(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】記録装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B65H 5/24 20060101AFI20240619BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
B65H5/24
B41J11/42
(21)【出願番号】P 2022115579
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2021140264の分割
【原出願日】2014-06-04
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今福 和也
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-014405(JP,A)
【文献】特開2003-095461(JP,A)
【文献】特開2011-016638(JP,A)
【文献】特開2011-090561(JP,A)
【文献】特開2011-197956(JP,A)
【文献】特開2000-095379(JP,A)
【文献】特開2000-062975(JP,A)
【文献】特開2001-331074(JP,A)
【文献】特開2001-310833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/42
B65H 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する第1ローラと、
前記第1ローラにより搬送されるシートを搬送する第2ローラと、
前記第2ローラにより搬送されるシートに記録を行う記録手段と、
先行シートに前記先行シートの次に給送される後続シートを重ねる重ね動作を実行可能な制御手段と、を備える記録装置であって、
前記制御手段は、前記重ね動作を実行した後に前記先行シートの先端と前記後続シートの後端との重なり量を減少させ、その後に前記先行シートと前記後続シートとを重ねた重ね状態で前記後続シートに前記記録手段で記録を行う重ね連送を実行
し、
前記重ね動作のための前記後続シートの給送を開始する際に、前記重ね連送を実行することは確定していないことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、記録データに含まれる前記先行シートの後端の第1余白情報および前記後続シートの先端の第2余白情報を取得して前記重ね連送の際の前記先行シートと前記後続シートの重ね合せ量を決めることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記重なり量が閾値より小さい場合、前記重ね状態を解消して、前記後続シートに記録を前記記録手段で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記重ね連送を実行可能な記録条件が、用紙種類、印刷品質、フチ設定の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1ないし
3の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記重ね動作を実行する場合、前記第2ローラが前記先行シートに対する記録動作のために間欠駆動されている間、前記先行シートの後端が前記第1ローラを通過する前の状態では前記第2ローラの間欠駆動と同期して前記第1ローラを間欠駆動し、前記後続シートの先端が前記第1ローラを通過した後の状態では前記第2ローラの間欠駆動と同期せずに前記第1ローラを連続駆動することを特徴とする請求項1ないし
4の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記重ね連送を実行する場合、前記先行シートに対する記録動作が完了する前に前記後続シートの斜行を矯正する斜行矯正動作を行うことを特徴とする請求項1ないし
5の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記第1ローラにシートを給送するピックアップローラを備えることを特徴とする請求項1ないし
6の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記ピックアップローラは、駆動軸からの駆動が伝達されない凹部を備え、前記先行シートと前記後続シートの間に間隔をあけて前記後続シートを給送できることを特徴とする請求項
7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記記録手段は、シートにインクを吐出する記録ヘッドを備えることを特徴とする請求項1ないし
8の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
シートを搬送する第1ローラと、前記第1ローラにより搬送されるシートを搬送する第2ローラと、前記第2ローラにより搬送されるシートに記録を行う記録手段と、を備える記録装置の制御方法であって、
先行シートに前記先行シートの次に給送される後続シートを重ねる重ね動作を実行可能な制御工程を有し、
前記制御工程では、前記重ね動作を実行した後に前記先行シートの先端と前記後続シートの後端との重なり量を減少させ、その後に前記先行シートと前記後続シートとを重ねた重ね状態で前記後続シートに前記記録手段で記録を行う重ね連送を実行
し、
前記重ね動作のための前記後続シートの給送を開始する際に、前記重ね連送を実行することは確定していないことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
前記制御工程では、記録データに含まれる前記先行シートの後端の第1余白情報および前記後続シートの先端の第2余白情報を取得して前記重ね連送の際の前記先行シートと前記後続シートの重ね合せ量を決めることを特徴とする請求項
10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記制御工程では、前記重なり量が閾値より小さい場合、前記重ね状態を解消して、前記後続シートに記録を前記記録手段で行うことを特徴とする請求項
10または
11に記載の制御方法。
【請求項13】
前記重ね連送を実行可能な記録条件が、用紙種類、印刷品質、フチ設定の少なくとも1つであることを特徴とする請求項
10ないし
12の何れか1項に記載の制御方法。
【請求項14】
前記制御工程では、前記重ね動作を実行する場合、前記第2ローラが前記先行シートに対する記録動作のために間欠駆動されている間、前記先行シートの後端が前記第1ローラを通過する前の状態では前記第2ローラの間欠駆動と同期して前記第1ローラを間欠駆動し、前記後続シートの先端が前記第1ローラを通過した後の状態では前記第2ローラの間欠駆動と同期せずに前記第1ローラを連続駆動することを特徴とする請求項
10ないし
13の何れか1項に記載の制御方法。
【請求項15】
前記制御工程では、前記重ね連送を実行する場合、前記先行シートに対する記録動作が完了する前に前記後続シートの斜行を矯正する斜行矯正動作を行うことを特徴とする請求項
10ないし
14の何れか1項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置(印刷装置)の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の記録速度を向上する方法として、記録媒体の重ね連送が提案されている。重ね連送とは、複数枚の記録媒体に対して連続的に画像を記録する場合に、先行記録媒体の後端部と後続記録媒体の先端部とを重ねた状態で、これらを搬送する搬送方式である(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重ね連送を効果的に実行するためには、記録媒体の搬送を止めないようにできるだけ速やかに記録媒体間の重ね合せ量を決定する必要がある。記録媒体間の重ね合せ量を決定するためには、後続記録媒体の先端側の余白量を特定することが必要となる。したがって、記録装置が重ね合せ量を決定する際、余白量を特定するために後続記録媒体の記録データを参照する必要がある。
【0005】
しかし、後続記録媒体の記録データも参照するためには、この記録データをスプールためのRAM等の記憶デバイスが必要となる。ロースペックの記録装置では、後続記録媒体の記録データをスプールするための記憶容量が不足し、後続記録媒体の先端側の余白量を速やかに特定することが困難な場合がある。一方、条件によっては重ね連送が適さない場合がある。
【0006】
本発明は、重ね連送を効果的に実行する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、例えば、シートを搬送する第1ローラと、前記第1ローラにより搬送されるシートを搬送する第2ローラと、前記第2ローラにより搬送されるシートに記録を行う記録手段と、先行シートに前記先行シートの次に給送される後続シートを重ねる重ね動作を実行可能な制御手段と、を備える記録装置であって、前記制御手段は、前記重ね動作を実行した後に前記先行シートの先端と前記後続シートの後端との重なり量を減少させ、その後に前記先行シートと前記後続シートとを重ねた重ね状態で前記後続シートに前記記録手段で記録を行う重ね連送を実行し、前記重ね動作のための前記後続シートの給送を開始する際に、前記重ね連送を実行することは確定していないことを特徴とする記録装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、重ね連送を効果的に実行する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る記録装置の動作説明図。
【
図4】(a)及び(b)はピックアップローラの説明図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る記録システムの構成例を示すブロック図。
【
図6】
図1の記録装置の制御ユニットが実行する処理例を示すフローチャート。
【
図7】先行シートに後続シートを重ねる動作を説明する図。
【
図8】先行シートに後続シートを重ねる動作を説明する図。
【
図9】
図1の記録装置の制御ユニットが実行する処理例を示すフローチャート。
【
図11】(a)は重ね合せ量の説明図、(b)は1枚の記録シートに複数の論理頁を割り付けた場合の余白量の説明図。
【
図12】
図1の記録装置の制御ユニットが実行する処理例を示すフローチャート。
【
図14】本発明の一実施形態に係る情報処理装置が実行する処理例を示すフローチャート。
【
図15】本発明の一実施形態に係る情報処理装置が実行する処理例を示すフローチャート。
【
図16】本発明の一実施形態に係る情報処理装置が実行する処理例を示すフローチャート。
【
図17】
図1の記録装置の制御ユニットが実行する処理例を示すフローチャート。
【
図18】
図1の記録装置の制御ユニットが実行する処理例を示すフローチャート。
【
図19】情報処理装置と記録装置との間の処理例を示す図。
【
図20】情報処理装置と記録装置との間の処理例を示す図。
【
図21】実施例と比較例における記録速度の違いの説明図。
【
図22】
図1の記録装置の制御ユニットが実行する処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1乃至
図3は、本発明の一実施形態に係る記録装置100の動作説明図であり、特に、重ね連送の動作説明図である。
図1乃至
図3は記録装置100の断面構造を模式的に示している。本実施形態では、シリアル型のインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明するが、本発明は他の形式の記録装置にも適用可能である。
【0011】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、布、プラスチック・フィルム等であってもよい。シート状の記録媒体をここでは記録シートと呼ぶ。
【0012】
記録装置100の動作説明の前に、その構成について主に
図1の状態ST1を参照して説明する。記録装置100は、複数枚の記録シート1を積載可能な給送トレイ11(積載部)と、記録シート1に記録を行う記録ユニットと、給送トレイ11の記録シート1を搬送可能な搬送装置と、を備える。
【0013】
記録ユニットは、記録ヘッド7と、キャリッジ10とを含む。記録ヘッド7は記録シート1に対して記録を行う。本実施形態では記録ヘッド7は、インクを吐出して記録シート1に記録を行うインクジェット記録ヘッドである。記録ヘッド7に対向する位置には、記録シート1の裏面を支持するプラテン8が配置されている。キャリッジ10は記録ヘッド7を搭載して搬送方向と交差する方向へ移動する。
【0014】
搬送装置は、給送機構、搬送機構、排出機構に大別される。給送機構は、記録シート1を搬送機構に給送し、搬送機構は給送された記録シート1を排出機構に搬送する。排出機構は記録シート1を記録装置100の外部に搬送する。記録中の記録シート1の搬送は、主として、搬送機構が行う。このように記録シート1は、給送機構、搬送機構、排出機構により順次搬送される。給送機構側を搬送方向上流側と呼び、排出機構側を搬送方向下流側と呼ぶ。
【0015】
給送機構は、ピックアップローラ2と、給送ローラ3と、給送従動ローラ4とを含む。ピックアップローラ2は給送トレイ11に積載された最上位の記録シート1に当接してこの記録シートをピックアップする。給送ローラ3はピックアップローラ2によってピックアップされた記録シート1を搬送方向の下流側へ給送するためのである。給送従動ローラ4は不図示の弾性部材(例えばばね)によって給送ローラ3へ付勢されて圧接し、給送ローラ3とともに記録シート1を挟持して給送する。
【0016】
図4(a)及び(b)はピックアップローラ2の構成を説明する図である。ピックアップローラ2には、駆動軸19が設けられている。駆動軸19は、後述する給送モータの駆動力をピックアップローラ2に伝達する。記録シート1をピックアップするときに、駆動軸19及びピックアップローラ2は図中矢印A方向に回転する。駆動軸19には突起19aが設けられている。ピックアップローラ2には突起19aが嵌まり込む凹部2cが形成されている。
【0017】
図4(a)に示すように、突起19aがピックアップローラ2の凹部2cの第1の面2aに当接している場合は、駆動軸19の駆動がピックアップローラ2に伝達され、駆動軸19を駆動するとピックアップローラ2も回転される。一方、
図4(b)に示すように、突起19aがピックアップローラ2の凹部2cの第2の面2bに当接している場合は、駆動軸19の駆動がピックアップローラ2に伝達されず、駆動軸19を駆動してもピックアップローラ2は回転されない。突起19aが第1の面2a及び第2の面2bのいずれにも当接せず、第1の面2aと第2の面2bの間にある場合も、駆動軸19を駆動してもピックアップローラ2は回転されない。後述するが、このような機構により、複数の記録シート1を連続的に給送する際に、記録シート1間に一定の間隔を確保することが可能となる。
【0018】
図1に戻り、搬送機構は、搬送ローラ5と、ピンチローラ6とを含む。搬送ローラ5は給送ローラ3及び給送従動ローラ4によって給送された記録シート1を記録ヘッド7と対向する位置へ搬送する。ピンチローラ6は不図示の弾性部材(例えばばね)によって搬送ローラ5へ付勢されて圧接し、搬送ローラ5とともに記録シート1を挟持して搬送する。記録の際には、例えば、搬送ローラ5及びピンチローラ6による記録シート1の所定量の搬送と、キャリッジ10の移動及び記録ヘッド7によるインクの吐出と、を交互に繰り返すことで、記録シート1に画像が記録される。
【0019】
給送ローラ3及び給送従動ローラ4で形成されるニップ部(給送ニップ部と呼ぶ)から、搬送ローラ5及びピンチローラ6で形成されるニップ部(搬送ニップ部と呼ぶ)までの搬送区間には記録シート1の搬送を案内する搬送ガイド15が設けられている。
【0020】
排出機構は、排出ローラ9と、拍車12及び13とを含む。排出ローラ9は記録ヘッド7によって記録が行われた記録シート1を装置外に排出する。拍車12及び13は記録ヘッド7によって記録が行われた記録シート1の記録面と接触して回転する。下流側にある拍車13は不図示の弾性部材(例えばばね)によって排出ローラ9へ付勢されて圧接している。上流側にある拍車12は、これに対向する位置に排出ローラ9が配されていない。拍車12は記録シート1の浮き上がりを防止するためのものであり押え拍車とも呼ぶ。
【0021】
記録装置100は、シート検知センサ16を備える。シート検知センサ16は記録シート1の先端及び後端を検知するためのセンサであり、例えば、光学式センサである。シート検知センサ16は搬送方向において給送ローラ3の下流側に設けられている。シート押えレバー17は、先行する記録シート1(先行記録媒体或いは先行シートとも呼ぶ)の後端部を押えて後続の記録シート1(後続記録媒体或いは後続シートとも呼ぶ)の先端部を重ねるためのレバーである。なお、記録シート1の先端部、後端部は、それぞれ、搬送方向で下流側端部、上流側端部を意味する。シート押えレバー17は回転軸17bの回りに図中反時計回り方向に不図示の弾性部材(例えばバネ)で付勢されている。
【0022】
次に、
図5を参照して、記録装置100の制御ユニット、及び、記録装置100に記録データを送信可能な情報処理装置214を備える記録システムの構成例について
図5を参照して説明する。
【0023】
記録装置100は、MPU201を備える。MPU201は、記録装置100の各構成の動作を制御可能であり、また、データの処理なども行う。MPU201は、後述するように、先行シートの後端部と後続シートの先端部とが重なるように記録シート1の搬送制御を実行することが可能である。ROM202は、MPU201によって実行されるプログラムやデータを格納するである。RAM203は、MPU201によって実行される処理データ及び情報処理装置214から受信した記録データを一時的に記憶するRAMである。なお、ROM202、RAM203に代えて他の記憶デバイスを用いることも可能である。
【0024】
記録ヘッドドライバ207は、記録ヘッド7を駆動する。キャリッジモータドライバ208は、キャリッジ10を移動させる駆動機構の駆動源であるキャリッジモータ204を駆動する。搬送モータ205は、搬送ローラ5及び排出ローラ9の駆動機構の駆動源である。搬送モータ205は搬送モータドライバ209によって駆動される。
【0025】
給送モータ206は、ピックアップローラ2及び給送ローラ3の駆動機構の駆動源である。給送モータ206は給送モータドライバ210によって駆動される。
【0026】
MPU201は、記録ヘッドドライバ207及びキャリッジモータドライバ208を介して記録ヘッド7による記録動作(インクの吐出と記録ヘッド7の移動)を制御する。また、MPU201は、搬送モータドライバ209及び給送モータドライバ210を介して記録シート1の搬送制御を実行する。
【0027】
情報処理装置214は、例えば、パソコン、携帯端末(例えばスマートフォンやタブレット端末等)であり、記録装置100のホストコンピュータとして機能する。情報処理装置214は、CPU214aと、記憶デバイス214bと、I/F部(インタフェース部)214cとを備える。CPU214aは、記憶デバイス214bに格納されたプログラムを実行する。記憶デバイス214bは、RAM、ROM、ハードディスク等であり、CPU214aが実行するプログラムや、各種のデータを格納する。記憶デバイス214bには、記録装置100を制御するためのプリンタドライバ2141が格納されている。プリンタドライバ2141の実行によって、情報処理装置214は、記録データを生成可能である。また、生成した記録データを解析可能である。また、各種条件を判定可能である。また、情報処理装置214と記録装置100とは、I/F部214c、I/F部213を介して、データの送信及び受信が可能である。
【0028】
<重ね連送の例>
図1~
図3を参照して重ね連送の動作について時系列に説明する。情報処理装置214からI/F部213を介して記録データが送信されると、MPU201で処理された後、RAM203に展開される。MPU201が展開されたデータに基づいて記録動作を開始する。
【0029】
図1の状態ST1を参照して説明する。最初に、給送モータドライバ210によって給送モータ206が駆動される。これにより、ピックアップローラ2が回転する。この段階では給送モータ206を相対的に低速回転で駆動し、ここでは例示的に7.6inch/secでピックアップローラ2を回転する。
【0030】
ピックアップローラ2が回転すると、給送トレイ11に積載された最上位の記録シート(先行シート1-A)がピックアップされる。ピックアップローラ2によってピックアップされた先行シート1-Aは、ピックアップローラ2と同方向に回転している給送ローラ3によって搬送される。給送ローラ3も給送モータ206によって駆動される。本実施形態は、ピックアップローラ2及び給送ローラ3を備える構成で説明する。しかしながら、積載部に積載された記録シートを給送する給送ローラのみ備える構成であってもよい。
【0031】
給送ローラ3の下流側に設けられたシート検知センサ16によって先行シート1-Aの先端が検知されると、給送モータ206を相対的に高速回転で駆動させる。ここでは例示的に、ピックアップローラ2及び給送ローラ3を20inch/secで回転する。
【0032】
図1の状態ST2を参照して説明する。給送ローラ3を回転し続けることによって先行シート1-Aの先端は、バネの付勢力に抗してシート押えレバー17を回転軸17bの回りに時計回り方向に回転させる。さらに給送ローラ3を回転し続けると、先行シート1-Aの先端は搬送ローラ5とピンチローラ6で形成される搬送ニップ部に突き当たる。このとき搬送ローラ5は停止状態である。先行シート1-Aの先端が搬送ニップ部に突き当たった後も給送ローラ3を所定量回転させることによって、先行シート1-Aの先端が搬送ニップ部に突き当たった状態で整列し斜行が矯正される。斜行矯正動作をレジ取り動作ともいう。
【0033】
図1の状態ST3を参照して説明する。先行シート1-Aの斜行矯正動作が終了すると、搬送モータ205が駆動されることによって搬送ローラ5が回転を開始する。搬送ローラ5は、例えば、15inch/secでシートを搬送する。先行シート1-Aは記録ヘッド7と対向する位置まで頭出しされた後に、記録データに基づいて記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作が行われる。
【0034】
なお、頭出し動作は、記録シートの先端が搬送ニップ部に突き当てられることにより搬送ローラ5の位置に一旦位置決めされ、その後搬送ローラ5の位置を基準として搬送ローラ5の回転量を制御することにより行われる。
【0035】
本実施形態の記録装置100は、記録ヘッド7がキャリッジ10に搭載されているシリアルタイプの記録装置であり、搬送動作と画像形成動作とを繰り返すことにより記録シート1に対する記録動作が行われる。搬送動作は搬送ローラ5によって記録シートを所定量ずつ間欠搬送する動作である。画像形成動作は搬送ローラ5が停止しているときに記録ヘッド7を搭載したキャリッジ10を移動させながら記録ヘッド7からインクを吐出する動作である。
【0036】
先行シート1-Aが頭出しされると、給送モータ206を再び低速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで回転する。搬送ローラ5によって記録シート1を所定量ずつ間欠搬送しているときに、給送モータ206によって給送ローラ3も間欠駆動される。すなわち搬送ローラ5が回転しているときは給送ローラ3も回転し、搬送ローラ5が停止しているときは給送ローラ3も停止している。搬送ローラ5の回転速度に対して、給送ローラ3の回転速度は遅い。そのため、搬送ローラ5と給送ローラ3の間で記録シート1は張った状態になる。また、給送ローラ3は搬送ローラ5によって搬送される記録シート1によって連れ回りさせられる。
【0037】
給送モータ206を間欠的に駆動することにより、駆動軸19も回転する。しかし、前述のように、ピックアップローラ2の回転速度は搬送ローラ5の回転速度よりも遅い。そのため、ピックアップローラ2は搬送ローラ5で搬送される記録シート1によって連れ回りさせられる。このため、ピックアップローラ2は駆動軸19に対して先回りした状態になっている。具体的には、駆動軸19の突起19aは第1の面2aから離間し第2の面2bに当接した状態になっている。したがって、先行シート1-Aの後端がピックアップローラ2を通過しても2枚目の記録シート(後続シート1-B)はすぐにピックアップされない。先行シート1-Aが給送ニップ部を抜け、駆動軸19が所定時間駆動されると、突起19aが第1の面2aと当接するようになる。これにより、駆動軸19の回転がピックアップローラ2に伝達されて、ピックアップローラ2が回転を開始する。こうして、後続シート1-Bがピックアップされるまでにタイムラグを生じさせている。
【0038】
図2の状態ST4を参照して説明する。ピックアップローラ2が回転を開始し、後続シート1-Bをピックアップした状態を示す。シート検知センサ16は、記録シート1の端部をより正確に検知するためには、センサの応答性等の要因により、連続する記録シート1間に所定以上の間隔が必要になる。既に説明したとおり、本実施形態では、駆動軸19とピックアップローラ2との構成によって、後続シート1-Bがピックアップされるまでにタイムラグを生じさせ、この間隔を確保している。
【0039】
すなわち、シート検知センサ16によって先行シート1-Aの後端を検知した後、後続シート1-Bの先端を検知するまでに所定の時間間隔をもたせるために、先行シート1-Aの後端部と後続シート1-Bの先端部との間を所定距離だけ離す。そのために、ピックアップローラ2の凹部2cは例えば約70度に設定される。
【0040】
図2の状態ST5を参照して説明する。ピックアップローラ2によってピックアップされた後続シート1-Bは、給送ローラ3によって搬送される。このときに、先行シート1-Aは、記録データに基づいて記録ヘッド7によって画像形成動作が行われている。シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端が検知されると、給送モータ206を再び高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。
【0041】
図2の状態ST6を参照して説明する。先行シート1-Aの後端部は、
図2の状態ST5に示すようにシート押えレバー17によって下方に押し下げられている。記録ヘッド7による記録動作によって先行シート1-Aが下流側に移動する速度に対して、後続シート1-Bを高速に移動させる。これにより先行シート1-Aの後端部の上に後続シート1-Bの先端部が重なった状態を形成することができる(
図2の状態ST6)。先行シート1-Aは記録データに基づいて記録動作が行われているため、先行シート1-Aは搬送ローラ5によって間欠搬送される。一方、後続シート1-Bはシート検知センサ16によって先端が検知された後、給送ローラ3を20inch/secで連続的に回転させることによって先行シート1-Aに追いつくことができる。
【0042】
図3の状態ST7を参照して説明する。先行シート1-Aの後端部の上に後続シート1-Bの先端部が重なった重なり状態を形成した後、後続シート1-Bはその先端が搬送ニップ部の上流側の所定位置で停止するまで給送ローラ3によって搬送される。
【0043】
後続シート1-Bの先端の位置は、後続シート1-Bの先端がシート検知センサ16によって検知されてからの給送ローラ3の回転量から算出され、この算出結果に基づいて制御される。このとき、先行シート1-Aは、記録データに基づいて記録ヘッド7によって画像形成動作が行われている。
【0044】
図3の状態ST8を参照して説明する。先行シート1-Aの画像形成動作を行うために搬送ローラ5が停止しているとき(ここでは最終行の画像形成動作のための停止中)に、給送ローラ3を駆動する。これによって後続シート1-Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて後続シート1-Bの斜行矯正動作を行う。
【0045】
図3の状態ST9を参照して説明する。先行シート1-Aの画像形成動作が終了すると、搬送ローラ5を所定量回転させることによって先行シート1-Aの上に後続シート1-Bが重なった状態を維持して後続シート1-Bの頭出しを行うことができる。後続シート1-Bには、記録データに基づいて記録動作が開始される。後続シート1-Bが記録動作のために間欠搬送されると、先行シート1-Aも間欠搬送され、やがて先行シート1-Aは排出ローラ9によって記録装置外に排出される。
【0046】
後続シート1-Bが頭出しされると、給送モータ206を再び低速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで回転する。後続シート1-Bの後にも記録データがある場合は、
図2の状態ST4に戻り3枚目のピックアップ動作が行われる。
【0047】
こうして、重ね連送を行いながら、複数の記録シート1について連続的に記録動作を行うことができる。
【0048】
次に、上述した重ね連送を実行するためのMPU201の処理例について説明する。
図6は、MPU201が実行する重ね連送処理のフローチャートである。なお、本願では、記録装置において実行されるフローチャートは、MPU201がROMやHDDからフローチャートの処理に関係するプログラムを読み出して実行することで実現される。
【0049】
S1で、記録装置100は、I/F部213を介して情報処理装置214から記録開始指示が送信されると記録動作を開始し、S2で先行シート1-Aの給送動作を開始する。具体的には、MPU201が給送モータ206を低速駆動する。ピックアップローラ2は7.6inch/secで回転する。ピックアップローラ2によって先行シート1-Aをピックアップし、給送ローラ3によって先行シート1-Aを記録ヘッド7に向けて給送する。
【0050】
S3で、シート検知センサ16によって先行シート1-Aの先端が検知される。シート検知センサ16によって先行シート1-Aの先端が検知されると、S4で、記録装置100は、給送モータ206を高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。記録装置100は、シート検知センサ16によって先行シート1-Aの先端が検知された後の給送ローラ3の回転量を制御する。この処理によって、記録装置100は、S5で先行シート1-Aの先端を搬送ニップ部に突き当てて先行シート1-Aの斜行矯正動作を行う。
【0051】
S6で、記録装置100は、記録データに基づいて先行シート1-Aを頭出しする。すなわち、記録装置100は、搬送ローラ5の回転量を制御することによって、記録データに基づいた搬送ローラ5の位置を基準とした記録開始位置まで先行シート1-Aを搬送する。S7で、記録装置100は、給送モータ206を低速駆動に切り替え、S8で先行シート1-Aに対して記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作を開始する。
【0052】
具体的には、搬送ローラ5によって先行シート1-Aを間欠搬送する搬送動作と、キャリッジ10を移動させて記録ヘッド7からインクを吐出する画像形成動作(インク吐出動作)とが繰り返される。この処理によって、先行シート1-Aに対する記録動作が行われる。記録装置100は、搬送ローラ5によって先行シート1-Aを間欠搬送する動作と同期して、給送モータ206を間欠的に低速駆動する。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで間欠的に回転する。
【0053】
S9で、記録装置100は、次頁の記録データがあるか判断し、次頁の記録データが無い場合はS25に進む。S25で先行シート1-Aに対する記録動作が完了したら、記録装置100は、S26で先行シート1-Aを排出し記録動作を終了する。
【0054】
次頁の記録データがある場合、記録装置100は、S10で後続シート1-Bの給送動作を開始する。具体的には、記録装置100は、ピックアップローラ2によって後続シート1-Bをピックアップし、給送ローラ3によって後続シート1-Bを記録ヘッド7に向けて給送する。ピックアップローラ2は7.6inch/secで回転する。前述のように、駆動軸19の突起19aに対して、ピックアップローラ2の凹部2cが大きく設けられているため、後続シート1-Bは先行シート1-Aの後端と所定の間隔をもった状態で給送される。
【0055】
S11で、シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端が検知される。シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端が検知されると、記録装置100は、S12で給送モータ206を高速駆動に切り替える。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は20inch/secで回転する。記録装置100は、シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端が検知された後の給送ローラ3の回転量を制御する。この処理によって、S13で後続シート1-Bの先端が搬送ニップ部の所定量手前の位置となるように後続シート1-Bが搬送される。先行シート1-Aは記録データに基づいて間欠搬送される。後続シート1-Bは給送モータ206を連続的に高速駆動することによって、先行シート1-Aの後端部の上に後続シート1-Bの先端部が重なる重ね状態が形成される。
【0056】
記録装置100は、S14で所定条件を満たしているか判断する。所定条件とは、重ね連送を行うか否かを判断するための条件である。詳細は後述する。
【0057】
所定条件を満たしている場合、記録装置100は、S15で先行シート1-Aの画像形成動作が開始されたかを判断する。画像形成動作が開始された場合にはS16に進み、開始されていない場合には開始されるまで待機する。記録装置100は、S16で重ね状態を維持したまま後続シート1-Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて後続シート1-Bの斜行矯正動作を行う。そして、S17で先行シート1-Aの最終行の画像形成動作が終了したと判断した場合、記録装置100は、S18で重ね状態を維持したまま後続シート1-Bを頭出しする。
【0058】
S14で所定条件を満たしていない場合、記録装置100は、重ね状態を解消して後続シート1-Bを頭出しする。具体的には、S27で先行シート1-Aの最終行の画像形成動作が終了するとS28で先行シート1-Aの排出動作が行われる。この間、給送モータ206は駆動されないため、後続シート1-Bはその先端が搬送ニップ部の所定量手前の位置のまま停止している。先行シート1-Aは排出されるため、重ね状態は解消する。記録装置100は、S29で後続シート1-Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて後続シート1-Bの斜行矯正動作を行い、S18で後続シート1-Bを頭出しする。
【0059】
記録装置100は、S19で給送モータ206を低速駆動に切り替え、S20で後続シート1-Bに対して記録ヘッド7からインクを吐出することによって記録動作を開始する。具体的には、搬送ローラ5によって後続シート1-Bを間欠搬送する搬送動作と、キャリッジ10を移動させて記録ヘッド7からインクを吐出する画像形成動作(インク吐出動作)とが繰り返されることによって、後続シート1-Bに対する記録動作が行われる。記録装置100は、搬送ローラ5によって後続シート1-Bを間欠搬送する動作と同期して、給送モータ206を間欠的に低速駆動する。すなわち、ピックアップローラ2及び給送ローラ3は7.6inch/secで間欠的に回転する。
【0060】
記録装置100は、S21で次頁の記録データがあるか判断し、次頁の記録データが有る場合はS10に戻る。次頁の記録データが無い場合、記録装置100は、S22で後続シート1-Bの画像形成動作が完了するとS23で後続シート1-Bの排出動作を行い、S24で記録動作を終了する。
【0061】
次に、
図6のS12、S13で説明した、先行シート1-Aの後端部の上に後続シート1-Bの先端部を重ねる重ね状態を形成する動作について説明する。
図7、
図8は、本実施形態における先行シート1-Aに後続シート1-Bを重ねる動作を説明する図である。
図7、
図8は、給送ローラ3と給送ピンチローラ4で形成される給送ニップ部と、搬送ローラ5とピンチローラ6で形成される搬送ニップ部の間の拡大図である。
【0062】
搬送ローラ5、給送ローラ3により記録シート1が搬送される過程を、3つの状態として順に説明する。後続シート1-Bが先行シート1-Aを追いかける動作を行う第1の状態を
図7の状態ST11、状態ST12を参照して説明する。後続シート1-Bを先行シート1-Aに重ねる動作を行う第2の状態を
図8の状態ST13、状態ST14を参照して説明する。重ね状態を維持して後続シート1-Bの斜行矯正動作を行うか判定する第3の状態を
図8の状態ST15を参照して説明する。
【0063】
図7の状態ST11では、給送ローラ3を制御して後続シート1-Bを搬送し、シート検知センサ16で後続シート1-Bの先端を検知する。シート検知センサ16から後続シート1-Bを先行シート1-Aの上に重ねることが可能となる位置P1までを第1の区間A1と定義する。第1の区間A1において、後続シート1-Bの先端が先行シート1-Aの後端を追いかける動作を行う。位置P1は、機構の構成により決定されるものである。
【0064】
第1の状態では、第1の区間A1において、追いかける動作を停止する場合が存在する。
図7の状態ST12のように、後続シート1-Bの先端が、位置P1より手前で先行シート1-Aの後端を追い越してしまう場合は、後続シート1-Bを先行シート1-Aに重ねる動作を行わない。
【0065】
図8の状態ST13において、位置P1から、シート押えレバー17が設けられた位置P2までを第2の区間A2と定義する。第2の区間A2において、後続シート1-Bを先行シート1-Aに重ねる動作を行う。
【0066】
第2の状態では、第2の区間A2において、後続シートを先行シートに重ねる動作を停止する場合が存在する。
図8の状態ST14のように、第2の区間A2内で後続シート1-Bの先端が先行シート1-Aの後端に追いつくことができない場合は、後続シート1-Bに先行シート1-Aを重ねる動作ができない。
【0067】
図8の状態ST15において、前述のP2からP3までを第3の区間A3と定義する。P3は
図6のS13で後続シート1-Bが停止したときの先端の位置である。後続シート1-Bを先行シート1-Aに重ねた状態で、後続シート1-Bの先端がP3に到達するまで搬送する。第3の区間A3において、重ね状態を維持したまま後続シート1-Bを搬送ニップ部に突き当てて頭出しをするか否かを判断する。すなわち、重ね状態を維持して斜行矯正動作を行い、頭出しをするか、重ね状態を解除して斜行矯正動作を行い、頭出しをするかの判定を行う。
【0068】
図9は、本実施形態における後続シートの斜行矯正動作を説明するフローチャートである。
図6のS14で説明した所定条件を満たしているかの判断について説明する。
【0069】
第一の斜行矯正動作を行うか、第二の斜行矯正動作を行うかの判定動作について説明する。第一の斜行矯正動作は先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね状態を維持したまま後続シート1-Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正を行う動作である。第二の斜行矯正動作は先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね状態を解除してから後続シート1-Bの先端を搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正を行う動作である。
【0070】
S101で開始する。S102において、記録装置100は、後続シート1-Bの先端が判定位置(
図8の状態のP3)まで到達しているかを判定する。到達していないと判定された場合(S102:NO)、記録装置100は、所定量の搬送で後続シート1-Bの先端が搬送ニップ部に突き当たるか不明である。このため、記録装置100は、後続シートのみの斜行矯正動作に決定し(S103)、判定動作は終了する(S104)。すなわち、記録装置100は、先行シート1-Aの後端が搬送ニップ部を通過した後に、後続シート1-Bのみを搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行い、その後、後続シート1-Bのみの状態で頭出しをする。
【0071】
一方、後続シート1-Bの先端が判定位置P3まで到達している場合(S102:YES)、記録装置100は、先行シート1-Aの後端が搬送ニップ部を通過したかの判定を行う(S105)。ここで通過したと判定された場合(S105:YES)、先行シートと後続シートは重なっていないため、記録装置100は、後続シート1-Bのみの斜行矯正動作に決定する(S106)。すなわち、記録装置100は、後続シート1-Bのみを搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行い、その後、後続シート1-Bのみの状態で頭出しをする。
【0072】
一方、先行シート1-Aの後端が搬送ニップ部を通過していないと判定された場合(S105:NO)、記録装置100は、先行シート1-Aの後端部と後続シート1-Bの先端部の重なり量が閾値より小さいかの判定を行う(S107)。先行シート1-Aの後端の位置は、先行シート1-Aに対する記録動作にともなって更新していく。また、後続シート1-Bの先端の位置は、前述の判定位置にある。すなわち、重なり量は、先行シート1-Aの記録動作にともなって減少していく。重なり量が閾値より小さいと判定された場合(S107:YES)、記録装置100は、重ね状態を解除して後続シート1-Bのみの斜行矯正動作に決定する(S108)。すなわち、先行シート1-Aの画像形成動作が終了した後に、後続シート1-Bを先行シート1-Aとともに搬送しない。具体的には、記録装置100は、搬送モータ205によって搬送ローラ5を駆動して先行シート1-Aを搬送する。しかしながら、給送ローラ3は駆動しない。したがって、重ね状態は解除される。さらに、記録装置100は、後続シート1-Bのみを搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行い、その後、後続シート1-Bのみの状態で頭出しをする。
【0073】
重なり量が閾値以上と判定された場合(S107:NO)、記録装置100は、後続シート1-Bを頭出ししたときに後続シート1-Bが押え拍車12まで到達するかの判定を行う(S109)。後続シート1-Bが押え拍車12まで到達しないと判定された場合(S109:NO)、記録装置100は、重ね状態を解除して後続シートのみの斜行矯正動作に決定する(S110)。すなわち、先行シート1-Aの画像形成動作が終了した後に、記録装置100は、後続シート1-Bを先行シート1-Aとともに搬送しない。具体的には、搬送モータ205によって搬送ローラ5を駆動して先行シート1-Aを搬送する。しかしながら、給送ローラ3は駆動しない。したがって、重ね状態は解除される。さらに、記録装置100は、後続シート1-Bのみを搬送ニップ部に突き当てて斜行矯正動作を行い、その後、後続シート1-Bのみの状態で頭出しをする。
【0074】
後続シート1-Bが押え拍車12まで到達すると判定された場合(S109:YES)、記録装置100は、先行シートの最終行と当該最終行の前行との間に隙間があるかの判定を行う(S111)。隙間がないと判定された場合(S111:NO)、記録装置100は、重ね状態を解除して後続シートのみの斜行矯正動作に決定する(S112)。後続シート1-Bの斜行矯正動作が先行シート1-Aの画像形成動作に影響する可能性が無いわけではない。隙間がない場合は、その影響が目立つ可能性があるため、重ね状態を解除して後続シート1-Bのみの斜行矯正動作を行うようにしたものである。
【0075】
隙間があると判定された場合(S111:YES)、記録装置100は、重ね状態を維持したまま後続シート1-Bの斜行矯正動作を行い(S113)、その後頭出しをする。すなわち、先行シート1-Aの最終行の画像形成動作を開始した後に、後続シート1-Bを先行シート1-Aと重なった状態のまま搬送ニップ部に突き当てる。最終行の画像形成動作が終了すると、搬送モータ205と同時に給送モータ206を駆動することによって搬送ローラ5及び給送ローラ3を回転させ、後続シート1-Bを先行シート1-Aと重なった状態のまま頭出しをする。
【0076】
このようにして、先行シート1-Aと後続シート1-Bの重ね状態を維持するか解除するかの判定動作を行うことができる。
【0077】
以上説明したように、上記実施形態によれば、後続シート1-Bの給送開始時点では、記録装置100は、重ね連送を実施するか否かを確定しておく必要がない。これは、例えば、後続シート1-Bの給送開始時点において、後続シート1-Bの余白量が不明であっても、その後、余白量が判明した時点で重ね連送を実行することができる点で有利である。
【0078】
また、上記実施形態によれば、記録ヘッド7によって先行シート1-Aに記録動作を行う際の給送モータ206と搬送モータ205との同期、非同期を切り替えている。具体的には、シート検知センサ16によって後続シート1-Bの先端が検知される前は給送モータ206を搬送モータ205と同期して駆動させている。一方、シート検知センサ16によって後続シートの先端が検知された後は給送モータ206を連続駆動させている。連続駆動により、先行シート1-Aに後続シート1-Bを重ねるための追いかけ動作を行うことが可能となり、重ね連送での先後の記録シート1間の重ね合せ量を調整することができる。
【0079】
なお、上記実施形態では、重ね連送の際、先行シート1-Aの上側に後続シート1-Bを重ねる構成としたが、先行シート1-Aの下側に後続シート1-Bを重ねる構成としてもよい。また、上記実施形態では、給送の段階では、先行シート1-Aと後続シート1-Bとを間隔を空ける構成としたが、給送の段階から両者を重ねて搬送する構成も採用可能である。
【0080】
<余白量の算出と重ね合せ量の設定>
上述した重ね連送を行う場合、先後の記録シート1間の重ね合せ量を設定することが必要となる。ここで、記録シート1の先端側及び後端側の余白量の算出例と、先後の記録シート1の重ね合せ量の設定例について
図10及び
図11(a)を参照して説明する。
【0081】
図10は、未記録の記録シート1と、記録シート1に記録する記録データPDの画像と、記録シート1に記録データPDを記録した後の記録シート1’を示している。
【0082】
図10の例では、記録シート1には、記録可能な領域Rが設定されており、その先端側、後端側にそれぞれ余白量BS1、BS2の余白が存在する場合を想定している。また、記録データPDには、画像を含む領域IGがあり、その先端側と後端側に余白量BS11、BS12の余白が存在する場合を想定している。なお、余白量は記録時における記録シート1の搬送方向の幅である。
【0083】
記録装置100は、記録シート1に対する記録データPDの割り付けを行って、その画像を記録し、記録シート1’が作成される。記録シート1’は、その先端側に余白量BSFの余白を、その後端側に余白量BSBの余白を有する。ここで、BSF=BS1+BS11、BSB=BS2+BS12、である。
【0084】
図11(a)に示すように、先後の記録シート1の重ね合せ量SCは、先行シート1Aの後端側の余白量BSBと、後続シート1-Bの先端側の余白量BSFと、から設定することができる。
【0085】
なお、1枚の記録シート1に複数の論理頁の記録データを割り付ける場合(N in 1 記録)を行う場合は、割り付け後の記録データを基準として余白量が算出される。
図11(b)は、2論理頁の記録データを、1枚の記録シート1に割り付けた場合を例示している。この例では、記録データの左又は右の余白量と、記録シート1の余白量BS1、BS2とから、余白量BSF、BSBが算出される。
【0086】
余白量BS1、BS2は記録シート1のサイズ等に応じて事前に設定した値とすることができる。一方、余白量BS11、BS12は個々の記録データPDに固有の量であり、記録データPDを解析しなければ算出できない。つまり、重ね合せ量SCは記録データPDを解析しなければ設定できないことになる。以下、記録装置100において先端側の余白量BSFを算出する例について説明する。
図12は記録装置100の制御ユニットが実行する処理例を示すフローチャートである。
【0087】
S121で、制御ユニットは、記録シート1の記録可能領域情報を読み込む。記録可能領域情報は、例えば
図10のRの領域を示す座標などである。記録可能領域情報は例えばROM202に格納しておくか、情報処理装置214から受信して読み込むことができる。なお、S121の処理により
図10のBS1が特定される。S122では先端側の余白量BSFを、S121により特定されたBS1に仮設定する。S123では、情報処理装置214から受信した記録データを読み込み、その解析を行って、余白量BS11を算出する。余白量BS11の算出は、公知の余白量検出技術を用いればよい。
【0088】
S124では、仮設定した余白量BSFに、S123で算出した余白量BS11を加算して、加算後の値を最終的な余白量BSFとする。以上によって、先端側の余白量BSFを確定することができる。なお、後端側の余白量BSBについても同様の処理によって確定することができる。
【0089】
このような処理においては、S123で記録データの読み込みと解析が必要となる。記録装置100のRAM203の記憶容量が比較的小さい場合、記憶可能な記録データの量も小さくなる。複数枚の記録シート1に連続して記録を行う場合、先行する記録シート1の記録が完了しなければ、後続の記録シートの記録データを格納する空きの記憶領域を準備できない場合がある。空きの記憶領域を準備できなければ、余白量BSFの算出が遅くなり、重ね合せ量SCの設定も遅くなる。また、MPU201の処理能力にも依存する。つまり、記録装置100のハードウエアの能力如何によって、滑らかな重ね連送制御を実施できないケースが発生する場合がある。
【0090】
そこで、本実施形態では、余白量BS11を情報処理装置214側で算出して記録装置100に事前通知する構成とする。これにより、ロースペックの記録装置100であっても、記録シート1’の余白量BSFをより速やかに算出することができ、重ね合せ量SCをより速やかに設定できる。なお、情報処理装置214側で算出するのは、余白量BS11だけでもよいが、以下に述べる実施形態では余白量BS12も算出する構成としている。
【0091】
<余白量の事前通知>
<情報処理装置の処理例>
以下、余白量BS11、BS12の算出に関連する情報処理装置214の処理例について説明する。
【0092】
図13は、プリンタドライバ2141により提供される設定画面の例を示している。プリンタドライバ2141は、この設定画面を介して、ユーザによる記録条件の指示を受け付けることができる(受付処理)。
【0093】
図13の例の記録条件には、例えば記録シート1のサイズを指す用紙サイズや、用紙の種類、片面/両面設定、カラー/モノクロ設定、印刷品質、フチ設定等が含まれる。また、
図13の例には、記録データの送信設定として、「すぐにプリンタに送信する」動作モード(逐次記録モードという)と、「全頁分スプールしてから送信する」動作モード(全頁スプールモードという)と、が選択可能となっている。逐次記録モードは、所定の単位で記録データを生成しながら並行して記録装置100に記録データを送信する動作モードである。全頁スプールモードは、全頁の記録データを生成してから記録データを記録装置100に送信する動作モードである。
【0094】
例えばユーザが記録指示を行ったドキュメントが非常に複雑な場合、情報処理装置214が印刷データを生成する時間が遅くなる。そのようなケースにおいて、逐次記録モードでは、情報処理装置214からの記録データの転送待ちに起因する記録ムラが生じるケースがある。このような場合、全頁スプールモードが適している。
【0095】
図14は、ユーザによりドキュメントの記録指示が行われた場合の情報処理装置214の処理例を示しており、プリンタドライバ2141により実行される処理例である。なお、本願の情報処理装置において実行されるフローチャートは、CPU214aがHDDやROMからフローチャートの処理に関係するプログラムを読み出して実行することで実現される。
【0096】
まず情報処理装置214は記録装置100に対し記録ジョブ開始コマンドと設定コマンドを送信する(S201、S202)。設定コマンドには例えば
図13の記録設定画面で受け付けた記録条件の情報が含まれている。
【0097】
次に、情報処理装置214は、全頁スプールモードと逐次記録モードとのいずれが選択されたか否かを判断する(S203)。全頁スプールモードが選択された場合、情報処理装置214は、全頁スプールモードでの記録処理を実行し(S204)、逐次記録モードが選択された場合、逐次記録モードでの記録処理を実行する(S205)。詳細は後述する。S204あるいはS205で全頁の記録データを送信完了したら、記録装置100に対して記録ジョブ終了コマンドを送信する(S206)。以上により、一単位の記録ジョブの処理が終了する。
【0098】
<全頁スプールモードでの記録処理>
図15を参照してS204の全頁スプールモードでの記録処理の例について説明する。
【0099】
まず、情報処理装置214は、記録ジョブが複数頁の記録シート1に対する記録を行うジョブか否かを判断する(S211)。該当する場合はS216へ進み、該当しない場合はS212へ進む。
【0100】
S212~S215は1頁の記録シート1に対する記録処理である。記録シート1の重ね連送の必要がない場合の処理である。情報処理装置214は、S212で記録データを生成し、ファイルとして保存し、S213で記録装置100に対し開始コマンドを送信する。情報処理装置214は、S214ではS212で生成した1頁分の記録データを記録装置100に送信し、そのファイルを削除する。情報処理装置214は、S215では終了コマンドを記録装置100に送信する。以上で一単位の処理を終了する。
【0101】
なお、本実施形態では、S213~S215に示すように、記録シート1の頁毎に、記録開始を指示する開始コマンドの送信と、記録データの送信と、記録終了を指示する終了コマンドの送信と、を行う構成としている。
【0102】
S216以下の処理について説明する。本実施形態の場合、記録データを記録シート1の頁単位で管理する情報として、処理頁番号と、送信頁番号とを用いる。処理頁番号は、記録データの生成対象である頁番号を示し、送信頁番号は記録データの送信対象である頁番号を示す。
【0103】
S216で、情報処理装置214は、処理頁番号を1に設定し、現在の処理頁番号の頁(1頁)に該当する記録データを生成しファイルとして保存する(S217)。S218で、情報処理装置214は、S217で生成した記録データを解析し、記録シート1の後端側に位置する余白量BS12を算出する。つまり、1頁目の記録シート1に記録する記録データの後端側の余白量BS12が算出される。算出結果は処理頁番号と関連付けてファイルとして保存する。
【0104】
余白量の算出は公知の余白量検出技術を用いればよい。例えば、余白量は情報処理装置214上で動作しているOSのシステムレンダラが生成した頁イメージのラスタデータを白の画素値と比較して算出されてもよい。また、余白量は、記録データと白の画素値と比較して算出されてもよい。記録対象のドキュメントがPDL言語等であれば、余白量は、PDL言語を解析した結果に基づいて決められてもよい。
【0105】
S219で、情報処理装置214は、処理頁番号を1つ加算し、S220では現在の処理頁番号の頁に該当する記録データを生成しファイルとして保存する。S221で、情報処理装置214は、S220で生成した記録データを解析し、記録シート1の先端側に位置する余白量BS11を算出する。つまり、2頁目の記録シート1に記録する記録データの先端側の余白量BS11が算出される。算出結果は処理頁番号と関連付けてファイルとして保存する。上記のとおり、余白量の算出は公知の余白量検出技術を用いればよい。
【0106】
S222で、情報処理装置214は、現在の処理頁番号が、今回の記録ジョブの最終頁の番号か否かを判定し、該当する場合は、S224へ進み、該当しない場合はS223へ進む。S223で、情報処理装置214は、S220で生成した現在の処理頁番号の記録データを解析し、記録シート1の後端側に位置する余白量BS12を算出する。つまり、2頁目の記録シート1に記録する記録データの後端側の余白量BS12が算出される。算出結果は処理頁番号と関連付けてファイルとして保存する。上記のとおり、余白量の算出は公知の余白量検出技術を用いればよい。その後、S219へ戻って同様の処理を繰り返す。
【0107】
以上の処理により、以下の情報が得られることになる。
・各頁の記録データ。
・1頁目の後端側の余白量BS12。
・2頁目~最終頁よりも1頁前の頁の先端側の余白量BS11及び後端側の余白量BS12。
・最終頁の先端側の余白量BS11。
【0108】
S224以下の処理は、記録装置100に記録データや余白情報等を送信する処理である。情報処理装置214は、S224では送信頁番号を1に設定する。S225では開始コマンドと共に余白情報を記録装置100へ送信する。余白情報は、S218、S221及びS223における余白量の解析結果に基づく情報である。
【0109】
本実施形態の場合、余白情報には、現在の送信頁番号の頁に該当する記録データの後端側の余白量BS12と、現在の送信頁番号の次頁に該当する記録データの先端側の余白量BS11とが含まれる。現在の送信頁番号がn(自然数。以下同じ。)とすると、n頁目の記録データの余白量BS12と、n+1頁目の記録データの余白量BS11とが、n頁目の開始コマンドと共に送信されることになる。つまり、n+1頁目の記録データの余白量BS11は、n+1頁目の記録データの送信に先立って送信されることになる。送信済みの余白量のファイルは例えば記録ジョブの終了時に削除する。
【0110】
S226で、情報処理装置214は、現在の送信頁番号の頁に該当する記録データを記録装置100に送信し、送信済みの記録データのファイルを削除し、S227で終了コマンドを記録装置100に送信する。
【0111】
S228で、情報処理装置214は、現在の送信頁番号が、今回の記録ジョブの最終頁の番号か否かを判定し、該当する場合は、S230へ進み、該当しない場合はS229へ進む。S229では送信頁番号が1つ加算され、S225へ戻る。
【0112】
S230で、情報処理装置214は、開始コマンドを記録装置100へ送信する。最終頁であるため、送信すべき余白情報は無いので、開始コマンドのみを送信する。なお、最終頁の記録データの後端側の余白量BS12を解析し、余白情報として送信する構成も採用可能である。この余白情報は重ね合せ量SCの設定には用いず、後端側の余白領域について記録シート1の記録をスキップして搬送するために用いることができる。
【0113】
S231で、情報処理装置214は、最終頁の記録データを記録装置100に送信し、送信済みの記録データのファイルを削除する。S232で、情報処理装置214は、終了コマンドを記録装置100に送信する。以上により一単位の処理を終了する。
【0114】
以上の処理により、記録装置100は、開始コマンドを受信した段階で今回の頁の後端側の余白量BS12と次頁の先端側の余白量BS11とを得ることができる。したがって、記録装置100は記録データを行う必要がなく、また、次頁の記録データを受信しなくても、重ね合せ量SCを設定することができる。このため、記録装置100は速やかで安定的に記録シート1の重ね連送制御を実行することが可能となる。
【0115】
既に概説したとおり、余白量BS11、BS12は記録データの内容で決まる可変な量である。先行シート1-Aの後端側の余白量BSBと、後続シート1-Bの先端側の余白量BSFが大きい場合、論理的には重ね合せ量SCを大きくでき、搬送時間の大幅な短縮を見込める。仮に、余白情報がなければ記録装置100は記録データを解析し余白量を算出しなければならない。このため、余白量解析処理時間が遅くなる条件、例えば記録データのデータフォーマット等によっては、重ね合せ量SCの設定が間に合わないケースが発生し得る。すると、論理的には重ね合せ量SCを大きくでき、搬送時間の大幅な短縮を見込める場合にもこれを実現できない。
【0116】
特に、RAM203の記憶容量に制約があり、記録データのスプールバッファを十分にとる事ができない場合、記録装置100側での余白量BS12の算出は不利になる。つまり、現頁の記録処理と並行して進められる次頁の余白量BS12の解析に限りが生じるため、理想的な重ね合わせ制御を実現する事が困難となる。
【0117】
本実施形態のように、情報処理装置214が重ね連送制御で必要な現頁、及び次頁の余白量を事前情報として記録装置100に通知することで、重ね連送制御のために必要なタイミングでより確実に重ね合せ量SCを設定することが可能となる。
【0118】
<逐次記録モード>
図16を参照してS205の逐次記録モードでの記録処理の例について説明する。逐次記録モードでは、記録データの生成と送信とを頁毎に繰り返す。ただし、余白情報を事前に通知するため、n頁目の記録データの送信前に、n+1頁目の記録データを生成する。
【0119】
まず、情報処理装置214は、記録ジョブが複数頁の記録シート1に対する記録を行うジョブか否かを判断する(S241)。該当する場合はS242へ進み、該当しない場合はS245へ進む。
【0120】
S242~S244は1頁の記録シート1に対する記録処理であり、記録シート1の重ね連送の必要がない場合の処理である。S242で、情報処理装置214は、記録装置100に対し開始コマンドを送信し、S243で、所定単位で記録データを生成しながら記録装置100に送信する処理を1頁分繰り返す。S244で、情報処理装置214は、終了コマンドを記録装置100に送信する。以上で一単位の処理を終了する。
【0121】
S245で、情報処理装置214は、処理頁番号、送信頁番号をそれぞれ1に設定し、現在の処理頁番号の頁(1頁)に該当する記録データを生成しファイルとして保存する(S246)。S247で、情報処理装置214は、S246で生成した記録データを解析し、記録シート1の後端側に位置する余白量BS12を算出する。つまり、1頁目の記録シート1に記録する記録データの後端側の余白量BS12が算出される。算出結果は処理頁番号と関連付けてファイルとしてハードディスク等に保存してもよいが、サイズが小さく直ぐに送信されるので揮発性メモリ上での管理で十分でもよい。以下、余白量BS11、BS12について同様である。
【0122】
S248で、情報処理装置214は、処理頁番号を1つ加算し、S249で現在の処理頁番号の頁に該当する記録データを生成しファイルとして保存する。S250で、情報処理装置214は、S249で生成した記録データを解析し、記録シート1の先端側に位置する余白量BS11を算出する。
【0123】
S251で、情報処理装置214は、開始コマンドと共に余白情報を記録装置100へ送信する(余白情報は、S247、S250(及び後述のS256における余白量の解析結果に基づく情報である)。本実施形態の場合、余白情報には、現在の送信頁番号の頁に該当する記録データの後端側の余白量BS12と、現在の送信頁番号の次頁(現在の処理頁番号の頁)に該当する記録データの先端側の余白量BS11とが含まれる。つまり、n+1頁目の記録データの余白量BS11は、n+1頁目の記録データの送信に先立って送信されることになる。
【0124】
S252で、情報処理装置214は、現在の送信頁番号の頁に該当する記録データを記録装置100に送信し、送信済みの記録データのファイルを削除する。S253で、情報処理装置214は、終了コマンドを記録装置100に送信する。
【0125】
S254で、情報処理装置214は、送信頁番号を1つ加算し、S255では、現在の送信頁番号が、今回の記録ジョブの最終頁の番号か否かを判定する。現在の送信頁番号が記録ジョブの最終頁に該当する場合は、S257へ進み、該当しない場合はS256へ進む。S256で、情報処理装置214は、現在の処理頁番号の記録データを解析し、後端側の余白量BS12を算出し、S248へ戻って同様の処理を繰り返す。
【0126】
S257で、情報処理装置214は、開始コマンドを記録装置100へ送信する。最終頁であるため、送信すべき余白情報は無いので、開始コマンドのみが送信される。なお、最終頁の記録データの後端側の余白量BS12を解析し、余白情報として送信する構成も採用可能である。理由は上述した通りである。
【0127】
S257で、情報処理装置214は、最終頁の記録データを記録装置100に送信し、送信済みの記録データのファイルを削除する。S258で、情報処理装置214は、終了コマンドを記録装置100に送信する。以上により一単位の処理を終了する。
【0128】
以上の処理により、記録装置100は、開始コマンドを受信した段階で今回の頁の後端側の余白量BS12と次頁の先端側の余白量BS11とを得ることができる。したがって、記録装置100は記録データを行う必要がなく、また、次頁の記録データを受信しなくても、重ね合せ量SCを設定することができる。このため、記録装置100は速やかで安定的に記録シート1の重ね連送制御を実行することが可能となる。
【0129】
なお、本実施形態で、情報処理装置214は、開始コマンドと共に余白情報を記録装置100へ送信する構成とした。しかし、余白情報の送信タイミングはこれに限られず、また、現頁の余白量BS12と次頁の余白量BS11とを別々に送信してもよい。次頁の先端側の余白量BS11は、記録装置100における現頁の最終行の記録が終了するまでに記録装置100に送信できれば、重ね合せ量SCの設定が間に合う可能性が高くなる。したがって、次頁の先端側の余白量BS11は、現頁の記録データの送信途中に送信してもよい。
【0130】
尤も、データの通信制御を簡便にする点で、次頁の先端側の余白量BS11の送信は、現頁の記録データの送信に先立って行うことができ、本実施形態のように開始コマンドと共に次頁の先端側の余白量BS11を送信することが有利である。
【0131】
全頁スプールモードでは、1頁目の記録データの送信前に全頁の記録データの解析が完了している。したがって、1頁目の開始コマンドと共に或いはその前に、全ての余白情報を一括送信してもよい。ただし、記録装置100における余白情報の記憶領域確保の点では、本実施形態のように、頁毎に開始コマンドと共に個別に送信する方が有利である。
【0132】
全頁スプールモード及び逐次記録モードの処理は、重ね連送制御が可能な場合に記録速度を向上できる処理フローだが、そのフローを重ね連送制御不可能な場合にも実行すると記録装置100の生産性が低下してしまう場合がある。これは、次頁の先端側の余白量BS11を算出する処理となっているため、記録ジョブ指示後に記録が開始されるまでにタイムラグが生じるためである。
【0133】
そこで、情報処理装置214が、記録装置が重ね連送を実行可能であるか否かを判定し、実行可能な場合、情報処理装置214は、全頁スプールモード又は逐次記録モードの処理を実行し、実行可能でない場合は通常処理としてもよい。通常処理では、余白量BS11、BS12の解析を行わず、余白情報を記録装置100に送信しないことになる。また、通常処理では記録データの生成と送信とを頁毎に行うようにすることができる。この場合、例えば、n+1頁目の記録データの生成を待たずに、n頁目の記録データを送信することになる。
【0134】
重ね連送が実行可能な否かは、記録装置100のスペック情報に基づき判断できる。例えば、情報処理装置214が、記録装置100からスペック情報を取得することで重ね連送の実行可否を判断できる。或いは、重ね連送が実行可能な否かは、ユーザが指定した記録条件に基づき判断でき、具体的な判断要素としては、例えば、用紙の種類、片面/両面、カラー/モノクロ、印刷品質、フチ設定を挙げることができる。用紙の種類としては、用紙の硬さ(こしの強さ)等を考慮できる。片面/両面については、両面の場合は重ね連送を実行しないと判断することができる。カラー/モノクロ、印刷品質、フチ設定については、カラーの場合、印刷品質が高い場合、フチ無しの場合は、それぞれ重ね連送を実行しないと判断することができる。
【0135】
<記録装置の処理例>
余白量の事前通知に対応した記録装置100の制御ユニットの処理例について
図17を参照して説明する。
【0136】
まず記録装置100は情報処理装置214から送信される記録ジョブ開始コマンドを受信し(S301)、記録ジョブの初期化処理を実行する(S302)。記録装置100は、設定コマンドを受信して(S303)、ユーザが指定した記録条件に基づく記録ジョブの設定処理を実行する(S304)。
【0137】
次に、記録装置100は、今回の記録ジョブが重ね連送可能かを判断する(S305)。重ね連送可能かは、上述したとおり、情報処理装置214が判断し、その判断に記録装置100が従うようにすることができる。例えば情報処理装置214がS301あるいはS303のコマンドで重ね連送可否情報を通知し、記録装置100がそれに基づき判断することができる。あるいはS303のコマンドに含まれる記録設定情報をもとに記録装置100が重ね連送の可否判断を行ってもよい。
【0138】
S305で重ね連送可能(YES)と判断した場合、記録装置100は、重ね連送モードの処理を実行する(S306)。詳細は後に説明する。S305で重ね連送不可能(NO)と判断した場合、記録装置100は、非重ね連送モードの処理を実行する(S307)。S307で実行する処理フローは重ね連送を行わない一般的な処理フローと同じでよい。その後、記録ジョブ終了コマンドを受信した(S308)ことをトリガに、記録ジョブの終了処理を実行する(S309)。
【0139】
図18を参照してS306の重ね連送モードの処理例について説明する。まず記録装置100は、開始コマンドを受信する(S311)。開始コマンドには余白情報が含まれるので、記録装置100は、S312で余白情報に基づいて、現頁と次頁の重ね合わせ量を決める(S312)。なお、開始コマンドに余白情報がない場合は、重ね連送制御を中止して、一般的な記録処理を実行してもよい。
【0140】
記録装置100は、S313で1頁目かを判断し、YESなら記録シート1がまだ給送されていないため給送する(S314)。本実施形態の場合、1頁目の開始コマンドには、1頁目の先端側の余白量BS11は含まれていない。そこで、S315からS317の処理で先端側の余白量BS11を確定させる。なお、情報処理装置214において1頁目の先端側の余白量BS11を算出し、1頁目の開始コマンドの余白情報に含ませることも可能である。
【0141】
記録装置100は、情報処理装置214から所定単位で記録データを受信しながら(S315)、記録データを解析する(S316)。これらの処理を余白量BS11が確定するまで繰り返す(S317)。そして、記録装置100は、確定した余白量BS11分だけ記録シート1を搬送する(S318)。なお、S315における記録データの受信単位は記録装置100が備える受信メモリサイズ等を考慮し自由に決めればよい。
【0142】
S313でNOの場合、つまり、2頁目以降の場合、重ね連送制御によって2頁目の記録シート1が給送済みであるため、記録データの先端側の余白領域分のデータを読み捨てる(S319)。この読み捨て処理は記録データのデータフォーマットによって異なる。例えばRAWデータなどの固定長なデータフォーマットであれば先端余白量から読み捨てるべきデータサイズが決まる。またJPEGのような可変長なデータフォーマットであればデコードする必要が生じるケースもある。
【0143】
次に、記録装置100は、記録データに含まれる余白領域の連続長を0に初期化する(S320)。ここでいう余白領域の連続長とは、記録データのうち、全ての画素が白であるラスタが何ラスタ続いているかを示す値であり、上述した余白量BS11、BS12とは異なる。全画素白のラスタが続く領域はインクを吐出する必要がないため、記録シート1を搬送することで記録速度を向上させることができる。
【0144】
記録装置100は情報処理装置214から所定単位で記録データを受信しながら(S321)、記録データを解析する(S322)。S323で余白領域が検出されたら余白領域の連続長に検出した余白領域長を加算する(S324)。
【0145】
S323で余白領域以外であれば、S325へ進み、記録装置100は、余白領域の連続長に相当するラスタ数分、記録シート1を搬送し(S325)、余白領域の連続長を0に戻す(S326)。そして記録装置100は、非余白領域である記録データを、記録ヘッド7の制御データに変換して記録動作を実行する(S327)。
【0146】
S328で、記録装置100は、所定条件が成立したか否かを判定する。ここでの所定条件の成立とは、「1頁分の記録データを処理した」、あるいは「処理ラスタ範囲が後端余白領域に達した」場合である。いずれかの場合、現頁の記録処理を完了して次の頁に移るためにS329以降の処理へと進む。S328でNOなら、現頁の処理を継続するためS321に戻る。
【0147】
S329の段階では、記録データの後端側の余白領域(余白量BS12の領域)の直前まで記録処理が完了している。この時、余白量BS12が0の場合は情報処理装置214から送信される記録データを全て処理した状態にある。一方、余白量BS12が0ではない場合は、記録する必要のない余白のデータの受信となるので、記録装置100は、記録データの受信を完了させるよう読み捨て処理を実行する(S330)。
【0148】
次に記録装置100は、最終頁か否かを判断する(S331)。この判断は例えばS311で受信した開始コマンドに、次頁の先端側の余白量BS11の情報がなければ最終頁と判断するようにしてもよいし、開始コマンドに次の頁が存在するか否かの情報を付加するようにしてもよい。
【0149】
最終頁と判断した場合(YES)、記録装置100は、次頁がないため現頁のみを排出する(S332)。最終頁でないと判断した場合(NO)、記録装置100は、S312で設定した重ね合わせ量に基づき現頁と次頁の記録シート1を重ね合わせて搬送する(S333)。
【0150】
S334では情報処理装置214から終了コマンドを受信して、S335で最終頁であれば処理終了、最終頁でなければS311に戻る。
【0151】
以上のように情報処理装置214から開始コマンドと共に通知される余白情報を活用して、重ね連送制御に必要な重ね合わせ量を記録データの解析無しに算出できる。このため安定的に必要なタイミングに重ね合わせ量を確定することが可能となる。
【0152】
<装置間のシーケンス例>
情報処理装置214と記録装置100との間で、重ね連送制御を行う場合の処理シーケンスの例について
図19及び
図20を参照して説明する。ここでは、3枚の記録シート1に記録を行う場合を想定する。
図19は情報処理装置214が全頁スプールモードで処理を実行する場合を示す。
図20は情報処理装置214が逐次記録モードで処理を実行する場合を示す。
【0153】
まず、
図19を参照して全頁スプールモードの場合を説明する。ユーザが記録指示を発行すると、情報処理装置214は記録ジョブ開始コマンドの送信と、設定コマンドの送信とを行う。また、情報処理装置214は、全頁分の記録データの生成と、余白情報のための解析を行う。
【0154】
次に情報処理装置214は、1頁目の開始コマンドと余白情報を記録装置100に送信する。この余白情報には、1頁目の記録データの後端側の余白量BS12と、2頁目の記録データの先端側の余白量BS11の情報とを含む。記録装置100は、重ね合せ量SCを設定し、1頁目の記録シート1の給送を開始する。
【0155】
情報処理装置214は、1頁目の記録データと1頁目の終了コマンドを記録装置100に送信する。記録装置100は受信した記録データにもとづき1頁目の記録シート1の記録と、1頁目の記録シート1と2頁目の記録シート1の重ね連送を行う。
【0156】
情報処理装置214は、2頁目の開始コマンドと余白情報を記録装置100に送信する。この余白情報には、2頁目の記録データの後端側の余白量BS12と、3頁目の記録データの先端側の余白量BS11の情報とを含む。記録装置100は、重ね合せ量SCを設定する。
【0157】
情報処理装置214は、2頁目の記録データと2頁目の終了コマンドを記録装置100に送信する。記録装置100は受信した記録データにもとづき2頁目の記録シート1の記録と、2頁目の記録シート1と3頁目の記録シート1の重ね連送を行う。
【0158】
情報処理装置214は、3頁目の開始コマンドを記録装置100に送信する。余白情報は無いので送信しないが、既に述べたとおり、記録をスキップする目的で、3頁目の後端側の余白量BS12を送信してもよい。
【0159】
情報処理装置214は、3頁目の記録データと、3頁目の終了コマンド、記録ジョブの終了コマンドを記録装置100に送信する。記録装置100は受信した記録データにもとづき3頁目の記録シート1の記録を行い、3頁目の記録シート1を排出して一単位の処理が終了する。
【0160】
次に、
図20を参照して逐次記録モードの場合を説明する。ユーザが記録指示を発行すると、情報処理装置214は記録ジョブ開始コマンドと設定コマンドを送信する。また、情報処理装置214は、1頁目の記録データの生成と、余白情報のための解析を行い、かつ、2頁目の記録データの生成と、余白情報のための解析を行う。
【0161】
次に情報処理装置214は、1頁目の開始コマンドと余白情報を記録装置100に送信する。この余白情報には、1頁目の記録データの後端側の余白量BS12と、2頁目の記録データの先端側の余白量BS11の情報とを含む。記録装置100は、重ね合せ量SCを設定し、1頁目の記録シート1の給送を開始する。
【0162】
情報処理装置214は、1頁目の記録データの送信を行う。また、情報処理装置214は、3頁目の記録データの生成と、余白情報のための解析を行って終了コマンドを送信する。記録装置100は受信した記録データにもとづき1頁目の記録シート1の記録を行い、また、1頁目の記録シート1と2頁目の記録シート1の重ね連送を行う。
【0163】
情報処理装置214は、2頁目の開始コマンドと余白情報を記録装置100に送信する。この余白情報には、2頁目の記録データの後端側の余白量BS12と、3頁目の記録データの先端側の余白量BS11の情報とを含む。記録装置100は、重ね合せ量SCを設定する。
【0164】
情報処理装置214は、2頁目の記録データと、終了コマンドを送信する。記録装置100は受信した記録データにもとづき2頁目の記録シート1の記録を行い、また、2頁目の記録シート1と3頁目の記録シート1の重ね連送を行う。
【0165】
情報処理装置214は、3頁目の開始コマンドを記録装置100に送信する。余白情報は無いので送信しないが、既に述べたとおり、記録をスキップする目的で、3頁目の後端側の余白量BS12を送信してもよい。
【0166】
情報処理装置214は、3頁目の記録データ、3頁目の終了コマンド、記録ジョブの終了コマンドを記録装置100に送信する。記録装置100は受信した記録データにもとづき3頁目の記録シート1の記録を行い、3頁目の記録シート1を排出して一単位の処理が終了する。
【0167】
<余白量の事前通知の効果>
余白量の事前通知による記録速度の向上について比較例を挙げて
図21(a)及び(b)を参照して説明する。
【0168】
ここでは次のようなケースを想定している。まず、情報処理装置214における記録データの生成時間が1頁あたり平均して1秒かかるとする。また、記録装置100は重ね連送しない場合、毎分20頁の記録が可能であり(1頁3秒)、重ね連送すると毎分21頁の記録が可能であるとする。そして、21頁のドキュメントを記録する場合を想定する。
【0169】
まず、全頁スプールモードが選択された場合について、
図21(a)を用いて説明する。実施例は情報処理装置214、記録装置100を想定している。比較例1は重ね連送しない構成を想定している。比較例2は重ね連送を行うが、余白量は記録装置側で算出して重ね合せ量CSを設定する場合を想定する。
【0170】
このモードではまず情報処理装置214で21頁分の記録データを生成する。この工程に約21秒かかる。なお、この工程にかかる処理時間は実施例、比較例で変わらないものとする。全頁分記録データを生成後、記録装置に記録データを転送して記録する。
【0171】
重ね連送しない比較例1では、1頁あたりの記録時間が3秒要するとする。全記録時間に63秒かかり、情報処理装置214の処理時間と合わせて84秒かかる。
【0172】
重ね連送する比較例2では、重ね合せ量CSの設定が間に合わない恐れがあるため、記録装置100の速度性能をフルに発揮できない恐れがある。このため、ベストケースで81秒、ワーストケースで84秒かかる。
【0173】
本実施例の処理が用いられた場合、情報処理装置214から記録装置100に余白情報が事前通知される構成であるため、記録時間としては、比較例2のベストケースを安定して得ることができる。よってトータルで81秒となる。
【0174】
なお、上述したとおり本実施形態或いは本実施例では、情報処理装置214が余白量を解析するが、その解析処理が印刷時間に与える影響は軽微である。例えば、アプリケーションが出力する記録対象データが、PDFデータやXPSデータ等のPDLデータである場合、PDLデータの解析処理が情報処理装置214内で実行される。そして、PDLデータの解析処理において余白量も算出されるため、余白量の解析処理による時間は発生しない。一方、OSのシステムレンダラが生成したラスターデータがJPEG等のイメージデータに変換され、そのイメージデータが記録装置100に送信される場合、情報処理装置214内で白領域を解析する必要があり、解析処理による時間が生じる。しかしながら、情報処理装置のハードウェアスペックを考慮すると、白領域の解析処理による時間は少ないため、印刷時間に与える影響は軽微である。
【0175】
次に、逐次記録モードが選択された場合について、
図21(b)を用いて説明する。比較例11は重ね連送しない構成を想定している。比較例12は重ね連送を行うが、余白量は記録装置側で算出して重ね合せ量SCを設定する場合を想定する。
【0176】
比較例11、12及び実施例のいずれも頁毎に記録データの生成と、送信とを行う。ただし、実施例では、1頁目の記録データを送信する前に2頁目の記録データの生成を行う。このため2秒を要する。これに対し、比較例では1頁目の記録データを生成すれば記録データの転送が可能である。よって、実施例では、データ転送開始までに要する時間が比較例よりも1秒遅くなる。
【0177】
しかし、その後の記録動作では安定して重ね連送制御することが可能となり、安定して60秒の記録時間を得ることが可能となる。なお、比較例11ではトータルで64秒を要し、実施例では62秒を要する。比較例12ではベストケースで61秒、ワーストケースで64秒となる。比較例12のベストケースは実施例を上回るが、記録時間の安定性の点で実施例は有利である。
【0178】
<第2実施形態>
余白量の事前通知によって、情報処理装置214において記録データをクリッピングして記録装置100に送信することが可能となる。これにより記録装置100側での処理時間を短縮させ、更なる記録速度向上につなげることができる。
【0179】
例えば、
図10に示した記録データPDでは、先端側及び後端側にそれぞれ、余白量BS11、BS12の余白領域が存在する。これらの余白領域は、記録シート1に記録が行われない(インクが吐出されない)領域であり、記録装置100に送信する必要はなく、画像を含む領域IGの記録データのみを送信すればよい。
【0180】
したがって、情報処理装置214は、記録データを解析して余白量BS11、BS12を算出した後、余白領域を除いた記録データを生成する。このクリッピング処理は、例えば、
図15の処理例の場合には、S223の処理に続いて実行し、
図16の処理の例の場合には、S256の処理に続いて実行する。
【0181】
1頁目についてもクリッピング処理を行う場合は、1頁目についても先端側の余白量BS11を算出し、その結果に応じてクリッピング処理を行えばよい。
【0182】
記録装置100では、事前に通知された余白情報に基づき、受信したクリッピング後の記録データの記録位置調整(記録シート1の余白分の搬送量制御)をすればよい。
【0183】
図22は記録装置100の制御ユニットの処理例を示し、特に、情報処理装置214が記録データをクリッピングする場合の処理例を示すフローチャートである。
図22の処理例は、
図18の処理例の代替例である。
【0184】
なお、クリッピングの対象は、全頁であることを前提としている。したがって、情報処理装置214は最終頁を除く全頁について、先端側の余白量BS11と後端側の余白量BS12とをそれぞれ算出することを前提とする。そして、1頁目の開始コマンドに含まれる余白情報は、1頁目の記録データの先端側の余白量BS11と後端側の余白量BS12と、2頁目の記録データの先端側の余白量BS11とする。最終頁の開始コマンドには余白情報は不要である。他の頁については第1実施形態と同様である。
【0185】
記録装置100は、開始コマンドを受信し(S341)、S342では1頁目かを判断する。1頁目(YES)の場合、S343へ進み、記録装置100は、開始コマンド中に含まれる1頁目の先端側の余白量BS11から1頁目の給送時の搬送量を決める。具体的には、給送時に
図10の例における領域IGが記録ヘッド7による記録開始位置に位置するまで、記録シート1が搬送されるように搬送量を設定する。また、記録装置100は、開始コマンドに含まれる1頁目の後端側の余白量BS12と次頁の先端側の余白量BS11から現頁と次頁の重ね合わせ量CSを決める。S344で、記録装置100は、S343で設定した搬送量により、1頁目の記録シート1を搬送する。
【0186】
S342でNOなら、記録装置100は、開始コマンド中に含まれる現頁の後端側の余白量BS12と次頁の先端側の余白量BS11から現頁と次頁の重ね合わせ量SCを決める(S345)。
【0187】
なお、S346~S353の処理は、
図18のS320~S327の処理と同じであるため詳細な説明を省略する。
【0188】
S354で、記録装置100は1頁分の記録データを全て処理したか否かを判定する。全て処理した場合はS355へ進み、全て処理していない場合はS347へ戻って現頁の処理を継続する。
【0189】
なお、S355~S359の処理は、
図18のS331~S335の処理と同じであるため詳細な説明を省略する。なお、第1実施形態との差異について述べると、本実施形態ではS355の段階において、先端側及び後端側の余白領域がクリッピングされた記録データが情報処理装置214から送信されるため、記録データも全て処理済みの状態である点が異なっている。
【0190】
S358では情報処理装置214から終了コマンドを受信して、S359で最終頁であれば処理終了、最終頁でなければS341に戻る。
【0191】
以上のように本実施形態では、情報処理装置214側では各頁の余白量の解析結果を活用して記録データをクリッピングし、記録装置100側では余白情報を利用して記録データの記録位置合わせをすることが可能となる。このため、情報処理装置214と記録装置100間のデータ転送量や記録装置100の処理量を低減でき、記録速度を更に向上できる。
【0192】
クリッピングにより記録装置100の記録速度がどの程度向上するか、具体例をあげる。例えば、次のようなケースを想定する。記録装置100は重ね連送しない場合毎分20頁記録可能(1頁3秒)であり、重ね連送すると毎分21頁記録可能に記録速度が向上するとする。また記録時間の内訳は、重ね連送時にクリッピングすることなく頁全体を記録する場合、記録処理に2.6秒、給送及び排出に約0.25秒かかるとする。そして、21頁のドキュメントを記録し、クリッピングにより全頁する場合を想定する。
【0193】
この時、クリッピングによって各頁について、10%記録データが削減されるとすると、各頁の記録処理が2.6秒から2.34秒に短縮される。結果、21頁記録する際の記録装置100の記録時間は60秒から約54.4秒に短縮できる。
【0194】
(他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。なお、本願では情報処理装置側の処理のフローチャートの各処理の主語が情報処理装置として記載されているが、主語をプリンタドライバまたは印刷アプリケーションに置き換えても良い。
【符号の説明】
【0195】
1 記録シート、100 記録装置、214 情報処理装置、PD 記録データ、BS11 余白量、BS12 余白量