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  • 特許-電子装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240619BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240619BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20240619BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240619BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240619BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240619BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20240619BHJP
   C09J 123/00 20060101ALI20240619BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20240619BHJP
   C09J 125/04 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 631
C09J7/29
C09J7/38
C09J133/04
C09J175/04
C09J183/04
C09J123/00
C09J7/25
C09J125/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021575746
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2021002753
(87)【国際公開番号】W WO2021157441
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2020016776
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】アールエム東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】室伏 貴信
(72)【発明者】
【氏名】栗原 宏嘉
(72)【発明者】
【氏名】森本 哲光
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/017226(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188543(WO,A1)
【文献】特開2019-065168(JP,A)
【文献】特開2018-195840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
C09J 7/29
C09J 7/38
C09J 133/04
C09J 175/04
C09J 183/04
C09J 123/00
C09J 7/25
C09J 125/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路形成面を有する電子部品と、ポリエステル系樹脂層を一層含む基材層、紫外線硬化型の凹凸吸収性樹脂層および粘着性樹脂層をこの順番に有する粘着性積層フィルムと、を備え、前記回路形成面を保護するように前記電子部品の前記回路形成面に前記粘着性積層フィルムが貼り付けられた構造体を準備する準備工程(A)と、
前記粘着性積層フィルムに対して紫外線を照射することにより、前記粘着性積層フィルムの前記凹凸吸収性樹脂層を硬化させる紫外線硬化工程(B)と、
真空加熱下で、前記電子部品の前記回路形成面とは反対側の表面を処理する表面処理工程(C)と、
を備え、
前記準備工程(A)は、
前記電子部品の前記回路形成面にバックグラインドテープが貼り付けられた状態で、前記電子部品の前記回路形成面とは反対側の面をバックグラインドするバックグラインド工程と、
前記バックグラインド工程の後に、前記電子部品から前記バックグラインドテープを剥がす工程と、
前記電子部品の前記回路形成面に前記粘着性積層フィルムを貼り付ける工程と、を含む電子装置の製造方法。
【請求項2】
回路形成面を有する電子部品と、ポリエステル系樹脂層を一層含む基材層、紫外線硬化型の凹凸吸収性樹脂層および粘着性樹脂層をこの順番に有する粘着性積層フィルムと、を備え、前記回路形成面を保護するように前記電子部品の前記回路形成面に前記粘着性積層フィルムが貼り付けられた構造体を準備する準備工程(A)と、
前記粘着性積層フィルムに対して紫外線を照射することにより、前記粘着性積層フィルムの前記凹凸吸収性樹脂層を硬化させる紫外線硬化工程(B)と、
真空加熱下で、前記電子部品の前記回路形成面とは反対側の表面を処理する表面処理工程(C)と、
を備え、
前記表面処理工程(C)は、イオン注入工程、バックメタル工程およびアニール処理工程からなる群から選択される一種または二種以上を含み、
前記準備工程(A)は、
前記電子部品の前記回路形成面にバックグラインドテープが貼り付けられた状態で、前記電子部品の前記回路形成面とは反対側の面をバックグラインドするバックグラインド工程と、
前記バックグラインド工程の後に、前記電子部品から前記バックグラインドテープを剥がす工程と、
前記電子部品の前記回路形成面に前記粘着性積層フィルムを貼り付ける工程と、を含む電子装置の製造方法。
【請求項3】
請求項に記載の電子装置の製造方法において、
前記表面処理工程(C)は、イオン注入工程、金属膜形成工程およびアニール処理工程からなる群から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記表面処理工程(C)における加熱温度が40℃以上350℃以下である電子装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記電子部品の前記回路形成面に凹凸構造を含む電子装置の製造方法。
【請求項6】
請求項に記載の電子装置の製造方法において、
前記凹凸構造の高さをH[μm]とし、前記凹凸吸収性樹脂層の厚みをd[μm]としたとき、H/dが0.01以上1以下である電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記凹凸吸収性樹脂層が架橋性樹脂を含む電子装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記凹凸吸収性樹脂層の厚みが10μm以上1000μm以下である電子装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記粘着性樹脂層を構成する粘着剤が(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤およびスチレン系粘着剤から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法において、
前記粘着性積層フィルムは、前記基材層および前記凹凸吸収性樹脂層を有する積層体の前記凹凸吸収性樹脂層上に、非放射線硬化型の粘着性樹脂層を積層することにより形成されたフィルムである電子装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電子装置の製造方法に用いられる前記粘着性積層フィルムであって、
ポリエステル系樹脂層を一層含む基材層、紫外線硬化型の凹凸吸収性樹脂層および粘着性樹脂層をこの順番に有する粘着性積層フィルム。
【請求項12】
請求項11に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
前記基材層および前記凹凸吸収性樹脂層を有する積層体の前記凹凸吸収性樹脂層上に、非放射線硬化型の粘着性樹脂層を積層することにより形成された粘着性積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置(例えば、半導体装置)は、電子部品(例えば、半導体ウエハ)の非回路形成面を研削して電子部品の厚みを薄くする工程(バックグラインド工程)や、研削後の電子部品の非回路形成面を表面処理する工程(例えば、イオン注入工程、金属膜形成工程等)等を経て製造される場合がある。
これらの工程において、電子部品の回路形成面を保護する観点から、電子部品の回路形成面に表面保護フィルムが貼り付けられる場合がある。
【0003】
このような表面保護フィルムに関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2001-203255号公報)および特許文献2(特開2005-303068号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、半導体ウエハ加工時において、半導体ウエハ表面に貼り付けて半導体ウエハを保持保護するための粘着シートであって、基材層の片面に弾性率が30~1000kPaでありかつゲル分が20%以下の中間層が設けられ、該中間層の表面に粘着剤層が形成されていることを特徴とする半導体ウエハ保持保護用粘着シートが記載されている。
【0005】
特許文献2には、半導体ウエハ加工時において、半導体ウエハ表面に貼り付けて半導体ウエハを保持保護するための粘着シートであって、基材層の片面に、25℃における弾性率が10~1000kPaでありかつゲル分が26~45%の中間層が設けられ、該中間層の表面に粘着剤層が形成されていることを特徴とする半導体ウエハ保持保護用粘着シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-203255号公報
【文献】特開2005-303068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らの検討によれば、従来の電子装置の製造方法において、高温真空下での表面処理工程において、粘着性フィルムの浮きが生じる場合があることが明らかになった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高温真空下での表面処理工程において、粘着性フィルムの浮きを抑制することが可能な電子装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、電子部品の回路形成面を保護するための表面保護フィルムとして、基材層、紫外線硬化型の凹凸吸収性樹脂層および粘着性樹脂層をこの順番に有する粘着性積層フィルムを使用し、高温真空下での表面処理工程の前に、凹凸吸収性樹脂層を紫外線硬化させることによって、高温真空下での表面処理工程において、粘着性フィルムの浮きを抑制することができることを見出して、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、以下に示す電子装置の製造方法が提供される。
【0010】
[1]
回路形成面を有する電子部品と、ポリエステル系樹脂層を一層含む基材層、紫外線硬化型の凹凸吸収性樹脂層および粘着性樹脂層をこの順番に有する粘着性積層フィルムと、を備え、上記回路形成面を保護するように上記電子部品の上記回路形成面に上記粘着性積層フィルムが貼り付けられた構造体を準備する準備工程(A)と、
上記粘着性積層フィルムに対して紫外線を照射することにより、上記粘着性積層フィルムの上記凹凸吸収性樹脂層を硬化させる紫外線硬化工程(B)と、
真空加熱下で、上記電子部品の上記回路形成面とは反対側の表面を処理する表面処理工程(C)と、
を備える電子装置の製造方法。
[2]
上記[1]に記載の電子装置の製造方法において、
上記準備工程(A)は、
上記電子部品の上記回路形成面にバックグラインドテープが貼り付けられた状態で、上記電子部品の上記回路形成面とは反対側の面をバックグラインドするバックグラインド工程と、
上記バックグラインド工程の後に、上記電子部品から上記バックグラインドテープを剥がす工程と、
上記電子部品の上記回路形成面に上記粘着性積層フィルムを貼り付ける工程と、を含む電子装置の製造方法。
[3]
上記[1]または[2]に記載の電子装置の製造方法において、
上記表面処理工程(C)は、イオン注入工程、金属膜形成工程およびアニール処理工程からなる群から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記表面処理工程(C)における加熱温度が40℃以上350℃以下である電子装置の製造方法。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記電子部品の上記回路形成面に凹凸構造を含む電子装置の製造方法。
[6]
上記[5]に記載の電子装置の製造方法において、
上記凹凸構造の高さをH[μm]とし、上記凹凸吸収性樹脂層の厚みをd[μm]としたとき、H/dが0.01以上1以下である電子装置の製造方法。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記凹凸吸収性樹脂層が架橋性樹脂を含む電子装置の製造方法。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記凹凸吸収性樹脂層の厚みが10μm以上1000μm以下である電子装置の製造方法。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記粘着性樹脂層を構成する粘着剤が(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤およびスチレン系粘着剤から選択される一種または二種以上を含む電子装置の製造方法。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法において、
上記粘着性積層フィルムは、上記基材層および上記凹凸吸収性樹脂層を有する積層体の上記凹凸吸収性樹脂層上に、非放射線硬化型の粘着性樹脂層を積層することにより形成されたフィルムである電子装置の製造方法。
[11]
上記[1]乃至[10]のいずれか一つに記載の電子装置の製造方法に用いられる上記粘着性積層フィルムであって、
ポリエステル系樹脂層を一層含む基材層、紫外線硬化型の凹凸吸収性樹脂層および粘着性樹脂層をこの順番に有する粘着性積層フィルム。
[12]
上記[11]に記載の粘着性積層フィルムにおいて、
上記基材層および上記凹凸吸収性樹脂層を有する積層体の上記凹凸吸収性樹脂層上に、非放射線硬化型の粘着性樹脂層を積層することにより形成された粘着性積層フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温真空下での表面処理工程において、粘着性フィルムの浮きを抑制することが可能な電子装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
図2】本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリルまたはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0014】
図1および図2は、本発明に係る実施形態の電子装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【0015】
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、以下の工程(A)、工程(B)および工程(C)を含む。
(A)回路形成面10Aを有する電子部品10と、ポリエステル系樹脂層を一層含む基材層20、紫外線硬化型の凹凸吸収性樹脂層30および粘着性樹脂層40をこの順番に有する粘着性積層フィルム50と、を備え、回路形成面10Aを保護するように電子部品10の回路形成面10Aに粘着性積層フィルム50が貼り付けられた構造体60を準備する準備工程
(B)粘着性積層フィルム50に対して紫外線を照射することにより、粘着性積層フィルム50の凹凸吸収性樹脂層30を硬化させる紫外線硬化工程
(C)真空加熱下で、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の表面を処理する表面処理工程
【0016】
前述したように、本発明者らの検討によれば、電子装置の製造方法において、高温真空下での表面処理工程において、粘着性フィルムの浮きが生じる場合があることが明らかになった。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、電子部品10の回路形成面10Aを保護するための表面保護フィルムとして、基材層20、紫外線硬化型の凹凸吸収性樹脂層30および粘着性樹脂層40をこの順番に有する粘着性積層フィルム50を使用し、高真空加熱下で、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の表面を処理する表面処理工程(C)の前に、粘着性積層フィルム50に対して紫外線を照射することにより、粘着性積層フィルム50の凹凸吸収性樹脂層30を硬化させる紫外線硬化工程(B)をおこなうことによって、高温真空下での表面処理工程(C)において、粘着性積層フィルム50の浮きを抑制することができることを見出した。
粘着性積層フィルム50の凹凸吸収性樹脂層30を硬化させることによって、粘着性積層フィルム50の耐熱性を高めることができ、高温真空下での表面処理工程(C)での粘着性積層フィルム50の反り等の変形を抑えることができる。その結果、高温真空下での表面処理工程(C)において、粘着性積層フィルム50の浮きを抑制することができる。
以上のように、本実施形態に係る電子装置の製造方法によれば、高温真空下での表面処理工程において、粘着性フィルムの浮きを抑制することが可能となる。
【0017】
1.粘着性積層フィルム
以下、本実施形態に係る電子装置の製造方法で用いる粘着性積層フィルム50について説明する。
【0018】
<基材層>
基材層20はポリエステル系樹脂層を一層のみ含むものであり、粘着性積層フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。ポリエステル系樹脂層を構成するポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。
基材層20は特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムが挙げられる。
基材層20はポリエステル系樹脂層以外の樹脂層を含んでもよい。
ポリエステル系樹脂層以外の樹脂層を構成する樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィン;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリアクリレート;ポリメタアクリレート;ポリ塩化ビニル;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアミドイミド;エチレン・酢酸ビニル共重合体;ポリアクリロニトリル;ポリカーボネート;ポリスチレン;アイオノマー;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンエーテル;ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー等のエラストマー;等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
また、基材層20を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0019】
基材層20の融点は100℃以上であることが好ましい。融点上限は特に限定されず、加工性等を鑑みて選択すればよい。
このような基材層20を用いると、表面処理工程(C)において粘着性積層フィルム50が高温に曝されても粘着性積層フィルム50の変形や溶融をより一層抑制することができる。
【0020】
基材層20は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、基材層20を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよい。
【0021】
基材層20の厚さは、例えば、バックグラインド後の電子部品の反り等を防止する観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上、特に好ましくは50μm以上である。また、粘着性積層フィルム50を電子部品に貼付ける際の当該粘着性積層フィルム50のカットしやすさ、粘着性積層フィルム50の製品形態をロール状にする場合の生産性等の観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは250μm以下、特に好ましくは75μm以下である。
基材層20は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0022】
<凹凸吸収性樹脂層>
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、基材層20と粘着性樹脂層40との間に紫外線硬化型の凹凸吸収性樹脂層30を有する。
凹凸吸収性樹脂層30は、粘着性積層フィルム50の回路形成面10Aへの追従性を良好にし、回路形成面10Aと粘着性積層フィルム50との密着性を良好にすることを目的として設けられる層である。さらに、凹凸吸収性樹脂層30は紫外線照射によって硬化することで、粘着性積層フィルム50の耐熱性を高めることを目的として設けられる層である。これによって、高温真空下での表面処理工程(C)において、粘着性積層フィルム50の浮きを抑制することが可能となる。
【0023】
凹凸吸収性樹脂層30を構成する樹脂は、凹凸吸収性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、および(メタ)アクリル系樹脂からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0024】
また、凹凸吸収性樹脂層30は架橋性樹脂を含むことが好ましい。凹凸吸収性樹脂層30が架橋性樹脂を含むことにより、紫外線硬化工程(B)において、凹凸吸収性樹脂層30をより効果的に紫外線架橋させることができ、凹凸吸収性樹脂層30の耐熱性をより一層向上させることが可能となる。これにより、表面処理工程(C)において粘着性積層フィルム50が高温に曝されても粘着性積層フィルム50の変形や溶融をより一層抑制することができる。
本実施形態に係る架橋性樹脂としては凹凸吸収性樹脂層30を形成でき、かつ、紫外線によって架橋して耐熱性が向上する樹脂であれば特に限定されないが、例えば、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンとを含むエチレン・α-オレフィン共重合体、高密度エチレン系樹脂、低密度エチレン系樹脂、中密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、プロピレン(共)重合体、1-ブテン(共)重合体、4-メチルペンテン-1(共)重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・芳香族ビニル共重合体、エチレン・α-オレフィン・芳香族ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂;エチレン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・α-オレフィン・不飽和無水カルボン酸共重合体等のエチレン・無水カルボン酸系共重合体;エチレン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・α-オレフィン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体等のエチレン・エポキシ系共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・マレイン酸共重合体、エチレン・フマル酸共重合体、エチレン・クロトン酸共重合体等のエチレン・エチレン性不飽和酸共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体;エチレン・スチレン共重合体等;(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体等の不飽和カルボン酸エステル(共)重合体;エチレン・アクリル酸金属塩共重合体、エチレン・メタアクリル酸金属塩共重合体等のアイオノマー樹脂;ウレタン系樹脂;シリコーン系樹脂;アクリル酸系樹脂;メタアクリル酸系樹脂;環状オレフィン(共)重合体;α-オレフィン・芳香族ビニル化合物・芳香族ポリエン共重合体;エチレン・α-オレフィン・芳香族ビニル化合物;芳香族ポリエン共重合体;エチレン・芳香族ビニル化合物・芳香族ポリエン共重合体;スチレン系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体;スチレン・共役ジエン共重合体;アクリロニトリル・スチレン共重合体;アクリロニトリル・エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン・スチレン共重合体;アクリロニトリル・エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン・スチレン共重合体;メタアクリル酸・スチレン共重合体;エチレンテレフタレート樹脂;フッ素樹脂;ポリエステルカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー;トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー;塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー;液晶性ポリエステル;ポリ乳酸等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0025】
これらの中でも、有機過酸化物等の架橋剤を用いた紫外線架橋が容易であることから、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体、低密度エチレン系樹脂、中密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・環状オレフィン共重合体、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・芳香族ビニル共重合体、エチレン・α-オレフィン・芳香族ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂、エチレン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・α-オレフィン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・α-オレフィン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーから選択される一種または二種以上を用いることが好ましい。
エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体、低密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・α-オレフィン・不飽和無水カルボン酸共重合体、エチレン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・α-オレフィン・エポキシ含有不飽和化合物共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体から選択される一種または二種以上を用いることがより好ましい。
エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体、低密度エチレン系樹脂、超低密度エチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系樹脂、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・α-オレフィン・共役ポリエン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体から選択される一種または二種以上を用いることがさらに好ましい。
これらの中でも、エチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・酢酸ビニル共重合体から選択される少なくとも一種が特に好ましく使用される。なお本実施形態においては上述した樹脂は、単独で用いてもよいし、ブレンドして用いてもよい。
【0026】
本実施形態における架橋性樹脂として用いられる、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィンからなるエチレン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンとしては、通常、炭素数3~20のα-オレフィンを1種類単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。中でも好ましいのは、炭素数が10以下であるα-オレフィンであり、とくに好ましいのは炭素数が3~8のα-オレフィンである。このようなα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等を挙げることができる。これらの中でも、入手の容易さからプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテンが好ましい。なお、エチレン・α-オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよいが、柔軟性の観点からランダム共重合体が好ましい。
【0027】
凹凸吸収性樹脂層30としては、例えば、一般的な粘着剤に、紫外線硬化性モノマー成分やオリゴマー成分を配合した紫外線硬化性粘着剤を使用することもできる。
一般的な粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
紫外線硬化性モノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また紫外線硬化性オリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマー等が挙げられる。
紫外線硬化性モノマー成分やオリゴマー成分の含有量は、粘着剤を構成する(メタ)アクリル系重合体等のベースポリマー100質量部に対して、例えば5質量部以上500質量部以下、好ましくは40質量部以上150質量部以下である。
【0028】
また、凹凸吸収性樹脂層30としては、ベースポリマーとして、炭素-炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた紫外線硬化性粘着剤を用いることができる。
上記炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素-炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを用いることができる。このようなベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系重合体を基本骨格とするものが好ましい。
(メタ)アクリル系重合体への不飽和結合の導入法は特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル系重合体に官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基および不飽和結合を有する化合物を、不飽和結合の紫外線硬化性を維持したまま縮合または付加反応させる方法が挙げられる。
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せの中でも、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好ましい。(メタ)アクリル系重合体がヒドロキシル基を有し、上記化合物がイソシアネート基を有する場合が好ましい。炭素-炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系重合体としては、ヒドロキシ基含有モノマーや2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0029】
上記紫外線硬化性粘着剤は、上記紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の含有量は、例えば、ベースポリマー100質量部に対して30質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0030】
紫外線硬化性粘着剤は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α´-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフエノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0031】
光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成する(メタ)アクリル系重合体等のベースポリマー100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、粘着剤の保存性を向上させる点から、15質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0032】
凹凸吸収性樹脂層30の厚さは、電子部品10の回路形成面10Aの凹凸構造を埋め込むことができる厚さであれば、特に制限されないが、例えば、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、20μm以上900μm以下であることがより好ましく、30μm以上800μm以下であることがさらに好ましい。
【0033】
また、電子部品10の回路形成面10Aに存在する凹凸構造の高さをH[μm]とし、凹凸吸収性樹脂層30の厚みをd[μm]としたとき、H/dが1以下であることが好ましく、0.85以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。H/dが上記上限値以下であると、粘着性積層フィルム50の厚みをより薄くしつつ、凹凸吸収性をより良好にすることができる。
H/dの下限は特に限定されないが、例えば、0.01以上である。バンプ電極の高さは、一般的に2μm以上600μm以下である。
【0034】
<粘着性樹脂層>
粘着性樹脂層40は、凹凸吸収性樹脂層30の一方の面側に設けられる層であり、粘着性積層フィルム50を電子部品10の回路形成面10Aに貼り付ける際に、電子部品10の回路形成面10Aに接触して粘着する層である。
【0035】
粘着性樹脂層40を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、接着力の調整を容易にできる点等から、(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0036】
粘着性樹脂層40は、電子部品10への糊残りを抑制する観点から、非放射線硬化型の粘着性樹脂層を積層することにより形成されたものであることが好ましい。非放射線硬化型の粘着性樹脂層を構成する粘着剤としては、電子部品10への接着性、剥離後の電子部品10の超純水やアルコール等の有機溶剤による洗浄性等の観点から、(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の一種または二種以上を単量体成分として用いた重合体等が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル系重合体は、凝集力や耐熱性等の改質を目的として、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。これらのモノマー成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分を100質量%としたとき、50質量%以下が好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系重合体は、架橋させるため、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。このような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。多官能性モノマーの使用量は、全モノマー成分を100質量%としたとき、30質量%以下が好ましい。
【0040】
(メタ)アクリル系重合体は、一種または二種以上のモノマー成分を含む混合物を重合することにより得ることができる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等が挙げられる。電子部品10への汚染防止等の点から、(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量は、好ましくは30万以上、さらに好ましくは40万~300万程度である。
【0041】
また、非放射線硬化型の粘着性樹脂層を構成する粘着剤には、ベースポリマーである(メタ)アクリル系重合体等の数平均分子量を高めるため、外部架橋剤を用いることもできる。外部架橋方法としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等の架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤の使用量は、ベースポリマーによって適宜決定されるが、例えば、ベースポリマー100質量部に対して好ましくは5質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上5質量部以下である。
【0042】
非放射線硬化型の粘着性樹脂層を構成する粘着剤は、必要に応じて、粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤をさらに含んでもよい。
【0043】
粘着性樹脂層40の厚みは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0044】
粘着性樹脂層40は、例えば、凹凸吸収性樹脂層30上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80~170℃において、15秒~5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40~80℃において5~300時間程度加熱してもよい。
【0045】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50全体の厚さは、機械的特性と取扱い性のバランスから、好ましくは25μm以上500μm以下であり、より好ましくは50μm以上300μm以下である。
【0046】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、各層の間に接着層(図示せず)を設けていてもよい。この接着層によれば、各層の間の接着性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態に係る粘着性積層フィルム50は、例えば、基材層20および凹凸吸収性樹脂層30を有する積層体の凹凸吸収性樹脂層30上に、粘着性樹脂層40を積層することにより形成することができる。
【0048】
2.電子装置の製造方法
次に、本実施形態に係る電子装置の製造方法の各工程について説明する。
【0049】
(工程(A))
はじめに、回路形成面10Aを有する電子部品10と、基材層20、紫外線硬化型の凹凸吸収性樹脂層30および粘着性樹脂層40をこの順番に有する粘着性積層フィルム50と、を備え、回路形成面10Aを保護するように電子部品10の回路形成面10Aに粘着性積層フィルム50が貼り付けられた構造体60を準備する。
【0050】
このような構造体60は、例えば、図2に示すように、電子部品10の回路形成面10Aにバックグラインドテープ80が貼り付けられた状態で、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cをバックグラインドするバックグラインド工程(A1)、バックグラインド工程(A1)の後に、電子部品10からバックグラインドテープ80を剥がす工程(A2)と、電子部品10の回路形成面10Aに粘着性積層フィルム50を貼り付ける工程(A3)とをおこなうことによって作製することができる。
【0051】
バックグラインド工程(A1)では、バックグラインドテープ80に貼り付けられた状態で、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cをバックグラインドする。
ここで、バックグラインドするとは、電子部品10を割ったり、破損したりすることなく、所定の厚みまで薄化加工することを意味する。
電子部品10のバックグラインドは、公知の方法で行うことができる。例えば、研削機のチャックテーブル等に電子部品10を固定し、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cを研削する方法が挙げられる。
また、バックグラインドテープ80としては、特に限定されず、一般的に公知のバックグラインドテープを用いることができる。
【0052】
裏面研削方式としては特に限定されないが、例えば、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の研削方式を採用することができる。それぞれ研削は、水を電子部品10と砥石にかけて冷却しながら行うことができる。
【0053】
バックグラインドテープ80に貼り付けられた電子部品10としては回路形成面10Aを有する電子部品10であれば特に限定されないが、例えば、半導体ウエハ、モールドウエハ、モールドパネル、モールドアレイパッケージ、半導体基板等が挙げられる。
また、半導体基板としては、例えば、シリコン基板、サファイア基板、ゲルマニウム基板、ゲルマニウム-ヒ素基板、ガリウム-リン基板、ガリウム-ヒ素-アルミニウム基板、ガリウム-ヒ素基板、タンタル酸リチウム基板等が挙げられる。
【0054】
また、電子部品10はどのような用途の電子部品であってもよいが、例えば、ロジック用(例えば、通信用、高周波信号処理用等)、メモリ用、センサー用、電源用の電子部品等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0055】
電子部品10の回路形成面10Aは、例えば、電極からなる凹凸構造10Bを含む。
電極を構成する金属種は特に限定されず、例えば、銀、金、銅、錫、鉛、ビスマス及びこれらの合金等が挙げられる。これらの金属種は1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
バックグラインド工程(A1)の後に、電子部品10からバックグラインドテープ80を剥がす方法は特に限定されず、一般的に公知の方法で剥がすことができる。
また、電子部品10の回路形成面10Aに粘着性積層フィルム50を貼り付ける方法も特に限定されず、一般的に公知の方法で剥がすことができる。例えば、人手により行ってもよいし、ロール状の粘着性積層フィルム50を取り付けた自動貼り機と称される装置によって行ってもよい。
【0057】
(工程(B))
次いで、粘着性積層フィルム50に対して紫外線を照射することにより、粘着性積層フィルム50の凹凸吸収性樹脂層30を硬化させる。これにより、粘着性積層フィルム50の耐熱性を向上させることができる。こうすることで、工程(C)において粘着性積層フィルム50が高温に曝されても粘着性積層フィルム50の変形を抑制することができるため、高温真空下での表面処理工程(C)において、粘着性積層フィルム50の浮きを抑制することが可能となる。
【0058】
凹凸吸収性樹脂層30に紫外線を照射することによって、凹凸吸収性樹脂層30を架橋させて硬化させることができる。
紫外線は、例えば、粘着性積層フィルム50の基材層20側の面から照射される。
【0059】
(工程(C))
次いで、真空加熱下で、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cを処理する。この表面処理工程(C)によって、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに表面層70を形成することができる。
表面処理工程(C)としては電子装置の製造工程においておこなわれる高温真空下における表面処理であれば特に限定されないが、例えば、イオン注入工程、金属膜形成工程およびアニール処理工程等が挙げられる。これらの工程は一種を単独でおこなってもよいし、二種以上を組み合わせておこなってもよい。
ここで、通常はイオン注入工程後にアニール処理工程をおこなう。また、金属膜形成工程としては、電子部品10の回路形成面10Aとは反対側の面10Cに、銅やアルミ等の金属薄膜を形成する工程(バックメタル工程)等が挙げられる。金属薄膜の形成は、例えば、スパッタリング、蒸着、めっき、CVD等によりおこなうことができる。
【0060】
表面処理工程(C)における加熱温度は表面処理工程によって適宜設定されるため特に限定されないが、例えば、40℃以上350℃以下であり、好ましくは100℃以上350℃以下であり、より好ましくは120℃以上300℃以上である。
【0061】
(工程(D))
また、本実施形態に係る電子装置の製造方法において、工程(C)の後に電子部品10と粘着性積層フィルム50とを剥離する工程(D)をさらにおこなってもよい。この工程(D)をおこなうことで、粘着性積層フィルム50から電子部品10を剥離することができる。剥離温度は、例えば20~100℃である。
電子部品10と粘着性積層フィルム50との剥離は、公知の方法で行うことができる。
【0062】
(その他の工程)
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、上記以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、電子装置の製造方法において公知の工程を用いることができる。
【0063】
例えば、ダイシング工程、ダイボンディング工程、ワイヤボンディング工程、フリップチップ接続工程、キュア加温テスト工程、不純物活性化アニール処理工程、封止工程、リフロー工程等の電子部品の製造工程において一般的におこなわれている任意の工程等をさらに行ってもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0065】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0066】
この出願は、2020年2月4日に出願された日本出願特願2020-016776号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0067】
10 電子部品
10A 回路形成面
10B 凹凸構造
10C 回路形成面とは反対側の表面
20 基材層
30 凹凸吸収性樹脂層
40 粘着性樹脂層
50 粘着性積層フィルム
60 構造体
70 表面層
80 バックグラインドテープ
図1
図2