(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】新規使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240619BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240619BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240619BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240619BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240619BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240619BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240619BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240619BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240619BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240619BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240619BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240619BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240619BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240619BHJP
A61K 31/138 20060101ALI20240619BHJP
A61K 31/4015 20060101ALI20240619BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P9/00
A61P21/02
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
A61P29/00
A61P31/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K45/06
A61K31/138
A61K31/4015
A61K31/4985
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022098388
(22)【出願日】2022-06-17
(62)【分割の表示】P 2019513845の分割
【原出願日】2017-09-12
【審査請求日】2022-07-13
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】グレッチェン・スナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ピー・ウェノグル
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・オブライエン
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ・ヘンドリック
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512842(JP,A)
【文献】特許第7134168(JP,B2)
【文献】Psychopharmacology,2016年,233,3113-3124
【文献】Journal of Medical Chemistry,2016年,59,1149-1164
【文献】Current Opinion in Pharmacology,2007年,7,86-92
【文献】Frontiers in Neuroscience,2011年,5,Article 21
【文献】Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry,2014年,277-286
【文献】Experimental Neurology,2013年,247,80-90
【文献】Bioorganic and Medical Chemistry,2009年,17,6796-6802
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDE1阻害剤を含む、神経炎症の治療または予防を必要とする患者における神経炎症の治療または予防のための医薬であって、PDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の
A.式VII:
【化1】
[式中、
(i)Xは、メチレンであり;
(ii)Yは、アリーレンであり;
(iii)Zは、アリール、ピリジル、または-C(O)-R
1であり;
(iv)R
1は、C
1-6アルキル、または-OHであり;
(v)R
4は、Hであり、R
5は、ハロで置換されていてもよいアリールであり;
(vi)Zは、ハロで置換されていてもよい]
または
B.式XII:
【化2】
[式中、
(i)R
1は、メチルであり;
(ii)R
2およびR
3は、ともに、メチルであり;
(iii)R
4は、Hであり;
(iv)R
5は、-C(=O)-C
1-6アルキルまたはC
1-6-ヒドロキシアルキルで置換されていてもよいアリールであり;
(v)R
6は、Hであり、R
7は、ハロゲンで置換されていてもよいアリールであり;
(vi)nは、1である]
で示される化合物である、医薬。
【請求項2】
PDE1阻害剤が、10nM未満のIC
50をもってPDE1の活性を阻害する、請求項1記載の医薬。
【請求項3】
PDE1阻害剤が、PDE1以外のPDEタイプの活性を阻害しない、請求項1または2記載の医薬。
【請求項4】
PDE1阻害剤が、PDE1以外のPDEタイプについて少なくとも1000倍大きいIC
50を有する、請求項3記載の医薬。
【請求項5】
患者が、例えば
a.神経変性状態;
b.脳卒中、心停止、低酸素症、脳出血または外傷性脳損傷;
c.うつ病、統合失調症、心的外傷後ストレス障害、不安、注意欠陥障害および双極性疾患を包含する、異常な神経伝達物質産生および/または反応によって特徴付けられる状態;
d.慢性CNS感染症;ならびに
e.化学療法の結果生じる神経炎症
から選択される、神経炎症および/もしくはミクログリア機能に関連する疾患もしくは障害に罹患している、請求項1~4いずれか1項記載の医薬。
【請求項6】
患者が、
a.1種類以上の炎症誘発性サイトカインのレベル上昇;
b.1種類以上の抗炎症性サイトカインのレベル減少;
c.ミクログリアM2表現型と比べたミクログリアM1表現型のレベル上昇
を有する、請求項1~5いずれか1項記載の医薬。
【請求項7】
PDE1阻害剤が、
【化3】
から選択される、請求項1~5いずれか1項記載の医薬。
【請求項8】
PDE1阻害剤が、
【化4】
である、請求項7記載の医薬。
【請求項9】
PDE1阻害剤が、
【化5】
である、請求項7記載の医薬。
【請求項10】
PDE1阻害剤が、PDE4阻害剤と組み合わせて投与される、請求項1~9いずれか1項記載の医薬。
【請求項11】
PDE4阻害剤が、ロリプラムである、請求項10記載の医薬。
【請求項12】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、三環系抗うつ薬(TCA)および非定型抗精神病薬から選択される、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、1種類以上の抗うつ薬と組み合わせて投与される、請求項1~11いずれか1項記載の医薬。
【請求項13】
神経炎症が、脳におけるミクログリア細胞の発現および/または活性化の増加と関連する、請求項1~12いずれか1項記載の医薬。
【請求項14】
神経炎症の治療または予防が、網膜神経節細胞の生存率によって特徴付けられる、請求項1~13いずれか1項記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年9月12日に出願された米国仮出願第62/393,386号、および2016年10月25日に出願された米国仮出願第62/412,739号、および2017年3月5日に出願された米国仮出願第62/467,218号の利益および優先権を主張する(それぞれの内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
発明の分野
当該分野は、炎症、および/または炎症、例えば神経炎症に関連する疾患もしくは障害の治療または予防のためのホスホジエステラーゼ1(PDE1)の阻害剤の投与に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホジエステラーゼ(PDE)の11種類のファミリーが同定されているが、ファミリーIのPDEであるCa2+-カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ(CaM-PDE)だけがCa2+-カルモジュリンによって活性化され、カルシウムおよび環状ヌクレオチド(例えば、cAMPおよびcGMP)シグナル伝達経路を媒介することが示されている。したがって、これらのPDEは、細胞内カルシウムレベルが上昇したときに刺激された状態で活性となり、環状ヌクレオチドの加水分解の増加をもたらす。公知の3種類のCaM-PDE遺伝子であるPDE1A、PDE1BおよびPDE1Cはすべて、中枢神経系組織において発現する。脳では、PDE1Aの主な発現は皮質および新線条体においてであり、PDE1Bは新線条体、前頭前皮質、海馬および嗅結節において発現し、PDE1Cはより遍在的に発現する。
【0003】
PDE4は炎症細胞および免疫細胞に見られる主要なcAMP代謝酵素であり、PDE4阻害剤は抗炎症薬として興味深いものである。しかしながら、PDE-1は、サイトカインである顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)によって媒介される単球からマクロファージへの分化において誘導されるが、PDE1は、炎症反応において大きな役割を果たすと考えられていない。PDE1阻害剤であるビンポセチンは、抗炎症性であることが示されているが、ビンポセチンの抗炎症作用は、PDE遮断よりもむしろIκBキナーゼ複合体(IKK)の直接阻害によって引き起こされると考えられる。
【0004】
ミクログリアは、ホメオスタシスを維持し、脳内の炎症を媒介する中心的な役割を果たす。ミクログリアは、ニューロンおよび星状細胞へ複雑なシグナル伝達をもって伝え、いくつの脳細胞が必要であるか、およびいつシナプスを排除するか、例えば欠陥または未使用シナプスを破壊するかを決定する。ミクログリアは、異なる状態で存在することができる:比較的不活性であるが、サーベイランス機能を果たすことができる休止状態、または機能的に異なる2つの活性化状態M1およびM2のうちの1つ。M1状態は、IFN-γまたはリポ多糖(LPS)のようなシグナルによって誘導され、TNF-、IL-1β、および活性酸素種/活性窒素種(ROS/NOS)などの炎症性サイトカインを放出することによって反応する。M2状態は、抗炎症効果を有し、炎症誘発性サイトカインの放出を阻止し、デブリを取り込み、組織修復を促進し、神経栄養因子を放出する。活性化ミクログリアは、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を包含するさまざまな神経変性疾患と関連しており、炎症がこれらの状態の根本的な原因であるのか影響であるのかは最終的には決定されていないがこれらの疾患の病理の一因となり得る。
【0005】
PDE1が脳内または他の場所で炎症性サイトカインを媒介することにおいて重要な役割を果たすこと、またはそれが炎症性疾患に対して重要な効果を有することは、これまでに示されていない。一般的な炎症過程、ならびに炎症に関連する疾患および障害は数多くあり、そのメカニズムおよび作用は、依然として十分に理解されていない。現在、特に脳に生じる炎症に関連して、炎症および炎症関連疾患および障害の効果的な治療方法に対する需要は大部分が満たされていない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、LPSで処理したBV2細胞におけるホスホジエステラーゼ発現を示している - RNA配列解析。FPKMとは、マッピングされた読み取りデータ100万当たりのエクソン1キロベース当たりのフラグメント読み取りデータ(Fragment Reads per kilobase of exon per million reads mapped)をいう。
【0007】
【
図2】
図2は、PDE1阻害剤(化合物214)がBV2細胞におけるLPS誘導性IL1βを抑制することを示している。
【0008】
【
図3】
図3は、インビボで、PDE1阻害剤(化合物214)がマウス海馬におけるLPS誘導性IL1βを抑制することを示している。
【0009】
【
図4】
図4aは、定量的PCRによって測定して、PDE1阻害剤(化合物214)がBV2細胞における炎症性サイトカインIL1β、TNFαおよびCcl2のLPS誘導性発現増加を有意に減少させるが、PDE4阻害剤ロリプラムは異なるプロファイルを示すことを示している。別の実験において、
図4bは、本発明のPDE1阻害剤(化合物214)の投与がBV2細胞における炎症誘発性マーカーのLPS誘導性変化を大幅に減少させるかまたは鈍化させることを示している(
図4b)。
【0010】
【
図5】
図5は、BV2細胞からのLPS誘導性TNFα放出の阻害を示している。
【0011】
【
図6】
図6は、LPS刺激性TNFα mRNA発現のPDE1阻害剤による用量依存的減少を示している。
【0012】
【
図7】
図7は、炎症誘発性サイトカイン発現のLPS誘導のPDE1阻害剤による阻害および抗炎症性サイトカイン(IL-10)の発現の増強を示している。
【0013】
【
図8】
図8は、PDE1阻害剤(化合物214)がマウスにおけるLPS誘導性炎症性遺伝子発現変化を防止することを示している。成体マウスを、ビヒクル(白色の棒)、500μg/kgのLPS(皮下)(灰色の棒)、または10mg/kgのITI-214(腹腔内)および500μg/kgのLPS(皮下)(黒色の棒)で2時間処理する(n=4)。TNF、IL1β、Ccl2およびIL6のmRNAレベルについて線条体組織を分析する。発現レベルは、Q-PCRシグナルのビヒクルからの変化(ΔΔCt)として示され、ANOVAを用いて比較される。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。
【0014】
【
図9】
図9は、LPSおよびITI-214に対する共通の反応パターンを有する選択された遺伝子の発現レベル(FPKM)を示している。BV2細胞を、LPS、ITI-214、またはLPS+ITI-214で処理する。
【0015】
【
図10a】
図10aは、50ng/mlのLPSおよび示された用量のITI-214(214と略する)によるBV2細胞における各遺伝子の発現レベルの変化を示している。
【0016】
【
図10b】
図10bは、LPS刺激の不在下でのITI-214の用量依存的効果を示している。
図10aについては、棒は、X軸上に示される特定の遺伝子ごとに、左から右へ、LPS、0.1μMの214+LPS、0.4μMの214+LPS、1.1μMの214+LPS、3.3μMの214+LPS、10μMの214+LPSで処理された試料を示す。
図10bについては、棒は、X軸上に示される特定の遺伝子ごとに、左から右へ、0.04μMの214、0.1μMの214、0.4μMの214、1.1μMの214、3.3μMの214、10μMの214で処理された試料を示す。
【0017】
【
図11a】
図11aは、本発明のPDE1阻害剤(化合物214)のcGMP依存性活性、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)による粒子状グアニリルシクラーゼ活性または一酸化窒素供与体DEANOによる可溶性グアニリルシクラーゼ活性が刺激され得る。各遺伝子について、棒は、左から右へ、LPS、3.3μMの214、10μMの214、フォルスコリン、およびDEANOによる処理を示す。
【0018】
【
図11b】
図11bは、LPS刺激、PDE1のITI-214阻害、およびPKA阻害剤(cAMPS-Rp)(100μM)またはPKG阻害剤(-8-Br-PET-cGMPS)(100μM)を組み合わせることによるITI-214反応に対する各環状ヌクレオチド(cAMPまたはcGMP)の影響を示している。
図11bについて、棒は、左から右へ、LPS、3.3μMの214、10μMの214、cAMPS-Rp、およびRP-8-Br-PET-cGMPSによって処理された試料を示す。
【0019】
【
図12】
図12は、実施例10に記載の視覚損傷モデルにおいて、PBS対照と比較した場合、試験したPDE1阻害剤が網膜神経節細胞の生存を増加させるのに非常に有効であることを示している。
【発明の概要】
【0020】
驚くべきことに、本発明者らは、PDE1がある種の炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの発現を媒介すること、およびPDE1阻害剤がPDE4阻害剤の抗炎症効果とは異なる特異的な抗炎症効果を有することを発見した。一の態様において、PDE1の阻害は、ミクログリアにおける炎症活性を調節し、PDE4阻害とは異なるプロファイルを有する炎症誘発性遺伝子の発現を減少させ、それにより、毒性神経炎症の新規治療法を提供する。
【0021】
細胞内環状ヌクレオチドレベルの上昇によるミクログリアにおける炎症反応の負の調節は、治療介入のための有望な分野を提供する。ミクログリアにおける環状グアノシン一リン酸(cGMP)は、心房性ナトリウム利尿受容体または可溶性グアニリルシクラーゼの活性化によって産生され、ホスホジエステラーゼ(PDE)によって加水分解される。産生を刺激することまたは加水分解を阻害することのいずれかによる細胞内cGMPの増加は、ミクログリアにおけるLPS誘導性反応を減弱させることが示されている。加えて、cGMPは、ミクログリアのLPS誘導性運動において役割を果たすことが示されている。環状アデノシン一リン酸(cAMP)もまた、炎症反応の重要な調節因子である。LPSおよびサイトカイン刺激は、PDE4Bの発現を増加させ、cAMPを減少させることが示されている。PDEは、立証されたドラッガブル標的(proven drug-able targets)である。PDE1Bがミクログリアにおいて発現するPDE1ファミリーの酵素は、cAMPおよびcGMPの両方を加水分解し、カルシウムによって活性化される。
【0022】
本発明の化合物のPDE1酵素標的が果たす役割のうち、PDE1Bアイソフォームは、ミクログリアに多量に見られ、そこでは、それは、特に細胞内カルシウム上昇の条件下で、炎症反応を制御する役割を果たし得る。これは、ITI-214が、例えば慢性神経炎症に関連する疾患に有益であることを証明するかもしれないことを示唆している。
【0023】
したがって、一の実施態様において、本発明は、炎症、および/または炎症に関連する疾患もしくは障害を治療するために種々のPDE1阻害化合物を使用することを提供する。炎症は神経炎症であり得、一の実施態様において、PDE1阻害剤は脳におけるミクログリア活性化を特異的に調節することができる。本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載のPDE1阻害剤の投与により、ある種の炎症バイオマーカー(例えば、IL1β、TNFαおよびCcl2)のLPS誘導性発現が鈍化し得るかまたは減少し得ることを発見した。この発見は、種々の炎症バイオマーカーの発現に関連するかまたは該発現と相関がある炎症性疾患および障害を治療するための広範囲の用途を有する。
【0024】
理論に束縛されるものではないが、この活性の1つの可能なメカニズムは、IL-10のような抗炎症性サイトカインのアップレギュレーションを介して、M1活性化および炎症誘発性サイトカインの放出を減少させるように、また、M2ミクログリアの作用を増強するように、PDE1Bの阻害が血液におけるマクロファージ活性化および/またはCNSにおけるミクログリア活性化に影響を及ぼし得ることである。CNS病理における神経炎症およびミクログリア機能の役割は完全には理解されていないが、本発明者らは、以下のものを包含するさまざまな状態に関連していると仮定している:
a.神経変性状態、例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および脱髄性状態、例えば多発性硬化症(MS)、およびプリオン病;
b.脳卒中、心停止、低酸素症、脳出血または外傷性脳損傷に起因する損傷の修復;
c.うつ病、統合失調症、心的外傷後ストレス障害、不安、注意欠陥障害および双極性疾患を包含する、異常な神経伝達物質産生および/または反応によって特徴付けられる状態;例えば、上記のいずれかが神経炎症に関連している場合;
d.慢性CNS感染症、例えばライム病、梅毒、または免疫抑制状態の結果生じるCNS感染症、例えばHIV認知症;
e.化学療法の結果生じる神経炎症。
【0025】
本発明の化合物により標的とされる、脳内のPDE1の阻害は、ミクログリア活性化に影響を及ぼし、損傷を与える炎症誘発性サイトカインシグナル伝達を減少させ、同時に、抗炎症性サイトカインならびにミクログリア運動および動員に関与する因子の産生を増加させると考えられる。
【0026】
したがって、一の実施態様において、本発明は、I型ホスホジエステラーゼの特異的阻害剤(例えば、PDE1阻害剤、例えば、PDE1B阻害剤)(例えば、本明細書に記載の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIおよび/またはXIIのPDE1阻害剤)の投与により寛解され得る炎症または炎症に関連する疾患の新規の治療方法または予防方法を提供する。
【0027】
一の実施態様において、本発明は、例えば、
a.神経変性状態、例えばアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および脱髄性状態、例えば多発性硬化症(MS)、およびプリオン病;
b.脳卒中、心停止、低酸素症、脳出血または外傷性脳損傷;
c.うつ病、統合失調症、心的外傷後ストレス障害、不安、注意欠陥障害および双極性疾患を包含する、異常な神経伝達物質産生および/または反応によって特徴付けられる状態;例えば、上記のいずれかが神経炎症に関連している場合;および
d.慢性CNS感染症、例えばライム病、または免疫抑制状態の結果生じるCNS感染症、例えばHIV認知症;
e.化学療法の結果生じる神経炎症
から選択される、神経炎症、ならびに/または神経炎症および/もしくはミクログリア機能に関連する疾患または障害の治療方法であって、該治療を必要とする患者に、本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIおよび/またはXIIのPDE1阻害剤)の有効量、例えば(i)M1ミクログリアの活性化の軽減または阻害に有効な量および/または(ii)1種類以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFαおよびCcl2、またはそれらの組合せ)のレベルの減少に有効な量を投与することを含む治療方法を提供する。
【0028】
一の実施態様において、本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIおよび/またはXIIのPDE1阻害剤)は、1種類以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFαおよびCcl2、またはそれらの組合せ)のレベルが上昇している患者、例えば、例えば、
a.神経変性状態、例えばアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および脱髄性状態、例えば多発性硬化症(MS)、およびプリオン病;
b.脳卒中、心停止、低酸素症、脳出血または外傷性脳損傷;
c.うつ病、統合失調症、心的外傷後ストレス障害、不安、注意欠陥障害および双極性疾患を包含する、異常な神経伝達物質産生および/または反応によって特徴付けられる状態;例えば、上記のいずれかが神経炎症に関連している場合;および
d.慢性CNS感染症、例えばライム病、または免疫抑制状態の結果生じるCNS感染症、例えばHIV認知症;
e.化学療法の結果生じる神経炎症
から選択される、神経炎症、ならび/または神経炎症および/もしくはミクログリア機能に関連する疾患または障害に罹患している患者に投与される。
【0029】
本発明のさらなる実施態様は、以下の詳細な説明および実施例に記載されているか、またはそれらから明白である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本発明の方法で使用するための化合物
一の実施態様において、本明細書に記載の治療方法および予防方法に使用するためのPDE1阻害剤は、置換されていてもよい4,5,7,8-テトラヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジンまたは4,5,7,8,9-ペンタヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジン、例えば式II、例えば遊離形態または塩形態の式II-Aまたは式II-Bで示される化合物である:一の実施態様において、本明細書に記載の治療方法および予防方法に使用するためのPDE1阻害剤は、置換されていてもよい4,5,7,8-テトラヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジンまたは4,5,7,8,9-ペンタヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジン、例えば式II、例えば遊離形態または塩形態の式II-Aまたは式II-Bで示される化合物である:
【化1】
式中、
(i)Qは、C(=O)、C(=S)、C(=N(R
20))またはCH
2であり;
(ii)Lは、単結合、-N(H)-、-CH
2-、-S-、-S(O)-または-S(O
2)-であり;
(iii)R
1は、HまたはC
1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(iv)R
4は、HまたはC
1-6アルキル(例えば、メチルまたはイソプロピル)であり、R
2およびR
3は、独立して、
H
ハロまたはヒドロキシで置換されていてもよい、C
1-6アルキル(例えば、メチル、イソプロピル)(例えば、R
2およびR
3はともにメチルであるか、またはR
2はHであり、R
3はメチル、エチル、イソプロピルまたはヒドロキシエチルである)、
アリール、
ヘテロアリール、
(所望によりヘテロ)アリールアルコキシ、
(所望によりヘテロ)アリールC
1-6アルキル
であるか;または
R
2およびR
3は一緒になって、3~6員環を形成するか;
または
R
2はHであり、R
3およびR
4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成するか
(好ましくは、R
3およびR
4は一緒にシス配置を有し、例えば、R
3およびR
4を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する);
または
(v)R
5は、
a)-D-E-F(式中:
Dは、C
1-4アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
Eは、単結合、C
2-4アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
Fは、
H、
アリール(例えば、フェニル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリジル、ジアゾリル、トリアゾリル、例えば、ピリド-2-イル、イミダゾール-1-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル)、
ハロ(例えば、F、Br、Cl)、
ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
-C(O)-R
15、
-N(R
16)(R
17)、または
NまたはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC
3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピロリジニル(例えば、ピロリジン-3-イル)、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)
であり;
ここで、D、EおよびFは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C
1-4アルキル(例えば、メチル)、ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、C
1-4アルコキシ(例えば、メトキシ)、ヒドロキシ、C
1-4カルボキシ、またはさらなるアリールもしくはヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)で置換されていてもよく、
例えば、Fは、ヘテロアリール、例えば、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリド-2-イル、5-フルオロピリド-2-イル、6-フルオロピリド-2-イル、3-フルオロピリド-2-イル、4-フルオロピリド-2-イル、4,6-ジクロロピリド-2-イル)、ハロC
1-4アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリド-2-イル)またはC
1-4アルキル(例えば、5-メチルピリド-2-イル)で置換されているピリジルであるか、またはFは、アリール、例えば、1個以上のハロで置換されているフェニル(例えば、4-フルオロフェニル)であるか、またはFは、C
1-6アルキルで置換されていてもよいC
3-7ヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジニル)(例えば、1-メチルピロリジン-3-イル)である);または
b)例えばハロC
1-4アルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキル;
c)式II-Aまたは式II-Bのピロロ部分の窒素と結合しており、式A:
【化2】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R
8、R
9、R
11およびR
12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R
10は、
ハロゲン、
C
1-4アルキル、
ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
C
1-4アルコキシ(例えば、メトキシ)、
C
3-7シクロアルキル、
ヘテロC
3-7シクロアルキル(例えば、ピロリジニルまたはピペリジニル)、
C
1-4ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
アリール(例えば、フェニル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えば、ピリド-2-イルまたはピリド-4-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル(例えば、イミダゾール-1-イル)、トリアゾリル(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル)、テトラゾリル、
アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、
アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、
ヘテロアリールカルボニル、または
アルコキシカルボニル
であり、
ここで、該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、独立して、1個以上のC
1-4アルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、C
1-4カルボキシ、-SHまたはさらなるアリール、ヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)またはC
3-8シクロアルキルで置換されていてもよく、
好ましくは、R
10は、上記で定義された置換基で置換されていてもよい、例えばハロまたはアルキルで置換されていてもよい、フェニル、ピリジル、ピペリジニルまたはピロリジニルであり、
ただし、X、YまたはZが窒素である場合、R
8、R
9またはR
10は、それぞれ、存在しない)
で示される部分
であり;
(vi)R
6は、
H、
C
1-4アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソブチル)、
C
3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)、
ヘテロC
3-7シクロアルキル(例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル)、
アリール(例えば、フェニル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリド-4-イル)、
アリールC
1-4アルキル(例えば、ベンジル)、
アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、
ヘテロアリールアミノ、
N,N-ジC
1-4アルキルアミノ、
N,N-ジアリールアミノ、
N-アリール-N-(アリールC
1-4アルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)、または
-N(R
18)(R
19)
であり、
ここで、該アリールおよびヘテロアリールは、1つ以上のC
1-4アルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、C
1-4カルボキシ、またはさらなるアリール、ヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)またはC
3-8シクロアルキルで置換されていてもよく;
(vii)R
7は、H、C
1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)、ハロゲン(例えば、Cl)、-N(R
18)(R
19)、ヒドロキシまたはC
1-6アルコキシであり;
(viii)n=0または1であり;
(ix)n=1である場合、Aは、-C(R
13R
14)-であり、ここで、R
13およびR
14は、独立して、H、またはC
1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(所望によりヘテロ)アリールC
1-4アルコキシ、(所望によりヘテロ)アリールC
1-4アルキルであるか、またはR
14は、R
2もしくはR
4と架橋を形成することができ;
(x)R
15は、C
1-4アルキル、ハロC
1-4アルキル、-OHまたは-OC
1-4アルキル(例えば、-OCH
3)であり;
(xi)R
16およびR
17は、独立して、HまたはC
1-4アルキルであり;
(xii)R
18およびR
19は、独立して、
H、
C
1-4アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソブチル)、
C
3-8シクロアルキル(例えば、シクロヘキシルまたはシクロペニル)、
ヘテロC
3-8シクロアルキル(例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル)、
アリール(例えば、フェニル)または
ヘテロアリール(例えば、ピリジル)
であり、
ここで、該アリールおよびヘテロアリールは、1つ以上の、
ハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、
ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)、
C
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
C
1-4カルボキシ、または
さらなるアリール、ヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)またはC
3-8シクロアルキル
で置換されていてもよく、
(xiii)R
20は、H、C
1-4アルキルまたはC
3-7シクロアルキルである。
【0031】
別の実施態様において、本明細書に記載の治療方法および予防方法に使用するためのPDE1阻害剤は、式I、例えば遊離形態または塩形態の式I-Aおよび式I-Bで示される化合物である:
【化3】
式中、
(i)Qは、C(=O)、C(=S)、C(=N(R
20))またはCH
2であり;
(ii)Lは、単結合、-N(H)-、-CH
2-、-S-、-S(O)-または-S(O
2)-であり;
(iii)R
1は、HまたはC
1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(iv)R
4は、HまたはC
1-6アルキル(例えば、メチルまたはイソプロピル)であり、R
2およびR
3は、独立して、
H、またはハロもしくはヒドロキシで置換されていてもよい、C
1-6アルキル(例えば、メチル、イソプロピル)(例えば、R
2およびR
3はともにメチルであるか、またはR
2は、Hであり、R
3は、メチル、エチル、イソプロピルまたはヒドロキシエチルである)、
アリール、
ヘテロアリール、
(所望によりヘテロ)アリールアルコキシ、または
(所望によりヘテロ)アリールC
1-6アルキル
であるか;
または
R
2はHであり、R
3およびR
4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し
(好ましくは、R
3およびR
4は一緒にシス配置を有し、例えば、R
3およびR
4を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する);
(v)R
5は、
a)-D-E-F(式中、
Dは、C
1-4アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
Eは、単結合、C
2-4アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
Fは、
H、
アリール(例えば、フェニル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリジル、ジアゾリル、トリアゾリル、例えば、ピリド-2-イル、イミダゾール-1-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル)、
ハロ(例えば、F、Br、Cl)、
ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
-C(O)-R
15、
-N(R
16)(R
17)、または
NまたはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC
3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピロリジニル(例えば、ピロリジン-3-イル)、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)
であり;
ここで、D、EおよびFは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C
1-4アルキル(例えば、メチル)、ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Fは、ヘテロアリール、例えば、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリド-2-イル、5-フルオロピリド-2-イル、6-フルオロピリド-2-イル、3-フルオロピリド-2-イル、4-フルオロピリド-2-イル、4,6-ジクロロピリド-2-イル)、ハロC
1-4アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリド-2-イル)またはC
1-4アルキル(例えば、5-メチルピリド-2-イル)で置換されているピリジルであるか、またはFは、アリール、例えば、1個以上のハロで置換されているフェニル(例えば、4-フルオロフェニル)であるか、またはFは、C
1-6アルキルで置換されていてもよいC
3-7ヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジニル)(例えば、1-メチルピロリジン-3-イル)である);または
b)例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキル;
c)式I-Aまたは式I-Bのピロロ部分の窒素と結合しており、式A:
【化4】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R
8、R
9、R
11およびR
12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R
10は、
ハロゲン、
C
1-4アルキル、
C
3-7シクロアルキル、
C
1-4ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
アリール(例えば、フェニル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えば、ピリド-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、
アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、
アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、
ヘテロアリールカルボニル、または
アルコキシカルボニル
であり;
ただし、X、YまたはZが窒素である場合、R
8、R
9またはR
10は、それぞれ存在しない)
で示される部分
であり;
(vi)R
6は、
H、
C
1-4アルキル、
C
3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル)、
アリール(例えば、フェニル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリド-4-イル)、
アリールC
1-4アルキル(例えば、ベンジル)、
アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、
ヘテロアリールアミノ、
N,N-ジC
1-4アルキルアミノ、
N,N-ジアリールアミノ、
N-アリール-N-(アリールC
1-4アルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)、または
-N(R
18)(R
19)
であり;
ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、1個以上のハロ(例えば、F、Cl)、ヒドロキシまたはC
1-6アルコキシで置換されていてもよく;
(vii)R
7は、H、C
1-6アルキル、ハロゲン(例えば、Cl)、-N(R
18)(R
19)であり;
(viii)n=0または1であり;
(ix)n=1である場合、Aは、-C(R
13R
14)-であり、ここで、R
13およびR
14は、独立して、H、またはC
1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(所望によりヘテロ)アリールC
1-4アルコキシもしくは(所望によりヘテロ)アリールC
1-4アルキルであり;
(x)R
15は、C
1-4アルキル、ハロC
1-4アルキル、-OHまたは-OC
1-4アルキル(例えば、-OCH
3)であり;
(xi)R
16およびR
17は、独立して、HまたはC
1-4アルキルであり;
(xii)R
18およびR
19は、独立して、H、C
1-4アルキルまたはアリール(例えば、フェニル)であり、ここで、該アリールは、1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)またはヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)で置換されていてもよく;
(xiii)R
20は、H、C
1-4アルキルまたはC
3-7シクロアルキルである。
1.1 化合物が、固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにて、例えば1μM未満、好ましくは750nM未満、より好ましくは500nM未満、より好ましくは50nM未満のIC
50をもって、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介、特に、PDE1B媒介)加水分解を阻害する、遊離形態または塩形態の上記式のいずれか。
【0032】
本発明は、また、遊離形態または塩形態の、置換されていてもよい4,5,7,8-テトラヒドロ-(所望により、4-チオキソまたは4-イミノ)-(1Hまたは2H)-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジンまたは4,5,7,8,9-ペンタヒドロ-(1Hまたは2H)-ピリミド[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン化合物、例えば、(1または2および/または3および/または5)-置換の、4,5,7,8-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン、4,5,7,8-テトラヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン、4,5,7,8-テトラヒドロ-(1Hまたは2H)-ピリミド[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-イミン、7,8-ジヒドロ-1H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-チオンまたは7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-チオン化合物、例えば、遊離形態または塩形態の式IIIで示される化合物を提供する:
【化5】
[式中、
(xiv)Qは、C(=S)、C(=N(R
20))またはCH
2であり;
(xv)Lは、単結合、-N(H)-、-CH
2-であり;
(xvi)R
1は、HまたはC
1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(xvii)R
4は、HまたはC
1-6アルキル(例えば、メチル、イソプロピル)であり、R
2およびR
3は、独立して、
H、またはハロもしくはヒドロキシで置換されていてもよいC
1-6アルキル(例えば、メチルまたはイソプロピル)(例えば、R
2およびR
3はともにメチルであるか、またはR
2はHであり、R
3はメチル、エチル、イソプロピルまたはヒドロキシエチルである)、
アリール、
ヘテロアリール、
(所望によりヘテロ)アリールアルコキシ、
(所望によりヘテロ)アリールC
1-6アルキル
であるか、または
R
2およびR
3は一緒になって3~6員環を形成するか;
または
R
2は、Hであり、R
3およびR
4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し
(好ましくは、R
3およびR
4は一緒にシス配置を有し、例えば、R
3およびR
4を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する);
(xviii)R
5は、
d)-D-E-F(式中、
Dは、C
1-4アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
Eは、単結合、C
2-4アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
Fは、
H、
アリール(例えば、フェニル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリジル、ジアゾリル、トリアゾリル、例えば、ピリド-2-イル、イミダゾール-1-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル)、
ハロ(例えば、F、Br、Cl)、
ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
-C(O)-R
15、
-N(R
16)(R
17)、
-S(O)
2R
21または
NまたはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC
3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピロリジニル(例えば、ピロリジン-3-イル)、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)
であり;
ここで、D、EおよびFは、独立して、1個以上の
ハロ(例えば、F、ClまたはBr)、
C
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
C
1-4アルコキシまたは
C
1-4アルキル(例えば、5-メチルピリド-2-イル)
で置換されていてもよく、
例えば、Fは、ヘテロアリール、例えば、1個以上のハロで置換されているピリジル(例えば、6-フルオロピリド-2-イル、5-フルオロピリド-2-イル、6-フルオロピリド-2-イル、3-フルオロピリド-2-イル、4-フルオロピリド-2-イル、4,6-ジクロロピリド-2-イル)であるか、
またはFは、アリール、例えば、1個以上のハロで置換されているフェニル(例えば、4-フルオロフェニル)であるか、
またはFは、C
1-6アルキルで置換されていてもよいC
3-7ヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジニル)(例えば、1-メチルピロリジン-3-イル)である);
または
e)例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキル;
f)式IIIのピラゾロ部分の窒素の1つと結合しており、式A:
【化6】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R
8、R
9、R
11およびR
12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R
10は、
ハロゲン、
C
1-4アルキル、
C
3-7シクロアルキル、
ヘテロC
3-7シクロアルキル(例えば、ピロリジニルまたはピペリジニル)、
C
1-4ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
アリール(例えば、フェニル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えば、ピリド-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、
アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、
アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、
ヘテロアリールカルボニル、または
アルコキシカルボニル
であり;
ここで、該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、独立して、1個以上のハロ(例えば、FまたはCl)、C
1-4アルキル、C
1-4アルコキシ、C
1-4ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-SHで置換されていてもよく;
好ましくは、R
10は、上記で定義された置換基で置換されていてもよい、例えばハロまたはアルキルで置換されていてもよい、フェニル、ピリジル、ピペリジニルまたはピロリジニルであり、
ただし、X、YまたはZが窒素である場合、R
8、R
9またはR
10は、それぞれ、存在しない)
で示される部分
であり;
(xix)R
6は、
H、
C
1-4アルキル、
C
3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル)、
アリール(例えば、フェニル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリド-4-イル)、
アリールC
1-4アルキル(例えば、ベンジル)、
アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、
ヘテロアリールアミノ、
N,N-ジC
1-4アルキルアミノ、
N,N-ジアリールアミノ、
N-アリール-N-(アリールC
1-4アルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)、または
-N(R
18)(R
19)
であり;
ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、1個以上のハロ(例えば、F、Cl)、ヒドロキシ、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
3-8シクロアルキルで置換されていてもよく、
例えば、R
6は、4-ヒドロキシフェニルまたは4-フルオロフェニルであり;
(xx)n=0または1であり;
(xxi)n=1である場合、Aは、-C(R
13R
14)-であり、ここで、R
13およびR
14は、独立して、H、またはC
1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(所望によりヘテロ)アリールC
1-4アルコキシ、(所望によりヘテロ)アリールC
1-4アルキルであるか、またはR
13またはR
14は、R
2もしくはR
4と架橋を形成することができ;
(xxii)R
15は、C
1-4アルキル、ハロC
1-4アルキル、-OHまたは-OC
1-4アルキル(例えば、-OCH
3)であり;
(xxiii)R
16およびR
17は、独立して、HまたはC
1-4アルキルであり;
(xxiv)R
18およびR
19は、独立して、
H、
C
1-4アルキル、
C
3-8シクロアルキル、
ヘテロC
3-8シクロアルキル、
アリール(例えば、フェニル)、または
ヘテロアリール
であり、
ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、1個以上の
ハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、
ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)、
C
1-6アルキル、
ハロC
1-6アルキル、
C
1-6アルコキシ、
アリール,
ヘテロアリール、または
C
3-8シクロアルキル
で置換されていてもよく;
(xxv)R
20は、H、C
1-4アルキル(例えば、メチル)またはC
3-7シクロアルキルであり;
(xxvi)R
21は、C
1-6アルキルである。
【0033】
さらに別の実施態様において、本発明は、また、遊離形態または塩形態の式IV:
【化7】
[式中、
Qは、C(=S)、C(=N(R
20))またはCH
2であり;
Lは、単結合、-N(H)-、-CH
2-であり;
R
1は、HまたはC
1-4アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
R
4は、HまたはC
1-6アルキル(例えば、メチル、イソプロピル)であり、R
2およびR
3は、独立して、H、またはハロもしくはヒドロキシで置換されていてもよいC
1-6アルキル(例えば、メチルまたはイソプロピル)(例えば、R
2およびR
3はともにメチルであるか、またはR
2はHであり、R
3はメチル、エチル、イソプロピルまたはヒドロキシエチルである)、アリール、ヘテロアリール、(所望によりヘテロ)アリールアルコキシ、または(所望によりヘテロ)アリールC
1-6アルキルであるか;またはR
2は、Hであり、R
3およびR
4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し(好ましくは、R
3およびR
4は一緒にシス配置を有し、例えば、R
3およびR
4を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する);
R
5は、
a)-D-E-F(式中、
Dは、C
1-4アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
Eは、単結合、C
2-4アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
Fは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、ジアゾリル、トリアゾリル、例えば、ピリド-2-イル、イミダゾール-1-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R
15、-N(R
16)(R
17)、-S(O)
2R
21、またはNもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC
3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピロリジニル(例えば、ピロリジン-3-イル)、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)
であり;
ここで、D、EおよびFは、独立して、1個以上の
ハロ(例えば、F、ClまたはBr)、
C
1-4アルキル(例えば、メチル)、
ハロC
1-4アルキル(例えば、トリフルオロメチル)
で置換されていてもよく、
例えば、Fは、ヘテロアリール、例えば、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリド-2-イル、5-フルオロピリド-2-イル、6-フルオロピリド-2-イル、3-フルオロピリド-2-イル、4-フルオロピリド-2-イル、4,6-ジクロロピリド-2-イル)、ハロC
1-4アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリド-2-イル)またはC
1-4アルキル(例えば、5-メチルピリド-2-イル)で置換されているピリジルであるか、
またはFは、アリール、例えば、1個以上のハロで置換されているフェニル(例えば、4-フルオロフェニル)であるか
またはFは、C
1-6アルキルで置換されていてもよい、C
3-7ヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジニル)(例えば、1-メチルピロリジン-3-イル)であるか;
または
b)例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキル;
c)式IVのピラゾロ部分の窒素の1個と結合しており、式A:
【化8】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R
8、R
9、R
11およびR
12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R
10は、
ハロゲン、
C
1-4アルキル、
C
3-7シクロアルキル、
C
1-4ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
アリール(例えば、フェニル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えば、ピリド-2-イル)、または
チアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、
アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、
アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、
ヘテロアリールカルボニル、または
アルコキシカルボニル
であり;
ただし、X、YまたはZが窒素である場合、R
8、R
9またはR
10は、それぞれ、存在しない)
で示される部分
であり;
R
6は、
H、
C
1-4アルキル、
C
3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル)、
アリール(例えば、フェニル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリド-4-イル)、
アリールC
1-4アルキル(例えば、ベンジル)、
アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、
ヘテロアリールアミノ、
N,N-ジC
1-4アルキルアミノ、
N,N-ジアリールアミノ、
N-アリール-N-(アリールC
1-4アルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)、または
-N(R
18)(R
19)
であり;
ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、1個以上のハロ(例えば、F、Cl)、ヒドロキシまたはC
1-6アルコキシで置換されていてもよく、例えば、R
6は、4-ヒドロキシフェニルまたは4-フルオロフェニルであり、
n=0または1であり;
n=1である場合、Aは、-C(R
13R
14)-であり、ここで、R
13およびR
14は、独立して、H、またはC
1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(所望によりヘテロ)アリールC
1-4アルコキシまたは(所望によりヘテロ)アリールC
1-4アルキルであり;
R
15は、C
1-4アルキル、ハロC
1-4アルキル、-OHまたは-OC
1-4アルキル(例えば、-OCH
3)であり、
R
16およびR
17は、独立して、HまたはC
1-4アルキルであり;
R
18およびR
19は、独立して、H、C
1-4アルキルまたはアリール(例えば、フェニル)であり、ここで、該アリールは、1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)またはヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)で置換されていてもよく、
R
20は、H、C
1-4アルキル(例えば、メチル)またはC
3-7シクロアルキルであり、
R
21は、C
1-6アルキルである]
で示される化合物を提供する。
【0034】
さらに別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載されている治療方法および予防方法において使用するためのPDE1阻害剤が、下記の本出願人自身の刊行物のいずれかから選択されることを提供する:米国特許出願公開第2008-0188492号、米国特許出願公開第2010-0173878号、米国特許出願公開第2010-0273754号、米国特許出願公開第2010-0273753号、国際公開第2010/065153号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065149号、国際公開第2010/065147号、国際公開第2010/065152号、国際公開第2011/153129号、国際公開第2011/133224号、国際公開第2011/153135号、国際公開第2011/153136号、および国際公開第2011/153138号(各々の全記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)。
【0035】
さらに別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療方法および予防方法に使用するためのPDE1阻害剤が、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ体を包含する、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の式V:
【化9】
[式中、
(i)R
1は、HまたはC
1-4アルキル(例えば、メチル)であり;
(ii)R
4は、HまたはC
1-4アルキルであり、R
2およびR
3は、独立して、HまたはC
1-4アルキル(例えば、R
2およびR
3はともにメチルであるか、またはR
2は、Hであり、R
3はイソプロピルである)、アリール、ヘテロアリール、(所望によりヘテロ)アリールアルコキシ、または(所望によりヘテロ)アリールアルキルであるか;
または
R
2はHであり、R
3およびR
4は一緒になってジメチレン架橋、トリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成し
(好ましくは、R
3およびR
4は一緒にシス配置を有し、例えば、R
3およびR
4を担持する炭素はそれぞれR配置およびS配置を有する);
(iii)R
5は、例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキルであるか、
または
R
5は、式Vのピラゾロ部分の窒素の1つと結合しており、式A:
【化10】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R
8、R
9、R
11およびR
12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり、R
10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えば、ピリド-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル))、ジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、ヘテロアリールカルボニルまたはアルコキシカルボニルであり;ただし、X、YまたはZが窒素である場合、R
8、R
9またはR
10は、それぞれ、存在しない)
で示される部分であり;
(iv)R
6は、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、アリールアミノ(例えば、フェニルアミノ)、ヘテロアリールアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、N,N-ジアリールアミノまたはN-アリール-N-(アリールアルキル)アミノ(例えば、N-フェニル-N-(1,1'-ビフェン-4-イルメチル)アミノ)であり;
(v)n=0または1であり;
(vi)n=1である場合、Aは-C(R
13R
14)-であり、
ここで、R
13およびR
14は、独立して、HまたはC
1-4アルキル、アリール、ヘテロアリール、(所望によりヘテロ)アリールアルコキシまたは(所望によりヘテロ)アリールアルキルである]
で示される化合物であることを提供する。
【0036】
一の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療方法および予防方法に使用するためのPDE1阻害剤が、遊離形態、塩形態、または生理学的に加水分解可能かつ許容されるエステルプロドラッグ形態の式VI:
【化11】
[式中、
(i)R
1は、Hまたはアルキルであり;
(ii)R
2は、H、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルまたはアルコキシアリールアルキルであり;
(iii)R
3は、ヘテロアリールメチル、または式A:
【化12】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R
8、R
9、R
11およびR
12は、独立して、Hまたはハロゲンであり;R
10は、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルスルホニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアミノカルボニルである)
であり;
(iv)R
4は、アリールまたはヘテロアリールであり;
(v)R
5は、H、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、p-ベンジルアリールである;
ただし、X、YまたはZが窒素である場合、R
8、R
9またはR
10は、それぞれ、存在しない;
ここで、「アルク」または「アルキル」とは、C
1-6アルキルをいい、「シクロアルキル」とは、C
3-6シクロアルキルをいう]
で示される化合物であることを提供する。
【0037】
一の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療方法および予防方法に使用するためのPDE1阻害剤が、遊離形態、塩形態またはプロドラッグ形態の式VII:
【化13】
[(i)Xは、C
1-6アルキレン(例えば、メチレン、エチレンまたはプロパ-2-イン-1-イレン)であり;
(ii)Yは、単結合、アルキニレン(例えば、-C≡C-)、アリーレン(例えば、フェニレン)またはヘテロアリーレン(例えば、ピリジレン)であり;
(iii)Zは、H、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル、例えば、ピリド-2-イル)、ハロ(例えば、F、Br、Cl)、ハロC
1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、-C(O)-R
1、-N(R
2)(R
3)、またはNもしくはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC
3-7シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であり;
(iv)R
1は、C
1-6アルキル、ハロC
1-6アルキル、-OHまたは-OC
1-6アルキル(例えば、-OCH
3)であり;
(v)R
2およびR
3は、独立して、HまたはC
1-6アルキルであり;
(vi)R
4およびR
5は、独立して、H、1個以上のハロ(例えば、フルオロフェニル、例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、ヒドロキシフェニル、例えば、4-ヒドロキシフェニルまたは2-ヒドロキシフェニル)またはC
1-6アルコキシで置換されていてもよいC
1-6アルキ
ルまたはアリール(例えば、フェニル)であり;
(vii)X、YおよびZは、独立して、1個以上のハロ(例えば、F、ClまたはBr)、C
1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロC
1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)で置換されていてもよく、例えば、Zは、ヘテロアリール、例えば、1個以上のハロ(例えば、6-フルオロピリド-2-イル、5-フルオロピリド-2-イル、6-フルオロピリド-2-イル、3-フルオロピリド-2-イル、4-フルオロピリド-2-イル、4,6-ジクロロピリド-2-イル)、ハロC
1-6アルキル(例えば、5-トリフルオロメチルピリド-2-イル)またはC
1-6
アルキル(例えば、5-メチルピリド-2-イル)で置換されているピリジルであるか、またはZは、アリール、例えば、1個以上のハロで置換されているフェニル(例えば、4-フルオロフェニル)である]
で示される化合物であることを提供する。
【0038】
一の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療方法および予防方法に使用するためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の式VIII:
【化14】
[式中、
(i)R
1は、HまたはC
1-6アルキルであり;
(ii)R
2は、
H、
C
1-6アルキル、
1個以上のアミノで置換されていてもよいC
3-8シクロアルキル、
C
1-6アルキルで置換されていてもよいC
3-8ヘテロシクロアルキル、
C
3-8シクロアルキル-C
1-6アルキル、
C
1-6ハロアルキル、
C
0-6アルキルアミノC
0-6アルキル、
ヒドロキシC
1-6アルキル、
アリールC
0-6アルキル、
ヘテロアリールアルキル,
C
1-6アルコキシアリールC
1-6アルキル、または
-G-J(式中、
Gは、単結合またはアルキレンであり;
Jは、アルキルで置換されていてもよいシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルである)
であり;
(iii)R
3は、
a)-D-E-F(式中、
1.Dは、単結合、C
1-6アルキレンまたはアリールC
1-6アルキレンであり;
2.Eは、C
1-6アルキレン、アリーレン、C
1-6アルキルアリーレン、アミノC
1-6アルキレンまたはアミノであり;
3.Fは、C
1-6アルキルで置換されていてもよいヘテロC
3-8シクロアルキルである)
であり;
(iv)R
4は、1個以上のハロ、ヒドロキ
シもしくはC
1-6アルコキ
シで置換されていてもよいアリール;ヘテロアリール;またはヘテロC
3-6シクロアルキルであり;
(v)R
5は、H、C
1-6アルキル、C
3-8シクロアルキル、ヘテロアリール、アリールまたはp-ベンジルアリールであり;
ここで、「アルク」、「アルキル」、「ハロアルキル」または「アルコキシ」とは、C
1-6アルキル
に言及しており、「シクロアルキル」とはC
3-8シクロアルキルをいう]
で示される化合物であることを提供する。
【0039】
一の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療方法および予防方法に使用するためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の式IX:
【化15】
[式中、
(i)Qは、-C(=S)-、-C(=N(R
6))-または-C(R
14)(R
15)-であり;
(ii)R
1は、HまたはC
1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii)R
2は、
H、
C
1-6アルキル(例えば、イソプロピル、イソブチル、2-メチルブチルまたは2,2-ジメチルプロピル)(ここで、該アルキル基は、1個以上のハロ(例えば、フルオロ)またはヒドロキシで置換されていてもよい(例えば、ヒドロキシC
1-6アルキル、例えば、1-ヒドロキシプロパ-2-イルまたは3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル))、
ハロC
1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチルまたは2,2,2-トリフルオロエチル)、
N(R
14)(R
15)-C
1-6アルキル(例えば、2-(ジメチルアミノ)エチルまたは2-アミノプロピル)、
アリールC
0-6アルキル(例えば、フェニルまたはベンジル)(ここで、該アリールは、1個以上のC
1-6アルコキシで置換されていてもよい)、例えば、C
1-6アルコキシアリールC
0-6アルキル(例えば、4-メトキシベンジル)、
ヘテロアリールC
0-6アルキル(例えば、ピリジニルメチル)(ここで、該ヘテロアリールは、1個以上のC
1-6アルコキシで置換されていてもよい)(例えば、C
1-6アルコキシヘテロアリールC
1-6アルキル);
-G-J(ここで、Gは単結合またはC
1-6アルキレン(例えば、メチレン)であり、Jは、C
3-8シクロアルキルまたはヘテロC
3-8シクロアルキル(例えば、オキセタン-2-イル、ピロリジン-3-イル、ピロリジン-2-イル)である(ここで、該シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキル基は、1個以上のC
1-6アルキルまたはアミノで置換されていてもよい(例えば、
-C
0-4アルキル-C
3-8シクロアルキル(例えば、-C
0-4アルキル-シクロペンチル、-C
0-4アルキル-シクロヘキシルまたは-C
0-4アルキル-シクロプロピル)(ここで、該シクロアルキルは、1個以上のC
1-6アルキルまたはアミノで置換されていてもよい(例えば、2-アミノシクロペンチルまたは2-アミノシクロヘキシル))、
-C
0-4アルキル-C
3-8ヘテロシクロアルキル(例えば、-C
0-4アルキル-ピロリジニル、例えば、-C
0-4アルキルピロリジン-3-イル)(ここで、該ヘテロシクロアルキルは、C
1-6アルキル(例えば、メチル)で置換されていてもよい(例えば、1-メチルピロリジン-3-イル、1-メチル-ピロリジン-2-イル、1-メチル-ピロリジン-2-イル-メチルまたは1-メチル-ピロリジン-3-イル-メチル))))
であり;
(iv)R
3は、
1)-D-E-F(式中、
Dは、単結合、C
1-6アルキレン(例えば、メチレン)またはアリールC
1-6アルキレン(例えば、ベンジレンまたは-CH
2C
6H
4-)であり;
Eは、
単結合、
C
1-4アルキレン(例えば、メチレン、エチニレン、プロパ-2-イン-1-イレン)、
C
0-4アルキルアリーレン(例えば、フェニレンまたは-C
6H
4-、-ベンジレン-または-CH
2C
6H
4-)(ここで該アリーレン基は、ハロ(例えば、ClまたはF)で置換されていてもよい)、
ヘテロアリーレン(例えば、ピリジニレンまたはピリミジニレン)、
アミノC
1-6アルキレン(例えば、-CH
2N(H)-)、
アミノ(例えば、-N(H)-);
NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含有していてもよいC
3-8シクロアルキレン(例えば、ピペリジニレン)
であり、
Fは、
H、
ハロ(例えば、F、Br、Cl)、
C
1-6アルキル(例えば、イソプロピルまたはイソブチル)、
ハロC
1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
アリール(例えば、フェニル)、
N、SまたはOからなる群から選択される1個以上の原子を含有していてもよいC
3-8シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピペリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)であって、1個以上のC
1-6アルキル(例えば、メチルまたはイソプロピル)で置換されていてもよいC
3-8シクロアルキル(例えば、1-メチルピロリジン-2-イル、ピロリジン-1-イル、ピロリジン-2-イル、ピペリジン-2-イル、1-メチルピペリジン-2-イル、1-エチルピペリジン-2-イル)、
ヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えば、ピリド-2-イル)、ピリミジニル(例えば、ピリミジン-2-イル)、チアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)、ジアゾリル(例えば、ピラゾリル(例えば、ピラゾール-1-イル)またはイミダゾリル(例えば、イミダゾール-1-イル、4-メチルイミダゾリル、1-メチルイミダゾール-2-イル))、トリアゾリル(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル)、テトラゾリル(例えば、テトラゾール-5-イル)、アルキルオキサジアゾリル(例えば、5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール))、(ここで、該ヘテロアリールは、1個以上のC
1-6アルキル、ハロ(例えば、フルオロ)またはハロC
1-6アルキルで置換されていてもよい);
C
1-6アルコキシ、
-O-ハロC
1-6アルキル(例えば、-O-CF
3)、
C
1-6アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニルまたは-S(O)
2CH
3)、
-C(O)-R
13(ここで、R
13は、-N(R
14)(R
15)、C
1-6アルキル(例えば、メチル)、-OC
1-6アルキル(例えば、-OCH
3)、ハロC
1-6アルキル(トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、またはヘテロアリールである);
-N(R
14)(R
15)
である);
または
2)例えばハロC
1-6アルキルで置換されている、置換ヘテロアリールC
1-6アルキル;
または
3)式
IXのピラゾロ部分の窒素の1つと結合しており、式A:
【化16】
(式中、
X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、
R
8、R
9、R
11およびR
12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり;
R
10は、
ハロゲン(例えば、フルオロまたはクロロ)、
C
1-6アルキル、
C
3-8シクロアルキル、
ヘテロC
3-8シクロアルキル(例えば、ピロリジニルまたはピペリジニル)、
ハロC
1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
アリール(例えば、フェニル)またはヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えば、ピリド-2-イル)または例えば、チアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)、ジアゾリル、トリアゾリル(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル)、テトラゾリル(例えば、テトラゾール-5-イル)、アルキルオキサジアゾリル(例えば、5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール)、ピラゾリル(例えば、ピラゾール-1-イル))
(ここで、該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、1個以上のC
1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロC
1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、カルボキシ、-SH、またはさらなるアリールもしくはヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)で置換されていてもよい)、
C
1-6アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、
アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、
ヘテロアリールカルボニル、
C
1-6アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル)、
アミノカルボニル、
-N(R
14)(R
15)
であり;
好ましくは、R
10は、上記で定義された置換基で置換されていてもよい、例えばハロまたはアルキルで置換されていてもよい、フェニル、ピリジル、ピペリジニルまたはピロリジニルである;
ただし、X、YまたはZが窒素である場合、R
8、R
9またはR
10は、それぞれ、存在しない)
で示される部分
であり;
(v)R
4およびR
5は、独立して、
H、
C
1-6アルキル(例えば、メチル、イソプロピル、イソブチル、n-プロピル)、
C
3-8シクロアルキル(例えば、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)、
C
3-8ヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジニル(例えば、ピロリジン-3-イルまたはピロリジン-1-イル)、ピペリジニル(例えば、ピペリジン-1-イル)、モルホリニル)、
-C
0-6アルキルアリール(例えば、フェニルまたはベンジル)または
-C
0-6アルキルヘテロアリール(例えば、ピリド-4-イル、ピリド-2-イルまたはピラゾール-3-イル)
(ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、1個以上のハロ(例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、4-ヒドロキシフェニル)、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシまたは別のアリール基(例えば、ビフェニル-4-イルメチル)で置換されていてもよい)
であり;
(vi)R
6は、H、C
1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)またはC
3-8シクロアルキルであり;
(vii)R
14およびR
15は、独立して、HまたはC
1-6アルキルである]
で示される化合物であることを提供する。
【0040】
一の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療方法および予防方法に使用するためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の式X-Aまたは式X-B:
【化17】
【0041】
[式中、
(i)Qは、-C(=S)-、-C(=O)-、-C(=N(R
7))-または-C(R
14)(R
15)-であり;
(ii)R
1は、HまたはC
1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii)R
2は、H、C
1-6アルキル(例えば、イソプロピル、イソブチル、2-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル)(ここで、該アルキル基は、ハロ(例えば、フルオロ)またはヒドロキシ(例えば、1-ヒドロキシプロパン-2-イル、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)で置換されていてもよい)(例えば、R
2は、トリフルオロメチルまたは2,2,2-トリフルオロエチルである)、N(R
14)(R
15)-C
1-6アルキル(例えば、2-(ジメチルアミノ)エチルまたは2-アミノプロピル)、アリールC
1-6アルキル(例えば、フェニルまたはベンジル)、ヘテロアリールC
1-6アルキル(例えば、ピリジニルメチル)、C
1-6アルコキシアリール-C
1-6アルキル(例えば、4-メトキシベンジル)であり得る);-G-J(式中、
Gは、単結合またはアルキレン(例えば、メチレン)であり;Jは、1個以上のC
1-6アルキル(例えば、(1-メチルピロリジン-2-イル))、アミノ(例えば、-NH
2)で置換されていてもよいシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル(例えば、オキセタン-2-イル、ピロリ
ジン-3-イル、ピロリ
ジン-2-イル)であり、例えば、-G-Jは、1個以上のC
1-6アルキル、アミノ(例えば、-NH
2)で置換されていてもよい-C
0-4アルキル-C
3-8シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロプロピルメチル)、例えば2-アミノシクロペンチルまたは2-アミノシクロヘキシルであり得、ここで、該シクロアルキルは、NおよびOから選択される1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい(例えば、ピロリジニル、例えばピロリジン-3-イルまたはピロリジン-2-イル、1-メチル-ピロリジン-2-イル、1-メチル-ピロリジン-3-イル、1-メチル-ピロリジン-2-イル-メチルまたは1-メチル-ピロリジン-3-イル-メチル))
であり;
(iv)R
3は、
1)-D-E-F(式中、
Dは、単結合、C
1-6アルキレン(例えば、メチレン)、またはアリールアルキレン(例えば、p-ベンジレンまたは-CH
2C
6H
4-)であり;
Eは、単結合、
C
1-6アルキレン(例えば、メチレン)、C
2-6アルキニレン(例えば、エチニレン、プロパ-2-イン-1-イレン
)、-C
0-4アルキルアリーレン(例えば、フェニレンまたは-C
6H
4-、-ベンジレン-または-CH
2C
6H
4-)(ここで、該アリーレン基は、ハロ(例えば、ClまたはF)で置換されていてもよい)、ヘテロアリーレン(例えば、ピリジニレンまたはピリミジニレン)、アミノC
1-6アルキレン(例えば、-CH
2N(H)-)、アミノ(例えば、-N(H)-);
NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含有していてもよいC
3-8シクロアルキレン(例えば、ピペリジニレン)
であり、
Fは、
H、
ハロ(例えば、F、Br、Cl)、C
1-6アルキル(例えば、イソプロピルまたはイソブチル)、ハロC
1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、
アリール(例えば、フェニル)、
NまたはOからなる群から選択される少なくとも1個の原子を含有していてもよいC
3-8シクロアルキル(例えば、シクロペンチル
、シクロヘキシル、ピペリジニル、ピロリジニル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、またはモルホリニル)(該シクロアルキルは、C
1-6アルキル(例えば、メチルまたはイソプロピル)で置換されていてもよい(例えば、1-メチルピロリジン-2-イル、ピロリジン-1-イル、ピロリジン-2-イル、ピペリジン-2-イル、1-メチルピペリジン-2-イル、1-エチルピペリジン-2-イル))、C
1-6アルキルで置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えば、ピリド-2-イル)、ピリミジニル(例えば、ピリミジン-2-イル)、チアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)、ジアゾリル(例えば、ピラゾリル(例えば、ピラゾール-1-イル)またはイミダゾリル(例えば、イミダゾール-1-イル、4-メチルイミダゾリル、1-メチルイミダゾール-2-イル)、トリアゾリル(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル)、テトラゾリル(例えば、テトラゾール-5-イル)、アル
キルオキサジアゾリル(例えば、5-メチル-
1,2,4-オキサジアゾール)、ピラゾリル(例えば、ピラゾール-1-イル)(ここで、該ヘテロアリールは、ハロ(例えば、フルオロ)またはハロC
1-6アルキルで置換されていてもよい(例えば、6-フルオロピリド-2-イル));アミノ(例えば、-NH
2)、C
1-6アルコキシ、-O-ハロC
1-6アルキル(例えば、-
O-CF
3)、C
1-6アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニルまたは-S(O)
2CH
3)、
-C(O)-R
13、
-N(R
14)(R
15)
である);または
2)例えばハロアルキルで置換されている、置換ヘテロアリールアルキル;または
3)式
X-AまたはX-Bのピロロ部分の窒素に結合しており、式A:
【化18】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R
8、R
9、R
11およびR
12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり;R
10は、ハロゲン、C
1-6アルキル、
C
1-6アルコキシ(例えば、メトキシ)、C
3-8シクロアルキル、ヘテロC
3-8シクロアルキル(例えば、ピロリジニル)ハロC
1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えば、ピリド-2-イル)または例えば、チアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)、ジアゾリル(例えば、イミダゾリルまたはピラゾリル)、トリアゾリル(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル)、テトラゾリル(例えば、テトラゾール-5-イル)、アル
キルオキサジアゾリル(例えば、5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール)、ピラゾリル(例えば、ピラゾール-1-イル)、C
1-6アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、ヘテロアリールカルボニル、
アルコキシカルボニル,(例えば、メトキシカルボニル)、アミノカルボニルであり;ここで、該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、1個以上のC
1-6アルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロC
1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、カルボキシ、-SH、またはさらなるアリールもしくはヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)で置換されていてもよく、好ましくは、R
10は、フェニルまたはピリジル、例えば、上記で定義された置換基で置換されていてもよい2-ピリジルであり;
ただし、X、YまたはZが窒素である場合、R
8、R
9またはR
10は、それぞれ、存在しない)
で示される部分
であり
;
(v)R
4およびR
5は、独立して、H、C
1-6アルキル(例えば、メチル、イソプロピル)
、C
3-8シクロアルキル(例えば、シクロペンチル)、C
3-8ヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジン-3-イル)、アリール(例えば、フェニル)またはヘテロアリール(例えば、ピリド-4-イル、ピリド-2-イルまたはピラゾール-3-イル)であり、ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、ハロ(例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、4-ヒドロキシフェニル)、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシまたは別のアリール基(例えば、ビフェニル-4-イルメチル)で置換されていてもよく;
(vi)R
6は、H、C
1-6アルキ
ル(例えば、メチル)、ヒドロキシ、C
1-6アルコキシ、アリールオキシ、-N(R
16)(R
17)、オキソ(例えば、=
O)、またはC
3-8シクロアルキルであり;
(vii)R
7は、H、C
1-6アルキル(例えば、メチル)またはC
3-8シクロアルキルであり、ここで、該シクロアルキルは、1個以上のオキソで置換されていてもよく(例えば、2,5-ジオキソピロリジン-1-イル);
(viii)R
13は、-N(R
14)(R
15)、C
1-6アルキル(例えば、メチル)、-OC
1-6アルキル(例えば、-OCH
3)、ハロC
1-6アルキル(トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、またはヘテロアリールであり;
(ix)R
14およびR
15は、独立して、HまたはC
1-6アルキルであり;
(x)R
16およびR
17は、独立して、H、C
1-6アルキル、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリールであり、ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、ハロ(例えば、フルオロ)、C
1-6アルコキシ(例えば、メトキシ)で置換されていてもよい]
から選択される式Xであることを提供する。
【0042】
一の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療方法および予防方法に使用するためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の式XI:
【化19】
[式中、
(i)Lは、S、SOまたはSO
2であり;
(ii)R
2は、HまたはC
1-6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii)R
2は、
H、
C
1-6アルキル(例えば、イソプロピル、イソブチル、ネオペンチル、2-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル)(ここで、該アルキル基は、ハロ(例えば、フルオロ)またはヒドロキシ(例えば、1-ヒドロキシプロパン-2-イル、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)で置換されていてもよい)、1個以上のアミノ(例えば、-NH
2)で置換されていてもよい-C
0-4アルキル-C
3-8シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル)(例えば、2-アミノシクロペンチルまたは2-アミノシクロヘキシル)(ここで、該シクロアルキルは、NおよびOから選択される1個以上のヘテロ原子を含有していてもよく、C
1-6アルキルで置換されていてもよい(例えば、1-メチル-ピロリジン-2-イル、1-メチル-ピロリジン-3-イル、1-メチル-ピロリジン-2-イル-メチルまたは1-メチル-ピロリジン-3-イル-メチル))、C
1-6アルキル(例えば、メチル)で置換されていてもよいC
3-8ヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジニル、例えば、ピロリジン-3-イル)(例えば、1-メチルピロリジン-3-イル)、C
3-8シクロアルキル-C
1-6アルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、ハロC
1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル)、-N(R
14)(R
15)-C
1-6アルキル(例えば、2-(ジメチルアミノ)エチル、2-アミノプロピル)、ヒドロキシC
1-6アルキ
ル(例えば、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、1-ヒドロキシプロパ-2-イル)、アリールC
0-6アルキル(例えば、ベンジル)、ヘテロアリールC
1-6アルキル(例えば、ピリジニルメチル)、C
1-6アルコキシアリールC
1-6アルキル(例えば、4-メトキシベンジル);-G-J(ここで、Gは単結合またはアルキレン(例えば、メチレン)であり;
Jは、C
1-6アルキルで置換されていてもよい、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル(例えば、オキセタン-2-イル、ピロリ
ジン-3-イル、ピロリ
ジン-2-イル)(例えば、1-メチルピロリジン-2-イル))である)
であり;
(iv)R
3は、式
XIのピラゾロ部分の窒素の1つと結合しており、式A:
【化20】
(式中、X、YおよびZは、独立して、NまたはCであり、R
8、R
9、R
11およびR
12は、独立して、Hまたはハロゲン(例えば、ClまたはF)であり;R
10は、ハロゲン、C
1-6アルキル、C
3-8シクロアルキル、ヘテロC
3-8シクロアルキル(例えば、ピロリジニルまたはピペリジニル)、ハロC
1-6アルキル(例えば、トリフルオロメチル)、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジル(例えば、ピリド-2-イル)または例えば、チアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4
-イル)、ジアゾリル、トリアゾリル(例えば、1,2,4-トリアゾール-1-イル)、テトラゾリル(例えば、テトラゾール-5-イル)、アル
キルオキサジアゾリル(例えば、5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール)、ピラゾリル(例えば、ピラゾール-
1-
イル)、アルキルスルホニル(例えば、メチルスルホニル)、
アリールカルボニル(例えば、ベンゾイル)、またはヘテロアリールカルボニル、アルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル)、アミノカルボニルであり;好ましくは、フェニル、ピリジル、例えば、2-ピリジル、ピペリジニル、またはピロリジニルであり;ここで、該アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、1個以上のハロ(例えば、FまたはCl)、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-4ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、および/または-SHで置換されていてもよく、ただし、X、YまたはZが窒素である場合、R
8、R
9またはR
10は、それぞれ、存在しない)
で示される部分であり
;
(v)R
4は、
H、C
1-6アルキル(例えば、メチル、イソプロピル)、
C
3-8シクロアルキル(例えば、シクロペンチル)、C
3-8ヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジン-3-イル)、アリール(例えば、フェニル)またはヘテロアリール(例えば、ピリド-4-イル、ピリド-2-イルまたはピラゾール-3-イル)であり、ここで、該アリールまたはヘテロアリールは、ハロ(例えば、4-フルオロフェニル)、ヒドロキシ(例えば、
4-ヒドロキシフェニル)、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシまたは別のアリール基(例えば、ビフェニル-4-イルメチル)で置換されていてもよく
;
(vi)R
14およびR
15は、独立して、HまたはC
1-6アルキルである]
であることを提供する。
【0043】
さらに別の実施態様において、本発明は、本明細書に記載の治療方法および予防方法に使用するためのPDE1阻害剤が、遊離形態または塩形態の式XII:
【化21】
[式中、
(i)R
1
は、HまたはC
1-4
アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(ii)R
2
およびR
3
は、独立して、HまたはC
1-6
アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iii)R
4
は、HまたはC
1-4
アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり;
(iv)R
5
は、独立して、-C(=O)-C
1-6
アルキル(例えば、-C(=O)-CH
3
)およびC
1-6
-ヒドロキシアルキル(例えば、1-ヒドロキシエチル)から選択される1個以上の基で置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル)であり;
(v)R
6
およびR
7
は、独立して、C
1-6
アルキル(例えば、メチルまたはエチル)およびハロゲン(例えば、FまたはCl)から選択される1個以上の基で置換されていてもよい、Hまたはアリール(例えば、フェニル)であり、例えば、非置換フェニル、または1個以上のハロゲン(例えば、F)で置換されているフェニル、または1個以上のC
1-6
アルキルおよび1個以上のハロゲンで置換されているフェニル、または1個のC
1-6
アルキルおよび1個のハロゲンで置換されているフェニル、例えば、4-フルオロフェニルまたは3,4-ジフルオロフェニルまたは4-フルオロ-3-メチルフェニルであり;
(vi)nは、1、2、3または4である]
であることを提供する。
【0044】
本発明は、また、上記の式(例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII)のいずれかで示されるPDE1阻害剤の使用を提供し、ここで、該化合物は、下記のものから選択される:
【化22】
【化23】
【化24】
【0045】
一の実施態様において、本発明は、炎症または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与を提供する(ここで、該阻害剤は、下記:
【化25】
で示される化合物である)。
【0046】
さらに別の実施態様において、本発明は、炎症または炎症関連疾患もしくは障害の治療または予防のためのPDE1阻害剤の投与を提供する(ここで、該阻害剤は、下記:
【化26】
で示される化合物である)。
【0047】
一の実施態様において、上記の式(例えば、式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII)のいずれかで示される選択的PDE1阻害剤は、cGMPのホスホジエステラーゼ-媒介(例えば、PDE1媒介、特にPDE1B媒介)加水分解を阻害する化合物であり、例えば、好ましい化合物は、遊離形態または塩形態で、固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにおいて1μM未満、好ましくは500nM未満、好ましくは50nM未満、好ましくは5nM未満のIC50を有する。
【0048】
他に特定されていない場合または文脈から明らかでない場合、本明細書における以下の用語は、以下の意味を有する:
本明細書で用いられる場合、「アルキル」は、飽和または不飽和の炭化水素部分であり、好ましくは飽和しており、好ましくは1~6個の炭素原子を有しており、直鎖または分枝鎖であり得、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、一置換、二置換または三置換されていてもよい。
本明細書で用いられる場合、「シクロアルキル」は、飽和または不飽和の非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和しており、好ましくは3~9個の炭素原子を含むものであり、少なくとも該炭素原子のうちいくつかは非芳香族の単環式環状もしくは二環式環状または架橋環状の構造を形成し、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されていてもよい。シクロアルキルがNおよびOおよび/またはSから選択される1個以上の原子を含有していてもよい場合、該シクロアルキルは、ヘテロシクロアルキルでもあり得る。
「ヘテロシクロアルキル」は、特記しない限り、飽和または不飽和の非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和しており、好ましくは3~9個の炭素原子を含むものであり、少なくとも該炭素原子のうちいくつかは非芳香族の単環式環状もしくは二環式環状または架橋環状の構造を形成し、ここで、少なくとも1個の炭素原子は、N、OまたはSと置き換えられており、該ヘテロシクロアルキルは、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されていてもよい。
本明細書で用いられる場合、「アリール」は、単環式または二環式の芳香族炭化水素であり、好ましくはフェニルであり、例えばアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、カルボキシ、またはさらなるアリールもしくはヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)で置換されていてもよい。
本明細書で用いられる場合、「ヘテロアリール」は、芳香族部分であり、ここで、該芳香環を構成する原子のうち1個以上は、炭素よりもむしろ硫黄または窒素であり、例えばピリジルまたはチアジアゾリルであり、例えばアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されていてもよい。
【0049】
参照しやすいように、本発明の化合物のピラゾロ-ピリミジン核の原子は、特に断りのない限りまたは文脈から明かでない限り、式Iについて以下に示される番号付けに従って番号付けされる。
【化27】
Eがフェニレンである場合、番号付けは、以下のとおりである:
【化28】
【0050】
置換基が「エン」で終わる場合、例えばアルキレン、フェニレンまたはアリールアルキレンである場合、該置換基は、2つの他の置換基を架橋しているかまたは連結していることを意図されている。従って、メチレンは、-CH2-であることを意図されており、フェニレンは、-C6H4-であることを意図されており、アリールアルキレンは、-C6H4-CH2-または-CH2-C6H4-であることを意図されている。
【0051】
本発明の化合物、例えば、置換4,5,7,8-テトラヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジンまたは4,5,7,8,9-ペンタヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジン、例えば式I(式I-AおよびI-B)で示される化合物または式II(例えば、II-AまたはII-B)で示される化合物は、遊離形態または塩形態で存在し得、例えば酸付加塩として存在し得る。本明細書において、特記しない限り、「本発明の化合物」のような用語は、あらゆる形態、例えば遊離形態もしくは酸付加塩形態、または化合物が酸性置換基を含む場合には塩基付加塩形態の化合物を包含するものとして解されるべきである。本発明の化合物は、医薬としての使用を目的としており、したがって、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬的使用に適していない塩は、例えば遊離の本発明の化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の単離または精製に、有用であり得、したがって、それらも包含される。
【0052】
本明細書に開示されている化合物のいずれかを包含する本発明の化合物、例えば、置換されていてもよい4,5,7,8-テトラヒドロ-(所望により4-チオキソまたは4-イミノ)-(1Hまたは2H)-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジンまたは5,7,8,9-ペンタヒドロ-(1Hまたは2H)-ピリミド[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン化合物、例えば(1または2および/または3および/または5)-置換されている4,5,7,8-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン、4,5,7,8-テトラヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン、4,5,7,8-テトラヒドロ-(1Hまたは2H)-ピリミド[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-イミン、7,8-ジヒドロ-1H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-チオンまたは7,8-ジヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-チオン化合物、例えば本明細書に記載の式IIIで示される化合物または式IVで示される化合物は、遊離形態または塩形態で、例えば酸付加塩として、存在し得る。
【0053】
本発明の化合物は、いくつかの場合、プロドラッグ形態でも存在し得る。プロドラッグ形態は、体内で本発明の化合物に変わる化合物である。例えば、本発明の化合物がヒドロキシまたはカルボキシ置換基を含む場合、これらの置換基は、生理学的に加水分解可能で許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いられる場合、「生理学的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、生理学的条件下で加水分解可能であり、投与される用量で自体生理学的に許容される酸(ヒドロキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)を生じる本発明の化合物のエステルを意味する。したがって、本発明の化合物がヒドロキシ基を含んでいる場合、例えば化合物-OHの場合、このような化合物のアシルエステルプロドラッグ、すなわち、化合物-O-C(O)-C1-4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物-OH)を、他方では酸(例えば、HOC(O)-C1-4アルキル)を形成することができる。別法として、本発明の化合物がカルボン酸を含んでいる場合、例えば化合物-C(O)OHである場合、このような化合物の酸エステルプロドラッグ、すなわち、化合物-C(O)O-C1-4アルキルは、加水分解して、化合物-C(O)OHおよびHO-C1-4アルキルを形成することができる。したがって、理解されるように、この用語は、慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0054】
別の実施態様において、本発明は、また、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明の化合物を薬学的に許容される担体と混合して含む、抗炎症剤として使用するための医薬組成物を提供する。
【0055】
本発明の化合物は、いくつかの場合、プロドラッグ形態で存在してもよい。プロドラッグ形態は、体内で本発明の化合物に変わる化合物である。例えば、本発明の化合物がヒドロキシまたはカルボキシ置換基を含んでいる場合、これらの置換基は、生理学的に加水分解可能で許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いられる場合、「生理学的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、本明細書で用いられる場合、「生理学的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、生理学的条件下で加水分解可能であり、投与される用量で自体生理学的に許容される酸(ヒドロキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本発明の化合物の場合)を生じる本発明の化合物のエステルを意味する。したがって、本発明の化合物がヒドロキシ基を含んでいる場合、例えば化合物-OHの場合、このような化合物のアシルエステルプロドラッグ、すなわち、化合物-O-C(O)-C1-4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物-OH)を、他方では酸(例えば、HOC(O)-C1-4アルキル)を形成することができる。別法として、本発明の化合物がカルボン酸を含んでいる場合、例えば化合物-C(O)OHである場合、このような化合物の酸エステルプロドラッグ、すなわち、化合物-C(O)O-C1-4アルキルは、加水分解して、化合物-C(O)OHおよびHO-C1-4アルキルを形成することができる。したがって、理解されるように、この用語は、慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0056】
別の実施態様において、本発明は、また、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の本発明の化合物を薬学的に許容される担体と混合して含む、抗炎症剤として使用するための医薬組成物を提供する。
【0057】
本発明の化合物の製造方法
本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩は、本明細書に記載および例示された方法を用い、およびそれと同様の方法により、および化学技術において公知の方法により、製造され得る。このような方法としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されない。市販されていない場合これらの方法のための出発物質は、既知の化合物の合成と同様または類似の技術を用いて化学技術から選択される手順によって製造され得る。
【0058】
さまざまな出発物質および/または本発明の化合物は、米国特許出願公開第2008/0188492号、米国特許出願公開第2010/0173878号、米国特許出願公開第2010/0273754号、米国特許出願公開第2010/0273753号、国際公開第2010/065153号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065149号、国際公開第2010/065147号、国際公開第2010/065152号、国際公開第2011/153129号、国際公開第2011/133224号、国際公開第2011/153135号、国際公開第2011/153136号、国際公開第2011/153138号および米国特許第9,073,936号(各々の記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する)に記載されている方法を用いて製造され得る。
【0059】
本発明の化合物は、それらのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体、ならびにそれらの多形体、水和物、溶媒和物および錯体を包含する。本発明の範囲内のいくつかの個々の化合物は、二重結合を含み得る。本発明における二重結合の表現は、二重結合のE異性体およびZ異性体の両方を含むことを意味する。加えて、本発明の範囲内のいくつかの化合物は、1個以上の不斉中心を含み得る。本発明は、光学的に純粋な立体異性体のいずれかおよび立体異性体の組合せの使用を包含する。
【0060】
本発明の化合物は、それらの安定な同位体および不安定な同位体を包含することも意図される。安定な同位体は、同種の大量に存在する核種(すなわち元素)と比較して1つのさらなる中性子を含んでいる非放射性同位体である。そのような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物は非同位体類似体の薬物動態を測定するための有用性も有すると予想される。例えば、本発明の化合物のある位置にある水素原子を重水素(非放射性である安定な同位体)と置き換えることができる。既知の安定な同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるが、これらに限定されない。別法として、同種の大量に存在する核種(すなわち、元素)と比較してさらなる中性子を含んでいる放射性同位体である不安定な同位体、例えば、123I、131I、125I、11C、18Fは、対応するI、CおよびFの豊富な種と置き換わる。本発明の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本発明の化合物の放射性イメージングおよび/または薬物動態研究に有用である。
【0061】
融点は未補正であり、(dec)は分解を示す。温度は摂氏度(℃)で示される;特記しない限り、操作は、室温または周囲温度、すなわち、18~25℃の範囲の温度で実施される。クロマトグラフィーとは、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィーを意味する;薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲルプレートで実施される。NMRデータは、主要な特徴的プロトンのデルタ値であり、内部基準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対する百万分率(ppm)で示される。シグナル形状についての慣用の略語が使用される。結合定数(J)はHzで示される。マススペクトル(MS)について、同位体分裂が複数のマススペクトルピークをもたらす分子については最低質量主イオンが報告される。溶媒混合物組成は、体積百分率または体積比として示される。NMRスペクトルが複雑である場合、特徴的なシグナルだけが報告される。
【0062】
用語および略語:
BuLi = n-ブチルリチウム、
ButOH = tert-ブチルアルコール、
CAN = 硝酸アンモニウムセリウム(IV)、
DIPEA = ジイソプロピルエチルアミン、
DMF = N,N-ジメチルホルムアミド、
DMSO = ジメチルスルホキシド、
Et2O = ジエチルエーテル、
EtOAc = 酢酸エチル、
equiv. = 当量、
h = 時間、
HPLC = 高速液体クロマトグラフィー、
LDA = リチウムジイソプロピルアミド、
MeOH = メタノール、
NBS = N-ブロモスクシンイミド、
NCS = N-クロロスクシンイミド、
NaHCO3 = 重炭酸ナトリウム、
NH4OH = 水酸化アンモニウム、
Pd2(dba)3 = トリス[ジベンジリデンアセトン]ジパラジウム(0)
PMB = p-メトキシベンジル、
POCl3 = オキシ塩化リン、
SOCl2 = 塩化チオニル、
TFA = トリフルオロ酢酸、
TFMSA = トリフルオロメタンスルホン酸、
THF = テトラヒドロフラン。
【0063】
本発明の化合物の使用方法
本発明の化合物は、炎症性疾患または状態、特に神経炎症性疾患または状態の治療に有用である。したがって、本明細書に記載の好ましいPDE1阻害剤、例えば上記のPDE1阻害剤、例えば式Ia、Ib、IIa、IIb、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XIIで示される化合物の投与または使用は、炎症を調節する(例えば、神経炎症、および神経炎症に関連する疾患または障害を予防し、軽減し、および/または回復に向かわせる)手段を提供し、ある実施態様においては、さまざまな炎症性疾患および障害の治療を提供する。
【0064】
例えば、一の実施態様において、本発明は、必要とする患者にI型ホスホジエステラーゼ(PDE1)の特異的阻害剤の有効量を等することを含む、炎症または炎症と関連する疾患の治療または予防の方法(方法1)、例えば下記の方法を提供する:
1.1.神経炎症、ならびに/または、神経炎症および/またはミクログリア機能に関連する疾患または障害を治療する方法である方法1。
1.2.治療される疾患または障害が下記から選択される、必要とする患者に本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIおよび/またはXIIのPDE1阻害剤)の有効量、例えば、(i)M1ミクログリアの活性化の軽減または阻害に有効な量、および/または(ii)1種類以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFαおよびCcl2、またはそれらの組合せ)のレベルの減少に有効な量を投与することを含む方法1または1.1:
a.神経変性状態、例えばアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および脱髄性状態、例えば多発性硬化症(MS)、およびプリオン病;
b.脳卒中、心停止、低酸素症、脳出血または外傷性脳損傷;
c.うつ病、統合失調症、心的外傷後ストレス障害、不安、注意欠陥障害および双極性疾患を包含する、異常な神経伝達物質産生および/または反応によって特徴付けられる状態;例えば、上記のいずれかが神経炎症に関連している場合;および
d.慢性CNS感染症、例えばライム病、または免疫抑制状態の結果生じるCNS感染症、例えばHIV認知症;
e.化学療法の結果生じる神経炎症。
1.3.治療される疾患または障害が、例えばアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および脱髄性状態、例えば多発性硬化症(MS)、およびプリオン病から選択される、神経変性状態である上記のいずれかの方法。
1.4.治療される疾患または障害が、脳卒中、心停止、低酸素症、脳出血および外傷性脳損傷から選択される、上記のいずれかの方法。
1.5.治療される疾患または障害が、例えばうつ病、統合失調症、心的外傷後ストレス障害、不安、注意欠陥障害および双極性疾患から選択される、異常な神経伝達物質産生および/または反応によって特徴付けられる状態である、例えば上記のいずれかが神経炎症に関連している、上記のいずれかの方法。
1.6.治療される疾患または障害が、慢性CNS感染症、例えばライム病、または免疫抑制状態の結果生じるCNS感染症、例えばHIV認知症から選択される、上記のいずれかの方法。
1.7.治療される疾患または障害が、化学療法の結果生じる神経炎症である、上記のいずれかの方法。
1.8.必要とする患者に、本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIおよび/またはXIIのPDE1阻害剤)の有効量、例えば、(i)M1ミクログリアの活性化の軽減または阻害に有効な量、および/または(ii)1種類以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFα、IL6およびCcl2、またはそれらの組み合わせ)のレベルを減少させるのに有効な量を投与することを含む、上記のいずれかの方法。
1.9.必要とする患者に、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)に対して有効な量で、本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIおよび/またはXIIのPDE1阻害剤)の有効量を投与することを含む、上記のいずれかの方法。
1.10.必要とする患者に、ミクログリアM1表現型のレベルを減少させるのに有効なおよび/またはミクログリアM2表現型のレベルを増加させるのに有効な量で、本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIおよび/またはXIIのPDE1阻害剤)の有効量を投与することを含む、上記のいずれかの方法。
1.11.PDE1阻害剤が、式Ia、Ib、IIa、IIb、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XIIの化合物である、上記のいずれかの方法。
1.12.神経炎症が、脳におけるミクログリア細胞(例えば、M1ミクログリア細胞)の発現および/または活性化の増加と関連する、上記のいずれかの方法。
1.13.PDE1阻害剤が、脳における、例えばIL1B、IL-6、TNFα、Ccl2、一酸化窒素(NO)および活性酸素種(ROS)からなる群から選択される炎症誘発性サイトカインの発現および/または活性を鈍化させるかまたは阻害する、上記のいずれかの方法。
1.14.PDE1阻害剤が、PDE4阻害剤(例えば、ロリプラム)と組み合わせて投与される、上記のいずれかの方法。
1.15.患者が、炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1B、IL6、TNFα、Ccl2)のレベルの増加を示している、上記のいずれかの方法。
1.16.「PDE1阻害剤」が、例えば固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにおいて1μM未満、好ましくは750nM未満、より好ましくは500nM未満、より好ましくは50nM未満のIC
50をもって、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介、特に、PDE1B媒介)加水分解を選択的に阻害する化合物を表す、上記のいずれかの方法。
1.17.PDE1阻害剤が、10nM未満のIC
50をもって、PDE1(例えば、実施例1に記載のアッセイにおけるウシPDE1)の活性を阻害し、例えばPDE1阻害剤が、PDE1以外のタイプのPDEの活性を阻害せず、例えば、PDE1以外のタイプのPDEに対して少なくとも1000倍のIC
50を有する、上記のいずれかの方法。
1.18.PDE1阻害剤が、下記:
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
のいずれかから選択される、上記のいずれかの方法。
1.19.PDE1阻害剤が、下記:
【化33】
である、上記のいずれかの方法。
1.20.PDE1阻害剤が、下記:
【化34】
である、上記のいずれかの方法。
1.21.PDE1阻害剤が、1種類以上の抗うつ薬の有効量と、例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、三環系抗うつ薬(TCA)および非定型抗精神病薬から選択される遊離形態または薬学的に許容される塩形態の1種類以上の化合物と、例えば
(a)選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、例えば、シタロプラム(Citalopram)(セレクサ(Celexa))、エスシタプラム(Escitalopram)(レクサプロ(Lexapro)、シプラレックス(Cipralex))、パロキセチン(Paroxetine)(パキシル(Paxil)、セロキサット(Seroxat))、フルオキセチン(Fluoxetine)(プロザック(Prozac))、フルボキサミン(Fluvoxamine)(ルボックス(Luvox))、セルトラリン(Sertraline)(ゾロフト(Zoloft)、ルストラル(Lustral));
(b)セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、例えば、デスベンラファキシン(Desvenlafaxine)(プリスティーク(Pristiq))、デュロキセチン(Duloxetine)(サインバルタ(Cymbalta))、レボミルナシプラン(Levomilnacipran)(フェトジーマ(Fetzima))、ミルナシプラン(Milnacipran)(イクセル(Ixel)、サベラ(Savella))、トフェナシン(Tofenacin)(エラモール(Elamol)、トファシン(Tofacine))、ベンラファキシン(Venlafaxine)(エフェクサー(Effexor));
c)三環系抗うつ薬(TCA)、例えば、アミトリプチン(Amitriptyline)(エラビル(Elavil)、エンデプ(Endep))、アミトリプチリンオキシド(アミオキシド(Amioxid)、アンビバロン(Ambivalon)、エキリブリン(Equilibrin))、クロミプラミン(Clomipramine)(アナフラニール(Anafranil))、デシプラミン(Desipramine)(ノルプラミン(Norpramin)、ペルトフラン(Pertofrane))、ジベンゼピン(Dibenzepin)(ノベリル(Noveril)、ビクトリル(Victoril))、ジメタクリン(Dimetacrine)(イストニール(Istonil))、ドスレピン(Dosulepin)(プロチアデン(Prothiaden))、ドキセピン(Doxepin)(アダピン(Adapin)、シネクアン(Sinequan))、イミプラミン(Imipramine)(トフラニール(Tofranil))、ロフェプラミン(Lofepramine)(ロモント(Lomont)、ガマニル(Gamanil))、メリトラセン(Melitracen)(ジキセラン(Dixeran)、メリキセラン(Melixeran)、トラウサブン(Trausabun))、ニトロキサゼピン(Nitroxazepine)(シンタミル(Sintamil))、ノルトリプチリン(Nortriptyline)(パメラー(Pamelor)、アベンチル(Aventyl))、ノキシプチリン(Noxiptiline)(アゲダール(Agedal)、エルロノン(Elronon)、ノゲダール(Nogedal))、ピポフェジン(Pipofezine)(アザフェン(Azafen)/アザフェン(Azaphen))、プロトリプチリン(Protriptyline)(ビバクチル(Vivactil))、トリミプラミン(Trimipramine)(スルモンチール(Surmontil));
d)非定型抗精神病薬、例えば、アリピプラゾール(Aripiprazole)(アビリファイ(Abilify))、アセナピン(Asenapine)(サフリス(Saphris))、ブレクスピプラゾール(Brexpiprazole)(レキサルティ(Rexulti))、クロザピン(Clozapine)(クロザリル(Clozaril))、ルマテペロン(Lumateperone)、ルラシドン(Lurasidone)(ラツーダ(Latuda))、オランザピン(Olanzapine)(ジプレキサ(Zyprexa))、pリペリドン(Paliperidone)(インヴェガ(Invega))、クエチアピン(Quetiapine)(セロクエル(Seroquel))、リスペリドン(Risperidone)(リスパダール(Risperdal))、セルチンドール(Sertindole)(セルドレクト(Serdolect)、セルレクト(Serlect))、ジプラシドン(Ziprasidone)(ジオドン(Geodon))
から選択される遊離形態または薬学的に許容される塩形態の1種類以上の化合物と組み合わせて投与される(例えば、連続して、または同時に、または24時間以内に投与される)る、上記のいずれかの方法。
1.22.抗うつ薬が、非定型抗精神病薬、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のルマテペロン(Lumateperone)である、方法1.21。
1.23.抗うつ薬が、SSRI、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態のフルオキセチン(Fluoxetine)またはエスシタプラム(Escitalopram)である、方法1.21。
1.24.患者が、1種類以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFα、Ccl2、IL-6、およびそれらの組み合わせから選択される)のレベル上昇を有する、上記の方法のいずれか。
1.25.患者が、1種類以上の抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)のレベル減少を有する、上記の方法のいずれか。
1.26.患者が、ミクログリアM2表現型と比べたミクログリアM1表現型のレベル上昇を有する、上記の方法のいずれか。
1.27.患者が、
図10または
図11に記載されたサイトカインのうち1種類以上の異常なレベル(例えば、参照基準と比べて異常なレベル)を有する、上記の方法のいずれか。
1.28.PDE1阻害剤が、慢性神経炎症または慢性神経炎症に関連する疾患を治療または予防するために投与される、上記の方法のいずれか。
1.29.PDE1阻害剤が、視神経損傷を有する患者に投与される、上記の方法のいずれか。
1.30.PDE1阻害剤が、網膜神経節におけるPDE1の発現を増加させる、1.29の方法。
1.31.PDE1阻害剤の投与が、網膜神経節細胞の生存率を増大させる(例えば、参照基準または対照と比べて増大させる)、1.29または1.30の方法。
【0065】
本発明は、また、方法1およびそれ以降のいずれかにおいて用いるための医薬の製造における、PDE1阻害剤、例えば式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、式X、式XIまたは式XIIの化合物のいずれかの使用を提供する。
【0066】
本発明は、また、方法1およびそれ以降のいずれかにおいて用いるための、PDE1阻害剤、例えば式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、式X、式XIまたは式XIIの化合物を提供する。
【0067】
本発明は、また、方法1およびそれ以降のいずれかにおいて用いるための医薬組成物であって、PDE1阻害剤、例えば式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、式X、式XIまたは式XIIの化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0068】
語句「本発明の化合物」または「本発明のPDE1阻害剤」、または類似の用語は、本明細書に記載されたあらゆる化合物、例えば式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、式VIII、式IX、式X、式XIまたは式XIIの化合物を包含する。
【0069】
用語「治療」および「治療すること」は、したがって、疾患の症状の予防および治療または寛解ならびに疾患の原因の治療を包含するものと解されるべきである。
【0070】
治療の方法について、用語「有効量」は、特定の疾患もしくは障害および/またはその症状を治療または軽減するために、および/または、例えばミクログリアによって生じるような、炎症性サイトカインを減少させるために、および/または、M1ミクログリア活性化を減少させるために、および/または、例えばミクログリアによって生じるような、抗炎症性サイトカインを増加させるために、および/または、M2ミクログリア活性化を増強するために、治療上有効な量を包含することを意図する。
【0071】
用語「患者」は、ヒトまたは非ヒト(すなわち、動物)患者を包含する。特定の実施態様において、本発明は、ヒトおよび非ヒト動物の両方を包含する。別の実施態様において、本発明は、非ヒト動物を包含する。他の実施態様において、当該用語はは、ヒトを包含する。
【0072】
本開示において用いられる場合、用語「~を含む」は、無制限であることを意図しており、列挙されていないさらなる要素または方法ステップを排除するものではない
【0073】
遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、本発明の化合物、例えば上記の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物は、単独の治療剤として使用することができるが、他の活性薬剤と組み合わせてまたは共投与するために使用することもできる。
【0074】
例えば、ある実施態様においては、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、本発明の化合物、例えば上記の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIおよびXIIの化合物は、他の活性薬剤と、例えば1種類以上の抗うつ薬と、例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、c)三環系抗うつ薬(TCA)および非定型抗精神病薬から選択される遊離形態または薬学的に許容される塩形態の1種類以上の化合物と組み合わせて、投与され得る(例えば、連続して、または同時に、または24時間以内に投与され得る)。
【0075】
本発明を実施する際に用いられる用量は、もちろん、例えば治療される特定の疾患または状態、使用される特定の本発明の化合物、投与様式、および所望の療法によって異なる。本発明の化合物は、経口、非経口、経皮、または吸入を含む適切な経路によって投与され得るが、好ましくは経口投与される。一般的には、例えば上記したような疾患の治療の、満足のいく結果は、約0.01~2.0mg/kgのオーダーの投与量での経口投与で得られることが示されている。したがって、大型哺乳動物、例えばヒトにおいて、示された経口投与のための日用量は、約0.75~150mg(投与される薬物および治療される状態に依存する、例えば化合物214の場合、神経炎症状態の治療のために、例えば一リン酸塩形態で、1日に0.5~25mg、例えば1日に1~10mg)の範囲であり、好都合には、1日1回または1日2~4回の分割用量で、または持続放出形態で、投与される。かくして、経口投与のための他に投与剤形は、例えば、本発明の化合物約0.2~75または150mg、例えば、約0.2または2.0~50、75または100mg(例えば、1、2.5、5、10、または20mg)を、例えば薬学的に許容される希釈剤または担体と一緒に、含むことができる。
【0076】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、慣用の希釈剤または賦形剤、ならびにガレン分野(galenic art)で知られている技術を用いて調製され得る。かくして、経口投与剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などを挙げることができる。
【実施例】
【0077】
実施例1
IMAPホスホジエステラーゼアッセイキットを用いるインビトロでのPDEIB阻害の測定
ホスホジエステラーゼIB(PDEIB)は、環状グアノシン一リン酸(cGMP)を5'-グアノシン一リン酸(5'-GMP)に変換するカルシウム/カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ酵素である。PDEIBは、また、蛍光性分子cGMP-フルオロセインのような修飾cGMP基質を対応するGMP-フルオロセインに変換することができる。cGMP-フルオロセインからのGMP-フルオロセインの生成は、例えばIMAP(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)固定化金属親和性粒子試薬を用いて、定量化することができる。
【0078】
簡潔には、IMAP試薬は、GMP-フルオロセインには見られるが、cGMP-フルオロセインには見られない遊離5'-リン酸と高い親和性をもって結合する。得られたGMP-フルオロセイン-IMAP複合体は、cGMP-フルオロセインに比べて大きい。大きくてゆっくり転がる複合体に束縛されている小さなフルオロフォアは、未結合のフルオロフォアと区別することができる。なぜならばそれらが蛍光を発するときに放出される光子は蛍光を励起するのに使用されるフォトンと同じ極性を保持しているからである。
【0079】
ホスホジエステラーゼアッセイにおいて、IMAPと結合することができないために小さな蛍光偏光を保持するcGMP-フルオロセインは、IMAPと結合した場合に蛍光偏光(ΔmP)が大幅に増加するGMP-フルオロセインに変換される。したがって、ホスホジエステラーゼの阻害は、ΔmPの減少として検出される。
【0080】
酵素アッセイ
材料:Molecular Devices(Sunnyvale, CA)から入手されるIMAP試薬(反応バッファー、結合バッファー、FL-GMPおよびIMAPビーズ)以外の化学物質は全て、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)から入手される。
【0081】
アッセイ:下記のホスホジエステラーゼ酵素を使用し得る:3',5'-環状-ヌクレオチド-特異的ウシ脳ホスホジエステラーゼ(Sigma, St. Louis, MO)(主に、PDEIB)、例えば当業者がHEKまたはSF9細胞において生成し得る、組換え全長ヒトPDE1AおよびPDE1B(それぞれ、r-hPDE1Aおよびr-hPDE1B)。PDE1酵素は、50%グリセロールで2.5U/mlに再構成される。1単位の酵素は、30℃にてpH7.5で1分間当たり1.0μmの3',5'-cAMPを5'-AMPに加水分解する。酵素1部を反応バッファー(30μM CaCl2、10U/mlのカルモジュリン(Sigma P2277)、10mM Tris-HCl pH7.2、10mM MgCl2、0.1%BSA、0.05%NaN3)1999部に添加して、最終濃度1.25mU/mlを得る。希釈した酵素溶液99μlを、100%DMSOに溶解した試験化合物1μlを添加した平底96ウェルポリスチレンプレートの各ウェル中に添加する。化合物を酵素と混合し、室温で10分間プレインキュベートする。
【0082】
FL-GMP変換反応は、384ウェルマイクロタイタープレート中にて酵素および阻害剤の混合物4部を基質溶液(0.225μM)1部と合わせることによって開始される。該反応を暗所にて室温で15分間インキュベートする。該384ウェルプレートの各ウェルに結合試薬(消泡剤の1:1800希釈液を添加した結合バッファーによるIMAPビーズの1:400希釈液)60μLを添加することにより、該反応を停止させる。該プレートを室温で1時間インキュベートしてIMAP結合を完了まで進行させ、次いで、Envisionマルチモードマイクロプレートリーダー(PerkinElmer, Shelton, CT)に入れて蛍光偏光(ΔmP)を測定する。
【0083】
ΔmPの減少として測定されるGMP濃度の減少は、PDE活性の阻害を示す。0.0037nM~80,000nMの範囲の8~16種類の濃度の化合物の存在下で酵素活性を測定し、次いで、非線形回帰ソフトウェア(XLFit;IDBS, Cambridge, MA)を用いてIC50値を推定することができる薬物濃度対ΔmPをプロットすることによって、IC50値が決定される。
【0084】
本発明の化合物を、PDE1阻害活性について本明細書に記載されているかまたは本明細書に同様に記載されているアッセイで試験する。例えば、化合物214は、式:
【化35】
で示される特異的PDE1阻害剤として同定される。この化合物は、下記の表に示されるとおり、PDE1に対してナノモル以下で効果を有し(上記のアッセイにおいてウシ脳PDE1に対して0.058nMのIC
50)、他のPDEファミリーよりも高い選択性を有する:
該化合物は、63種類の受容体、酵素、およびイオンチャネルのパネルに対しても非常に選択的である。これらのデータ、および本明細書に記載される他のPDE1阻害剤のデータは、Li et al., J. Med. Chem. 2016: 59, 1149-1164に記載されている(その記載内容は、出典明示により本明細書の一部を構成する)。
【0085】
実施例2
単球から活性化マクロファージへの移行の阻害およびANPとの相互作用
PDE1は、GM-CSFによって媒介される炎症性単球から活性化マクロファージへの移行において誘導され、この移行は、PDE1ノックダウンによって阻害され得る。Bender and Beavo, 2006 PNAS 103, 460-5。心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、細胞内グアニリルシクラーゼ活性を刺激してGTPをcGMPへ変換するANP触媒性受容体を活性化させることによりcGMPレベルを上昇させる。ANPは、マクロファージに対して抗炎症効果を有し、マクロファージ中の炎症メディエーターの分泌を減少させる。Kiemer, et al., Ann Rheum Dis. 2001 Nov; 60(Suppl 3): iii68-iii70。具体的には、ANPは、マクロファージにおける誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)のリポ多糖(LPS)誘発性発現を阻害し、NF-κBの活性化を低下させ、TNFαおよびインターロイキン1β(IL1β)のマクロファージ放出を阻害するが、抗炎症性サイトカインIL10およびIL1受容体アンタゴニスト(IL1ra)の分泌を阻害しない。
【0086】
本発明者らは、ANPとPDE1阻害との間に相乗効果があることを示した。Bender, AT, and Beavo, JA, 2006, PNAS 103, 460-465に記載されるように、不死化ヒト前骨髄細胞株(ATCCからのHL60)を増殖させ、分化させ、収穫する。ペニシリン、ストレプトマイシンおよび10%ウシ胎仔血清を含むHEPES緩衝RPMI1640培地中にて細胞を増殖させる。HL60細胞をマクロファージ様細胞に分化させるために100nMのホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(PMA)を3日間使用する。分化後、時間0から細胞をPDE1阻害剤またはビヒクル(DMSO)と共にインキュベートする。40分後に、5μMイオノマイシン(カルシウムイオノフォア)を添加する。50分後に、100nM ANPを添加する。60分後に、細胞を収穫する。競合ELISA(Bender and Beavo, 2006)を用いて、総cGMPレベルを測定する。
【0087】
下記の構造式:
【化36】
を有する、米国特許第8,273,750号の実施例20として記載されている代表的なPDE1阻害剤である(6aR,9aS)-3-(フェニルアミノ)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチル-2-(4-(トリフルオロメチル)-ベンジル)-シクロペント[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オンを、この系におけるcGMPレベルに対するその効果について試験する。化合物214と同様に、この化合物は、PDE1の強力かつ選択的な阻害剤である(Ki=0.68nM 上記のウシ脳PDE1アッセイ)。100nMのPDE1阻害剤と組み合わせて100nMのANPで処理することによりHL60細胞において誘導されたcGMPレベルは、ANP単独またはPDE1阻害剤単独のいずれかにより誘導されたものよりも大きい。加えて、ANPおよびPDE1阻害剤で共処理することにより達成されたcGMPレベルは、ANP、および混合PDE1/PDE5阻害剤、SCH51866(5μMで使用)で共処理することにより得られるものよりも非常に大きい。この実験では、細胞内カルシウムレベルを上昇させるため、およびANPにより誘導されたcGMP上昇を打ち消すために、カルシウムイオノフォアイオノマイシン(5μMで使用される)を使用する。イオノマイシンによるPDE1の活性化によって引き起こされるcGMPシグナルの減少は、PDE1阻害剤と最適以下のレベルのANPとの組み合わせによって相乗的に防止される。イオノマイシンの添加は、ANPおよびPDE1阻害剤と組み合わせた場合には弱いcGMP低下効果しかない。
【0088】
実施例3
ミクログリア由来細胞に対するPDE1阻害剤の効果
神経炎症過程は、主に、ミクログリアによって調節される。ミクログリアは、マクロファージと若干類似している活性化状態を有し、IFN-γまたはリポ多糖(LPS)に応答して活性化されてTNF-、IL-1β、および活性酸素種/活性窒素種(ROS/NOS)などの炎症誘発性サイトカインを放出する。他の状況下では、それらは活性化されてIL-10のような抗炎症性サイトカインを放出することができ、組織修復に関与することができる。ミクログリアシグナル伝達のモデルとして不死化マウスミクログリア細胞株BV-2が用いられる。Stansley et al. Journal of Neuroinflammation 2012, 9:115。
【0089】
BV2細胞をリポ多糖(LPS)で処理し、RNA配列解析を用いてPDE発現の発現レベルを測定する。データは
図1に示されている。「FPKM」とは、「マッピングされた読み取りデータ100万当たりのエクソン1キロベース当たりのフラグメント読み取りデータ」(Fragment Reads per kilobase of exon per million reads mapped)を表す。炎症反応に関連するエンドトキシンであるLPSによる処理後、PDE1Bのレベルは、PDEファミリーの酵素の別のメンバーと比較した場合、相対的に大きなRNA発現増加を示す。PDE1Bは、LPS投与によりRNA発現の大きな増加を示すホスホジエステラーゼサブファミリーの1つである。
【0090】
BV2細胞は、また、ロリプラム(特異的PDE4阻害剤)の存在下または非存在下、および式:
【化37】
で示される特異的PDE1阻害剤である化合物214の存在下または非存在下で、LPS刺激を用いたRNA配列解析によって評価され、LPS単独の存在下に対してLPS+ロリプラムの存在下で209個のmRNA転写物が減少する;LPS単独の存在下に対して化合物214+LPSの存在下で138個の転写物が減少する。この二組の間の重複は、48個の転写物である。同様に、LPS単独の存在下に対してLPS+ロリプラムの存在下で156個の転写物が上昇し;LPS単独の存在下に対して化合物214+LPSの存在下で149個の転写物が上昇する。この二組の間の重複は45個の転写物である。
【0091】
化合物214およびロリプラムの存在下および非存在下でのLPS刺激性BV2細胞の発現のさらなるRNA配列解析(実施例7を参照)は、293個の遺伝子が化合物214によって有意に影響されるがロリプラムによって影響されず、251個の遺伝子がロリプラムによって有意に影響されるが化合物214によって影響されず、114個の遺伝子だけが両方によって影響を受け、重複は約17%にすぎなかったことを示している。
【0092】
さらなる実験において、化合物214およびロリプラムの存在下および非存在下でのLPS刺激性BV2細胞における発現の分析は、各対(LPS対LPS+ロリプラム、LPS対LPS+ITI-214)について差次的に発現された遺伝子が、最も重要な遺伝子(the most highly significant genes)の約半分を共有することを示している。例えば、該アッセイは、1240個の遺伝子が化合物214によって有意に影響されるがロリプラムによって影響されず、1463個の遺伝子がロリプラムによって有意に影響されるが化合物214によって影響されず、683個の遺伝子だけが両方によって影響を受け、重複は約半分にすぎなかったことを示している。
【0093】
比較的小さい重複は、LPS刺激に応答したこれらの細胞に対するPDE1阻害剤の効果がPDE4阻害剤の効果とは非常に異なることを示している。PDE4阻害剤はしばしば抗炎症性であると考えられているが、この場合の2種類の阻害剤は、ほとんどが、完全に異なる遺伝子の発現に影響を及ぼしている。
【0094】
さらにまた、遺伝子転写物のRNAseq定量化によって決定されるマウス脳ミクログリアに対するBV2細胞におけるPDEの発現レベルを比較する。表Aに詳述されているとおり、PDE1Bは、新しく単離されたマウスミクログリアにおいて2番目に豊富なPDE転写物であり、BV2細胞において最も豊富なPDE転写物である。PDE4B、PDE4A、PDE7AおよびPDE8aの発現もまた、両方の細胞型において実質的である(≧0.7 FPKM/RPKM)。BV2細胞においてRNA-Seqによって検出されたいくつかのPDE酵素のうち、PDE1は、cAMPおよびcGMPの両方を加水分解する能力を有する唯一のものである。BV2細胞において比較的豊富なPDE1BおよびPDE4イソ酵素は、これらが阻害剤研究のための適切なモデルであることを潜在的に示している(表A):
【0095】
実施例4
ミクログリア由来細胞におけるIL1β発現に対する効果
BV2細胞を(i)LPS(10μg/ml)、(ii)化合物214(10μg/ml)、または(iii)LPSおよび化合物214と共にインキュベートする。IL1βmRNAの定量的PCRを用いて、IL1βのレベルを測定する。IL1βは、炎症のマーカーであると考えられている。結果を
図2に示す(RQ:処理試料対対照試料における遺伝子発現の変化の相対的定量化;*** 対照に対してp<0.01、√ LPS単独に対してp<0.01;ニューマン=コイルス事後検定(Newman-Keuls post-hoc test)をともなうANOVA)。かくして、本発明のPDE1阻害剤の投与は、ミクログリア由来細胞におけるIL1βの発現のLPS誘導性増加を有意に鈍化する。
【0096】
実施例5
インビボで海馬におけるIL1β発現に対する効果
マウスに(i)LPS(2mg/kg、皮下)、(ii)化合物214(10mg/kg、腹腔内)または(iii)LPSおよび化合物214を注射する。注射の6時間後に、IL1βmRNAの定量的PCRにより、海馬におけるIL1βのレベルを測定する。IL1βは、炎症のマーカーであると考えられている。データは
図3に示されている(*** LPS単独に対してp<0.01、ニューマン=コイルス事後検定(Newman-Keuls post-hoc test)をともなうANOVA)。インビボでの効果は、BV2細胞において見られた効果と同様である:本発明のPDE1阻害剤の投与は、脳におけるIL1βの発現のLPS誘導性増加を有意に鈍化する。
【0097】
実施例6 - BV2細胞における神経炎症性遺伝子発現に対する効果
10μMの本発明のPDE1阻害剤(化合物214)の投与は、IL1βに関して実施例4に記載されるように、定量的PCRによって測定されるように、BV2細胞における炎症性サイトカインIL1β、TNFαおよびCcl2
の発現のLPS誘導性増加を有意に減少させる。PDE4阻害剤であるロリプラムは、TNFαおよびCcl2の発現を減少させる一方でIL1β発現を増加させるという異なるプロファイルを示す。データは
図4aに示されている。
【0098】
別の実験において、本発明のPDE1阻害剤(化合物214)の投与は、BV2細胞における炎症誘発性マーカーのLPS誘導性変化を大幅に減少させるかまたは鈍化させる(
図4b)。BV2細胞は、化合物、ITI-214またはロリプラム、PDE4阻害剤で前処理し、次いで、50ng/mlのLPSで4時間刺激する。TNF、IL1β、Ccl2およびIL6の発現レベルを測定する。正規化されたmRNAレベルは、ビヒクルからの変化(ΔΔCt)として示され、一元ANOVAを用いて比較される。ラインは平均を表す。* ビヒクルと有意に異なる。# LPSと有意に異なる。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001。インビボで研究された4つのサイトカインのうちの3つであるTNF、IL1βおよびCcl2のmRNA転写物は、50ng/mlのLPSで処理されたBV2細胞において上昇した。TNFおよびCcl2に対するmRNAシグナルは、ITI-214(10μM)での処理によって有意に減少し、IL1β mRNAシグナルは下降の傾向にあった。
【0099】
実施例7 - BV2細胞からのLPS誘導性TNFα放出の阻害
PDE1阻害は、LPS誘導性TNFα遺伝子発現およびBV2細胞からの放出を減少させる。
【0100】
TNFα放出: TNFαレベルをBV2条件培地中で測定し、細胞タンパク質レベルに対して正規化する。BV2細胞からのLPS誘導TNFα放出の阻害を
図5に示す。左側のパネルは、10μMの化合物214および50ng/mlのLPSで処理したBV2細胞を示す(一元ANOVA、* p<0.05、ビヒクル n=16、LPS n=31、LPS+214 n=14)。右側のパネルは、化合物214に応答したLPS誘導性TNFα放出(50ng/mlのLPS刺激)の用量依存性阻害を示す(1実験当たりの総LPS応答の阻害%として測定される)。
【0101】
TNFα遺伝子発現:
図6は、培地中で測定したTNFα放出のこの用量依存的減少がTNFα mRNA発現の減少に対応することを示す。
【0102】
実施例8 -
BV2細胞におけるおよびインビボでのマウス線条体に対する神経炎症性遺伝子発現に対する効果
選択的PDE1阻害剤(化合物214)の効果は、ELISAを用いてサイトカイン放出の変化を、また、RT-qPCRおよびRNA-Seqを用いて遺伝子発現の変化を測定することにより、LPS刺激性BV2細胞において試験される。(実験A(n=4):(1)ビヒクル;(2)10μMの化合物214;(3)50ng/mlのLPS;(4)50ng/mlのLPS+10μMの化合物214;実験B(n=2):(1)50ng/mlのLPS;(2)50ng/mlのLPS+10μMの化合物214;(3)50ng/mlのLPS+10μMのロリプラム(公知の強力なPDE4阻害剤))。最初に試験化合物を添加し、1時間後にLPSを添加し、実験開始から5時間後に細胞および/または培地を収集する。
【0103】
PDE1阻害は、BV2細胞におけるTNFα放出のLPS誘導性増加を防止する。同様に、TNFα、IL-1βおよびCcl2 mRNA発現のLPS誘導性増加は、PDE1阻害の結果としてBV2細胞およびマウスの両方において>50%減少する(p<0.01)。休止ミクログリアおよびLPS活性化ミクログリアに対するPDE1阻害の作用をよりよく理解するために、本発明者らは、RNA-Seqを用いて転写制御を試験する。転写物発現がPDE1阻害により有意に変化する遺伝子のサブセットが同定される。遺伝子オントロジーソフトウェア(AmiGO 2)を用いて、これらの遺伝子は、細胞遊走および血管外遊走経路ならびに炎症経路において有意に(p<0.05)濃縮されていることが分かる。LPSによって誘導された遺伝子のうち、サブセットは、PDE1阻害によって減弱され、それらはすべて、炎症経路と有意に(p<0.05)関連している。PDE4阻害はLPS誘導性遺伝子の異なるサブセットを減弱し、これは本発明者らの標的の独特の特性を示している(PDE1阻害と約17%の重複)。
【0104】
細胞: 2%または10%熱不活性化FBS中で増殖させたBV2マウスミクログリア細胞株(ICLC, Italy)
【0105】
TNFαELISA: Thermo FisherマウスTNFα比色サンドイッチELISAキット。標準曲線からの補間値。用量応答は、4パラメーターロジスティック曲線に適合する。
【0106】
RTqPCR: RNeasyKit(Qiagen)を用いて精製したBV2細胞由来のRNA、およびTRIzol(Ambion)を用いたマウス組織由来のRNA。Thermo FisherからのTaqManプライマー-プローブアッセイ。全ての条件についてのmRNAレベルは、GAPDHおよびビヒクル対照(ΔΔCt)に対して正規化される。多重比較のためのボンフェローニ事後検定(Bonferroni post-test for multiple comparisons)とともに一元ANOVAを用いてデータを統計的に解析する。
【0107】
本発明者らの結果は、PDE1の阻害がミクログリアにおける活性を調節し、炎症性遺伝子の発現を減少させることを示しており、毒性神経炎症を治療するためにPDE1阻害剤を使用する論理的根拠を提供する。
【0108】
RNASeq: BV2細胞を急速冷凍し、RNAを単離し、ポリA選択を用いてライブラリーを作成し、高出力モードのIllumina HiSeq 2500上で(V4化学を用いて)1×50bpシングルリードシーケンシングを行う。CLC Genomics Serverを使用して遺伝子を参照ゲノム(GRCm38)にマッピングする。1試料当たりの読み取り数は、平均約1700万である。差次的遺伝子発現解析は、DESeq2ソフトウェア(Bioconductor.org)を用いて行われる。差次的に発現された遺伝子(p<0.01、ワルド検定(Waldtest))は、log2(フォールドチェンジ(fold change))として報告される。
【0109】
下記の表は、PDE1阻害剤(化合物214)またはPDE4阻害剤(ロリプラム)の存在下または非存在下でのLPS投与に対するBV2細胞およびマウス線条体対象体の両方における神経炎症バイオマーカー発現の初期結果のサマリーを示す。結果は、Q-PCRを用いた試料の評価に基づいている。
本発明のPDE1阻害剤の投与は、LPSだけで処理した試料と比較したバイオマーカーIL1β、TNFαおよびCcl2の発現の減少または変化無しと相関する。興味深いことに、PDE1阻害剤の抗炎症プロファイルは、PDE4阻害剤の抗炎症プロファイルと全く異なる。
【0110】
マウス線条体における炎症性遺伝子発現に対するPDE1阻害の効果を測定するさらなる実験からのデータは
図7に示されている。成体マウス(少なくとも2か月齢、雄性C57BL/6)を化合物214(10mg/kg(腹腔内))およびLPS(500μg/kg(皮下))で処理し、2時間後に屠殺する。線条体組織を単離し、急速冷凍し、RNAを抽出する。RT-qPCRからの測定結果をlog2フォールドチェンジ(fold change)(2ΔΔCt)として示す。n=4 * p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001。
【0111】
PDE1阻害剤が炎症誘発性サイトカインTNFα、Ccl2、IL-1βおよびIL-6のLPS刺激を阻害することを確認することに加えて、PDE1阻害剤が抗炎症性サイトカインIL-10の発現を有意に増強することが分かる。
【0112】
BV2細胞におけるおよびインビボでのマウス線条体に対する神経炎症性遺伝子発現に対するさらなる効果
マウス線条体における炎症性遺伝子発現に対するPDE1阻害の効果を測定するさらに別の実験からのデータは
図8に示されている。成体マウスをビヒクル(白色の棒)、500μg/kgのLPS(皮下)(灰色の棒)、または10mg/kg(化合物214)腹腔内および500μg/kgのLPS(皮下)(黒色の棒)で2時間処理する(n=4)。線条体組織をTNF、IL1β、Ccl2およびIL6のmRNAレベルについて分析する。発現レベルをビヒクルからのQ-PCRシグナルの変化(ΔΔCt)として示し、ANOVAを用いて比較する。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001。
【0113】
本出願人は、定量的PCRを用いて4つの一般的な炎症マーカー(TNF、IL1β、Ccl2およびIL6)のmRNAレベルを測定する(
図8)。500μg/kgのLPS(皮下)で2時間処理した成体マウスにおいて、4つのマーカーすべてのmRNA発現レベルは、線条体からの単離組織試料において測定されるように有意に増加する(
図8)。腹腔内送達される10mg/kg(化合物214)の用量はTNFおよびCcl2の発現を減弱させる。この実験において、IL1βおよびIL6のレベルも同様にレベルを低下させる傾向にあるが、有意に達しない。
【0114】
BV2細胞におけるPDE1阻害に関連した生物学的過程
実験1
下記の表(表1)は、実験Aからの化合物214比較および実験Bからのロリプラム比較において差次的に発現された遺伝子を遺伝子機能のデータベースに対して分析することにより、BV2細胞におけるPDE1阻害に関連した生物学的過程を協調している。遺伝子オントロジー解析は、AmiGO2ソフトウェアバージョン:2.4.24を実行しているPANTHER.PANTHER Overrepresentation Test(リリース20160715)を用いて生成される。2016-10-27リリースのGOオントロジーデータベース。参照リスト=ハツカネズミ(Mus musculus)(データベース内の全ての遺伝子)。ボンフェローニ補正(Bonferroni Correction)。示される生物学的過程は、ヒエラルキービューにおけるヘッダー(Headers in Hierarchy View)である(p<0.05)。
表1
実験2
さらなる実験において、AmiGOを用いて、下記の表(表2)は、BV2細胞におけるRNAseq実験においてLPSおよびITI-214によって影響を受ける調節経路を解析する。全体として、一次過程タイプは、LPSによって変化し、ITI-214を含むことにより減弱され得、炎症、サイトカイン発現、およびLPSに対する細胞応答に関連すると考えられる(表2)。一般に、ビヒクルと比較してITI-214処理に関連して差次的に発現した遺伝子は、走化性および遊走に関連する過程と関連すると考えられる。LPSおよびITI-214の組み合わせにのみ反応する遺伝子は、DNA複製、有糸分裂周期およびDNA修復に関連した生物学的過程の強化を示すと考えられる。
表2
【0115】
選択された遺伝子のITI-214に対する応答
さらなる実験において、RT-qPCRによるさらなる分析のために一群の遺伝子を選択する。比較のために、補体経路における遺伝子を含む、ミクログリア細胞および星状細胞活性化における科学文献に関与している遺伝子を分析する。
【0116】
転写応答実験から導き出すことができるこの選択パネルにおいて、一般的に言えば、遺伝子の大部分は、3つの一般的なカテゴリーに分類される:LPSによって強く誘導され、PDE1の阻害によって減弱または逆転されるもの、主に化合物214に対して応答するもの、およびLPSによって強く誘導され、化合物214に対して弱い応答を示すもの。これらのパターンを
図9の平行座標グラフに表示する。
【0117】
一の実験において、
図10は、様々な用量のITI-214でBV2細胞を処理した後の標的遺伝子発現の定量変化を示す。注目すべき所見は、ITI-214によるLPSに対する転写応答の調節が用量依存的であるということである(
図10a)。
図10aは、50ng/mlのLPSおよび示された用量のITI-214を用いたBV2細胞における各遺伝子の発現レベルの変化を示す。LPS刺激の非存在下でのITI-214の用量依存性効果を
図10bに示す。全ての試料値を、3つの参照遺伝子の平均およびビヒクル対照(ΔΔCt)に対して正規化する。エラーバーは、平均値±SEM(n=4)を表す。左から右へ、サイトカインの分類について、バーは、X軸上に示される各特定の遺伝子について、LPS、0.1μMの214+LPS、0.4μMの214+LPS、1.1μMの214+LPS、3.3μMの214+LPS、10μMの214+LPSで処理された試料を示す。LPSと10μMのITI-214+LPSとの間(A)およびビヒクルと10μMのITI-214との間(B)の有意な変化は、X軸遺伝子名上にマークされており、一元ANOVAを用いて計算される。* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、**** p<0.0001。
【0118】
LPSのITI-214依存性阻害に対するcAMPおよびcGMPの効果;アクチベーター
本発明のPDE1阻害剤(化合物214)のcGMP依存性活性を研究するために、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)による粒子状グアニリルシクラーゼ活性または一酸化窒素供与体DEANOによる可溶性グアニリルシクラーゼ活性を刺激することができる。一の特定の実験において、BV2細胞を、10μMフォルスコリン(FSK)で処理してアデニリルシクラーゼを活性化するか、5μMのDEANOで処理して可溶性グアニリルシクラーゼを活性化するか、または100nM心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)で処理して粒子状グアニリルシクラーゼを活性化する。単独では、これらのアクチベーターは、選択された遺伝子のLPS誘導に対してほとんどまたは全く影響を及ぼさないと考えられる。フォルスコリンをITI-214と組み合わせると、ITI-214阻害のいくつかの効果を増大させることができる。例えば、以下のITI-214応答性転写物は、付随するフォルスコリンによってさらに下方または上方調節される:ケモカイン受容体Cx3cr1、サイトカインCsf2およびTNF、ケモカインCcl4、キナーゼMAPKAPK2、ホスファターゼPtpN6、ケモカイン受容体Ccr1。サイトカインLIFは、LPSによる発現の増加を示し、ITI-214によってさらに増加する。しかしながら、フォルスコリンを添加すると、LIFは、LPSレベルの発現に戻る。データは
図11aに示されている。
【0119】
ITI-214とともにDEANO処理に対する応答は、フォルスコリンおよびITI-214で見られる応答とよく一致しており、cGMPまたはcAMPシグナル伝達のITI-214増強がLPS誘導を逆転させることができることを示している。ANPおよびITI-214処理により同等の反応があるとは考えられない。これは、おそらく、cGMPの異なるプール(細胞質型対膜結合型)がPDE1の阻害に対するある種の転写応答を支配することを示している。以下のサイトカイン:Cx3cr1、Csf2、PtpN6、ならびにCcr1およびLIFについて、ITI-214にDEANO、FSKまたはANPを添加しても同等の応答があると考えられる。Ccl4、TNFおよびMAPKAPK2は、PDE1阻害剤へのANPの添加に対して弱い応答を示すかまたは全く応答を示さない。最後に、C型レクチンCD72および転写因子Ddit3についてのITI-214に対するmRNA応答は、ANPによって選択的に増強される。データは
図11aに示されている。
【0120】
パネル中の2つの転写物、Cx3cr1およびTgm2は、ITI-214処理により最も劇的な変化を示す。LPSによるCx3cr1の誘導は、LPSの非存在下でのこのマーカーの基礎発現と同様にITI-214処理によって有意に減少した。
【0121】
LPSのITI-214依存性阻害に対するcAMPおよびcGMPの効果;阻害剤
LPS刺激、PDE1のITI-214阻害、およびPKA阻害剤cAMPS-Rp(100μM)またはPKG阻害剤-8-Br-PET-cGMPS(100μM)を組み合わせることによる、ITI-214応答に対する各環状ヌクレオチド(cAMPまたはcGMP)の影響。環状ヌクレオチド依存性シグナル伝達分子に結合すると、これらの類似体は、活性化をもたらさず、真正の環状ヌクレオチドによる活性化を防止する。ITI-214の影響を中程度に軽減することはこれらの阻害剤の標準である(
図11b)。LPS処理単独と比較してそれらのオーダーである10μMのITI-214へのPKAまたはPKG阻害剤の添加後の遺伝子発現レベルが、3.3μMのITI-214と同等のレベルまで低下したことに留意すべきである。データは
図11bに示されている。
【0122】
実施例9 - ストレス誘発性炎症に対する効果
この実験は、野生型マウス対PDE1B条件付ノックアウトマウスにおける脳サイトカイン/ケモカインプロファイルに対する慢性ストレスの影響を比較する。野生型マウスおよびPDE1Bノックアウトマウスのこのモデルにおけるストレス誘発性サイトカイン変化に対する本発明のPDE1阻害剤(化合物214)の効果を評価することにより、PDE1阻害剤の効果がPDE1Bに特異的であることを確認することができる。
【0123】
PDE1B条件付ノックアウトマウスは、Siuciak JA, et al. “Behavioral and neurochemical characterization of mice deficient in the phosphodiesterase-1B (PDE1B) enzyme.” Neuropharmacology. 2007 Jul; 53(1):113-24に記載されている。CUS、および慢性ストレスの他のモデルについてのプロトコールは、Monteiro, et al., “An Efficient Chronic Unpredictable Stress Protocol to Induce Stress-Related Responses in C57BL/6 Mice,” Front Psychiatry. 2015; 6: 6 および Mann et al., “Chronic social defeat, but not restrain stress, alters bladder function in mice” Physiol. Behav. 2015; Oct 15; 150: 83-92に記載されている。
【0124】
一般に、野生型(対照)マウスおよびPDE1B条件付ノックアウトマウスは、必要に応じて、上記のMann et al (2015)によって記載されているように浅水モデルにおける拘束ストレス(restraint stress in shallow water model)(RSSW)を用いて慢性ストレスに曝される。RSSW(21日間)について、マウスをビヒクルまたは化合物214(10mg/kg、腹腔内または経口)のいずれかで毎日処理し、次いで、有孔円錐管に入れて足を水中に4時間浸し、次いで、単独収容ケージに戻す。これらの実験のための対照マウスもまた単独収容ケージに維持する。ストレスプロトコールに従って、該マウスをうつ病様行動プロファイルについてモニターする。次いで、マウスを屠殺し、組織試料を採取する。脳を迅速に切り出し(mRNAを保存する条件下で)、ITIへの輸送のために-80℃で凍結する。屠殺時に血液を回収し、血清用に調製する。炎症誘発性および抗炎症性サイトカインおよびケモカインを含む一群のマーカーについて脳組織および血清を分析する。
【0125】
A)神経炎症マーカーに対するCUSプロトコールの効果:
C57Bl/6マウスをCUSプロトコール(記載のとおり、14d)または偽処理に供し、特定の時点でうつ病様行動について評価し、血液の回収(血清調製)および脳回収のために屠殺する。血清はコルチコステロン(CORT)レベルおよび他の炎症マーカーについて分析する。脳はqPCR(mRNA)およびMSD(タンパク質)によって一群の炎症マーカーについて分析する。CUSプロトコールは、正常マウスにおけるうつ病様行動の誘発と並行して、炎症誘発性サイトカイン/ケモカインのCNSおよび血清中レベルを有意に上昇させる。
【0126】
B)ストレス誘発性の脳および血清炎症マーカーに対するPDE1阻害剤の効果:
C57Bl/6マウスのコホート(PDE1B KOについてはWT)をCUSプロトコール(記載の通り、14d)または偽処理に供し、化合物214(10mg/kg、腹腔内)またはビヒクルのいずれかを毎日投与する。マウスを特定の時点でうつ病様行動について評価して、うつ病様表現型に対するCUSプロトコールの影響およびPDE1阻害剤処理の影響を試験する。血液の回収(血清調製)および脳回収のためにマウスを直ちに屠殺する。血清はCORTレベルおよび他の炎症マーカーについて分析する。脳試料はqPCR(mRNA)およびMSD(タンパク質)によって一群の炎症マーカーについて分析する。PDE1阻害剤は、正常マウスにおけるCUS誘発性CNSおよび血清マーカー(炎症誘発性)ならびにうつ病様行動の発現を有意に抑制する。
【0127】
C)ストレス誘発性脳および血清マーカーに対するPDE1B KOの効果:
WTおよびPDE1B KOマウスのコホートを処理し、化合物214(10mg/kg、腹腔内)またはビヒクルのいずれかを毎日投与して、CUSプロトコールまたは偽処理のいずれかに供する。マウスを特定の時点でうつ病様行動について評価して、うつ病様表現型に対するCUSプロトコールおよびPDE1阻害剤の処理の影響を試験する。血液の回収(血清調製)および脳回収のためにマウスを直ちに屠殺する。血清はCORTレベルおよび他の炎症マーカーについて分析し、脳試料はまたqPCR(mRNA)およびMSD(タンパク質)による位置愚の炎症マーカーについて分析する。PDE1B KOマウスは、CUS誘発性CNSおよび血清マーカー(炎症誘発性)が有意に抑制されたことを示す。さらにまた、正常マウスに見られるうつ病様行動の発現(すなわち、CUSプロトコールを受けていた)はKOにおいて減少する。これらの組織および血清マーカーならびに行動に対するPDE1阻害剤はPDE1B KOマウスにおいて有意な効果を奏しない。
【0128】
実施例10 - 視神経損傷モデルにおける効果
PDE1阻害化合物を視神経損傷モデル(すなわち、「視神経挫傷(optic crush)」モデル)において試験する。以下の構造:
【化38】
を有する選択的PDE1阻害剤IC200041を用いて下記の研究を行う。
【0129】
このモデルにおいて、従前の記載(Yin Y, et al., Oncomodulin links inflammation to optic nerve regeneration. Proc Natl Acad Sci U S A. 2009; 106:19587-19592)に従って、8週齢の雄性マウス(平均体重20~26g)に対して全身麻酔下にて視神経手術が行われる。神経損傷後、眼から体液3μlを取り出し、PDE1阻害化合物を含有する溶液を眼内注射する。
【0130】
合計4匹のマウスの網膜をPDE1阻害剤で処理し、対照として合計10匹のマウスの網膜にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与する。視神経損傷の14日後にマウスを過剰量の麻酔で典型的に安楽死させ、生理食塩水および4%パラホルムアルデヒド(PFA)で灌流する。これらのマウスは屠殺されたとき10週齢である。視神経および眼を切り出し、PFAでポストフィックス(postfix)する。神経に10%シュークロースを含浸させ、次いで、30%シュークロースを含浸させ、OCT Tissue Tek Medium(Sakura Finetek)中に包埋させ、凍結させ、縦方向の平面で厚さ14μmに切断し、コートスライド(coated slide)に載せる。GAP-43に対するヒツジ抗体、次いで、蛍光標識された二次抗体で染色することによって、再生軸索を可視化する。損傷部位から予め指定された距離で、1ケースあたり少なくとも8つの縦断面において軸索を手動で計数し、これらの数を様々な距離における再生軸索の数に変換した。
【0131】
網膜損傷後、定量分析は、網膜神経節細胞におけるPDE発現が非常に増加していることを示す。特に、PDE1BのメッセンジャーRNA(mRNA)は、損傷後に約4倍アップレギュレートする。標準的な方法を用いて組織からRNAを抽出し、定量的RNAseq配列決定法を用いてmRNAを定量化した。ベータアクチンの標準的なmRNA、および4つのグルタミン酸受容体、すなわちNMDA R1ならびにAMPAK R1、R2およびR3は並行して評価され、有意な変化を示さない。
【0132】
IC200041は、PBS対照と比較した場合、網膜神経節細胞の生存の増加に非常に有効である。また、対照網膜神経節細胞とIC200041で処理した網膜神経節細胞との差異は統計学的に有意である。データは
図12内に示されている。
本願は、以下の態様も包含する。
[態様1]
炎症、および/または炎症性疾患もしくは障害(例えば、神経炎症)の治療または予防方法であって、該治療または予防を必要とする患者にPDE1阻害剤を投与することを含む、方法。
[態様2]
PDE1阻害剤が、10nM未満のIC
50
をもってPDE1の活性を阻害し(例えば、実施例1に記載のアッセイにおいて)、例えば、PDE1阻害剤が、PDE1以外のPDEタイプの活性を阻害せず、例えば、PDE1以外のPDEタイプについて少なくとも1000倍大きいIC
50
を有する、態様1記載の方法。
[態様3]
PDE1阻害剤が、上記の式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XIおよび/またはXIIのものである、態様1または2記載の方法。
[態様4]
例えば、
a.神経変性状態、例えばアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および脱髄性状態、例えば多発性硬化症(MS)、およびプリオン病;
b.脳卒中、心停止、低酸素症、脳出血または外傷性脳損傷;
c.うつ病、統合失調症、心的外傷後ストレス障害、不安、注意欠陥障害および双極性疾患を包含する、異常な神経伝達物質産生および/または反応によって特徴付けられる状態;例えば、上記のいずれかが神経炎症に関連している場合;
d.慢性CNS感染症、例えば、ライム病、または免疫抑制状態の結果生じるCNS感染症、例えば、HIV認知症;
e.化学療法の結果生じる神経炎症
から選択される、神経炎症、ならびに/または神経炎症および/もしくはミクログリア機能に関連する疾患もしくは障害の治療または予防のための、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様5]
患者が、
a.1種類以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFα、Ccl2、IL-6、およびそれらの組み合わせから選択される)のレベル上昇;
b.1種類以上の抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10)のレベル減少;
c.ミクログリアM2表現型と比べたミクログリアM1表現型のレベル上昇
を有する、いずれかの上記態様に記載の方法。
[態様6]
PDE1阻害剤が下記:
【化39】
【化40】
【化41】
のいずれかから選択される、上記態様のいずれか。
[態様7]
PDE1阻害剤が、下記のもの:
【化42】
である、態様6記載の方法。
[態様8]
PDE1阻害剤が、下記のもの:
【化43】
である、態様6記載の方法。
[態様9]
PDE1阻害剤が、PDE4阻害剤(例えば、ロリプラム)と組み合わせて投与される、上記態様のいずれかに記載の方法。
[態様10]
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、三環系抗うつ薬(TCA)および非定型抗精神病薬から選択される1種類以上の抗うつ薬;例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、非定型抗精神病薬、例えばルマテペロン(Lumateperone)、または遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、SSRI、例えばフルオキセチン(Fluoxetine)と組み合わせて投与される、上記態様のいずれかに記載の方法。
[態様11]
いずれかの上記態様に記載の方法のいずれかに使用するための、PDE1阻害剤、またはPDE1阻害剤を含む医薬組成物。