(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/12 20060101AFI20240619BHJP
H01G 9/145 20060101ALI20240619BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240619BHJP
【FI】
H01G9/12 A
H01G9/145
H01G11/78
(21)【出願番号】P 2021547931
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2019079702
(87)【国際公開番号】W WO2020089316
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】102018127263.4
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】エレケシュ, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ベセ, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ラカタール, タマーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウィットマン, ルドルフ
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】畑中 博幸
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-110364(JP,U)
【文献】特開2017-69440(JP,A)
【文献】実開平3-110827(JP,U)
【文献】特開2001-15391(JP,A)
【文献】特開昭60-130813(JP,A)
【文献】実開昭56-4255(JP,U)
【文献】特開平4-329621(JP,A)
【文献】実開平1-92125(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/12
H01G 11/00-11/86
H01M 50/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する容器(1)と、
前記容器(1)の内部に配置された少なくとも一つのキャパシタ素子(2)と、
前記容器(1)を封止する蓋(4)と、を備え、
前記蓋の内面(7)における凹部(6)にベント部(5)が配設されており、
前記凹部(6)は細長い溝部として形成されて
おり、
前記凹部(6)は、前記蓋の内面(7)に取付けられた複数の付加部分の間のギャップによって形成されている、キャパシタ。
【請求項2】
前記ベント部(5)は、前記キャパシタ素子(2)に対向する前記ベント部(5)の端部が前記蓋の内面(7)よりも前記キャパシタ素子(2)から離れて位置するように、前記凹部(6)内に配置されている、請求項1記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記凹部(6)は上側段部(6a)及び下側段部(6b)を有し、前記上側段部(6a)は、前記下側段部(6b)より前記キャパシタ素子(2)から離れて位置しており、前記ベント部(5)は前記上側段部(6a)内に配置されている、請求項1又は2記載のキャパシタ。
【請求項4】
前記凹部(6)の前記下側段部(6b)は溝部として形成されている、請求項3記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記凹部(6)は互いに交差する複数の溝部として形成されている、請求項1又は2記載のキャパシタ。
【請求項6】
前記凹部(6)の前記下側段部(6b)は互いに交差する複数の溝部として形成されている、請求項3記載のキャパシタ。
【請求項7】
前記キャパシタ素子(2)は電解質を含んでいる、請求項1から
6までのいずれか一項記載のキャパシタ。
【請求項8】
前記電解質は非固体電解質である、請求項
7記載のキャパシタ。
【請求項9】
前記ベント部(5)は膜である、請求項1から
8までのいずれか一項記載のキャパシタ。
【請求項10】
前記ベント部(5)は安全ベント又は過圧ベントである、請求項1から
9までのいずれか一項記載のキャパシタ。
【請求項11】
前記蓋(4)は、前記ベント部(5)の周囲における外面に隆起部(9)を有する、請求項1から
10までのいずれか一項記載のキャパシタ。
【請求項12】
2つのねじ端子(3)が、少なくとも一つのキャパシタ素子(3)用の電極と電気的に接続されており、前記2つのねじ端子(3)は、前記蓋(4)をガス密に貫通している、請求項1から
11までのいずれか一項記載のキャパシタ。
【請求項13】
前記蓋(4)は、前記ベント部(5)が前記キャパシタ素子(2)又は前記電解質に接触しないように形成されている、請求項1から
12までのいずれか一項記載のキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベント部が配設された封止蓋を備えるキャパシタに関する。
【0002】
ベント部とは、キャパシタの蓋に設けられていることが多い標準の部品であり、故障やリーク電流などに起因するキャパシタ内での発熱によって容器に蓄積された過圧を解放するものである。このベント部はキャパシタの容器内に突出しており、キャパシタ内の沈殿物および流体に曝されている。このため、沈殿物および流体はベント部内に容易に進入してベント部を閉塞し、これによって、ベント部の機能不全が生じ、早期故障を引き起こす。特に電解キャパシタでは、電解質がベント部に進入し、当該電解質が乾燥し、結晶化し、ベント部を詰まらせる可能性がある。さらに、突出したベント部は容器内の空間を占有し、従って、容器内のキャパシタ素子が取り得る範囲を減少させる。そこで、本発明の目的は、改良型キャパシタ、例えば、キャパシタの蓋に配置されたベント部が容器内部の沈殿物によって閉塞されないように保護され、キャパシタ内部のベント部によって占有される空間を最小限に抑えるように設計されたキャパシタを提供することである。
【発明の概要】
【0003】
この目的は、請求項1に記載のキャパシタによって解決される。
【0004】
開口部を有する容器と、該容器の内側に配置される少なくとも1つのキャパシタ素子と、該容器を封止する蓋とを備え、該蓋の内面の凹部にベント部が配置されるキャパシタが提供される。
【0005】
ここでは、凹部は、蓋内の凹み、窪み、または空洞であり、当該凹部は蓋の内面から蓋の外面まで延在していない。したがって、凹部によって、蓋の厚さ内に付加的な表面または付加的な段部が生成される。この意味で、凹部は、当該蓋を貫通する貫通孔であって、キャパシタの外部とキャパシタの内部とを接続する開口部を成す貫通孔とすることはできない。
【0006】
蓋は、キャパシタのハウジングの板状構成要素であってもよく、平面図において丸い又は長方形であってもよく、当該蓋は容器を閉じるものである。蓋の内面は、容器内部のキャパシタ素子に対向する板状の面であってもよい。
【0007】
この蓋の内面において、凹部は、容器内のキャパシタ素子から離れる方向に凹むキャビティとして形成されてもよい。本発明によれば、ベント部は凹部内に配置される。
【0008】
ベント部は、特に容器内の蓄熱および化学反応によってガスが発生のした場合に、キャパシタ内部から過圧を解放することを可能にし得る。このようなベント部を介して拡散することにより、水素などの発生したガスを放出することができ、内圧の蓄積によるキャパシタの故障を防止することができる。このベント部は、過圧ベント、安全ベント、または適切なバルブであってよい。ベント部を凹部内に配置することにより、ベント部が凹部内に配置されていないキャパシタよりも、容器内の沈殿物によってベント部が閉塞することからより一層保護され、従って、キャパシタの故障のリスクが低減する。
【0009】
加えて、従来のキャパシタではベント部が蓋から容器内に突出しているので、通常、例えば巻線及び電解質を含むことができるキャパシタ素子のために、容器内の空間の全体を使用することができない。本発明によれば、ベント部が蓋に埋設されているので、容器内部の空間全体をキャパシタ素子で占めることができる。その結果、キャパシタに蓄積されるエネルギー密度を増加させることができ、本発明によるキャパシタによれば、同じ体積を有する従来のキャパシタと比較して、より多くのエネルギーを蓄積することができる。
【0010】
好ましくは、ベント部は、容器内のキャパシタ素子に対向するベント部の端部が蓋の内面よりもキャパシタ素子から更に離れるように、凹部内に配置されてもよい。これにより、ベント部は沈殿物の衝撃からさらに保護され、容器内部のより多くの空間をキャパシタ素子によって使用することができる。
【0011】
一実施形態ではキャパシタ蓋内の凹部が上側段部と下側段部とを有してよく、この場合、上側段部は下側段部よりもキャパシタ素子からさらに離れており、凹部は上側段部に配置されている。この配置では、キャパシタ素子に対向するベント部の開口部は、不所望の粒子の侵入からさらに保護される。凹部の下側段部における表面張力によって流体は凹部に進入することを抑制され得ることから、特に、容器の内側に流体を含むキャパシタは2段式の凹部による利益を享受することができる。
【0012】
凹部または凹部の下側段部は、閉鎖されたキャパシタ内の圧力が閾値圧力を超えている場合にガスをベント部に搬送することによって圧力解放を支援する、細長い溝部として形成されてもよい。当該溝部は、ベント部を越えて延在して、粒子をベント部に導くことによってガス放出を補助してもよい。別の可能性は、蓋の長さ全体に亘って溝部を延長することであり、これにより封止された容器内の圧力上昇によるガス放出が改善される。
【0013】
凹部または凹部の下側段部は互いに交差し、それによってガス放出を支援する多数の溝部として形成することもできる。
【0014】
当該蓋の凹部は、蓋の内面に取り付けられた付加部分の間のギャップによって形成してもよい。この構成は、キャパシタ蓋の製造に好都合であり得る。これらの付加部分は、容器内に存在し得る化学物質と反応しない限り、蓋またはその他のものと同じ材料であってもよい。例えば、当該材料は、非導電性材料、例えば、TPEs、HDPEs、PPs、PVCsまたはPTFEsなどの合成ポリマーであってもよい。
【0015】
キャパシタは、電解キャパシタであると明示し得る。電解キャパシタは、誘電体におけるエネルギー損失による自己発熱に加え、極性を間違えると蓄熱の危険があるため、非電解キャパシタに比べて熱、過圧に対する脅威が大きくなる。したがって、ほとんどの電解キャパシタは、本発明の利益を享受し得るベント部を一体化している。
【0016】
液体電解質はベント部に容易に進入し当該ベント部を詰まらせる可能性があるので、特に、電解質として流体を使用する非固体電解キャパシタは、開示されたベント部の構成による利益を享受し得る。
【0017】
キャパシタ素子に対向する蓋の内面における凹部のために、蓋の一部がベント部の周囲に用意されなければならないので、安定性の理由から、蓋の外面におけるベント部の周囲で蓋を隆起させることが有利となり得る。
【0018】
キャパシタ素子の電極は、ガス密に蓋を貫通するねじ端子によって電気的に接続されてもよい。ねじ端子は、キャパシタに対して要求されるアプリケーションへの電気的及び機械的接続を提供するように形成されてもよい。
【0019】
さらに、ベント部と電解質またはフィルムなどのキャパシタ素子との間の接触が回避されるように蓋を形成することは最良の利点であり得る。このようにして、潜在的な短絡の危険性が低減される。
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明における好ましい実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明におけるキャパシタの簡略化された断面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明における別の実施形態のキャパシタの簡略化された断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明における更に別の実施形態のキャパシタの簡略化された断面図を示す。
【
図4】
図4は、
図1に示した実施形態と類似する蓋を示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、別の実施形態による蓋の内側の斜視図を示す。
【
図6】
図6は、異なる複数のキャパシタ蓋の内面の簡略化された平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、キャパシタの簡略化した断面図を示す。キャパシタは容器1を含む。容器の基部領域は、長方形、丸形、または他の任意の形状であってよい。容器1の内部にはキャパシタ素子2が配置されている。容器1は、気密な蓋4で封止されている。少なくとも2つのねじ端子3は、ガス密を維持しつつ蓋4を貫通し、キャパシタ素子2の電極に電気的に接続している。ここで、蓋4の中央において、キャパシタ素子2に対向する蓋の内面7に凹部6が形成されている。当該凹部6内にベント部5が配置されており、これにより、閉鎖された容器1の内部の圧力が例えば発熱によって増加した場合に、圧力が解放される。キャパシタが電解キャパシタである場合、キャパシタ素子2は、流体であってよい電解質を含む。
【0023】
ベント部5が凹部6に埋設されているので、容器1の内側に面するベント部5の開口部は、ガスを放出し得るキャパシタ素子2からさらに離れており、この場合、気化する電解質からのガスによって析出物が形成され得る。凹部内にベント部を配置することによってベント部5の保護された位置が提供され、この結果、ベント部5は当該ベント部5を詰まらせる沈殿物から保護される。これにより、ベント部5が詰まって圧力解放が妨げられ、キャパシタの誤動作又は爆発に至るような、キャパシタの故障のリスクが軽減される。さらに、ベント部5が凹部6に埋設されているため、ベント部5によって通常占有される空間が解放され、容器1の内部においてキャパシタ素子2を拡大することができる。その結果、同じ体積を有するキャパシタに蓄積されるエネルギー密度を増加させることができ、又は同じエネルギー蓄積を有するキャパシタをよりコンパクトに構築することができる。
【0024】
ベント部5の目的は、蓄熱及び特にガス発生によって容器1の内部に蓄積された圧力の解放を可能にすることである。ベント部5は膜を使用することができ、当該膜は、例えば水素などのガスが拡散によって消失することを可能にする。キャパシタ内部の圧力は、特にベント部5が詰まっているとキャパシタの爆発につながる恐れがあるため、安全のために過圧ベント部やバルブを使用することがある。
【0025】
凹部6は、円筒形、円錐形、立方体形、楕円形、または用途に適した任意の他の三次元形状を有することができる。
【0026】
容器1は、指定された雰囲気の要件に適し、かつキャパシタ素子2の幾何学的形状に適した任意の三次元形状を有することができる。特にキャパシタが電解キャパシタの場合、容器1及び蓋4は、気密であるか又は少なくとも流体密である材料で製造することが好ましい。容器1は、金属、例えばアルミニウムや、炭素鋼、ステンレス鋼、工具鋼又は合金鋼としての鋼から製造することができる。他の適切な材料は、TPEs、HDPEs、PPs、PVCsまたはPTFEsのような合成ポリマーであり得る。キャパシタにおいて腐食または劣化の危険がある場合、材料はコーティング、めっき、または他の適切な防護処理で保護されてもよい。
【0027】
キャパシタ素子2はまた、任意の三次元形状を有することができ、それによって、キャパシタのエネルギー密度を最適化するために、容器1によって形成された容積を利用することが有益となり得る。キャパシタ素子2は、セラミック又はフィルムキャパシタとして非分極とすることができるし、又は分極されたものとすることができる。陽極にアルミニウム、タンタル、ニオブを用いた電解キャパシタ素子2、電解質にポリマーを用いた高分子キャパシタ素子2は、一般的な分極型のものである。本発明は固体電解質を有するキャパシタに使用することができるが、流体電解質はベント部5に容易に進入して当該ベント部5を詰まらし得るので、非固体電解質において最良の利点を有する。この場合、キャパシタ素子2は、流体電解質及び巻線を含むことができる。しかし、二重層キャパシタ又は擬似キャパシタとしてのスーパーキャパシタ素子2も、本発明に好適であり得る分極キャパシタ素子2である。特に、分極キャパシタ素子2は誤って設置された場合、短絡を起こしやすく、これにより、蓄熱を受けることが予想される。キャパシタ素子2は、多数のキャパシタ素子2から構成することができる。
【0028】
図2は、本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では、蓋の内面7における凹部6は上側段部6a及び下側段部6bという2つの段部を有しており、この場合、上側段部6aは下側段部6bよりもキャパシタ素子2からさらに離れて位置しており、ベント部5は上側段部6aに配置されている。この図では、ベント部5は、凹部6の上側段部6aに完全に埋設されている。これにより、キャパシタ素子2に対向するベント部5の開口部または端部は、蓋の内面7よりもキャパシタ素子2から離れて位置する。このような配置により、保護特性が強化され、ベント部5の目詰まり防止が向上する。ベント部5が容器1の内部に突出していないので、ベント部5を利用する従来のキャパシタに反して、容器1と蓋4とによって形成れた完全な空間をキャパシタ素子2のために使用することができる。
【0029】
加えて、蓋4は、蓋4の外面においてベント部5の周囲で隆起している。凹部6を形成するために体積が減少しているので、凹部6は当然に蓋4を弱化させる。蓋4の外面における隆起部9は付加的な構造体積を追加し、それによって蓋4の安定性を改善する。さらに、隆起部9によって、蓋4とベント部5との間により多くの接触面が提供される。これにより、ベント部5と蓋4との間の密着性が改善される。
【0030】
図3は、本発明によるキャパシタのさらなる実施形態の概略的な断面図を示す。この実施形態においても、2つの段部即ち上側段部6aおよび下側段部6bを有する凹部6が提供される。ここで、下側段部6bは、蓋の内面7に取り付けられた付加部分8の間におけるギャップによって形成されており、他方で、上側段部6aは蓋4内のキャビティとなっている。ベント部5は凹部6の上側段部6aに配置されているが、本実施の形態では凹部6の下側段部部6bに突出している。このようにして、容器1およびベント部5の下縁部によって形成され、キャパシタ素子2によって使用され得る利用可能な空間が、凹部6を有さない従来のキャパシタと比較して増大される。先の実施形態と同様に、
図2の実施形態でも蓋4の外面に隆起部9が設けられている。
【0031】
付加部分8は、非導電性材料、例えばTPEs、HDPEs、PPs、PVCs又はPTFEsのような合成ポリマーから作成することができる。付加部分8において腐食または劣化の危険がある場合、材料は、コーティング、めっき、または他の適切な防護処理で保護されてもよい。熱機械的応力を防止するために、蓋4と同じ材料を付加部分8に使用することが有利であり得る。
【0032】
凹部6の所望の形状に応じて、付加部分8は、穿孔された円板、半円、円のセグメント、長方形、または任意の他の適切な形状を有することができる。
【0033】
図4は、
図1に示した実施形態に類似する蓋4の拡大断面図を示すが、この実施形態では、蓋4は当該蓋4の外面においてベント部5の近傍で膨らんでおり、ベント部5は
図2および
図3と同様に凹部6内に埋設されている。本実施形態におけるベント部5は、より詳細に示されている。凹部6に埋設されたベント部5の一部は、下向き方向、すなわちキャパシタ素子に向かって径方向に拡大している。この拡大した部分は、通常、容器1内に突き出ている。この拡大した部分は、この実施形態では1つの段部だけで形成されている凹部6内に埋設されているので、ベント部5は容器1内に突出していない。蓋4の外面における隆起部9の隣に、キャパシタに接続されるねじ端子3の部分が図示されている。
【0034】
図5には、別の実施形態による蓋の内面7の斜視図が示されている。この実施形態は、
図3に示す実施形態と同様である。蓋の内面7には2つの半円形状の付加部分8が取り付けられている。これらの付加部分8の間のギャップは、長手方向に延びる溝部として凹部6の下側段部6bを形成する。このようにして、溝部は蓋の長さ全体にわたって延在しており、これにより、容器1の内側からベント部5を通じて外部へのガス放出が支援される。凹部6の上側段部6aは丸く、溝部における中心から外れて配置されている。付加部分8における直線側に小さなノッチ10が形成されており、これにより凹部6の円形状の上側段部6aのための空間が形成され、この場合円形状の上側段部6aは、凹部6における上側段部6aを形成する上記溝部よりも径が大きい。凹部6の下側段部6bの中央において、凹部6の上側段部6aにボルト11が接着されている。このボルト11は、キャパシタ素子2例えば電解キャパシタにおける巻線を固定するために設けられている。ボルト11の隣には、ねじ端子3の下端が付加部分8の各々の下面から出ている。
【0035】
図6a)から
図6f)には、蓋7の内面に関する多数の概略図が示されている。これらの全てにおいて、凹部6はベント部5を越えて延びており、これにより蓋4を通じたガス放出を支援している。これらの概略図における蓋4の形状は円形であるが、容器1に適合する任意の他の適切な形状であってよい。
図6a)の凹部6は円形であり、蓋4の中央に配置されている。ベント部5は、凹部6内に配置されている。中心から外れた2つの小さな円は、蓋4を通るねじ端子3の断面である。
【0036】
図6b)では、凹部6は細長い溝部として形成されており、当該溝部の中央にベント部5が収容されている。蓋4の長さ全体に亘って延びる細長い溝部として凹部6を形成することで、沈殿物をベント部5に導き、これにより圧力とガスの解放を支援することができる。従って、蓋の内面7に平行な凹部6の表面は、ベント部5に至る斜面を有することができる。
【0037】
溝部は、拡散経路を画定することができる。ガスは、容器1の内側からベント部5への拡散経路に沿って拡散され得る。拡散経路はベント部5の引き裂きを回避するのに役立ち、キャパシタの最大寿命を強化すると同時に最大静電容量を増加させる。
【0038】
図6c)では、凹部6は、十字形状を形成する2つの交差する溝部として形成されている。ベント部5は、蓋4の中央における両方の溝部の交差部分に配置される。また、凹部は多数の溝部が交差することによって形成されてもよい。
【0039】
図6d)は、中央で交差する3つの溝部を有する例を示す。この実施形態では、ベント部5は中心から外れて配置されている。
【0040】
図6e)では、2つの付加的な半円形状部が蓋4に取り付けられており、当該蓋4は、当該半円形状部の間に明確に保持されたギャップによって凹部6を形成する。ここでも、ベント部5は中央から外れて配置されており、溝部は蓋4の長さ全体に亘って延びている。
【0041】
図6f)でも、凹部6は、蓋4に取り付けられた付加部分8の間に明確に保持されたギャップによって形成されている。付加部分8は4分の1円弧であり、それによって十字形を有する凹部6を形成する。交差する溝部は蓋4の長さ全体に亘って延びており、これにより、容器1の内部で圧力が上昇した場合に粒子及びガスの放出を支援する。この例では、ベント部5は、蓋4及び十字の中央に配置されている。
【0042】
本発明は、上述の配置に限定されるものではなく、配置の組み合わせが可能であることに留意されたい。
【符号の説明】
【0043】
(1) 容器
(2) キャパシタ素子
(3) ねじ端子
(4) 蓋
(5) ベント部
(6) 凹部
(6a/b) 凹部の上側段部/下側段部
(7) 蓋の内面
(8) 付加部分
(9) 隆起部
(10) ノッチ
(11) ボルト