸12Aと実質的に平行である。
【0021】
フロア部分30の係合距離EDは、カプセル2が飲料調製装置4の囲み部材6内に位置して、囲み部材6が飲料調製装置8のカプセルホルダ8に向かって相対的に移動されると、フロア部分30が環状要素7の自由接触端9にその幅Bにわたって係合するようにするための距離である。フロア部分30は、飲料調製装置4の囲み部材6が飲料調製装置4のカプセルホルダ8によって閉じられると(
図1Bを参照)、環状要素7の自由接触端9上で塑性延伸されるように構成されている。したがって、囲み部材6をカプセルホルダ8に対して閉じる工程の間に、カプセル2の封止部材28のフロア部分30は、囲み部材6、特にその自由接触端9によって接触され、フロア部分30及びフロア部分側壁31が変形される。具体的には、自由接触端9は、フロア部分30を圧迫する。次いで、フロア部分30は、最終的にフロア部分30をカプセルホルダ8との間で強く挟む囲み部材6の移動によって下方に押される。この下方への移動により、フロア部分30は塑性延伸され、又は折りたたまれて、環状要素7の自由接触端9と密封係合し、フロア部分30の材料が自由接触端9にぴったり適合すること、特に自由接触端9の溝40がある場合にぴったり適合することが促される。囲み部材6を閉じると、フロア部分30が環状要素7の自由接触端9上で塑性延伸されることにより、カプセル2と囲み部材6との間の優れた密封係合が得られる。
【0022】
図2A及び
図3Aに示される実施形態では、封止部材28’、28”のフロア部分30’、30”は、好ましくはその中央部分に弱化部29、29’を含む。弱化部29、29’は、折り目、刻み目、又はフロア部分30’、30”の減肉された一部分として提供され得る。弱化部29、29’を設けることにより、フロア部分30’、30”及び側壁部31’、31”が塑性変形され、又は折りたたまれる様式(
図2B及び
図3Bに示される)をより明確なものとできる。
図3Bの実施形態では、自由接触端9’の最終端部及び自由接触端9’の半径方向外側に隣接する外側表面9a”上で密封が起きる。
【0023】
図3Aに示される実施形態では、封止部材28”の側壁部31”は、中央カプセル本体軸12Aに対する角度を含んでおり、これによって、
図3Bに示されるように、フロア部分30”及び側壁部31”が塑性変形される、又は折りたたまれる様式を、より一層明確なものとできる。加えて、
図3A及び
図3Bに示される実施形態では、環状要素7’は、自由接触端9’が溝を設けられていない点、及び自由接触端9’が2つの突出部9a’、9b’を備え、内側の突出部9a’が外側の突出部9b’よりもカプセルホルダ8に向かって更に延びている点において環状要素7と異なっている。飲料調製装置の囲み部材が飲料調製装置のカプセルホルダによって閉じられている場合、フロア部分30”は、環状要素7’の自由接触端9’上で、特に内側の突出部9a’上で塑性延伸されるように構成されている。
【0024】
本発明によるシステムの第1、第2、及び第3の実施形態はまた、フロア部分30、30’、30”が環状要素7、7’の自由接触端9、9’を越えて半径方向外側に突出する程度、すなわち距離においても互いに異なる。
図1Aに示される実施形態では、フロア部分30は、自由接触端9の幅Bの約10~18%の距離にわたり、自由接触端9を越えて半径方向に延びる。
【0025】
図2Aに示される実施形態では、フロア部分30’は、
図1Aに示される実施形態におけるよりも更に自由接触端9を越えて半径方向に延びる。フロア部分30’が自由接触端9を越えて延びる距離は、自由接触端9自体の幅Bに実質的に等しい。
【0026】
図3Aに示される実施形態では、フロア部分30”は、
図1A及び
図2Aに示される実施形態におけるよりも、(相対的に)自由接触端9’を更に越えて半径方向に延びる。フロア部分30”が自由接触端9’を越えて延びる距離は、ここでは、自由接触端9’自体の幅B’の実質的に2倍である。
【0027】
封止部材のフロア部分が自由接触端の幅の少なくとも半分の距離にわたって延びている場合、カプセルが飲料調製装置の囲み部材内に位置し、飲料調製装置の囲み部材が飲料調製装置のカプセルホルダによって閉じられると、囲み部材が閉じられ次第、環状要素の自由接触端の全幅にわたってフロア部分が塑性延伸され、カプセルと囲み部材との間の優れた密封係合が得られていることが確実とみられる。