(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】中心窩投影と拡大アイボックス領域とを持つニアアイ画像投影システム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20240619BHJP
G02B 30/10 20200101ALI20240619BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B30/10
(21)【出願番号】P 2022562255
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 IB2020053484
(87)【国際公開番号】W WO2021209785
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】519171480
【氏名又は名称】クリアル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】スルカ・トマシュ
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0285897(US,A1)
【文献】特開2018-205418(JP,A)
【文献】特開2019-184752(JP,A)
【文献】特開平11-326816(JP,A)
【文献】米国特許第08189263(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光ビームを変調するように構成された光学光変調器を照らす複数の入射光ビームを生成して、かつ複数の変調光ビームを投影するピン光アレイと、
第1ピン光平面にピン光像を形成し、かつ変調器像を変調器像平面に形成するような複数の変調光ビームを投影するように構成された第1ピン光像光学要素を備える光学要素であって、投影軸線に沿ってアイボックス領域を画定する複数の投影像光ビームを投影するように前記複数の変調光ビームと相互作用する、第2光学要素を前記光学要素が備える、前記光学要素と
を備える、ニアアイ画像投影システムにおいて、
前記入射光ビームが、前記ピン光アレイの中心窩ピン光サブアレイによって生成される複数の中心窩入射光ビームを備え、
前記複数の変調光ビームが、前記光学光変調器によって変調されかつ投影される複数の中心窩変調光ビームを備え、
前記複数の中心窩変調光ビームは中心窩瞳孔像を形成して、かつ中心窩アイボックス領域を画定する複数の中心窩投影像光ビームを投影し、
前記入射光ビームが、前記ピン光アレイの周辺ピン光サブアレイによって生成される複数の周辺入射光ビームを備え、
前記複数の変調光ビームが、前記光学光変調器によって変調され投影される複数の周辺ピン光サブアレイ変調光ビームを備え、
前記複数の周辺
ピン光サブアレイ変調光ビームが周辺瞳孔像を形成し、
前記ニアアイ画像投影システムが、前記周辺瞳孔像のそれぞれについて複数の拡大ライトフィールドを投影するように構成された出口瞳孔拡大装置をさらに備え、
前記複数の瞳孔拡大ライトフィールドは、前記中心窩アイボックス領域よりも広い周辺アイボックス領域を画定する周辺投影像光ビームを形成し、
前記中心窩変調光ビームが前記変調器像平面に中心窩変調器像を形成するように、前記出口瞳孔拡大装置が、前記出口瞳孔拡大装置により影響されない前記中心窩変調光ビームを伝えるように構成されている、
ニアアイ画像投影システム。
【請求項2】
前記ニアアイ画像投影システムは、前記第1ピン光平面に偏向要素をさらに備え、前記偏向要素は、前記周辺
ピン光サブアレイ変調光ビームを前記投影軸線に対して偏向させ、かつ前記変調器像平面に沿って空間的にずらされているシフト変調器像を形成するように構成された偏向要素をさらに備える、請求項1に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項3】
前記出口瞳孔拡大装置は、前記変調器像平面において拡散要素をさらに備える、請求項1に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項4】
前記出口瞳孔拡大装置は、前記第1ピン光平面に延びる導波路と、前記周辺瞳孔像を入力するように構成されたインカップリング要素と、前記複数の瞳孔拡張ライトフィールドを投影するように構成されたアウトカップリング要素とを備える導波路とを備える、請求項1に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項5】
前記アウトカップリング要素は、複数の離散瞳孔拡大ライトフィールドを投影するように構成されている、請求項4に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項6】
前記アウトカップリング要素は、連続的に分布した瞳孔拡大ライトフィールドを投影するように構成されている、請求項4に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項7】
前記シフト変調器像を形成するような複数の瞳孔拡大ライトフィールドを集束するように構成されたビーム集束要素をさらに備える、請求項2に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項8】
前記インカップリング要素は、
前記周辺
ピン光サブアレイ変調光ビームをコリメートするように構成されている、請求項
4に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項9】
前記インカップリング要素又は前記アウトカップリング要素の少なくとも一方がホログラフィック光学要素を備える、請求項4に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項10】
前記インカップリング要素又は前記アウトカップリング要素の少なくとも1つは、ミラーアレイ又は部分的に透明なミラーの積み重ねを備える、請求項4に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項11】
前記インカップリング要素又は前記アウトカップリング要素の少なくとも一方が回折格子を備える、請求項4に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項12】
複数の開口が前記導波路に設けられていて、各開口部は、ピン光像を伝えるように構成されている、請求項4に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項13】
前記偏向要素は、プリズムを備える、請求項
2に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項14】
前記第2光学要素は、現実世界からアイボックス領域に向かって自然光を透過するように構成されたコンバイナを備える、請求項1に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項15】
前記出口瞳孔拡大装置は、軸外光学系及び拡散要素を備え、前記軸外光学系は、前記周辺
ピン光サブアレイ変調光ビームを前記拡散要素に投影すべく構成されていて、前記拡散要素は、前記瞳孔拡大ライトフィールドを投影軸線に沿って投影し、前記投影軸線は入射投影軸線に略直交していて、前記入射投影軸線は前記中心窩及び周辺入射光ビームに平行な入射投影軸線に略直交していて、
前記
ニアアイ画像投影システムは、前記投影軸線に沿って前記中心窩変調光ビームを反射するビーム分割器を備え、
前記反射された中心窩変調光ビームが、前記第2光学要素内の前記瞳孔拡大ライトフィールドに結合される、請求項14に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項16】
前記出口瞳孔拡大装置は、周辺変調光ビームを導くべく構成された導波路を備え、
前記出口瞳孔拡大装置は、前記導波路に設けられた前記アウトカップリング要素から前記瞳孔拡大ライトフィールドを、入射投影軸線に対して角度をなしている前記投影軸線に沿って投影し、
前記入射投影軸線は、前記中心窩入射光ビーム及び周辺入射光ビームに平行であって、
前記中心窩変調光ビームは、前記投影軸線に沿って前記第2光学要素に反射される、請求項
4に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項17】
観察者が見ている場所に関する視線追跡情報を提供するように構成された視線追跡及び
方向変換装置を備え、
前記視線追跡及び
方向変換装置が、視線追跡情報に従って前記周辺投
影像光ビームを偏向するように構成されている、請求項1に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項18】
前記視線追跡及び
方向変換装置は、視線追跡情報に応じて移動可能なミラー又はレンズを備える、請求項17に記載のニアアイ画像投影システム。
【請求項19】
前記視線追跡及び
方向変換装置は、視線追跡情報が、観察者が前記
中心窩アイボックス領域の外側を見ていることを示しているときに、前記
中心窩アイボックス領域の外側に
前記周辺投影像光ビームを提供するように構成されている、請求項18に記載のニアアイ画像投影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ニアアイ画像投影に関し、より具体的には、仮想現実、拡張現実、混合現実、又は拡張現実の頭部装着装置及び関連用途のためのニアアイ画像投影に関する。
【背景技術】
【0002】
ピン光に基づいたニアアイシーケンシャルライトフィールド投影装置は、本出願人による特許出願WO2018091984A1(特許文献1)に記載されている。説明されているライトフィールド投影装置は、出口瞳孔に投影された視点の配列のサイズによって定義されるアイボックスにライトフィールドを投影する。出口の瞳孔は、多くの使用事例では小さい。同時に、投影像の角度分解能は、投影像の視野角(FoV)と両立しない(一方を取ると他方を損なう)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ニアアイ画像投影システムに関し、
入射光ビームを変調しかつ複数の変調光ビームを投影するように構成された光学光変調器を照らす複数の入射光ビームを生成するピン光アレイと
第1ピン光平面にピン光像を形成し、投影軸に沿ってアイボックス領域を画定する複数の投影像光ビームを投影するように、複数の変調光ビームを投影すべく構成された光学要素と
を備える、ニアアイ画像投影システムにおいて、前記複数の変調光ビームは、中心窩瞳孔画像を形成し、かつ中心窩アイボックス領域を画定する複数の中心窩投影画像光ビームと投影する複数の中心窩変調光ビームを備える。
複数の変調光ビームは、周辺瞳孔像を形成する複数の周辺変調光ビームをさらに備える。前述のシステムは、周辺瞳孔像のそれぞれに対して複数の瞳孔拡大ライトフィールドを投影するように構成された出口瞳孔拡大装置をさらに備え、周辺投影画像光ビームは、複数の瞳孔拡大ライトフィールドを形成して、中心窩アイボックス領域よりも幅広い周辺アイボックス領域を画定する。
【0005】
ここに開示される画像投影システムにおいて、中心窩投影像光ビームは、FoVの狭い中央部におけるライトフィールド画像の形成に寄与する。周辺変調光ビームは、全FoVの周辺部に対応する画像情報によって変調され、出口瞳孔拡大要素を介して投影される。
【0006】
前述の画像投影システムは、効果的なFoVを増加させ、知覚される画像解像度を向上させました。後者は、狭いFoVと限られたアイボックス内の高解像度のライトフィールドと、より大きな総FoVの周辺部分を覆い、より大きなアイボックスを通過する非ライトフィールド画像とを組み合わせることによって達成される。
【0007】
前述の画像投影システムは、観察者が見ている場所に関する視線追跡情報(アイトラッキング情報)を提供するように構成された視線追跡及び方向変換装置を備えてよい。視線追跡及び方向変換装置は、視線追跡情報に従って周辺投影像光ビーム及びライトフィールド画像を偏向するように構成してよい。
【0008】
本発明の例示的な実施形態は、説明に開示され、その中で図面によって例示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1a】
図1aは、一実施形態による中心窩入射光ビームを示す画像投影システムを示す。
【
図1b】
図1bは、一実施形態による1本の周辺入射光ビームを示す画像投影システムを示す。
【
図1c】
図1cは、一実施形態による2本の周辺入射光ビームを示す画像投影システムを示す。
【
図1d】
図1dは、一実施形態による2本の周辺入射光ビーム及び1本の中心窩入射光ビームを示す画像投影システムを示す。
【
図2a】
図2aは、一実施形態による導波路の側面図を示す。
【
図2b】
図2bは、一実施形態による導波路の正面図を示す。
【
図3】
図3は、一実施形態による構成される視野角(FoV)を表す。
【
図4】
図4は、別の実施形態による画像投影システムを表す。
【
図5a】
図5aは、基本的な説明のために瞳孔拡大要素のない視線追跡及び方向変換装置を備える画像投影システムを示す。
【
図5b】
図5bは、一実施形態による瞳孔拡大要素を備える画像投影システムを示す。
【
図6】
図6は、別の実施形態によるミラー偏向器、投影光学系、瞳孔膨張要素及びビーム分割器として機能する拡散器を使用して、別々のライトフィールド中心窩及び周辺像投影経路を有する画像投影システムを示す。
【
図7】
図7は、さらに別の実施形態による、ミラー偏向器及び導波路コンバイナを瞳孔拡大要素として使用することにより、別々のライトフィールド中心窩及び周辺像投影経路を有する画像投影システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1aから
図1dは、一実施形態に係る画像投影システムを示す。この画像投影システムは、入射光ビーム100a、100bの変調用に構成された光学光変調器20を照らす複数の入射光ビーム100a、100bを生成し、かつ入射光ビーム100a、100bを投影するピン光アレイ10を備える。光学要素32、70、40は、複数の変調光ビーム110a、110bを投影して第1ピン光平面30にピン光像31、39を形成してアイボックス領域121a、121bを投影軸線170に沿って画定する、複数の投影された画像光ビーム112a、112bを投影して第2ピン光像120(又は視点)を第2ピン光平面124に形成するように構成されている。
【0011】
画像投影システムは、観察者が、仮想現実及び複合現実の適用で着用するものである。画像投影システムは、観察者が着用したときに、アイボックス領域121a、121b及び出口瞳孔120が観察者の眼90内にあるように構成してよい。変調光ビーム110a、110bは、観察者の眼90の瞳孔130に向けて投影され、その結果、変調光ビーム110a、110bが網膜92に投影される。
【0012】
光学要素は、第1ピン光像光学要素70を備えてよい。第1ピン光像光学要素70は、各変調光ビーム110a、110bが第1ピン光平面30において瞳孔像31、39を形成し、かつ変調器像平面115において変調器像114a、114bを形成するように、複数の変調光ビーム110a、110bを投影するように構成されている。
【0013】
光学要素は、第2光学要素40をさらに備えてよい。第2光学要素40は、複数の変調光ビーム110a、110bと相互作用して、投影軸線170に沿ってアイボックス領域121a、121bを画定する複数の投影像光ビーム112a、112bを投影するように構成されている。第2光学要素40は、接眼部(アイピース)、湾曲半透明ミラーのような半反射型コンバイナ、ミラーアレイ又はホログラフィック要素のいずれか1つを備えてよい。第2光学要素40は、現実世界190からアイボックス領域121a、121bに向かって自然光を透過するように構成されたコンバイナを備えてよく、その結果、投影された仮想ライトフィールド及び自然光の両方が、コンバイナ40を介して、アイボックス領域121a、121b内に投影される。
【0014】
図1aで表される一観点では、ピン光アレイ10の中心窩ピン光サブアレイ14によって生成された複数の入射光ビームは、複数の中心窩入射光ビーム100aを備える。中心窩変調光ビーム100aのサブアンサンブルは、第1光学要素50を通過し、光学光変調器20を照らす。第1光学要素50は、導波路を備えてよい。導波路は、コリメートレンズ又は部分的コリメートレンズ、もしくはコリメートされた狭い照明ビームを受け入れ、アウトカップリング要素を介して拡大コリメートビームを出すインカップリング要素を持つ。第1ピン光像光学要素70は、複数の中心窩変調光ビーム110aを投影して第1ピン光平面30に中心窩瞳孔像31を形成する。そして一部の実施形態では、第1ピン光像光学要素70は、光学要素32とともに、中心窩変調器像114aを変調器像平面115に形成する。第2光学要素40は、中心窩変調光ビーム110aと相互作用し、複数の中心窩投影像光ビーム112aを投影して、投影軸線170に沿って中心窩アイボックス領域121aを画定する。
【0015】
図1b及び
図1cに示すように、入射光ビームを生成するピン光アレイ10は、複数の周辺入射光ビーム100bを生成する複数の周辺ピン光サブアレイ13をさらに備える(周辺ピン光13は、典型的には、中心窩ピン光14よりも高強度の照明光を提供する)。周辺入射光ビーム100bの1本を
図1bに示し、周辺入射光ビーム100bの2本を
図1cに示す。周辺入射光ビーム100bは、第1光学要素50を通過し、(周辺入射光ビーム100bが)変調されるところで光学光変調器20を照らす。第1ピン光像光学要素70は、複数の周辺変調光ビーム110bを投影する。周辺変調光ビーム110bは、第1ピン光平面30において周辺瞳孔像39を形成する。
【0016】
画像投影システムは、第1ピン光平面30にて偏向要素60をさらに備える。偏向要素60は、周辺変調光ビーム110bを前記投影軸線170に対して偏向するように構成されている。偏向要素60は、変調器像114bを、変調器像平面115に沿って空間的にずらして形成するようにさらに構成されている。
【0017】
偏向要素60は、プリズム又はオフセットレンズなどの任意の他の偏向光学要素を備えてよい。
【0018】
この画像投影システムは、出口瞳孔拡大装置36をさらに備える。この出口瞳孔拡大装置36は、周辺瞳孔像39を複製するように構成されている(周辺瞳孔像39は、出口瞳孔拡大装置36によって複製された瞳孔を表す)。複製された周辺瞳孔像39ごとに、出口瞳孔拡大装置36は、複数の瞳孔拡大ライトフィールド104を投影する。光学要素32及び第2光学要素40は、瞳孔拡大ライトフィールド104と相互作用し、複数の周辺投影像光ビーム112b(非ライトフィールド周辺像)を投影し、中心窩アイボックス領域121aよりも幅広い周辺アイボックス領域121bを画定する。
【0019】
画像投影システムは、第1ピン光平面30に位置するフーリエフィルタ34を備えてよい。フーリエフィルタ34は、光学光変調器20上で反射及び回折される変調光ビーム110a、110bから1つの回折成分を除く全てを除去するように構成してよい。
【0020】
1実施形態では、出口瞳孔拡大装置は、第1ピン光平面30に延在する導波路36を備える。導波路36は、周辺瞳孔像39を入力するように構成されたインカップリング要素35と、複数の瞳孔拡大ライトフィールド104を投影するように構成されたアウトカップリング要素37とを備える。
【0021】
図1dは、周辺入射光ビーム100bの2本及び入射ライトフィールドビーム100aの1本を示す、第1ピン光平面30にて導波路36を備える画像投影システムを表す。
【0022】
一観点では、インカップリング要素35は、回折格子を備える。周辺瞳孔像39を形成するコリメート画素ビーム103(
図2a参照)は、アウトカップリング要素37に向かって全反射により導波路36内を通っていく。アウトカップリング要素37は、別の回折格子を備えてよい。この別の回折格子は、内部反射した瞳孔像39が導波路36から結合され、複数の瞳孔拡大ライトフィールド104を投影するように複製される、複数の瞳孔拡大ライトフィールド104を投影するようにする。
【0023】
別の観点では、インカップリング要素35とアウトカップリング要素37の少なくとも一方は、ホログラフィック光学要素を備えてよい。図示されていない代替の観点では、インカップリング要素35とアウトカップリング要素37との少なくとも一方は、ミラーアレイ又は部分的に透明なミラー(ビーム分割器)の積み重ねたものを備えてよく、ここでは、コリメートされた画素ビーム103は、各ミラーの界面から部分的に反射するいくつかのミラーを通って進む。別の変形例では、インカップリング要素35及びアウトカップリング要素37は、回折格子、ホログラフィック光学要素、ミラーアレイまたは部分的に透明なミラーの積み重ねたもの、もしくはこれらの要素の組み合わせのいずれか1つを備えてよい。
【0024】
図2aは、一実施形態に係る導波路36の側面図を示す。
図2aの特定の例では、偏向要素60は、周辺瞳孔像39が導波路36に注入され得るように、周辺変調光ビーム110bを結合要素35に向かって偏向させる。
図2bは、黒丸で表される4つのインカップリング要素35を備える導波路36の正面図を示す。アウトカップリング要素37は、円盤状の導波路36の略全面を占める。
【0025】
インカップリング要素35は、インカップリング要素35内に注入された非コリメート周辺変調光ビーム110bをコリメートするように構成してよい。このようなインカップリング要素35は、傾斜回折格子、球面鏡又はコリメートホログラムのいずれかを備える。注入された周辺変調光ビーム110bは、導波路36を導かれて、アウトカップリング要素37との相互作用時に導波路36から徐々に出ていくコリメート画素光ビーム103を運ぶ。小さな周辺瞳孔像39を介して注入された周辺変調光ビーム110bは、アウトカップリング要素37を介して導波路36を出る。アウトカップリング要素37は、複数の瞳孔拡大ライトフィールド104が導波路36を出るように構成してよい。導波路36は、アウトカップリング要素37の種類及び構成に応じて、出口瞳孔拡大装置36の表面に連続的又は離散的に分布されている。
【0026】
各コリメートされた画素ビーム103は、瞳孔拡大ライトフィールド104の複製投影点から、同じ角度で(平行に)同時に出されてよい。したがって、画素は無限に輝くように見え、複数の投影点(又は投影瞳孔の1つの連続した大きな領域)を通過する。
【0027】
1実施形態では、導波路36は、導波路36の影響を受けずに中心窩変調光ビーム110を伝送するように構成された少なくとも1つの絞り開口部120aを備えてよく、その結果、変調光ビーム110は変調器像平面115において中心窩変調器像114aを形成する。
図2bの例では、導波路36は、白丸で表される32個の絞り開口部120aを備える。
【0028】
画像投影システムがフーリエフィルタ34を備える場合、後者は、1つ又は複数の絞り開口部120aを備えてよい。ここで、中心窩瞳孔像31のそれぞれは、導波路36に設けられた絞り開口部120aに一致する。また、フーリエフィルタ34に設けられた絞り開口部120aと一致するようにしてよい。
【0029】
別の実施形態では、画像投影システムは、シフト周辺変調器像114bを形成するような複数の瞳孔拡大
ライトフィールド104を集束するように構成された変調器結像レンズ32(
図1aから
図1d参照)を備える。
【0030】
図3は、視野角(FoV)の構成を表す。中央領域11には、開口部120aを通過して中心窩アイボックス領域121aを形成する中心窩変調器像114aが含まれている。4つの周辺領域12aから12dのそれぞれは、(非ライトフィールドの)シフト周辺変調器像114bを備え、周辺アイボックス領域121bを形成する。
【0031】
図4は、別の実施形態による画像投影システムを表し、ここでは、出口瞳孔拡大装置は、変調器像平面115に拡散要素38を備える。このような構成において、周辺入射光ビーム100bは、第1光学要素50を通過し、光学光変調器20を照らす。光学光変調器20は、周辺入射光ビーム100bが変調されるところである。第1ピン光像光学要素70は、複数の周辺変調光ビーム110bを投影する。周辺変調光ビーム110bは、第1ピン光平面30にて周辺瞳孔像39を形成する。偏向要素60は、前記周辺変調光ビーム110bを投影軸線170に対して偏向させ、変調器像平面115内で空間的にずらした、シフト周辺変調器像114bを形成するように構成されている。拡散要素38は、複数の瞳孔拡大ライトフィールド104を投影して、周辺変調光ビーム110bの各画素の角度発光範囲を拡大する。拡散要素38は、透過的又は反射的であり得る。拡散要素38は、照明時間が短い場合やデューティ比が小さい場合に像発光を延長するために蛍光拡散板にしてよい。拡散要素38は、エミッシブディスプレイ(自己発光ディスプレイ)によって置換可能でもある。
【0032】
眼窩における眼90の動きは、眼の瞳孔130(相当の光)が中心窩アイボックス領域121aを出て、像光が眼90に入らない状態を引き起こす場合がある。そのような場合、中心窩像光ビーム112a(投影画像のライトフィールド部分)によって覆われたFoV内の画像情報が失われることになる。この問題は、周辺アイボックス領域121bを通過する非ライトフィールド画像によるFoVのこの部分の一時的な充填によって低減可能であり、したがって、眼90が動いても失われない。その結果、中心窩像光ビーム112aを覆う画像の部分が常に存在する。この単純な解決策は、眼の瞳孔130がアイボックスのライトフィールド部分、すなわち中心窩像光ビーム112aの内側に位置するかどうかを識別する二値の視線追跡情報(アイトラッキング情報)を少なくとも必要とする。眼90は、中心窩アイボックス121aの外側でごく一部の時間しかとどまっていない。典型的には5%未満であり、毎回短期間しかとどまっていないので、この解決策は、ほとんどの使用事例にとって十分である。
【0033】
図5aに例示される実施形態では、画像投影システムは、視線追跡及び方向変換(方向変換)装置を備える。視線追跡及び方向変換装置は、観察者が見ている場所に関する視線追跡情報を提供し、視線追跡情報に従って周辺投影像光ビーム112bを偏向するように構成されている。
【0034】
視線追跡及び方向変換装置は、視線追跡情報が、観察者が中心窩アイボックス領域121の外側を見ていることを示している場合に、中心窩アイボックス領域121の外側に周辺投影像光ビーム112bを提供するようにさらに構成してよい。
【0035】
より詳細には、視線追跡及び方向変換装置は、眼90、特に瞳孔130の注視の位置及び方向を推定するように構成してよい。視線追跡及び方向変換装置は、さらに、ユーザの眼90と瞳孔130との少なくとも一方の視線の位置及び方向を推定するように構成してよい。
【0036】
一観点では、視線追跡及び方向変換装置は、視線追跡情報に従って移動可能であるミラー又はレンズを備えてよい。視線追跡情報は、可動ミラー又はレンズを制御して周辺投影像光ビーム112bの角度を調整する図示しない制御部に提供されてもよい。
【0037】
視線追跡及び方向変換装置は、
図5bに例示されるように出口瞳孔拡大
装置36を備える画像投影システムと組み合わせてよい。
【0038】
図6は、別の実施形態による画像投影システムを示していて、ここでは、出口瞳孔拡大
装置36は、中心窩及び周辺入射光ビーム100a、100bに平行な入射投影軸線160から外れて位置する軸外光学系150を備える。偏向要素60は、ミラーであり、周辺変調光ビーム110bを入射投影軸線160に略平行に延在する拡散要素38上に投影する軸外光学系150に向かって周辺変調光ビーム110bを偏向させる。拡散要素38は、入射投影軸線160と略直交する投影軸線170に沿って複数の瞳孔拡大ライトフィールド104を投影する。
【0039】
画像投影システムは、ビーム分割器140を備える。中心窩変調光ビーム110aは、第1ピン光平面30内の絞り開口部120aを通過し、ビーム分割器140に到達し、そこで投影軸線170に沿って反射され、ユーザの眼90に向かう。反射中心窩変調光ビーム110a及び瞳孔拡大ライトフィールド104は、入射投影軸線160に略平行に延在する第2光学要素40において結合される。本実施形態では、光学系150及び拡散要素38が1つの周辺像を広いFoVに展開するため、1つの周辺像を作成するピン光13のみを用いてよい。
【0040】
図7は、さらに別の実施形態による画像投影システムを示していて、ここで、出口瞳孔拡大
装置36は、導光器を備える。偏向要素60は、ミラーであり、単一の周辺変調光ビーム110bを結合要素35内の導光体に向けて偏向させる。導光体36は、単一の周辺変調光ビーム110bを導光し、導光体36に設けられたアウトカップリング要素37から瞳孔拡大ライトフィールド104を投影する。瞳孔拡大ライトフィールド104は、投影軸線170に沿って投影される。投影軸線170は、入射投影軸線160に対して30°から120°の間の角度をなしてよい。
【0041】
中心窩変調光ビーム110aは、第1ピン光平面30内の絞り開口部120aを通過して第2光学要素40に到達し、アウトカップリング要素37に略平行に延在する。中心窩変調光ビーム110aは、投影軸線170に沿って第2光学要素40に反射される。中心窩変調光ビーム110aは、瞳孔拡大ライトフィールド104と結合され、ユーザの眼90に到達する。
【符号の説明】
【0042】
10 ピン光アレイ
11 中央領域
12a、12b、12c、12d 周辺領域
13 周辺ピン光サブアレイ
14 中心窩ピン光サブアレイ
20 光学光変調器
30 第1ピン光平面
31 中心窩瞳孔像
32 変調器結像レンズ
34 フーリエフィルタ
35 インカップリング要素
36 出口瞳孔拡大装置(導波路)
37 アウトカップリング要素
38 拡散器
39 周辺瞳孔像
40 第2光学要素
50 第1光学要素
60 偏向要素
70 第1ピン光像光学要素
90 眼
92 網膜
100a 中心窩入射光ビーム
100b 周辺入射光ビーム
104 瞳孔拡大ライトフィールド
110a 中心窩変調光ビーム
110b 周辺変調光ビーム
112a 中心窩像光ビーム
112b 周辺像光ビーム
114a 中心窩変調器像
114b 周辺変調器像
115 変調器像平面
120 第2ピン光像、視点
120a 絞り開口部
121a 中心窩投影アイボックス領域
121b 周辺投影アイボックス領域
124 第2ピン光平面
130 瞳孔
140 ビーム分割器又は半透明ミラー
150 画像投影光学部材
160 入射投影軸線
170 投影軸線
190 現実世界