(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-18
(45)【発行日】2024-06-26
(54)【発明の名称】実体オブジェクトのシミュレーションと実体オブジェクトの測定データを比較するための方法、及び、装置、ならびに、実体オブジェクトの測定データの有限要素法表現を生成するための方法、及び、装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/23 20200101AFI20240619BHJP
G06F 111/10 20200101ALN20240619BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F111:10
(21)【出願番号】P 2022566182
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2021058871
(87)【国際公開番号】W WO2021219325
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-21
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500341779
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソート,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】デルゴッシュ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】フリッチ,イェンス
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0109463(US,A1)
【文献】特開2010-176573(JP,A)
【文献】特開2013-176929(JP,A)
【文献】特開2016-118870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
G06F 111/10
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シミュレーションの中で、実体オブジェクトの有限要素法表現の進展を制限するために、前記実体オブジェクトの有限要素法表現と相互作用するための仮想オブジェクトの有限要素法表現が、前記シミュレーションの時間ステップt
kに対して与えられる、前記実体オブジェクトの前記シミュレーションと、実験で得られた前記実体オブジェクトの測定データとを比較するための、コンピュータに実装された方法(100)であって、
前記シミュレーションの1つ又は複数の後続の時間ステップt
k+iに対して、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの前記測定データに基づいて
、時間ステップt
k+i-1における前記仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に対するk+i番目の修正データであって、前記仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に対応付けられたデータに対する前記時間ステップt
k+i-1から前記時間ステップt
k+iへの修正内容を表す前記k+i番目の修正データを決定するステップ(102)と、
前記時間ステップt
k+i-1における前記実体オブジェクトの有限要素法表現と、前記時間ステップt
k+i-1における前記仮想オブジェクトの有限要素法表現と、前記k+i番目の修正データとに基づいて、前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの有限要素法表現を決定するステップ(104)と、
前記仮想オブジェクトの有限要素法表現と前記実体オブジェクトの有限要素法表現との前記相互作用に関する情報を出力する(106)ステップと
を含む方法(100)。
【請求項2】
前記k+i番目の修正データを決定するステップ(102)は、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの有限要素法表現に対する推定値を決定するステップと、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの前記測定データを、前記推定値の節点に対応付けるステップと、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの前記測定データと、前
記推定値の節点に
対応付けられたデータとの間の乖離を決定するステップと、
前記推定値の節点の間の距離を決定するステップと、
前記推定値と、前記推定値の節点の間の前記距離とを用いて前記乖離を補間することにより、前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの仮想測定データを決定するステップと、
前記時間ステップt
k+iにおける前記仮想測定データと前記実体オブジェクトの前記測定データとに基づいて、前記k+i番目の修正データを決定するステップと
を含む請求項1に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項3】
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの前記測定データと前記仮想測定データとに基づいて、前記k+i番目の修正データを決定するステップは、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの前記測定データと前記仮想測定データとに基づいて、前記時間ステップt
k+iにおける前記実験の有限要素法表現を決定するステップと、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実験の有限要素法表現の節点の法線ベクトルを決定するステップと、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実験の有限要素法表現と前記実験の有限要素法表現の節点の前記法線ベクトルとに基づいて、前記k+i番目の修正データを決定するステップと
を含む請求項2に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項4】
前記時間ステップt
k+iにおける前記実験の有限要素法表現と前記実験の有限要素法表現の節点の前記法線ベクトルとに基づいて、前記k+i番目の修正データを決定するステップは、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの前記測定データの測定の不確かさに基づいて、前記仮想測定データの不確かさを決定するステップと、
前記時間ステップt
k+iにおける前記仮想測定データの不確かさと前記実体オブジェクトの前記測定データの測定の不確かさとを、前記実体オブジェクトの前記測定データと同じ種類のスカラー値に変換するための所定のメトリックを用い、前記時間ステップt
k+iにおける前記実験の有限要素法表現と前記実験の有限要素法表現の節点の前記法線ベクトルとに基づいて、前記時間ステップt
k+iにおける前記仮想オブジェクトの補助有限要素法表現を決定するステップと、
前記時間ステップt
k+iにおける前記仮想オブジェクトの前記補助有限要素法表現と前記時間ステップt
k+i-1における前記仮想オブジェクトの有限要素法表現との比較に基づいて、前記k+i番目の修正データを決定するステップと
を含む請求項3に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項5】
前記仮想オブジェクトは、前記シミュレーションの中で、前記実体オブジェクトの有限要素法表現の少なくとも一部を覆う、少なくとも1つの面であり、
前記実体オブジェクトの有限要素法表現は、前記少なくとも1つの面を貫通しないように前記シミュレーションの中で制限される
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項6】
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの前記測定データと前記仮想測定データとに基づいて前記k+i番目の修正データを決定するステップは、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの前記測定データと前記仮想測定データとに基づいて、前記時間ステップt
k+iにおける前記実験の有限要素法表現を決定するステップと、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実験の有限要素法表現と前記時間ステップt
k+i-1における前記仮想オブジェクトの有限要素法表現との比較に基づいて、前記k+i番目の修正データを決定するステップと
を含む請求項2に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項7】
前記仮想オブジェクトは、前記時間ステップt
kにおける前記実験を仮想的に再現したものであり、
前記仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点は、前記実体オブジェクトの有限要素法表現の対応する節点に結合要素を介して結合される
請求項1、請求項2、又は、請求項6のいずれか1項に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項8】
前記結合要素が、前記結合された節点に割り当てられたそれぞれのデータ間の差に基づいて変化する結合係数を持ち、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの前記測定データの測定の不確かさに基づいて、前記仮想測定データの不確かさを決定するステップと、
前記測定データの前記測定の不確かさと、前記仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられ
たデータの基となる前記仮想測定データの前記不確かさとに基づいて、前記結合係数を決定するステップと
を更に含む
請求項2を引用する請求項7に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項9】
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの有限要素法表現の前記推定値を決定するステップは、
前記仮想オブジェクトの有限要素法表現を省略した場合の前記時間ステップt
k+i-1から前記時間ステップt
k+iへの前記シミュレーションにおける、前記実体オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータの修正内容を表すk+i番目の補助修正データと、前記時間ステップt
k+i-1における前記実体オブジェクトの有限要素法表現とを結合するステップ
を含む請求項
2記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項10】
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの有限要素法表現の前記推定値を決定するステップは、
前記仮想オブジェクトの有限要素法表現が省略された場合の前記時間ステップt
k+i-1から前記時間ステップt
k+iへの前記シミュレーションにおける、前記実体オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータの修正内容を表すk+i番目の補助修正データと、前記時間ステップt
k+i-1における前記実験の有限要素法表現とを結合するステップ
を含む請求項3、請求項4、又は、請求項6のいずれか1項に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項11】
前記実体オブジェクトの前記測定データは、前記実体オブジェクトの測定で得られた位置を示す位置データであり、
前記仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられ
たデータは、位置データである、
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項12】
前記実体オブジェクトの前記測定データは、少なくとも2つの異なる測定システムによって生成される、
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項13】
前記相互作用に関する情報を出力するステップ(106)は、
前記仮想オブジェクトの有限要素法表現と前記実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用の2つ以上のレベルを表すカラーコードに従って、前記仮想オブジェクトの有限要素法表現と前記実体オブジェクトの有限要素法表現の一方を着色するステップ、
及び/又は、
前記仮想オブジェクトの有限要素法表現と前記実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用の種類、及び/又は、前記相互作用のレベルを表すスカラーパラメータを決定するステップ
を含む請求項1~請求項12のいずれか1項に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項14】
前記実体オブジェクトの前記シミュレーションが、前記実体オブジェクトの複数のシミュレーションのうちの1つであり、
前記仮想オブジェクトの有限要素法表現と前記シミュレーションのために決定された前記実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報を、前記仮想オブジェクトの有限要素法表現と前記複数のシミュレーションのうちの他のシミュレーションのために決定された前記実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報と比較し、比較結果を得るステップと、
前記比較結果に基づいて、前記複数のシミュレーションのうち、前記実体オブジェクトの前記測定データに最もよく一致する前記シミュレーションを決定するステップと
を含む請求項13に記載のコンピュータに実装された方法(100)。
【請求項15】
シミュレーションの中で、実体オブジェクトの有限要素法表現の進展を制限するために、前記実体オブジェクトの有限要素法表現と相互作用するための仮想オブジェクトの有限要素法表現が、前記シミュレーションの時間ステップt
kに対して与えられる、前記実体オブジェクトの前記シミュレーションと
、実験から得られる前記実体オブジェクトの測定データとを比較するための装置(600)であって、
前記実体オブジェクトの前記測定データを受け取るように構成された入力インターフェース(610)と、
処理回路(620)と
を備え
、
前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの前記測定データに基づいて
、時間ステップt
k+i-1における前記仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に対するk+i番目の修正データであって、前記仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータに対する時間ステップt
k+i-1から時間ステップt
k+iへの修正内容を表す前記k+i番目の修正データを決定するステップと、
前記時間ステップt
k+i-1における前記実体オブジェクトの有限要素法表現と、前記時間ステップt
k+i-1における前記仮想オブジェクトの有限要素法表現と、前記k+i番目の修正データとに基づいて、前記時間ステップt
k+iにおける前記実体オブジェクトの有限要素法表現を決定するステップと、
前記仮想オブジェクトの有限要素法表現と前記実体オブジェクトの有限要素法表現との前記相互作用に関する情報を出力するステップと
を、前記シミュレーションの1つ又は複数の後続の時間ステップt
k+iにおいて実行するように構成される
装置(600)。
【請求項16】
プロセッサ、又は、プログラマブルハードウェア上で実行された場合に、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するプログラムを格納した非一時的な機械可読媒体。
【請求項17】
プロセッサ、又は、プログラマブルハードウェア上で実行された場合に、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の方法を実行するためのプログラムコードを有するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シミュレーションに関する。特に、一例としては、実体オブジェクトのシミュレーションと、実験で得られた実体オブジェクトの測定データとを比較するための、コンピュータに実装された方法と装置に関するものである。さらなる例としては、実験で得られた実体オブジェクトの測定データの有限要素法表現を生成するための、コンピュータに実装された方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シミュレーションは、製品開発のためのさまざまな技術分野で使用される。例えば、車両開発の仮想化にもシミュレーションが使用される。信頼性の高い仮想車両開発には、検証されたシミュレーション手法と、高い予測力を持つシミュレーションモデルが必要である。デジタル化の進展に伴い、実験データセットと仮想データセットを統合する能力がますます重要になっている。
【0003】
一般的に、車両開発中の実験(衝突実験など)では、複数の検出システムや最先端の技術による検出システムがデータ収集に使用されることが非常に多い。このようにして得られた計測データは、空間的、及び、時間的な分解能が様々に異なる場合がある。シミュレーション手法やシミュレーションモデルの検証に利用できるように測定データを処理することは、全面的に仮想化された車両開発を可能にするために重要な作業である。また、計測データとシミュレーション結果の不一致を説明できる、実体に基づく、解釈可能なデータセットを生成することは、その不一致の潜在的な原因を特定するために重要な要素である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のことから、実体オブジェクトのシミュレーションと実体オブジェクトを実験で測定したデータの比較を、より高度なものにすることへの要求があるだろう。更に、実体オブジェクトの測定データの処理を、より高度なものにすることへの要求があるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立請求項に従ったコンピュータに実装された方法と装置とにより解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0006】
第1の態様によれば、本開示は、実体オブジェクトのシミュレーションを実験で得られた実体オブジェクトの測定データと比較するための、コンピュータに実装された方法を提供する。シミュレーション内において、実体オブジェクトの有限要素法表現の進展を制限するために、実体オブジェクトの有限要素法表現と相互作用する仮想オブジェクトの有限要素法表現が、シミュレーションの時間ステップtkに対して与えられる。この方法は、シミュレーションの1つ又は複数の後続の時間ステップtk+iに対して、時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に対するk+i番目の修正データを、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データに基づいて決定するステップを含む。k+i番目の修正データは、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータの、時間ステップtk+i-1から時間ステップtk+iへの修正内容を表す。更に、本方法は、シミュレーションの1つ又は複数の後続の時間ステップtk+iに対して、時間ステップtk+i-1における実体オブジェクトの有限要素法表現、時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現、及び、k+i番目の修正データに基づいて、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現を決定するステップを含む。この方法は、更に、仮想オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報を出力するステップを含む。
【0007】
第2の態様によれば、本開示は、実体オブジェクトのシミュレーションを、実験から得られる実体オブジェクトの測定データと比較するための装置を提供する。シミュレーションの中で、実体オブジェクトの有限要素法表現の進展を制限するために、実体オブジェクトの有限要素法表現と相互作用するための仮想オブジェクトの有限要素法表現が、シミュレーションの時間ステップtkに対して与えられる。本装置は、実体オブジェクトの測定データを受け取るように構成された入力インターフェースを備える。更に、本装置は、時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に対するk+i番目の修正データであって、時間ステップtk+i-1から時間ステップtk+iへの仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータに対する修正内容を表すk+i番目の修正データを、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データに基づいて決定するステップと、時間ステップtk+i-1における実体オブジェクトの有限要素法表現と時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現とk+i番目の修正データとに基づいて、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現を決定するステップと、仮想オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現との相互関係に関する情報を出力するステップとを、シミュレーションの1つ又は複数の後続の時間ステップtk+iにおいて実行するように構成された処理回路を備える。
【0008】
本開示の第1の態様、及び、第2の態様による実施形態は、シミュレーションと実験の測定データとの比較を改善することを可能にしてよい。
【0009】
第3の態様によれば、本開示は、実験で得られた実体オブジェクトの測定データの有限要素法表現を生成するためのコンピュータに実装された方法を提供する。本方法は、実体オブジェクトの測定データを、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てることを含む。更に、本方法は、実体オブジェクトの測定データと、実体オブジェクトの有限要素法表現の対応付けられた節点に割り当てられたデータとの間の乖離を決定することを含む。本方法は、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点間の距離を決定することを含む。更に、本方法は、実体オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現の節点間の距離とに基づいて乖離を補間することにより、実体オブジェクトの仮想測定データを決定することを含む。更に、本方法は、実体オブジェクトの測定データと実体オブジェクトの仮想測定データとに基づいて、測定データの有限要素法表現を決定することを含む。
【0010】
第4の態様によれば、本開示は、実験で得られた実体オブジェクトの測定データの有限要素法表現を生成するための装置を提供する。本装置は、実体オブジェクトの測定データを受け取るように構成された入力インターフェースを備える。更に、本装置は、実体オブジェクトの測定データを実体オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てるように構成された処理回路を備える。処理回路は、実体オブジェクトの測定データと、実体オブジェクトの有限要素法表現の対応付けられた節点に割り当てられたデータとの間の乖離を決定するように構成される。更に、処理回路は、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点間の距離を決定するように構成される。処理回路は、実体オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現の節点間の距離とに基づいて乖離を補間することによって、実体オブジェクトの仮想測定データを決定するように構成される。更に、処理回路は、実体オブジェクトの測定データと実体オブジェクトの仮想測定データとに基づいて、測定データの有限要素法表現を決定するように構成される。
【0011】
本開示の第3の態様、及び、第4の態様による例は、実体オブジェクトの測定データの改良された処理を可能にしてよい。
【0012】
第5の態様によれば、本開示は、プログラムがプロセッサ、又は、プログラマブルハードウェア上で実行された場合に、本提案の技術による方法の1つを実行するためのプログラムコードを有するプログラムをその上に格納した非一時的な機械可読媒体を提供する。
【0013】
第5の態様によれば、本開示は、プログラムがプロセッサ、又は、プログラマブルハードウェア上で実行された場合に、本提案の技術による方法の1つを実行するためのプログラムコードを有するプログラムを提供する。
【0014】
装置、及び/又は、方法のいくつかの例を、例示のためだけに、添付の図を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実体オブジェクトのシミュレーションを、実験で得られた実体オブジェクトの測定データと比較するためのコンピュータに実装された方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】実験で得られた実体オブジェクトの測定データの有限要素法表現を生成するための、コンピュータに実装された方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る技術による方法の1つを実行するための装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、いくつかの実施形態が図示されている添付の図面を参照して、様々な実施形態をより詳細に説明する。図の中で、線の太さ、層、及び/又は、領域は、明確化のために誇張されている場合がある。
【0017】
従って、さらなる実施形態は様々な変更、及び、代替の形態が可能ではあるが、そのいくつかの特定の実施形態が、図に示され、その後詳細に説明されるであろう。しかしながら、この詳細な説明は、更なる実施形態を、説明した特定の形態に限定するものではない。さらなる実施形態は、本開示の範囲内に入るすべての変更、等価物、及び、代替物をカバーしてよい。図の説明を通して、同一、又は、類似の符号は、同一、又は、類似の要素を指し、それらは、同一、又は、類似の機能を与えるものであり、それぞれを比較したとき、同一、又は、修正された形態で実装されてよい。
【0018】
ある要素が他の要素に「接続」、又は、「結合」されていると記述される場合、要素は直接接続されても、1つ又は複数の介在要素を介して結合されてもよいことが理解されるであろう。2つの要素AとBが「又は」を用いて組み合わされている場合、これは、明示的、又は、暗黙的に別の意味に定義されていない限り、Aのみ、Bのみ、また、AとBなど、すべての可能な組み合わせを開示するものと理解されたい。同じ組み合わせの代替的な表現は、「A及びBの少なくとも一方」、又は、「A、及び/又は、B」である。2つ以上の要素の組み合わせについても同じ解釈を準用する。
【0019】
特定の実施形態を説明する目的のために本明細書で使用される用語は、さらなる実施形態を限定することを意図しない。単一の要素のみを使用することが必須であると明示的、又は、暗黙的に定義されていないときにはいつでも、さらなる実施例では、複数の要素を使用して同じ機能を実装してもよい。同様に、ある機能が複数の要素を用いて実装されると説明される場合、さらなる実施例では、単一の要素、又は、処理実施体を用いて同じ機能を実装してもよい。用語「~からなる」、「~からなり」、「含む」、及び/又は、「含んで」は、使用されたとき、述べられた特徴、数、ステップ、操作、プロセス、行為、要素、及び/又は、構成要素の存在を明示するが、1つ又は複数の他の特徴、数、ステップ、操作、プロセス、行為、要素、構成要素、及び/又は、それらの任意の集合の存在、又は、追加を排除しないことを更に理解されたい。
【0020】
特に他の意味に定義されない限り、すべての用語(技術用語、及び、科学用語を含む)は、本明細書において、実施形態が属する技術分野の通常の意味で使用される。
【0021】
図1は、実体オブジェクトのシミュレーションと実験で得られた実体オブジェクトの測定データとを比較するためにコンピュータに実装された方法100の一例を示すフローチャートである。実体オブジェクトのシミュレーションは、実験における実体オブジェクトの経時的な動作、又は、挙動を、近似的に予測するものである。すなわち、シミュレーションは、一連の時間ステップで実験における実体オブジェクトの動作や挙動を近似的に予測する。実体オブジェクトの動作や挙動を予測するために、実体オブジェクトを特徴付ける1つ又は複数の着目値の経時的変化は、シミュレーションによって予測される。実体オブジェクトは、実世界に物理的に存在する任意のオブジェクトであってよい。例えば、実体オブジェクトのシミュレーションは、実体オブジェクトの構造的挙動のシミュレーションであってもよいし、そのオブジェクトを通して流れる熱流、電圧、又は、電流のシミュレーションであってもよい。実体オブジェクトのシミュレーションは、例えば、車両(自動車)、又は、航空機などの実体オブジェクトの衝突時の挙動のシミュレーションであってよい。
【0022】
実験における実体オブジェクトの、おおよその動作や挙動を経時的に予測するために、シミュレーションは、実体オブジェクトの有限要素法表現を使用し、その有限要素法表現は、シミュレーションの基となる(例えば、数学的、又は、物理的)モデルや使用される境界条件に基づいて経時的に進展し(修正を受け)てよい。
【0023】
更に、シミュレーションの時間ステップtk(kは整数≧0)に対して、仮想オブジェクトの有限要素法表現が与えられる。仮想オブジェクトは、実験の中には存在しない仮定上のオブジェクトである。仮想オブジェクトの有限要素法表現は、シミュレーションにおける実体オブジェクトの有限要素法表現の経時的な進展(修正)を制限(限定、制約)するために、実体オブジェクトの有限要素法表現と相互作用させるためにある。シミュレーションの時間ステップtkは、シミュレーションの初期時間ステップt0だけでなく、シミュレーションの後続の(より遅い)時間ステップなど、シミュレーションの任意の時間ステップであってよい。時間ステップtkにおける仮想オブジェクトの有限要素法表現は、(例えば、排他的に)ユーザが生成したもの、及び/又は、時間ステップtkにおける実体オブジェクトの測定データに基づくものであってよい。
【0024】
シミュレーションの時間ステップtkに続く1つ又は複数の後続の時間ステップtk+i(iは整数>0)に対して、方法100は、時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に対するk+i番目の修正データ(すなわち時間ステップtk+iの修正データ)を決定するステップ102を含む。k+i番目の修正データは、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの計測データに基づいて決定される。k+i番目の修正データは、シミュレーションの中で時間ステップtk+i-1から時間ステップtk+iへ進むときに、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータの修正内容を表す。例えば、k+1番目の修正データは、シミュレーションの中で時間ステップtkから時間ステップtk+1へ進むときに、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータの修正内容を表す。
【0025】
仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられるデータは、それぞれの節点における仮想オブジェクトを特徴付けるデータである。例えば、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられるデータは、シミュレーションの座標系における仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点の位置を示す位置データであってよい。しかし、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられるデータは、他の種類のデータであってもよい。例えば、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられるデータは、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点の位置における(例えば最大、又は、最小の)熱、温度、電圧、又は、電流であってよい。
【0026】
k+i番目の修正データは、仮想オブジェクトの有限要素法表現を、実験で得られた測定データに適合させてよい。例えば、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータが位置データである場合、k+i番目の修正データは、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられた位置データを修正するための修正軌跡であってよい。
【0027】
更に、シミュレーションの1つ又は複数の後続の時間ステップtk+iに対して、方法100は、時間ステップtk+i-1における実体オブジェクトの有限要素法表現と時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現とk+i番目の修正データとに基づいて、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現を決定するステップ104を含む。時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現とk+i番目の修正データとに基づいて、時間ステップtk+iにおける仮想オブジェクトの有限要素法表現が得られてよい。k+i番目の修正データは、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データに基づいているので、時間ステップtk+iにおいて得られた仮想オブジェクトの有限要素法表現は、実体オブジェクトの測定データが計算に入れられている。従って、実体オブジェクトの有限要素法表現が時間ステップtk+i-1から時間ステップtk+iへ進展するとき、実体オブジェクトの有限要素法表現の進展は、実体オブジェクトの測定データに基づいて制限される。すなわち、実体オブジェクトの有限要素法表現の進展は、実験で観測された実体オブジェクトの挙動に制限される。
【0028】
シミュレーションの1つ又は複数の後続の時間ステップtk+iに対して、方法100は更に、仮想オブジェクトの有限要素法表現の、実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報を出力するステップ106を含む。仮想オブジェクトの有限要素法表現は実体オブジェクトの測定データに基づいているので、仮想オブジェクトの有限要素法表現の、実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用は、実体オブジェクトの有限要素法表現の、実験で観測された実体オブジェクトの挙動との乖離を表す指標となる。すなわち、仮想オブジェクトの有限要素法表現の、実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用は、シミュレーションの品質、有効性、及び/又は、予測力を表す尺度である。
【0029】
従って、方法100は、実験観測値とシミュレーションとを自動的に比較することを可能にしてよい。方法100は、更に、シミュレーションの実験結果に対する乖離に関する情報を提供することを可能にしてよく、この情報は、シミュレーションの実験結果に対する乖離の理由を特定するために使用されてよい。従って、方法100は、品質、有効性、及び/又は、予測力の観点からシミュレーションを改善することを可能にする情報を提供することを可能にしてよい。
【0030】
上に示したように、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータは、シミュレーションの座標系における仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点の位置を示す位置データであってよい。同様に、実体オブジェクトの測定データは、実験の測定で得られた実体オブジェクトの位置を示す位置データであってよい。従って、仮想オブジェクトの有限要素法表現が実体オブジェクトの実験で観測された挙動を表すように、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点の位置は、実験で測定された実体オブジェクトの位置に(実質的に)合うように調整されてよい。例えば、実体オブジェクトのシミュレーションが実体オブジェクトの衝突挙動のシミュレーションである場合、実体オブジェクトの測定データは、衝突実験で測定された実体オブジェクトの位置を表す位置データであってよい。従って、方法100は、実体オブジェクトの衝突挙動のシミュレーションを、衝突実験の中で実験的に観測された実体オブジェクトの挙動と比較することを可能にしてよい。衝突実験の測定で得られた位置データに基づくk+i番目の修正データに基づいて仮想オブジェクトの有限要素法表現が修正されることにより、衝突挙動のシミュレーションの中の実体オブジェクトの有限要素法表現の進展は、実体オブジェクトの実験で観測された挙動に制限されてよい。
【0031】
実体オブジェクトの測定データは、1つ又は複数の測定(検出器)システムのデータから構成されてよい。単一の測定システムで取得される測定データは、限定的(例えば、空間的、又は、時間的に不完全)であり、実験における実体オブジェクトの挙動を完全に表現できない場合がある。従って、同じ、又は、異なる測定技術(例えば、光学的2次元、又は、3次元画像化、及び、X線画像化)を使用する複数の測定システムのデータを組み合わせることが有用な場合がある。また、複数の測定システムから組み合わされたデータでも限定的(例えば、空間的、又は、時間的に不完全)な場合があることも理解されたい。従って、方法100で使用される実体オブジェクトの測定データは、少なくとも2つの測定システム(例えば、異なる種類の測定システム、又は、同じ種類の測定システム)によって生成されてよい。
【0032】
実体オブジェクトの有限要素法表現の進展を制限するために使用される仮想オブジェクトは、様々な形状、及び/又は、構造を表してよい。
図2、及び、
図3に、仮想オブジェクトの2つの例を示す。
【0033】
図2は、実体オブジェクトの有限要素法表現210を仮想オブジェクトの有限要素法表現と共に示す図である。
図2の例では、仮想オブジェクトは、シミュレーションの中で、実体オブジェクトの有限要素法表現210の一部を覆う2つの面で構成される。実体オブジェクトの有限要素法表現210は、シミュレーションの中で、2つの覆い面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現を貫通しないように制限される。
【0034】
上述したように、2つの覆い面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現は、実験で得られた計測データに基づく。例えば、2つの覆い面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点の位置は、実験の測定で得られた実体オブジェクトの位置に基づいてよい。従って、シミュレーションの中で、実体オブジェクトの有限要素法表現210の進展は、実質的に実験の測定で得られた実体オブジェクトの位置に制限されてよい。すなわち、シミュレーションの中で、2つの覆い面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現は、実体オブジェクトの有限要素法表現210の動きの自由度を制限してよい。
【0035】
実体オブジェクトの有限要素法表現210と、2つの覆い面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現との相互作用は、様々な態様で表わされてよい。例えば、2つの覆い面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現、及び、実体オブジェクトの有限要素法表現210の一方は、実体オブジェクトの有限要素法表現210と、2つの覆い面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現との2つ以上のレベルの相互作用を表すカラーコードに従って着色されてよい。すなわち、実体オブジェクトの有限要素法表現210と、2つの被覆面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現との相互作用が、画像的に表わされてよい。
【0036】
他の例では、実体オブジェクトの有限要素法表現210と、2つの覆い面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現との相互作用の種類、及び/又は、レベルを表すスカラーパラメータが決定されてよい。相互作用の種類は、例えば、空間的相互作用の種類(例えば、点状、又は、範囲を持つ)、又は、時間的相互作用の種類(例えば、短期的、又は、長期的)を表してよい。例えば、スカラーパラメータは、実体オブジェクトの有限要素法表現210と、2つの覆い面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現との間の、例えば、接触力などの反力を表してよい。同様に、上述したカラーコードによる色分けは、例えば、実体オブジェクトの有限要素法表現210と、2つの覆い面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現との間の接触力などの反力を、空間的な解像度を持たせて画像的に表してよい。他の例では、スカラーパラメータは、力の総和、又は、インパルス伝達の総和などの総和量を示してよい。スカラーパラメータは、空間的、及び/又は、時間的な解像度を持ってよい。いくつかの例では、スカラーパラメータは、空間的、あるいは、時間的な解像度を持っていなくてもよい。
【0037】
図2に図示された2つの面は、単に例示に過ぎないことを理解されたい。他の例では、仮想オブジェクトは、2つの面より少なくても、あるいは、多くてもよい。更に、1つ又は複数の面は、シミュレーションの中で実体オブジェクトの有限要素法表現を全て覆っていてもよい。
【0038】
更に
図2には、実世界における実験の境界条件を説明するために、剛体の有限要素法表現230が示されている。
図2の例では、実験は、剛体が実体オブジェクトに衝突する衝突実験である。従って、このシミュレーションは、実体オブジェクトの挙動を予測するための衝突挙動のシミュレーションである。2つの覆い面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現を用いることで、実体オブジェクトの有限要素法表現210の進展を、実質的に衝突実験における実体オブジェクトの計測された挙動に制限してよい。
【0039】
図3は、他の仮想オブジェクトを示す。
図3の例では、仮想オブジェクトは、実験を仮想的に再現したものである。すなわち、仮想オブジェクトの有限要素法表現320は、実体オブジェクトの測定データに基づいている。特に、仮想オブジェクトの有限要素法表現320の節点に割り当てられたデータ(例えば、節点の位置を示す位置データ)は、実体オブジェクトの計測データから導出されたものである。
【0040】
図3は、仮想オブジェクトの有限要素法表現320と実体オブジェクトの有限要素法表現310とを、3つの時間ステップt
0、t
1、t
2に対して表した図である。最初の時間ステップt
0は、上述した、方法100を一般化して説明する場合の時間ステップt
kに対する一例である。最初の時間ステップt
0では、実体オブジェクトの有限要素法表現310は、仮想オブジェクトの有限要素法表現320に一致する(同一となる)。
【0041】
仮想オブジェクトの有限要素法表現320の節点は、実体オブジェクトの有限要素法表現310の対応する節点に結合要素330を介して結合される。実体オブジェクトの有限要素法表現310が仮想オブジェクトの有限要素法表現320に一致する(同一となる)ため、最初の時間ステップt0では結合要素330は示されていない。
【0042】
結合要素330は、結合された各節点に割り当てられたそれぞれのデータ間の差異に基づいて変化する結合係数を持つ。すなわち、結合係数と、結合された各節点に割り当てられたそれぞれのデータ間の差との間には、関数的関係が存在する。結合係数は、例えば、線形、非線形、等方性、異方性、又は、それらの組み合わせであってよい。すなわち、実体オブジェクトの有限要素法表現310の節点Bと仮想オブジェクトの有限要素法表現320の節点Cとを結合する結合要素Aは、結合された節点B,Cに割り当てられたそれぞれのデータ間の差に基づいて変化する結合係数を持つ。例えば、実体オブジェクトの有限要素法表現310及び仮想オブジェクトの有限要素法表現320の節点に割り当てられたデータが位置データである場合、結合要素Aは、結合された節点B,Cに割り当てられた位置データ間の差に基づいて変化する結合係数を持ってよい。この例では、結合要素330は、実体オブジェクトの有限要素法表現310の進展を、実質的に衝突実験における実体オブジェクトの測定された挙動に制限するために、実体オブジェクトの有限要素法表現310及び仮想オブジェクトの有限要素法表現320の対応する節点を結合する仮想的な(例えば非線形の)バネ結合のように働く。
【0043】
例えば、結合要素330は、実体オブジェクトの有限要素法表現310及び仮想オブジェクトの有限要素法表現320の結合された節点に割り当てられた位置データの間のそれぞれの差に基づいて(例えば、連続的に)増加、又は、減少する力を実体オブジェクトの有限要素法表現310の節点に加えてよい。
【0044】
結合係数は、例えば、仮想オブジェクトの有限要素法表現320の節点に割り当てられたデータの基となる測定データの測定の不確かさに基づいて決定されてよい。従って、結合係数は、測定の不確かさに関連してよい。例えば、実体オブジェクトの有限要素法表現310及び、仮想オブジェクトの有限要素法表現320において、結合された節点B,Cに割り当てられた位置データの間の差が同じであっても、仮想オブジェクトの有限要素法表現320の節点Cに割り当てられたデータの基となる測定データが高い測定の不確かさを示す場合、結合要素Aの結合係数は小さくてもよく、一方、仮想オブジェクトの有限要素法表現320の節点Cに割り当てられたデータの基となる測定データが低い測定の不確かさを示す場合、結合要素Aの結合係数は大きくてよい。従って、測定データの測定の不確かさは、実体オブジェクトの有限要素法表現310の進展を制限するために計算に入れられてよい。
【0045】
結合要素330は、時間ステップt0に後続する時間ステップt1,t2に対して図示されている。時間ステップt0から時間ステップt1へ進行するとき、時間ステップt0における仮想オブジェクトの有限要素法表現320は、時間ステップt1における測定データから得られた第1の修正データ(例えば、第1の修正軌跡)に基づいて修正される。実体オブジェクトの有限要素法表現310は、(例えば、有限要素シミュレーションの1つ又は複数の境界条件の他に)仮想オブジェクトの有限要素法表現320への結合要素330を介した結合を計算に入れてシミュレーションにおいて進展する。時間ステップt1では、実体オブジェクトの有限要素法表現310は、仮想オブジェクトの有限要素法表現320とは、もはや一致しなくなる。すなわち、実体オブジェクトのシミュレーションは、時間ステップt1では、測定データからわずかに乖離する。
【0046】
同様に、時間ステップt1から時間ステップt2へ進行するとき、時間ステップt1における仮想オブジェクトの有限要素法表現320は、時間ステップt2における測定データから得られた第2の修正データ(例えば第2の修正軌跡)に基づき修正される。実体オブジェクトの有限要素法表現310は、(例えば、有限要素シミュレーションの1つ又は複数の境界条件の他に)仮想オブジェクトの有限要素法表現320への結合要素330を介した結合を計算に入れてシミュレーションにおいて進展する。時間ステップt1の場合と同様に、実体オブジェクトの有限要素法表現310は、時間ステップt2における仮想オブジェクトの有限要素法表現320からわずかに乖離する。
【0047】
2つの被覆面220-1,220-2からなる仮想オブジェクトの有限要素法表現に対して
図2を引用して上述したことと同様に、実体オブジェクトの有限要素法表現310と仮想オブジェクトの有限要素法表現320との、結合要素330を介した相互作用を、様々な様式で表示してもよい。例えば、実体オブジェクトの有限要素法表現310及び仮想オブジェクトの有限要素法表現320の一方は、実体オブジェクトの有限要素法表現310と仮想オブジェクトの有限要素法表現320との結合要素330を介した、2つ以上のレベルの相互作用を表すカラーコードに従って着色されてよい。他の例では、実体オブジェクトの有限要素法表現310と仮想オブジェクトの有限要素法表現320との、結合要素330を介した相互作用の種類、及び/又は、レベルを表すスカラーパラメータが決定されてよい。
【0048】
図2と
図3に示された仮想オブジェクトは、ある時間ステップから他の時間ステップに進展するときに、実体オブジェクトの有限要素法表現310の解が取り得る範囲(以下、「解回廊」)を制限することを可能にしてよい。本実施形態に係る技術は、
図2と
図3に示された特定の仮想オブジェクトに限定されるものではなく、他の仮想オブジェクトを使用してもよいことを理解されたい。
【0049】
図1に戻って、k+i番目の修正データを決定するステップ102について、以下で更に詳細に説明する。
【0050】
まず、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現の推定値が決定される。実体オブジェクトの有限要素法表現の推定値は、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現の近似値である。
【0051】
その後、実体オブジェクトの時間ステップtk+iにおける測定データは、対応する、推定値の節点に対応付けられる。すなわち、実体オブジェクトの時間ステップtk+iにおける測定データは、推定値の節点に割り当てられる。例えば、実験で測定値を得る各測定位置は、それぞれの推定値の節点に対応付けられてよい。
【0052】
更に、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データと、時間ステップtk+iにおいて、対応付けられた推定値の節点に割り当てられたデータとの間の乖離を求める。時間ステップtk+iにおける、対応付けられた推定値の節点に割り当てられたデータは、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータ(例えば、位置データ)と同じ種類のデータである。すなわち、実体オブジェクトの有限要素法表現の推定データと、関連する実験の測定値との間の乖離が、時間ステップtk+iに対して決定される。
【0053】
更に、時間ステップtk+iにおける、実体オブジェクトの推定値の節点の間の距離が決定される。例えば、推定値の節点の間の距離は、ユークリッド距離、又は、測地線距離(オブジェクトの幾何学的形状に沿った最短距離)であってよい。しかし、他の種類の距離を使用してもよいことを理解されたい。
【0054】
この乖離と、推定値の節点の間の距離は、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの仮想測定データを生成するために使用される。上述したように、例えば、測定システムによって、分解能、及び/又は、実体オブジェクトの観測可能な部分が限定される場合があるため、実験で得られる、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データは、不完全な場合がある。従って、仮想測定データを生成することによって、測定されたデータの補完、又は、補足を行ってもよい。時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現の推定値と、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現の推定値の節点の間の距離とを用いて、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データと、時間ステップtk+iにおける対応付けられた推定値の節点に割り当てられたデータとの間の、以前に決定した乖離を補間することにより、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの仮想測定データが決定される。すなわち、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データと、時間ステップtk+iにおける対応付けられた推定値の節点に割り当てられたデータとの間で観測される乖離を、上述した、k+i番目の修正データを決定するステップ102のサブステップの結果に基づいて補間することによって、実験観測値は補完される。
【0055】
補間は、多くの様々な方法で行ってよい。例えば、決定論的補間法、又は、地球統計学的補間法が使用されてよい。決定論的補間法の例には、逆距離加重補間、多項式補間、スプライン補間、又は、放射基底関数に基づく補間などがある。地球統計学的補間には、クリギング法(別名、ガウス過程回帰)が使用されてもよい。いくつかの例によれば、機械学習法が補間に使用されてもよい。
【0056】
続いて、k+i番目の修正データが、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データ(実験で得られたもの)と、時間ステップtk+iにおける仮想測定データとに基づいて決定される。
【0057】
仮想オブジェクトが(
図2に例示的に示されるように)シミュレーションの中で、実体オブジェクトの有限要素法表現の少なくとも一部を覆う少なくとも1つの面である場合、時間ステップt
k+iにおける実体オブジェクトの測定データと仮想測定データとに基づいて、k+i番目の修正データを決定することは、時間ステップt
k+iにおける実体オブジェクトの測定データと時間ステップt
k+iにおける仮想測定データとに基づいて、時間ステップt
k+iにおける実験の有限要素法表現を決定することを含む。時間ステップt
k+iにおける実験の有限要素法表現は、時間ステップt
k+iにおける実験で得られた実体オブジェクトの測定データに基づくものであり、時間ステップt
k+iにおける仮想測定データで補完される。時間ステップt
k+iにおける実験の有限要素法表現は、時間ステップt
k+iにおける実体オブジェクトの実験中の状態を補完して表したものである。
【0058】
更に、時間ステップtk+iにおける実験の有限要素法表現の節点の法線ベクトルが決定される。法線ベクトルは、時間ステップtk+iにおける実験の有限要素法表現に直交する。
【0059】
シミュレーションの中で、仮想オブジェクトが実体オブジェクトの有限要素法表現の少なくとも一部を覆う少なくとも1つの面である場合、時間ステップtk+iにおける実験の有限要素法表現と時間ステップtk+iにおける実験の有限要素法表現の節点の法線ベクトルとに基づいて、k+i番目の修正データが決定される。時間ステップtk+iにおける実験の有限要素法表現と時間ステップtk+iにおける実験の有限要素法表現の節点の法線ベクトルとに基づいて、k+i番目の修正データを決定するために、時間ステップtk+iにおける仮想測定データの不確かさは、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データの測定の不確かさに基づき決定される。例えば、時間ステップtk+iにおける仮想測定データの不確かさは、補間中に決定されてよい。時間ステップtk+iにおける仮想測定データの不確かさは、第1に、仮想測定データが実体オブジェクトの測定で得るものであるので、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データの測定の不確かさから生じることもあり、また、第2に、補間によって更に不確かさ、及び/又は、補間誤差が加わるので、補間プロセスから生じることもある。
【0060】
続いて、時間ステップtk+iにおける実験の有限要素法表現と時間ステップtk+iにおける実験の有限要素法表現の節点の法線ベクトルとに基づいて、時間ステップtk+iにおける仮想オブジェクトの補助有限要素法表現を決定する。時間ステップtk+iにおける仮想オブジェクトの補助有限要素法表現を決定するために、時間ステップtk+iにおける仮想測定データの不確かさと実体オブジェクトの測定データの測定の不確かさとを、実体オブジェクトの測定データと同じ種類のスカラー値に変換するための所定のメトリックが使用される。例えば、実体オブジェクトの測定データが位置データである場合、所定のメトリックは、時間ステップtk+iにおける仮想測定データの不確かさと実体オブジェクトの測定データの測定の不確かさとをスカラーの距離値に変換するためのものであってよい。
【0061】
この時間ステップtk+iにおける仮想オブジェクトの補助有限要素法表現は、k+i番目の修正データを決定するために用いられる。特に、時間ステップtk+iにおける仮想オブジェクトの補助有限要素法表現と時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現との比較に基づいて、k+i番目の修正データは決定される。例えば、k+i番目の修正データを決定するために、時間ステップtk+iにおける仮想オブジェクトの補助有限要素法表現と時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現の対応する節点に割り当てられたデータが比較されてよい。仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータが、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点の位置を示す位置データである場合、k+i番目の修正データは、時間ステップtk+iにおける仮想オブジェクトの補助有限要素法表現と時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現の、それぞれの節点に割り当てられた位置の間の差を表す修正軌跡であってよい。
【0062】
従って、実体オブジェクトの有限要素法表現の進展を制限する解回廊の修正は、時間ステップtk+iに対して決定されてよい。
【0063】
仮想オブジェクトが(
図3に例示的に示されるように)時間ステップt
kにおいて実験を仮想的に再現したものである場合は、時間ステップt
k+iにおける実体オブジェクトの測定データと仮想測定データとに基づいてk+i番目の修正データを決定することは、シミュレーションで実体オブジェクトの有限要素法表現の少なくとも一部を覆う1つ又は複数の面である仮想オブジェクトに関して上述したことと同様に、時間ステップt
k+iにおける実体オブジェクトの測定データと仮想測定データとに基づいて時間ステップt
k+iにおける実験の有限要素法表現を決定することを含む。時間ステップt
k+iにおける実験の有限要素法表現は、時間ステップt
k+iにおける実体オブジェクトの実験中の状態を補完して表したものである。
【0064】
仮想オブジェクトが時間ステップtkにおいて実験を仮想的に再現したものである場合は、k+i番目の修正データは、時間ステップtk+iにおける実験の有限要素法表現と時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現との比較に基づいて決定される。例えば、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータが仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点の位置を示す位置データである場合は、k+i番目の修正データは、時間ステップtk+iにおける実験の有限要素法表現と時間ステップtk+i-1における仮想オブジェクトの有限要素法表現のそれぞれの節点に割り当てられた位置との間の差を表す修正軌跡であってよい。
【0065】
従って、実体オブジェクトの有限要素法表現の進展を制限する解回廊の修正は、時間ステップtk+iに対して決定されてよい。
【0066】
更に、時間ステップtk+iにおける仮想測定データの不確かさは、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データの測定の不確かさに基づいて決定される。例えば、時間ステップtk+iにおける仮想測定データの不確かさは、補間中に決定されてよい。時間ステップtk+iにおける仮想測定データの不確かさは、第1に、仮想測定データが実体オブジェクトの測定で得るものであるので、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの測定データの測定の不確かさから生じることもあり、また、第2に、補間によって更に不確かさ、及び/又は、補間誤差が加わるので、補間プロセスから生じることもある。
【0067】
測定データの測定の不確かさと仮想測定データの不確かさは、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点を実体オブジェクトの有限要素法表現の対応する節点に結合する結合係数によって計算に入れられる。特に、結合係数は、測定データの測定の不確かさと、仮想オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータの基となる仮想測定データの不確かさとに基づいて決定される。
【0068】
上述した、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現の推定値の決定は、様々な方法で行われてよい。以下に、2つの例を説明する。
【0069】
例えば、時間ステップtk+i-1における実体オブジェクトの有限要素法表現は、k+i番目の補助修正データと組み合わされてよい。仮想オブジェクトの有限要素法表現を省略した場合には、k+i番目の補助修正データは、シミュレーションの中で、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータの、時間ステップtk+i-1から時間ステップtk+iへの修正内容を表す。すなわち、仮想オブジェクトの有限要素法表現を用いない場合には、k+i番目の補助修正データは、シミュレーションの中で、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータの、時間ステップtk+i-1から時間ステップtk+iへの差を表す。例えば、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータが実体オブジェクトの有限要素法表現の節点の位置を示す位置データである場合、k+i番目の補助修正データは、時間ステップtk+i-1から時間ステップtk+iへ進展するときの、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点の位置の差を表す修正軌跡であってよい。仮想オブジェクトの有限要素法表現を計算に入れない「そのまま」のシミュレーションを使用することで、実体オブジェクトの有限要素法表現の時間ステップtk+iにおける予測を得ることを可能にしてよい。
【0070】
あるいは、時間ステップtk+i-1における実験の有限要素法表現は、k+i番目の補助修正データと組み合わされてもよい。この例では、動的な解回廊を考慮して計算される時間ステップtk+i-1における実体オブジェクトの有限要素法表現は使用されない。時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現の推定は、補完された実験観測値に基づくが、仮想オブジェクトの有限要素法表現によって制限される、時間ステップtk+i-1におけるシミュレーションには基づかない。
【0071】
時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現の推定値は、別の方法で決定されてもよいことを理解されたい。例えば、実体オブジェクトの有限要素法表現は、1つ又は複数の時間ステップtk+iに対して、補完された実験観測値と、それぞれの時間ステップの前の時間ステップtk+i-1におけるシミュレーション(仮想オブジェクトの有限要素法表現によって制限される)に基づき、かつ、更なる1つ又は複数の時間ステップtk+iに対して、補完された実験観測値に基づくが、それぞれの時間ステップの前の時間ステップにおけるシミュレーションには基づかないように、上記の例が組み合わされてもよい。
【0072】
上記のように、仮想オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報は、シミュレーションを実験で得られた測定データと比較するため、又は、別のシミュレーションの結果と比較するために使用されてよい。例えば、シミュレーションは、実験で得られた測定データを用いて検証されてよい。更に、仮想オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報は、測定データとシミュレーション結果との間の不一致を表す、実体に基づく、解釈可能なデータセットである。この情報は、その不一致の潜在的な根源を特定するために使用されてよい。
【0073】
仮想オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報は、更に、他の評価(査定)作業に使用されてよい。他の例では、方法100に従って得られた時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの有限要素法表現は、仮想オブジェクトの有限要素法表現を省略した場合に得られた、時間ステップtk+iにおける実体オブジェクトの別の有限要素法表現と比較されてよい。例えば、応力/歪みの状態、又は、幾何学的形状が比較されてよい。
【0074】
更に、実体オブジェクトの上述したシミュレーションが、実体オブジェクトの複数のシミュレーションの中の1つであった場合に、仮想オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報は、実体オブジェクトの複数のシミュレーションのうちの他のシミュレーション(又は、少なくともその一部)との比較に使用されてよい。実体オブジェクトの複数のシミュレーションのうちの他のシミュレーションの基となる(例えば、数学的、又は、物理的)モデル、及び/又は、境界条件は、変わってよい。他のシミュレーションは、仮想オブジェクトのそれぞれの有限要素法表現によって同様に制限される。更に、他のシミュレーションについても、仮想オブジェクトのそれぞれの有限要素法表現と実体オブジェクトのそれぞれの有限要素法表現との相互作用に関するそれぞれの情報が決定される。
【0075】
シミュレーションに対して決定された、仮想オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報は、例えば、比較結果を得るために、複数のシミュレーションのうちの他のシミュレーションに対して決定された、仮想オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報と比較されてもよい。例えば、比較結果に基づいて、複数のシミュレーションのうち、実体オブジェクトの測定データに最もよく一致するシミュレーションが決定されてよい。
【0076】
しかしながら、複数のシミュレーションについて決定された、仮想オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報を使用して、他の基準が評価されてもよいことを理解されたい。
【0077】
以下では、本実施形態に係る技術の上記の原理を、別の実施形態に関して説明する。
図4に関連する以下の段落は、本実施形態に係る技術を別の観点から説明するものである。上述したように、本実施形態に係る技術は、任意の測定システムの不完全な測定データの自動的かつ統合的な処理を可能にしてよい。測定データは、測定の不確かさの影響を受け、様々な空間的、及び/又は、時間的分解能を持ってよい。本実施形態に係る技術は、更に、実験と有限要素シミュレーションとの間の乖離を表すデータ、及び、実験の完全な有限要素法表現を生成することを可能にしてよい。
【0078】
以上に詳細に説明したように、本実施形態に係る技術は、1つ又は複数の計測システムの実験観測に基づいて、動的な解回廊を生成する。解回廊は、シミュレーションのCAE(Computer-Aided Engineering)ドメインに連続的にフィードバックされてよい。上述のように、解回廊をCAE環境に継続的にフィードバックすることで、実験とシミュレーションとの間の乖離を特定し、評価することを可能にしてよい。本実施形態に係る技術の更なる利点は、生成された解回廊に制限されたシミュレーションを用いて、次の時間ステップの計測データを補完することである。
【0079】
図4は、関連するデータフローを示したものである。実験の測定データ410(例えば、2次元、及び/又は、3次元の測定データ)は、測定データ410を補完するために、CAEドメインの有限要素シミュレーションのデータ420と組み合わされる。例えば、異なる分解能を有する異なる測定システムの不完全な幾何学的測定データは、測定データを補完するために、シミュレーションの予測値と組み合わされてよい。
図4に示されるように、測定データ410と有限要素シミュレーションの予測との間の乖離は、それぞれの不確かさと共に決定され、次に、その乖離が、クリギング法のような地球統計学的手法、又は、機械学習法などの補間方法を用いて補間される。従って、補完された測定データが得られてよい。
【0080】
シミュレーションと実験との間の乖離を特定し、シミュレーションの全時間範囲にわたって測定データを補完することができるようにするために、補完された測定データはCAEドメインに継続的にフィードバックされる。例示的に上述したように、このフィードバックは、実体オブジェクトの有限要素法表現の動きの自由度を制限する1つ又は複数の覆い面などの仮想オブジェクトを用いて行われてもよい(例えば、
図2参照)。
【0081】
本実施形態に係る技術は、ホワイトボックス(決定論的)要素とブラックボックス(データに基づいた)要素との組み合わせであり、「グレイボックス処理」と呼ばれてよい。本実施形態に係る技術によるグレイボックス処理は、シミュレーションと実験との間の乖離を物理的に解釈可能な形で表現することを可能にする、空間的かつ時間的な分解能を持つデータセットを生成することを可能にしてよい。シミュレーションと実験との間の乖離の物理的に解釈可能な表現は、乖離の理由(根源)を特定することを可能にしてよい。上述したように、このデータセットは、実体オブジェクトの有限要素法表現と、例えば、覆い面の有限要素法表現によって表される解回廊との相互作用に基づいて生成されてよい。例えば、実体オブジェクトの有限要素法表現と覆い面の有限要素法表現との間の接触力などの反力は、例えば、ポスト処理の一部として、有限要素法表現上の時間の関数をカラーコード表示したものなどで表されてよい。更に、これらの力は、スカラー値によって表されてもよく、その値は性能指数として理解されてよい。例えば、選択された領域における実体オブジェクトの有限要素法表現と覆い面の有限要素法表現との間の運動量伝達が、選択された時間に対して表されてよい。このような性能指数は、シミュレーションと実験との間の乖離の理由を特定することを可能にしてよい。更に、このような性能指数は、複数のシミュレーションと様々な実験との一致度を評価することを可能にしてよい。更に、本実施形態に係る技術によるグレイボックス処理で得られた実験の有限要素法表現は、更に様々な評価(査定)作業に使用されてよい。
【0082】
例えば、本実施形態に係る技術は、任意の空間的、及び/又は、時間的分解能を持つ、任意の数の測定システムにおける幾何学的測定データと、関連する不確かさとに用いられてよい。更に、実験で観測されたプロセスに対応する、1つ又は複数の有限要素シミュレーションが使用されてよい。
【0083】
それぞれの有限要素法表現の節点に、該節点の位置を示す位置データが割り当てられるシミュレーションでは、上述した方法100の原理に従う例示的なワークフローは以下の通りであってよい。
【0084】
1)時間ステップtk+iから時間ステップtk+i-1までの初期シミュレーション(すなわち、実体オブジェクトの有限要素法表現の進展を制限するために、仮想オブジェクトの有限要素法表現を、省略した/使用しないシミュレーション)の、例えば節点軌跡に基づいて、時間ステップtk+iにおけるシミュレーション値の推定値(すなわち、実体オブジェクトの有限要素法表現の推定値)を決定する。
【0085】
2)時間ステップtk+iにおける実験観測値(すなわち実験の測定データ)に相当する、有限要素シミュレーションの節点における、予測された有限要素シミュレーションの値(すなわち実体オブジェクトの有限要素法表現の推定値)と、実験の推定値との間の空間的な乖離を決定する。実験の計測点は、あらかじめ有限要素シミュレーションの節点に対応付けられる。
【0086】
3)ステップ1)の結果に基づいて、すべての有限要素節点間の距離を決定する。すなわち、実体オブジェクトの有限要素法表現の、推定値の節点の間の距離が決定される。例えば、ユークリッド距離や測地線距離が決定されてよい。
【0087】
4)ステップ1)、2)、3)の結果に基づいて、決定された空間的な乖離を補間することにより、実験観測値を補完する。例えば、クリギング法、機械学習法、その他任意の補間法が用いられてよい(さらなる例は、上記を参照のこと)。
【0088】
5)ステップ1)、2)、4)の結果から得られた有限要素メッシュ上で法線ベクトルを決定する。ステップ1)、2)、4)の結果から得られる有限要素メッシュは、上述した実験の有限要素法表現に相当する。
【0089】
6)測定の不確かさと補間により生じる不確かさとを、覆い面の幾何学的距離(解回廊の「路幅」を定義する)に変換するための、(最終的には問題固有の)メトリックを定義する。すなわち、仮想測定データの不確かさと、実体オブジェクトの測定データの測定の不確かさを、上記のように距離値に変換するためのメトリックを定義する。
【0090】
7)(解回廊を定義するための)覆い面を、これと対応する有限要素メッシュを時間ステップt0において生成することにより、初期定義する。(これは、上述の時間ステップtkにおける仮想オブジェクトの有限要素法表現の一例である)。
【0091】
8)現在の時間ステップtk+i-1に続く次の時間ステップtk+iにおける動的な解回廊の軌跡を定義する。これに関して、ステップ1)、2)、4)、5)、6)の結果を、仮想覆い面の節点の軌跡に変換する。(これは、上述のk+i番目の修正データの具体例である)
【0092】
9)動的な解回廊を用いて、時間ステップt0から時間ステップt1へのシミュレーションを新たに開始する。すなわち、時間ステップt0における実体オブジェクトの有限要素法表現と、時間ステップt0における仮想オブジェクトの有限要素法表現と、上述のk+i番目の(時間ステップt0から時間ステップt1へ進行する場合はk=0、i=1とする)修正データとに基づいて、時間ステップt1における実体オブジェクトの有限要素法表現を決定する。
【0093】
10)動的な解回廊の新しい軌跡を決定するために、ステップ9)で実行された新しいシミュレーションの結果に基づいて、ステップ1)、2)、3)、4)、5)、8)を繰り返し実行する。すなわち、時間ステップt1から時間ステップt2へ進行するためのk+i番目の(時間ステップt1から時間ステップt2へ進行する場合は、k=0、i=2とする)修正データを上記のように決定する。
【0094】
11)ステップ10)で決定した動的な解回廊の新しい軌跡を使用して、ステップ9)の新しいシミュレーションを、時間ステップt1から時間ステップt2へ進行させるために継続する。すなわち、時間ステップt1における実体オブジェクトの有限要素法表現と、時間ステップt1における仮想オブジェクトの有限要素法表現と、上述の第2修正データとに基づいて、時間ステップt2における実体オブジェクトの有限要素法表現を決定する。時間ステップt2における仮想オブジェクトの有限要素法表現を得るために、時間ステップt1における仮想オブジェクトの有限要素法表現とk+i番目の修正データとを組み合わせる。
【0095】
12)シミュレーションの最大(最終)時間ステップtmaxに達するまで、ステップ10)と11)を繰り返す。
【0096】
13)ステップ1)~12)で生成されたデータセットに対して、例えば以下のような後処理を行う。
- 覆い面をカラーコードで表示することにより、覆い面と観測対象物との間の相互作用を時間の関数として可視化する。
- シミュレーションと実験との間の整合度合を評価するための(例えばスカラーの)性能指数の定義など、この相互作用に対して他の評価を行う。又は、
- 複数のシミュレーションの中から、実験と最も高い整合度合を有するシミュレーションを特定する。
- 生成され、補完された実験の3次元の有限要素法表現に基づき、他の比較分析を行う。
【0097】
ステップ13)で説明した例は、上述した仮想オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現との相互作用に関する情報の具体例である。
【0098】
上記の例示的なワークフローは、例えば、上述したものと同様に、動的な解回廊の連続的なフィードバックを省略することによって改変されてよい。例えば、ステップ1)、2)、3)、4)、及び5)は、シミュレーションの全時間範囲(すなわち、時間ステップtmaxまで)に対して実行されてよい。この例では、ステップ1)の時間ステップtk+iにおけるシミュレーション値の推定値の決定は、ステップ4)の実験観測値を補完した結果に基づき、動的な解回廊を用いた新たなシミュレーションの結果(上記ステップ9)と11))には基づかない。すなわち、時間ステップtk+i-1における実験の有限要素法表現が、k+i番目の補助修正データと組み合わされる。
【0099】
動的な解回廊の決定、ならびに、新しいシミュレーションにおいての該解回廊の使用と、物理的に解釈可能なデータセットを実験観測値のために生成し使用することとは、シミュレーションの全時間範囲(すなわち、時間ステップtmaxまで)に対して行われ、ステップ6)、7)、8)、9)、11)、及び、13)を含む。
【0100】
方法100について、より大まかに上述したように、補完された実験観測値から有限要素シミュレーションへフィードバックするものは、上述した覆い面に限定されるものではない。覆い面の代わりに、実験を仮想的に再現した有限要素法表現の形態による基準形状が使用されてよい。この有限要素メッシュの節点は、補完された実験観測値の推定値に対応する。仮想的な基準形状の節点は、実体オブジェクトの有限要素法表現の対応する節点に結合される。仮想的な基準形状の対応する節点のシフトと一致しない実体オブジェクトの有限要素法表現の節点のシフトは、仮想的な基準形状に向かう復元力を発生させる。例えば、これらの復元力は、結合された節点間の距離が増加するにつれて漸進的に発達(例えば、増加)することがある。復元力の漸進的な発達は、補完された実験観測値の不確かさと相関してよい。従って、不確かさが低い節点では、不確かさが高い節点の場合と比較して、同じ空間的な乖離に対する復元力がより高い。復元力の定義は、空間的な分解能及び方向依存性を持ってよい。仮想的な基準形状は、解回廊の代替的な実装形態である。
【0101】
ステップ1)~13)からなる上記の例示的なワークフローで覆い面の代わりに仮想的な基準形状を使用する場合は、以下の修正が適用されてよい。
【0102】
5)ステップ5は除かれる。
【0103】
6)測定の不確かさ、及び、補間により生じる不確かさを、距離に依存する復元力の進行に変換するための(最終的には問題固有の)メトリックを定義する。すなわち、仮想測定データの不確かさと、実体オブジェクトの測定データの測定の不確かさを、対応する結合係数に変換するためのメトリックを定義する。
【0104】
7)時間ステップt0における有限要素メッシュを生成することにより、(解回廊を定義するための)仮想的な基準形状を初期定義する。
【0105】
8)現在の時間ステップtk+i-1に続く次の時間ステップtk+iにおける動的な解回廊の軌跡を定義する。この点に関し、ステップ1)、2)、4)の結果を仮想的な基準形状の節点の軌跡に変換する。(これは、前述したk+i番目の修正データの具体例である。)
【0106】
9)仮想的な基準形状を用いて、時間ステップt0から時間ステップt1へのシミュレーションを新たに開始する。
【0107】
11)ステップ10)で決定した仮想的な基準形状に対する新しい軌跡を使用して、ステップ9)の新しいシミュレーションを継続し、時間ステップt1から時間ステップt2へ進行させる。
【0108】
12)シミュレーションの最大(最終)時間ステップtmaxに到達するまで、ステップ10)と11)を繰り返す。
【0109】
13)生成されたデータセットに対して、例えば以下のように後処理を行う。
- 復元力を可視化する。又は、
- シミュレーションと実験との間の整合度合を評価するための(例えばスカラーの)性能指数の定義など、復元力、又は、復元エネルギーに対して他の評価を行う。又は、
- 複数のシミュレーションの中から、実験との整合度合が最も高いシミュレーションを特定する。
- 生成され、補完された実験の3次元有限要素法表現に基づく他の比較分析を行う。
【0110】
覆い面について上述したことと同様に、動的な解回廊の連続的なフィードバックは省略されてよい。すなわち、ステップ1)の時間ステップti+1におけるシミュレーション値の推定値の決定は、ステップ4)の実験観測値を補完した結果に基づいてよく、動的な解回廊を用いた新たなシミュレーションの結果(上記ステップ9)と11))には基づかなくてよい。更に、使用される補間方法などの他のパラメータを変化させてよい。更に、生成されたデータセットは、ステップ13)で説明したものとは異なる方法で使用されてよい。
【0111】
上述した、実験とシミュレーションとの間の乖離を補間して実験観測値を補完することは、本実施形態に係る技術において不可欠な方法の態様の1つである。この補完は、推定されたシミュレーション値と、有限要素シミュレーションの節点で、関連する測定値から決定された乖離と、上述した、有限要素メッシュの節点間の距離に関する情報とに基づく。このアプローチは、空間的分解能及び時間的分解能が大きく異なる、様々な(例えば、複数の異なる)測定システムの測定データを組み合わせて処理することを可能にする。このアプローチにより、空間的、及び/又は、時間的な観測ギャップを埋めることができてよい。更に、異なる測定システムから得られる補完的な情報の有用性が、より広範に利用されてよい。シミュレーションは、例えば、X線測定、ターゲットマーク、及び/又は、統計パターンを用いた光学的測定技術、又は、ゴボ投影(すなわち投影パターン)を用いた光学的3次元測定などの、1つ又は複数の測定技術で得られた測定データを組み合わせることにより、本実施形態に係る技術に従った検証をされてよい。光学的3次元測定では見えない領域で(例えば、X線測定のマーカによって)点状の情報を捕捉し、その後に、本実施形態に係る技術を適用することによって、測定データの補完が達成されてよい。
【0112】
補完された実験観測値(推定値と不確かさ)を動的な解回廊に変換し、その後、仮想オブジェクト(例えば、覆い面や、実験を仮想的に再現したもの)を用いて解回廊を有限要素シミュレーションにフィードバックすることは、観測した有限要素構造を、実験で観測した実際の実体構造の挙動に制限することにつながる。これは、様々な理由で利点がある。例えば、仮想オブジェクトと実体オブジェクトの有限要素法表現との間の物理的に解釈可能な相互作用が観測できる場合がある。これらの物理的に解釈可能な相互作用は、シミュレーションの実験結果からの乖離を特定し、また、定量化することを可能にしてよく、従って、この乖離の理由を特定するために使用されてよい。更に、実験の有限要素法表現が得られてよく、それがシミュレーションと実験とのさらなる比較のために使用されてよい。
【0113】
図4に示される、実験観測値を時間軸で閉じた情報フローの形式で有限要素ドメインへ連続的にフィードバックすることは、時間ステップt
k+i-1における実験観測値に基づいて更新したシミュレーション値を計算に入れて推定したシミュレーション値によって、時間ステップt
k+iにおけるシミュレーションと実験結果の乖離を決定することを可能にしてよい。実験観測値を連続的にフィードバックすることは、(シミュレーションと実験の間の不一致が大きい場合でも)シミュレーションの全時間範囲にわたって測定データを補完することを可能にしてよい。例えば、衝突運動学に起因した分岐が起きた場合でも、本実施形態に係る技術は、シミュレーションの全時間範囲におけるシミュレーションと実験との間の不一致を特定し、評価することを可能にしてよい。
【0114】
シミュレーションで観測された実体オブジェクトの運動学的な制限は、補完された実験観測値の不確かさに依存するので、有限要素構造は、測定と補間に対する信頼度の範囲内のみに制限される。測定値の不確かさは、本実施形態に係る方法によって直接処理されるため、シミュレーションを検証する際に、個別に計算に入れたり解釈したりする必要はない。
【0115】
後処理の中で、シミュレーションと仮想オブジェクト(例えば、覆い面、又は、実験を仮想的に再現したもの)との間の相互作用を、時間的に分解し、カラーコード化して仮想オブジェクト上に表示したものが得られてよい。従って、シミュレーションの実験結果に対する乖離を、空間的かつ時間的に分解して特定、及び、定量化したものが得られてよい。この乖離を空間的かつ時間的に分解して特定、及び、定量化することは、乖離の理由を更に特定することを可能にしてよく、従って、シミュレーションの仮想ドメイン、及び/又は、実世界ドメインにおいて適切な対策を決定することを可能にしてよい。
【0116】
上述したように、性能指数の目的にかなうスカラー値の定義は、この乖離を空間的かつ時間的に分解して特定、及び、定量化したものに基づいてよい。これにより、シミュレーションと実験との一致度の指標を与えてよい。
【0117】
更に、本方法は、複数のシミュレーションの実験への一致度を確認することを目的として複数のシミュレーションを実験と比較することを可能にしてよい。実験との一致度が高いシミュレーションを特定し、その境界条件を解析することで、シミュレーションと実験との乖離に関する知見が収集されてよい。このプロセス、及び、そこから得られる結果は、有限要素構造の検証及び最適化の完全な自動化を可能にしてよい。
【0118】
以上のように、本実施形態に係る技術の一つの態様は、実験で得られた測定データを補完することである。ここまでの段落では、実体オブジェクトのシミュレーションと実験で得られた実体オブジェクトの測定データとを比較するための本実施形態に係る方法の一部として、測定データの補完を説明した。しかし、測定データの補完は、上述した用途に限定されないことを理解されたい。概ね、本実施形態に係る測定データの補完は、シミュレーションと実験で得られた測定データとを比較するための本実施形態に係る方法とは独立して使用されてもよい。
【0119】
本実施形態に係る技術のこの態様を更に強調するために、
図5は、実験で実体オブジェクトを測定して得たデータの有限要素法表現を生成する、コンピュータに実装された方法500の一例のフローチャートを示す。
【0120】
方法500は、上述したものと同様に、実体オブジェクトの測定データを、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点に対応付けるステップ502を含む。すなわち、実体オブジェクトの測定データは、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられる。例えば、実験で測定値が得られた各測定位置は、実体オブジェクトの有限要素法表現のそれぞれの節点に対応付けられてよい。
【0121】
更に、方法500は、上述したものと同様に、実体オブジェクトの測定データと、実体オブジェクトの有限要素法表現の対応付けられた節点に割り当てられたデータとの間の乖離を決定するステップ504を含む。すなわち、実体オブジェクトの有限要素法表現のデータと、関連する実験の測定値との間の乖離が決定される。実体オブジェクトの有限要素法表現の対応付けられた節点に割り当てられたデータは、測定データと同じ種類のものである。例えば、実体オブジェクトの計測データは、実験(例えば、衝突実験)で計測された実体オブジェクトの位置を表す位置データであってよく、また、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点に割り当てられたデータは、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点の位置を表す位置データであってよい。
【0122】
方法500は、実体オブジェクトの有限要素法表現の節点間の距離を決定するステップ506を含む。例えば、推定値の節点の間の距離は、ユークリッド距離、又は、測地線距離(オブジェクトの幾何学的形状に沿った最短距離)であってよい。しかしながら、他の種類の距離が使用されてもよいことを理解されたい。
【0123】
更に、方法500は、実体オブジェクトの有限要素法表現と実体オブジェクトの有限要素法表現の節点間の距離とに基づいて乖離を補間することにより、実体オブジェクトの仮想測定データを決定するステップ508を含む。上述したように、測定システムによって、分解能、及び/又は、実体オブジェクトの観測可能な部分が限定される場合があるため、実験で得られる、ある時間ステップにおける実体オブジェクトの測定データは、不完全な場合がある。従って、仮想測定データの生成は、測定データを補完、又は、補足することを可能にしてよい。すなわち、実体オブジェクトの測定データと、実体オブジェクトの有限要素法表現の対応付けられた節点に割り当てられたデータとの間で観測された乖離を補間することによって、実験観測値が補完される。補間は、多くの異なる方法で行ってよい。例えば、上述した決定論的補間法、地球統計学的補間法(例えば、クリギング法)、又は、機械学習法のいずれを用いてもよい。
【0124】
更に、方法500は、実体オブジェクトの測定データと実体オブジェクトの仮想測定データとに基づいて、測定データの有限要素法表現を決定するステップ510を含む。測定データの有限要素法表現は、実験で得られた実体オブジェクトの測定データに基づいており、決定された仮想測定データで補完される。測定データの有限要素法表現は、ある時間ステップにおける実体オブジェクトの実験中の状態を補完して表したものである。すなわち、ステップ510で得られた測定データの有限要素法表現は、ある時間ステップにおける実体オブジェクトの実験中の状態を補完した有限要素法表現である。
【0125】
従って、方法500は、シミュレーションと実験との比較などの様々な作業に使用され得る、実験の有限要素法表現を生成することを可能にしてよい。
【0126】
方法500の更なる詳細、及び、態様が、本実施形態に係る技術、又は、上述した1つ又は複数の例(例えば、
図1~
図3)に関連して説明される。本方法は、オプションで、本実施形態に係る技術の1つ又は複数の態様、又は、上述した1つ又は複数の例に対応する、1つ又は複数の更なる特徴を含んでよい。
【0127】
実体オブジェクトのシミュレーションと実体オブジェクトの実験で得られた測定データとを比較するため、又は、実体オブジェクトの実験で得られた測定データの有限要素法表現を生成するための、本実施形態に係る技術に従った装置600の一例が
図6に示されている。
【0128】
装置600は、実体オブジェクトの測定データ601を受け取るように構成された(例えば、ハードウェア回路、又は、ソフトウェアインターフェースとして実装される)入力インターフェース610を備える。例えば、入力インターフェース610は、実体オブジェクトの挙動を観測するために実験に使用される1つ又は複数の測定(検出器)システムに接続されてよい。あるいは、入力インターフェース610は、測定データ601を記憶するデータ記憶装置に接続されてよい。装置600は、更に処理回路620を備える。例えば、処理回路620は、単一の専用プロセッサ、単一の共有プロセッサ、又は、複数の個別プロセッサ(その一部、又は、全部が共有されてもよい)、DSP(digital signal processor)ハードウェア、ASIC(application specific integrated circuit)、又は、FPGA(field programmable gate array)であってよい。処理回路620は、オプションで、例えば、ソフトウェアを格納するためのROM(Random Access Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び/又は、不揮発性メモリに接続されてよい。処理回路620は、実体オブジェクトのシミュレーションと実験で得られた実体オブジェクトの測定データとを比較するため、又は、実験で得られた実体オブジェクトの測定データの有限要素法表現を生成するために、上述した技術に従った処理を行うように構成される。
【0129】
装置600は、従来型、及び/又は、専用のハードウェアを更に含んでよい。
【0130】
1つ又は複数の、先に詳述した実施形態、及び、図と共に言及され説明された態様、及び、特徴は、他の実施形態の同様の特徴を置き換えるため、又は、他の実施形態にその特徴を追加して導入するために、他の実施形態の1つ又は複数と組み合わされるとよい。
【0131】
説明、及び、図面は、単に本開示の原理を説明するものである。更に、本明細書に記載されたすべての実施形態は、読者が、本開示の原理、及び、当該技術を進歩させるために本発明者が提供する思想を理解するのを支援するために例示する目的のためだけのものであることを明示的に意図している。本明細書において、本開示の原理、態様、及び、実施形態、ならびにその具体例を説明するすべての記述は、その等価物を包含することを意図している。
【0132】
ブロック図は、例えば、本開示の原理を実装する高レベルの回路図を示してよい。同様に、フローチャート、フロー図、状態遷移図、疑似コードなどは、様々なプロセス、操作、又は、ステップを表してよく、これらは、例えば、非一時的な機械可読媒体(例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROM、及び、EPROM、EEPROM、又は、フラッシュメモリ)上に、実質的に表現されてよく、プロセッサ、又は、書き換え可能なハードウェアが明示的に示されているかどうかに関わらず、当該プロセッサ、又は、プログラマブルハードウェアによって実行されてよい。本明細書、又は、特許請求の範囲に開示された方法は、これらの方法のそれぞれの行為を実行するための手段を有する装置によって実施されてよい。
【0133】
本明細書、又は、特許請求の範囲に開示された複数の行為、プロセス、操作、ステップ、又は、機能の開示は、例えば技術的な理由から明示的、又は、暗黙的に別段の記載がない限り、特定の順序にあると解釈してはならないことが理解されよう。従って、複数の行為、又は、機能の開示は、そのような行為、又は、機能が、技術的な理由のため入れ替え不可能でない限り、これらを特定の順序に限定することはない。更に、いくつかの例では、単一の行為、機能、プロセス、操作、又は、ステップは、それぞれ複数の下位の、あるいは分割した行為、機能、プロセス、操作、又は、ステップを含んでよく、あるいは、それらに分割されてよい。このような、下位の、あるいは分割した行為は、明示的に除外されない限り、この単一の行為の開示に含まれ、その一部となってよい。
【0134】
更に、以下の請求項は、詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態としてそれ自体で成り立ってよい。各請求項は独立した例としてそれ自体で成立してよい一方で、従属請求項は、請求項の中で、1つ又は複数の他の請求項との特定の組み合わせを述べてよいが、他の例は、当該従属請求項と他の従属、又は、独立請求項のそれぞれの発明主題との組み合わせを含んでよいことを理解されたい。このような組み合わせは、特定の組み合わせが意図されていないことが記載されていない限り、本明細書において明示的に提案される。更に、ある請求項が独立請求項に直接従属していない場合でも、その請求項の特徴を他の独立請求項にも含めることが意図されている。