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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】回転数を制御する方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20240619BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G01M17/007 A
G05B11/36 505A
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021554625
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2020056521
(87)【国際公開番号】W WO2020182895
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】A50198/2019
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】オーリプ・ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】アブラー・ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ビーア・マクシミーリアーン
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-217598(JP,A)
【文献】特開昭62-217890(JP,A)
【文献】特開2010-271151(JP,A)
【文献】特開2009-284676(JP,A)
【文献】特表平05-500448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00- 17/10
G05B 11/36
H02P 1/00- 1/58
G01D 5/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転数基準量(n lead )及び回転数フィードバック量(n )を用いて械の回転数(n)を制御する方法であって、制御器(3)についての回転数基準量(nlead)が回転数目標値(nset)に基づいて生成される前記方法において、
回転角度実際値(φact)と、回転数目標値(nset)に基づき算出される回転角度目標値(φset)とを考慮して、適応された回転数目標値(nadap)が算出され、回転数基準量(nlead)が、回転数目標値(nset)と適応された回転数目標値(nadap)の間で回転数に依存して切り換えられることを特徴とする方法。
【請求項2】
機械として試験台の負荷機械(2)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
切換が、移行段階(t)を有する切換特性曲線(11)に従って行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
切換が、傾斜路状の移行段階(t)を有する切換特性曲線(11)に従って行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
行段階(t)において、回転数基準量(nlead)が、回転数目標値(nset)と適応された回転数目標値(nadap)の線形結合に相当することを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
適応された回転数目標値(nadap)が回転角度目標値(φset)からの回転角度実際値(φact)の差異に基づいて算出されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
回転角度目標値(φset)が、回転数目標値(nset)に基づき積分された値及び標準化された値として算出されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
回転角度実際値(φact)が、回転角度原信号(φraw)に基づきスケーリングされた値及び標準化された値として算出されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
制御の回転数フィードバック量(n)が、一般回転数測定値(nsr)と高分解能回転数測定値(nhr)の間で回転数に依存して切り換えられることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
切換が、移行段階(t’)を有する切換特性曲線(11’)に従って行われることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
切換が、傾斜路状の移行段階(t’)を有する切換特性曲線(11’)に従って行われることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
行段階(t’)において、回転数フィードバック量(n)が、一般回転数測定値(nsr)と高分解能回転数測定値(nhr)の線形結合に相当することを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
回転数基準量(n lead )及び回転数フィードバック量(n )を用いて械の回転数(n)を制御する制御装置(1)において、
制御装置(1)が、回転数目標値(nset)に基づき回転角度目標値(φset)を算出する積分要素(6)と、回転角度実際値(φact)及び回転角度目標値(φset)を考慮して、適応された回転数目標値(nadap)を算出する適応要素(5)と、回転数基準量(nlead)を回転数目標値(nset)と適応された回転数目標値(nadap)の間で回転数に依存して切り換える目標値切換要素(4)とを備えていることを特徴とする制御装置。
【請求項14】
機械が試験台の負荷機械(2)であることを特徴とする請求項13に記載の制御装置(1)。
【請求項15】
行段階(t)を有する切換特性曲線(11)に従って切換過程を行うように目標値切換要素(4)が形成されてることを特徴とする請求項13又は14に記載の制御装置(1)。
【請求項16】
傾斜路状の移行段階(t)を有する切換特性曲線(11)に従って切換過程を行うように目標値切換要素(4)が形成されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の制御装置(1)。
【請求項17】
移行段階において、回転数基準量(n lead )が、回転数目標値(n set )と適応された回転数目標値(n adap )の線形結合として算出されることを特徴とする請求項15又は16に記載の制御装置(1)。
【請求項18】
制御装置(1)が、回転角度目標値(φset)からの回転角度実際値(φact)の差異に基づいて適応された回転数目標値(nadap)を算出する適応要素(5)を備えていることを特徴とする請求項13~17のいずれか1項に記載の制御装置(1)。
【請求項19】
制御装置(1)が、回転角度目標値(φset)を回転数目標値(nset)に基づき積分された値及び標準化された値として算出する積分要素(6)を備えていることを特徴とする請求項1318のいずれか1項に記載の制御装置(1)。
【請求項20】
制御装置(1)が、回転角度実際値(φact)を回転角度原信号(φraw)に基づきスケーリングされた値及び標準化された値として算出する角度信号処理要素(7)を備えていることを特徴とする請求項1319のいずれか1項に記載の制御装置(1)。
【請求項21】
制御装置(1)が、制御の回転数フィードバック量(n)を一般回転数測定値(nsr)と高分解能回転数測定値(nhr)の間で回転数に依存して切り換える実際値切換要素(8)を備えていることを特徴とする請求項1320のいずれか1項に記載の制御装置(1)。
【請求項22】
行段階(t’)を有する切換特性曲線(11’)に従って切換過程を行うように実際値切換要素(8)が形成されてることを特徴とする請求項21に記載の制御装置。
【請求項23】
傾斜路状の移行段階(t’)を有する切換特性曲線(11’)に従って切換過程を行うように実際値切換要素(8)が形成されていることを特徴とする請求項21に記載の制御装置。
【請求項24】
移行段階(t’)において、回転数フィードバック量(n )が、一般回転数測定値(n sr )と高分解能回転数測定値(n hr )の線形結合として算出されることを特徴とする請求項22又は23に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械、特に試験台の負荷機械の回転数を制御する方法であって、制御器についての回転数基準量が回転数目標値に基づいて生成される前記方法に関するものである。さらに、本発明は、機械、特に試験台の負荷機械の回転数を制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古典的な回転数センサ(特にインクリメンタルエンコーダ)においては、これらが通常は試験台における電気的な負荷機械において用いられるように、測定範囲は、ゼロ回転/分近傍で、及びちょうどゼロ回転/分において基本的に十分にカバーされていない。このとき、所定の最小回転数以下では、絶対値とインクリメンタル信号の間の回転数に依存する差異は、もはや容易に無視することができない。低い分解能の回転数信号は、結果的に制御における問題につながってしまう。必要な制御クオリティを得ることができない。低い回転数での回転数制御の当該問題は、とりわけ試験が静止状態から、又は非常に低い回転数において実行されるべき場合に自動車の試験台において生じる。当該問題は、負荷機械が車輪レベルに介入するパワートレイン試験台によっても知られている。電動化された構成要素(例えば電気モータ又はハイブリッド駆動部)が多く実装されてきて以来、エンジン試験台においても問題がますます増えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
具体的な本発明は、ゼロ近傍の回転数においても、又は静止状態からの、若しくは静止状態への制御過程においても、機械の性能に関して機械の回転数の制御を改善することという課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、当該課題及び更なる課題は、冒頭に挙げた種類の方法によって解決され、回転角度実際値と、回転数目標値に基づき算出される回転数目標値とを考慮して、適応された回転数目標値が算出され、回転数基準量が、回転数目標値と適応された回転数目標値の間で回転数に依存して切り換えられる。これにより、低い回転数において、制御される機械が時間とともにどのように理想的な(角度)位置に従うかに依存して、制御のための回転数目標値を適合させることが可能である。より高い回転数の場合には、例えば回転数センサが十分に大きな分解能を備えていれば、制御部は、従来の制御方法へ切り換える。低い回転数における位置信号(すなわち角度信号)の使用は、ゼロ回転/分の回転数目標値において、回転数が角度の絶対値との関連により変動することがないという利点も有している。切換がなされる回転数は、制御部が適応された回転数目標値なしでも既に十分良好に機能するほど高く選択される。当該範囲では、回転角度目標値からの回転角度実際値の差異がもはや想定されないため、切換時に回転数基準量の跳躍的な(急激な)変化が想定されていない。
【0005】
有利には、切換は、好ましくは傾斜路状の移行段階を有する切換特性曲線に従って行われることができ、移行段階において、回転数基準量が、特に回転数目標値と適応された回転数目標値の線形結合に相当する。これにより達成される制御の傾斜路状の移行は、制御安定性の理由から有利であり、トルク脈動の発生が防止される。
【0006】
有利な一実施形態では、適応された回転数目標値を、回転角度目標値からの回転角度実際値の差異に基づいて算出することが可能である。このことは、単純な加算要素によって、対応する信号処理に関連して実現されることが可能である。
【0007】
有利には、回転角度目標値は、回転数目標値に基づき、積分された、及び標準化された値として算出されることが可能である。
【0008】
有利な別の一実施形態によれば、回転角度実際値は、回転角度原信号に基づき、スケーリングされた、及び標準化された値として算出されることが可能である。これにより、回転角度目標値及び回転角度実際値を互いに容易に関連させることが可能である。
【0009】
有利な一実施形態では、本発明により、制御の回転数フィードバック量を一般回転数測定値と高分解能回転数測定値の間で回転数に依存して切り換えることが可能である。当該特徴により、制御精度を更に向上させることが可能である。なぜなら、低い回転数の範囲では高分解能回転数測定値が用いられるためである。
【0010】
有利には、切換は、好ましくは傾斜路状の移行段階を有する切換特性曲線に従って行われることができ、移行段階において、回転数フィードバンク量が、特に一般回転数測定値と高分解能回転数測定値の線形結合に相当する。このことは、同様に制御安定性及びトルク脈動の防止に寄与する。
【0011】
さらに、本発明の課題は、冒頭に挙げた種類の制御装置によって解決され、制御装置は、回転数目標値に基づき回転角度目標値を算出する積分要素と、回転角度実際値及び回転数目標値を考慮して、適応された回転数目標値を算出する適応要素と、回転数基準量を回転数目標値と適応された回転数目標値の間で回転数に依存して切り換える目標値切換要素とを備えている。当該制御装置により、上記方法の有利な実施が可能である。
【0012】
有利には、好ましくは傾斜路状の移行段階を有する切換特性曲線に従って切換過程を行うように目標値切換要素が形成されており、移行段階において、回転数基準量が、特に回転数目標値と適応された回転数目標値の線形結合として算出される。
【0013】
有利な一実施形態では、制御装置が適応要素を備えることができ、当該適応要素は、適応された回転数目標値を、回転角度目標値からの回転角度実際値の差異に基づいて算出する。
【0014】
別の好ましい一実施形態では、制御装置が積分要素を備えることができ、当該積分要素は、回転角度目標値を、回転数目標値に基づき、積分された、及び標準化された値として算出する。
【0015】
別の好ましい一実施形態によれば、制御装置は、角度信号処理要素を備えることができ、当該角度信号処理要素は、回転角度実際値を、回転角度原信号に基づき、スケーリングされた、及び標準化された値として算出する。
【0016】
好ましくは、制御装置は実際値切換要素を備えることができ、当該実際値切換要素は、制御の回転数フィードバック量を一般回転数測定値と高分解能回転数測定値の間で回転数に依存して切り換える。
【0017】
本発明による別の好ましい一実施形態では、好ましくは傾斜路状の移行段階を有する切換特性曲線に従って切換過程を行うように実際値切換要素が形成されており、移行段階において、回転数フィードバック量が、特に一般回転数測定値と高分解能回転数測定値の線形結合として算出される。
【0018】
以下に、具体的な本発明を、例示的、概略的、かつ、制限せずに本発明の有利な形態を示す図1図2を参照しつつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態による制御装置を概略的に示す図である。
図2】好ましい一実施形態による制御部の目標値切換要素のブロック図である。
図3】制御部の一部を詳細に示すブロック図である。
図4】本発明による制御部の別の一形態による実際値切換要素のブロック図である。
図5】第2の実施形態による制御装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、試験台の負荷機械2の制御部が示されており、負荷機械2は、シャフトを介して被試験物(不図示)に結合されている。負荷機械におけるシャフトが回転する回転数nは制御量である。回転数nは、センサ装置9を介して測定されるとともに、回転数フィードバック量nとして制御器3へフィードバックされる。制御器3では、回転数基準量nleadからの回転数フィードバック量nの偏差が算出されるとともに制御偏差として制御要素10へ供給され、当該制御要素は、所定の制御ストラテジに従って負荷機械2についての制御量(制御変数)を生成する。
【0021】
「通常の」動作中、すなわちある程度の最小回転数nmin以上では、回転数基準量nleadが従来の態様において回転数目標値nsetに対応し、当該回転数目標値は、例えばシステム制御又はシミュレーションによって生成される。
【0022】
回転数nが低い場合、特に停止状態からの加速時及び停止状態への減速時には、試験台における負荷機械についての公知の制御方法では、制御クオリティについて損失に至る。したがって、制御クオリティを改善するために、本発明によれば、回転数nが最小回転数nminを下回る場合に、制御器3の前方にある目標値切換要素4によって、回転数基準量nleadが適応された回転数目標値nadapへ切り換えられる。図示の場合には、回転数目標値nsetに基づき最小回転数nminとの比較が行われるが、比較は、例えば回転数フィードバック量nにおいて行われることも可能である。適応された回転数目標値nadapは、緩慢な回転数範囲において、高く安定した制御クオリティに寄与するものである。このとき、低い回転数の臨界的な範囲が完全に含まれるように、及びできる限り非臨界的な回転数範囲において切換が行われるように、最小回転数nminが選択される。
【0023】
適応された回転数目標値nadapは、回転角度評価に基づき適応要素5によって形成され、回転数目標次nsetに基づき積分要素6によって算出される回転角度目標値φsetが、センサ装置9(又は対応する他の測定装置)に基づき算出される回転角度実際値φactと比較される。回転数基準量nleadは、低い回転数範囲において、当該適応された回転数目標値nadapを用いて、負荷機械2が時間とともにどのようにその理想的な(角度)位置に従うかに依存して適合される。図示の場合では、回転角度実際値φactは、センサ装置9によって測定される回転角度原信号φrawに基づいて算出され、角度信号処理要素7が、角度信号原信号φrawに基づき、回転角度目標値φsetに適合する形態で回転角度実際値φactを生成する。
【0024】
位置信号(すなわち角度信号)を用いることは、低い回転数nの場合の測定される回転信号(すなわち回転数フィードバック量nに基づく信号)の低すぎる分解能の問題を回避するとともに、回転数目標値=0回転/分の場合に、回転数が角度の絶対値との関連によって変動することがないという利点も有している。
【0025】
図2には、目標値切換要素4の代替的な実施形態が示されている。このとき、回転数基準量nleadの切換は、傾斜路状の移行段階tを含む切換特性曲線11に従って、回転数目標値nsetと適応された回転数目標値nadapの間でなされる。ここでも、最小回転数nminが(正の回転方向nmin についても、また負の回転方向nmin についても)規定されている。絶対値が最小回転数nmin以上である回転数nでは、目標値切換要素4は、同様に回転数目標値nsetを回転数基準量nleadとして用いる。回転数の絶対値が最小回転数nminを下回ると、目標切換要素4は、移行段階t内で、回転数目標値nsetと適応された回転数目標値nadapの線形結合として回転数基準量nleadを生成する。回転数の絶対値が移行段階を下回っていれば、適応された回転数目標値nadapは、回転数基準量nleadとして用いられる。
【0026】
図3には、図1に図示された制御部の一部の有利な一実施形態が示されており、積分要素6、角度信号処理要素7及び適応要素5がより詳細に図示されている。適応された回転数目標値nadapの生成を、この具体的な実施例に基づき、図3を参照しつつ説明する。
【0027】
積分要素6は、回転数目標値nsetに基づいて、積分された、0~360°の角度範囲へ標準化された値として回転角度目標値φsetを生成する。回転角度実際値φactを当該値と比較することができるように、回転角度原信号φrawが角度信号処理要素7においてスケーリングされ(スケーリング要素)、標準化要素13においても同様に0~360°の角度範囲へ標準化される。
【0028】
適応要素5では、回転角度目標値φset及び回転角度実際値φactに基づいて回転角度差φdeltaが形成される。回転角度差φdeltaは、第2の標準化要素14において-180°~+180°の角度範囲へ標準化され、増幅要素15において増幅される。適応された回転数目標値nadapを得るために、信号は、更に勾配補正部16へもたらされ、値制限部17において制限される。
【0029】
図4には、本発明の代替的な一実施形態による実際値切換要素8の詳細が図示されている。図4に図示された実際値切換要素8は、上述の制御に加えて、又は場合によっては「単独で」、すなわち従来の制御と関連して用いられることが可能である。実際値切換要素8の機能は、通常用いられる低分解能の測定システムからの測定信号の問題を回避する高分解能の信号を、低い回転数において回転数フィードバック量nとして用いるという着想に基づいている。それにもかかわらず、当該低分解能の測定システムをより大きな回転数範囲において提供する利点を引き続き利用可能であるべきである。
【0030】
実際値切換要素8は、それぞれ1つの測定装置、例えばセンサ装置9からの2つの入力値と、制御部における回転数フィードバック量nとしてフィードバックされる1つの出力値とを有している。第1の入力値は、例えば、例えばエンコーダの従来の回転数測定装置からの一般回転数測定値nsrである。一般回転数測定値nsrは、例えば512の分割マーク数及び「1エッジ評価」の検出タイプを有するエンコーダからのものであり得る。低い回転数の場合には、個々の測定点間の時間的な間隔は、当然ますます大きくなるとともに、制御クオリティに関して最終的に問題となり得る。例えば、1回転/分の回転数(これは6°/秒で増減する角度に対応する)では、このようなエンコーダは、1秒当たり9インパルスより小さいものしか生成しない。したがって、回転数の絶対値が最長回転数n’min以下であれば、実際値切換要素8は、一般回転数測定値nsrから、高分解能の測定センサからの高分解能回転数測定値nhrへ切り換える。これは、実際値切換要素8の第2の入力値である。
【0031】
高分解能回転数測定値nhrは、例えば、0回転/分の回転数において高分解能の信号、例えば100kHz以上の周波数を有する信号を提供する回転数測定システムによって得ることができる。このような高分解能の回転数測定システムには、例えば、それぞれBaumer-Huebner社により提供される信号スプリッタHEAG-158又はHMCP16Aと接続されるロータリエンコーダHMCR16が含まれる。このようなセンサは、非常に低い回転数においても正確な測定値を生成するという利点を有しているものの、ある最大回転数以上ではもはや使用可能でない。なぜなら、値が不正確となるためである。高分解能回転数測定値nhrと一般回転数測定値nsrの間の切換は、両センサの信頼性をもった動作範囲が重なり合う回転数範囲において行われるため、最小回転数n’minでの切換時には、両値、すなわち一般回転数測定値nsr及び高分解能回転数測定値nhrが一致する。これにより、切換時の回転数フィードバック量nの値跳躍(値の急変)が回避される。加えて、目標値切換要素4に関連して説明したように、切換過程を傾斜路状の移行段階t’をもって行うことができ、当該移行段階では、回転数フィードバック量nについての値が、高分解能回転数測定値nhrと一般回転数測定値nsrに基づく線形結合として生成される。
【0032】
実際値切換要素8によって用いられる最小回転数n’minは、目標値切換要素4によって用いられる最小回転数nminと一致し得る(これら両成分が1つの制御部において共通に用いられる場合)ものの、当該値は異なっていてもよい。各図の図示では、正の最小回転数nmin あるいはn’min 及び負の最小回転数nmin あるいはn’min についても、それぞれ同一の絶対値が用いられる。しかしながら、このことは必須の前提ではなく、これら値も互いに異なっていてよい。各図において図示された傾斜路状の移行部は、容易な実現可能性に基づき好ましい実施形態となっているが、有利であれば例えば段階状の切換又は不連続点を有さない曲線状の切換のために、他の種類の移行部あるいは切換特性曲線を用いることも可能であることは明らかである。
【0033】
図5には、上述の全ての態様が共通に実装されている制御装置1が示されている。ここで、センサ装置9は、複数のセンサを含んでいるとともに、一般回転数測定値nsr、高分解能回転数測定値nhr及び回転角度原信号φrawを実際値切換要素8あるいは角度信号処理要素7へ提供するために、これら値を生成する。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.機械、特に試験台の負荷機械(2)の回転数(n)を制御する方法であって、制御器(3)についての回転数基準量(n lead )が回転数目標値(n set )に基づいて生成される前記方法において、
回転角度実際値(φ act )と、回転数目標値(n set )に基づき算出される回転数目標値(φ set )とを考慮して、適応された回転数目標値(n adap )が算出され、回転数基準量(n lead )が、回転数目標値(n set )と適応された回転数目標値(n adap )の間で回転数に依存して切り換えられることを特徴とする方法。
2.切換が、好ましくは傾斜路状の移行段階(t)を有する切換特性曲線(11)に従って行われ、移行段階(t)において、回転数基準量(n lead )が、特に回転数目標値(n set )と適応された回転数目標値(n adap )の線形結合に相当することを特徴とする上記1.に記載の方法。
3.適応された回転数目標値(n adap )が回転角度目標値(φ set )からの回転角度実際値(φ act )の差異に基づいて算出されることを特徴とする上記1.又は2.に記載の方法。
4.回転角度目標値(φ set )が、回転数目標値(n set )に基づき積分された値及び標準化された値として算出されることを特徴とする上記1.又は2.に記載の方法。
5.回転角度実際値(φ act )が、回転角度原信号(φ raw )に基づきスケーリングされた値及び標準化された値として算出されることを特徴とする上記1.~4.のいずれか1つに記載の方法。
6.制御の回転数フィードバック量(n )が、一般回転数測定値(n sr )と高分解能回転数測定値(n hr )の間で回転数に依存して切り換えられることを特徴とする上記1.~5.のいずれか1つに記載の方法。
7.切換が、好ましくは傾斜路状の移行段階(t’)を有する切換特性曲線(11’)に従って行われ、移行段階(t’)において、回転数フィードバック量(n )が、特に一般回転数測定値(n sr )と高分解能回転数測定値(n hr )の線形結合に相当することを特徴とする上記6.に記載の方法。
8.機械、特に試験台の負荷機械(2)の回転数(n)を制御する制御装置(1)において、
制御装置(1)が、回転数目標値(n set )に基づき回転角度目標値(φ set )を算出する積分要素(6)と、回転角度実際値(φ act )及び回転数目標値(φ set )を考慮して、適応された回転数目標値(n adap )を算出する適応要素(5)と、回転数基準量(n lead )を回転数目標値(n set )と適応された回転数目標値(n adap )の間で回転数に依存して切り換える目標値切換要素(4)とを備えていることを特徴とする制御装置。
9.好ましくは傾斜路状の移行段階(t)を有する切換特性曲線(11)に従って切換過程を行うように目標値切換要素(4)が形成されており、移行段階において、回転数基準量(n lead )が、特に回転数目標値(n set )と適応された回転数目標値(n adap )の線形結合として算出されることを特徴とする上記8.に記載の制御装置(1)。
10.制御装置(1)が、回転角度目標値(φ set )からの回転角度実際値(φ act )の差異に基づいて適応された回転数目標値(n adap )を算出する適応要素(5)を備えていることを特徴とする上記8.又は9.に記載の制御装置(1)。
11.制御装置(1)が、回転角度目標値(φ set )を回転数目標値(n set )に基づき積分された値及び標準化された値として算出する積分要素(6)を備えていることを特徴とする上記8.~10.のいずれか1つに記載の制御装置(1)。
12.制御装置(1)が、回転角度実際値(φ act )を回転角度原信号(φ raw )に基づきスケーリングされた値及び標準化された値として算出する角度信号処理要素(7)を備えていることを特徴とする上記8.~11.のいずれか1つに記載の制御装置(1)。
13.制御装置(1)が、制御の回転数フィードバック量(n )を一般回転数測定値(n sr )と高分解能回転数測定値(n hr )の間で回転数に依存して切り換える実際値切換要素(8)を備えていることを特徴とする上記8.~12.のいずれか1つに記載の制御装置(1)。
14.好ましくは傾斜路状の移行段階(t’)を有する切換特性曲線(11’)に従って切換過程を行うように実際値切換要素(8)が形成されており、移行段階において、回転数フィードバック量(n )が、特に一般回転数測定値(n sr )と高分解能回転数測定値(n hr )の線形結合として算出されることを特徴とする上記13.に記載の制御装置。
【符号の説明】
【0034】
n 回転数
set 回転数目標値
lead 回転数基準量
adap 適応された回転数目標値
回転数フィードバック量
sr 一般回転数測定値
hr 高分解能回転数測定値
min 最小回転数
φact 回転角度実際値
φset 回転角度目標値
φraw 回転角度原信号
φdelta 回転角度差
1 制御装置
2 負荷機械
3 制御器
4 目標値切換要素
5 適応要素
6 積分要素
7 角度信号処理要素
8 実際値切換要素
9 センサ装置
10 制御要素
11,11’ 切換特性曲線
12 スケーリング要素
13 標準化要素
14 第2の標準化要素
15 増幅要素
16 勾配補正部
17 値制限部
t,t’ 移行段階
図1
図2
図3
図4
図5