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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】導電材料
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/00 20060101AFI20240619BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
H01B5/00 G
H01B5/00 C
H01R11/01 501A
H01R11/01 501E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022105740
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2020100864の分割
【原出願日】2015-10-13
(65)【公開番号】P2022132316
(43)【公開日】2022-09-08
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2014220448
(32)【優先日】2014-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】平山 堅一
(72)【発明者】
【氏名】久保出 裕美
(72)【発明者】
【氏名】江島 康二
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-149611(JP,A)
【文献】特開2013-105636(JP,A)
【文献】特開2012-219262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01R 11/01
H01B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有する導電フィルムを介して、端子上に酸化物層が形成されてなる第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とを10~80MPaの圧力範囲にて圧着し、
前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、
前記バインダーが、平均分子量が10000以上80000以下であり、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、及びブチラール樹脂からなる群より選択される1種以上の膜形成樹脂を含有する接続構造体の製造方法。
【請求項2】
樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有する導電フィルムを介して、端子上に酸化物層が形成されてなる第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とを10~80MPaの圧力範囲にて圧着し、
前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、
前記バインダーが、常温で固形の固形エポキシ樹脂と、常温で液状の液状エポキシ樹脂とを含み、前記固形エポキシ樹脂と前記液状エポキシ樹脂とが相溶し、カチオン硬化型、アニオン硬化型、又はこれらを併用したものである接続構造体の製造方法。
【請求項3】
前記バインダーが、カチオン硬化型、アニオン硬化型、ラジカル硬化型、又はこれらを併用したものである請求項1記載の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記バインダーが、応力緩和剤をさらに含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項5】
前記バインダーが、平均分子量が10000以上80000以下であり、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、及びブチラール樹脂からなる群より選択される1種以上の膜形成樹脂をさらに含有する請求項2記載の接続構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の回路部材の端子上にTiO層が形成されてなる請求項1~3のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項7】
樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有する導電フィルムにより、端子上に酸化物層が形成されてなる第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とが接続されてなり、
前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、
前記バインダーが、平均分子量が10000以上80000以下であり、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、及びブチラール樹脂からなる群より選択される1種以上の膜形成樹脂を含有する接続構造体。
【請求項8】
樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有する導電フィルムにより、端子上に酸化物層が形成されてなる第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とが接続されてなり、
前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、
前記バインダーが、常温で固形の固形エポキシ樹脂と、常温で液状の液状エポキシ樹脂とを含み、前記固形エポキシ樹脂と前記液状エポキシ樹脂とが相溶し、カチオン硬化型、アニオン硬化型、又はこれらを併用したものである接続構造体。
【請求項9】
樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有し、
前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、
前記バインダーが、平均分子量が10000以上80000以下であり、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、及びブチラール樹脂からなる群より選択される1種以上の膜形成樹脂を含有する導電フィルム。
【請求項10】
樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有し、
前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、
前記バインダーが、常温で固形の固形エポキシ樹脂と、常温で液状の液状エポキシ樹脂とを含み、前記固形エポキシ樹脂と前記液状エポキシ樹脂とが相溶し、カチオン硬化型、アニオン硬化型、又はこれらを併用したものである導電フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路部材同士を電気的に接続する導電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路部材の配線として、生産コストが高いITO(Indium Tin Oxide)に代わっ
て、IZO(Indium Zinc Oxide)が用いられている。IZO配線は、表面が平滑であり
、表面に酸化物層(不動態)が形成されている。また、例えばアルミニウム配線では、腐
食を防止するために表面にTiOなどの酸化物層の保護層が形成されることがある。
【0003】
しかしながら、酸化物層は硬いため、従来の導電材料では、導電性粒子が酸化物層を突
き破って十分に食い込まず、十分な導通信頼性が得られないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-149613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、酸化物層に対して優
れた導通信頼性が得られる導電材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、導電性粒子の突起を形成する絶縁性粒子のモース
硬度を所定値よりも大きいものとすることにより、優れた導通抵抗が得られることを見出
した。
【0007】
すなわち、本発明に係る導電フィルムは、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有し、前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、前記バインダーが、平均分子量が10000以上80000以下であり、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、及びブチラール樹脂からなる群より選択される1種以上の膜形成樹脂を含有する。
また、本発明に係る導電フィルムは、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有し、前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、前記バインダーが、常温で固形の固形エポキシ樹脂と、常温で液状の液状エポキシ樹脂とを含み、前記固形エポキシ樹脂と前記液状エポキシ樹脂とが相溶し、カチオン硬化型、アニオン硬化型、又はこれらを併用したものである。
【0008】
また、本発明に係る接続構造体は、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有する導電フィルムにより、端子上に酸化物層が形成されてなる第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とが接続されてなり、前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、前記バインダーが、平均分子量が10000以上80000以下であり、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、及びブチラール樹脂からなる群より選択される1種以上の膜形成樹脂を含有する。
また、本発明に係る接続構造体は、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有する導電フィルムにより、端子上に酸化物層が形成されてなる第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とが接続されてなり、前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、前記バインダーが、常温で固形の固形エポキシ樹脂と、常温で液状の液状エポキシ樹脂とを含み、前記固形エポキシ樹脂と前記液状エポキシ樹脂とが相溶し、カチオン硬化型、アニオン硬化型、又はこれらを併用したものである。
【0009】
また、本発明に係る接続構造体の製造方法は、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有する導電フィルムを介して、端子上に酸化物層が形成されてなる第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とを10~80MPaの圧力範囲にて圧着し、前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、前記バインダーが、平均分子量が10000以上80000以下であり、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、及びブチラール樹脂からなる群より選択される1種以上の膜形成樹脂を含有する。
また、本発明に係る接続構造体の製造方法は、樹脂コア粒子と、前記樹脂コア粒子の表面に複数付着され、突起を形成する絶縁性粒子と、前記樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される導電層とを備え、前記絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きく、前記樹脂コア粒子の20%圧縮されたときの圧縮弾性率が、10000~20000N/mmである導電性粒子と、バインダーとを含有する導電フィルムを介して、端子上に酸化物層が形成されてなる第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とを10~80MPaの圧力範囲にて圧着し、前記絶縁性粒子の平均粒子径が、前記導電層の厚みよりも大きく、前記バインダーが、常温で固形の固形エポキシ樹脂と、常温で液状の液状エポキシ樹脂とを含み、前記固形エポキシ樹脂と前記液状エポキシ樹脂とが相溶し、カチオン硬化型、アニオン硬化型、又はこれらを併用したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、突起を形成する絶縁性粒子のモース硬度が大きいため、導電性粒子が
電極表面の酸化物層を突き破って十分に食い込み、優れた導通信頼性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、導電性粒子の第1の構成例の概略を示す断面図である。
図2図2は、導電性粒子の第2の構成例の概略を示す断面図である。
図3図3は、導電性粒子の第3の構成例の概略を示す断面図である。
図4図4は、圧着時の導電性粒子の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する

1.導電性粒子
2.導電材料
3.接続構造体の製造方法
4.実施例
【0013】
<1.導電性粒子>
本実施の形態に係る導電性粒子は、樹脂コア粒子と、樹脂コア粒子の表面に複数配置さ
れ、突起を形成する絶縁性粒子と、樹脂コア粒子及び前記絶縁性粒子の表面に配置される
導電層とを備え、絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きいものである。これにより、導
電性粒子が電極表面の酸化物層を突き破って十分に食い込み、優れた導通信頼性が得られ
る。特に、被着体である回路部材が、PET(Poly Ethylene Terephthalate)基板など
の低弾性率のプラスチック基板である場合、圧着時の圧力を高くすることなく、基材変形
の影響を軽減して低抵抗を実現できるため、非常に有効である。
【0014】
[第1の構成例]
図1は、導電性粒子の第1の構成例の概略を示す断面図である。第1の構成例の導電性
粒子は、樹脂コア粒子10と、樹脂コア粒子10の表面に複数付着され、突起30aの芯
材となる絶縁性粒子20と、樹脂コア粒子10及び絶縁性粒子20を被覆する導電層30
とを備える。
【0015】
樹脂コア粒子10としては、ベンゾグアナミン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シ
リコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂などが挙げられ、また、これらの樹脂を構成するモノ
マーに基づく繰り返し単位の少なくとも2種以上を組み合わせた構造を有する共重合体が
挙げられる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、テトラメチロールメタンテトラアクリ
レート、及びスチレンを組合せて得られる共重合体を用いることが好ましい。
【0016】
また、樹脂コア粒子10は、20%圧縮されたときの圧縮弾性率(20%K値)が50
0~20000N/mmであることが好ましい。樹脂コア粒子10の20%K値が上記
範囲内であることにより、結果的に突起が電極表面の酸化物層を突き破ることができる。
このため、電極と導電性粒子の導電層とが十分に接触し、電極間の接続抵抗を低下させる
ことができる。
【0017】
樹脂コア粒子10の圧縮弾性率(20%K値)は、次のように測定することできる。微
小圧縮試験機を用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、圧縮
速度2.6mN/秒、及び最大試験荷重10gfの条件下で導電性粒子を圧縮する。この
ときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、圧縮弾性率
(20%K値)を下記式により求めることができる。なお、微小圧縮試験機として、例え
ば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH-100」等が用いられる。
K値(N/mm)=(3/21/2)・F・S-3/2・R-1/2
F:導電性粒子が20%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:導電性粒子が20%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:導電性粒子の半径(mm)
【0018】
樹脂コア粒子10の平均粒子径は、2~10μmであることが好ましい。本明細書にお
いて、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値5
0%での粒径(D50)を意味する。
【0019】
絶縁性粒子20は、樹脂コア粒子10の表面に複数付着され、電極表面の酸化物層を突
き破るための突起30aの芯材となる。絶縁性粒子20は、モース硬度が7より大きく、
9以上であることが好ましい。絶縁性粒子20の硬度が高いことにより、突起30aが電
極表面の酸化物を突き破ることができる。また、突起30aの芯材が絶縁性粒子20であ
ることにより、導電性粒子を使用したときに比べマイグレーションの要因が少なくなる。
【0020】
絶縁性粒子20としては、ジルコニア(モース硬度8~9)、アルミナ(モース硬度9
)、炭化タングステン(モース硬度9)及びダイヤモンド(モース硬度10)などが挙げ
られ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの
中でも、経済性の観点からアルミナを用いることが好ましい。
【0021】
また、絶縁性粒子20の平均粒子径は、好ましくは50nm以上250nm以下、より
好ましくは100nm以上200nm以下である。また、樹脂コア粒子20の表面に形成
された突起の個数は、好ましくは1~500、より好ましくは30~200である。この
ような平均粒子径の絶縁性粒子20を用いて、樹脂コア粒子20の表面に所定数の突起3
0aを形成することにより、突起30aが電極表面の酸化物を突き破り、電極間の接続抵
抗を効果的に低くすることができる。
【0022】
導電層30は、樹脂コア粒子10及び絶縁性粒子20を被覆し、複数の絶縁性粒子20
により隆起された突起30aを有する。導電層30は、ニッケル又はニッケル合金である
ことが好ましい。ニッケル合金としては、Ni-W-B、Ni-W-P、Ni-W、Ni
-B、Ni-Pなどが挙げられる。これらの中でも、低抵抗であるNi-W-Bを用いる
ことが好ましい。
【0023】
また、導電層30の厚みは、好ましくは50nm以上250nm以下、より好ましくは
80nm以上150nm以下である。導電層30の厚みが小さすぎると導電性粒子として
機能させるのが困難となり、厚みが大きすぎると突起30aの高さがなくなってしまう。
【0024】
第1の構成例の導電性粒子は、樹脂コア粒子10の表面に絶縁性粒子20を付着させた
後、導電層30を形成する方法により得ることができる。また、樹脂コア粒子10の表面
上に絶縁性粒子20を付着させる方法としては、例えば、樹脂コア粒子10の分散液中に
、絶縁性粒子20を添加し、樹脂コア粒子10の表面に絶縁性粒子20を、例えば、ファ
ンデルワールス力により集積させ、付着させることなどが挙げられる。また、導電層を形
成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的
蒸着による方法などが挙げられる。これらの中でも導電層の形成が簡便である無電解めっ
きによる方法が好ましい。
【0025】
[第2の構成例]
図2は、導電性粒子の第2の構成例の概略を示す断面図である。第2の構成例の導電性
粒子は、樹脂コア粒子10と、樹脂コア粒子10の表面に複数付着され、突起32aの芯
材となる絶縁性粒子20と、樹脂コア粒子10及び絶縁性粒子20の表面を被覆する第1
の導電層31と、導電層31を被覆する第2の導電層32とを備える。すなわち、第2の
構成例は、第1の構成例の導電層30を2層構造としたものである。導電層を2層構造と
することにより、最外殻を構成する第2の導電層32の密着性を向上させ、導通抵抗を低
下させることができる。
【0026】
樹脂コア粒子10及び絶縁性粒子20は、第1の構成例と同様のため、ここでは説明を
省略する。
【0027】
第1の導電層31は、樹脂コア粒子10及び絶縁性粒子20の表面を被覆し、第2の導
電層32の下地となる。第1の導電層31としては、第2の導電層32の密着性が向上さ
れれば特に限定されず、例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅、銀などが挙げられる。
【0028】
第2の導電層32は、第1の導電層31を被覆し、複数の絶縁性粒子20により隆起さ
れた突起32aを有する。第2の導電層32は、第1の構成例と同様、ニッケル又はニッ
ケル合金であることが好ましい。ニッケル合金としては、Ni-W-B、Ni-W-P、
Ni-W、Ni-B、Ni-Pなどが挙げられる。これらの中でも、低抵抗であるNi-
W-Bを用いることが好ましい。
【0029】
また、第1の導電層31及び第2の導電層32の総厚みは、第1の構成例の導電層30
と同様、好ましくは50nm以上250nm以下、より好ましくは80nm以上150n
m以下である。総厚みが小さすぎると導電性粒子として機能させるのが困難となり、総厚
みが大きすぎると突起32aの高さがなくなってしまう。
【0030】
第2の構成例の導電性粒子は、樹脂コア粒子10の表面に絶縁性粒子20を付着させた
後、第1の導電層31を形成した後、第2の導電層32を形成する方法により得ることが
できる。また、樹脂コア粒子10の表面上に絶縁性粒子20を付着させる方法としては、
例えば、樹脂コア粒子10の分散液中に、絶縁性粒子20を添加し、樹脂コア粒子10の
表面に絶縁性粒子20を、例えば、ファンデルワールス力により集積させ、付着させるこ
となどが挙げられる。また、第1の導電層31及び第2の導電層32を形成する方法とし
ては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法
などが挙げられる。これらの中でも導電層の形成が簡便である無電解めっきによる方法が
好ましい。
【0031】
[第3の構成例]
図3は、導電性粒子の第3の構成例の概略を示す断面図である。第3の構成例の導電性
粒子は、樹脂コア粒子10と、樹脂コア粒子10の表面を被覆する第1の導電層33と、
第1の導電層33の表面に複数付着され、突起34aの芯材となる絶縁性粒子20と、第
1の導電層33及び絶縁性粒子20の表面を被覆する第2の導電層34とを備える。すな
わち、第3の構成例は、第1の導電層33の表面に絶縁性粒子20を付着させ、さらに第
2の導電層34を形成したものである。これにより、圧着時に絶縁性粒子20が樹脂コア
粒子10に食い込むのを防止し、突起が電極表面の酸化物層を容易に突き破ることができ
る。
【0032】
樹脂コア粒子10及び絶縁性粒子20は、第1の構成例と同様のため、ここでは説明を
省略する。
【0033】
第1の導電層33は、樹脂コア粒子10の表面を被覆し、絶縁性粒子20の付着面及び
第2の導電層34の下地となる。第1の導電層33としては、第2の導電層34の密着性
が向上されれば特に限定されず、例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅、銀などが挙げら
れる。
【0034】
また、第1の導電層33の厚みは、好ましくは10nm以上200nm以下、より好ま
しくは50nm以上150nm以下である。厚みが大きすぎると樹脂コア粒子10の弾性
の効果が低下するため、導通信頼性が低下してしまう。
【0035】
第2の導電層34は、絶縁性粒子20及び第1の導電層33を被覆し、複数の絶縁性粒
子20により隆起された突起34aを有する。第2の導電層34は、第1の構成例と同様
、ニッケル又はニッケル合金であることが好ましい。ニッケル合金としては、Ni-W-
B、Ni-W-P、Ni-W、Ni-B、Ni-Pなどが挙げられる。これらの中でも、
低抵抗であるNi-W-Bを用いることが好ましい。
【0036】
また、第2の導電層34の厚みは、第1の構成例の導電層30と同様、好ましくは50
nm以上250nm以下、より好ましくは80nm以上150nm以下である。総厚みが
小さすぎると導電性粒子として機能させるのが困難となり、総厚みが大きすぎると突起3
4aの高さがなくなってしまう。
【0037】
第3の構成例の導電性粒子は、樹脂コア粒子10の表面に第1の導電層33を形成した
後、絶縁性粒子20を付着させ、第2の導電層34を形成する方法により得ることができ
る。また、第1の導電層33の表面上に絶縁性粒子20を付着させる方法としては、例え
ば、第1の導電層33が形成された樹脂コア粒子10の分散液中に、絶縁性粒子20を添
加し、第1の導電層33の表面に絶縁性粒子20を、例えば、ファンデルワールス力によ
り集積させ、付着させることなどが挙げられる。また、第1の導電層33及び第2の導電
層34を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方
法、物理的蒸着による方法などが挙げられる。これらの中でも導電層の形成が簡便である
無電解めっきによる方法が好ましい。
【0038】
<2.導電材料>
本実施の形態に係る導電材料は、樹脂コア粒子と、樹脂コア粒子の表面に複数配置され
、突起を形成する絶縁性粒子と、樹脂コア粒子及び絶縁性粒子の表面に配置される導電層
とを備え、絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きい導電性粒子を含有する。導電材料と
しては、フィルム状、ペースト状などの形状が挙げられ、例えば、異方性導電フィルム(
ACF:Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic C
onductive Paste)などが挙げられる。また、導電材料の硬化型としては、熱硬化型、光
硬化型、光熱併用硬化型などが挙げられる。
【0039】
以下では、導電性粒子を含有するACF層と導電性粒子を含有しないNCF(Non Cond
uctive Film)層とが積層された2層構造の熱硬化型の異方性導電フィルムを例に挙げて
説明する。また、熱硬化型の異方性導電フィルムとしては、例えば、カチオン硬化型、ア
ニオン硬化型、ラジカル硬化型、又はこれらを併用することができるが、ここでは、アニ
オン硬化型の異方性導電フィルムについて説明する。
【0040】
アニオン硬化型の異方性導電フィルムは、ACF層及びNCF層は、バインダーとして
、膜形成樹脂と、エポキシ樹脂と、アニオン重合開始剤とを含有する。
【0041】
膜形成樹脂は、例えば平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム
形成性の観点から、10000~80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜
形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステ
ルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂等の種々の樹脂が挙げ
られ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの
中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂を好適に用いることが好ま
しい。
【0042】
エポキシ樹脂は、3次元網目構造を形成し、良好な耐熱性、接着性を付与するものであ
り、固形エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。ここで、固形エ
ポキシ樹脂とは、常温で固体であるエポキシ樹脂を意味する。また、液状エポキシ樹脂と
は、常温で液状であるエポキシ樹脂を意味する。また、常温とは、JIS Z 8703で
規定される5~35℃の温度範囲を意味する。
【0043】
固形エポキシ樹脂としては、液状エポキシ樹脂と相溶し、常温で固体状であれば特に限
定されず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能
型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキ
シ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙られ、これらの
中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも
、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。市場で入手可能な具体例と
しては、新日鉄住金化学(株)の商品名「YD-014」などを挙げることができる。
【0044】
液状エポキシ樹脂としては、常温で液状であれば特に限定されず、ビスフェノールA型
エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂
、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以
上を組み合わせて用いることができる。特に、フィルムのタック性、柔軟性などの観点か
ら、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。市場で入手可能な具体例
としては、三菱化学(株)の商品名「EP828」などを挙げることができる。
【0045】
アニオン重合開始剤としては、通常用いられる公知の硬化剤を使用することができる。
例えば、有機酸ジヒドラジド、ジシアンジアミド、アミン化合物、ポリアミドアミン化合
物、シアナートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物、カルボン酸、三級アミン化
合物、イミダゾール、ルイス酸、ブレンステッド酸塩、ポリメルカプタン系硬化剤、ユリ
ア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物などが挙
げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる
。これらの中でも、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなる
マイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。市場で入手可能な具体例とし
ては、旭化成イーマテリアルズ(株)の商品名「ノバキュア3941HP」などを挙げる
ことができる。
【0046】
また、バインダーとして、必要に応じて、応力緩和剤、シランカップリング剤、無機フ
ィラー等を配合してもよい。応力緩和剤としては、水添スチレン-ブタジエンブロック共
重合体、水添スチレン-イソプレンブロック共重合体等を挙げることができる。また、シ
ランカップリング剤としては、エポキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、ビニル系、メ
ルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。また、無機フィラーとし
ては、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を挙げること
ができる。
【0047】
<3.接続構造体の製造方法>
本実施の形態に係る接続構造体の製造方法は、樹脂コア粒子と、樹脂コア粒子の表面に
複数配置され、突起を形成する絶縁性粒子と、樹脂コア粒子及び絶縁性粒子の表面に配置
される導電層とを備え、絶縁性粒子のモース硬度が、7より大きい導電性粒子を含有する
導電材料を介して、第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とを圧着する。これに
より前述の導電性粒子により第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子とが接続され
てなる接続構造体を得ることができる。
【0048】
第1の回路部材及び第2の回路部材は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択するこ
とができる。第1の回路部材としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネ
ル用途、プラズマディスプレイパネル(PDP)用途などのプラスチック基板、ガラス基
板、プリント配線板(PWB)などが挙げられる。また、第2の回路部材としては、例え
ば、IC(Integrated Circuit)、COF(Chip On Film)などのフレキシブル基板(F
PC:Flexible Printed Circuits)、テープキャリアパッケージ(TCP)基板などを
挙げることができる。
【0049】
図4は、圧着時の導電性粒子の概略を示す断面図である。図4において導電層は省略す
る。導電性粒子40は、突起を形成する絶縁性粒子42が樹脂コア粒子41の表面に複数
配置されているため、第1の回路部材50の端子51上に形成された酸化物層52を突き
破ることが可能となる。酸化物層52は、配線の腐食を防止する保護層として機能し、例
えばTiO、SnO、SiOなどが挙げられる。
【0050】
本実施の形態では、絶縁性粒子41のモース硬度が、7より大きいため、圧着時の圧力
を高くすることなく、酸化物層52を突き破ることができ、配線クラックの発生を抑制す
ることができる。特に、第1の回路部材50が、PET(Poly Ethylene Terephthalate
)基板などの低弾性率のプラスチック基板である場合、圧着時の圧力を高くすることなく
、基材変形の影響を軽減して低抵抗を実現できるため、非常に有効である。なお、プラス
チック基板の弾性率は、接続体に求められるフレキシビリティや、屈曲性と後述する駆動
回路素子3等の電子部品との接続強度との関係等の要素を考慮して求められるが、一般に
2000MPa~4100MPaとされる。
【0051】
第1の回路部材の端子と第2の回路部材の端子との圧着では、第2の回路部材上から、
所定温度に加温された圧着ツールによって、所定の圧力及び所定の時間、熱加圧され、本
圧着される。ここで、所定の圧力は、回路部材の配線クラックを防止する観点から、10
MPa以上80MPa以下であることが好ましい。また、所定温度は、圧着時における異
方性導電フィルムの温度であり、80℃以上230℃以下であることが好ましい。
【0052】
圧着ツールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、押圧対
象よりも大面積である押圧部材を用いて押圧を1回で行ってもよく、また、押圧対象より
も小面積である押圧部材を用いて押圧を数回に分けて行ってもよい。圧着ツールの先端形
状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平面状、
曲面状などが挙げられる。なお、先端形状が曲面状である場合、曲面状に沿って押圧する
ことが好ましい。
【0053】
また、圧着ツールと第2の回路部材との間に緩衝材を介装して熱圧着してもよい。緩衝
材を介装することにより、押圧ばらつきを低減できると共に、圧着ツールが汚れるのを防
止することができる。緩衝材は、シート状の弾性材又は塑性体からなり、例えばシリコン
ラバーやポリ4フッ化エチレンが用いられる。
【0054】
このような接続構造体の製造方法によれば、絶縁性粒子のモース硬度が大きいため、圧
着時の圧力を高くすることなく、酸化物層を突き破ることができ、配線クラックの発生を
抑制することができる。また、導電層をNi-W-Bなどの硬度が大きいものとすること
により、圧着時の圧力を高くすることなく、酸化物層を容易に突き破ることができ、配線
クラックの発生をさらに抑制することができる。
【実施例
【0055】
<3.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、突起を有する導電性粒子を作
製し、これを含有する異方性導電フィルムを用いて接続構造体を作製した。そして、接続
構造体の導通抵抗、及び配線クラックの発生率について評価した。なお、本発明はこれら
の実施例に限定されるものではない。
【0056】
異方性導電フィルムの作製、接続構造体の作製、導通抵抗の測定、及び配線クラックの
発生率の算出は、次のように行った。
【0057】
[異方性導電フィルムの作製]
ACF層とNCF層とが積層された2層構造の異方性導電フィルムを作製した。先ず、
フェノキシ樹脂(YP50、新日鐵化学(株))20質量部、液状エポキシ樹脂(EP8
28、三菱化学(株))30質量部、固形エポキシ樹脂(YD-014、新日鐵化学(株
))10質量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤(ノバキュア3941H、旭化成イー
マテリアルズ)30質量部、導電性粒子10質量部を配合して、厚み6μmのACF層を
得た。次に、フェノキシ樹脂(YP50、新日鐵化学(株))20質量部、液状エポキシ
樹脂(EP828、三菱化学(株))30質量部、固形エポキシ樹脂(YD-014、新
日鐵化学(株))10質量部、マイクロカプセル型潜在性硬化剤(ノバキュア3941H
、旭化成イーマテリアルズ)30質量部を配合して、厚み12μmのNCF層を得た。そ
して、ACF層とNCF層とを貼り合わせて、厚み18μmの2層構造の異方性導電フィ
ルムを得た。
【0058】
[接続構造体の作製]
評価基材として、TiO/Alコーティングガラス基板(0.3mmt、TiO
み:50nm、Al厚み:300nm)、TiO/AlコーティングPET(Poly Eth
ylene Terephthalate)基板(0.3mmt、TiO厚み:50nm、Al厚み:30
0nm)、及び、IC(1.8mm×20mm、T:0.3mm、Au-plated bump:30
μm×85μm、h=15μm)を準備した。また、圧着条件は、190℃-60MPa
-5sec、又は190℃-100MPa-5secとした。
【0059】
先ず、TiO/Alコーティングガラス基板上又はTiO/AlコーティングPE
T基板上に、1.5mm幅にスリットされた異方性導電フィルムを、圧着機を用いて仮貼
りし、剥離PETフィルムを剥がした後、ICを、圧着機を用いて、所定の圧着条件で圧
着し、接続構造体を得た。
【0060】
[導通抵抗の測定]
デジタルマルチメーター(商品名:デジタルマルチメーター7561、横河電機社製)
を用いて、初期の接続構造体の導通抵抗(Ω)の測定を行った。また、接続構造体を、8
5℃、85%RHの高温高湿環境下に500h放置して信頼性試験を行った後、接続構造
体の導通抵抗(Ω)の測定を行った。
【0061】
[配線クラックの発生率]
接続構造体の基板側の配線の任意の20箇所を金属顕微鏡にて観察し、配線クラックを
カウントして発生率を算出した。
【0062】
[総合判定]
初期の導通抵抗と信頼性試験後の導通抵抗との差が0.3Ω以下、且つ配線クラックの
発生率が0%の場合を「OK」を評価し、それ以外を「NG」と評価した。
【0063】
<実施例1>
樹脂コア粒子として、次のようにジビニルベンゼン系樹脂粒子を作製した。ジビニルベ
ンゼン、スチレン、ブチルメタクリレートの混合比を調整した溶液に重合開始剤としてベ
ンゾイルパーオキサイドを投入して高速で均一攪拌しながら加熱を行い、重合反応を行う
ことにより微粒子分散液を得た。微粒子分散液をろ過し、減圧乾燥することにより微粒子
の凝集体であるブロック体を得た。そして、ブロック体を粉砕することにより、平均粒子
径3.0μmのジビニルベンゼン系樹脂粒子を得た。この樹脂コア粒子の20%圧縮され
たときの圧縮弾性率(20%K値)は、12000N/mmであった。
【0064】
また、絶縁性粒子として、平均粒子径が150nmであるアルミナ(Al)を使
用した。また、導電層用のメッキ液として、硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチル
アミンボラン0.25mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.5mol/Lを含むニッ
ケルめっき液(pH8.5)を含むニッケルメッキ液を使用した。
【0065】
先ず、パラジウム触媒液を5wt%含むアルカリ溶液100質量部に対し、樹脂コア粒
子10質量部を超音波分散器で分散させた後、溶液をろ過し、樹脂コア粒子を取り出した
。次いで、樹脂コア粒子10質量部をジメチルアミンボラン1wt%溶液100質量部に
添加し、樹脂コア粒子の表面を活性化させた。そして、樹脂コア粒子を十分に水洗した後
、蒸留水500質量部に加え、分散させることにより、パラジウムが付着された樹脂コア
粒子を含む分散液を得た。
【0066】
次に、絶縁性粒子1gを3分間かけて分散液に添加し、絶縁性粒子が付着された粒子を
含むスラリーを得た。そして、スラリーを60℃で撹拌しながら、スラリー中にニッケル
メッキ液を徐々に滴下し、無電解ニッケルメッキを行った。水素の発泡が停止するのを確
認した後、粒子をろ過し、水洗し、アルコール置換した後に真空乾燥し、アルミナで形成
された突起と、Ni-Bメッキの導電層とを有する導電性粒子を得た。この導電性粒子を
走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、平均粒子径は3~4μmであり、粒子
1個当たりの突起の数は約70であり、また、導電層の厚みは約100nmであった。
【0067】
表1に示すように、この導電性粒子を添加した異方性導電フィルムを用いて、TiO
/Alコーティングガラス基板とICとを190℃-60MPa-5secの圧着条件で
圧着し、接続構造体を得た。接続構造体の初期の抵抗値は0.6Ω、信頼性試験後の抵抗
値は0.9Ω、配線クラックの発生率は0%であり、総合判定はOKであった。
【0068】
<実施例2>
表1に示すように、実施例1と同一の導電性粒子を添加した異方性導電フィルムを用い
て、TiO/AlコーティングPET基板とICとを190℃-60MPa-5sec
の圧着条件で圧着し、接続構造体を得た。接続構造体の初期の抵抗値は0.7Ω、信頼性
試験後の抵抗値は1.0Ω、配線クラックの発生率は0%であり、総合判定はOKであっ
た。
【0069】
<実施例3>
導電層用のメッキ液として、硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチルアミンボラン
0.25mol/L、クエン酸ナトリウム0.5mol/L及びタングステン酸ナトリウ
ム0.35mol/Lを含むNi-W-Bめっき液(pH8.5)を使用した。これ以外
は、実施例1と同様にして、アルミナで形成された突起と、Ni-W-Bメッキの導電層
とを有する導電性粒子を得た。この導電性粒子を金属顕微鏡にて観察したところ、平均粒
子径は3~4μmであり、粒子1個当たりの突起の数は約70であり、また、導電層の厚
みは約100nmであった。
【0070】
表1に示すように、この導電性粒子を添加した異方性導電フィルムを用いて、TiO
/Alコーティングガラス基板とICとを190℃-60MPa-5secの圧着条件で
圧着し、接続構造体を得た。接続構造体の初期の抵抗値は0.3Ω、信頼性試験後の抵抗
値は0.5Ω、配線クラックの発生率は0%であり、総合判定はOKであった。
【0071】
<実施例4>
表1に示すように、実施例3と同一の導電性粒子を添加した異方性導電フィルムを用い
て、TiO/AlコーティングPET基板とICとを190℃-60MPa-5sec
の圧着条件で圧着し、接続構造体を得た。接続構造体の初期の抵抗値は0.6Ω、信頼性
試験後の抵抗値は0.8Ω、配線クラックの発生率は0%であり、総合判定はOKであっ
た。
【0072】
<比較例1>
絶縁性粒子として、平均粒子径が150nmであるシリカ(SiO)を使用した。こ
れ以外は、実施例1と同様にして、シリカで形成された突起と、Ni-Bメッキの導電層
とを有する導電性粒子を得た。この導電性粒子を金属顕微鏡にて観察したところ、平均粒
子径は3~4μmであり、粒子1個当たりの突起の数は約70であり、また、導電層の厚
みは約100nmであった。
【0073】
表1に示すように、この導電性粒子を添加した異方性導電フィルムを用いて、TiO
/Alコーティングガラス基板とICとを190℃-60MPa-5secの圧着条件で
圧着し、接続構造体を得た。接続構造体の初期の抵抗値は1.5Ω、信頼性試験後の抵抗
値は3.0Ω、配線クラックの発生率は0%であり、総合判定はNGであった。
【0074】
<比較例2>
表1に示すように、比較例1と同一の導電性粒子を添加した異方性導電フィルムを用い
て、TiO/AlコーティングPET基板とICとを190℃-60MPa-5sec
の圧着条件で圧着し、接続構造体を得た。接続構造体の初期の抵抗値は3.0Ω、信頼性
試験後の抵抗値は6.0Ω、配線クラックの発生率は0%であり、総合判定はNGであっ
た。
【0075】
<比較例3>
絶縁性粒子として、平均粒子径が150nmであるシリカ(SiO)を使用した。ま
た、導電層用のメッキ液として、硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチルアミンボラ
ン0.25mol/L、クエン酸ナトリウム0.5mol/L及びタングステン酸ナトリ
ウム0.35mol/Lを含むNi-W-Bめっき液(pH8.5)を使用した。これ以
外は、実施例1と同様にして、シリカで形成された突起と、Ni-W-Bメッキの導電層
とを有する導電性粒子を得た。この導電性粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し
たところ、平均粒子径は3~4μmであり、粒子1個当たりの突起の数は約70であり、
また、導電層の厚みは約100nmであった。
【0076】
表1に示すように、この導電性粒子を添加した異方性導電フィルムを用いて、TiO
/Alコーティングガラス基板とICとを190℃-60MPa-5secの圧着条件で
圧着し、接続構造体を得た。接続構造体の初期の抵抗値は0.7Ω、信頼性試験後の抵抗
値は1.1Ω、配線クラックの発生率は0%であり、総合判定はNGであった。
【0077】
<比較例4>
表1に示すように、比較例3と同一の導電性粒子を添加した異方性導電フィルムを用い
て、TiO/AlコーティングPET基板とICとを190℃-60MPa-5sec
の圧着条件で圧着し、接続構造体を得た。接続構造体の初期の抵抗値は1.8Ω、信頼性
試験後の抵抗値は3.6Ω、配線クラックの発生率は0%であり、総合判定はNGであっ
た。
【0078】
<比較例5>
表1に示すように、比較例3と同一の導電性粒子を添加した異方性導電フィルムを用い
て、TiO/AlコーティングPET基板とICとを190℃-100MPa-5se
cの圧着条件で圧着し、接続構造体を得た。接続構造体の初期の抵抗値は0.7Ω、信頼
性試験後の抵抗値は1.0Ω、配線クラックの発生率は25%であり、総合判定はNGで
あった。
【0079】
【表1】
【0080】
比較例1のように、導電層としてNi-Bを形成し、絶縁性粒子としてモース硬度が7
であるシリカを用いた場合、信頼性試験後の抵抗が上昇した。また、比較例2のように比
較例1の導電性粒子を用いてPET基板を接続させた場合、信頼性試験後の抵抗が大きく
上昇した。また、比較例3のように、導電層としてNi-W-Bを形成し、絶縁性粒子と
してモース硬度が7であるシリカを用いた場合も、信頼性試験後の抵抗が上昇した。また
、また、比較例4のように比較例2の導電性粒子を用いてPET基板を接続させた場合、
信頼性試験後の抵抗が大きく上昇した。また、比較例5のように圧着時の圧力を高くして
PET基板を接続させた場合、信頼性試験後の抵抗の上昇を抑制することができたが、ク
ラックが発生してしまった。
【0081】
一方、実施例1~4のように、絶縁性粒子としてモース硬度が9であるアルミナを用い
た場合、圧着時の圧力を高くすることなく、信頼性試験後の抵抗の上昇を抑制することが
でき、クラックの発生を防止することができた。また、実施例2,4のように、PET基
板の接続でも低抵抗を実現することができた。また、実施例4のように、導電層としてN
i-W-Bを形成することにより、PET基板の接続においてさらに低抵抗を実現するこ
とができた。これらは、絶縁性粒子の硬度が大きいため、圧着時の圧力を高くしなくても
、配線表面の酸化物層を突き破り、配線と導電性粒子との接点が増加したからであると考
えられる。
【符号の説明】
【0082】
10 樹脂コア粒子、20 絶縁性粒子、30,31,32,33,34 導電層、4
0 導電性粒子、41 樹脂コア粒子、42 絶縁性粒子、50 第1の回路部材、51
端子、52 酸化物層
図1
図2
図3
図4