(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】Liイオン電池用電極配合物及び短い滞留時間での押出による電極作製方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240619BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240619BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240619BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240619BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240619BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240619BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240619BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240619BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240619BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240619BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/485
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2021557815
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 FR2020050518
(87)【国際公開番号】W WO2020201650
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-16
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルゼンコ,オレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】バンサンドー,クリストフ
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-504846(JP,A)
【文献】特表2013-522439(JP,A)
【文献】特表2015-504577(JP,A)
【文献】特開2018-101472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01M 4/62
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/58
H01M 4/48
H01M 4/587
H01M 4/38
H01M 4/485
H01M 4/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Liイオン電池の電極の連続的製造のための方法であって、前記方法は以下の段階を含む方法。
- 固体状態における電極の全ての成分、90%~98%の電極活物質、0.5%~3%のフルオロポリマーバインダー、0.05%~3%のカーボンナノチューブ、0.25%~3%の、カーボンナノチューブとは異なる炭素をベースとする少なくとも1種の導電性充填剤、及び
0.25%~1%の分散剤であり、全成分の合計が100%である成分、及び溶媒を押出機の計量装置に導入する段階、
- 65%~95%の固体混合物、及び5%~35%の溶媒を含む電極配合物を得るために、配合により混合する段階、
- ブルックフィールド粘度が1500~20000cPの間のペーストの形態の電極材料を得るために、5分未満の時間の間前記配合物を押し出す段階、
- Liイオン電池の電極を得るために、金属支持体に前記電極材料を塗布する段階、及び
- 前記電極材料をカレンダー加工する段階。
【請求項2】
前記電極材料を得るために配合物を押し出す段階の時間は、30秒~3分の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電極配合物が、10%~30%の溶媒に対して70%~90%の固体混合物を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体混合物が、
- 92%~97%の電極活物質、
- 1%~2%のフルオロポリマーバインダー、
- 0.15%~2%のカーボンナノチューブ、
- 1%~3%の、カーボンナノチューブとは異なる炭素をベースとする少なくとも1種の導電性充填剤、
- 0.25%~1%の分散剤
を含み、全成分の合計は100%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、水、又はN-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ケトン、酢酸塩、フラン、炭酸アルキル、アルコール及びそれらの混合物から選択される有機溶媒である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記電極活物質が、以下からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
i) LiM
2O
4型のスピネル構造を有する遷移金属酸化物であって、Mは、Mn、Fe、Co及びNiによって形成される基から選択される金属原子の少なくとも1つを含む金属原子を表し、前記酸化物は少なくとも1つのMn及び/又はNi原子を含む遷移金属酸化物、
ii) LiMO
2型のラメラ構造を有する遷移金属酸化物であって、MはMn、Fe、Co及びNiによって形成される群から選択される金属原子の少なくとも1つを含む金属原子を表す、遷移金属酸化物、
iii) LiM
y(XO
z)
n型のポリアニオン骨格を有する酸化物であって、Mは、Mn、Fe及びCoによって形成される群から選択される金属原子の少なくとも1つを含む金属原子を表し、Xは、P、Si、Ge、S及びAsによって形成される群から選択される原子の1つを表す酸化物、
iv) バナジウムをベースとする酸化物、
v) グラファイト、
vi) グラフェン、
vii) カーボンナノチューブ、
viii) ケイ素又は炭素とのその複合体、
ix) チタン酸塩。
【請求項7】
前記ポリマーバインダーが、以下の方法で記載されるフルオロポリマーからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
(i) 式(I)の少なくとも1種のモノマーを少なくとも50モル%含むもの、
CFX
1=CX
2X
3 (I)
[式中、X
1、X
2及びX
3は独立して水素又はハロゲン原
子を表
す。]、
(ii) 式(II)の少なくとも1種のモノマーを少なくとも50モル%含むもの。
R-O-CH=CH
2 (II)
[式中、Rは過ハロゲン
化アルキル基を示
す。]
【請求項8】
前記バインダーが、PVDFである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バインダーが、フッ化ビニリデン(VDF)ホモポリマー又はVDFと少なくとも1種の他のコモノマーのコポリマーであって、VDFが少なくとも50モル%に相当し、VDFと重合できるコモノマーが、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル
、ペルフルオロ(1,3-ジオキソール)、ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)、式CF
2=CFOCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2Xの生成物(Xは、SO
2F、CO
2H、CH
2OH、CH
2OCN又はCH
2OPO
3Hである)、式CF
2=CFOCF
2CF
2SO
2Fの生成物、式F(CF
2)
nCH
2OCF=CF
2の生成物(nは1、2、3、4又は5である)、式R1CH
2OCF=CF
2の生成物(R1は、水素又はF(CF
2)
zであり、zは1、2、3又は4の値を有する)、式R3OCF=CH
2の生成物(R3は、F(CF
2)
zであり、zは1、2、3又は4の値を有する)、又はペルフルオロブチルエチレン(PFBE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、3,3,3-トリフルオロプロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234yf、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234zeE、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234zeZ、1,1,2,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234yc、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234ye、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234zc及びクロロテトラフルオロプロペン又はHCFO-1224から選択されるコポリマーから選択されるポリフッ化ビニリデンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブが、200μm~3mmの間のサイズを有する固体強凝集体の形態であり、単層型、二層型又は多層型のナノチューブから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
カーボンナノチューブ以外の炭素をベースとする前記導電性充填剤が、カーボンナノファイバー、グラフェン及びカーボンブラックから選択される少なくとも1種の充填剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー分散剤が、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(フェニルアセチレン)、ポリ(メタ-フェニレンビニリデン)、ポリピロール、ポリ(パラ-フェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリ(ビニルアルコール)及びそれらの混合物から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
アノード、カソード及び電解質を含むLiイオン蓄電池であって、カソードが請求項1~12のいずれか一項に記載の方法により得られる、Liイオン蓄電池。
【請求項14】
アノード、カソード及び電解質を含むLiイオン蓄電池であって、アノードが請求項1~12のいずれか一項に記載の方法により得られる、Liイオン蓄電池。
【請求項15】
アノード、カソード及び電解質を含むLiイオン蓄電池であって、アノード及びカソードが請求項1~12のいずれか一項に記載の方法により得られる、Liイオン蓄電池。
【請求項16】
65%~95%の固体混合物及び5%~35%の溶媒を含むLiイオン電池の完全電極配合物であって、前記固体混合物が請求項4及び6~12のいずれか一項に記載され、前記溶媒が請求項5に記載された、Liイオン電池の完全電極配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、Liイオン型の再充電可能な蓄電池における電気エネルギー保存の分野に関する。より具体的には、本発明は、Liイオン電池用電極配合物に関する。本発明はまた、短い滞留時間を含む配合/押出によって、前記配合物を使用する電極の製造方法に関する。本発明は、最終的に、この方法によって得られる電極、及び少なくとも1つのそのような電極を含むLiイオン蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
Liイオン電池は、銅集電体に結合された少なくとも1つの負極又はアノード、アルミニウム集電帯に結合された正極又はカソード、セパレータ及び電解質を含む。電解質は、イオンの輸送及び解離を最適化するために選択される有機炭酸塩の混合物である溶媒と混合されたリチウム塩、一般にヘキサフルオロリン酸リチウムからなる。高い誘電率がイオンの解離、したがってある体積で利用できるイオンの数に有利である一方、低い粘度は、他のパラメーターの中でも、電気化学系の充放電の速度において重要な役割を果たすイオン拡散に有利である。
【0003】
それらの部分について、電極は、一般に、リチウムに関して電気化学活性を示すゆえに活性であると言われる材料、バインダーとして作用するポリマー、及び一般にカーボンブラック又はアセチレンブラックである1種以上の導電性添加剤、及び任意に界面活性剤からなる複合材料がその上に堆積される少なくとも1つの集電体を含む。
【0004】
充電中、リチウムは負極の活物質に挿入され、その濃度は正極からの等量の活物質のデインターカレーションにより溶媒中で一定に保たれる。負極への挿入は、リチウムの還元をもたらし、このため外部回路により、電子をこの電極へ与えることが必要であり、これは正極に由来する。放電時には、逆の反応が起こる。
【0005】
カーボンブラック又はアセチレンブラックをカーボンナノチューブ(CNT)によって置換する、又はそのような導電性添加剤にCNTを添加するという事実が、多くの利点、すなわち、導電率の上昇、活物質の粒子周囲でのより良好な取込み、良好な固有の機械的特性、電極の本体内及び金属集電体と活物質との間でより良好に連結された電気ネットワークを形成する能力、電極複合材料中のサイクリング能力の良好な維持を示すことなどが知られている。
【0006】
電極を構成する材料の配合物にCNTを導入することは困難を呈する。したがって、CNTの分散を液体配合物中(特に有機溶媒の基剤中)で直接行う場合、混合物がポリマー又は安定化剤を含有しないときには、分散物が強く粘性化し、そのような分散物の安定性が低い。この欠点を克服するために、ビーズミキサー、ミル及び高剪断ミキサーに頼らなければならない。
【0007】
これらの問題を克服するために、出願人企業は、文献WO2011/117530号において、15重量%~40重量%のCNT、少なくとも1種の溶媒及び1重量%~40重量%の少なくとも1種のポリマーバインダーを含む弱凝集固体の形態のマスターバッチを提供した。さらに、文献EP2081244号には、活性電極物質の層に噴霧されることを意図した、CNT、溶媒、及びバインダーをベースとする液体分散物について記載されている。
【0008】
これらの解決策は、これらの組成物中のCNT強凝集体の持続を避けることが必ずしも可能でなく、これらの組成物から得られる電極の導電率を改善するようにCNTの一部を最適に使用しないため、まだ不完全である。
【0009】
さらに、文献US2011/171364号には、ポリ(ビニルピロリドン)又はPVPなどの分散剤と水性又は有機溶媒、任意にバインダーと混合されるCNT弱凝集体をベースとするペーストが記載されている。このペーストの製造方法は、約100μmという平均直径を有するCNTの絡んだ塊を粉砕する(又は超音波にかける)段階を含む。この段階により、少なくとも1つの寸法において10μm未満のサイズ、すなわち、ヘグマンスケールで分散度が7を超えるCNT弱凝集体を得ることが可能になる。粉砕は、CNTを分散剤、溶媒及び任意のバインダーと混合する前又は後に行うことができる。
【0010】
この文献に示された解決策は、環境汚染のリスク、実際には健康リスクさえも示しがちな粉砕段階、好ましくは微粉化による粉砕段階を含む製造方法を使用するという欠点を示す。また、得られたペーストは少なくとも5000cPsの粘度を有し、これは場合によっては分散を困難にする可能性がある。
【0011】
文献US2011/0171371号は、カーボンナノチューブをベースとする組成物を含む、Liイオン電池の電極の製造について記載している。バインダー含有率が低い組成物中でカーボンナノチューブの分散を容易にするために、特にジェットミルを用いてCNT弱凝集体のサイズを低下させる。
【0012】
別の解決策は、炭素をベースとする導電性充填剤、溶媒及びバインダーを含む組成物を調製するための混練装置の使用、及びこの組成物におけるPVPなどの分散剤の使用について記載する文献EP2780401号において、出願人により提供された。この方法は、特に電極の製造に適した溶媒及びバインダーを含む媒体中に分散させることにより、炭素をベースとする導電性充填剤を粉砕(特にビーズミル又は微粉化)、超音波にかける、又はロータ-ステータシステムに通す段階に頼ることなく、及び界面活性剤を使用することなく、炭素をベースとする導電性充填剤を液相での用途のために容易に取り扱えるようにすることを可能にする。
【0013】
しかし、この方法は電池の電極の製造にいくつかの段階を要するという欠点を示す。これは、各成分をミキサー又は遊星ミキサーによって事前に調製しなければならないためであり、これは8GWhの生産ラインに最大24ラインのミキサーを使用することを意味する。実際、電極の製造方法の最適化は、Liイオン電池の製造業者にとって依然として優先事項である。
【0014】
したがって、従来の変換段階を必要とせずに、簡略化された実施に適したLiイオン電池の電極の配合物を提供する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第2011/117530号
【文献】欧州特許出願公開第2081244号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/171364号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0171371号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2780401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、先行技術の欠点の少なくとも1つを克服すること、すなわち、押出機の計量装置に直接導入される完全な電極配合物を提供することが本発明の目的である。
【0017】
また、本発明は、滞留時間が非常に短く、完全な電極配合物から始まる単一の押出段階を含むLiイオン電池の電極の製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
本発明はまた、この方法によって製造された電極を目的とする。最後に、本発明は、少なくとも1つのそのような電極を含む、再充電可能なLiイオン蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、第一に、Liイオン電池の電極の連続的製造のための方法に関し、該方法は以下の段階を含む。
- 固体状態の電極の全ての成分及びまた溶媒を押出機の計量装置に導入する段階、
- 完全な電極配合物を得るために配合により混合する段階、
- ブルックフィールド粘度が1500~20000cPの間のペーストの形態の電極材料を得るために、5分間未満、好ましくは30秒~3分の時間の間該配合物を押し出す段階、
- Liイオン電池の電極を得るために金属支持体に該電極材料を塗布する段階、及び
- 該電極材料を乾燥させ、それをカレンダー加工する段階。
【0020】
有利には、前記電極配合物は、65%~95%の固体混合物及び5%~35%の溶媒、好ましくは10%~30%の溶媒に対して70%~90%の固体混合物を含む。
【0021】
有利には、前記固体混合物は、
- 90%~98%、好ましくは92%~97%の電極活物質、
- 0.5%~3%、好ましくは1%~2%のフルオロポリマーバインダー、
- 0.05%~3%、好ましくは0.15%~2%のカーボンナノチューブ、
- 0.25%~3%、好ましくは1%~3%の、カーボンナノチューブとは異なる炭素をベースとする少なくとも1種の導電性充填剤、
- 0%~1%、好ましくは0.25%~1%の分散剤を含み、
これらの全ての成分の合計は100%である。
【0022】
一実施形態によれば、溶媒は水である。
【0023】
一実施形態によれば、前記溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ケトン、酢酸塩、フラン、炭酸アルキル、アルコール及びそれらの混合物から選択される有機溶媒である。一実施形態によれば、前記電極活物質は、特にリチウムを含有する金属酸化物である。
【0024】
一実施形態によれば、前記フルオロポリマーバインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のホモポリマー、及びフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をベースとするコポリマー又はターポリマー並びにそれらの混合物から特に選択される。
【0025】
カーボンナノチューブは、単層型、二層型又は多層型であることができ、好ましくは化学蒸着法に続いて得られる多層カーボンナノチューブである。
【0026】
一実施形態によれば、カーボンナノチューブとは異なる前記炭素をベースとする導電性充填剤は、カーボンナノファイバー、カーボンブラック及びグラフェンから選択される。
【0027】
一実施形態によれば、前記バインダーとは異なるポリマー分散剤は、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(フェニルアセチレン)、ポリ(メタ-フェニレンビニリデン)、ポリピロール、ポリ(パラ-フェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリ(ビニルアルコール)及びそれらの混合物から選択される。
【0028】
一実施形態によれば、電極の前記金属支持体は、一般に、カソードにはアルミニウム、アノードには銅でできている。
【0029】
本発明による方法は、前記金属支持体に塗布されたペーストから電極を得ることを可能にする。
【0030】
本発明はまた、上記の方法によって得られるLiイオン電池の電極に関する。
【0031】
一実施形態によれば、前記電極はカソードである。
【0032】
一実施形態によれば、前記電極はアノードである。
【0033】
本発明の別の主題は、負極、正極及び電解質を含むLiイオン蓄電池であって、電極の少なくとも1つが上記の方法によって得られるLiイオン蓄電池である。
【0034】
本発明の別の主題は、65%~95%の固体混合物及び5%~35%の溶媒を含み、好ましくは10%~30%の溶媒に対して70%~90%の固体混合物を含む完全な電極配合物である。
【0035】
一実施形態によれば、前記固体混合物は、
- 90%~98%、好ましくは92%~97%の電極活物質、
- 0.5%~3%、好ましくは1%~2%のフルオロポリマーバインダー、
- 0.05%~3%、好ましくは0.15%~2%のカーボンナノチューブ、
- 0.25%~3%、好ましくは1%~3%の、カーボンナノチューブとは異なる炭素をベースとする少なくとも1種の導電性充填剤、
- 0%~1%、好ましくは0.25%~1%の分散剤を含み、
これら全ての成分の合計は100%である。
【0036】
本発明は、先行技術の欠点を克服することを可能にする。より具体的には、本発明は、押出機の計量装置に直接導入されることを意図した完全な電極配合物を提供する。本発明はまた、Liイオン電池の電極の製造のための簡略化方法を提供し、
- 電極の製造に使用される様々な出発材料の事前変換はなく、
- この方法は、5分未満の非常に短い滞留時間で、前記完全な電極配合物から始まる1段階の押出を含む。これは配合物の品質及び電極の性能、並びにまた生産コストに大きな影響を与え、生産コストは大幅に低下する。これは、本発明による方法を実施する1つの押出ユニットが、電極の製造のための現在の方法において8つの押出ラインを供給することを意図した最大8つの混合ユニットに取って代わることができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】放電速度(C-速度)の関数としての、mAh/gで測定された電極配合物の放電容量の変動を示すラゴンプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、ここで、より詳細に、及び以下の説明において非限定的な方法で説明される。
【0039】
第1の態様によれば、本発明は、Liイオン電池の電極の連続的製造のための方法に関し、該方法は以下の段階を含む。
- 固体状態の電極の全ての成分、すなわち、90%~98%の電極活物質、0.5%~3%のフルオロポリマーバインダー、0.05%~3%のカーボンナノチューブ、0.25%~3%の、カーボンナノチューブとは異なる炭素をベースとする少なくとも1種の導電性充填剤、及び0%~1%の分散剤(全成分の合計は100%である)、及び溶媒を押出機の計量装置に導入する段階、
- 65%~95%の固体混合物、及び5%~35%の溶媒を含む電極配合物を得るために、配合により混合する段階、
- ブルックフィールド粘度が1500~20000cPの間のペーストの形態の電極材料を得るために、5分間未満、好ましくは30秒~3分の時間の間該配合物を押し出す段階、
- Liイオン電池の電極を得るために、金属支持体に該電極材料を塗布する段階、及び
- 該電極材料をカレンダー加工する段階。
【0040】
特徴的には、この方法は、電極の全ての成分を含む固体混合物、及び溶媒を配合することによって得られる完全な電極配合物を使用する。
【0041】
有利には、前記方法は、適切に組み合わされる以下の特徴を含む。示された含有率は、特に指示がない限り、重量で表される。
【0042】
一実施形態によれば、前記電極配合物は、10%~30%の溶媒に対して70%~90%の固体混合物を含む。
【0043】
有利には、前記固体混合物は、
- 92%~97%の電極活物質、
- 1%~2%のフルオロポリマーバインダー、
- 0.15%~2%のカーボンナノチューブ、
- 1%~3%の、カーボンナノチューブとは異なる炭素をベースとする少なくとも1種の導電性充填剤、
- 0.25%~1%の分散剤を含み、
全ての成分の合計は100%である。
【0044】
<溶媒>
電極配合物に使用する溶媒は、水又は有機溶媒である。
【0045】
一実施形態によれば、溶媒は水である。
【0046】
一実施形態によれば、前記溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ケトン、酢酸塩、フラン、炭酸アルキル、アルコール及びそれらの混合物から選択される有機溶媒である。
【0047】
<電極活物質>
電極活物質は、以下からなる群から選択される。
i) LiM2O4型のスピネル構造を有する遷移金属酸化物であって、Mは、Mn、Fe、Co及びNiによって形成される基から選択される金属原子の少なくとも1つを含む金属原子を表し、該酸化物は好ましくは少なくとも1つのMn及び/又はNi原子を含む。
ii) LiMO2型のラメラ構造を有する遷移金属酸化物であって、Mは、Mn、Fe、Co及びNiによって形成される群から選択される金属原子の少なくとも1つを含む金属原子を表す。
iii) LiMy(XOz)n型のポリアニオン骨格を有する酸化物であって、
- Mは、Mn、Fe及びCoによって形成される群から選択される金属原子の少なくとも1つを含む金属原子を表し、
- Xは、P、Si、Ge、S及びAsによって形成される群から選択される原子の1つを表す酸化物。
この種の酸化物の例は、LiFePO4である。
iv) バナジウムをベースとする酸化物、
v) グラファイト、
vi) グラフェン、
vii) カーボンナノチューブ、
viii) ケイ素又は炭素とのその複合体、及び
ix) チタン酸塩。
【0048】
電極活物質i)~iii)はカソードの製造により適しており、一方電極活物質iv)~ix)はアノードの製造により適している。
【0049】
<フルオロポリマーバインダー>
ポリマーバインダーは、特に以下の方法で記載されるフルオロポリマーからなる群から選択される。
(i) 式(I)の少なくとも1種のモノマーを少なくとも50モル%含むもの。
CFX1=CX2X3 (I)
式中、X1、X2及びX3は独立して水素又はハロゲン原子(特にフッ素原子又は塩素原子)を表し、例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)(好ましくは、α形のもの)、ポリ(トリフルオロエチレン)(PVF3)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレン(HFP)又はトリフルオロエチレン(VF3)又はテトラフルオロエチレン(TFE)又はクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー、フルオロエチレン/プロピレン(FEP)コポリマー、エチレンとフルオロエチレン/プロピレン(FEP)又はテトラフルオロエチレン(TFE)又はクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマーであり、
(ii) 式(II)の少なくとも1種のモノマーを少なくとも50モル%含むもの。
R-O-CH=CH2 (II)
式中、Rは過ハロゲン化(特にペルフルオロ化)アルキル基を示表し、例えば、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、及びエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)とのコポリマーであり、前記バインダーは好ましくはPVDFである。
【0050】
本明細書で用いる「PVDF」という用語は、フッ化ビニリデン(VDF)ホモポリマー又はVDFと少なくとも1種の他のコモノマーのコポリマーであって、VDFが少なくとも50モル%を相当するものを含む。VDFと重合できるコモノマーは、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、1,2-ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル、例えば、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)又はペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)、ペルフルオロ(1,3-ジオキソール)、ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)、式CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2Xの生成物(Xは、SO2F、CO2H、CH2OH、CH2OCN又はCH2OPO3Hである)、式CF2=CFOCF2CF2SO2Fの生成物、式F(CF2)nCH2OCF=CF2の生成物(nは1、2、3、4又は5である)、式R1CH2OCF=CF2の生成物(R1は、水素又はF(CF2)zであり、zは1、2、3又は4の値を有する)、式R3OCF=CH2の生成物(R3は、F(CF2)zであり、zは1、2、3又は4の値を有する)、又はペルフルオロブチルエチレン(PFBE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、3,3,3-トリフルオロプロペン、2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234yf、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234zeE、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234zeZ、1,1,2,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234yc、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234ye、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン又はHFO-1234zc及びクロロテトラフルオロプロペン又はHCFO-1224から選択される。
【0051】
一実施形態によれば、コポリマーはターポリマーである。
【0052】
別の実施形態によれば、前記バインダーは、金属基材への接着性及び電極を構成する材料の良好な凝集を発現することができる官能基を担持するフルオロポリマーである。それは、以下の官能基、すなわち、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、エポキシ基(グリシジルなど)、アミド基、アルコール基、カルボニル基、メルカプト基、スルフィド、オキサゾリン基及びフェノール基のうちの少なくとも1つを担持する単位をさらに含むVDFをベースとするポリマー(少なくとも50モル%のVDFを含有する)であることができる。官能基は、当業者に周知の技術によって、該官能基の少なくとも1つを担持する化合物と、フルオロポリマーをグラフト化又は共重合させることができる化学反応によってフルオロポリマー上に導入される。
【0053】
一実施形態によれば、カルボン酸官能基は、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートから選択される(メタ)アクリル酸型の親水性基である。
【0054】
一実施形態によれば、カルボン酸官能基を担持する単位は、酸素、硫黄、窒素及びリンから選択されるヘテロ原子をさらに含む。
【0055】
フルオロポリマーが官能化される場合、金属へのバインダーの接着性を保証する官能基の含有率は、少なくとも0.05モル%であり、好ましくは少なくとも0.15モル%である。
【0056】
<カーボンナノチューブ(CNT)>
本発明による配合物において使用されるカーボンナノチューブは、単層型、二層型又は多層型のものとすることができる。二層ナノチューブは、特に、Chem.Comm.(2003),1442においてFlahautらによって記載されているように調製することができる。多層ナノチューブは、その部分について文献WO03/02456号に記載されているように調製することができる。本発明によれば、特に、出願人の企業の出願EP1980530号に記載されているように、炭素源(好ましくは植物起源)の触媒分解による、化学蒸着(又はCVD)法によって得られた多層カーボンナノチューブが好ましい。
【0057】
ナノチューブは、通常、0.1~100nm、好ましくは0.4~50nm、さらに良好には1~30nm、実際には10~15nmの範囲ですらある平均直径を有し、有利には0.1~10μmの長さを有する。それらの長さ/直径比は10より大きいことが好ましく、ほとんどの場合100より大きい。その比表面積は、例えば、100~300m2/gの間、有利には200~300m2/gの間であり、それらのかさ密度は、特に0.05~0.5g/cm3の間、より優先的には、0.1~0.2g/cm3の間であることができる。多層ナノチューブは、例えば、5~15枚のシート(又は壁)及びより優先的に7~10枚のシートを含むことができる。これらのナノチューブは処理されても、処理されなくてもよい。
【0058】
加工していないカーボンナノチューブの一例は、特にArkema社からGraphistrength(R) C100という商品名で市販されている。
【0059】
これらのナノチューブは、本発明による方法に使用される前に、精製及び/又は処理(例えば、酸化)及び/又は官能化することができる。
【0060】
ナノチューブは、硫酸溶液を用いて洗浄することにより、精製することができ、これにより製造方法に由来する、例えば、鉄のような、残留する可能性のある無機及び金属不純物を含まないようにさせることができる。ナノチューブ対硫酸の重量比は、特に1:2~1:3の間であることができる。精製操作はさらに90~120℃の範囲の温度で、例えば、5~10時間の間行うことができる。この操作後に、有利には、精製されたナノチューブを水ですすぎ、乾燥させる段階が続くことができる。変形例として、ナノチューブは、典型的には1000℃を超える高温熱処理によって精製することができる。
【0061】
ナノチューブの酸化は、NaOClを0.5重量%~15重量%、好ましくはNaOClを1重量%~10重量%含む次亜塩素酸ナトリウム溶液に、例えば1:0.1~1:1の範囲のナノチューブ対次亜塩素酸ナトリウムの重量比で接触させることにより、有利に行われる。酸化は、数分から24時間の範囲の間、60℃未満の温度、好ましくは周囲温度で有利に行われる。この酸化操作の後、有利には、酸化したナノチューブを濾過及び/又は遠心分離、洗浄及び乾燥する段階が続くことができる。
【0062】
ナノチューブの官能化は、ビニルモノマーなどの反応性単位をナノチューブの表面にグラフトすることによって行うことができる。ナノチューブの構成材料は、酸素を含まない無水媒体中で900℃を超える熱処理を施した(その表面から酸素を含む基を除去することを意図している)後、ラジカル重合開始剤として使用される。このように、フッ素化バインダー中で特にそれらの分散を促進する目的で、カーボンナノチューブの表面でメチルメタクリレート又はヒドロキシエチルメタクリレートを重合させることが可能である。
【0063】
本発明では、粗ナノチューブ、すなわち、酸化も精製も官能化もされておらず、他の化学的及び/又は熱処理を受けていないナノチューブを使用することが可能である。変形例として、精製されたナノチューブ、特に高温熱処理により精製されたナノチューブを用いることが可能である。
【0064】
好ましくは、カーボンナノチューブは、本発明では、1μm~5mmの間、好ましくは200μm~3mmの間のサイズを有する固体強凝集体の形態で使用される。
【0065】
<カーボンナノチューブ以外の炭素をベースとする導電性充填剤>
これらの充填剤は、カーボンナノファイバー、グラフェン及びカーボンブラックから選択される少なくとも1種の充填剤を含む。
【0066】
カーボンブラックは、粉末形態又は圧縮形態で使用される。
【0067】
カーボンナノファイバーは、カーボンナノチューブと同様に、水素存在下で500~1200℃で遷移金属(Fe、Ni、Co、Cu)を含む触媒上で分解される炭素をベースとする供給源から出発する化学蒸着(又はCVD)により生成されるナノフィラメントである。しかし、これら2種類の炭素をベースとする充填剤はその構造が異なる(I.Martin-Gullonら、Carbon、44(2006)、1572-1580)。なぜなら、カーボンナノチューブは、ファイバーの軸の周りに同心円状に巻かれた1つ以上のグラフェンシートからなり、直径10~100nmの円柱を形成するからである。対照的に、カーボンナノファイバーは比較的組織化されたグラファイト領域(又は乱層スタック)で構成されており、その平面はファイバーの軸に対して様々な角度で傾斜している。これらのスタックは、積層されたプレートレット、魚骨又は皿の形態を取り、一般に直径が100nm~500nmの範囲、実際にはさらに大きい構造を形成することができる。さらに、カーボンブラックは重油製品の不完全燃焼により工業的に製造されたコロイド状の炭素をベースとする材料であり、炭素球体とこれらの球体の強凝集体の形態で存在し、その寸法は一般に10~1000nmの間である。
【0068】
100~200nm、例えば、約150nm(昭和電工の参照記号VGCF(R)の下で販売されているものなど)の直径、及び有利には100~200μmの長さのカーボンナノファイバーを使用することが好ましい。
【0069】
「グラフェン」という用語は、グラファイトの平らで単離された別々の薄片を意味するだけでなく、延長線上で考えると、1枚~数十枚の間の薄片を含み、平ら又は比較的波状の構造を示す集合体も意味する。この定義は、したがって、FLG(少数層グラフェン)、NGP(ナノサイズグラフェン板)、CNS(カーボンナノシート)及びGNR(グラフェンナノリボン)を包含する。一方、カーボンナノチューブ及びナノファイバー(それぞれ1枚以上のグラフェンシートが同軸に巻き付いていること、及びこれらのシートが乱層状に積み重なっていることからなる)は除外されている。
【0070】
さらに、本発明により使用されるグラフェンは、化学的酸化又は官能化のさらなる段階に供されないことが好ましい。
【0071】
本発明により使用されるグラフェンは、化学蒸着又はCVDにより、好ましくは混合酸化物をベースとする微粉化触媒を使用する方法によって、有利に得られる。それは、厚さが50nm未満、好ましくは15nm未満、より優先的には5nm未満、及び側面寸法が1ミクロン未満、好ましくは10nm~1000nm未満、より優先的には50~600nm、実際には100~400nmでさえある粒子の形態で特徴的に提供される。これらの粒子の各々は、一般に、1~50シート、好ましくは1~20シート、より優先的には1~10シート、実際には1~5シートを含み、これらは、例えば、超音波処理の間に、独立したシートの形態で互いに分離することが可能である。
【0072】
<分散剤>
ポリマー分散剤は、前記フッ素化バインダーとは異なる。それは、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(フェニルアセチレン)、ポリ(メタ-フェニレンビニリデン)、ポリピロール、ポリ(パラ-フェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリ(ビニルアルコール)及びそれらの混合物から有利に選択される。
【0073】
<方法の展開>
一実施形態によれば、本発明による電極の製造のための方法は、配合装置として、実験室レベルでDSMによって販売されているマイクロ押出機を使用する。工業的には、Buss共混練機又は二軸押出機が使用される。
【0074】
マイクロ押出機は、供給手段、特に、微粉材料のための少なくとも1つのホッパー及び/又は液体材料のための少なくとも1つの注入ポンプ、高剪断混練手段、例えば、共回転又は逆回転二軸押出機、その形状を排出材料に与える排出ヘッド、及び空気下又は水回路を用いる、材料を冷却するための手段を含む。
【0075】
本発明による方法の第1段階では、溶媒及び固体混合物の成分、すなわち、予備混合した電極活物質、フルオロポリマーバインダー、カーボンナノチューブ、他の炭素をベースとする導電性充填剤及びポリマー分散剤が押出機に導入される。トルクの上昇を監視しながら、徐々に固体混合物が導入される。
【0076】
押出段階の間、押出機の構成によって、押出機内の温度は50~200℃の間に維持される。
【0077】
一実施形態によれば、CNT及び/又はカーボンナノチューブとは異なる炭素をベースとする導電性充填剤は、押出ラインの予備軽量装置内で溶媒と混合される。これは、CNTが固体形態を失わずに液体を吸着する能力を有するためである。例えば、Graphistrength(R) C100 CNT100gは、粉末の流動性を失うことなく溶媒NMP800gを吸収することができる。同様にカーボンブラックは高い溶媒吸着能を示す。押出ラインの予備軽量装置内で行われるCNT及び/又は他の導電性充填剤と溶媒との混合は、押出装置のメインホッパー内に直接重量測定装置を用いて、固体混合物の他の成分と同時に達成することができる。これにより配合区域への液体の注入が回避され、混合品質がかなり向上する。
【0078】
この予備分散段階は、高い秤量の電極(25mg/cm2以上)に特に適している。
【0079】
上記のものと組み合わせることができる一実施形態によれば、電極配合物中に存在する溶媒の全て又は一部は、フルオロポリマーバインダーの粒子及び前記溶媒を含むラテックスに由来する。
【0080】
その後、溶媒及び固体混合物を配合することによる混合が行われ、完全な電極配合を得る。
【0081】
前記配合物の押出は、ブルックフィールド粘度が1500~20000cPの間のペーストの形態の電極材料を得るために、その持続時間が5分未満、好ましくは30秒~3分の間単一の段階で行われる。
【0082】
これらの押出条件は、活性充填剤及びCNTを共分散させるのに非常に有利である。
【0083】
押出ラインは、溶媒の一部を排出するために配合区域の後に真空ポンプを備えることができる。この目的は、乾燥経路(乾式方法)又は粉末経路で被膜の堆積に使用できる粉末の形態で電極材料を回収し、カレンダー加工を行うことである。乾燥経路(乾式方法)に適した前記材料は、少量の有機溶媒又は水を含むことがあるが、これは、配合物の物理的状態を変化させないためであり、材料は依然として固体状態で取り扱うことができる。
【0084】
一実施形態によれば、押出後に得られた電極材料は、電極の製造に使用される前に、液体状態で撹拌しながら7日間まで、又は固体状態で6カ月まで保存し、調整することができる。
【0085】
このようにして得られた電極材料は、例えば、塗布用のドクターブレードを有する装置によってLiリチウムイオン電池の電極を得るために、金属集電体に塗布される。電極の金属支持体は、一般に、カソード用にはアルミニウムで作られ、アノード用には銅で作られている。
【0086】
続いて電極材料を乾燥させ、続いてカレンダー加工する。一実施形態によれば、カレンダー加工はいくつかの段階で行われ、そのうちの少なくとも1つの段階は高温条件下(残留溶媒の量に応じて70~160℃)で行われ、その間に粉末は50~150μmの厚さ及び10~40mg/cm2の多孔度を有するフィルムに変換される。
【0087】
本発明の別の主題は、上記の方法によって得られる電極である。一実施形態によれば、前記電極はカソードである。一実施形態によれば、前記電極はアノードである。
【0088】
本発明の別の主題は、負極、正極及び電解質を含むLiイオン蓄電池であり、電極の少なくとも1つは上記の方法によって得られる。本発明の方法のおかげで完全な電極配合物の品質及びその迅速な変換は、電極の性能に有益な影響を及ぼす。
【0089】
本発明の別の主題は、65%~95%の固体混合物及び5%~35%の溶媒、好ましくは10%~30%の溶媒に対して70%~90%の固体混合物を含む、上記の完全な電極配合物である。この配合物は、本発明による乾式方法に使用されるのに特に適している。
【実施例】
【0090】
以下の実施例は、本発明の範囲を非限定的に例示する。
【0091】
[本発明による実施例1]
完全なカソード配合物を調製し、以下の重量組成を有するその固体混合物を予め乾式予備混合により調製する。
- 93.9%の、Umicoreが販売するNMC622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2)の粉末
- 1.5%のPVDFホモポリマーKynar(R) HSV900
- 2%の、精製したCNT Graphistrength(R) C100
- 2%の、Denkaが販売するカーボンブラックLI100
- 0.6%のPVP
【0092】
DSMが販売するマイクロ押出機を使用する。NMPを導入した後、前記固体混合物を導入する。前記固体混合物に加えたNMPの量を、6000~8000cPの粘度を得るように調整する。
【0093】
以下の段階に従う。
- 押出機に9.35mlのNMPを導入し、50℃に予熱する。NMPを導入した時点で、スクリューの速度を240rpmに上昇させる。
- 上述の固体混合物42.6gを30~60秒かけて徐々に導入し、トルクを継続的に監視し、1000~1400N.mの範囲に留まるようにNMPを用いてトルクを調整する。
- トルクが安定すると、4.9gのNMPを30~60秒かけて徐々に導入し、トルクは徐々に100N.mに低下する。
- 生成物(カソード材料)をペーストの形態で回収し、そのNMP含有率及び微粉度(ノースゲージ:0~100μm)を試験し、固形分は78%である。
- このようにして得られたペーストを使用して、塗布のためのドクターブレードを備えた装置によってアルミシートを被覆し、続いて130℃で30分間換気されたオーブン内で電極を乾燥させる。
- 所望の表面電荷に応じて被膜の厚さを18mg/cm2で調整する。
- その後、70℃でカレンダー加工を行い、電極の密度を検査して40%の多孔度を得る。
- その後、カレンダー加工された電極を用いて、180°剥離試験によりペーストと金属支持体との接着性を評価する。
【0094】
このように製造されたカソードを使用して、Liアノード、Celgard PP2500セパレータ及び電解質配合物(EC/DEC中の1M LiFSI(3/7 V/V)+2%FEC)を有するボタン電池を製造する。
【0095】
このようにして得られた電池を、表1に示されるラゴーンプロトコールに従って試験する。
【0096】
【0097】
本発明による電池について得られた結果、及びまたカソードが従来のミキサー(以下の比較例2参照)によって作製された電池で得られた結果を、放電速度(C速度)の関数としてのmAh/gで測定された電極配合物の放電容量の変動を示す
図1の図表に示す。
【0098】
これらの結果は、本発明による方法によって製造されたカソードを含む電池の挙動が、従来の方法によって製造されたカソードを含む電池の挙動と類似していることを示す。
【0099】
[例2(比較)]
従来のミキサーを用いて実施例1と同じ電極配合物を調製した。
【0100】
[CNT/PVDF/NMPマスターバッチの調製]
PVDF(Arkema製Kynar(R) HSV900)の5重量%溶液を、ポリマーの粉末をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解することによって予め製造し、溶液を50℃で60分間撹拌した。
【0101】
CNT(Arkema製Graphistrength(R) C100)を、回収押出スクリュー及び造粒装置を搭載したBuss(R) MDK46(L/D=11)共混練機の最初の供給ホッパーに導入した。N-メチルピロリドン(NMP)中のPVDF(Kynar(R) HSV900)の5%溶液を80℃で液体の形態で共混練機の第1の区域に注入した。共混練機内の設定温度値及び処理量は、区域1:80℃、区域2:80℃、スクリュー:60℃、処理量:15kg/時であった。
【0102】
マスターバッチの顆粒をダイから出し、乾燥条件下で切断した。保存中のNMPの損失を防ぐため、顆粒を気密容器に包装した。最終マスターバッチの組成は、カーボンナノチューブ30重量%、PVDF樹脂3.5重量%、NMP66.5重量%であった。
【0103】
<電極製造のためのCNT/PVDF/NMPマスターバッチの使用>
<段階a)> 20gのマスターバッチ顆粒を160gのNMP溶媒で湿らせた。周囲温度で2時間の静的含浸の後、マスターバッチの顆粒を、Silverson(R) L4RT型のミキサーを使用して、6000rpmで15分間、溶媒中に分散させた。分散操作中の有意な発熱が観察され、CNTを含む混合物は67℃の温度に達した。得られた懸濁液を「CNT予備混合物」と表記した。
【0104】
<段階b)> ディスクミキサー型の撹拌機を4時間用いて、14.3gのKynar(R) HSV900及び5.72gのPVPを276gNMP溶媒に溶解した。
【0105】
<段階c)> Umicoreが販売するNMC622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2)の粉末279gをKynar溶液中に分散させた、この段階の間に粉末を撹拌(600rpm)しながら徐々に加えた。得られた懸濁液を「NMC予備混合物」と表記した。
【0106】
<段階d)> NMC活物質の周囲でCNTの良好な分散を得るために、段階a)及びc)の間にそれぞれ得られたCNT予備混合物及びNMC予備混合物を600rpmで凝集撹拌機を用いて10分間混合し、その後、Silverson(R) L4RTミキサーを用いて3000rpmで15分間混合した。乾物としてのインクの組成は、2%のCNT、5%のKynar(R) HSV900、93%のNMC622であり、NMP溶媒中の固形分は40%であった。
【0107】
<段階e)> このようにして得られたペースト状の配合物を使用して、塗布用のドクターブレードを備えた装置によってアルミシートを塗布し、続いて換気されたオーブン中で、130℃で30分間電極を乾燥させる。
【0108】
<段階f)> 70℃でのカレンダー加工を行い、電極の密度を検査し、40%の多孔度を得る。
【0109】
[実施例3-本発明によるカソード配合物の調製]
カソード配合物は以下を含有する。
- 93.9%の、Umicoreが販売するNMC622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2)の粉末
- 1.5%のPVDFホモポリマーKynar(R) HSV900
- 2%の、精製したCNT Graphistrength(R) C100
- 2%の、Denkaが販売するカーボンブラックLI100
- 0.6%のPVP
【0110】
<段階a)> 200gのGraphistrength(R) C100 HP CNT及び200gのカーボンブラックを回転ロール上に配置した5リットルのドラム内に1000gのNMPと共に15分間予備混合する。NMP溶媒を粉末の外観を変えずにCNT及びCBによって吸着させる。
【0111】
<段階b)> 段階a)からの混合物を9390gのNMC622、150gのPVDF及び60gのPVPを含む10リットルのドラムに導入した。ドラムを回転ロール上に15分間置いた。
【0112】
<段階c)押出> 段階b)からの混合物を、ClextralからのBC21押出機の主計量装置を含む重量測定装置に導入した。押出機には供給ホッパーが装備されている。スクリュープロファイルには、2つの混合区域と、2番目の混合区域の上流にある1つの大気開放ウェルがある。混合物を供給ホッパーに10kg/hの流速で供給した。スクリューの速度は300rpmである。スクリューの出口(ダイなし)で材料をドラム内で「湿った」外観の均一な粉末の形態で直接回収した。押出機の全区域の設定温度は60℃である。押し出された配合物中のNMPの重量%は8.5%である。
【0113】
<段階d)> 押し出された配合物を塗布用のドクターブレードを備えた装置を用いて25μmのアルミニウム(Al)シートに塗布し、支持体-スクレーパー空間は400μmであった。続いて、カレンダー加工前に粒子を固めるために、粉末被膜を有するAl支持体を160℃で3分間、換気されたオーブン内に置いた。
【0114】
<段階e)カレンダー加工> 続いて、カレンダーのロール間間隙を300μmで第1通過、250μmで第2通過、及び150μmで第3通過と減少させながら、Al担持被膜を3段階で、160℃でカレンダー加工する。続いて、残留NMPを排出するために、被膜を130℃で30分間乾燥させた。実施例1及び2と同様に最終的な多孔度が40%となるように、最終的なカレンダー加工に対する間隙を調整した。